JP4574790B2 - 超音波診断装置及び超音波診断方法 - Google Patents

超音波診断装置及び超音波診断方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、被検体内の動き要素としての血流画像を高分解能且つ高感度に表示できる超音波診断装置および超音波診断方法に関し、とくに、血流画像を得るために被検体に超音波造影剤を投与してコントラストエコー法を実施する場合に好適な超音波診断装置および超音波診断方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
超音波診断装置は、比較的小形でかつ安価である、X線被爆がない、超音波ドプラ法により血流イメージングが可能であるなどの優位性を有しており、今や医療現場において診療に必須のイメージングモダリティになっている。
【0003】
とくに、この超音波ドプラに拠る血流イメージングは、心臓系などの病変部発見に威力を発揮する機能で、カラーフローマッピングCFM(Color Flow Mapping)またはカラードプラ断層法とも呼ばれ、殆どの超音波診断装置に標準装備されているほどである。このカラーフローマッピングは2次元的に血流情報をほぼリアルタイムに表示するもので、一般的に超音波プローブに近づく流れを赤、プローブから遠ざかる流れを青で表示させる。
【0004】
この表示を行うには、従来広く知られているように、被検体内の同一場所(方向)を複数N回、超音波走査して得られた時系列のエコー信号から所望の深さ位置における血球の速度をドプラ法に基づき検出する。すなわち、ドプラ信号は、同一場所を所定時間間隔で走査して得られる血球からの反射信号(血流信号)の単位時間内の位相シフト量(ドプラシフト量)から求められ、これが血流速度に換算される。
【0005】
各回の超音波走査に伴うエコー信号には、血球のように移動している物体からの反射波と、血管壁や臓器実質のように殆ど移動していない固定物体からの反射波が混在している。しかも特徴的なことは、その反射強度の点においては後者が支配的であるが、前者にはドプラシフトが生じているのに対し、後者の固定反射体からの反射波(クラッタ信号)にはドプラシフトが殆ど生じていない点にある。そこで、エコー信号から直交位相検波器(ミキサとLPFを備えて成る)によりドプラ信号が抽出され、このドプラ信号からMTIフィルタがドプラシフト量の差を利用してクラッタ成分を除去することで、血流ドプラ信号が効率良く抽出される。この血流ドプラ信号はその後、各深さ位置のN個のドプラデータを用いて周波数分析が行われ、そのスペクトルの平均値(ドプラ周波数)、分散値、あるいは血球からの反射強度(パワー)が算出される。ドプラ周波数f
【数1】
Figure 0004574790
の式に基づきドプラ速度vに換算される。cは音速、fはミキサの基準信号周波数、θは超音波ビームと血流との成す角度である。このようにして得た血流情報は、通常、Bモード像を背景にして、モニタ上に2次元的に表示される。
【0006】
ここで、このカラーフローマッピング(CFM)を行うときのCFMモードを、分解能、S/N、表示ダイナミックレンジ、折り返り周波数、リアルタイム性などの観点からBモードと比較する。
【0007】
送信超音波のバースト波数は、BモードとCFMモードとでは異なる。バースト波数は、超音波送信周波数fの逆数である送信周期Tの長さを有する超音波パルスの1周期の数である。
【0008】
Bモードは断層像、すなわち臓器実質が反射した超音波信号を観察するモードである。臓器実質からの反射信号は、被検体への安全性を考慮した超音波音圧の範囲内であっても十分に大きな信号値で検出することができるから、十分に高いS/Nを確保できる。そこで、バースト波数を1〜2波と小さい値に設定し、距離分解能を十分に上げることができ、S/Nと距離分解能とを両立させることができる。
【0009】
これに対して、CFMモードは血流、すなわち血球からの反射信号(血流信号)を観察するモードである。この血流信号は、臓器実質からのそれと比べて、約−40〜−80dBと格段に小さい信号強度である。このため、Bモードと同じ送信パルス条件の元ではS/Nが悪く、血流情報は殆ど得られない。
【0010】
そこで、送信超音波パルスのパワーを上げることによりS/Nを改善できる。
しかし、送信音圧は、通常、Bモードにおいて既に被検体の安全性を考慮して決めた値が限度であり、それ以上に上げることは困難である。よって、バースト波数を3波以上の大きな値に設定することで、送信超音波パルスのパワーを上げている。ただし、バースト波数をあまり大きく設定すると、距離分解能が劣化するので、バースト波数の上限値は距離分解能の許容値で決まる。
【0011】
