JP4584398B2 - 製紙用2層織物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は製紙に用いられる織物に関するものであり、詳細には製紙面側織物と走行面側織物とからなる製紙用2層織物に関する。
【0002】
【従来の技術】
製紙は長い歴史のある技術であって、使用機具に変遷はあるがまずパルプ繊維等を含む製紙原料が、ヘッドボックスからエンドレスに形成されて抄紙機のロール間に掛け入れられ走行している抄紙用織物上に供給される。
抄紙用織物の原料が供給される側が製紙面、その反対側が走行面である。供給された原料は抄紙用織物の走行に伴って移動し、移動中に織物の走行面側に設置されたサクションボックスやフォイル等の脱水装置によって、水分が除去され、湿紙が形成される。すなわち、抄紙用織物がフィルターとして機能し、パルプ繊維と水を分離するのである。この抄紙ゾーンで形成された湿紙は、次のプレスゾーンとドライヤーゾーンに移送される。
プレスゾーンでは、湿紙は抄紙用フェルトによって移送され、抄紙用フェルトとともにプレスロール間でニップ圧によって搾水され、さらに水分が除去される。ドライヤーゾーンでは、湿紙は抄紙用キャンバスによって移送され、乾燥されて紙が製造される。
製紙用織物は、合成樹脂モノフィラメント等の経糸、緯糸を用いて織機で製織される。無端状に形成するには周知の織継やピンシーム等によって無端状に形成されるか、袋織り織機により製織の段階で無端状に形成される。袋織りの場合は織機上と使用時では経糸と緯糸の関係が逆になる。本明細書にて、経糸とは、製紙機械の機械方向すなわち織物の進行方向に伸びている糸であり、緯糸とは、製紙機械の機械横断方向すなわち織物の巾方向に伸びている糸である。
【0003】
製紙用織物、特に抄紙用織物に対しては従来より多くの要求がある。表面平滑性の向上、紙のワイヤーマーク発生防止、製紙の歩留まりの向上、良好なろ水性、耐摩耗性、剛性、寸法安定性、走行安定性等である。
これ等の要求に対して、従来より様々な提案がなされている。耐摩耗性の向上をさせるためには、織物組織を緯糸摩耗型の組織にしたり、糸の材質を変更したりするという対策がとられている。
一般的に使用中の織物の耐摩耗性の向上と姿勢安定性の維持の点からは、織物の緯糸に耐摩耗作用を受け持たせることが好ましい。経糸が摩耗すると当然のことではあるが、引張強度が低下して織物の寸法が伸び、さらに摩粍して経糸が摩耗切断すると織物自体が切断してしまって使用寿命が尽きてしまうからである。
また、耐摩耗性の優れているポリアミドモノフィラメントを緯糸に使用することも試みられているが、この試みは織物の構造自体を改善するものではなく、単に使用する材料の性質を利用するだけであって、画期的効果は得られず、半面ポリアミドモノフィラメントを用いた織物は姿勢安定性が悪いという欠点があった。また、走行面の緯糸に太い糸を使用することも試みられたが、経糸と緯糸のバランスが崩れ、クリンプ性が悪化してワイヤーマーク発生の原因となる等の欠点があり実用上問題があった。
【0004】
紙のワイヤーマークの発生を防止するためには経糸及び緯糸の本数密度を増やし、繊維の支持性を向上させることが考えられるが、そのためには経糸、緯糸の線径を細くする必要がある。しかし、現在一般的に使用されている周知の経糸1重緯糸2重織物では線径を細くすると耐摩耗性、剛性、姿勢安定性が低下してしまう。
このように、製紙用織物は、耐摩耗性や剛性を向上させようとして線径を太くすると表面性が損なわれ、紙にワイヤーマークが発生する、逆に表面性を向上させようと線径を細くして本数密度を増やすと耐摩耗性や剛性が低下してしまうというように、いわば相反する問題を抱えていた。
【0005】
