JP4591900B2 - Ti−Al系金属間化合物板の製造方法 - Google Patents

Ti−Al系金属間化合物板の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明が属する技術分野】
本発明は、軽量耐熱材料等として好適なTi−Al系金属間化合物板の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
TiAlおよびTi3Al の2相組織を有するTi−Al系金属間化合物は軽量耐熱材料として期待される材料であり、その金属間化合物板は様々な用途に利用可能である。
【0003】
Ti−Al系合金をアーク溶解し、鋳造し、その鋳塊を圧延する溶解圧延法によってTi−Al系金属間化合物板を製造することが試みられているが、Ti−Al系合金は酸化し易く延性に乏しいため、その製造方法は未だ実験段階に止まっており、現在のところ工業的生産可能な実用性のあるTi−Al系金属間化合物板は得られていない。
【0004】
また、Ti−Al系金属間化合物の製造方法として、Ti粉末とAl粉末との混合粉末を製品形状に近似した形状に圧粉成形して固相拡散によって焼結する粉末冶金法も試みられているが、高価なTi粉末を必要とし、生産性に劣り、そもそも大面積の板材の製造には適さない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記のように、溶解圧延法も粉末冶金法も、Ti−Al系金属間化合物板を工業的に製造するには不適当であり、実用段階に至っていない。
【0006】
なお、特開平7−54068号公報には、Ni箔とTi箔とを交互に積層した積層体を圧下し、この圧下積層材に固相拡散熱処理、液相拡散熱処理を施してNi−Ti金属間化合物板を製造する方法が記載されているが、単相組織であるNi−Ti金属間化合物とTi3Al とTiAlとの2相組織であるTi−Al系金属間化合物とは組織が本質的に異なり、また前記公報には高融点のTiと低融点のAlとを素材としてTi−Al系金属間化合物板を製造する点について記載、示唆されるところはない。
【0007】
本発明はかかる問題に鑑みなされたものであり、工業的生産方法として実用性に優れたTi−Al系金属間化合物板の製造方法を提供することを目的とする。この目的は下記の発明によって達成される。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明のTi−Al系金属間化合物板の製造方法は、請求項1に記載したように、厚さ方向の平均組成がat%でTi:65〜52%、Al:48〜35%とされ、TiからなるTi層とAlからなるAl層とが交互に積層された積層体を圧延接合により作製する圧延接合工程と、全圧下率を3%以上として連続的あるいは間欠的に加圧しながら630〜500℃の温度に加熱保持し前記Ti層のTiと前記Al層のAlとを反応させてAl3Ti を生成させ、未反応のTiからなる残存Ti層と前記Al3TiからなるAl3Ti層とが積層された第1反応積層体を形成する第1固相拡散熱処理と、前記第1反応積層体を800℃以上、882℃未満の温度に加熱保持してTi3Al とTiAlとを主相とする2相組織を形成する第2固相拡散熱処理とを備える。
【0009】
この発明によると、圧延接合により積層体を作製するので、通常の圧延設備により表面積の大きい板状の積層材を容易に得ることができ、引いては第1固相拡散熱処理、第2固相拡散熱処理を施すことで大面積のTi−Al系金属間化合物板を容易に製造することができる。
