しかしながら、従来の電子部品検査装置は、圧力容器の気体を温めることにより、この気体を熱伝導媒体として気圧センサを温度制御するので、気圧センサを検査温度に平衡させる時間が長くなり量産性が低いという問題があった。また、プリント基板から延びるデータ取り出し線を圧力容器外へ引き出して閉扉するので、自動密閉が難しく、自動化することが難しかった。
更に、圧力容器内のスペースが大きくなるので、気体全体を高温又は低温にすると気体の熱膨張又は収縮によって気圧が不安定になりやすく、短時間で正確な計測を行うことが困難であった。同様に、圧力容器の内圧を変化させると、圧力容器内の気体の温度が変化してしまうので、温度が不安定になりやすく、温度を平衡させるまでに時間を要するという問題があった。
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、圧力容器を小形で高耐圧高密閉状態に形成できると共に、圧力容器への気圧センサ等の電子部品の搬入搬出を容易かつ短時間に行うことができ、圧力容器内に収容する電子部品を、熱伝導により短時間に検査温度に保持することを実現し、圧力容器内を昇圧してこの昇圧にセンサ出力が正確に対応するか否かの検査を短時間に行える電子部品検査装置を提供することを目的としている。
かかる課題を達成するために、請求項1に記載の発明は、電子部品を圧力容器に収容して密閉し、所定の検査温度に保つとともに圧力容器内に高圧気体を供給して所定圧力とし、電子部品の出力端子の出力を検査することにより電子部品を検査する電子部品検査装置において、前記圧力容器は、上側可動容器と、前記上側可動容器の下側に固設されて該上側可動容器が下降したときに該上側可動容器の下端開口を密閉すると共に開口を備える下側容器とからなり、前記上側可動容器を昇降自在に案内する容器案内手段と、前記上側可動容器を前記下側容器に密着した位置から上昇させる容器昇降手段と、前記上側可動容器が前記下側容器に載置されてから前記上側可動容器を加圧して前記下端開口の密閉を確保する加圧手段と、を備えることを特徴とする。
請求項1に記載の発明によれば、気圧センサ等の電子部品を検査する際には、容器昇降手段を作動して上側可動容器を上昇させ、上側可動容器と下側容器との隙間を確保し、この隙間に電子部品を通して内部に搬入して、下側容器に備えた熱伝導手段の上に載置することができる。その後に、容器昇降手段を作動させて上側可動容器を下降させて、下側容器に密着させる。
更に、加圧手段側では上側可動容器を加圧して下側容器と上側可動容器との密閉を確保する。電子部品の検査環境が整ったら、圧力容器内に高圧空気を供給して昇圧変化させていき、所定の圧力環境における電子部品の出力特性を検査することができる。なおこの検査装置は、圧力容器内を昇圧/降圧して、電子部品の出力端子の出力の変化を検出し、そのデータを採取してメモリに記憶しても良く、また、一定の圧力に昇圧した状態で、他のパラメータ(温度、湿度、雰囲気媒体)を変化させて出力データを検査することも勿論可能である。
なお、請求項1に記載の発明では、上側可動容器を逆さ鍋形にすることが望ましい。このようにすると、上側可動容器と下側容器の隙間として、電子部品の挿入・取り出しに必要な微小寸法上昇させるだけで足りるので、上側可動容器の昇降時間を短時間にすることができる。
請求項1記載の発明は、更に、前記圧力容器の周壁に設置されて前記電子部品と直接又は前記電子部品の搬送キャリアを介して間接的に接触して、前記電子部品を検査温度となるように熱伝導する熱伝導手段を備え、前記熱伝導手段は、前記下側容器が備える前記開口を閉塞するように配置される熱伝導プレートと、前記熱伝導プレートの背面に密着して設けられて該熱伝導プレートに温熱又は冷熱を付与する熱移動素子と、を具備することを特徴とする。
これにより、この圧力容器内に収容された電子部品が熱移動素子によって検査温度になるまで温度制御される。一方、加圧手段側では上側可動容器を加圧して下側容器と上側可動容器との密閉を確保する。電子部品が検査温度になったら、圧力容器内に高圧空気を供給して昇圧変化させていき、所定圧力に達したところで、電子部品の出力特性を検査することができる。なおこの検査装置は、検査温度になった電子部品に対して、上述したように、圧力容器内を昇圧して、電子部品の出力端子の出力を検出し、検査温度に対応するデータを採取してメモリに記憶することができる。また、一定の圧力に昇圧した状態で、熱移動素子によって電子部品の温度を変化させて出力データを検査することも勿論可能である。
更に請求項1に記載の発明によれば、熱伝導手段によって、隔離空間である圧力容器内に収容される電子部品に対して、検査温度に加熱するための熱を圧力容器の外から電子部品に対して、その接触状態によって直接供給することができる。この結果、電子部品を熱効率良く検査温度に保持できる。つまり、熱伝導プレートを圧力容器の外壁の一部とすると共に、この熱伝導プレートに外側の熱移動素子を密着させて、圧力容器の外壁を利用して電子部品を正確な検査温度に制御することが可能となり、耐圧能力を維持と精密な温度制御を両立させるようにしている。なお、熱伝導プレートの素材は、金属以外の熱伝導性の高い素材でもよく、例えば窒化アルミやアルミナなどの熱伝導性の高いセラミックを用いることも好ましい。
請求項2に記載の発明は、上記発明において、前記圧力容器の前記上側可動容器の内壁にプローブを備え、前記上側可動容器が下降すると同時に、該プローブが前記電子部品の端子に接触するように構成したことを特徴とする。
この構成によれば、上側可動容器の昇降動作と同時に、圧力容器内に位置する電子部品とプローブとのコンタクトを確保することが可能になり、極めて短時間で、耐圧状態を兼ね備えた検査準備を整えることが可能となる。
