JP4585699B2 - キースイッチ及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、家庭用、車載用、携帯用などの電気機器で用いられるキースイッチ及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来のこの種のキースイッチとしては、例えば特公平6−93335号公報に開示されるような構成のものが知られている。同公報に開示されるキースイッチには、図4に示すように、押しボタン型の操作部41、回路基板などの基台42上に形成された一対の固定接点43,44、操作部41の押圧操作に連動して固定接点43,44に対し接離する可動接点45などが備えられている。操作部41は、同操作部41から下方に向かって延出する弾性支持部46により、基台42から離間した位置において基台42上に弾性支持されている。そして、操作部41の裏面には、可動接点45である金属板47にゴム層48を積層して形成された積層体49が、操作部41と一体移動可能に設けられている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記従来のキースイッチの場合、可動接点45が金属板47よりなるために柔軟性がなく、異物の介在によって可動接点45と固定接点43,44との間の接触不良が起こりやすいという問題があった。
【0004】
本発明は、上記のような従来技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的とするところは、異物の介在による接点間の接触不良の発生を抑制することができるキースイッチ及びその製造方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、操作部の裏面に、その操作部の押圧操作に連動することで、固定接点に対して接離する可動接点を備えたキースイッチであって、前記可動接点が、ゴム層と樹脂層とを積層した弾性を有する基材における前記樹脂層の表面に形成された金属薄膜であり、前記樹脂層を構成する樹脂材料を前記ゴム層及び前記金属薄膜の形成時並びに前記操作部の形成時の温度に耐え得る耐熱性を有する樹脂材料(但し、ポリエチレンテレフタレートを除く)としたことを要旨とする。
【0006】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のキースイッチにおいて、前記樹脂層を構成する樹脂材料が、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアリレート、ポリアセタール、変性ポリフェニレンエーテル、及びアクリロニトリルブタジエンスチレンから選ばれる少なくとも一種であることを要旨とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載のキースイッチにおいて、前記ゴム層が、前記操作部及び樹脂層との一体化が可能な材料であって、ゴム材料及び熱可塑性エラストマーから選ばれる少なくとも一種で構成されることを要旨とする。
【0007】
請求項4に記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のキースイッチにおいて、製造の際、基材の表面に金属薄膜を積層して積層体を形成した後、その積層体を操作部に一体化させることを要旨とする。
【0008】
請求項5に記載の発明は、操作部の裏面に、その操作部の押圧操作に連動することで、固定接点に対して接離する可動接点を備え、その可動接点が、弾性を有する基材の表面に形成された金属薄膜であるキースイッチの製造方法であって、ゴム層と樹脂層とを積層することで弾性を有する基材を形成し、その基材の樹脂層の表面に金属薄膜を積層して積層体を形成した後、その積層体を、操作部の形状にほぼ対応する形状のキャビティを有する成形型におけるインサート部材装着部に装着させ、その状態で成形材料をキャビティに射出させて、操作部の裏面と前記ゴム層とを接合させるとともに操作部を成形することで操作部と積層体とを一体化させる工程を備え、前記樹脂層を構成する樹脂材料を前記ゴム層及び前記金属薄膜の形成時並びに前記操作部の形成時の温度に耐え得る耐熱性を有する樹脂材料(但し、ポリエチレンテレフタレートを除く)としたことを要旨とする。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を具体化した一実施形態について図面に基づき説明する。
図1は、本実施形態におけるキースイッチを示す図である。同図に示すキースイッチには、押しボタン型の操作部11、回路基板などの基台12上に形成された一対の固定接点13,14、操作部11の押圧操作に連動して固定接点13,14に対し接離する可動接点15などが備えられている。
