JP4588255B2 - 自己始動リラクタンスモータの回転子 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、リラクタンストルクを利用した同期電動機であり、特に回転子に始動用2次導体(フラックスバリア)を設けることで自己始動可能としたリラクタンスモータに関し、特に種々の課題を解決可能な自己始動リラクタンスモータの回転子の構造に関するするものである。
【0002】
【従来の技術】
回転子に磁気的な突極構造を持ち、固定子の進行磁界に同期して回転するいわゆるリラクタンスモータは、反作用モータ、あるいは同期リラクタンスモータとして一般に知られている。そして、近年は磁気的な突極を極限にまで高めるために回転子に多層のスリット構造をもたせることで、誘導電動機を上回る高効率モータとして注目されている。
【0003】
しかし、このような構造のリラクタンスモータは同期モータであるために回転子位置に応じて固定子巻き線の電流位相を制御することが必要であり、一般にインバータによって駆動される。一方、インバータ以外の始動方法として、例えば特開平11−146615号公報に記載されるモータのように、回転子に誘導のための始動用2次導体を設ける方法が提案されている。
【0004】
さらには、これとは別に従来のリラクタンスモータにおける課題としてスリットの配置を適当に選ばない場合には、同期運転時におけるトルクリップルが発生して、これが負荷と共振するなどして振動騒音の要因となる問題があった。この点に関しては、上述の従来例においては、回転子スキューを施してトルクリップルを低減する方法が示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ファン、ポンプ、コンプレッサなど従来誘導モータが用いられてきた一般産業用モータに、このような構造のリラクタンスモータを適用する為には、回転子位置に応じて電圧を制御するインバータを用いる方法が一般的である。しかし、インバータを用いるとコストが増加するだけでなくインバータ損失の発生によって総合効率が低下してしまう問題がある。したがって、このような構造のリラクタンスモータにおいても、誘導電動機と同様に、インバータを使用しないでも定格速度で運転できることが望ましく、商用電源にて同期速度まで加速して同期運転できることが望ましい。
【0006】
これに対して、上述の従来例である特開平11−146615号公報には、棒状導体をスリット部の外周付近に配置する方法が提案されている。このようにして、誘導始動を可能とするリラクタンスモータが提案されているが、このような棒状導体をスリット部の外周付近に配置する方法では、負荷と慣性によって同期引き入れができない領域があるので問題であった。同期引き入れせずに非同期で運転されるリラクタンスモータは振動が大きくて効率が低く一般産業用途に適さない。
【0007】
そして、特に、このような多層スリット構造のリラクタンスモータは、回転子の磁気的な突極性が高いために慣性の大きな負荷に対しては引き入れ能力が低下してしまう問題がある。さらには、誘導電動機と同一枠番で自己始動リラクタンスモータを構成すると負荷の慣性が回転子慣性と同程度を超えると定格トルク負荷に対する同期引き入れが困難になる問題がある。
【0008】
これらの課題から単純に棒状導体をスリット部の外周付近に配置したとしても、その適用範囲は比較的慣性の小さな用途に限られるために、商用電源にて直接駆動するモータとして一般産業用に広く適用することは困難であるという課題があった。
【0009】
また、このような多層スリット構造のリラクタンスモータを一般作業用モータとして適用することを考えた場合のさらなる課題として、量産性と低振動の両立がある。
【0010】
すなわち、量産を考えた場合には、コスト面から、回転子に設ける始動用の2次導体をアルミダイキャストによって作成することが望ましい。そして、ダイキャスト時の生産性を考えた場合には、微小なスリット幅とすると溶融アルミを回転子に流動させる際の圧損が大きくなり量産性が低下する。したがって現実的には、回転子に配置できるスリットの数は少なく配置することが望ましい。
【0011】
しかし、スリット数が少ないと固定子スロットと回転子の間の磁気的な相互作用によってトルクリップルが大きくなって振動騒音を発生する。これを避ける案として、上述の従来例においては、回転子にスキューを採用する方法が開示されているが、回転子の磁気的な突極性が低下すること、さらには回転子表面部分を周方向に渡って流れる渦電流による損失いわゆる横流損失が生じるなどしてモータの効率・力率が低下する問題があり、そのため、量産性と振動と効率・力率すべてを兼ね備えた誘導始動するリラクタンスモータを得ることは従来困難であった。
【0012】
この発明は、このような課題を解決するためになされたもので、誘導電動機と同じサイズで作製した場合においても、回転子慣性より大きな慣性を有する負荷に対しても商用電源直入れによって自己始動が可能であると同時に、同一サイズで作成した誘導電動機よりも高い効率を有し、さらにトルクリップルが小さいという全てのを得ることを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
この発明に係る自己始動リラクタンスモータの回転子は、36個のスロットが形成された固定子鉄心、及び固定子鉄心に3相巻きに巻回された巻き線を有し、4極の進行磁界を発生する固定子に対向して設けられ、ロータ中央方向に対して凸形をなす形状の1極に対して5層のフラックスバリアスリットが設けられ、フラックスバリアスリット内に非磁性導電性材料が注入されて2次導体が形成されている自己始動リラクタンスモータの回転子であって、
回転子の断面形状は、回転子の外周部が全周を44等分割され1極に対して11となる位置おいて、5層のフラックスバリアスリットのうち回転子中央軸側に位置する4層のフラックスバリアスリットは、11の位置の外側どうしの2位置を順次結ぶように形成されるとともに、磁気的に非突極方向でかつ外周側に形成された残る1層のフラックスバリアスリットは、11の位置の中央の3位置を結合するように形成され、結合されたフラックスバリアスリットの極弧幅角が概略16度に設定されている。
【0014】
また、この発明に係る自己始動リラクタンスモータの回転子は、48個のスロットが形成された固定子鉄心、及び固定子鉄心に3相巻きに巻回された巻き線を有し、4極の進行磁界を発生する固定子に対向して設けられ、ロータ中央方向に対して凸形をなす形状の1極に対して6層のフラックスバリアスリットが設けられ、フラックスバリアスリット内に非磁性導電性材料が注入されて2次導体が形成されている自己始動リラクタンスモータの回転子であって、
回転子の断面形状は、回転子の外周部が全周を56等分割され1極に対して14となる位置おいて、6層のフラックスバリアスリットのうち回転子中央軸側に位置する5層のフラックスバリアスリットは、14の位置のうち外側どうしの2位置を順次結ぶように形成されるとともに、磁気的に非突極方向でかつ外周側に形成された残る1層のフラックスバリアスリットは、14の位置のうち中央の4位置を結合するように形成され、結合されたフラックスバリアスリットの極弧幅角が概略26度に設定されている。
【0015】
また、この発明に係る自己始動リラクタンスモータの回転子は、48個のスロットが形成された固定子鉄心、及び固定子鉄心に3相巻きに巻回された巻き線を有し、4極の進行磁界を発生する固定子に対向して設けられ、ロータ中央方向に対して凸形をなす形状の1極に対して7層のフラックスバリアスリットが設けられ、フラックスバリアスリット内に非磁性導電性材料が注入されて2次導体が形成されている自己始動リラクタンスモータの回転子であって、
回転子の断面形状は、回転子の外周部が全周を56等分割され1極に対して14となる位置おいて、7層のフラックスバリアスリットのうち回転子中央軸側に位置する6層のフラックスバリアスリットは、14の位置のうち外側どうしの2位置を順次結ぶように形成されるとともに、磁気的に非突極方向でかつ外周側に形成された残る1層のフラックスバリアスリットは、14の位置のうち中央の2位置を結合するように形成され、結合されたフラックスバリアスリットの極弧幅角が概略13度に設定されている。
【0016】