上述の問題を解決するために製紙面側と走行面側とを夫々別々の経糸、緯糸を用いて構成した、2層の織物の両層を接結糸によって一体化させた織物での試みもなされている。すなわち、製紙面側織物には線径の小さい経糸、緯糸を使用して緻密な製紙面を形成し、走行面側織物には線径の大きい経糸、緯糸を使用して耐摩耗性の大きい走行面を形成するのである。
しかしながら、これも必ずしも満足のいくものではなかった。なぜならば接結糸と製紙面側の糸とが交差する接結部において、接結糸が製紙面側織物を走行面側に引込むために製紙面側織物表面に凹みが発生し、実際に紙を抄いた時に、この凹みのマークを紙に転写するようにワイヤーマークとして発生させてしまうのである。
また、この凹みを極力少なくするために、接結糸の線径を小さくしたり接結糸の本数を少なくすると、接結力が弱くなってしまうため、接結糸が製紙面側織物と走行面側織物の間で揉まれて内部摩耗が起こり、さらに接結力が弱くなって、製紙面側織物と走行面側織物の間に隙間が発生したり、分離してしまうという問題が発生し、すぐに使用寿命が尽きてしまった。
【0006】
ところで、効果的に繊維の支持性を向上させ、紙にワイヤーマークを発生させずに、良質な紙を抄造するためには、好適には緯糸で繊維を支持する必要がある。なぜならば、一般的にヘッドボックスから抄紙用織物上に供給されるパルプ繊維は機械方向、すなわち経糸方向に配向するからである。経糸間の凹みを緯糸で分断して繊維を支持することにより、繊維が経糸間に滞留するのを防止するのである。
剛性を向上させるためには、巾方向や長さ方向に関しては糸を複数層重ねることによって対策がなされており、最近では緯糸を3層に重ねた経糸一重緯糸三重構造の抄紙用織物が多く実用化されている。
しかし、斜め方向の剛性に関しては、経糸と緯糸の織り込み回数を増加させて向上させる程度の提案しかなされていないのが現状である。斜め方向の剛性が劣ると当然であるが織物が変形しやすくなって、菱形に変形したり、緯糸が弓状に変形する筋曲がりといわれる現象が発生する。また、これによって巾が縮んだり走行面が悪くなる問題があった。
特に板紙を抄造する場合には、坪量が大きいため、抄造時の原料も重く、剛性が要求され、剛性が劣る織物を使用すると地合崩れや負荷アップ等の問題が発生した。また、板紙の原料は温度が高く、使用中の熱による剛性低下が起こるため、より剛性が高い織物が求められるのである。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記の問題に鑑みて、製紙面側と走行面側とをそれぞれ別々の経糸、緯糸を用いて構成して、両層の織物を接結糸によって一本化させた織物であって接結糸と製紙面側の糸との交差部において、製紙面側織物表面に凹みが発生せず、緯糸の繊維支持性が良好で、かつ剛性、特に斜め方向の剛性を向上させた製紙用織物を提供するものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、
「1. 製紙面側経糸と製紙面側緯糸とからなる製紙面側織物と、走行面側経糸と走行面側緯糸とからなる走行面側織物と、製紙面側織物と走行面側織物を接合する接結糸、とからなる製紙用2層織物において、A.製紙面側緯糸が、連続する3本の製紙面側経糸の上側を通った後連続する2本の製紙面側経糸の下側を通過し、B.製紙面側経糸が、a.1本の製紙面側緯糸の上側を通った後1本の製紙面側緯糸の下側を通過し、次いで1本の製紙面側緯糸の上側を通り、次に2本の製紙面側緯糸の下側を通過し、b.かつ該2個所に形成される1本の製紙面側緯糸の上側を通る部分を、夫々異なった側に隣り合う製紙面側経糸の1本の製紙面側緯糸の上側を通る部分と接近または接触させて配置したことを特徴とする製紙用2層織物。