このようにして血流信号のS/Nを上げることができるものの、バースト波数を許容範囲の限度値まで大きく設定したとしても、血流信号のパワー値は依然として、臓器実質からの反射信号のパワー値に比べて、数十dB程度小さい。したがって、表示のダイナミックレンジにも差がある。Bモードの表示ダイナミックレンジは例えば最大100dBと大きいが、CFMモードの内のパワーを表示するパワーモードの表示ダイナミックレンジは、例えば最大40dBと小さい。
【0012】
超音波パルスはレート周期Tで繰り返し送信される。このため、CFMモードの内のドプラ速度を表示する速度モードにあっては、サンプリング定理から、レート周期の逆数であるレート周波数f=1/Tの半分の±f/2で折り返り現象が発生する。この±f/2の値が折り返り周波数と呼ばれる。±の符号は方向分離していることを示す。前記式(1)により、折り返り周波数に対応する折り返り速度v/2を求めると、θ=0とおいて、
【数2】
Figure 0004574790
となる。c、fは一定値であるから、折り返り速度v/2も一定値になる。
この折り返り速度は、診断に供するため、通常、TVモニタ上に血流情報の2次元画像と伴に表示している。
【0013】
さらに、Bモードは同一の走査線(ビームまたはラスタ)方向に1回の超音波パルス送受信を行って断層像を得るが、CFMモードは同一走査線方向に複数回の超音波パルス送受信を行うことでドプラ信号を得て、画像化する。これにより、CFMモードにおけるフレーム数はBモードに比べて大幅に低下する。例えば、同一方向に16回の送受信を行う場合、Bモード分も含めて合計17回の送受信が必要になる。Bモードのフレーム数を例えば100フレーム/秒とすると、CFMモードでは6フレーム/秒となって、リアルタイム性に劣る。
【0014】
CFMモードでのリアルタイム性を改善する対策としては、送信を1方向から行い、複数方向から同時に受信する「並列同時受信」と呼ばれる方法が実用化されている。しかし、この並列同時受信を行う場合、送信ビームを広げなければならないので、被検体内での各サンプル位置(深さ位置)における送信パワーは低下し、結局、検出感度が低下する。送信パワーは安全性に関する規定により、所定値よりも上げることはできないので、並列同時受信を行えば一般的に検出感度は低下する。以上によって、血流信号という感度の低い信号を映像化することを担うCFMモードの場合、並列同時受信法の使用にも制限がある。すなわち、診断部位が心腔内など、比較的感度の良い部位に限られる。並列同時受信法は、リアルタイム性を改善するために有効な手法ではあるが、診断部位に関係無く常時使用できる手法ではない。
【0015】
一方、腫瘍や虚血性心疾患の診断等を目的として、腫瘍血流や冠動脈血流の検出のような、可能な限り細い血管を検出したいという要求は従来から強くあったため、従来のCFMモードにおいて、高性能の部品を使用することにより装置の基本性能を向上させると共に、以下に示す感度向上策が検討された。
【0016】
即ち、パワーモードはその方式が近年、改善されており、速度モードよりも感度が良い。その理由は以下に拠る。
【0017】
速度モードでは、流速が零に近い場合や超音波ビームと直交する流れは黒で表示されるので、速度は表示されないに等しい。一方、改善されたパワーモードに拠ると、これらの血流もパワーの強さに応じて表示される。従って、低流速検出能が高い。
【0018】
また、速度モードでは、或る強さ以下の信号は血流信号であっても、ノイズであると一律に判断されて表示されない。これに対し、改善されたパワーモードによれば、パワーが弱くても、輝度を下げて表示され、空間的な繋がりをみて血流か否かが判断されるので、感度の低い血流も検出され易い。
【0019】
このように改善されたパワーモードは感度が向上しているにも拘らず、従来のCFMモードの条件がそのまま適用されており、その潜在的な性能を十分に発揮するには至っていない。例えば、送信のバースト波数は従来のままであり、空間分解能が低く、細い血管が太く表示されたり、隣り合う血管が分離されずに表示されたりして、低い診断能しか発揮できなかった。
【0020】
このような状況の中で、近年、超音波造影剤を利用した血流評価の試みが行われている。被検体の血管に投与した超音波造影剤(以下、造影剤という)は、超音波信号の散乱強度を増強するので、この増強効果を利用して診断能を向上させる血流画像を得ることが期待されている。とくに、ここ数年、造影剤の性能が著しく向上し、造影効果が上がっていることに加え、静脈からの投与が可能になって侵襲性が低下していることから、造影剤の使用は今後益々普及するものと思われる。これに伴い、超音波診断装置に関しても、年々改善される造影剤の特徴を余すところ無く活用した診断を行うことができる機能を備えて欲しい、との要望がある。