また、この発明に係る自己始動リラクタンスモータの回転子は、24個のスロットが形成された固定子鉄心、及び固定子鉄心に3相巻きに巻回された巻き線を有し、2極の進行磁界を発生する固定子に対向して設けられ、ロータ中央方向に対して凹形をなす形状の1極に対して4層のフラックスバリアスリットが設けられ、フラックスバリアスリット内に非磁性導電性材料が注入されて2次導体が形成されている自己始動リラクタンスモータの回転子であって、
回転子の断面形状は、回転子の外周部が全周を20等分割され1極に対して10となる位置おいて、4層のフラックスバリアスリットのうち回転子中央軸側に位置する3層のフラックスバリアスリットは、10の位置のうち外側どうしの2位置を順次結ぶように形成されるとともに、磁気的に非突極方向でかつ外周側に形成された残る1層のフラックスバリアスリットは、10の位置のうち中央の4位置を結合するように形成され、結合されたフラックスバリアスリットの極弧幅角が概略72度に設定されている。
【0017】
また、この発明に係る自己始動リラクタンスモータの回転子は、36個のスロットが形成された固定子鉄心、及び固定子鉄心に3相巻きに巻回された巻き線を有し、2極の進行磁界を発生する固定子に対向して設けられ、ロータ中央方向に対して凹形をなす形状の1極に対して5層のフラックスバリアスリットが設けられ、フラックスバリアスリット内に非磁性導電性材料が注入されて2次導体が形成されている自己始動リラクタンスモータの回転子であって、
回転子の断面形状は、回転子の外周部が全周を32等分割され1極に対して16となる位置おいて、5層のフラックスバリアスリットのうち回転子中央軸側に位置する4層のフラックスバリアスリットは、16の位置のうち外側どうしの2位置を順次結ぶように形成されるとともに、磁気的に非突極方向でかつ外周側に形成された残る1層のフラックスバリアスリットは、16の位置のうち中央の8位置を結合するように形成され、結合されたフラックスバリアスリットの極弧幅角が概略90度に設定されている。
【0018】
また、2次導体はアルミ導体であり、またフラックスバリアスリットの端部と回転子の外周部との間の距離は0.35mm以上0.5mm以下である。
【0019】
さらに、磁気的に非突極方向でかつ外周側に形成され複数の位置を結合するように形成されたフラックスバリアスリットは、断面形状において、結合部分が回転子外周に対して凹形に後退している。
【0020】
【発明の実施の形態】
実施の形態1.
図1は本発明の実施の形態1にかかる自己始動リラクタンスモータの固定子鉄心を示す断面図である。図2は従来の自己始動リラクタンスモータの回転子を示す断面図である。図1において、このリラクタンスモータの固定子1の固定子鉄心1aには、36個の固定子スロット2が周方向に等間隔に形成されている。各スロット2には図示しない3相4極の巻き線が巻回されている。
【0021】
図1に示すモータの固定子スロット2の数をNs、極対数をPで表現するとNs=36,P=2である。一方、図2に示す回転子3のスリットの層数は6層となっている。ここで、リラクタンスモータとして最適なスリット数の組み合わせを選択する条件として以下にしめす(条件1)から(条件4)の4つの条件を満足する必要があることを発見した。
【0022】
空隙中に発生する磁束密度の空間高調波の次数は、固定子1が発生する基本波の次数を1とすると誘導電動機の同様の構造であるので公知の回転機理論によって
【0023】
【数1】
【0024】
となる。 これに対して同期リラクタンスモータ特有の回転子3によって生じる高調波成分は以下のように求められる。
【0025】
従来の回転子3の軸方向に対して垂直な面での断面図を図2に示す。図2に示す回転子3は、フラックスバリアスリットとしての円弧状のスリット4が形成された薄板電磁鋼板を複数枚積層し、その後、各スリット4にアルミをダイキャストすることによって始動用のフラックスバリアすなわち2次導体5を形成する。
【0026】
尚、図示しないが一般的な誘導電動機と同様に2次導体5はエンドリングによって短絡されている。ここでスリット4によって空隙中に生じる磁気的な凸凹が回転子3の外周1周あたりにNr個発生するとした場合には、固定子1が発生する基本波の次数を1とすると空隙中に発生する空間高調波の次数は
【0027】
【数2】
【0028】
となる。このとき、MとNの最小公倍数が大きいほど固定子・回転子間の磁気的な相互作用によって生じるリップル成分が小さくなる。逆に最小公倍数がもっとも小さな1の場合、すなわち高調波M=Nとなる組み合わせがあった場合にはトルクリップルが大きくなる。
これらから
(条件1):MとNの最小公倍数は極力大きく選ぶことが望ましい。
【0029】
次の条件として、Nrは1極ごとの構造が同一であることが非対称性による振動を除く上で望ましい、そのため、スリット数は極数の倍数でなくてはならない。このことから
(条件2):Nr/2Pは整数である。
【0030】
次の条件として、スリット4の層数が増えると、隣接するスリット4間どうしの間隔が短くなる。そのため、固定子1のスロット2によって発生する空間高調波磁束が回転子3の導体に鎖交しやすく、高調波2次銅損が大きくなる。またスリット2の数の増加は、鉄心1aをプレス打ち抜きで作成する場合にプレス打ち抜き部の総沿面長の増加を招くことから、プレス機に求められるプレス圧力が高くなるか、あるいは順送プレス機においてはプレスの加工段数が増えることから、モータ生産設備が大規模になってしまう。さらには、その後、アルミダイキャストによって始動用2次導体5を作成する場合における特有の課題としてスリット4の幅が狭いとアルミをダイキャストする際の圧損が大きくダイキャストに要する圧力が増加するなどして、生産性が著しく低下する。
これらから、
(条件3):スリット数は極力少ない方が望ましい。
【0031】
次の条件として、フラックスバリアスリットとしてのスリット4の層数を以下に述べる。図3における曲線6がスリット4の層数とモータの効率の定性的な関係を示したものである。一般にはスリット4の総面積を一定条件でスリット4の層数を増やしていった場合はジグザグもれ磁束など不要な磁束成分が低減されるために無効な電流が減ってモータの効率特性は改善していく傾向がある。層数を増やすほどその漏れ磁束低減効果は大きいのであるが、実用的にはある程度以上の層数で、もれ磁束は十分に低減されるので十分となる。数kWクラスの産業用モータでは、およそ5層程度以上とすることで、同一サイズで作成した誘導電動機を上回るような高い効率を確保出来る。
【0032】
次に、スリット4の数とNrの関係を考える。図4に1極分でのモデルを示す。図4に示すようにスリット4を一層設けた場合を考えると、その両端部において外周部に磁気的な凸凹7を1極あたり2箇所生じて高調波の要因となる。このことからスリット4の外周位置での配置が周方向に等間隔に配置された場合における、回転子に起因するNr次の高調波磁束とスリットの層数Lとの関係は式3および式4に示される。
【0033】
Nr/2Pが偶数においては、図4に示すように1極に1層設けるごとに、磁気的な凸凹を2箇所生じるので
【0034】
【数3】
【0035】
となる。
【0036】
Nr/2Pが奇数においては、図2のスリット4で最も外周に位置する断面円状のスリット4ようにスリット4の半分のみが外周部近傍に配置されて磁気的な凸凹となるスリット4を1つ含んでいることになり、その場合は
【0037】
【数4】
【0038】
となる。
【0039】
ここで、図3グラフで示したモータの効率が誘導電動機を上回る範囲を満足するように、L≧5を確保すると
(条件4−1):Nr/2Pが偶数においては、Nr≧20P
(条件4−2):Nr/2Pが奇数においては、Nr≧18P
が求められる。
【0040】
以上の(条件1)〜(条件4)の制約の中で、図1に示す固定子を例にして、(式1),(式2)のMとNの最小公倍数が大きい組み合わせの実施の形態として以下に示す。
【0041】
まず、図1に示すモータでは、Ns=36,P=2であるので、固定子スロットによって19次,17次の高調波成分を有する。そこでMとNが等しくならず最小公倍数を大きくするNrとしては44と28が考えられる。しかし、28は条件4を満足しないことからNrとしては44が選択される。つまり回転子の外周部を44等分した位置付近にスリット4に端部を配置した基本構造とするとトルクリップルを低減したモータが得られる。
【0042】