請求項3に記載の発明は、上記発明において、前記加圧手段が、前記容器案内手段に設けられた昇降側カムフォロアと、前記昇降側カムフォロアの上方に対向して固定フレームに設けられた固定側カムフォロアと、検査時に前記上側可動容器が前記下側容器に対して密着状態になるときに前記昇降側カムフォロアと前記固定側カムフォロアのカムフォロア間に挟入され、楔作用を生起して前記昇降側カムフォロアを加圧する加圧用カムと、前記加圧用カムを待機位置とカムフォロア間挟入位置との間で移動させる加圧用シリンダ装置と、からなることを特徴とする。
この構成によれば、検査時に前記加圧用シリンダ装置により上側可動容器が下側容器に密着状態になると、昇降側カムフォロアが上側可動容器と一体になって下降し、昇降側カムフォロアが上側の固定側カムフォロアと離間する。この結果、加圧用カムがシリンダ装置により移動されてカムフォロア間に挟入され楔作用を生起して昇降側コロを加圧する。従って、加圧用シリンダ装置の推進力が小さくても、楔作用によって上側可動容器に極めて大きな推力を生じさせることができ、上側可動容器と下側容器との密着が強力に行われ、圧力容器の高圧密封を確保できる。
更に、加圧中において、仮に加圧用シリンダ装置の圧力が落ちた場合でも、楔作用によってその加圧状態を維持することが可能になる。
請求項4に記載の発明は、上記発明におけるメンテナンス時において、前記加圧用カムがカムフォロア間から離間した待機位置に位置すると共に、前記昇降側カムフォロアが前記固定側カムフォロアに近づいた高さ乃至当接した高さになるまで前記容器昇降手段が前記上側可動容器を上昇させる構成であることを特徴とする。
この構成によれば、メンテナンス時には上側可動容器を最大ストロークで上昇させることにより、上側可動容器と下側容器との離間距離を大きく取れるので、上側可動容器内に備えるプローブのメンテナンス、下側容器に備える熱伝導プレートのメンテナンス等の空間が確保され、メンテナンスや調整を行いやすい。
請求項5に記載の発明は、上記発明における検査時において、前記容器昇降手段が、前記電子部品の供給排出を可能とする程度に前記上側可動容器を供給排出用ストロークだけ上昇させる構成であることを特徴とする。
この構成によれば、検査時の上側可動容器を昇降ストロークが小さいので検査時間を短くすることができる。
請求項6に記載の発明は、上記発明において、前記容器昇降手段が、前記供給排出用ストロークだけ上昇している前記上側可動容器を下降させて中途停止し、前記上側可動容器と前記電子部品の位置関係を確認後に前記上側可動容器を前記下側容器に密着するまで下降させる構成であることを特徴とする。
この構成によれば、上側可動容器を下側容器に密着させたときに、電子部品の位置決めに不備が生じた際に、上側容器の下降が回避されるので、プローブや電子部品が壊れたり、プローブが電子部品の端子に接触しない状態での検査を抑制することができる。なお、電子部品の搬送に、搬送キャリアを用いる場合には、上側可動容器とこの搬送キャリアとの位置関係を確認することで、電子部品の位置関係を間接的に確認できることになる。
請求項7に記載の発明は、上記発明において、前記熱伝導手段が、更に、前記熱移動素子の背面に配置されて前記圧力容器の外部と熱伝導可能なヒートシンクと、前記ヒートシンクを液体又は気体によって冷却又は加熱する循環手段と、前記ヒートシンクを前記熱移動素子側に付勢する付勢手段と、を備える構成としたことを特徴とする。
熱移動素子の熱を電子部品に対して効率的に伝達するには、熱伝導プレートの厚みを薄くする必要がある。一方で、熱伝導プレートの剛性が不足するので、圧力容器内の圧力が上昇すると熱伝導プレートが外方へ湾曲する可能性がある。従って、本構成によれば、ヒートシンクが熱移動素子と密着したまま外方へ逃げることが可能となり、熱伝導プレートの外方への湾曲によって熱移動素子等の破壊が回避される。一方、圧力容器内の気圧が負圧になる場合は、熱伝導プレートが内側に湾曲する可能性があるが、この場合は付勢手段によってヒートシンクや熱移動素子が更に熱伝導プレートに押し付けられるので、隙間の形成が防止されて、熱伝達を確実に行うことができる。
請求項8記載の電子部品検査システムは、上記発明の電子部品検査装置がライン方向に複数台配置されることを特徴とする。
この構成によれば、複数の異なる温度帯域や圧力帯域を、各電子部品検査装置に分担させることができるので、全体の検査効率を高めることが可能になる。
請求項9記載の発明は、上記発明において、前記電子部品検査装置の上流側に、前記電子部品の温度を所定温度に制御する予熱ユニットが配置され、前記電子部品が搬送キャリアに載置されて、前記予熱ユニット及び前記電子部品検査装置を順次移動していくことを特徴とする。
この構成によれば、各電子部品検査装置の圧力容器に、予熱された電子部品を搬入できるので、電子部品を短時間に各検査温度に平衡させることができ、検査効率を一層高めることができる。
本発明によれば、圧力容器を小形で高耐圧・高密閉状態に形成でき、圧力容器への電子部品の搬入搬出を容易かつ短時間に行うことができるようになる。
次に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
この実施形態にかかる電子部品検査装置を図1乃至図5に示す。この実施形態の電子部品検査装置100は、電子部品となる気圧センサAを並べて取着した被検体シートBをキャリアCに載せて圧力容器10に収容して密閉し、この気圧センサAに対して、熱伝導プレート51により温熱又は冷熱を熱伝導し、一方で、圧力容器10内に高圧空気を供給して昇圧変化させていき、圧力容器10内の気体の圧力が所定圧力に到達したところで、電子部品の出力値を、検出モジュール70を介して特に図示しないPCや解析プログラムで検査するものである。この結果、気圧センサAが常温、高温、氷点下温度等において正常に機能するか否かを検査できる。