2. 接結糸を製紙面側緯糸が、連続する2本の製紙面側経糸の下側を通過する部分の片側で該2本の製紙面側経糸の上側に配置した、1項に記載された製紙用2層織物。
3. 製紙面側経糸が製紙面側緯糸の上を通る位置で交互に隣り合う緯糸と接近または接触して、その位置の間で斜行している、1項または2項に記載された製紙用2層織物。
4. 製紙面側経糸の斜行が隣り合う経糸で逆方向の斜行である、3項に記載された製紙用2層織物。」
に関する。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明は、製紙面側緯糸が、連続する3本の製紙面側経糸の上側を通った後連続する2本の製紙面側経糸の下側を通過する。
また、本発明の製紙用織物の製紙面側織物は、完全組織で製紙面側経糸を、1本の製紙面側緯糸の上側を通った後1本の製紙面側緯糸の下側を通り、次いで1本の製紙面側緯糸の上側を通り、次に2本の製紙面側緯糸の下側を通過する組織とし、かつ該2ヶ所形成される1本の製紙面側緯糸の上側を通る部分を、それぞれ異なった側に隣り合う製紙面側経糸の1本の製紙面側緯糸の上側を通る部分と隣り合うように配置した。
このように構成したことにより、製紙面側経糸が両側の経糸と交互に接近または接触してラテラルになり、斜め方向に形成配置されるため、斜め方向の糸が存在するかたちとなり、バイアス織物のように斜め方向の剛性が非常に大きくなるのである。
1本の製紙面側緯糸の上側を通る部分が隣り合う製紙面側経糸の1本の製紙面側緯糸上側を通り部分と隣り合うように配置されると、その部分では2本の連続する製紙面側経糸が製紙面側緯糸によって下側から織り込まれることになるため、製紙面側経糸をまとめて接近させようとする力が働き、経糸は接近するのである。また、製紙面側緯糸が経糸2本分と3本分のクリンプを形成することになるため巾方向の剛性も大きく、製紙面側に経糸3本分の長いクリンプを形成するため、緯糸の繊維支持性が良好となる。
また、製紙面側経糸がラテラルに形成されることも、緯糸方向の繊維支持性向上に寄与し、織物の繊維支持性は非常に良好となる。したがって、リテンション、シートリリースが良好となる。
【0010】
本発明では接結糸を、製紙面側緯糸が連続する2本の製紙面側経糸の下側を通過する部分の片側または両側で、該2本の製紙面側経糸の上側に配置すると、製紙面側経糸2本分のクリンプを製紙面側に形成し、接結糸が接結糸本来の機能に加えて繊維支持糸の機能を合わせ持つことになり、繊維支持性が良好となる。
また、製紙面側緯糸が連続する2本の製紙面側経糸の下側を通過する部分は、製紙面側経糸が隣り合う製紙面側経糸と接近または接触する部分であるため、その2本の製紙面側経糸を接結糸でさらに織り込むことになり、製紙面側経糸の接近または接触しようとする力が強固となって斜め方向の剛性が向上するのである。また、製紙面側緯糸と接結糸で実質上製紙面側に連続する緯糸を形成することにもなり、さらに繊維支持性が良好となる。前述したように、従来の製紙用2層織物は、接結糸が製紙面側織物を走行面側に引込むために製紙面側織物表面に凹みが発生し、実際に紙を抄いた時に、この凹みのマークを紙に転写するようにワイヤーマークとして発生させてしまう問題を解決できなかった。
従来の製紙用2層織物の接結糸は、製紙用織物の本来糸が存在しない位置に点々と現われて製紙面を引込んで、凹みを発生させるという悪影響を及ぼしていたが、接結糸を上記のように配置すると、製紙面側緯糸が製紙面側経糸の下側を通過して凹んでいる位置が、接結糸が製紙面側経糸の上側に位置する接結部となっており、結果として凹みを埋めるように配置されるために、従来の接結糸のような悪影響は及ぼさないのである。
【0011】
