JP3883275B2 - 上層織物に補助緯糸を配置した工業用2層織物 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、製紙用織物、不織布製造用織物、汚泥等の脱水や搾水に用いられる織物、建材製造用ベルト、コンベアベルト等の工業用織物に関し、特に製紙用織物、中でも抄紙用織物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来使用されている工業用織物としては、例えば抄紙用織物や抄紙用キャンバス等の製紙用織物、不織布製造用織物、汚泥等の脱水織物、建材製造用ベルト、コンベアベルト等多くのものがある。これらの工業用織物は、使用時に経糸方向に張力を受けながら走行するため伸びや巾方向の収縮が発生しないよう寸法安定性が要求される。また、蛇行したり皺が発生しないように走行安定性、姿勢安定性が要求される。
さらに走行中に駆動ロール等に接触して摩耗を受けるので耐摩耗性も要求される。また、表面に物を載置して搬送したり加工したりすることからいえば表面が平滑であることが要求される。
このような問題は工業用織物共通の問題であるが、未だ満足できる解決がなされていないのが現状である。
【0003】
工業用織物の中でもっとも厳しくこれらの性能を要求される製紙用織物、特に抄紙用織物は、上記の物性等に加えて後述する抄紙独自の諸性能を要求されるが、抄紙用織物について説明すればほとんどの工業用織物共通の問題とその解決について説明でき理解できるので、以下製紙用織物、抄紙用織物を代表して本発明を説明することとする。
製紙方法は周知の技術であって、まずパルプ繊維等を含む製紙原料が、ヘッドボックスからエンドレスに形成されて抄紙機のロール間に掛けられ走行している抄紙用織物上に供給される。
抄紙用織物の原料が供給される上層側が製紙面、その反対側の下層面が走行面である。
供給された原料は抄紙用織物の走行にともなって移送され、移送中に織物の下層面側に設置されたサクションボックスやフォイル等の脱水装置によって、水分が除去され、湿紙が形成される。すなわち、抄紙用織物が一種のフィルターとして機能し、パルプ繊維と水を分離するのである。
この抄紙ゾーンで形成された湿紙は、次にプレスゾーンとドライヤーゾーンに移送される。
プレスゾーンでは、湿紙は抄紙用フェルトに移されて移送され、抄紙用フェルトとともにプレスロール間でニップ圧によって搾水され、さらに水分が除去される。ドライヤーゾーンでは、湿紙は抄紙用キャンバスに移されて移送され、乾燥されて紙が製造される。
上層織物は、合成樹脂モノフィラメント等の経糸、緯糸を用いて織機で製織される。無端状に形成するには周知の織継やピンシーム等によって無端状に形成されるか、袋織り織機により製織の段階で無端状に形成される。
袋織りの場合は織機上と使用時では経糸と緯糸の関係が逆になる。
本明細書において、経糸とは、製紙機械の機械方向すなわち織物の進行方向に伸びている糸であり、緯糸とは、製紙機械の機械横断方向すなわち織物の巾方向に伸びている糸である。
【0004】
製紙用織物、特に抄紙用織物に対しては従来より多くの要求がある。
表面平滑性の向上、紙のワイヤーマーク発生防止、製紙の歩留まりの向上、良好な▲ろ▼水性、耐摩耗性、寸法安定性、走行安定性等である。
近年、抄紙スピードの高速化、中性抄造の増加、填料の使用量の増加、製紙会社のコストダウン政策にともない、上記要求に対しての早期解決が強く望まれている。
抄紙スピードが高速になると、必然的に脱水スピードが高速になり、脱水力も強力になる。製紙原料は抄紙用織物を介して脱水されるのであるから、水分は抄紙用織物の糸間に形成されている網目を通って除去される。この網目を通して▲ろ▼水される空間が▲ろ▼水空間である。ところが、製紙原料から除去されるのは水分だけではなく、細かい繊維や填料等も一緒に抜け出てしまうため製紙の歩留まりが低下する。また、織物上に残って形成された湿紙も脱水力によって、織物製紙面に押しつけられるため、糸が存在している部分では、糸が湿紙にくい込み、逆に糸が存在しない網目間では湿紙が網目間にくい込んで、湿紙表面上に糸と網目のマークを発生させる傾向が強い。
また、網目間には繊維がより滞留するために繊維密度が過密になり、繊維密度の粗密も発生し紙に厚薄が生じる。
これがワイヤーマーク、▲ろ▼水マークと呼ばれるものである。
また、織物の湿紙のくい込みが大きくなったり、繊維のささり込みが発生すると湿紙をフェルトへ移送する場合の湿紙剥離性が悪くなるという問題も発生する。ワイヤーマークを完全に無くすことは不可能であるが、これを極力小さく、目立たなくするために、織物の製紙面を細かくして、繊維支持性と平滑性の向上を図らなくてはならない。
脱水スピードが高速になり、脱水力が強力になると、当然繊維の抜けやワイヤーマークの発生は顕著になるため、さらなる向上が必要となる。
また、繊維は織物走行方向に配向するため、特に緯糸の繊維支持性を向上させる必要がある。
また、高速の条件下で良好に脱水するためには優れた▲ろ▼水性が要求される。優れた▲ろ▼水性を有すれば、脱水の真空圧を抑えることができ、前述した網目間への繊維のもぐり込みや抜けが少なくなり、ワイヤーマークの発生をなくし、歩留まりを向上させることが可能となる。
また、抄紙スピードが高速になると、ロール回転部等で織物に含まれている水が遠心力により飛び散って水しぶきが発生し、その水滴が湿紙におちてマークを発生させる問題が発生するため、織物の保水性を小さくすることも要求されている。