電子部品検査装置100の検査対象は、具体的な種類に特定されるものではなく、少なくとも1つの端子からセンサ雰囲気の圧力に対応した電気的出力値、例えば電圧値を出力することが要求される電子部品が対象である。ここでは、代表的な例として、車両のタイヤにモールドされるチップ状の気圧センサAを検査する場合を示しており、1つの気圧センサAについて全出力端子の出力を検査するようにしている。電子部品検査装置100は、一度に多数個の検査をすることが可能であり、ばらばらで複数の気圧センサAを取り扱う場合と比較して、供給・位置決め・データ検出・搬出を大幅に容易化する。ここでは、複数の気圧センサAを同時に扱うために、フィルムシートに複数個の気圧センサAを並べて取着した被検体シートBを検査対象としている。気圧センサAは、透明フィルムシートに精密なピッチで配列されている。気圧センサAは、検査後に不良品に判別マークを付けてから透明フィルムシートから剥離して1個単位としたり、または透明フィルムシートをカッターにより分割カットして1個単位とする。
被検体シートBの圧力容器10内への供給は、予め被検体シートBをキャリアCの上面に精密に位置決め載置しておき、図示しない搬入手段(例えば爪付きプッシャー)によりキャリアCを圧力容器10内に挿入する。具体的には、圧力容器10において、上側可動容器11と下側固定容器12が離隔した隙間にキャリアCを通して圧力容器10内へ送り込み、下側固定容器12に設けられる熱伝導プレート51の上面に精密に位置決めする。気圧センサAの検査後は、上側可動容器11と下側固定容器12を離隔させて、その隙間を通して図示しない搬出手段がキャリアCを圧力容器10の他側へ取り出すようになっている。
被検体シートBのキャリアC上への位置決め載置と、キャリアCの熱伝導プレート51上への位置決め載置は例えば以下のように行われる。キャリアCは、その上面に対角位置に特に図示しない2つのピンを有しており、この2つのピンを被検体シートBの透明フィルムシートに開けたピンホールに嵌合させることにより該被検体シートBをキャリアCに位置決めできる。
電子部品検査装置100は、圧力容器10の上側可動容器11を昇降可能に案内する容器案内手段20と、圧力容器10の上側可動容器11を昇降させる容器昇降手段30と、上側可動容器11を下方に加圧して圧力容器10の密閉を確保する加圧手段40と、気圧センサAを検査温度となるように熱伝導する熱伝導手段50と、装置フレーム60と、検出モジュール70等を備えてなる。
圧力容器10は、逆さ鍋形の上側可動容器11とテーブル状の下側固定容器12とを上下に対向して具備している。上側可動容器11は、容器案内手段20により昇降可能に案内される。さらに、上側可動容器11は、加圧手段40により下方に向かって加圧自在となっている。一方、下側固定容器12は装置フレーム60に固設されている。上側可動容器11と下側固定容器12との密着面には、密封を確保するためのシール部材が環状に設けられている。上側可動容器11は、組み立て及びメンテナンスの便宜のために、上面に把手85を備えており、容器案内手段20との連結を解除することによって、把手85を掴んで手前に引き出すことができる。
装置フレーム60は、基台フレーム61と枠形の上部フレーム62を備えている。基台フレーム61のテーブル部には、下側固定容器12が載置・固定されている。上部フレーム62には、容器案内手段20が設置されており、この容器案内手段20を介して上側可動容器11を昇降可能に支持している。
容器案内手段20は、上側可動容器11の上側に位置しており、この上側可動容器11の上面両端を支持するアーチブラケット21と、上部フレーム62の下辺部62aと上辺部62bによって上下方向に案内される4つのロッド22a〜22dとを備える。4つのロッド22a〜22dの上端には雄ねじ部が形成されており、この上端に対して端部連結プレート23がナット24で固定連結されている。この結果、4つのロッド22a〜22dの上端は、端部連結プレート23によって一体化されている。また、4つのロッド22a〜22dの下端にも、同様に雄ねじ部が形成されており、この下端に対して上記アーチブラケット21がナット25で固定連結される。この結果、4つのロッド22a〜22dの下端は、アーチブラケット21によって一体化されている。
容器昇降手段30は、水平直動ガイドレール31aと、水平直動ガイドレール31aに案内されるスライダ31bに固定された直動カム32と、水平直動ガイドレール31aに案内されるスライダ31cに固定されるスライダブラケット33と、このスライダブラケット33に固定されて直動カム32を相対的に直線駆動する第1のエアシリンダ装置34と、基台フレーム61に設けられたブラケット35と、このブラケット35に固定されてスライダブラケット33を相対的に直線駆動する第2のエアシリンダ装置36と、基台フレーム61に設けられる垂直直動ガイドレール37aと、垂直直動ガイドレール37aに案内されるスライダ37bと、アーチブラケット21の上面及びスライダ37bに連結固定される昇降ブラケット37cと、昇降ブラケット37cに上端側(即ちピストンロッド39aのヘッド部)が固定されると共に、下端側(即ちシリンダ本体の下端)にカムフォロア(コロ)38を有する垂直方向の第3のエアシリンダ装置39と、を備える。
直動カム32は、カム面として、第1平滑部(低所平滑部)32a、第2平滑部(中所平滑部)32b、第3平滑部(高所平滑部)32cを備えている。第1のエアシリンダ装置34と第2のエアシリンダ装置36のピストンが共に縮小している状態から、第1のエアシリンダ装置34を伸張作動して直動カム32が移動すると、このカム面と接触しているカムフォロア38は、直動カム32のカム面を相対的に転動して第1平滑部(低所平滑部)32aから例えば12.5mm高い第2平滑部(中所平滑部)32bに移動する。更に続いて、第2のエアシリンダ装置36が伸張作動すると、第1のエアシリンダ装置34と直動カム32が一体に移動し、カムフォロア38は、第2平滑部(中所平滑部)32bから例えば12.5mm高い第3平滑部(高所平滑部)32cに移動する。この結果、容器昇降手段30は、この直動カム32によって、上側可動容器11を3段階に位置決めすることが可能となっている。