【0010】
操作部11は、同操作部11から下方に延出する弾性支持部16により、基台12から離間した位置において同基台12上に弾性支持されている。この操作部11と弾性支持部16は、ゴム状弾性体によって一体に形成されている。ゴム状弾性体としては常温でゴム状弾性を有する材料であればよい。具体例としては、シリコーンゴム、ブチルゴム、エチレンプロピレンゴム、クロロプレンゴム、ウレタンゴム、イソプレンゴム、熱可塑性エラストマー等が挙げられ、それらの中でもシリコーンゴム及び熱可塑性エラストマーが好ましい。シリコーンゴムの場合は、耐久性が高まるだけでなく操作部11の押圧操作にクリック感を付与することができる。また熱可塑性エラストマーの場合は、耐久性とともにリサイクル性も向上させることができる。
【0011】
操作部11の裏面には、同操作部11と一体移動可能に積層体17が設けられている。積層体17は、図2に示すように、ゴム層18と樹脂層19とを積層して形成した基材20の樹脂層19側の面に導電性薄膜としての金属薄膜21をさらに積層したものである。図1に示すように、積層体17は基材20のゴム層18側の面において操作部11に一体化されており、金属薄膜21が基台12上の固定接点13,14に対向するようになっている。そして、この金属薄膜21が前記可動接点15を構成している。
【0012】
ゴム層18の材質は、操作部11との一体化及び樹脂層19との積層が可能なゴム材料あるいは熱可塑性エラストマーであれば特に限定されない。具体例としては上記の操作部11及び弾性支持部16の説明の際に例示したゴム状弾性体が挙げられる。ゴム層18の厚みは、0.1〜1mmの範囲が好ましく、0.2〜0.5mmの範囲がより好ましい。
【0013】
また、樹脂層19の材質は、ゴム層18及び金属薄膜21の形成時の温度並びに操作部11の成形時の温度に耐えるだけの耐熱性を有する樹脂材料であれば特に材質は限定されない。具体例としては、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアリレート、ポリエステル、ポリアセタール、ポリアミド、変性ポリフェニレンエーテル、アクリロニトリルブタジエンスチレン等が挙げられる。樹脂層19の厚みは、0.02〜0.5mmの範囲が好ましく、0.05〜0.2mmの範囲がより好ましい。
【0014】
一方、金属薄膜21は、導電性の金属であれば特に材質は限定されない。金属薄膜21の厚みは、0.05〜20μmの範囲が好ましく、0.1〜5μmの範囲がより好ましい。尚、この金属薄膜21について、図1〜3においては便宜的に厚みを誇張して示している。
【0015】
このキースイッチにおいては、操作部11に図1中の矢印F方向の押圧力を加えて弾性支持部16の弾性力に抗して操作部11を押下し、可動接点15を一対の固定接点13,14に接触させると、両固定接点13,14間が短絡されてスイッチがONの状態となる。一方、操作部11に対する押圧を解除すると、弾性支持部16の弾性力によって操作部11が離間位置に復元し、両固定接点13,14間の短絡が開放されてスイッチがOFFの状態となる。
【0016】
次に、上記の操作部11及び弾性支持部16を成形するための成形装置について説明する。図3は、その成形装置に備えられた成形型31を示す図である。この成形型31は、上型31aと下型31bとから構成され、両型31a,31bの型割面が互いに離間した状態(型開き状態)と、両型31a,31bの型割面が互いに当接した状態(型締め状態)とをとりうる構成となっている。これら上型31aと下型31bとの型割面には、操作部11及び弾性支持部16の形状にほぼ対応する形状のキャビティ32が形成されている。また、下型31bには、インサート部材装着部としての凹部33が設けられている。
【0017】
次に、上記のように構成されるキースイッチの製造方法について説明する。
このキースイッチの製造方法には、インサート成形法により積層体17を操作部11に一体化する工程が含まれる。この工程では、図3に示す成形型31を備えた上記の成形装置が使用される。その動作を説明すると、まず、上型31aと下型31bを型開きした状態で、下型31bの凹部33に積層体17を装着させる。そして、両型31a,31bを型締めした後、図示しないゲートからキャビティ32内に成形材料を射出させ、硬化させる。これにより、操作部11及び弾性支持部16が成形されると同時に、積層体17が操作部11に一体化される。
【0018】