一方、中性抄造の増加は耐摩耗性の向上に対する要求をさらに強いものとすることになった。
中性抄造は填料として炭酸カルシウムを使用するため、酸性抄造で使用するクレーとは異なり走行面の糸を激しく摩耗させるのである。また、抄紙スピードの高速化や、繊維の滞留による▲ろ▼水低下にともなう過剰▲ろ▼水が条件をさらに苛酷にする。
耐摩耗性を向上させるためには、織物組織を緯糸摩耗型組織にしたり、糸の材質を変更したりという対策がとられている。
【0005】
一般的に使用中の織物の耐摩耗性の向上と姿勢安定性の維持の点からは、織物の緯糸に耐摩耗作用を受け持たせることが好ましい。経糸が摩耗すると当然のことではあるが、引張強度が低下して織物の寸法が伸び、さらに摩耗して経糸が摩耗切断すると織物自体が切断してしまって使用寿命が尽きてしまうからである。
また、耐摩耗性の優れているポリアミドモノフィラメントを緯糸に使用することも試みられているが、この試みは織物の構造自体を改善するものではなく、単に使用する材料の性質を利用するだけであって、画期的効果は得られず、反面ポリアミドモノフィラメントを用いた織物はポリアミドモノフィラメントの剛性が小さいため姿勢安定性が悪いという欠点があった。
また、走行面の緯糸に太い糸を使用することも試みられたが、経糸と緯糸のバランスが崩れ、クリンプ性が悪化してワイヤーマーク発生の原因となる等の欠点があり実用上問題があった。
紙のワイヤーマークの発生を防止するためには経糸および緯糸の本数密度を増やし、繊維の支持性を向上させることが考えられるが、そのためには経糸、緯糸の線径を細くする必要がある。
しかし、現在一般的に使用されている周知の経糸1重緯糸2重織物では線径を細くすると耐摩耗性、剛性、姿勢安定性が低下する問題がある。
この様に、製紙用織物は、耐摩耗性や剛性を向上させようと線径を太くすると表面性が損なわれ、紙にワイヤーマークが発生してしまうし、逆に表面性を向上させようと線径を細くして本数密度を増やすと耐摩耗性や剛性が低下してしまうというように、いわば相反する問題を抱えていた。
【0006】
上述の問題を解決するために上層面側と下層面側とをそれぞれ別々の経糸、緯糸を用いて構成して、両層の織物を接結糸によって一体化させた織物の試みもなされている。すなわち、上層織物には線径の小さい経糸、緯糸を使用して緻密な製紙面を形成し、下層織物には線径の大きい経糸、緯糸を使用して耐摩耗性の大きい走行面を形成するのである。
しかしながら、これも必ずしも満足いくものではなかった。なぜならば接結糸と上層面側の糸とが交差する接結部において、接結糸が上層織物を下層面側に引き込むために上層織物表面に凹みが発生し、実際に紙を抄いた時に、この凹みのマークが紙に転写されワイヤーマークを発生させるからである。
また、この凹みを極力少なくするために、接結糸の線径を小さくしたり接結糸の本数を少なくすると、接結力が弱くなるため、接結糸が上層織物と下層織物の間で揉まれて内部摩耗が起こり、さらに接結力が弱くなって、上層織物と下層織物の間に隙間が発生したり、分離してしまい、短時間で使用寿命が尽きてしまう問題がある。
ところで、効果的に繊維の支持性を向上させ、紙にワイヤーマークを発生させずに、良質な紙を抄造するためには、好適には緯糸でパルプ繊維を支持する必要がある。なぜならば、一般的にヘッドボックスから抄紙用織物上に供給されるパルプ繊維は機械方向、すなわち経糸方向に配向するからである。経糸間の凹みを緯糸で分断して繊維を支持してやることにより、繊維が経糸間に滞留するのを防止することができる。
しかし、緯糸だけで製紙面を形成すればよいという訳ではない。織物である以上、経糸が緯糸の上側に位置する部分が必ずあり、この経糸と緯糸が同一平面を形成することによって、表面が平滑で、ワイヤーマークを発生させない製紙面を得ることができるからである。同一平面を形成しつつ、緯糸の繊維維持性を向上させることが必要である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記の問題に鑑みて、上層面側と下層面側とをそれぞれ別々の経糸、緯糸を用いて構成して、両層の織物を接結糸によって一体化させた織物であって、接結糸と上層面側の糸との交差部において、上層織物表面に凹みが発生せず、経糸と緯糸が同一平面を形成して表面平滑性が良好で、さらに緯糸のパルプ繊維支持性を向上させた製紙用織物を提供する。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、
「1. 上層経糸と上層緯糸と上層緯糸間に配置した補助緯糸とからなる上層織物と、下
層経糸と下層緯糸とからなる下層織物と、上層織物と下層織物とを連結する接結糸とからなる工業用2層織物において、上層経糸が、隣接する2本の上層緯糸の上側を通って上層面側に上層緯糸2本分の長さのクリンプのみを形成し、補助緯糸が上層経糸の上層緯糸2本分の長さのクリンプの下側で織り込まれ該上層経糸に隣り合う他の上層経糸の上に配置されることを特徴とする、上層織物に補助緯糸を配置した工業用2層織物。
. 上層緯糸が上層経糸2本分のクリンプと1個のナックルを形成する、項に記載された上層織物に補助緯糸を配置した工業用2層織物。
. 接結糸が全ての上層経糸の組織上同じ位置の上側で、上層経糸の繰り返し単位ごとに交差する、1項または2項に記載された上層織物に補助緯糸を配置した工業用2層織物。