したがって、回転子の構造を(条件4−1)もしくは(条件4−2)とする手段によって、ポンプ、コンプレッサなどの一般産業用としてはスキューせずともトルクリップルが低減できるという作用があるため、スキューによって増加する損失が無しに低トルクリップルと高効率が両立したモータにできるという効果が得られる。もちろん効率を犠牲にすれば、本発明の構造にスキューを併せて施すことで更なるトルクリップル低減効果があることはいうまでもない。
【0043】
具体的な回転子構造としてNr=44を満足するような形状を考えると、多層スリットの回転子構造として図2に示すような構造が考えられる。しかし、この図2の構造とするのみでは同期引き入れ能力が不足するので、産業用モータとして広く適用するには、この同期引き入れ能力の改善が必要である。これを以下に説明する。
【0044】
図2に示すようなスリット4にダイキャストして作成した2次導体5を固定子1と組み合わせて始動する際に、始動時においては突極構造の回転子3が固定子1の進行磁界に対して非同期状態にある。このとき回転子3を通過する磁束は磁気的な突極部と非突極部において大きさが変化するために、回転子3の2次導体5を流れる電流の大きさが変化する。このことから回転子3の2次導体5を流れる電流は逆相と正相の2成分を有するようになる。
【0045】
この逆相成分による影響は、誘導電動機の現象としてよく知られているゲルゲス現象と同様に、すべり0.5以上では正、0.5以下では負のトルクを生じる。したがって、すべりが0.1程度の小さな同期引き入れ直前の状態においては、この逆相成分による負のトルクは同期引き入れの阻害要因となる。また固定子1の巻き線を流れる電流波形もこの回転子の突極構造に起因して図5に示されるように回転子位置に応じて電流の振幅値が変化する。
【0046】
一方、正相成分は、回転子がすべることによって通常の誘導電動機と同様に正の誘導トルクを発生する。
【0047】
ここで、本発明の説明のためにモータの発生する始動時におけるトルクを、上述した正相成分の誘導トルクと逆相成分によるトルクに便宜的に分離して定性的な傾向として示したものを図6に示す。図6中の曲線8が回転子3の2次導体5が誘導電動機として作用する平均トルク、図6中の曲線9はゲルゲス現象と同様のメカニズムで生じるトルク成分ですべり0.5以上では負のトルクとなるために、加速を妨げる要因となる。これらの合力が加速トルク10となって負荷トルクと釣り合うすべりsにまで加速される。
【0048】
その後、モータに接続される負荷の慣性Jによって、同期可能なすべりS0(J)とすべりsの関係がS0(J)>s範囲にあれば、そのまま同期状態に引き込まれる。(図中では同期時のトルクは図示していない)。同期可能なすべりS0はモータに接続される負荷の慣性によって異なる。同期引き入れ可能な負荷トルクと負荷慣性の関係を定性的な傾向として示したものが図7である。図7の斜線部の領域11に示されるように負荷の慣性モーメントが大きくなると適用可能な負荷トルクが低くなってしまう。
【0049】
ここで、旧来の反作用モータなどとして知られる誘導始動を行う小型の突極型のモータに比べて本発明の多層スリット構造のリラクタンスモータは著しく磁気的な突極性が高い。したがって、逆相成分によって生じる電流脈動もより大きくなるため、すべりが0.5以上の領域で生じる負のトルク分が大きくなり、図8に示すように変化する。そのため、負荷トルクTとつりあうすべりsはs'とおおきくなってしまい、S0(J)<s'となることから同期引き入れできない。このため、図7における破線12に示すように引き入れ出来ない領域は広く、同期時の特性は旧来の反作用モータより優れるものの商用直入れで運転する場合には同期引き入れが困難なため一般産業用途への適用範囲が狭くなる。
【0050】
本発明においてこの引き入れを回避する方法を以下に示す。
まず、回転子側の2次抵抗を極力低減することで、誘導電動機の比例推移則によって図8の曲線8に示す誘導トルクの特性を、図9に示すようにトルクのピークを低すべり側に推移させる。これにより、負荷トルクと誘導トルクがつりあうようすべりがs'からs''と小さくなって、S0(J)>s''となり回転子速度が同期速度に近づくことで同期引き入れ特性が改善され、回転子と同程度以上の大きな慣性をもった負荷が定格負荷トルクを要求しても同期引き入れが可能となる。
【0051】
以上に示した定性的な傾向から回転子3の2次抵抗を低減すれば引き入れは改善されることがわかる。しかし、実機の回転子の形状設計において2次抵抗の低減を実機回転子構造で実現する場合においては、2次抵抗低減のために2次導体5の断面積をひろげることが必要になる。すなわち、本発明で提案するスリット4にアルミをダイキャストして2次導体5を形成する自己始動リラクタンスモータの回転子においては、スリット4部分の面積を大きくすることが必要である。
【0052】
しかし、スリット4部分の面積を大きくすることは、一方で磁路断面積を小さくすることになるため極端にスリット4を大きくすると同期時における突極を通過する磁路の磁束密度が高くなり磁気飽和してしまいモータの効率・力率が低下してしまう。このことから、同期引き入れ範囲の拡大とモータ効率は回転子形状の設計において相反する設計制約となるためにその両立が困難という課題が生じる。
【0053】
そこで、本実施の形態においては、回転子スリット4と磁気回路の配置を両立する構造として図10を提案している。図10に示すように回転子3の磁束が通過しやすい磁気的な突極方向をd軸方向、逆にフラックスバリアによって磁束が通過しにくい非突極方向をq軸方向と定義する。回転子3の中で電磁気的な役割分担に着目すると磁束密度はd軸付近で振幅最大位相、q軸で振幅最小の正弦波状に変化するために、d軸近傍では回転子鉄心の磁束密度が高い。逆にq軸付近を通過する回転子鉄心磁束密度は低くなる。一方、各スリットを鎖交する磁束を考えた場合には、q軸でかつ回転子の外周側位置するスリットほど鎖交磁束量が多い。
【0054】
そこで本実施の形態においては、図2に示す回転子3の構造から、さらに、このエリアのスリット5A、5Bを結合して、その間の磁路を始動用の電流路が流れるように工夫して回転子の誘導電流の電流路断面積を拡大した図10の5cようなスリット形状とすることを考案している。図10に示す回転子3の構造のようにq軸方向のスリットを結合して2次導体断面積をひろげることは誘導トルクに寄与する導体部分の抵抗を下げる作用がある。また、このことでq軸方向の磁路幅は小さくなるが、もともと磁束量が少なく磁気飽和の影響が少ないため同期運転時の効率低下はほとんどない。さらにはq軸付近の磁束密度は十分小さいので、回転子の磁気的な脈動の振幅も小さく、振動を増加させることもない。
【0055】
このため、図10の構造では同期時の効率を低下させたり、振動を増加させたりすることなく、ひき入れ特性を改善できるという効果がある。このようにNrを44とした構造をベースにq軸位置のスリット結合によってひき入れと低振動を満足得ることが出来ることを示したが、以上を一般化した設計範囲として以下に提示する。
【0056】
すなわち、本実施の形態ではトルクリップルを低減する作用を得るためにNr=44を採用している。そのため、各スリットの間隔は360/44=8.18度間隔となる。ここで内周側に位置する2層以上を結合することで回転子外径部における結合した頂部位置の間隔は図10における角度θでは2層分を結合したので8.18×2≒16度となり、これより大きな極弧角を有する形状となる。
【0057】
このようなことから、本実施の形態の自己始動リラクタンスモータの回転子3においては、36個のスロット2が形成された固定子鉄心1a及び固定子鉄心1aに3相巻きに巻回された巻き線を有し、4極の進行磁界を発生する固定子1に対向して設けられ、ロータ中央方向に対して凸形をなす形状の1極に対して5層のフラックスバリアスリット4が設けられ、フラックスバリアスリット4内に非磁性導電性材料が注入されて2次導体5が形成されている自己始動リラクタンスモータの回転子3であって、回転子3の断面形状は、回転子3の外周部が全周を44等分割され1極に対して11となる位置おいて、5層のフラックスバリアスリット4のうち回転子3の中央軸側に位置する4層のフラックスバリアスリット4は、11の位置の外側どうしの2位置を順次結ぶように形成されるとともに、磁気的に非突極方向でかつ外周側に形成された残る1層のフラックスバリアスリット4は、11の位置の中央の3位置を結合するように形成され、結合されたフラックスバリアスリットの極弧幅角が概略16度以上であるので、生産性向上とトルクリップル低減を両立できるという効果がある。
【0058】
実施の形態2.