ところで、Al層のAlとTi層のTiとが反応してAl3Ti を生成する際、カーケンドール効果による空隙(ボイド)のほか、Ti、Alおよび Al3Tiの各結晶構造の相違に基づき3%程度の体積減少が生じ、多量の空隙が発生し、著しい場合には剥離が生じる。このため、単にAlの融点未満の温度で固相拡散熱処理を行っても、空隙のために反応が抑制されて未反応のAlが残存するようになる。残存Alがあると、第2固相拡散熱処理の際に、残存Alが積層体から流出してTi−Al系金属間化合物が得られない。本発明では、 Al3Tiを生成させる第1固相拡散熱処理の際に、積層体の体積率を3%以上縮小すべく全圧下率を3%以上、好ましくは5%以上として連続的あるいは間欠的に加圧しながら前記積層体をAlの融点未満の温度に加熱保持する。その結果、空隙の生成を抑制ないし防止しつつ、残存Ti層と Al3Ti層とが積層された第1反応積層体を容易に形成することができる。この第1反応積層体にはAlが実質的に含まれないので、第1固相拡散熱処理後の第2固相拡散熱処理においてはAlの融点以上の高温に加熱保持することができ、 Ti3Al相とTiAl相とを主相とする2相組織からなるTi−Al系金属間化合物板を容易かつ効率よく製造することができる。
【0010】
また、前記第2固相拡散熱処理は、請求項2に記載したように、前記第1反応積層体を800℃以上、882℃未満の温度に加熱保持して前記残存Ti層のTiと前記Al3Ti層のAl3Tiとを反応させて Ti3AlとTiAlとを生成させ、このTi3Alを主相とするTi3Al層と前記TiAlを主相とするTiAl層とが積層された第2反応積層体を形成する熱処理とすることができる。
前記第2固相拡散熱処理の際の加熱保持温度が882℃未満である、残存Ti(αTi)が結晶構造の全く異なるβTiに変態して成長することがない。したがって特定の結晶面の配向を板面にほぼ平行に保持したまま Ti3Al層とTiAl層とが層状に積層された構造の第2反応積層体を容易に得ることができる。この第2反応積層体は、層状構造を有し、各層の結晶配向が概ね板面に平行である故に良好な機械的性質を有するTi−Al系金属間化合物板として用いることができる。
【0011】
また、請求項3に記載したように、前記第2反応積層体をαTi単相温度域で加熱保持して前記第2反応積層体の各相をαTi相に変態させた後冷却する第3固相拡散熱処理を行うことにより、組織中の空隙量を減少させることができる。また、板厚方向のほぼ全域にわたり板面にほぼ平行に配向した Ti3Al/TiAlラメラを主体とする Ti3Al/TiAlラメラ粒組織からなるTi−Al系金属間化合物板を容易に得ることができる。この金属間化合物板は、その結晶構造の故に板面方向の機械的性質に優れる。
【0012】
また、請求項4に記載したように、前記第2反応積層体を 960℃以上、Ti3AlとTiAlとの共析変態点未満の温度に加熱保持する第4固相拡散熱処理を施すことにより、結晶の配向や層状組織を保持しつつ、組織中の空隙を減少させた機械的性質の良好なTi−Al系金属間化合物板を容易に得ることができる。
【0013】
また、前記第2固相拡散熱処理として、請求項5に記載したように、前記第1反応積層体をαTi単相温度域で加熱保持して前記第1反応積層体の各相をαTi相に変態させ、その後冷却することにより、残存Tiが一旦βTiに変態するため結晶の配向がランダム化し、従って共析変態により生成した Ti3Al/TiAlラメラの配向もランダム化するものの、 Ti3Al/TiAlラメラ結晶粒組織を有するTi−Al系金属間化合物板を容易に製造することができる。
【0014】
また、請求項6に記載したように、前記積層体を中心層に対してTi層あるいはAl層が対称に配置された奇数層からなる構造とすることで、TiとAlとの熱膨張率差に起因した熱変形を防止することができ、熱変形に起因した製造トラブルを防止して生産性を向上させることができる。この場合、最外層をTi層とすることで、すべてのAl層はTi層によって挟持された状態となるので、第1固相拡散熱処理の際に全Al層のAlを無理なく反応させて Al3Tiを生成させることができ、未反応Alの残存を防止することができる。また、万一、未反応のAlが残存しても、高温熱処理の際にその流出を防止することができ、所期のTi−Al系金属間化合物板の製造歩留まりを向上させることができる。