. 上層織物が、隣接する2本の上層緯糸の上を通った後隣り合って連続する3本の上層緯糸の下を通る上層経糸を、上層緯糸との交差位置を意匠図で上方に順次上層緯糸3本分ずらして配置して形成した5シャフトの織物である、1項ないし項のいずれか1項に記載された上層織物に補助緯糸を配置した工業用2層織物。
. 上層織物が、隣接する2本の上層緯糸の上を通った後隣り合って連続する2本の上層緯糸の下を通る上層経糸を、上層緯糸との交差位置を順次上層緯糸1本分ずらして配置して形成した4シャフトの織物である、1項ないし項のいずれか1項に記載された上層織物に補助緯糸を配置した工業用2層織物。
. 補助緯糸と接結糸が上層緯糸の線径の60〜90%の線径である、1項ないし項のいずれか1項に記載された上層織物に補助緯糸を配置した工業用2層織物。」
に関する。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の工業用織物の上層織物は、上層経糸が隣接する2本の上層緯糸の上側を通って上層面側に上層緯糸2本分のクリンプを形成している。上層経糸が、この上層緯糸2本分の上層経糸クリンプを形成するため、例えば製紙に使用すると緯糸の繊維支持性を損なうことなく製紙面に経糸と緯糸の同一平面を形成して表面を平滑にすることができ、また後で説明する補助緯糸の繊維支持性を効率よく発揮させることができるのである。本明細書で用いるナックルという語は、経糸と緯糸の交差部であって、特に1本の糸を組織に織り込む交差部をいう。また、クリンプとはナックルとナックルの間で相手側の糸の片側に連続形成される糸部分であって、特に上層面側、あるいは下層面側に連続して形成される糸部分をいう。
【0010】
上層経糸クリンプがナックルと呼ばれる上層緯糸1本分のみでは上層緯糸を強力に織り込むことになるため、この部分に凹みが発生してナックル間に形成される上層緯糸のクリンプのみが突出し、上層経糸と上層緯糸との同一平面を形成できず、平滑な上層面を得ることができない。
上層経糸クリンプが上層緯糸2本分より長いと逆に上層経糸が緯糸に押されて突出し、緯糸のパルプ繊維支持性を確保できない。
すなわち、上層緯糸の繊維支持性を向上させるためには、当然上層緯糸が経糸の上側に位置して上層面を形成する部分を多くする必要があるが、ただ単に多くしたのでは前述したように緯糸だけが突出してしまうので、上層緯糸2本分の上層経糸クリンプを形成することによってバランスよく、上層経糸、上層緯糸の同一平面を形成しつつ、上層緯糸の繊維支持性を確保できるのである。
また、本発明では補助緯糸を、上層経糸クリンプの間の同一平面を形成せずに凹んでいる上層経糸の上に配置してさらに緯糸の繊維支持性を向上させている。
なお、本発明は、上層経糸クリンプが上層緯糸2本分であるため、補助緯糸をこの同一平面を形成している上層経糸のクリンプの下側で、かつ、上層緯糸間の中間位置で織り込むことができる。したがって、上層緯糸間のほぼ中間位置で、上層経糸クリンプ間の同一平面を形成せずに凹んでいる全ての上層経糸の上側に補助緯糸を配置することができ、効率よく補助緯糸の繊維支持性を発揮させることができるのである。
【0011】
例えば、上層経糸クリンプが上層緯糸1本分のナックル部分で補助緯糸を織り込んだとすると、緯糸と一緒に織り込むことになり、緯糸と密着してしまって効果的に繊維支持を向上できない。
また、上層経糸は、上層緯糸2本分のクリンプを形成していれば、この他に上層緯糸2本分以下の長さのクリンプつまりナックルを形成することも可能であるが、上層緯糸の繊維支持性向上の点からは、あまり多くナックルを形成させることは好ましくない。しかしながらナックルを形成することによる利点としては斜め方向等の剛性向上がある。
なお、上層緯糸クリンプの長さは、特に限定されず上層経糸と同一平面を形成できればよいが、繊維支持性、剛性を考慮すると上層経糸2本分か、3本分が好適である。クリンプの長さが1本分、すなわちナックルではナックルの点で同一平面を形成し繊維を支持することとなるため、短すぎて十分に繊維支持牲が確保できない。
逆にクリンプがあまり長くても、同一平面形成に関与しない凹み部分が大きくなって、実質的な繊維支持性の向上にはならない。緯糸と経糸との交差部では、糸は直角に曲って矩形状に形成されるわけではなく、上層緯糸が上層経糸の下側から上側に行く部分にはどうしても同一平面形成に関与しない凹み部分ができ、この凹み部分はクリンプの長さが長くなるほど大きくなる。また剛性が低下するという問題も発生する。
また、接結糸を、全ての上層経糸の組織上同じ位置の上側で、上層経糸の繰り返し単位ごとに交差するようにすると、上層織物を繰り返し単位ごとに同じ位置で下層面側に引き込んで接結することができるため、上層織物全体を均一に引き込むことができる。
したがって、従来の複数の繰返単位ごとに接結していた2層織物とは異なり製紙面に接結部の虫食い状の凹みが発生することがないのである。
【0012】
上層織物の具体的な組織としては、特に限定されるものではないが、例えば次のような組織がある。
上層織物が、隣接する2本の上層緯糸の上側を通った後隣り合って連続する3本の上層緯糸の下側を通る上層経糸を、経糸と緯糸の交差位置を意匠図で上方に順次上層緯糸3本分ずらして配置して形成した5シャフトの織物である。この組織は上層経糸のクリンプ部分が隣接する経糸間で隣り合う部分がないため、上層経糸間の経糸方向の長い溝が発生せず、上層緯糸の繊維支持性が特に良好である。