また、第3のエアシリンダ装置39は、検査時において常に縮小状態を保持している。従って、上側可動容器11と下側固定容器12が密着した状態から、第1のエアシリンダ装置34と第2のエアシリンダ装置36とを同時に伸張作動させると、カムフォロア38が第1平滑部32aから第3平滑部32cまで一気に移動することで、上側可動容器11が、下側固定容器12に対して例えば25mm上昇する。このように、上側可動容器11と下側固定容器12との離間距離を25mm程度にすると、被検体シートBの搬入・搬出に必要十分な隙間となる。
計測するために上側可動容器11を下降させるときは、先に、第2のエアシリンダ装置36を縮小作動して上側可動容器11を12.5mm下降させる。この時点で、上側可動容器11に備えた位置決めピン81及び位置決めチェックピン82が、被検体シートBを載せたキャリアCの位置決め用のピンホールを通るようになっている。従って、両ピン81、82がピンホールに通った場合には、キャリアCの位置決めが正確に行われていると判断して、引き続いて第1のエアシリンダ装置34を縮小作動することで、上側可動容器11をさらに12.5mm下降させる。この結果、上側可動容器11が下側固定容器12に密着する。一方、位置決めチェックピン82がキャリアCの位置決め用のピンホールを通らない場合には、位置決めチェックピン81の先端がキャリアCに当接することで、この位置決めチェックピン81が上側可動容器11に対して相対的に持ち上がるようになっている。この持ち上がりを位置チェックセンサ83が検出するようになっているので、位置チェックセンサ83が反応したときは、第1のエアシリンダ装置34を縮小作動することなく、第2のエアシリンダ装置36が伸張作動して上側可動容器11を再び上昇させて、警告を発生するようになっている。つまり、上側可動容器11を下側固定容器12から25mm離間した上方待機位置から12.5mm下降して中途停止し、上側可動容器11に設けられているプローブ73が、被検体シートBに取着した気圧センサAの端子に接触するように正確に対向していることが確認できてから、上側可動容器11を更に12.5mm下降させて下側固定容器12に密着させる。
なお、メンテナンス時において、容器昇降手段30は、第1のエアシリンダ装置34と第2のエアシリンダ装置36を伸張させると共に、更に第3のエアシリンダ装置39を伸張させて、上側可動容器11を大きく上昇させるようになっている。
加圧手段40は、アーチブラケット21の上面中央に立設された延長ロッド41と、延長ロッド41の上端をロッド22a、22cに対して摺動自在に保持するサポートブラケット42と、延長ロッド41の上端に設けられた昇降側カムフォロア(コロ)43と、昇降側カムフォロア43の上方に対向するようにして基台フレーム61に設けられた複数の固定側カムフォロア(コロ)44と、検査時において上側可動容器11が最下降位置となって下側固定容器12に密着状態になるときに昇降側カムフォロア43と上側の固定側カムフォロア44とのコロ間に挟入される加圧用カム46と、水平直動ガイドレール45aと、水平直動ガイドレール45aに案内されるスライダ45bに固定された加圧用カム46を待機位置とコロ間挟入位置との間で移動させる加圧用エアシリンダ装置47とを備える。
加圧用カム46の下側には下面傾斜面46aが形成されており、加圧用カム46の突端側の上下方向距離が小さく、且つ根元側の上下方向距離が大きくなるように設定されている。従って、加圧用エアシリンダ装置47によって加圧用カム46を前進させると、加圧用カム46の上側は固定側カムフォロア44によって上方への移動が規制され、この結果、下側傾斜面46aが楔作用を生起して、昇降側カムフォロア43を下側に加圧する。この結果、シリンダ装置の推進力が小さくても上側可動容器11に極めて大きな推力を生じさせることができ、上側可動容器11と下側固定容器12との密着が強力に行われ、検査時における圧力容器10の高圧密封を確保する。また、このように加圧用カム46は最終的な圧力付加のみを行い、上側可動容器11の開閉動作は容器昇降手段30側に役割分担させているので、仮に加圧エアシリンダ装置47に供給されるエアが、何らかの不具合によって遮断又は開放されたとしても、微小な楔作用を生起している加圧用カム46が引き続き加圧できるので、上側可動容器11が跳ね上がるようなトラブルを回避できることになる。具体的には、この加圧カム46は、下側に2トン程度の圧力を付加することができる。
なお、加圧手段40は、メンテナンス時においては、加圧用エアシリンダ装置47が縮小作動することにより、加圧用カム46を昇降側カムフォロア43と固定側カムフォロア44とのコロ間から退避させるようにし、昇降側カムフォロア43の上昇を阻害しないようになっている。
つまり、容器昇降手段30は、上記のように加圧用カム46がコロ間から離隔した待機位置にあるときに、第3のエアシリンダ装置39を伸張することで昇降側カムフォロア43を最大に上昇させて固定側カムフォロア44側に接近させる。この結果、上側可動容器11と下側固定容器12との離間距離を最大にすることができ、圧力容器10の内部のメンテナンスに必要十分なスペースを確保している。加圧用カム46が単に加圧機能のみを有することで足りるなら、部材の上下方向に寸法が小さくて足りるが、ここでは、加圧用カム46の上下方向寸法が大きくなっている。この理由は、加圧用カム46がコロ間から離隔した待機位置にあるときに、上記のように、昇降側カムフォロア43の上昇ストロークを大きく取れるようにして、圧力容器10の内部のメンテナンスに必要十分なスペースを確保するためである。