【0021】
この造影剤を投与した被検体の血流を従来の超音波診断装置で観察する場合、残念ながら現状では、以下のような種々の問題が解決されずにいる。
【0022】
造影剤は、血流信号の感度を増強させるために被検体に注入される。具体的には、造影剤は体表から静脈に、または、カテーテルから動脈に投与され、心臓や大血管を通って各臓器に流入する。造影剤の主成分は直径が約数ミクロンの微小気泡であり、血球に比較して散乱強度は格段に高い(例えば数十dB程度、高い)。この造影剤の投与によって、血流信号(実際には血管を流れる造影剤からのエコー信号)は臓器実質からのエコー信号と比肩できる程度に大幅に増強される。これにより、今まで検出が困難であった微細血管や深部血管の検出も可能であると考えられる。
【0023】
しかしながら、実際には、Bモードで表示される血管径に比較して血流が大幅にはみ出して表示される、「ブルーミング」と呼ばれる現象の発生が報告されている。図38(a)には、血管Bを描出した通常のドプラ速度画像の例を、また同図(b)には造影剤投与に因りブルーミングを起こしたドプラ速度画像の例を夫々、説明的に示す。このように、ブルーミングを起こすと、空間分解能が著しく劣化し、診断は現状では実際上、困難である。
【0024】
ブルーミングの発生原因は次のように考えられる。例えば、送信する超音波パルスのパルス長がバースト波数M(正の整数)および送信周波数fで決まる長さに設定されているとする。送信回路から出力される時点のパルス長はM/fとなる。このパルス長の超音波パルスがプローブを通して送受信されると、被検体の周波数依存性減衰やプローブの帯域特性に因り、受信パルスはその時間軸方向に、すなわち深さ方向に鈍って、拡りをもってしまう。さらに、受信してから表示するまでの段階で、種々の処理を目的としたフィルタによる信号処理がなされるから、これらのフィルタ処理に因って、受信パルス波形は一層鈍り、時間軸方向に広がる。
【0025】
これに対し、造影剤を使用しない場合、この広がりはあまり生じない。この理由は以下のように考えられる。血流信号はその強度が低く、装置のノイズレベルを僅かに上回る程度の値に過ぎない。このため、受信パルスの広がりの裾野の大部分はノイズレベル以下となり、このノイズレベル以上の強度を持つパルス長部分はM/fを僅かに上回る程度か、場合によっては下回る。表示は通常、ノイズを表示しないようにゲインを設定して行うので、パルス波形の広がりに因る影響は画像上では殆ど現れない。すなわち、画像上での深さ方向の血管径は、本来の血管自体の径にパルス長M/fを加えた本来の分解能の劣化範囲内に収まり、実使用できた。
【0026】
しかしながら、造影剤を使用すると、画像化する血流信号においては造影剤からの反射信号が支配的となり、信号強度が数十dB程度、増大する。この結果、受信パルスの時間軸方向の広がりにおける裾野の大部分がノイズレベルを越え、ブルーミングが発生する。このブルーミングは方位方向にも発生する。
【0027】
造影剤を投与することで、微細血管の血流をも観察することができる可能性があることは上述した通りである。この微細血管の血流(重要な血流は、腫瘍血流や冠動脈血流である)を観察するときに重要な要素は、血流が流れる瞬間を取りこぼし無く検出するためのリアルタイム性の確保である。従来の装置では、この微細血管の血流をCFMモードで観察せざるを得ないから、フレーム数の不足は致命的である。CFMモードの数フレームだけでは明らかに不足しており、血流の流れる瞬間を取りこぼす恐れがある。
【0028】
さらに、造影剤の投与によって、CFMモードの検出感度はBモード並に向上するものの、CFMモードのパワーモードの表示ダイナミックレンジは従来の場合、大きくても40dB程度であり、これも明らかに不足である。このため、40dBを越える感度の信号部分は全て40dBで飽和して表示されるから、階調性に乏しい、平坦な感じの血流画像としか提供されない。このように表示能に乏しいと、診断能を低下させる恐れもある。また、血流画像の輝度値を目視して診断する場合、飽和部分については正確な輝度情報を提供することはできない。
【0029】
このように、被検体に造影剤を投与して従来装置で血流を観察する場合、上述した各種の問題や不都合があり、結果的に、低い診断能しか発揮できず、殆ど実用に供することができないものであった。
【0030】
【発明が解決しようとする課題】
以上の状況を要約すると、従来の超音波診断装置に拠る血流の画像化は、代表的には、以下のような状況や未解決の問題を有していることが分かる。
【0031】