次に上層織物が、隣接する2本の上層緯糸の上側を通った後隣り合って連続する2本の上層緯糸の下側を通る上層経糸を、順次上層緯糸1本分ずらして配置して形成した4シャフトの織物である。この組織は上層緯糸と緯糸の交差位置を意匠図で上方に経糸、上層緯糸ともに2本分の長さのクリンプのみを形成するため、クリンプのバランスがよく、製紙面の同一平面を形成しないクリンプがないので、上層面側の糸の同一平面形成に係わる効率がよく、上層織物の平滑性が良好である。
勿論この他にも、3シャフト、6シャフト、7シャフト等の織物も可能である。
【0013】
下層織物については、特に限定されないが、前述したように耐摩耗性が良好な緯糸摩耗型の組織が好適である。上層織物に対する糸本数の密度も特に限定されず、下層経糸や下層緯糸を上層面側の1/2や2/3等の密度にしてもよい。
ただし、特に下層緯糸の密度は、耐摩耗性との関連があるため製紙面と同密度が最も好適である。あまり少なくすると耐摩耗性が低下してしまうのである。
【0014】
本発明に使用される糸としては、織物に望まれる特性によって自由に選択でき特に限定されない。例えば、モノフィラメントの他、マルチフィラメント、スパンヤーン、捲縮加工や崇高加工等を施した一般的にテクスチャードヤーン、バルキーヤーン、ストレッチヤーンと称される加工糸、モール糸、あるいはこれらをより合わせる等して組み合わせた糸等が使用できる。また、糸の断面形状も円形だけでなく四角形状、星型等の矩形状、偏平形状、楕円形状、中空等の糸が使用できる。
また、糸の材質としても、自由に選択でき、ポリエステル、ナイロン、ポリフェニレンサルファイド、ポリフッ化ビニリデン、ポリプロピレン、アラミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエチレンナフタレート、綿、ウール、金属等が使用できる。
勿論、共重合体やこれらの材質に目的に応じて色々な物質をブレンドしたり含有させた糸を使用してもよい。
一般的には、上層経糸、下層経糸、上層緯糸には剛性があり、寸法安定性が優れているポリエステルモノフィラメントを用いるのが好ましく、線径が小さく耐シャワー性、耐フィブリル化性が要求される補助緯糸、前述した内部摩耗に対する耐摩耗性を要求される接結糸にはナイロンモノフィラメントを用いるのが好ましい。また、耐摩耗性が要求される下層緯糸にはポリエステルモノフィラメントとナイロンモノフィラメントを交互に配置する等、交織するのが剛性を確保しつつ耐摩耗性を向上できて好ましい。
【0015】
糸の線径もメッシュ等の工業用織物に望まれる特性によって自由に選択でき特に限定されないが、接結糸、補助緯糸は表面性等の観点から上層緯糸の線径の60〜90%の線径であることが好ましい。
また、組織上は本来1本の糸であるところに、同組織で糸を複数本引き揃えて配置することもできる。細い線径の糸を引き揃えて配置することによって、表面性の向上と、織物の厚さを薄くすることが可能となる。
本発明の実施の形態を工業用織物の主な用途である製紙用織物を例として説明したが、スレート、瓦等の建材製造用ベルトや不織布製造用織物、汚泥等の脱水ベルト、コンベアベルト等の工業用織物にいても同様である。
【0016】
【実施例】
発明の実施例に基づき図面を示して説明する。
図1、4、5、6、7は、本発明の実施例の完全組織を示す意匠図である。
完全組織とは、織物組織の最小の繰り返し単位であって、この完全組織が上下左右につながって織物全体の組織が形成される。
図2は図1の実施例の上層面側の一部平面図、図3は図1の実施例の緯糸に沿った断面図である。
【0017】
意匠図において、経糸はアラビア数字、例えば1、2、3で示し、緯糸はダッシュを付したアラビア数字、例えば1′、2′、3′、で示す。
また、×印は上層経糸が上層緯糸の上側に位置していることを示し、○印は下層経糸が下層緯糸の下側に位置していることを示し、■印は補助緯糸および接結糸が上層経糸の上側に位置していることを示し、□印は接結糸が上層経糸の下側に位置していることを示す。無印は上層経糸が上層緯糸の下側に位置していることと、下層経糸が下層緯糸の上側に位置していることを示す。
上層面側と下層面側の経糸、緯糸は上下に重なって配置されている。本実施例では本数密度が同じであるため、上層面側の経糸、緯糸の真下に下層面側の経糸、緯糸が配置されている。
なお、意匠図では糸が上下に正確に重なって上層面側の経糸、緯糸の真下に下層面側の経糸、緯糸が配置されることになっているが、これは意匠図の都合上であって、実際の織物ではずれて配置されても構わない。
実際に、上層織物と下層織物の密着性を改善させて剛性を向上したり網厚を薄くしたりする目的で、接結糸の組織を非対称にして故意に重なりをずらすこともある。
【0018】
実施例1
図1が本発明の実施例1の完全組織を示す意匠図である。
図1の意匠図において、1、2、3、4、5が経糸であり上層経糸と下層経糸が上下に配置されている。3′、6′、9′、12′、15′が緯糸であって上層緯糸と下層緯糸が上下に配置されている。1′、4′、7′、10′、13′が接結糸で、2′、5′、8′、11′、14′が補助緯糸である。
意匠図より本実施例は、上層織物、下層織物ともに5シャフトの織物であって、全体では10シャフトの織物であることがわかる。補助緯糸は上層緯糸の全ての間に配置され、接結糸も同じ割合で配置されている。
まず上層織物をみてみると、上層経糸1は上層緯糸3′、6′の下側を通り、次いで上層緯糸9′、12′の上側を通り、次いで上層緯糸15′の下側を通っている。上層経糸1の組織はこの繰り返しとなるのであるから上層緯糸15′の下側を通った後は上側に続く次の完全組織の上層緯糸3′、6′の下側を通るのである。よって、上層経糸1の組織は、連続する2本の上層緯糸(上層緯糸9′、12′)の上側を通った後連続する3本の上層緯糸(上層緯糸15′、3′、6′)の下側を通る組織の連続であるということができる。