この構成によれば、メンテナンス時には上側可動容器11を最大ストロークで上昇することにより、上側可動容器11と下側固定容器12との離間距離を大きく取れるので、上側可動容器11内に備えるプローブ73のメンテナンス、下側固定容器12に備える熱伝導プレート51のメンテナンス及び熱伝導プレート51に載置する被検体シートBの調整のための空間が確保され、メンテナンスや調整を行いやすい。
熱伝導手段50は、熱伝導プレート51と、熱移動素子の一種であるペルチェ素子52と、ヒートシンクとなる熱伝導フィン53と、液体循環手段54と、付勢手段55と、を備える。液体循環手段54は、熱伝導フィン53を冷水又は温水に浸漬する循環タンク54a、液循環パイプ54b、ポンプ54cを有しており、熱伝導フィン53を冷却又は加熱する。この結果、熱伝導手段50は、圧力容器10の内部と外部との間で熱交換を行うことが可能となる。
また本実施形態では、熱伝導プレート51とペルチェ素子52が密着状態となっている密着面(当接面)、又はペルチェ素子52と熱伝導フィン53が密着状態となっている密着面(当節面)のすくなくともいずれかが離隔可能に設けられている。
付勢手段55は、液体循環手段54の下面に設けられた複数箇所をコイルばねによって構成されており、液体循環手段54及び熱伝導フィン53を下側より保持して、ペルチェ素子52側に付勢する(押し上げる)ようになっている。このフローティング構造によって、上記離隔可能な密着面の密着をばねの付勢力によって実現することができる。
熱伝導プレート51は、例えば砲金や真鍮、アルミニウム等の金属の他、アルミナ、窒化アルミ等のセラミックなどの耐摩耗性・高熱導電性を有する材料よりなり、下側固定容器12に設けられる開口12aを閉塞するように配置される。なお、この開口12aの周囲を含む下側固定容器12は、断熱材料(例えば硬化性樹脂)によって構成されており、熱伝導プレート51の熱が下側固定容器12を通じて逃げないようになっている。
この結果、熱伝導プレート51の上にキャリアCが載置されると、熱伝導プレート51の熱が、このキャリアCを介して気圧センサA側に効率的に伝導される。ペルチェ素子52は、熱伝導プレート51の外面に密着して設けられており、該熱伝導プレート51に温熱又は冷熱を供給する。熱伝導フィン53は、ペルチェ素子52の他方の面(外側面)に密着して、熱の移動を促進する。熱伝導プレート51は、好ましくはキャリアCを案内・位置決めする段差や溝を備えることが好ましい。
キャリアCは、気圧センサAを位置決め載置する機能を有している。なお、ここではキャリアCを介して気圧センサAを間接的に加熱・冷却する場合を示しているが、例えば、気圧センサAの下面の下側部分を開放していて、気圧センサAの下面を熱伝導プレート51に直接に密着させる構成にすることも好ましい。
ペルチェ素子52は、熱伝導プレート51の下面に複数均等に配列して密着される。ペルチェ素子52は、電流を流す方向で放熱側と吸熱側が決定し、低温側(吸熱側)から高温側(放熱側)へ熱を移動する。ペルチェ素子52の動作原理は、PN接合部に電流を流すと、電流方向に見たときにN→P接合部分では吸熱現象が、P→N接合部分では放熱現象が発生することによる。従って、電流の方向を切り替えるだけでペルチェ素子52による熱伝導プレート51に対する放熱(加熱)と吸熱(冷却)を切り替えられる。なお、このペルチェ素子52の両面の温度差は相対的に生じるものであるため、このペルチェ素子52の吸熱側(冷却側)に対して熱を供給すると、放熱側の温度が上昇していく。一方、ペルチェ素子52の放熱(加熱)側の熱を奪っていくと、吸熱(冷却)側の温度が下降していく。
従って、熱伝導プレート51で気圧センサAを加熱して例えば20℃乃至80℃の範囲の所望温度で検査するときは、熱伝導手段50が液体循環手段54の温水を利用して熱伝導フィン53を暖める。この状態で、熱伝導プレート51を加熱するために、ペルチェ素子52の熱伝導プレートとの密着面が放熱面(加熱面)となるようにペルチェ素子52へ給電すれば、このペルチェ素子52の温熱が熱伝導プレート51側へ放出され、熱伝導プレート51がキャリアCを介して気圧センサAを更に加熱し、常温より高い検査温度にする。なお、ここでは液体循環手段54において温水を利用する場合を示すが、熱伝導フィン53近辺に電熱コイル等を設置して、電気的に暖めるようにしてもよい。また、ファンによって常温風を供給することで、熱伝導フィン53の冷熱を奪い取ることも可能である。
また、熱伝導プレート51で気圧センサAを冷却して例えば−10℃乃至20℃の範囲の所望温度で検査するときは、熱伝導手段50が液体循環手段54の冷水を利用して熱伝導フィン53を冷やす。この状態で、熱伝導プレート51を冷却するために、ペルチェ素子52の熱伝導プレートとの密着面が吸熱面(冷却面)となるようにペルチェ素子52へ給電すれば、ペルチェ素子52の吸熱面が熱伝導プレート51から熱を奪いとり、熱伝導プレート51が気圧センサAの熱を更に奪って常温より低い検査温度にする。なお、ここでは液体循環手段54では冷水を利用する場合を示すが、他の冷媒を利用したり、ファンによって冷風を供給したりして熱伝導フィン53を冷やすようにしても良い。
