JP4586166B2 - 羽毛状晶アルミニウム合金鋳塊及びその鋳造方法 - Google Patents
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Description
押出加工には直接押出と間接押出があるがいずれの場合にも熱間でビレットを押圧し、ダイス孔を通過させる塑性加工にて押出形材を得るものである。
従って、押出加工時にはダイスに大きな押出圧力が負荷されるとともにダイス孔のベアリング面をアルミニウム合金が通過する際の押出抵抗にてダイスにたわみひずみが生じる。
従来から広く使用されているAl−Mg−Si系合金(JIS6000系合金)は比較的押出性に優れているがAl−Mg−Si系合金より高強度であるAl−Zn−Mg系合金(JIS7000系合金)は押出成形性がAl−Mg−Si系合金に比較して悪く、ダイス割れ等ダイス寿命が短くなり、その結果、押出製品が高価になる技術的課題があった。
また、押出圧が高いことは、押出装置の稼働に必要なエネルギーも多大になるので省エネルギーの観点からも押出性に優れたアルミニウム基合金が必要とされていた。
この報告によると全羽毛状晶の方が、粒状晶よりも約30%以上押出時間が短くなっている。
よって、押出性の悪いAl−Zn−Mg系合金において安定した羽毛状晶から得られれば、さらに大きな押出性改善が期待できる。
更には、そのようにして製造された羽毛状晶鋳塊の提供を目的とする。
また、このような羽毛状晶の成長性を活かして、羽毛状晶の種結晶を用いた種付け鋳造方法も検討した。
受け型の鋳塊受け面に溝部を形成したことにより、溝部からの急冷効果によって凝固ひずみが生じ、羽毛状晶が発生する。
ここで溝部の形状は直線状でも曲線状でもよい。
なお、受け型外形が円柱状の場合には同心円状の溝部が好ましい。
本発明にて羽毛状晶とは鳥の羽根に似た羽毛状の結晶組織をいい、結晶学的な特徴から成長双晶とも呼ばれ、粒状晶及び柱状晶に対比される金属組織である。
また、受け型の側部外周に沿って溝部を形成し、溝部に受け型側部を貫通する冷却孔を設けてもよく、さらには受け型に中空部を設けて中空部に冷却水を流し込んでもよい。
受け型の冷却効果を高くすることで受け面から上方に向けて一方向凝固性を確保する。
この場合に受け面直上、約2mmで冷却速度60〜70℃/secにするのが好ましい。
この種の合金は特に押出性が悪く、ダイス寿命も短いからである。
Al−Zn−Mg系合金とはアルミニウム基に最も多く含有する成分がZnで次にMg成分であるアルミニウム合金をいい、Cuを含まない溶接構造用合金とCuを含む高力合金とがある。
また、例えば受け型の冷却水が当たる側部外周に溝部、冷却孔等を設けること等を手段にして、冷却効果を向上させると高い冷却勾配により鋳塊組織の殆どが羽毛状晶からなる鋳塊を連続的にあるいは半連続的に鋳造できる。
羽毛状晶鋳塊の一部を例えば板状に切り出し種結晶とすると、フロート式DC鋳造方法、ホットトップ鋳造方法等の連続鋳造方法にて種付けすることのみならず、少量生産の場合に適したバッチ式鋳造炉にても簡単に羽毛状晶鋳塊が得られる。
試験評価に用いたAl−Zn−Mg系合金の化学組成を図8の表に示す。
JIS7003合金に相当し、溶解前の化学組成と溶解後の化学組成を示す。
一方向凝固装置は外径90φmm、内径25φmm、高さ150mmの半割可能な断熱材鋳型の底部にチルプレートを配設したものであり、鋳型をヒーターで加熱できるようになっている。
鋳型及びチルプレートには温度測定用の熱電対を挿入してある。
チルプレートの形状を図10に示す。
なお、図10はチルプレートの縦方向半割断面図を示す。
チルプレートはアルミ製からなり、ビレット当り面はa1=25φmmであり、上面の中央部に深さa4=3mm、幅a2=5mm及び幅a3=3mmの2本の直線溝を入れてある。
熱電対をチルプレートの下側から挿入し、a2,a3の溝底及び平坦部から2mm、4mmの高さに配設してチルプレート直上の温度を測定して冷却曲線を採取できるようにした。
この装置に溶解した約200gの溶湯を流し込み、溶湯温度と鋳型温度を変化させて鋳造実験をした。
なお、チルプレートは実験開始前に100℃まで水冷し、注湯後は水冷を行った。
水量は7L/minであった。
図11のグラフに熱電対の高さと冷却曲線の直線勾配から求めた冷却速度℃/secとの関係を示す。