残る課題として、図11に示すように固定子1のスロット2によって生じた高調波磁束が図11中の矢印13に示すように回転子3の始動用2次導体5の一部に鎖交して生じる渦電流損失、いわゆる高調波2次銅損が発生しこれがモータ効率を低下させる一因となることにふれる。
【0059】
この問題を解決する容易な手段としては、図11に示したフラックスバリアスリット4の端部と回転子3の外周部との間の距離である外周ブリッジ部δを厚くして回転子内部に鎖交する磁束から遠ざけて回転子表面の鉄心に迂回させる方法が考えられる。
【0060】
しかし、一方で外周ブリッジ部δを厚くすることは、回転子3の外周部のもれ磁束、特にq軸成分のもれ磁束が増加させてしまうためLqが大きくなる。リラクタンスモータの力率をしめす指標として、一般に、固定子1からみたd軸方向のインダクタンスLdとq軸方向のインダクタンスの比率Ld/Lqを突極比と呼ぶ。多層スリット構造のリラクタンスモータにおいて誘導機を上回る性能を得るには、この突極比を5〜10程度以上に大きくすることが求められる。
【0061】
しかし、外周ブリッジ部δを厚くしてLq値が増加した場合には、突極比は著しく低下する。そのために力率が低下して固定子を流れる電流が増加し1次銅損が増加して効率が低下してしまう。
【0062】
したがって、ブリッジ部δの厚さに関しては、高調波2次銅損の低減による損失低減と1次銅損低下との相反する関係がある。この関係を図12に示す。ブリッジ厚さと損失の傾向に関しては、図12中の曲線13に示すような傾向であり、力率低下に関してはブリッジ厚さδが小さい範囲ではブリッジ部が磁気飽和していることと、外周部の加工劣化による磁気特性劣化のために0.3mm以下ではブリッジ厚さの増加による1次銅損低下はあまりないが、およそ0.3mm程度以上からブリッジ厚さの増加とともに1次銅損が増加し0.5〜0.6mmを超えると、汎用の3相誘導電動機を上回る性能を得ることが難しくなる。
【0063】
一方、高調波2次銅損に関しては図12中の曲線14に示すようにブリッジ厚さの増加に応じて低下する。損失は13+14であることから、ブリッジ厚さが0.35〜0.48mmの範囲に最適値があり、この範囲で設計すると高調波2次銅損の1次銅損の双方を考慮して最少の損失が得られる。このブリッジ厚さは厳密にはモータサイズで異なるが数kWクラスの産業用モータにおいては、概略同様の値となる。
【0064】
このことから、本実施の形態で提案する自己始動リラクタンスモータの回転子3は、多層スリット構造にアルミをダイキャストして製造する回転子構造において、外周部ブリッジ厚さを0.35〜0.48mm程度とする。このことは、高調波で発生する損失を最小にする作用があり、モータの効率を高くできるという効果が得られる。
【0065】
このように、本実施の形態の自己始動リラクタンスモータ回転子3においては、フラックスバリアスリット4の端部と回転子3の外周部との間の距離δは、0.35mm以上0.5mm以下である。そのため、回転子3表面部を通過する漏れ磁束を増加させない範囲で固定子1のスロット高調波磁束を鉄心で迂回させることで鎖交量を抑制することで2次導体5の外周表面部に鎖交して発生する高調波2次銅損を低減でき高効率なモータとできる。
【0066】
実施の形態3.
本発明の実施の形態1に示すように結合したスリット部5Cにおいては、図13に示すように固定子スロット2によるもれ磁束15の鎖交が大きくなることから高調波2次銅損が他のスリットより大きくなり問題となる。
【0067】
これに対し、本発明の実施の形態2に示すように外周部ブリッジ厚さδに関しては0.35mm〜0.45mm程度すると磁束の鎖交量が低減して損失が低減すると同時に、図14に示すように外周部スリットで2ヶ所以上を0.35mm〜0.45mmの凸状とし、各凸状を結合する結合部分5Daを凹状に内周側にへこませて全体を5Dのような形状とすることでこの損失を低減できる。
【0068】
図15に5Dの形状を拡大して示す。凸状の箇所を2ヶ所以上設けることは、図15中の矢印16のような回転子表面の無効なもれ磁束成分が通過する磁路に対して凸状付近の17に示す位置で鉄心が磁気飽和するので、もれ磁束が通過しにくくなる。これは、もれ磁束16を低減する作用があり、結合部分5Daを凹状とすることは回転子2次導体5Dに鎖交する固定子スロット2によるもれ磁束15を回転子表面の鉄心に迂回させて2次導体に鎖交する磁束をできるだけ減らして高調波2次銅損を減らす作用がある。その結果モータ効率を限界まで高くできるという効果が得られる。
【0069】
このように、本実施の形態の自己始動リラクタンスモータの回転子3においては、磁気的に非突極方向でかつ外周側に形成され複数の位置を結合するように形成されたフラックスバリアスリット5Dは、断面形状において、結合部分5Daが回転子外周に対して凹形に後退している。そのため、固定子1のスロット高調波磁束の侵入する位置の2次導体5を一部分排除することで、2次導体外周表面部に鎖交して発生する高調波2次銅損を低減でき高効率なモータとできる。この場合でも残された凸部が磁気飽和しているために回転子表面部を通過する漏れ磁束を増加させることがなく、漏れ磁束によって生じる力率低下も少ない。
【0070】
実施の形態4.
本発明の実施の形態1に示す図10の回転子3のフラックスバリアの結合を3層分とした構成を図16に示す。フラックスバリアの結合を3層分として図16に示す2次導体5Eを形成することは、2次導体の断面積をより大きくすることから、2層を結合した図10あるいは図14の回転子構造よりさらに回転子3の2次抵抗を低減せしめて、同期引き入れの能力を高めることが出来る。その場合若干効率・力率は低下するものの、ほぼ汎用三相電動機と同程度の効率である。 旧来の反作用モータなどと呼ばれるような簡易な形状のリラクタンスモータは一台の制御装置でも群制御などがしやすいために繊維機械用途などによく用いられているが、誘導電動機よりかなり力率が劣り電源容量が大きくなるという課題があったが、本発明の図16に示すようなモータを適用することは、誘導電動機と同程度のよりはるかに高い力率のリラクタンスモータを提供することができるという効果がある。
【0071】
実施の形態5.