そして、組織上、この上層経糸1の緯糸、接結糸、補助緯糸との交差位置を上層緯糸3本分順次上方にシフトさせて上層経糸2、3、4、5を配置して完全組織を形成するのである。
上層緯糸3′は上層経糸1の上側を通り、次いで上層経糸2の下側を通り、次いで上層経糸3、4の上側を通り、次いで上層経糸5の下側を通っている。そして、上層緯糸3′の経糸との交差位置を上層経糸3本分右方にシフトさせて順次上層緯糸6′、9′、12′、15′が配置されている。上記のように、上層織物が形成されているため、上層面側には上層経糸の上層緯糸2本分のクリンプと、上層緯糸の上層経糸2本分のクリンプと1本分のナックルが形成されているのである。この上層経糸の上層緯糸2本分のクリンプと、上層緯糸の上層経糸2本分のクリンプが製紙面の同一平面を形成し、平滑な製紙面を提供するのである。上層緯糸の上層経糸1本分のナックルは、2本分のクリンプより距離が短い分多少低く凹むため前記同一平面を形成することはできないが、緯糸の繊維支持性の向上には充分に貢献し、また、剛性の向上も図られるのである。
また、本実施例は意匠図からわかるように上層経糸のクリンプ部分が隣接する経糸間で隣り合う部分がない。例えば、上層経糸1のクリンプは上層緯糸9′、12′の部分で形成され、上層経糸2のクリンプは上層緯糸3′、6′の部分で形成されており互いに隣り合ってないため、上層経糸間の経糸方向の溝が、緯糸によって分断されており、上層緯糸の繊維支持性が特に良好である。
次に補助緯糸をみてみると、例えば補助緯糸11′は上層経糸1に上側から織り込まれ、上層経糸2、3、4、5の上側に配置され、上層経糸4本分のクリンプを形成している。そしてこの補助緯糸のクリンプが上層経糸クリンプ間の同一平面を形成しない凹みを埋めて、上層織物の上層経糸、緯糸とともに同一平面を形成するので、製紙面の平滑性、繊維支持性はさらに向上するのである。
また、補助緯糸11′は上層経糸1が緯糸2本分のクリンプを形成して同一平面を形成している部分の下側に配置されて織り込まれており、その他の部分では上層経糸の上側に配置されているので、繊維支持性の向上が効率よくなされているのである。
上層経糸1のクリンプの上側に補助緯糸を配置したとすると、補助緯糸が製紙面に突出して同一平面が得られない。
なお、上層経糸1がクリンプを形成していない位置で補助緯糸を織り込むことは可能であるが、織り込んだ部分には繊維支持機能を発揮しない凹みが発生するので好ましくない。ただし、上層経糸のクリンプの部分のみで織り込んだのでは、補助緯糸のクリンプが長くなりすぎる場合には他の部分でも織り込んで、補助緯糸の移動が起きないようにしっかりと保持することが好ましい。
次に下層織物をみてみると、下層緯糸が下層面側に下層経糸4本分のクリンプを形成する緯糸摩耗型であることがわかる。
例えば、下層緯糸3′は下層経糸1によって下側から1回織り込まれ経糸1の上側にあり、下層経糸2、3、4、5の下側にあって4本分のクリンプを形成している。下層織物は緯糸摩耗型に限定されるわけではないが、前述したように耐摩耗性の面からは緯糸摩耗型の組織を採用するのが好ましい。
次に接結糸をみてみると、全ての緯糸間に配置され、上層経糸の上側、下層経糸の下側で交差して上層織物と上層織物を連結している。
例えば、接結糸1′は上層経糸4の上側、下層経糸2の下側でそれぞれ交差して上層織物と下層織物を連結している。
なお、本実施例では上層経糸1は接結糸4′、上層経糸2は接結糸13′、製紙面側経糸3は接結糸7′、上層経糸4は接結糸1′、上層経糸5は接結糸10′が上側を通って交差することによって下層面側に引き込まれており、接結糸が全ての上層経糸を繰り返し単位ごとに組織上同じ位置で引き込んでいる。
接結糸を必ずしも全ての緯糸間に配置し、全ての上層経糸の組織上同じ位置で繰り返し単位ごとに交差させる必要はないが、この様な構成にすると、上層織物が織物の織り返し単位ごとに下層面側に引き込まれて接結されるため、上層織物全体が均一に引き込まれ、より平滑な製紙面が得られ好適である。
また、図2の平面図からも上層経糸1が上層緯糸2本分のクリンプを形成し、上層緯糸9′、12′がそれぞれ上層経糸2本分のクリンプと1本分のナックルを形成し、補助緯糸11′が上層経糸1のクリンプの下側でのみ織り込まれて上層経糸4本分のクリンプを形成しており、緯糸の繊維支持性が良好な製紙面が形成されていることがよく理解できる。
また、図3の緯糸に沿った断面図からは、上層経糸1と上層緯糸12′、補助緯糸11′が製紙面に同一平面を形成し、下層緯糸12′が下層面側にクリンプを形成して下層経糸を摩耗から保護していることがよく理解できる。
【0019】
実施例2
図4が本発明の実施例2の完全組織を示す意匠図である。
本実施例は、上層織物の組織、下層織物の組織、補助緯糸の配置は実施例1と同じである。糸と符号の関係も同じである。
異なるのは、上層織物と下層織物の重なり方と、接結糸の組織が異なるだけである。
すなわち、実施例1の下層織物を経糸3本分右側にずらして重ね合わせると本実施例の重なり方と同じになるのである。実施例1の経糸が実施例2の経糸4になっている。
接結糸は、実施例1では接結糸1′が上層経糸4の上側、下層経糸2の下側でそれぞれ交差しているのに対し、本実施例では上層経糸1の上側、下層経糸3の下側でそれぞれ交差している。