(1)従来のカラードプラ法に基づく微細血管血流の画像化にあっては、血流信号のレベルが低いため、送信パルス長を長くすること、各種の空間平均処理など、検出感度向上を重視した種々の方法を採用している。しかし、これらの手法は空間分解能を犠牲にしてなされたものである。近年、装置の基本性能が向上すると共に、改善されたパワーモードのように、空間分解能をこれ以上犠牲にしないで、感度を向上させるモードが出現している。CFMの速度モードよりも、改善されたパワーモードの方が感度の点で優れている。しかし、このパワーモードも従来のCFMモードにおける分解能の低さを踏襲したままである。本来、心臓の心腔内を除き、血流像には、腫瘍診断などのように、血管の存在の有無や走行状態を観察することが強く求められており、そのために、より細い血管まで描出することが求められている。
【0032】
このような要求があるにも拘らず、依然として、解決策は提案されていない。
例えば、このような要求があるにも拘わらず、依然として、例えば米国特許第4,809,249号及び同第4,928,698号では、血流速度に基づく相互相関法(時間ドメインでの相関)に拠って、動きのある物体をマッピングする手法を開示している。しかしながら、相互相関法で検出できるのは、感度で劣る血流速度のみである。また、カラー・ベロシティ・イメージング(Color Velocity Imaging:CVI)と呼ばれる血流マッピングを行う装置も開発されている。しかしながら、この装置は、ショートパルス(shortpulse)と呼ばれる波連長の短い超音波パルスを用いるとともに、相互相関法を用いて、感度で劣る血流速度のカラーマッピングを行う装置である。
【0033】
これらの手法は何れも、血流などの動きのある物の速度を求めることを基礎としているため、低流速の血流や微細な血流などに対する検出感度の点で難がある。従って、上述した血流の存在そのものを高精度に観察・確認したいという最近の超音波診断の要求を満たすことはできていない。
【0034】
一方、近年、開発が盛んな造影剤を被検体に投与して従来の超音波診断装置で微細血管血流を観察しようとする手法にあっては、以下のような問題がある。
【0035】
(2)造影剤の増強効果によって検出感度を大幅に向上させることができるが、その一方で、血流画像の空間分解能が著しく劣化し、診断が困難になる。
【0036】
(3)観察対象が微細血管の血流である場合、リアルタイム性が不足し、血流の重要な挙動を見落としてしまう可能性があり、この結果、診断能が著しく低く、診断の信頼性も低下してしまう。
【0037】
(4)造影剤の増強効果によって血流の検出感度がBモード並に向上し、CFMモードに属するパワーモードにおける表示ダイナミックレンジが不足することから、血流像の表示階調が飽和してしまうことがある。この結果、表示の信頼性が低下し、また輝度情報が欠落することもあり、診断能の低下を招いてしまう。
【0038】
本発明は、上述した従来技術の直面している状況を打破するためになされたもので、血流を観察する場合、空間分解能を向上させ、とくに微細な血管や血流速度の遅い血流までも高精細に描出した血流画像を提供することを、その1つの目的とする。
【0039】
また、微細血管の血流を観察する場合であっても、空間分解能を向上させ且つS/Nの高い血流画像を提供することを、別の目的とする。
【0040】
さらに、被検体に造影剤を投与し、造影剤のエコー信号に対する増強効果を利用して微細血管血流を画像化する場合、空間分解能の向上に加え、リアルタイム性に優れ、且つパワーモードにおける画質を向上させた血流画像を提供することを、別の目的とする。
【0041】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明に係る超音波診断装置は、その一形態として、被検体内の同一方向にバースト波数が3未満の広帯域な周波数特性を有する超音波パルスを少なくとも2回ずつ送信しながら画像化したい断面をスキャンし且つその超音波パルスの反射に伴う電気量のエコー信号を各回の送信毎に得るスキャン手段と、前記スキャン手段によって得られる各エコー信号に対して位相検波を行い、前記位相検波を行った各位相検波信号のうち、同一深さ位置の各信号に対して低域周波数成分を遮断すると共に高域周波数成分を通過させる高域濾波処理を施す処理手段と、前記処理手段よって処理された信号から、2次元画像のデータである輝度情報、パワー情報、またはドプラ成分に基づく速度情報を生成する生成手段と、前記2次元画像のデータに基づく画像表示を行う表示手段と、を備えたことを基本的構成とする。
【0046】
以上の構成に基づく本発明の作用の一例を説明する。
【0047】
本発明に係るイメージングモードは、「高分解能フローモード」と呼ぶことにする。この「高分解能フローモード」により、血液の存在の有無を表す高分解能カラーフローマッピング像又はグレースケールフローマッピング像を、コントラストエコー法及び非コントラストエコー法の元で表示させることができる。