【0015】
本発明のTi−Al系金属間化合物板は、請求項7に記載したように、板厚方向のほぼ全域が実質的に Ti3Al/TiAlラメラ粒組織からなり、前記ラメラ粒組織は板面にほぼ平行に配向した Ti3Al/TiAlラメラを主体とするものであるので、板面方向の機械的性質に優れる。
【0016】
上記本発明の製造方法により製造したTi−Al系金属間化合物板は、T3Al相を主相とするTi3Al層とTiAl相を主相とするTiAl層とが板厚方向にマクロ的に積層されたものであるので、板厚の内部が均質な従来の金属間化合物板に比して良好な機械的性質を備える。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のTi−Al系金属間化合物板の製造方法およびこの製造方法によって得られたTi−Al系金属間化合物板について詳細に説明する。
【0018】
本発明の製造方法を実施するには、まず、圧延接合工程によりTiからなるTi層とAlからなるAl層とが交互に積層された積層体を作製する。前記圧延接合工程は、Ti薄板とAl薄板とを適宜の枚数を重ねて圧延接合して複数層の積層素材を得て、さらにTi層とAl層とが交互に配置されるように前記積層素材を適宜数重ね合わせて圧延接合するものである。圧延接合は、冷間で行えばよく、1回の圧延当たりの圧下率は20〜60%、好ましくは25〜50%程度で行えばよい。圧延接合後は各層の接合強度を向上させるために、積層素材あるいはその接合材をアルゴンガス等の不活性ガス雰囲気中でAlの融点以下の温度、例えば600℃程度で数分〜十数分程度の拡散焼鈍を行うようにするのがよい。
【0019】
前記積層体の各層の厚さは、層厚が薄すぎると圧延接合工程における後述の拡散焼鈍の際に燃焼反応が生じるようになるので、2μm 以上、好ましくは5μm 以上にするのがよい。一方、厚すぎると後述する固相拡散熱処理に長時間を要し、工業的生産性を損なうようになるので、50μm 以下、好ましくは30μm 以下にするのがよい。なお、圧延接合工程の途中あるいは後に適宜冷間圧延を施すことによって、前記積層体の各層の厚さを調整することができる。
【0020】
前記積層体のTi層、Al層の各層数は任意に設定することができるが、積層体の厚さ方向(積層方向)において Ti3AlとTiAlとの2相組織が得られるようにTi−Al組成を設定する必要がある。2相組織が得られる平均組成としては、at%でTi:65〜52%、好ましくは60〜52%程度(残部Al)である。
【0021】
もっとも、前記積層体の層数は、好ましくは奇数とし、最外層にTi層が来るようにするのがよい。このように、中心層を中心として厚さ方向に対称にTi層、Al層を配置することで、後述の固相拡散熱処理の際に熱膨張率差に起因した反り等の熱変形を防止することができる。また、Al層は必ずTi層に挟持されるので後述の第1固相拡散熱処理の際にTiと容易確実に反応するようになり、未反応のAlの残存を防止することができる。また、万一、未反応のAlが残存しても、高温熱処理の際にその流出を防止することができる。
【0022】
圧延接合工程により作製された積層体は、次に第1固相拡散熱処理が施される。この第1固相拡散熱処理は、Alの融点未満の温度、好ましくは630〜500℃、より好ましくは620〜550℃程度の温度で、40min 〜10hr程度保持して、前記積層体のTi層のTiとAl層のAlとを反応させて、基本的にAlが無くなるまで Al3Tiを生成させる処理である。例えば、平均組成をTi−45at%Alとする場合、下記式によって全AlとTiとが反応して Al3Tiが生成し、未反応のTiが残存する。結局、第1固相拡散熱処理によって、残存TiからなるTi層とAl3Ti相からなるAl3Ti層とが積層した第1反応積層体が得られる。