上層織物と下層織物の重ね合わせ方、接結糸の組織は自由に選択できるものであり、本実施例と実施例1の間においても性能的にさほど変わることはないが、本実施例では下層経糸が最も上層面側の近くに位置する部分で接結糸と交差しているため、接結糸の上層経糸と交差する部分間の傾斜が小さく、接結力、製織性が良好という利点があり、一方実施例1は上層織物と下層織物で組織の前後、左右の対象位置が同位置となって、重なりのバランスがよくなり、経糸では下層経糸のクリンプ上のちょうど中央位置で上層経糸のクリンプが形成され、緯糸では下層緯糸のナックルの真上に上層緯糸のナックルが形成されるので多少表面性が良好となる利点がある。
【0020】
実施例3
図5が本発明の実施例3の完全組織を示す意匠図である。
図5の意匠図において、1、2、3、4、が経糸であり上層経糸と下層経糸が上下に配置されている。3′、6′、9′,12′が緯糸であって上層緯糸と下層緯糸が上下に配置されている。1′、4′、7′、10′が接結糸で、2′、5′、8′、11′が補助緯糸である。
意匠図より本実施例は、上層織物、下層織物ともに4シャフトの織物であって、全体では8シャフトの織物であることがわかる。補助緯糸は上層緯糸の全ての間に配置され、接結糸も同じ割合で配置されている。
まず上層織物をみてみると、上層経糸1は上層緯糸3′の下側を通り、次いで上層緯糸6′、9′の上側を通り、次いで上層緯糸12′の下側を通っている。上層経糸1の組織はこの繰り返しとなるのであるから上層緯糸12′の下側を通った後は上側に続く次の完全組織の上層緯糸3′の下側を通るのである。上層経糸1の組織は、連続する2本の上層緯糸(上層緯糸6′、9′)の上側を通った後連続する2本の上層緯糸(上層緯糸12′、3′)の下側を通る組織であるということができる。
そして、組織上、この上層経糸1と上層緯糸の交差位置を上層緯糸1本分上方にシフトさせて順次上層経糸2、3、4と配置して完全組織を形成するのである。
上層緯糸は2本の上層経糸の上側を通り、次いで2本の上層経糸の下側を通っている。
例えば、上層緯糸3′は上層経糸1、2の上側を通り、次いで上層経糸3、4の下側を通っている。そして、上層緯糸3′と上層経糸の交差位置を上層経糸1本分右方にシフトさせて順次上層緯糸6′、9′、12′が配置されている。この様に、上層織物が形成されているため、上層面側には上層経糸の上層緯糸2本分のクリンプと、上層緯糸の上層経糸2本分のクリンプが形成されているのである。この上層経糸の上層緯糸2本分のクリンプと、上層緯糸の上層経糸2本分のクリンプが製紙面の同一平面を形成し、平滑な製紙面を提供するのである。この他にはクリンプを形成せず、全てのクリンプが同一平面形成に関与しており、平滑性のよい実施例である。
次に補助緯糸をみてみると、例えば補助緯糸8′は上層経糸1に上側から織り込まれ、上層経糸2、3、4の上側に配置され、上層経糸3本分のクリンプを形成している。そしてこの補助緯糸のクリンプが上層織物の上層経糸、緯糸とともに同一平面を形成するので、製紙面の平滑性、繊維支持性はさらに向上するのである。
また、補助緯糸8′は上層経糸1がクリンプを形成して同一平面を形成している部分で下側に配置されて織り込まれており、その他の部分では上層経糸の上側に配置されているので、繊維支持性の向上が効率よく行われる。
次に下層織物をみてみると、下層緯糸が下層面側に下層経糸3本分のクリンプを形成する緯糸摩耗型であることがわかる。
例えば、下層緯糸3′は下層経糸1によって下側から織り込まれ下層経糸2、3、4の3本分のクリンプを形成している。
次に接結糸をみてみると、前実施例と同様、全ての緯糸間に配置され、上層経糸の上側、下層経糸の下側で交差して上層織物と下層織物を連結している。
例えば、接結糸1′は上層経糸4の上側、下層経糸2の下側でそれぞれ交差して上層織物と下層織物を連結している。
なお、本実施例も接結糸が全ての上層経糸を繰り返し単位ごとに組織上同じ位置で引き込んでいるため、上層織物全体が均一に引き込まれ、より平滑な製紙面が得られるのである。
【0021】
実施例4
図6が本発明の実施例4の完全組織を示す意匠図である。
図6の意匠図において、1、2、3が経糸であり上層経糸と下層経糸が上下に配置されている。3′、6′、9′が緯糸であって上層緯糸と下層緯糸が上下に配置されている。1′、4′、7′が接結糸で、2′、5′、8′が補助緯糸である。
意匠図より本実施例は、上層織物、下層織物ともに3シャフトの織物であって、全体では6シャフトの織物であることがわかる。補助緯糸は上層緯糸の全ての間に配置され、接結糸も同じ割合で配置されている。
まず上層織物をみてみると、上層経糸1は上層緯糸3′の下側を通り、次いで上層緯糸6′、9′の上側を通っている。上層経糸1の組織はこの繰り返しとなるのであるから上層緯糸9′の上側を通った後は上側に続く次の完全組織の上層緯糸3′の下側を通るのである。上層経糸1の組織は、連続する2本の上層緯糸の上側を通った後1本の上層緯糸の下側を通る組織であるということができる。
そして、組織上、この上層経糸1を上層緯糸との交差位置を緯糸1本分上方にシフトさせて順次上層経糸2、3と配置して完全組織を形成するのである。
上層緯糸1本の上層経糸の上側を通り、次いで2本の上層経糸の下側を通っている。
例えば、上層緯糸3′は上層経糸1の上側を通り、次いで上層経糸2、3の下側を通っている。そして、上層緯糸3′を上層経糸との交差位置を緯糸1本分右方にシフトさせて順次上層緯糸6′,9′が配置されている。