尚、積層体17はゴム層18と樹脂層19と金属薄膜21を積層して形成されるが、ゴム層18と樹脂層19を積層した後に金属薄膜21を積層してもよいし、樹脂層19と金属薄膜21を積層した後にゴム層18を積層してもよい。また、樹脂層19上にゴム層18を形成する方法としては、未硬化のゴム材料又は熱可塑性エラストマーを樹脂層19上に塗工して硬化させる方法、シート状のゴム状弾性体を樹脂層19に接着又は融着させる方法等が挙げられる。また、樹脂層19の表面に金属薄膜21を形成する方法としては、鍍金や蒸着による方法のほか、金属箔の接着や融着による方法などが挙げられる。
【0019】
本実施形態によって得られる効果について、以下に記載する。
・ 本実施形態のキースイッチにおける可動接点15は、ゴム層18と樹脂層19を積層した基材20の表面に形成された金属薄膜21によって構成されており、従来の金属板47よりなる可動接点45(図4参照)に比べて柔軟性を有している。従って、可動接点15と固定接点13,14との間に異物が介在する場合であっても、その異物に追従して可動接点15が変形することで可動接点15と固定接点13,14との間の接触不良を防ぐことができる。
【0020】
・ 積層体17はゴム層18と樹脂層19を積層して形成された基材20を主体としており、従来の金属板47を主体とする積層体49(図4参照)に比べて柔軟性を有している。このため、積層体17を成形型31の凹部33に装着させる際など、キースイッチの製造時において積層体17を取り扱う際に、可動接点15に誤って折れや欠けを生じるのを抑制することができ、製造歩留まりを向上させることができる。また、積層体17の取り扱いに従来ほど注意を払わなくても済むので、製造を容易化することもできる。
【0021】
・ 従来のキースイッチの中には、絶縁性ゴムに導電性フィラー(カーボンブラック、金属粒子など)を配合した導電性ゴムによって接点が構成されるものも知られている。この場合、接点に柔軟性があるので異物の介在による接点間の接触不良の発生を抑制することができるが、金属板47よりなる場合(図4参照)に比べて接点の電気的特性が劣るという欠点があった。しかし、本実施形態の場合は、金属薄膜21により可動接点15が構成されるので、金属板47よりなる場合(図4参照)と同様、低抵抗、高電流容量などの金属特有の良好な電気的特性を示しうる。
【0022】
・ 従来のキースイッチの中には、洋白などの金属製の基材の表面に鍍金などの方法で金属薄膜を形成して、その金属薄膜を接点とする構成のものが知られている。この場合、基材が弾性に劣るために異物の介在による接点間の接触不良が発生しやすいのみならず、金属薄膜にピンホールがあった場合等に基材が腐食するという欠点があった。しかし、本実施形態の場合、基材20がゴム材料又は熱可塑性エラストマーと樹脂材料から構成されているので腐食のおそれがない。しかも、金属製の基材に比べてコストの点でも有利である。
【0023】
【実施例】
次に、実施例を挙げて前記実施形態をさらに具体的に説明する。
(実施例1)
厚さ0.075mmのポリイミドフィルム(鐘淵化学工業製:アピカル)の片面にシリコーンゴム(東レ・ダウコーニング製:SH2260)を厚さ0.4mmに積層して170℃で6分間の加硫にて硬化させるとともに、もう片面には金を厚さ0.3μmに鍍金し、積層体17を形成した。そして、この積層体17をダイセット抜きにてφ3mmに打ち抜き加工し、それをシリコーンゴム製の操作部11に対しインサート成形にて一体化した。
【0024】
(実施例2)
厚さ0.05mmのニカフレックス(ニッカン工業製:片面銅箔積層ポリイミドフィルム)のポリイミドフィルム面にシリコーンゴム(東レ・ダウコーニング製:SH2250)を厚さ0.4mmに積層して170℃で6分間の加硫にて硬化させるとともに、もう片面の銅箔面には金を厚さ0.3μmに鍍金し、積層体17を形成した。そして、この積層体17をダイセット抜きにてφ3mmに打ち抜き加工し、それをシリコーンゴム製の操作部11に対しインサート成形にて一体化した。
【0025】
(参考例3)
厚さ100μmのポリエステルフィルムの片面にシリコーンゴム(東レ・ダウコーニング製:SH2250)を厚さ0.4mmに積層して170℃で6分間の加硫にて硬化させるとともに、もう片面には真空蒸着装置中で蒸着圧力5×10-4torr、製膜速度5nm/分の条件で20分間、金を真空蒸着させて厚さ100nmの金属蒸着層(金属薄膜)を形成し、積層体17を形成した。そして、この積層体17をダイセット抜きにてφ3mmに打ち抜き加工し、それをシリコーンゴム製の操作部11に対しインサート成形にて一体化した。
【0026】
上記の実施例1、実施例2及び参考例3のいずれの場合も、積層体17を操作部11に一体化させるにおいて成形型31の凹部33に積層体17を装着する際、接点15に折れや欠けが生じることはなかった。また、接点15の表面抵抗値は1Ω未満と低抵抗であった。