【0048】
すなわち、広帯域な周波数特性を有する超音波パルス、すなわち空間分解能の高い超音波パルスを被検体断面に沿って同一方向に数回、送受信しながら、その断面が走査され、ビームフォーミングされたエコー信号が得られる。このエコー信号により形成される、スキャン断面上の各サンプル位置における時間方向のデータ列から不要なクラッタ成分(静止または殆ど静止している組織などからの反射成分)が除去され、血流からのエコー成分(造影剤からのエコー成分)が抽出される。このエコー成分は適宜な態様のデータ(具体的には、輝度又はパワーのデータ)に生成され、血流画像として表示される。
【0049】
このように血流画像は広帯域なエコー信号の輝度又はパワーを表す画像として提供される。このため、従来の送信パルス長が長く且つ/又は血流速度を表示するCFM血流速度画像に比べて、微細な血流や速度が遅い血流をも確実に捕捉し、血流の存在を精細に表した高分解能で且つ高感度な血流画像を提供できる。これにより、血流の検出能を向上させた、信頼性の高い血流存在情報を提示できる。
【0050】
一方、超音波パルスを広帯域に設定するので、生体内の周波数依存性減衰の影響に因り、深さ毎に受信信号の帯域が変わる。そこで、深さに応じて、位相検波の基準信号周波数が変更制御される。また、信号処理系に挿入した帯域特性可変のフィルタの帯域特性が、深さに応じて変更制御される。これにより、高分解能および高感度化が両立される。
【0051】
さらに、造影剤投与によって感度が著しく向上することから、被検体断面上の同一方向への送受信回数を、造影剤を投与しないときに比べて減らした場合であっても、依然として十分な感度および画質の画像を得ることができる。特に、血流信号を抽出する信号処理フィルタを差分フィルタで構成すれば、最低2回の送受信でクラッタ除去が可能である。また、1方向の送信に対する複数方向同時受信の方式を採用したときに、その受信方向数を増やしても、十分な感度および画質の画像が得られる。したがって、送受信回数の低減及び/又は同時受信方向数の増加の手法を用いることで、非常に高いフレームレート(時間分解能)の血流画像を提供できる。
【0052】
さらに、造影剤によって感度が著しく上がるため、エコー信号パワー値の表示ダイナミックレンジも格段に広くなる。これに合わせて表示ダイナミックレンジを設定することで、画像の飽和(すなわち、血流情報の欠落)もなく、高品質な血流画像を提供できる。
【0053】
造影剤からの反射エコーには、基本波と共に高レベルの高調波が含まれる。本発明は、これら反射波の周波数に関係無く、基本波、高調波、及び両者の混合波の何れに対しても適用できる。
【0054】
また、不要なクラッタ成分を除去するには、除去能力がより高い高域濾波であってもよく、リアルタイム性をより高くできる差分であってもよい。
【0055】
また、血流からのエコー成分(造影剤からのエコー成分)は適宜な態様の画像データに生成可能で、それは例えば、パワーモード処理を用いたパワー画像データであってもよく、Bモード処理を用いた輝度画像データであってもよい。
【0056】
また、造影剤が通常の診断に用いる音圧の範囲内で崩壊したり、不規則な振動をしたりすることが原因で反射されたエコー信号の位相が不規則に変化する。従って、パフュージョンのように、たとえ血流(造影剤)が組織中で殆ど静止していても、この位相が変化した造影剤からのエコーは、組織エコー(クラッタ)とは異なり、高域濾波や差分処理によっても抽出される。従って、本発明を、造影剤を投与した被検体に適用すれば、従来できなかったパフュージョンの検出が基本波でも可能で、高分解能、高感度、及びリアルタイムにパフュージョン画像が得られる。
【0057】
本発明に係るその他の構成及び作用効果は、以下の発明の実施形態及び添付図面に基づく説明から明らかになる。
【0058】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る各種の実施の形態を、図面を参照して説明する。
【0059】
(1)第1の実施形態
第1の実施形態に係る超音波診断装置を図1〜4及び図39に基づき説明する。
【0060】
この超音波診断装置は、造影剤を被検体の例えば静脈に投与してコントラストエコー法を実施することで血流像を得る場合に使用されるが、造影剤は必ずしも投与しなくてもよく、非コントラストエコー法を実施する場合にも使用される。
【0061】
図1は、この超音波診断装置の概略構成を示すブロック図である。この装置では、プローブ81に送信系回路82および受信系回路83が併設されており、受信系回路83の出力側に、高域濾波器(HPF)又は差分器84、フローデータ処理器85、および表示器86がこの順に設けられている。HPF又は差分器の一方のユニット84は、周囲組織由来の信号成分を除去して、血流からの反射信号を抽出するために設けられている。