55Ti+45Al→40Ti+15Al3Ti
【0023】
ところで、Ti、Al、Al3Ti の結晶構造から格子定数を考慮して体積変化を計算すると、Al3Ti が生成する際の反応では体積減少が起こり、前記例示組成の場合では、その減少率は3.2%になる。カーケンドール効果のほか前記体積変化により残存Ti層に沿って多量の空隙(ボイド)が形成され、前記拡散反応が阻止されるようになる。また、著しい場合には層の剥離をも招来する。前記体積減少率3.2%はTi−45at%Alの場合であるが、Ti3Al とTiAlとの2相組織が得られる成分範囲については概ね3〜4%程度の空隙が形成されると考えられる。なお、前記体積率の減少量は、Al層、Ti層は厚さ方向に積層されているので、板厚方向の減少率として考えることができる。
【0024】
このため、本発明では、第1固相拡散熱処理の際に、Al3Ti が生成する際に形成される空隙を排除すべく、全圧下率を3%以上、好ましくは5%以上として積層体を連続的あるいは間欠的に圧下する。これによって空隙が排除され、Al3Ti の生成反応が促進される。前記第1固相拡散熱処理の際の圧下方法としては、熱処理の途中に積層体に数%ないし十数%程度の軽圧下を数回以上、好ましくは数分ないし数十分間隔で付与してもよく、あるいは積層体に10〜70MPa程度の圧縮荷重を常時付加するようにしてもよい。なお、圧下率(%)は(板厚減少量)/(初期板厚)×100を意味する。
【0025】
次に、前記第1固相拡散熱処理によって得られた第1反応積層体に対してTi3Al とTiAlとを主相とする2相組織を形成する第2固相拡散熱処理を施す。先の組成例で説明すると、この第2固相拡散熱処理における反応は下記式にて表すことができる。なお、この反応では相全体の体積は2%程度の増加になる。
40Ti+15Al3Ti →5Ti3Al +40TiAl
【0026】
この第2固相拡散熱処理として、前記第1反応積層体を882℃未満の温度に加熱保持して前記残存Ti層のTiと前記Al3Ti層のAl3Tiとを反応させてTi3AlとTiAlとを生成させ、この Ti3Alを主相とするTi3Al層と前記TiAlを主相とするTiAl層とが積層された第2反応積層体を形成する熱処理を採ることができる。
【0027】
この熱処理の特徴は、図1のTi−Al二元系状態図中に記したT1線から理解されるように、残存Ti(αTi)をβTiに変態させることなく、前記2相組織を得ることができる点にある。αTiから結晶構造が著しく異なるβTiに変態すると、結晶の配向が乱れ、また粒成長を起こして粗大化するが、この熱処理によれば結晶粒を粗大化させることなく、αTiの結晶の配向(多くは板面にほぼ平行になっている。)を維持したまま2相組織を得ることができる。しかも、主に残存Tiのある部分からTi3Al相が生成しAl3Tiの部分からAlTi相を生成するため、マクロ的に Ti3Al層とTiAl層とが積層した層状構造の第2反応積層体を得ることができる。すなわち、この積層体は、その層状構造と結晶面の配向のために、板面方向の機械的性質が良好となる。なお、この第2反応積層体は本発明のTi−Al系金属間化合物の一態様をなすものである。
【0028】
前記第2固相拡散熱処理の加熱保持は、酸化防止のために真空中で行うことが好ましい。また、加熱保持温度は、αTiがβTiに変態しないようにするためには882℃未満に設定すればよいが、処理の安定性を考慮すると好ましくは870℃以下、より好ましくは860℃以下にするのがよい。また、固相拡散の効率を考慮すると、800℃以上に設定することが好ましい。加熱保持時間は、800℃以上の温度で加熱保持する場合、15〜25hr程度とすればよい。
【0029】