上記のように、上層織物が形成されているため、上層面側には上層経糸の上層緯糸2本分のクリンプと、上層緯糸の上層経糸1本分のナックルが形成されているのである。この上層経糸の上層緯糸2本分のクリンプと、上層緯糸の上層経糸1本分のナックルが製紙面の同一平面を形成し、平滑な製紙面を提供するのである。本実施例は上層緯糸が上層面側に上層経糸1本分のナックルしか形成しないため、緯糸のパルプ繊維支持性という面からは前実施例と比較すると劣る面があるが、反面剛性面では優れた実施例である。
次に補助緯糸をみてみると、例えば補助緯糸8′は製紙面側経糸1に上側から織り込まれ、製紙面側経糸2、3の上側に配置され、製紙面側経糸2本分のクリンプを形成している。そしてこの補助緯糸のクリンプが製紙面側織物の製紙面側経糸、緯糸とともに同一平面を形成するので、製紙面の平滑性、繊維支持性はさらに向上するのである。
また、補助緯糸8′は上層経糸1がクリンプを形成して同一平面を形成している部分で下側に配置されて織り込まれており、その他の部分では上層経糸の上側に配置されているので、効率よく繊維支持性の向上がなされているのである。
次に下層織物をみてみると、下層緯糸が下層面側に下層経糸2本分のクリンプを形成する緯糸摩耗型であることがわかる。
例えば、下層緯糸3′は下層経糸1によって下側から織り込まれ下層経糸2、3の2本分のクリンプを形成している。
次に接結糸をみてみると、前実施例と同様、全ての緯糸間に配置され、上層経糸の上側、下層経糸の下側で交差して上層織物と下層織物を連結している。
例えば、接結糸1′は上層経糸3の上側、下層経糸2の下側でそれぞれ交差して上層織物と下層織物を連結している。
なお、本実施例も接結糸が全ての上層経糸を組織上単位ごとに同じ位置で繰り返し引き込んでいるため、上層織物全体が均一に引き込まれ、より平滑な製紙面が得られるのである。
【0022】
実施例5
図7が本発明の実施例5の完全組織を示す意匠図である。
図7が意匠図において、1、2、3、4、5、6、7が経糸であり上層経糸と下層経糸が上下に配置されている。3′、6′、9′、12′、15′、18′、21′が緯糸であって上層緯糸と下層緯糸が上下に配置されている。1′、4′、7′、10′、13′、16′、19′が接結糸で、2′,5′、8′、11′、14′、17′、20′が補助緯糸である。
意匠図より本実施例は、上層織物、下層織物ともに7シャフトの織物であって、全体では14シャフトの織物であることがわかる。補助緯糸は上層緯糸の全ての間に配置され、接結糸も同じ割合で配置されている。
まず上層織物をみてみると、上層経糸1は上層緯糸3′、6′の上側を通り、次いで上層緯糸9′、12′、15′、18′、21′の下側を通っている。上層経糸1の組織はこの繰り返しとなるのであるから上層緯糸21′の下側を通った後は上側に続く次の完全組織の上層緯糸3′の上側を通るのである。
上層経糸1の組織は、連続する2本の上層緯糸の上側を通った後5本の製紙面側緯糸の下側を通る組織であるということができる。
そして、組織上、この上層経糸1を上層緯糸との交差位置を3本分上方にシフトさせて順次上層経糸2、3、4、5、6、7と配置して完全組織を形成するのである。
上層緯糸は1本の上層経糸の下側を通り、次いで1本の上層経糸の上側を通り、次いで1本の上層経糸の下側を通り、次いで4本の上層経糸の上側を通っている。
例えば、上層緯糸3′は上層経糸1の下側を通り、次いで上層経糸2の上側を通り、次いで上層経糸3の下側を通り、次いで上層経糸4、5、6、7の上側を通っている。そして、上層緯糸3′を経糸との交差位置を上層経糸5本分右方にシフトさせて順次上層緯糸6′、9′、12′、15′、18′、21′が配置されている。
上記のように、上層織物が形成されているため、上層面側には上層経糸の上層緯糸2本分のクリンプと、上層緯糸の上層経糸4本分のクリンプと上層経糸1本分のナックルとが形成されているのである。この上層経糸の上層緯糸2本分のクリンプと、上層緯糸の上層経糸4本分のクリンプが製紙面の同一平面を形成し、平滑な製紙面を提供するのである。
次に補助緯糸をみてみると、例えば補助緯糸5′は上層経糸1に上側から織り込まれ、上層経糸2、3、4、5、6、7の上側に配置され、上層経糸6本部のクリンプを形成している。そしてこの補助緯糸のクリンプが上層織物の上層経糸、緯糸とともに同一平面を形成するので、製紙面の平滑性、パルプ繊維支持性はさらに向上するのである。
次に下層織物をみてみると、下層緯糸が下層面側に下層経糸6本分のクリンプを形成する緯糸摩耗型であることがわかる。
例えば、下層緯糸3′は下層経糸2によって下側から織り込まれ、下層経糸3、4、5、6、7、右側に続く意匠図の1の計6本分のクリンプを形成している。
次に接結糸をみてみると、前実施例と同様、全ての緯糸間に配置され、上層経糸の上側、下層経糸の下側で交差して上層織物と下層織物を連結している。
例えば、接結糸1′は上層経糸7の上側、下層経糸3の下側でそれぞれ交差して上層織物と下層織物を連結している。
なお、本実施例も接結糸が全ての上層経糸を繰り返し単位ごとに組織上同じ位置で引き込んでいるため、上層織物全体が均一に引き込まれ、より平滑な製紙面が得られるのである。
【0023】
従来例
図8は従来の工業用2層織物の緯糸の沿った断面図である。
上層織物は平織組織で形成されている。
接結糸1′によって、上層経糸1の部分のみが下層面側に引き込まれ凹み22が形成されていることがよく理解できる。