【0062】
送信系回路82は、広帯域の超音波パルスを発生させる広帯域送信パルス発生器82Aと、その超音波パルスを遅延させてプローブ81に印加する送信ビームフォーマ82Bとを備える。また、受信系回路83は、プローブ81で検出したエコー信号を増幅するプリアンプ83Aと、このアンプの出力信号を遅延加算する受信ビームフォーマ83Bとを備える。この内、広帯域送信パルス発生器82Aおよび送信ビームフォーマ82Bは送信チャンネル数分に対応した個別の回路要素を含み、プリアンプ83Aおよび受信ビームフォーマ83Bは受信チャンネル数分に対応した個別の回路要素を含む。
【0063】
広帯域送信パルス発生器82Aは、従来のCFMモードのイメージングで使用されている帯域よりも広く、従来の通常のBモード断層像を生成するために用いる超音波パルスと同程度に広い帯域(広帯域)のパルスを発生し、これを送信ビームフォーマ82Bに送る。このため、送信ビームフォーマ82Bは、かかる広帯域なパルスに応じてプローブ81を送信遅延法に基づき駆動し、プローブ81から「広帯域」な超音波パルスを放射するようになっている。これにより、放射された超音波パルスは被検体内でビームフォーミングされてビームパルスとなる。
【0064】
ここで、超音波パルスの広帯域化について説明する。送信周波数fの逆数が送信周期Tであり、超音波1周期Tの時間長さを持つ超音波パルスをバースト1波のパルス、2周期「2・T」の時間長さを持つ超音波パルスをバースト2波のパルス、M周期「M・T」の時間長さを持つ超音波パルスをバーストM波のパルスとそれぞれ呼び、1波、2波、…M波をバースト波数と呼ぶ。送信周期にバースト波数を掛けた値がパルス長に相当する。
【0065】
広帯域送信パルス発生器82Aは、本発明の特徴の1つを実施する要素であり、具体的には、送信周波数f、バースト波数3未満である広帯域のバースト波数Mのパルスを発生する。以下、バースト波数「1波」を例に説明するが、これは本発明の一般性を失うものではない。
【0066】
この「広帯域の送受信パルス」は、必ずしもバースト波数=3未満のパルスによってのみ限定されるというものではない。例えば、図2に示すように時間バースト波のエンベロープ上の半値幅ΔWと周期Tとの比「ΔW/T」で定義してもよい。この比を用いた場合、本発明で用いる送受信パルスは
【数3】
「ΔW/T」=2.2以下
となる。また、図3に示すように、送受信パルスのスペクトラムの比帯域=ΔW/fc(ΔW:半値幅、fc:スペクトラム中心周波数)で広帯域の範囲を定義してもよい。この場合、
【数4】
比帯域=ΔW/fc=0.3以上
が本発明で説明する「広帯域」に相当する。
【0067】
図1に戻ると、プローブ81で受信された送信超音波パルスの反射信号は、受信チャンネル毎に電気量のエコー信号として、受信系回路83のプリアンプ83Aを介して受信ビームフォーマ83Bに入力する。このビームフォーマ83Bでは送信時と同様にエコー信号に遅延加算が施され、ビームフォーミングがなされる。
【0068】
このビームフォーミングされたエコー信号は、HPF又は差分器の一方の回路84に入力する。差分処理は、エコー信号列中の2データ間の単純な差分には限定されない。この差分処理は、周囲組織由来の信号成分を除去できれば、どのような態様の差分であってもよい。
【0069】
本実施形態では、少なくとも2回以上、超音波パルスが同一ラスタ方向に送受信される。そこで、HPF又は差分器の一方のユニット84に入力するエコー信号により、スキャンされる被検体内の断面上のサンプル位置毎に時間軸方向の並ぶエコーデータ列が生成される。
【0070】
このため、HPF又は差分器84はエコー信号列に高域フィルタリング又は空間基準での差分処理を施して、血流に相当するエコー成分を抽出する。これにより、組織由来の成分は除去される。
【0071】
なお、図4には、造影剤からの受信信号のスペクトラムを示す。造影剤の主成分を成す微小気泡から反射してきたエコー信号には非線形な振動特性に因り高調波、分調波、超調波などが含まれる。したがって、受信信号帯域は、送信信号帯域のみならず、非線形信号帯域をも含むように設定されている。
【0072】
このように、コントラストエコー法を実行したときには、造影剤由来のエコー成分がフローデータ処理器85に入力する。この処理器85では、入力したエコー成分の信号が造影剤エコーの輝度又はパワー情報の画像データに処理される。
なお、非コントラストエコー法が実行されたときには、フローデータ処理器85により、エコー成分の信号が血流エコーの輝度又はパワー情報の画像データに処理される。この画像データは表示器86により、血流の存在位置を表す血流画像として表示される。
【0073】