本発明では製紙面側織物と走行面側織物を連結する力が強いということも1つの特徴である。
接結糸を上記のように2本の製紙面側経糸を製紙面側から織り込むこととすると、従来1本の製紙面側経糸と織り合わされていたタイプと比較し、多くの製紙面側経糸と織り合わされることとなり接結力が強くなるのである。また、製紙面側緯糸1本に対し接結糸1本の割合で配置されることになるため、従来は製紙面側緯糸4本に対して接結糸1本の割合のように接結糸の本数が少なかった場合と比較して接結力が強くなる。しかし、これに限定されるわけではなく、製紙面側緯糸複数本に対して1本の接結糸を配置することもできる。接結力が強くなると、前述したような、接結糸が製紙面側織物と走行面側織物の間で揉まれて内部摩耗が発生することがなくなって、織物間に隙間が発生したり、分離してしまうという問題が発生しない。
【0012】
走行面側織物については、特に限定されないが、前述したように耐摩耗性が良好な緯糸摩粍型の組織が好適である。製紙面側織物に対する糸本数の密度も特に限定されず、走行面側経糸や走行面側緯糸を製紙面側の1/2や2/3等の密度にしてもよい。
ただし、特に走行面側緯糸の密度は、耐摩耗性との関連があるため同密度が最も好適である。あまり少なくすると耐摩耗性が低下するからである。
【0013】
本発明に使用される糸としては、製紙用織物に望まれる特性によって自由に選択でき特に限定されない。例えば、モノフィラメントの他、マルチフィラメント、スパンヤーン、捲縮加工や崇高加工等を施した一般的にテクスチャードヤーン、バルキーヤーン、ストレッチヤーンと称される加工糸、モール糸、あるいはこれ等をより合わせる等して組み合わせた糸等が使用できる。また、糸の断面形状も円形だけでなく四角形状や星型等の糸や楕円形状、中空等の糸が使用できる。また、糸の材質としても、自由に選択でき、ポリエステル、ナイロン、ポリフェニレンサルファイド、ポリフッ化ビニリデン、ポリプロピレン、アラミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエチレンナフタレート、ポリテトラフロロエチレン、綿、ウール、金属等が使用できる。
勿論、共重合体やこれ等の材質に目的に応じて色々な物質をブレンドしたり含有させた糸を使用してもよい。
一般的には、製紙面側経糸、走行面側経糸、製紙面側緯糸には剛性があり、寸法安定性が優れているポリエステルモノフィラメントを用いるのが好ましい。また、接結糸は、前述した内部摩耗に対する耐摩耗性を要求されるためナイロンモノフィラメントを用いるのが好ましい。また、耐摩耗性が要求される走行面側緯糸にはポリエステルモノフィラメントとナイロンモノフィラメントを交互に配置する等、交織するのが剛性を確保しつつ耐摩耗性を向上できて好ましい。
【0014】
次に本発明を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施例の完全組織を示す意匠図である。
完全組織とは、織物組織の最小の繰り返し単位であって、この完全組織が上下左右につながって織物全体の組織が形成される。
【0015】
図2は、図1の製紙面側の一部平面図である。
意匠図において、経糸はアラビア数字、例えば1、2、3で示し、緯糸はダッシュを付したアラビア数字、例えば1′、2′、3′、で示す。
また、×印は製紙面側経糸が製紙面側緯糸の上側に位置していることを示し、○印は走行面側経糸が走行面側緯糸の下側に位置していることを示し、■印は接結糸が製紙面側経糸の上側に位置していることを示し、□印は接結糸が走行面側経糸の下側に位置していることを示す。
【0016】
製紙面側と走行面側の経糸、緯糸は上下に重なって配置されている。本実施例では本数密度が同じであるため、製紙面側の経糸、緯糸の真下に走行面側の経糸、緯糸が配置されている。