熱伝導プレート51は、ペルチェ素子52による温度制御を迅速且つ精密に行うためにも、肉厚を薄く形成する必要がある。一方、熱伝導プレート51の肉厚を薄く形成すると、圧力容器10内の圧力が上昇することで、熱伝導プレート51は外方へ湾曲することになり、熱伝導プレート51と熱伝導フィン53との間に挟まれたペルチェ素子52が、その湾曲する圧力によって破壊される恐れがある。そこで、本実施形態では、熱伝導フィン53をフローティング構造としてペルチェ素子52の圧力破壊を回避している。すなわち、熱伝導プレート51とペルチェ素子52との密着、ペルチェ素子52と熱伝導フィン53との密着のいずれか一方又は双方が離隔可能に設けられると共に、この熱伝導フィン53を、ばねを用いた付勢手段55で外部から付勢するようにして保持している。従って、付勢手段55によって熱伝導プレート51とペルチェ素子52を保持される構造となり、圧力容器10内の圧力が上昇して熱伝導プレート51が外方へ湾曲すると、熱伝導フィン53やペルチェ素子52が外方へ逃げて、この密着圧力が必要以上に上昇することを回避する。これにより、ペルチェ素子52の圧力破壊を回避しながらも、効率の良い熱伝達が可能になる。なお、ここでは、熱伝導プレート51の湾曲によってペルチェ素子52が屈曲破壊することを回避するために、熱伝導プレート51とペルチェ素子52との密着、ペルチェ素子52と熱伝導フィン53との密着のいずれか一方又は双方が離隔可能な密着面にした場合を示したが、熱伝導プレート51の湾曲に対して追従できる柔軟性を有していれば、接着状態にしても良い。
下側固定容器12は、熱伝導プレート51よりも肉厚に構成された環状部材であって、部材自身によって上側可動容器11の荷重(即ち加圧手段40の圧力)を直接受けるとともに、内周縁によって、熱伝導プレート51の外周(全周)を保持する構造になっている。従って、圧力容器10の内圧が熱伝導プレート51に作用すると、この力が、熱伝導プレート51の全周縁を介して下側固定容器12に分散され、熱伝導プレート51の湾曲を軽微に抑えることが可能になる。例えば、熱伝導プレート51を長方形にすることが好ましく、全周縁を保持することで内圧に対する剛性を高めることができる。
以上の結果、断熱空間である圧力容器10内に収容される該気圧センサAに対して検査温度に加熱するための熱を圧力容器10の外から熱を与え、または気圧センサAに対して検査温度に冷却するために気圧センサAから吸熱した熱を圧力容器10の外へ放出することができ、気圧センサAを熱効率良く検査温度に保持できる。
なお、下側固定容器12は断熱樹脂によって環状に構成されており、この中空部分を覆うように熱伝導プレート51が配置されている。従って、熱伝導プレート51の熱が、下側固定容器12から逃げない構造になっているので、より精密な温度制御が可能となる。また、下側固定容器12に対して上側可動容器11が下降した状態において、(ピン81、82を除いて)熱伝導プレート51と上側可動容器11が接触しないように微小な隙間が確保されるようになっている。このようにすることで、熱伝導プレート51の熱が上側可動容器11を介して放熱されないようになっている。
検出モジュール70は、上側可動容器11に開口したソケット取付用開口11aを閉塞するようにボルト等で着脱自在に固定され且つ絶縁性材料で構成されるブロック板71と、ブロック板71に形成されるソケット取付用孔に高耐圧密封性を有するように強制嵌合された導電性金属(例えばベリリウム)からなるピンソケット72と、このピンソケット72のプローブ取付用孔に抜き取り可能に嵌合されたプローブ73と、このブロック板71の上面を覆うように設けられて、内部圧力によるブロック板71の外部湾曲を防止する金属補強板77と、この金属補強板77の上面に設けたコード接続ソケット74と、ピンソケット72とコード接続ソケット74とを接続している導電線からなるデータ取り出し線75と、コード接続ソケット74を介して接続され、プローブ73で検出する検出信号をメモリに記憶すると共に検査プログラムを使用して検出信号が正常な値であるか否かを検査して判定する特に図示しない外部コンピュータ等からなる。なお、この電子部品検査装置100は、PCに接続したインクジェットプリンタによって、異常な値を出力した気圧センサに対して異常検出マークを印刷することが好ましい。
ピンソケット72は、有底(非貫通)のスリーブであり、ブロック板71のソケット取付用孔に圧入される。なお、圧入以外にも、Oリングや接着剤によって装着することで機密性を高めることができる。この結果、圧力容器10内の密封が確保されると共に、プローブ73を着脱自在に配置でき、ブロック板71のメンテナンスを容易に行うことが可能になる。また、予備の検出モジュール70を別途用意しておけば、プローブ73等の不具合が生じた際に、コード接続ソケット74に接続されている外部ケーブルを取り外して、検出モジュール70全体を交換することが可能になるので、メンテナンス時の装置の停止時間を大幅に短縮することが可能となっている。
プローブ73は、上側可動容器11を下降して下側固定容器12に載置したときに、各気圧センサAの端子に接触するように構成されている。従って容器昇降手段30が上側可動容器11を下降し下側固定容器12に載置する動作と同時に、該気圧センサAの出力をプローブ73で検出できる状態が確保される。例えば、通常、電子部品の出力を検査するには、各気圧センサAに対して10本〜20本程度の配線が用いられるので、複数の気圧センサAをまとめて計測するには、数十から数百本の配線が必要となる。従って、本実施形態のように、検出モジュール70を上側可動容器11に一体的に設置することで、この多量の配線を圧力容器10の外部に配置することができ、且つ、コード接続ソケット74によって、特に図示しない集合ケーブルにまとめて連結することができる。
この結果、圧力容器10の内側に配線が引き回される状態を防止でき、メンテナンスを極めて容易にすることが可能となる。更に、圧力容器10にプローブ73を直接固定しているので、圧力容器10の容積を、電子部品の収容に必要十分な程度に小さくすることができ、余分な雰囲気が低減されて、精密な温度制御が可能になる。また圧力容器10の容積を小さく構成できるので、空気による昇圧も短時間で制御でき、圧力と温度の双方の制御を相乗的に短時間で行えるようになる。