平織組織は経糸2本分で完全組織を形成するため、接結糸が全ての上層経糸を組織上同じ位置で繰り返し単位ごとに引き込んで、上層織物を均一に引き込むためには、上層経糸2本ごとに接結糸が上側から交差して引き込まなくてはならないのであるが、従来例では上層経糸3、5の部分で接結糸1′が交差してなく、完全組織ごとに引き込まれていないからである。
従来例において、上層経糸3、5の部分で接結糸1′を交差させることは組織上は不可能ではないが、接結糸の上層経糸との交差部と下層経糸との交差部との間の傾斜が余りにも急になって、接結糸の切断が発生したり製織が非常に困難である。
また、必然的に接結糸が下層経糸と交差する部分も増加するために、下層経糸が下層緯糸を下側から織り込んで最も下層面側に位置している下層経糸1の部分でも接結糸が下側で交差する部分ができ、下層経糸が摩耗し始める前に接結糸が摩耗切断して上層織物と下層織物の分離が発生して寿命がつきてしまうため、耐摩耗性の面でも問題がある。
【0024】
比較試験
次に図1に示した本発明の実施例と図8に示した従来例との比較試験を示して本発明の効果を説明する。
織物構成と試験結果を表1に示す。
【0025】
【表1】
Figure 0003883275
【0026】
(註)
シート平滑度:中質紙配合の原料パルプを使用し、タッピスタンダードシートテストマシンで坪量70g/m相当の紙シートを抄造し、常法にしたがって平滑シートを作成し、ベックの平滑度計にて織物面に接していた紙の平滑度を測定した。
ワイヤーマーク:視覚によって判定した。
従来例は、接結糸による凹み部分の紙が厚くなり、この厚い部分が斜めの連続した黒い線となって見える。実施例にはこの様なマークは見えない。
PET:ポリエチレンテレフタレートモノフィラメント
PA:ポリアミドモノフィラメント
【0027】
【発明の効果】
本発明の工業用2層織物は、前述のように上層面側と下層面側とをそれぞれ別々の経糸、緯糸用いて構成して両層の織物を接結糸によって一体化させた織物であっても、接結糸と上層面側の糸との交差部で上層織物表面に凹みが発生せず、経糸、緯糸、補助緯糸が同一平面を形成しており、特に製紙に用いた場合製紙面が平滑で、かつ緯糸、補助緯糸の繊維支持性が非常に良好で、ワイヤーマークがない平滑な紙を製造することができ、リテンションもよく、高速の抄紙スピードにも対応できるという優れた効果を奏する。また他の用途に用いた場合も上層面が平滑で接結糸の切断がなく、使用命数も大きい効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例1の完全組織を示す意匠図である。
【図2】図1に示した実施例の一部平面図である。
【図3】図1に示した実施例の緯糸の沿った断面図である。
【図4】本発明の実施例2の完全組織を示す意匠図である。
【図5】本発明の実施例3の完全組織を示す意匠図である。
【図6】本発明の実施例4の完全組織を示す意匠図である。
【図7】本発明の実施例5の完全組織を示す意匠図である。
【図8】従来例を示す緯糸に沿った断面図である。
【符号の説明】
1 経糸
2 経糸
3 経糸
4 経糸
5 経糸
6 経糸
7 経糸
3′ 緯糸
6′ 緯糸
9′ 緯糸
12′ 緯糸
15′ 緯糸
18′ 緯糸
21′ 緯糸
1′ 接結糸
4′ 接結糸
7′ 接結糸
10′ 接結糸
13′ 接結糸
16′ 接結糸
19′ 接結糸
2′ 補助緯糸
5′ 補助緯糸
8′ 補助緯糸
11′ 補助緯糸
14′ 補助緯糸
17′ 補助緯糸
20′ 補助緯糸
22 凹み

Claims (6)

  1. 上層経糸と上層緯糸と上層緯糸間に配置した補助緯糸とからなる上層織物と、下層経糸と下層緯糸とからなる下層織物と、上層織物と下層織物とを連結する接結糸とからなる工業用2層織物において、上層経糸が、隣接する2本の上層緯糸の上側を通って上層面側に上層緯糸2本分の長さのクリンプのみを形成し、補助緯糸が上層経糸の上層緯糸2本分の長さのクリンプの下側で織り込まれ該上層経糸に隣り合う他の上層経糸の上に配置されることを特徴とする、上層織物に補助緯糸を配置した工業用2層織物。
  2. 上層緯糸が上層経糸2本分のクリンプと1個のナックルを形成する、請求項に記載された上層織物に補助緯糸を配置した工業用2層織物。
  3. 接結糸が全ての上層経糸の組織上同じ位置の上側で、上層経糸の繰り返し単位ごとに交差する、請求項1または2に記載された上層織物に補助緯糸を配置した工業用2層織物。
  4. 上層織物が、隣接する2本の上層緯糸の上を通った後隣り合って連続する3本の上層緯糸の下を通る上層経糸を、上層緯糸との交差位置を意匠図で上方に順次上層緯糸3本分ずらして配置して形成した5シャフトの織物である、請求項1ないしのいずれか1項に記載された上層織物に補助緯糸を配置した工業用2層織物。
  5. 上層織物が、隣接する2本の上層緯糸の上を通った後隣り合って連続する2本の上層緯糸の下を通る上層経糸を、上層緯糸との交差位置を順次上層緯糸1本分ずらして配置して形成した4シャフトの織物である、請求項1ないしのいずれか1項に記載された上層織物に補助緯糸を配置した工業用2層織物。
  6. 補助緯糸と接結糸が上層緯糸の線径の60〜90%の線径である、請求項1ないしのいずれか1項に記載された上層織物に補助緯糸を配置した工業用2層織物。
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