本発明においては、前記第2固相拡散熱処理によって得られた第2反応積層体をさらにαTi単相温度域で加熱保持して前記第2反応積層体の各相を一旦αTi相に変態させ、その後冷却する第3固相拡散熱処理を施すことができる。加熱温度は要はαTi単相組織が得られる温度であればよく、その上限は液相が生じることなく、またβTi相が生じない温度であればよい。加熱保持は酸化防止のために真空中で行うことが好ましく、また保持時間は、全組織をαTi単相組織に変態させるとともに結晶粒の粗大化が生じないように、5〜15hr程度が好ましい。
【0030】
この第3固相拡散熱処理を施すことで、図1のT2線で示すように、一旦αTiに変態した後、共析変態点(1118℃)を通過する際に共析変態を起こして、Ti3Al とTiAlとがミクロ的に層状のラメラ粒組織となり、しかも多くのラメラの配向が板面にほぼ平行になるため、板面方向に優れた機械的性質を有するTi−Al系金属間化合物板を得ることができる。また、第2反応積層体に中間反応生成物(例えば、Al2Ti )や未反応Tiが一部残存する場合においても、これらを完全にTi3Al やTiAlに反応させることができ、また残存した空隙をより減少ないし消失させることができ、金属間化合物の品質を向上させることができる。なお、過共析組成の場合、αTiから温度の低下に従って初析TiAl(γ)が生成するが、このγ相はラメラ状に析出してくることが本発明者によって確かめられている。
【0031】
前記第2反応積層体に対する熱処理としては、上記の第3固相拡散熱処理に限らず、図1のT3線で示すように第2反応積層体をTi3Al とTiAlとの共析変態点(1118℃)未満あるいはαTiとTiAl(γ)との共存温度域の温度で加熱保持する第4固相拡散熱処理を施すこともできる。加熱保持温度は、反応の促進からは高い方がよいため、下限は960℃、より望ましくは1000℃程度とすることが好ましい。もっとも、αTiとγとの共存温度域は高温領域まで及ぶので、結晶粒の粗大化防止、マクロ的積層構造の維持の観点からは共析変態点未満の温度で処理することが好ましい。この第4固相拡散熱処理における加熱保持も真空中で行うことが好ましく、また保持時間は結晶粒の粗大化が生じないように10〜25hr程度が好ましい。この第4固相拡散熱処理によって、第2反応積層体の層状構造や結晶の板面方向の配向をある程度維持したまま、中間反応生成物等が生じることが無く、空隙も減少ないし消失した高品質の金属間化合物を得ることができる。
【0032】
上記第3、第4固相拡散熱処理は、第2固相拡散熱処理を施して得られたTi3Al相 とTiAl相とを主相とする第2反応積層体に対する熱処理を示すものである。これに対し、第2固相拡散熱処理としては、第1反応積層体を882℃未満の温度で加熱保持することなく、Ti3Al とTiAlとの共析変態点超のαTi単相温度域の温度で加熱保持後冷却する熱処理(α熱処理と呼ぶ。)としてもよく、あるいは第1反応積層体を共析変態点未満あるいはαTiとγとの共存温度域の温度で加熱保持後冷却する熱処理(β熱処理と呼ぶ。)としてもよい。対象とする反応積層体は異なるが、熱処理方法の考え方としては、α熱処理は前記第3固相拡散熱処理に対応し、β熱処理は前記第4固相拡散熱処理に対応した熱処理であり、その加熱温度、時間については前記第3、第4固相拡散熱処理と同様に設定することができる。もっとも、α熱処理の場合、Al3Ti が液相にならないように1387℃未満の温度で加熱保持する必要がある。
【0033】
前記α熱処理、β熱処理の場合、結晶粒が粗大化し、残存Ti(αTi相)がβTi相に一旦変態するため板面に平行な結晶の配向も損なわれることになるが、Ti3Al とTiAlとを主相とする2相組織を有するTi−Al系金属間化合物板を容易に得ることができる。
【0034】
以下、実施例によって本発明をさらに説明するが、本発明はかかる実施例によって限定的に解釈されるものではない。
【0035】
【実施例】
実施例1
(1) 圧延接合工程