以上のように、B−モード又はパワーモード(カラーモード)の血流画像を表示することができる。この高分解能フロー画像として表示される血流画像の一例を説明的に図39(b)に示す(同図(a)には、比較のために従来法に拠るドプラ速度画像の例を説明的に示す)。
【0074】
この血流画像を得るに際し、広帯域の超音波パルスが送信されるので、空間分解能の高いグレースケールフロー画像又は高分解能カラー画像が得られる。また、スキャン断面の空間上のサンプル点毎にハイパスフィルタリング又は差分処理が行われるので、不要な生体組織エコーが除去され、造影剤(すなわち血流)由来のエコー信号(又は、血流由来の直接のエコー信号)が確実に抽出される。
【0075】
また、この超音波診断装置は、血流画像を得るために従来のCFM(カラーフローマッピング)法のような、ドプラ法に拠る血流速度を求めるという手法は採用していない。その代わりに、同一方向に複数回スキャンすることで受信したエコー信号をハイパスフィルタリング又は差分処理することで血流エコー信号を確実に抽出し、組織エコー信号を排除し、さらに、抽出された血流エコー信号は、従来のCFMモードのように速度分布の演算に付されることなく、輝度又はパワー情報に処理され、輝度又はパワー情報を血流画像として表示している。このため、ドプラ法に拠り血流速度分布を求める場合(図39(a)参照)に比べて、速度が遅い血流や微細な血流もより感度良く検出することができる。したがって、表示された血流画像の血流B(図39(b)参照)の有無に対する描出能は、血流速度分布に拠る描出能よりも優れたものとなる。
【0076】
この描出能向上の効果は、造影剤を投与しない非コントラストエコー法を実施する場合でも得られることから、完全な非侵襲性と相俟って、細い血管を可視化する上で極めて有益である。
【0077】
また、ハイパスフィルタリング又は差分処理を行うことで血流エコー信号を確実に抽出しているので、Bモード画像でもその画像の特徴を活かした血流イメージングが可能である。
【0078】
(2)第2の実施形態
図5に基づき、第2の実施形態に係る超音波診断装置を説明する。この超音波診断装置は、コントラストエコー法又は非コントラストエコー法に基づき使用される装置で、とくに、帯域可変フィルタの使用に関する。
【0079】
図5に示す如く、受信ビームフォーマ83BとHPF又は差分器84との間に、フィルタ手段としての帯域可変フィルタ87が介挿されている。帯域可変フィルタ87の通過帯域は周波数帯域設定器88により制御される。
【0080】
帯域可変フィルタ87は、受信ビームフォーミングされた走査線(ラスタ)の深さ毎に、通過するエコー信号に対して所望の通過特性を設定する。これにより、信号帯域外のノイズを除去し、S/Nを向上できる。また、深さ方向の信号減衰及び帯域変化の影響を補正したエコー信号が得られる。さらに、高感度な基本波、アーチファクトの少ない高調波、又は両者の混合波などを選択でき、状況に応じて最適な受信周波数を選択できる。
【0081】
帯域可変フィルタ87としては、RF信号を帯域ろ波するフィルタ、中間周波信号を帯域ろ波するフィルタ、直交位相検波後の信号を低域ろ波するフィルタなどを採用できる。中間周波方式または直交位相検波方式を採用する場合、基準周波数(リファレンス周波数)とフィルタ帯域幅が各ラスタ方向の深さに応じて変更される。
【0082】
その他の構成は第1の実施形態の装置と同等である。
【0083】
このため、前述した第1の実施形態に係る作用効果に加えて、S/Nの向上を確実化せしめ、各走査線の深さ方向における帯域変化及び信号減衰の影響を確実に補正でき、さらに、感度向上・アーチファクトの影響低減を最適化させた血流画像が得られる。
【0084】
(3)第3の実施形態
図6に基づき、第3の実施形態に係る超音波診断装置を説明する。この超音波診断装置は、コントラストエコー法又は非コントラストエコー法に基づき選択的に使用するときの送受信特性の切換に関する。
【0085】
図6に示す如く、図5の構成に加え、エコー法切換スイッチ91、送信回数設定器92、及び方向数設定器93が追加的に設けられている。
【0086】
エコー法切替スイッチ91は、コントラストエコー法及び非コントラストエコー法との間の切替を例えば手動で指令するスイッチであり、そのスイッチ信号は方向数設定器93および送信回数設定器92に与えられる。
【0087】
方向数設定器93は、並列同時受信の方向数を設定するために搭載されており、その設定信号を送信系回路82及び受信系回路83に送る。送信回数設定器92は、送信時における同一方向への超音波パルスの送信回数を設定するために搭載されており、その設定信号を送信系回路82及び受信系回路83に送る。
【0088】