一方、数kWクラス程度の4極の小型モータにおいては固定子スロット数Nsとして36もしくは48が一般的である。4極36スロットの場合の構成例は既に上述にて説明したので48スロットの場合の例を本実施の形態にて示す。図17に示す固定子1は48スロット数であり、図示しない3相巻き線が4極の進行磁界を発生するように巻回されている。本実施の形態はNs=48,P=2であるので上述した固定子スロットの空間周波数としては進行磁界の基本波成分を1次とすると、M=ks(48/2±1)より23次、25次の次数の空間高調波が発生する。
【0072】
これと組み合わせて大きな最小公倍数を得るNとしては20もしくは28が適当な値となり、これを実現するNrとしては40もしくは56を基本構造としてもつ構造が振動低減に有利な構造である。したがって、5層もしくは7層のフラックスバリアスリット数を選ぶ。ここで5層構造でも相応の性能が得られるが、q軸位置のスリットを結合することに鑑みて7層構造とした方がスリットの層数を多く取れるので望ましい。ここから、さらに引き入れ改善の作用を得るために2層のq軸付近のスリットを結合した図17に示すような構造とすれば引き入れと高い効率を両立することができる。
【0073】
以上を一般化した設計範囲として以下に提示する。本実施の形態にしめす図17の構造ではトルクリップルを低減する作用を得るためにNr=56を採用している。したがって各スリットの間隔は360/56=6.42度間隔となる。ここで内周側に位置する2層以上を結合することで回転子外径部における結合した頂部位置の間隔は図17における角度θは、6.42×3≒20度であるので、これより大きな極弧角を有する形状となる。
【0074】
このように、本実施の形態の自己始動リラクタンスモータの回転子3は、48個のスロット2が形成された固定子鉄心1a、及び固定子鉄心1aに3相巻きに巻回された巻き線を有し、4極の進行磁界を発生する固定子1に対向して設けられ、ロータ中央方向に対して凸形をなす形状の1極に対して6層のフラックスバリアスリット4が設けられ、フラックスバリアスリット4内に非磁性導電性材料が注入されて2次導体5が形成されている自己始動リラクタンスモータの回転子3であって、回転子3の断面形状は、回転子3の外周部が全周を56等分割され1極に対して14となる位置おいて、6層のフラックスバリアスリット4のうち回転子3の中央軸側に位置する5層のフラックスバリアスリット4は、14の位置のうち外側どうしの2位置を順次結ぶように形成されるとともに、磁気的に非突極方向でかつ外周側に形成された残る1層のフラックスバリアスリットは、14の位置のうち中央の4位置を結合するように形成され、結合されたフラックスバリアスリットの極弧幅角が概略20度以上であるので、モータの高効率化とトルクリップル低減を両立できるという効果があるとともに、引き入れ能力を向上させることができ、さらに高調波で発生する損失を最小にすることができる。
【0075】
さらに、本実施の形態の変更例として、1極に対して7層のフラックスバリアスリット4が設けられた場合を考えると、回転子3の断面形状は、回転子3の外周部が全周を56等分割され1極に対して14となる位置おいて、7層のフラックスバリアスリット4のうち回転子3の中央軸側に位置する6層のフラックスバリアスリット4は、14の位置のうち外側どうしの2位置を順次結ぶように形成されるとともに、磁気的に非突極方向でかつ外周側に形成された残る1層のフラックスバリアスリット4は、14の位置のうち中央の2位置を結合するように形成され、結合されたフラックスバリアスリット4の極弧幅角が所定の6度以上であるので、モータの高効率化とトルクリップル低減を両立できるという効果があるとともに、モータの力率が向上する。
【0076】
実施の形態6.
また、数kWクラス程度以下の2極の小型の3相誘導モータにおいては固定子スロット数Nsとして24もしくは36などが一般的である。Nsが24の場合は、Ns=24,P=1であるので上述した固定子スロットの空間周波数としては進行磁界の基本波成分を1次とすると、M=ks(24/1±1)より23,25次の次数の空間高調波が発生する。
【0077】
これと組み合わせて大きな最小公倍数を得るNとしては20もしくは28が適当な値となり、これを実現するNrとしては20もしくは28を基本構造としてもつ構造が振動低減に有利な構造である。したがって、10層もしくは14層のフラックスバリアスリット数を設けると振動が低減できる。
【0078】
ここで、本発明の実施の形態1に示した条件3からスリット数の少ない10層を選択し、ここからさらに引き入れ改善のためにq軸付近のスリットを結合した構造として図18を考案している。
【0079】
以上を一般化した設計範囲として以下に提示する。本実施の形態にしめす図18の構造ではトルクリップルを低減する作用を得るためにNr=20を採用している。したがって各スリットの間隔は360/20=18度間隔となる。ここで内周側に位置する2層以上を結合することで回転子外径部における結合する。したがって頂部位置の間隔は図17における角度θは、18×3=54度より大きな極弧角を有する形状となる。
【0080】
また、本実施の形態の変更例として、1極に対して5層のフラックスバリアスリット4が設けられた例を考えると、回転子3の断面形状は、回転子3の外周部が全周を20等分割され1極に対して10となる位置おいて、5層のフラックスバリアスリット4のうち回転子3の中央軸側に位置する4層のフラックスバリアスリット4は、10の位置のうち外側どうしの2位置を順次結ぶように形成されるとともに、磁気的に非突極方向でかつ外周側に形成された残る1層のフラックスバリアスリット4は、10の位置のうち中央の2位置を結合するように形成され、結合されたフラックスバリアスリットの極弧幅角が概略18度以上であるので、2極機のように回転数が高いモータにおいても高調波2次銅損の増加を抑制することができ高効率なモータとすることができる。
【0081】
実施の形態7.