純Ti板と純Al板の表面を金属ブラシを用いて粗く削った後、削った面どうしを重ね合わせて圧下率30%にて冷間圧延を行い、その後、Ti層とAl層とが圧接された複合材をアルゴン雰囲気中で600℃、10分間の拡散焼鈍を行い、両層が密着した2層素材を得た。この2層素材をTi層とAl層とが交互に重なるように3枚重ね合わせて圧延接合し、拡散焼鈍することで6層素材を得た。最終的にTi層とAl層とが交互に重ね合わされ、両最外層がTi層となるように55層からなる積層体を作製した。その際、積層体の平均組成がTi−45.5at%Alとなるように板厚をTi板:0.25mm、Al板:0.20mmとした。また、最終的に得られた積層体のTi層の平均厚さは17μm 、Al層の平均厚さは13μm であった。
【0036】
(2) 第1固相拡散熱処理
前記55層の積層体に対して、600℃で合計1hr加熱保持した。この際、図2に示すように、圧下率10〜3%の熱間圧延を10分間隔で6回行った。この熱処理によって得られた第1反応積層体のマクロ的断面組織をSEMにより観察した。その結果を図3に示す。EPMAによる分析からAlは完全に反応していることが確かめられたので、観察される層はAl3TiからなるAl3Ti層と未反応のTiからなる残存Ti層であることがわかった。また、板面方向に伸びる線状の空隙が認められた。
【0037】
(3) 第2固相拡散熱処理
前記第1反応積層体を真空中で850℃にて20hr保持した。この際、積層体に熱変形(反り)が生じるのを防止するため、ステンレス片の重りをセラミック板を介して第1反応積層体に載置した。前記積層体にかかる圧縮応力は3kPa程度であった。前記セラミック板は、重りと第1反応積層体との反応を防ぐためのものである。この熱処理によって得られた第2反応積層体の断面組織をSEMにより観察した。その結果を図4に示す。第2反応積層体は、主にTiAl相と Ti3Al相とが厚さ方向に積層された構造を示しているが、微量のTl、Al2Tiが残存しており、また微細な空隙が観察された。
【0038】
(4) 第3固相拡散熱処理、第4固相拡散熱処理
前記第2反応積層体を真空中で1300℃にて10hr保持し、徐冷した(第3固相拡散熱処理)。この熱処理によって得られた金属間化合物板のミクロ的断面組織をSEMにより観察した。その結果を図5に示す。図5に示されるように、ラメラが板面にほぼ平行に配向したTiAl(γ)/Ti3Al(α2)ラメラ組織粒が観察された。また、空隙については、第2反応積層体に比して線状の空隙は無くなり、空隙量も少なかった。
一方、前記第2反応積層体を真空中で1100℃にて10hr保持後、徐冷した(第4固相拡散熱処理)。この熱処理によって得られた金属間化合物板のマクロ的断面組織をSEMにより観察した。この観察結果を図6に示す。図6より、板厚方向の積層構造は第2反応積層体よりも崩れたものの、マクロ的には全体として積層構造が維持されていた。また、空隙については、表面近傍には比較的多く観察されるものの、内部には微細な空隙しか観察されなかった。
【0039】
実施例2
(1) 圧延接合工程
前記実施例1と同様にして、55層からなる積層体を作製した。
【0040】
(2) 第1固相拡散熱処理
前記55層の積層体に対して、真空中で50MPaの圧縮応力を付加して600℃にて5hr加熱保持した。
【0041】
(3) 第2固相拡散熱処理
引き続いて、第1反応積層体を850℃にて20hr保持した。この際、圧縮応力を50MPaから10MPaに減少させ、その後10MPaで保持した。平均圧縮応力は22MPaであった。この結果得られた第2反応積層体は、マクロ的には層状構造をしており、空隙はほとんど観察されず、局所的にわずかな線状の空隙が見られる程度であった。また、EPMA分析により、観察される相は、主相がTi3AlとTiAlとであったが、一部Ti、Al3Ti、Al2Ti も認められ、第1実施例の第2反応積層体に比して反応が遅かった。これは、TiとTi3Al の2相が生成する際に生じる体積増加を圧縮荷重によって抑制したためと推測される。従って、圧縮荷重の付加は、第1固相拡散熱処理の段階で十分であり、第2固相拡散熱処理においては積層体の反り発生を防止する程度の軽荷重の付加に止めることが有効である。