尚、意匠図では糸が上下に正確に重なって製紙面側の経糸、緯糸の真下の走行面側の経糸、緯糸が配置されることになっているが、これは図面の都合上であって実際の織物ではずれて配置されても構わないのである。
【0017】
【実施例】
次に実施例を上げて具体的に説明する。
実施例1
図1が本発明の実施例1の完全組織を示す意匠図である。
図1の意匠図において、1、2、3、4、5が経糸であり製紙面側経糸と走行面側経糸が上下に配置されている。
1′、3′、5′、7′、9′が緯糸であって製紙面側緯糸と走行面側緯糸が上下に配置されている。
2′、4′、6′、8′、10′が接結糸である。
まず製紙面側織物をみてみると、製紙面側緯糸1′は、製紙面側経糸1、2の下側を通り、次いで製紙面側経糸3、4、5の上側を通っている。
したがって、製紙面側緯糸1′の組織は、連続する2本の製紙面側経糸の下側を通った後連続する3本の製紙面側経糸の上側を通る組織の繰り返しであることがわかる。
そして、組織上、この製紙面側緯糸1′を製紙面側経糸2本分右方にシフトさせて順次製紙面側緯糸3′、5′、7′、9′と配置して完全組織を形成するのである。
製紙面側経糸1は、製紙面側緯糸1′の上側を通り、次いで製紙面側緯糸3′の下側を通り、次いで製紙面側緯糸5′の上側を通り、次いで製紙面側緯糸7′、9′の下側を通る。
したがって、製紙面側経糸1の組織は、1本の製紙面側緯糸の上側を通り、次いで1本の製紙面側緯糸の下側を通り、次いで1本の製紙面側緯糸の上側を通り、次いで2本の製紙面側緯糸の下側を通る組織である。
そして、組織上、この製紙面側経糸1を製紙面側緯糸3本分上にシフトさせて順次製紙面側経糸2、3、4、5と配置して完全組織を形成するのである。
また製紙面側経糸3をみてみると、製紙面側緯糸3′と7′の上側を通っており、製紙面側緯糸3′の上側を通っている部分では製紙面側経糸4が製紙面側緯糸3′の上側を通っている部分が隣り合って配置され、製紙面側緯糸7′の上側を通っている部分では製紙面側経糸2が製紙面側緯糸7′の上側を通っている部分が製紙面側経糸3と隣り合って配置され、完全組織で製紙面側経糸の2ヶ所形成される1本の製紙面側緯糸の上側を通る部分が、それぞれ異なった側に隣り合う製紙面側経糸の1本の製紙面側緯糸の上側を通る部分と隣り合うように配置されていることがわかる。
このように配置されることにより、製紙面側緯糸3′の部分では製紙面側経糸3と4が接近又は接触配置され、製紙面側緯糸7′の部分では製紙面側経糸3と2が接近又は接触配置され、製紙面側経糸が両側の経糸と交互に接近又は接触してラテラルになり、斜め方向に配置されるのである。
次に接結糸をみてみると、例えば接結糸2′は、製紙面側緯糸1′が連続する製紙面側経糸1、2の下側に配置されている部分の片側で、この製紙面側経糸1、2の上側に配置されて製紙面側経糸2本分のクリンプを形成し、接結糸が接結糸本来の機能と繊維支持糸の機能を合わせ持つことになる。
また、製紙面側緯糸1′と接結糸2′で製紙面側経糸1、2、3、4、5の上側に実質上製紙面側に連続する緯糸クリンプを形成することになって、さらに繊維支持性が良好となる。
次に走行面側織物をみてみると、走行面側緯糸が走行面側に走行面側経糸4本分のクリンプを形成する緯糸摩耗型であることがわかる。
例えば、走行面側緯糸3′は走行面側経糸1、2、3、4の4本分のクリンプを形成している。
このように、図2に示した製紙面の平面図からも製紙面側経糸が両側の経糸と交互に接触してラテラルになり、斜め方向に配置されていることが良く理解できる。
また、接結糸が接触する2本の製紙面側経糸を織り込んでおり、製紙面側経糸の接触力が強固となり、斜め方向の剛性向上を果たしていることが理解できる。