さらに、数kWクラス程度の2極の小型モータにおいては固定子スロット数Nsとして24もしくは36が一般的である。Nsが36の場合は、Ns=36,P=1であるので上述した固定子スロットの空間周波数としては進行磁界の基本波成分を1次とすると、M=ks(36/1±1)より35、37次の次数の空間高調波が発生する。
【0082】
これと組み合わせて大きな最小公倍数を得るNとしては32もしくは40が適当な値となり、これを実現するNrとしては32もしくは40を基本構造としてもつ構造が振動低減に有利な構造である。したがって、16層もしくは20層のスリット数を設けると振動が低減できる。
【0083】
回転子の2次導体に対する固定子の鎖交磁束を低減するには、回転子スリット数を固定子スリット数の8割程度に低減することが望ましいので16層を選択し、ここからさらに引き入れ改善のためにq軸付近のスリットを結合した構造として図19が得られる。
【0084】
以上を一般化した設計範囲として以下に提示する。本実施の形態にしめす図18の構造ではトルクリップルを低減する作用を得るためにNr=32を採用している。したがって各スリットの間隔は360/32=11.25度間隔となる。ここで内周側に位置する2層以上を結合することで回転子外径部における結合する。したがって頂部位置の間隔は図18における角度θは11.25×3≒34度より大きな極弧角を有する形状となる。なお図18では、スリット1極あたりに8層確保することが困難であるので結合したフラックスバリアを含めて5層以上のスリット数を確保できれば誘導機と同等の効率を得ることが出来るので、内周側の4層を残して外側の8位置を結合したため角度θは11.25×7≒79度となっている。
【0085】
また、本実施の形態の変更例として、1極に対して8層のフラックスバリアスリット4が設けられた例を考えると、回転子3の断面形状は、回転子3の外周部が全周を32等分割され1極に対して16となる位置おいて、8層のフラックスバリアスリット4のうち回転子3の中央軸側に位置する7層のフラックスバリアスリット4は、16の位置のうち外側どうしの2位置を順次結ぶように形成されるとともに、磁気的に非突極方向でかつ外周側に形成された残る1層のフラックスバリアスリット4は、16の位置のうち中央の2位置を結合するように形成され、結合されたフラックスバリアスリット4の極弧幅角が概略11度以上であるので、生産性を低下させることなく、モータの高効率化とトルクリップル低減を両立できるという効果がある。
【0086】
最後に本発明の自己始動リラクタンスモータの回転子に関しまとめると、上述の実施の形態1では、Ns=36を選択して説明した。生産性の見地からはスロット数は極力少なくした方がよい。しかし、例えば4極機でこれ以上スロット数を減らす組み合わせとしては、Ns=24、P=2とすると、固定子高調波としては11次、12次の高調波成分を有する。そこでMとNが等しくならず最小公倍数を大きくするNrとしては28と20が考えられるが,双方とも条件4を満足しない。したがって上で説明したNs=36が4極機用としては生産性とトルクリップル低減を両立できるという効果がある。
【0087】
また、Ns=48を選択した場合にはNs=36に比べてスロット数が増えることから生産性は若干落ちるものの、より効率を追求する場合には回転子の層数が増えた分だけ効率が微増する。これより多い組み合わせとしてはNs=60が考えられる。しかし、通常は数kWクラスのモータの空隙直径は100mm前後である。したがって、ここでNs=60とするとスロットピッチは5mm程度となりスロット開口幅が2mm程度となってしまう。スロット開口幅に関しては巻き線挿入時の作業性を考慮すると2〜3mm程度以上ないと著しく低下する。以上から4極機用としては、Ns=48とすることは生産性を維持した中で高効率とトルクリップル低減を両立できるという効果がある。
【0088】
一方、2極機は商用電源直結で運転した場合4極機に比べて回転数が高いために固定子のスロット高調波で回転子表面での損失が4極機に比べて多く発生する。特に、本発明のモータでは回転子スリット部に2次導体を充填しているために回転子導体に対して固定子高調波が鎖交することで損失を多く発生する。この損失を主眼に設計する場合にはNs>Nrであることが望ましい。ここでNs=18とすると、固定子高調波としては17次、19次の高調波成分を有する。そこでMとNが等しくならず最小公倍数を大きくするNrとしては14と22が考えられるが、Ns>Nrを満足できない。したがって、Nsを24とすることは2極機のように回転数が高いモータでも高調波2次銅損の増加は抑制でき高効率なモータにできるという効果がある。
【0089】
さらに、Nsを24とした場合には、24は4と6の倍数であるので、比較的生産量の多い4極機、6極機と固定子製造に必要な生産設備を共用にすることが可能になり、より生産性に優れたモータが得られるという効果が得られる。
【0090】
Ns=24よりさらに効率を追求する場合には回転子のスリット数を増やすべくNsを増やすことが考えられる。そこで4極機と6極機と生産設備の共有できる24の次に大きNsとしてはNs=36、48がある。
【0091】
しかし、Ns=48を選択した場合には、Nr=40スリット数を20層設ける方法が考えられるが、数kW程度のモータの回転子径が100mm前後であり、かつ中央に軸が貫通する構造の場合には、20層のスリットの配置を実現するにはかなり微細な加工が必要となり実用的ではない。したがってNs=36が生産性を維持した中で最も高効率とトルクリップル低減を両立できるという効果がある。
【0092】
【発明の効果】
このようなことから、本発明の回転子構造を有する自己始動リラクタンスモータは、ブリッジ厚さと多層スリットの構造を工夫したことで高い突極比を得ることができると同時に固定子スロットによって生じる高調波磁束によって始動用の導体の回転子に発生する2次銅損も少なくしたので従来の一般産業用途において汎用3相誘導電動機を上回る高い効率を得ることができるという効果がある。
【0093】
また、高い突極比を有するリラクタンスモータ特有の同期引き入れ能力の低下を最小限に抑えることで回転子と同程度以上の慣性を有する負荷であっても、商用電源直入れで始動できることから従来のように効果なインバータなどの周波数変換装置を不要に出来るという効果がある。
【0094】
また、トルクリップルが小さくできるためにトルクリップルに起因する振動等の問題も少ないという効果がある。
【0095】
さらには、これらの効果をすべて兼ね備えることで従来困難であった一般産業用途に対しても同一サイズの汎用三相誘導電動機よりも高効率なモータとして広く適用が可能になるという効果がある。
【0096】
そして、この発明に係る自己始動リラクタンスモータの回転子は、36個のスロットが形成された固定子鉄心、及び固定子鉄心に3相巻きに巻回された巻き線を有し、4極の進行磁界を発生する固定子に対向して設けられ、ロータ中央方向に対して凸形をなす形状の1極に対して5層のフラックスバリアスリットが設けられ、フラックスバリアスリット内に非磁性導電性材料が注入されて2次導体が形成されている自己始動リラクタンスモータの回転子であって、
回転子の断面形状は、回転子の外周部が全周を44等分割され1極に対して11となる位置おいて、5層のフラックスバリアスリットのうち回転子中央軸側に位置する4層のフラックスバリアスリットは、11の位置の外側どうしの2位置を順次結ぶように形成されるとともに、磁気的に非突極方向でかつ外周側に形成された残る1層のフラックスバリアスリットは、11の位置の中央の3位置を結合するように形成され、結合されたフラックスバリアスリットの極弧幅角が所定の角度以上である。そのため、以下の効果を有する。すなわち、
(1) 中小型の4極汎用三相誘導モータ(〜3kWクラス)として一般的に良く用いられる36スロットの固定子に対して用いることで、生産設備を汎用三相誘導モータと共用できるために生産性に優れる。そしてさらに以下の特徴を全て併せもつ自己始動リラクタンスモータが得られる。
(2) 高い効率を維持できる範囲で極力回転子のスリット数が少なくし、鉄心プレス時や2次導体ダイキャスト時の生産性を向上できる。
(3) 回転子スリットの数を最適に選択したのでトルクリップルが低減できる。
(4) スリット結合位置を最適に選択した2次導体の断面積と磁路の双方を確保でき効率・力率を低下させること無く同期引き入れ可能な負荷トルク範囲を拡大できるという効果がある。
【0097】