この結果、チルプレートの直上2mmの高さでおおむね、冷却速度が60〜70℃/secの範囲にて全羽毛状晶になっていることが明らかになった。
半連続装置は外径φ78mm、内径φ50mm、高さ65mmの上下に貫通した黒鉛鋳型1の上部に断熱材からなるヘッダー部(湯だめ部)7を配設してある。
ヘッダー部7に注湯した溶湯4は鋳型の上部から下部に向けて流れ込み、受け型10の受け面にて初期冷却凝固し、鋳塊(ビレット)5の側部に設けた水冷ジャケット2から噴射された冷却水2aにて冷却されながら鋳造が進行する。
この受け型10の受け面での初期冷却にて羽毛状晶が出現すれば、これが種になりほぼ全羽毛状晶のビレットになる。
そこで初期冷却の冷却速度が60〜70℃/secとなる受け型の形状例を図2に示す。
なお、図2は受け型の縦方向半割断面図を示す。
鋳塊を受ける受け型10の受け面11には同心円状に深さb5=3mm、幅5mm(b2=25φmm,b3=15φmm)の溝12を形成してある。
この溝12は、局部的な急冷凝固により凝固ひずみを生じさせることで羽毛状晶の発生起点とするものである。
この外周溝13及び冷却孔14a、14bは冷却水が当たる部分であり、受け型10の冷却能を向上させるためのものである。
今回試験評価に用いた受け型10は銅製とした。
このような半連続鋳造装置を用いて鋳造実験評価した結果、溶湯温度730〜770℃、好ましくは750〜770℃,鋳型温度500〜600℃,鋳造速度50〜60mm/minにて安定して全羽毛状晶ビレットが得られた。
なおこのときの水量は15L/minであった。
この結果、鋳型500℃溶湯770℃のものは先に求めた羽毛状晶発生範囲に一致していた。
この結果、羽毛状発生起点から約60mmで鋳塊全断面に成長し、ほぼ100%の羽毛状晶になっていることが分かる。
また、ビレット上部に行くほど鋳塊軸に平行で微細になっていることも明らかになった。
図5にビレット高さ500mm部分の縦断面ミクロ組織を示し、(b)中央部、(a)左側端部、(c)右側端部の組織写真である。
羽毛状晶は板状の双晶組織になっていて、中央部(b)は鋳塊軸に平行であり、左側端部、右側端部も多少外側に角度がついているものの、ほぼ鋳塊軸に平行な双晶組織を有している。
図6(a)は、鋳型温度500℃,溶湯温度710℃,鋳造速度60mm/minにて鋳造したもので、図6(b)は溶湯温度770℃にして鋳型温度500℃,鋳造速度60mm/minで鋳造したものである。
図6(a)の粒状晶の平均結晶粒径は135.8μmであり、図6(b)の双晶間隔の平均値が80.6μmであることから平均結晶間隔は40.3μmとなり、(a)の粒状晶の平均粒径に比較して非常に小さいことが明らかになった。
これにより、全羽毛状晶ビレットは均質化処理時間も粒状晶ビレットに比較して短いと推定できる。
鋳造中に少量のスズを添加するとアルミニウムよりも比重が大きく、融点の低いスズが凝固界面まで沈み、スズの層を形成する。
鋳型温度500℃,溶湯温度730℃,鋳造速度60mm/min,鋳造開始より90s,150s後にスズを添加したもので凝固界面は極めて水平に近い状態になっていて一方向凝固性が確認できた。
その鋳塊の金属組織写真を図12に示すように鋳塊のほぼ全域にわたって羽毛状晶になっていた。
また、複雑な形状を有する形材の押出生産も可能になり、自動車部品等のこれまでアルミ化出来なかった製品のアルミ化も可能になることが期待される。
2 水冷ジャケット
2a 冷却水
3 昇降装置
4 溶湯
5 ビレット
6a,6b 熱電対
7 断熱ヘッダー部
10 受け型
Claims (2)
- 上下に貫通した鋳型の上部に溶湯を投入し、鋳型の下部から出てくる鋳塊に冷却水を噴射し、鋳塊の下端を受け型で受けるアルミニウム合金の鋳塊の連続鋳造方法であって、
受け型の鋳塊受け面に羽毛状晶発生起点となる溝部を形成し、前記アルミニウム合金の溶湯温度を730〜770℃に設定し、受け型の鋳塊受け面直上約2mmの高さにて冷却速度60〜70℃/secの範囲になるように鋳造することで金属組織が羽毛状晶からなる鋳塊を得ることを特徴とするアルミニウム合金の鋳造方法。 - アルミニウム合金は、Al−Zn−Mg系合金であることを特徴とする請求項1記載のアルミニウム合金の鋳造方法。
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