【0018】
実施例2
図3は本発明の他の完全組織を示す意匠図である。
製紙面側織物及び走行面側織物の組織は前実施例と同一であり、異なる点は接結糸と製紙面側織物との織り合わせ方と、製紙面側織物と走行面側織物の重なり方である。本実施例のように接結糸と製紙面側織物との織合わせると、接結糸と製紙面側緯糸が互いに越境してしまう危険性がなく、製織性が良好となる利点がある。
例えば接結糸6′をみてみると、製紙面側経糸1と製紙面側経糸2の上側に配置されている。この位置は、製紙面側経糸1が製紙面側緯糸5′の上側から製紙面側緯糸7′の下側に向かい、製紙面側経糸2が製紙面側緯糸5′の下側から製紙面側緯糸7′の上側に向かって、製紙面側経糸1、2が交差する部分であるため、接結糸が製紙面側緯糸5′や製紙面側緯糸7′の下側に潜り込んだり、上側に乗り上げて越境することがないのである。
【0019】
従来例
上層織物が平織組織で形成されている通常の製紙用2層織物である。
比較試験
実施例1を本発明の代表例として比較試験を実施した。
常法により製織した製紙用織物を100mm角に切断し、対角方向に500gの荷重をかけ伸び量を測定し、斜め方向の剛性を比較した。
実施例は0.6%であったのに対し、比較例は2.4%であった。
【0020】
【発明の効果】
本発明の製紙用2層織物は、上述のように製紙面側と走行面側とをそれぞれ別々の経糸、緯糸用いて構成して、両層の織物を接結糸によって一体化させた織物であっても緯糸の繊維支持性が良好で、かつ剛性、特に斜め方向の剛性が非常に大きく、織物が菱形に変形したり、緯糸が弓状に変形する筋曲がりといわれる現象が発生せず、巾が縮んだり走行性が悪くなる問題がない。
また、坪量が大きく、原料温度が高い板紙を製造しても、地合崩れや負荷アップ等の問題が発生することがないという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例の完全組織を示す意匠図である。
【図2】図1に示した実施例の製紙面を示す平面図である。
【図3】本発明の他の実施例の完全組織を示す意匠図である。
【符号の説明】
1 経糸
2 経糸
3 経糸
4 経糸
5 経糸
1′ 緯糸
3′ 緯糸
5′ 緯糸
7′ 緯糸
9′ 緯糸
2′ 接結糸
4′ 接結糸
6′ 接結糸
8′ 接結糸
10′ 接結糸
Claims (4)
- 製紙面側経糸と製紙面側緯糸とからなる製紙面側織物と、走行面側経糸と走行面側緯糸とからなる走行面側織物と、製紙面側織物と走行面側織物を接合する接結糸、とからなる製紙用2層織物において、A.製紙面側緯糸が、連続する3本の製紙面側経糸の上側を通った後連続する2本の製紙面側経糸の下側を通過し、B.製紙面側経糸が、a.1本の製紙面側緯糸の上側を通った後1本の製紙面側緯糸の下側を通過し、次いで1本の製紙面側緯糸の上側を通り、次に2本の製紙面側緯糸の下側を通過し、b.かつ該2個所に形成される1本の製紙面側緯糸の上側を通る部分を、夫々異なった側に隣り合う製紙面側経糸の1本の製紙面側緯糸の上側を通る部分と接近または接触させて配置したことを特徴とする製紙用2層織物。
- 接結糸を製紙面側緯糸が、連続する2本の製紙面側経糸の下側を通過する部分の片側で該2本の製紙面側経糸の上側に配置した、請求項1に記載された製紙用2層織物。
- 製紙面側経糸が製紙面側緯糸の上を通る位置で交互に隣り合う緯糸と接近または接触して、その位置の間で斜行している、請求項1または2に記載された製紙用2層織物。
- 製紙面側経糸の斜行が隣り合う経糸で逆方向の斜行である、請求項3に記載された製紙用2層織物。
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