また、この発明に係る自己始動リラクタンスモータの回転子は、48個のスロットが形成された固定子鉄心、及び固定子鉄心に3相巻きに巻回された巻き線を有し、4極の進行磁界を発生する固定子に対向して設けられ、ロータ中央方向に対して凸形をなす形状の1極に対して6層のフラックスバリアスリットが設けられ、フラックスバリアスリット内に非磁性導電性材料が注入されて2次導体が形成されている自己始動リラクタンスモータの回転子であって、
回転子の断面形状は、回転子の外周部が全周を56等分割され1極に対して14となる位置おいて、6層のフラックスバリアスリットのうち回転子中央軸側に位置する5層のフラックスバリアスリットは、14の位置のうち外側どうしの2位置を順次結ぶように形成されるとともに、磁気的に非突極方向でかつ外周側に形成された残る1層のフラックスバリアスリットは、14の位置のうち中央の4位置を結合するように形成され、結合されたフラックスバリアスリットの極弧幅角が所定の角度以上である。そのため、以下の効果を有する。すなわち、
(1) 中小型の4極汎用三相誘導モータ(〜11kWクラス)として一般的に良く用いられる48スロットの固定子を用いることで、生産設備を汎用三相誘導モータと共用できるために生産性に優れる。そして以下の特徴を全て併せもつ自己始動リラクタンスモータが得られる。
(2) 高い効率を維持できる範囲で極力回転子のスリット数が少なくし、鉄心プレス時や2次導体ダイキャスト時の生産性を向上できる。
(3) 回転子スリットの数を最適に選択したのでトルクリップルが低減できる。
(4) 固定子のスロット高調波によって回転子非磁性導体部分に生じる渦電流損失を低減にできる。(固定子スロット数>回転子バリア×2)
(5) スリット結合位置を最適に選択した2次導体の断面積と磁路の双方を確保でき効率・力率を低下させること無く同期引き入れ可能な負荷トルク範囲を拡大できるという効果がある。
【0098】
また、この発明に係る自己始動リラクタンスモータの回転子は、48個のスロットが形成された固定子鉄心、及び固定子鉄心に3相巻きに巻回された巻き線を有し、4極の進行磁界を発生する固定子に対向して設けられ、ロータ中央方向に対して凸形をなす形状の1極に対して7層のフラックスバリアスリットが設けられ、フラックスバリアスリット内に非磁性導電性材料が注入されて2次導体が形成されている自己始動リラクタンスモータの回転子であって、
回転子の断面形状は、回転子の外周部が全周を56等分割され1極に対して14となる位置おいて、7層のフラックスバリアスリットのうち回転子中央軸側に位置する6層のフラックスバリアスリットは、14の位置のうち外側どうしの2位置を順次結ぶように形成されるとともに、磁気的に非突極方向でかつ外周側に形成された残る1層のフラックスバリアスリットは、14の位置のうち中央の2位置を結合するように形成され、結合されたフラックスバリアスリットの極弧幅角が所定の角度以上である。そのため、以下の効果を有する。すなわち、
(1) 中小型の4極汎用三相誘導モータ(〜11kWクラス)として一般的に良く用いられる48スロットの固定子を用いることで、生産設備を汎用三相誘導モータと共用できるために生産性に優れる。そして以下の特徴を全て併せもつ自己始動リラクタンスモータが得られる。
(2) 回転子スリットの数を最適に選択したのでトルクリップルが低減できる。
(3) 回転子スリット数を増やすことによって漏れ磁束を低減してモータの力率が向上する。このため定格時の電流が少なく固定子の巻き線に発生するジュール損失が小さくモータを高効率化できる。
(4) スリット結合位置を最適に選択した2次導体の断面積と磁路の双方を確保でき効率・力率を低下させること無く同期引き入れ可能な負荷トルク範囲を拡大できるという効果がある。
【0099】
また、この発明に係る自己始動リラクタンスモータの回転子は、24個のスロットが形成された固定子鉄心、及び固定子鉄心に3相巻きに巻回された巻き線を有し、2極の進行磁界を発生する固定子に対向して設けられ、ロータ中央方向に対して凹形をなす形状の1極に対して4層のフラックスバリアスリットが設けられ、フラックスバリアスリット内に非磁性導電性材料が注入されて2次導体が形成されている自己始動リラクタンスモータの回転子であって、
回転子の断面形状は、回転子の外周部が全周を20等分割され1極に対して10となる位置おいて、4層のフラックスバリアスリットのうち回転子中央軸側に位置する3層のフラックスバリアスリットは、10の位置のうち外側どうしの2位置を順次結ぶように形成されるとともに、磁気的に非突極方向でかつ外周側に形成された残る1層のフラックスバリアスリットは、10の位置のうち中央の4位置を結合するように形成され、結合されたフラックスバリアスリットの極弧幅角が所定の角度以上である。そのため、以下の効果を有する。すなわち、
(1) 中小型の2極汎用三相誘導モータ(〜3kWクラス)として一般的に良く用いられる24スロットの固定子を用いることで,生産設備を汎用三相誘導モータと共用できるために生産性に優れる。そして以下の特徴を全て併せもつ自己始動リラクタンスモータが得られる。
(2) 高い効率を維持できる範囲で極力回転子のスリット数が少なくし、鉄心プレス時や2次導体ダイキャスト時の生産性を向上できる。
(3) 固定子のスロット高調波によって回転子非磁性導体部分に生じる渦電流損失を低減にできる。(固定子スロット数>回転子バリア×2)
(4) 回転子スリットの数を最適に選択したのでトルクリップルが低減できる。
(5) スリット結合位置を最適に選択した2次導体の断面積と磁路の双方を確保でき効率・力率を低下させること無く同期引き入れ可能な負荷トルク範囲を拡大できるという効果がある。
【0100】
また、この発明に係る自己始動リラクタンスモータの回転子は、36個のスロットが形成された固定子鉄心、及び固定子鉄心に3相巻きに巻回された巻き線を有し、2極の進行磁界を発生する固定子に対向して設けられ、ロータ中央方向に対して凹形をなす形状の1極に対して5層のフラックスバリアスリットが設けられ、フラックスバリアスリット内に非磁性導電性材料が注入されて2次導体が形成されている自己始動リラクタンスモータの回転子であって、
回転子の断面形状は、回転子の外周部が全周を32等分割され1極に対して16となる位置おいて、5層のフラックスバリアスリットのうち回転子中央軸側に位置する4層のフラックスバリアスリットは、16の位置のうち外側どうしの2位置を順次結ぶように形成されるとともに、磁気的に非突極方向でかつ外周側に形成された残る1層のフラックスバリアスリットは、16の位置のうち中央の8位置を結合するように形成され、結合されたフラックスバリアスリットの極弧幅角が所定の角度以上である。そのため、以下の効果を有する。すなわち、
(1) 中小型の2極汎用三相誘導モータ(〜3kWクラス)として一般的に良く用いられる36スロットの固定子を用いることで、生産設備を汎用三相誘導モータと共用できるために生産性に優れる。そして以下の特徴を全て併せもつ自己始動リラクタンスモータが得られる。
(2) 高い効率を維持できる範囲で極力回転子のスリット数が少なくし、鉄心プレス時や2次導体ダイキャスト時の生産性を向上できる。
(3) 固定子のスロット高調波によって回転子非磁性導体部分に生じる渦電流損失を低減にできる。(固定子スロット数>回転子バリア×2)
(4) 回転子スリットの数を最適に選択したのでトルクリップルが低減できる。
(5) スリット結合位置を最適に選択した2次導体の断面積と磁路の双方を確保でき効率・力率を低下させること無く同期引き入れ可能な負荷トルク範囲を拡大できるという効果がある。
【0101】
また、2次導体はアルミ導体であり、またフラックスバリアスリットの端部と回転子の外周部との間の距離は0.35mm以上0.5mm以下である。そのため、回転子表面部を通過する漏れ磁束を増加させない範囲で固定子のスロット高調波磁束を鉄心で迂回させることで鎖交量を抑制することで2次導体外周表面部に鎖交して発生する高調波2次銅損を低減でき高効率なモータとできる。
【0102】
さらに、磁気的に非突極方向でかつ外周側に形成され複数の位置を結合するように形成されたフラックスバリアスリットは、断面形状において、結合部分が回転子外周に対して凹形に後退している。そのため、固定子のスロット高調波磁束の侵入する位置の2次導体を一部分排除することで、2次導体外周表面部に鎖交して発生する高調波2次銅損を低減でき高効率なモータとできる。この場合でも残された凸部が磁気飽和しているために回転子表面部を通過する漏れ磁束を増加させることがなく、漏れ磁束によって生じる力率低下も少ない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1の自己始動リラクタンスモータの固定子を示す断面図である。