次に、上記のように構成した電子部品検査装置100の作動を説明する。
検査時の動作を説明する。まず、第3のエアシリンダ装置39を縮小状態に保持して、第1のエアシリンダ装置34と第2のエアシリンダ装置36を同時に又はいずれかを先に伸張作動してカムフォロア38を直動カム32の第1平滑部(高所平滑部)32aから第3平滑部(高所平滑部)32cに変移させて上側可動容器11を上昇させ、上側可動容器11と下側固定容器12との離間距離として25mmを確保する(図3参照)。そして、複数個の気圧センサAを並べて取着した被検体シートBが予め載置されているキャリアCを、図示しない搬入手段により、上側可動容器11と下側固定容器12との隙間に挿入して熱伝導プレート51上に位置決めする。これにより、気圧センサAが、キャリアCを介して、ペルチェ素子52を冷熱・温熱源とする熱伝導プレート51に密着し、所定の熱伝導制御によって検査温度まで次第に温度変化される。
これと同時に、第1のエアシリンダ装置34と第2のエアシリンダ装置36をいずれかを縮小作動して、カムフォロア38を直動カム32の第3平滑部32cから第2平滑部(中所平滑部)32b、第2平滑部32cから第1平滑部32aに2段階に下降変移させて、上側可動容器11を下側固定容器12に載置する(図1参照)。なお、この下降途中において、カムフォロア38を直動カム32の第3平滑部32cから第2平滑部(中所平滑部)32bに変移させたときには(図4参照)、キャリアCが熱伝導プレート51上に正確に位置決め載置されているかを検出する。これは、上側可動容器11内に垂下する複数のプローブ73を、対応する気圧センサAの出力端子に正確に接触させなければならないからである。なお、位置決めの検出は、上側可動容器11に備えた位置決めピン81及び位置決めチェックピン82が、キャリアCの位置決め用のピンホールを通るか否かで判断する。位置決めが正常であれば第2段目の下降が行われ(図1参照)、反対に異常が検出されると、図3の元の高さに復帰して検査を停止し警告を行う。
無事に下降が完了したら、次いで、加圧用エアシリンダ装置47が伸張作動することにより、加圧用カム46が昇降側カムフォロア43と固定側カムフォロア44との間に挟入されていき、加圧用カム46の下面の極めて緩い傾斜面46aによる楔作用を生起して、昇降側カムフォロア43を押し下げる。この結果、上側可動容器11を下側に加圧し、上側可動容器11と下側固定容器12との密閉を確保して圧力容器10内を耐圧空間とする。そして、熱伝導プレート51上に密着載置された被検体シートBが検査温度になるまで時間を経過させる。この経過時間は、この電子部品検査装置100に挿入する前の予熱ユニットを配置しておき、予め被検体シートBを検査温度近辺にまで温度制御しておけば、きわめて短時間とすることができる。
次いで、図示しない高圧空気供給源(コンプレッサ)からの高圧エアが供給される標準圧力発生器をONにすることで、下側固定容器12の内部を通っている吸気管84を介して、下側固定容器12に設けた高圧空気供給孔12bを通して圧力容器10内に高圧空気を供給して昇圧変化させていく。なお、この導入圧力は、特に図示しない高精度の圧力センサによって常に検出されており、このときに生じる各気圧センサAの出力端子の出力をプローブ73で検出して、上記圧力センサのデータと共に、データ取り出し線75を介して図示しないPC等に入力し、採取データをメモリに記憶するとともに、採取データをプログラムで解析して、気圧センサAが正常に機能するか否かを検査する。
検査終了後は、下側固定容器12の内部を通っている吸気管84及び高圧空気供給孔12bを介して内部の空気を瞬時に開放し、加圧用エアシリンダ装置47を縮小作動させて加圧用カム46を待機位置へ退避させる。そして、第1のエアシリンダ装置34と第2のエアシリンダ装置36が共に伸張作動して、カムフォロア38を直動カム32の第1平滑部32aから第2平滑部32bを経て第3平滑部32cまで変移させて上側可動容器11を一度に上昇させる(図3参照)。すると、図示しない搬出手段が熱伝導プレート51上に載置されているキャリアCを搬出して、検査の1サイクルを終了する。
圧力容器10内のメンテナンス時は、第1のエアシリンダ装置34と第2のエアシリンダ装置36と第3のエアシリンダ装置39を伸張作動して、昇降側カムフォロア43を固定側カムフォロア44に接近する位置まで上昇させる(図5参照)。これにより、上側可動容器11と下側固定容器12との離間距離を十分大きく確保できるので、上側可動容器11の内部及び下側固定容器12の上面エリアのメンテナンスを行うことができる。
この実施形態によれば、圧力容器10内が検査用の耐圧密閉空間となり、更にこの圧力容器10に直接熱伝導プレート51が設置されているので、搬入と同時に気圧センサAを正確な検査温度に保持することができる。また、圧力容器10内を昇圧することで、各気圧センサAの出力端子の出力を検出することもできる。特に、圧力容器10にプローブ73が直接設置されているので、開閉動作と同時に検出可能状態となり、極めて高速な検査を可能にしている。つまり、圧力容器10に気圧センサAを搬入して閉じた時点で、検査準備を整わせることが可能となっている。