【0042】
(4) 第3固相拡散熱処理
前記第2反応積層体を真空中で1300℃にて10hr保持後、徐冷した。得られた積層体の断面をSEMにて組織観察した結果、フルラメラ組織が観察され、空隙量も非常に微量であり、健全性に優れた金属間化合物板が得られらた。
【0043】
【発明の効果】
本発明の製造方法によれば、通常の圧延設備を用いて、Ti−Al系金属間化合物板を容易かつ効率的に製造することができ、工業的製造方法として優れる。また、本発明により製造されたTi−Al系金属間化合物板は、板面方向の機械的性質が良好であり、実用性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】Ti−Al二元系状態図である。
【図2】実施例1の第1固相拡散熱処理における積層体に対する圧下状態を示す温度−時間図である。
【図3】実施例1の第1固相拡散熱処理後の反応積層体のマクロ的断面組織を示す図面代用SEM組織写真である。
【図4】実施例1の第2固相拡散熱処理後の反応積層体のマクロ的断面組織を示す図面代用SEM組織写真である。
【図5】実施例1の第3固相拡散熱処理後の反応積層体のミクロ的断面組織を示す図面代用SEM組織写真である。
【図6】実施例1の第4固相拡散熱処理後の反応積層体のマクロ的断面組織を示す図面代用SEM組織写真である。

Claims (6)

  1. 厚さ方向の平均組成がat%でTi:65〜52%、Al:48〜35%とされ、TiからなるTi層とAlからなるAl層とが交互に積層された積層体を圧延接合により作製する圧延接合工程と、
    全圧下率を3%以上として連続的あるいは間欠的に加圧しながら630〜500℃の温度に加熱保持し前記Ti層のTiと前記Al層のAlとを反応させてAl3Ti を生成させ、未反応のTiからなる残存Ti層と前記Al3Ti からなるAl3Ti層 とが積層された第1反応積層体を形成する第1固相拡散熱処理と、
    前記第1反応積層体を800℃以上、882℃未満の温度に加熱保持して Ti3AlとTiAlとを主相とする2相組織を形成する第2固相拡散熱処理とを備えたTi−Al系金属間化合物板の製造方法。
  2. 前記第2固相拡散熱処理では、前記第1反応積層体を800℃以上、882℃未満の温度に加熱保持して前記残存Ti層のTiと前記Al3Ti層のAl3Tiとを反応させてTi3AlとTiAlとを生成させ、このTi3Alを主相とする Ti3Al層と前記TiAlを主相とするTiAl層とが積層された第2反応積層体を形成する請求項1に記載したTi−Al系金属間化合物板の製造方法。
  3. 前記第2反応積層体を Ti3AlとTiAlの共析変態点超のαTi単相温度域で加熱保持して前記第2反応積層体の各相をαTi相に変態させ、その後冷却する第3固相拡散熱処理をさらに備えた請求項2に記載したTi−Al系金属間化合物板の製造方法。
  4. 前記第2反応積層体を 960℃以上、Ti3AlとTiAlとの共析変態点未満の温度に加熱保持する第4固相拡散熱処理をさらに備えた請求項2に記載したTi−Al系金属間化合物板の製造方法。
  5. 前記第2固相拡散熱処理として、前記第1反応積層体をTi3Al とTiAlの共析変態点超のαTi単相温度域で加熱保持して前記第1反応積層体の各相をαTi相に変態させる熱処理を行い、その後冷却する請求項1に記載したTi−Al系金属間化合物板の製造方法。
  6. 前記積層体は、奇数層からなり、中心層に対してTi層あるいはAl層が対称に配置された請求項1〜5のいずれか1項に記載したTi−Al系金属間化合物板の製造方法。
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