【図2】 従来の自己始動リラクタンスモータの回転子を示す断面図である。
【図3】本発明の実施の形態1の自己始動リラクタンスモータのフラックスバリアスリットの層数とモータ効率の定性的傾向を示す説明図である。
【図4】本発明の実施の形態1の自己始動リラクタンスモータの回転子におけるフラックスバリアスリットとこのスリットの端部に発生する磁気的凸凹の関係を示す説明図である。
【図5】本発明の実施の形態1の自己始動リラクタンスモータの始動時における固定子の電流波形を示す説明図である。
【図6】本発明の実施の形態1の自己始動リラクタンスモータの始動時におけるモータ内部のトルクの発生の様子を説明する説明図である。
【図7】本発明の実施の形態1の自己始動リラクタンスモータの負荷慣性と負荷トルクに応じた引き入れ不可能な範囲を定性的に示す説明図である。
【図8】本発明の実施の形態1の自己始動リラクタンスモータの始動時におけるモータ内部のトルクの発生の様子を説明する説明図である。
【図9】本発明の実施の形態1の自己始動リラクタンスモータの始動時におけるモータ内部のトルクの発生の様子を説明する説明図である。
【図10】本発明の実施の形態1の自己始動リラクタンスモータの回転子を示す断面図である。
【図11】本発明の実施の形態2の自己始動リラクタンスモータの回転子表面の損失発生の様子を説明する説明図である。
【図12】本発明の実施の形態2の自己始動リラクタンスモータの回転子のブリッジ厚さと損失の関係を示す説明図である。
【図13】本発明の実施の形態2の自己始動リラクタンスモータの回転子表面の損失発生の様子を説明する説明図である。
【図14】本発明の実施の形態3の自己始動リラクタンスモータの回転子を示す断面図である。
【図15】本発明の実施の形態3の自己始動リラクタンスモータの回転子表面の損失発生の様子を説明する説明図である。
【図16】本発明の実施の形態4の自己始動リラクタンスモータを示す断面図である。
【図17】本発明の実施の形態5の自己始動リラクタンスモータを示す断面図である。
【図18】本発明の実施の形態6の自己始動リラクタンスモータを示す断面図である。
【図19】本発明の実施の形態7の自己始動リラクタンスモータを示す断面図である。
【符号の説明】
1 固定子、1a 固定子鉄心、2 固定子スロット、3 回転子、4 スリット(フラックスバリアスリット)、5,5A,5B,5C,5D,5E 2次導体、6 効率特性曲線、7 磁気的凸凹箇所、8,9,10 トルク特性曲線、11,12 引き入れ不可能な範囲、13,14 損失曲線、15,16 漏れ磁束、17 磁気飽和箇所。
Claims (7)
- 36個のスロットが形成された固定子鉄心、及び該固定子鉄心に3相巻きに巻回された巻き線を有し、4極の進行磁界を発生する固定子に対向して設けられ、ロータ中央方向に対して凸形をなす形状の1極に対して5層のフラックスバリアスリットが設けられ、該フラックスバリアスリット内に非磁性導電性材料が注入されて2次導体が形成されている自己始動リラクタンスモータの回転子であって、
上記回転子の断面形状は、該回転子の外周部が全周を44等分割され1極に対して11となる位置おいて、上記5層のフラックスバリアスリットのうち回転子中央軸側に位置する4層のフラックスバリアスリットは、上記11の位置の外側どうしの2位置を順次結ぶように形成されるとともに、磁気的に非突極方向でかつ外周側に形成された残る1層のフラックスバリアスリットは、上記11の位置の中央の3位置を結合するように形成され、該結合されたフラックスバリアスリットの極弧幅角が概略16度に設定されている
ことを特徴とする自己始動リラクタンスモータの回転子。 - 48個のスロットが形成された固定子鉄心、及び該固定子鉄心に3相巻きに巻回された巻き線を有し、4極の進行磁界を発生する固定子に対向して設けられ、ロータ中央方向に対して凸形をなす形状の1極に対して6層のフラックスバリアスリットが設けられ、該フラックスバリアスリット内に非磁性導電性材料が注入されて2次導体が形成されている自己始動リラクタンスモータの回転子であって、
上記回転子の断面形状は、該回転子の外周部が全周を56等分割され1極に対して14となる位置おいて、上記6層のフラックスバリアスリットのうち回転子中央軸側に位置する5層のフラックスバリアスリットは、上記14の位置のうち外側どうしの2位置を順次結ぶように形成されるとともに、磁気的に非突極方向でかつ外周側に形成された残る1層のフラックスバリアスリットは、上記14の位置のうち中央の4位置を結合するように形成され、該結合されたフラックスバリアスリットの極弧幅角が概略26度に設定されている
ことを特徴とする自己始動リラクタンスモータの回転子。 - 48個のスロットが形成された固定子鉄心、及び該固定子鉄心に3相巻きに巻回された巻き線を有し、4極の進行磁界を発生する固定子に対向して設けられ、ロータ中央方向に対して凸形をなす形状の1極に対して7層のフラックスバリアスリットが設けられ、該フラックスバリアスリット内に非磁性導電性材料が注入されて2次導体が形成されている自己始動リラクタンスモータの回転子であって、
上記回転子の断面形状は、該回転子の外周部が全周を56等分割され1極に対して14となる位置おいて、上記7層のフラックスバリアスリットのうち回転子中央軸側に位置する6層のフラックスバリアスリットは、上記14の位置のうち外側どうしの2位置を順次結ぶように形成されるとともに、磁気的に非突極方向でかつ外周側に形成された残る1層のフラックスバリアスリットは、上記14の位置のうち中央の2位置を結合するように形成され、該結合されたフラックスバリアスリットの極弧幅角が概略13度に設定されている
ことを特徴とする自己始動リラクタンスモータの回転子。 - 24個のスロットが形成された固定子鉄心、及び該固定子鉄心に3相巻きに巻回された巻き線を有し、2極の進行磁界を発生する固定子に対向して設けられ、ロータ中央方向に対して凹形をなす形状の1極に対して4層のフラックスバリアスリットが設けられ、該フラックスバリアスリット内に非磁性導電性材料が注入されて2次導体が形成されている自己始動リラクタンスモータの回転子であって、
上記回転子の断面形状は、該回転子の外周部が全周を20等分割され1極に対して10となる位置おいて、上記4層のフラックスバリアスリットのうち回転子中央軸側に位置する3層のフラックスバリアスリットは、上記10の位置のうち外側どうしの2位置を順次結ぶように形成されるとともに、磁気的に非突極方向でかつ外周側に形成された残る1層のフラックスバリアスリットは、上記10の位置のうち中央の4位置を結合するように形成され、該結合されたフラックスバリアスリットの極弧幅角が概略72度に設定されている
ことを特徴とする自己始動リラクタンスモータの回転子。 - 36個のスロットが形成された固定子鉄心、及び該固定子鉄心に3相巻きに巻回された巻き線を有し、2極の進行磁界を発生する固定子に対向して設けられ、ロータ中央方向に対して凹形をなす形状の1極に対して5層のフラックスバリアスリットが設けられ、該フラックスバリアスリット内に非磁性導電性材料が注入されて2次導体が形成されている自己始動リラクタンスモータの回転子であって、
上記回転子の断面形状は、該回転子の外周部が全周を32等分割され1極に対して16となる位置おいて、上記5層のフラックスバリアスリットのうち回転子中央軸側に位置する4層のフラックスバリアスリットは、上記16の位置のうち外側どうしの2位置を順次結ぶように形成されるとともに、磁気的に非突極方向でかつ外周側に形成された残る1層のフラックスバリアスリットは、上記16の位置のうち中央の8位置を結合するように形成され、該結合されたフラックスバリアスリットの極弧幅角が概略90度に設定されている
ことを特徴とする自己始動リラクタンスモータの回転子。 - 上記2次導体はアルミ導体であり、また上記フラックスバリアスリットの端部と上記回転子の外周部との間の距離は0.35mm以上0.5mm以下である
ことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の自己始動リラクタンスモータの回転子。 - 磁気的に非突極方向でかつ外周側に形成され上記複数の位置を結合するように形成されたフラックスバリアスリットは、断面形状において、結合部分が回転子外周に対して凹形に後退している
ことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の自己始動リラクタンスモータの回転子。
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