更に、熱伝導プレート51を除いて熱伝導手段50を圧力容器10の外部に設けると共に、圧力容器10にプローブ73を直接固定しているので、圧力容器10の容積を、電子部品の収容に必要十分な程度に小さくすることができ、余分な雰囲気が低減されて、精密な温度制御が可能になる。また、圧力容器10が小形で簡素になるので、低コストに耐圧断熱容器を構成できる。また圧力容器10の容積が小さいので、空気によって昇圧することも短時間で行えるので、圧力と温度の双方の制御を相乗的に短時間で行えるようになる。さらに、圧力容器10が小形になるので、上側可動容器11と下側固定容器12との当接面を小さくすることができるので、圧力容器10内を高圧に保持する際に上側可動容器11に作用する反力を小さくすることができる。この結果、カムの楔作用を利用することで十分な密閉力を確保でき、油圧プレスのような大掛かりな装置が必要でないので、高耐圧性を備えた圧力容器10を低コストで容易に製造することができる。例えば、本実施形態では、100kPa〜600kPa程度の圧力に耐えることが出来る。
そして、圧力容器10が上側の上側可動容器11と下側の下側固定容器12からなるので、上側可動容器11と下側固定容器12の隙間として、被検体シートBの挿入・取り出しに必要な弱小寸法上昇させるだけで足りるので、上側可動容器11の昇降時間を短時間にすることができる。
更にこの実施形態によれば、気圧センサAをキャリアCを介して熱伝導プレート51に密着させることで、圧力空間でありながらも、ペルチェ素子52によって気圧センサAを直接又は間接的な接触によって、直接的に(即ち、空気を媒介にすることなく)温度制御でき、周囲に圧入される空気の温度影響を低減させることが可能になる。つまり、圧力と温度制御の双方にとって好適な検査状態を保持できることになる。
また、この実施形態によれば、上側可動容器11を上方待機位置から下降して中途停止し、プローブ73が被検体シートBに取着した気圧センサAの端子に接触するように対向していることを確認後に、上側可動容器11を下側固定容器12に密着するまで下降する2段階構成であるので、上側可動容器11の下降によるキャリアCや気圧センサAの破壊を回避でき、プローブ73と気圧センサAの位置ずれによって生じる気圧センサAの検査エラーを防止できる。
更に、この実施形態によれば、上側可動容器11を下降して下側固定容器12に重ね合わせて密閉状態にするだけでプローブ73を気圧センサAの端子に接触するので、直ぐに圧力容器10内を昇圧していくことができる。また、上側可動容器11が逆さ鍋形であることで内部空間を高く取れることから、プローブ73をその内壁に直接備えることができる。同様に、該上側可動容器11を上昇すると、プローブ73が上側可動容器11内に位置して一体に上昇するので、下側固定容器12に位置決めした電子部品の搬出を即座に行うことが可能になり、プローブ73の破壊も低減できる。この結果、搬送ラインの自動化が達成され、メンテナンスも行い易い。特に、上側可動容器11によってプローブ73が一体的に保持されており、圧力容器10の周壁に摺動部分等が不要になるので、機密性を高めることが可能となる。この結果、内圧が安定するので、検査精度を高めることができるようになる。
更にまた、本実施形態によれば、長期使用期間によって、複数のプローブ73の一部が気圧センサAの端子との接触で磨耗しても、ブロック板71を外してプローブ73の先端を見た場合に、例えば光沢が出ないプローブは接触が悪いことが分かり、また光沢が出過ぎて変形を伴うプローブも接触状況が良くない事が分かるので、特性の悪いプローブ73だけを取り外して新しいプローブ73と交換したり、プローブ73の高さ調整を容易に行うことが可能になる。また、プローブ73を交換する際にも、ブロック板71自体の交換は不要になるので、低コストの操業が可能になる。また、急を要する場合は、検出モジュール70全体を極めて短時間で交換できるので、プローブ73のメンテナンス作業を別の場所で行うことも可能になり、検査効率を飛躍的に向上させることが可能となっている。
なお、検査効率を一層高めるには、図6に示されるように、電子部品検査システム300として、上記電子部品検査装置100をライン方向に複数台(ここでは3台)配置して、各電子部品検査装置100の上流側に予熱ユニット200を配置する。この結果、気圧センサAが、例えば20℃、80℃、及び−10℃の各検査温度において出力する値の正常、異常を次々に短時間に判別検査することができる。そして、1番目の電子部品検査装置100は気圧センサAを例えば検査温度を20℃に保ち、2番目の電子部品検査装置100は気圧センサAを例えば検査温度を80℃に保ち、3番目の電子部品検査装置100は気圧センサAを例えば検査温度を−10℃に保つ構成とする。さらに、予熱ユニット100は、3つの電子部品検査装置100のそれぞれの手前でキャリアCにセットされた気圧センサAを、20℃、80℃、又は−10℃前後に予め制御する。この結果、各電子部品検査装置100の圧力容器10に、予熱された気圧センサAを搬入して圧力容器10を密閉することになるので、気圧センサAを短時間に20℃、80℃、又は−10℃の各検査温度に平衡させることができ、よりリアルタイムで各気圧センサAを検査することができる。このように、3つの電子部品検査装置100で20℃、80℃、及び−10℃の検査温度の一つを分担して温度特性検査を行う本電子部品検査システム300では、きわめて高い検査効率が得られる。
また、複数の固定圧力下において、温度を変化させた際の電子部品の出力を検査する場合においても、電子部品検査システム300を用いることが好ましい。例えば、1番目の電子部品検査装置100では圧力を100kPaに維持して、電子部品の温度を変化させながら検査を行い、2番目の電子部品検査装置100では圧力を300kPaに維持して検査を行い、第3の電子部品検査装置100では圧力を400kPaにして検査を行うようにすることも可能である。
上記実施形態では、熱伝導フィンを水で冷却し又は温水で加熱する水又は温水の循環手段を具備しているが、熱伝導フィンに冷風、常温風、熱風等を吹付ける構成でもよい。
本発明の技術的範囲は、上記実施形態に限られるものではなく、その趣旨及び技術思想を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。