【0027】
尚、前記実施形態を次のように変更して構成することもできる。
・ 前記実施形態においては積層体17と操作部11とをインサート成形によって一体化するようにしたが、接着や融着などの方法で一体化してもよい。
【0028】
・ 前記実施形態においては基材20をゴム層18と樹脂層19の二層構造としたが、三層以上で構成してもよい。
【0029】
・ 前記実施形態においては導電性薄膜として金属薄膜21を基材20の表面に形成したが、金属薄膜21をその他の導電性薄膜に変更して構成してもよい。
【0030】
【発明の効果】
本発明は、以上のように構成されているため、次のような効果を奏する。
請求項1及び請求項2に記載の発明によれば、異物の介在による接点間の接触不良の発生を抑制することができる。
【0031】
また、低抵抗、高電流容量などの金属特有の良好な電気的特性を接点に付与することができる。
【0032】
請求項3に記載の発明によれば、請求項1又は請求項2に記載の発明の効果に加え、基材が腐食するおそれがないので接点の耐久性を向上させることができるうえに、基材を安価に得ることができる。
【0033】
請求項4に記載の発明によれば、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の発明の効果に加え、積層体を操作部に一体化させる際に接点に折れや欠けが生じるのを抑制することができる。
【0034】
請求項5に記載の発明によれば、インサート成形法によって積層体を操作部に一体化させる際に接点に折れや欠けが生じるのを抑制するとともに、異物の介在による接点間の接触不良の発生が起こりにくいキースイッチを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態のキースイッチを示す断面図。
【図2】積層体を示す断面図。
【図3】キースイッチの製造に用いられる成形型を示す断面図。
【図4】従来のキースイッチを示す断面図。
【符号の説明】
11…操作部、13,14…接点としての固定接点、15…接点としての可動接点、17…積層体、20…基材、21…導電性薄膜としての金属薄膜、31…成形型、32…キャビティ、33…インサート部材装着部としての凹部。
Claims (5)
- 操作部の裏面に、その操作部の押圧操作に連動することで、固定接点に対して接離する可動接点を備えたキースイッチであって、前記可動接点が、ゴム層と樹脂層とを積層した弾性を有する基材における前記樹脂層の表面に形成された金属薄膜であり、前記樹脂層を構成する樹脂材料を前記ゴム層及び前記金属薄膜の形成時並びに前記操作部の形成時の温度に耐え得る耐熱性を有する樹脂材料(但し、ポリエチレンテレフタレートを除く)としたことを特徴とするキースイッチ。
- 前記樹脂層を構成する樹脂材料が、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアリレート、ポリアセタール、変性ポリフェニレンエーテル、及びアクリロニトリルブタジエンスチレンから選ばれる少なくとも一種である請求項1に記載のキースイッチ。
- 前記ゴム層が、前記操作部及び樹脂層との一体化が可能な材料であって、ゴム材料及び熱可塑性エラストマーから選ばれる少なくとも一種で構成されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のキースイッチ。
- 製造の際、基材の表面に金属薄膜を積層して積層体を形成した後、その積層体を操作部に一体化させることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のキースイッチ。
- 操作部の裏面に、その操作部の押圧操作に連動することで、固定接点に対して接離する可動接点を備え、その可動接点が、弾性を有する基材の表面に形成された金属薄膜であるキースイッチの製造方法であって、
ゴム層と樹脂層とを積層することで弾性を有する基材を形成し、その基材の樹脂層の表面に金属薄膜を積層して積層体を形成した後、その積層体を、操作部の形状にほぼ対応する形状のキャビティを有する成形型におけるインサート部材装着部に装着させ、その状態で成形材料をキャビティに射出させて、操作部の裏面と前記ゴム層とを接合させるとともに操作部を成形することで操作部と積層体とを一体化させる工程を備え、
前記樹脂層を構成する樹脂材料を前記ゴム層及び前記金属薄膜の形成時並びに前記操作部の形成時の温度に耐え得る耐熱性を有する樹脂材料(但し、ポリエチレンテレフタレートを除く)としたことを特徴とするキースイッチの製造方法。
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