受信の方向数設定器93はかかるスイッチ情報に応じて、すなわちコントラストエコー法であるのか、または、非コントラストエコー法であるのかに応じて、異なる並列同時受信数を自動的に切替設定する。また、送信回数設定器92はかかるスイッチ情報に応じて、すなわちコントラストエコー法であるのか、または、非コントラストエコー法であるのかに応じて、異なる同一方向の送信回数を自動的に切替設定する。
【0089】
具体的な切替数としては、エコー法切替スイッチ91からコントラストエコー法が指令されたときには、非コントラストエコー法のときよりも並列同時受信数が増やされる一方で、同一ラスタ方向の送信回数は減らされる。
【0090】
送信系回路82にはまた、上述のようにコントラストエコー法か非コントラストエコー法かに応じて異なる並列同時受信数を示す情報、及び、送信回数設定器92からの送信時の同一方向への送信回数を示す情報が与えられている。これにより、送信系回路82は広帯域の超音波パルスを同一ラスタ方向に指定回数分、繰り替えて送信する。一方、受信系回路83は、指定された並列同時受信数分の同時受信を行う。
【0091】
このため、前述した第1及び第2の実施形態の作用効果に加え、とくに、以下のような効果が得られる。
【0092】
第1に、並列同時受信による効果がある。すなわち、被検体に造影剤を投与してスキャンする場合、前述したように、検出感度は通常、数十dB程度、増強されるので、送信ビームを広げて並列同時受信数を増加させても検出感度は十分に確保される。そこで、方向数設定器93は、コントラストエコー法が指令されたときには、非コントラストエコー法のときよりも並列同時受信数を増やす。これにより、フレーム数(すなわち時間分解能)が格段に上がり、血流画像を高い時間分解能で得ることができる。
【0093】
また、送信時の同一方向送信回数の制御に拠る効果がある。血流エコー信号の強度は低いので、ノイズの影響を受け易い。この影響を減らすため、血流エコー信号の検出時には、通常、例えば、同一ラスタ方向に16回、超音波パルスを送受信して同じ信号源(スキャン断面上のサンプル位置)について時系列方向に並ぶ複数個のデータから成るデータ列を検出し、このデータ列からハイパスフィルタリング又は差分処理により血流エコー信号を抽出している。ところが、コントラストエコー法を実施する場合、血流からの検出感度が数十dB程度、増強されるので、S/Nが大幅に良くなって、血流エコー信号はノイズの影響を殆ど受けなくなる。つまり、同一ラスタ方向への超音波パルスの送信回数を減らしても、高S/Nの安定した血流信号が得られる。そこで、コントラストエコー法が指令されたときには、送信回数設定器92より、同一ラスタ方向の送信回数は減らされる。送信回数を減少させることにより、単位時間あたりのフレーム数(時間分解能に相当)が多くなり、リアルタイム性の高い血流像を提供することができる。
【0094】
さらに、本実施形態では、上述した並列同時受信の方向数増加及び同一ラスタ方向の送信回数低減の両手法を併用しているので、リアルタイム性向上の効果は極めて高いものになる。なお、必要に応じて、上述した並列同時受信方向数増加及び同一ラスタ方向の送信回数低減の内、一方のみを採用する構成を採ってもよい。また、この両手法を前述した第1の実施形態の装置に適用してもよい。
【0095】
(4)第4の実施形態
図7に基づき、第4の実施形態に係る超音波診断装置を説明する。この超音波診断装置は、本発明に係る高分解能フローモードと従来から使用されている通常のBモード又はCFMモードとの切替制御に関する。
【0096】
図7に示す如く、フローデータ処理器85と表示器86に間に画像データを選択するための選択器95が設けられる。その一方で受信系回路83の出力端から、帯域可変フィルタ87、HPF又は差分器84、及びフローデータ処理器85に、Bモード及び/又はCFMモードの処理系回路96が併設されている。このため、選択器95は、Bモード及び/又はCFMモードの処理系回路96からの画像データ、又は、高分解能フローモード側のフローデータ処理器85からの画像データの何れかを選択して表示器86に送る。
【0097】
スイッチ97は、オペレータがモード切替を例えば手動で切り替えるための手段を成す。このスイッチ信号はモード切替コントローラ98に送られる。コントローラ98は、指令モードに応じて、送信系回路82、受信系回路83、帯域可変フィルタ87、HPF又は差分器84及びフローデータ処理器85に拠る高分解能フロー処理部、選択器95、及びBモード及び/又はCFMモードの処理系回路96に切替指令を出す。
【0098】
なお、処理系回路96がBモード用回路である場合、図示しない制御回路による送受信制御機能によって、処理系回路96に送るエコー信号は、各ラスタ当たり1回の超音波パルスの送受信により生成される。
【0099】
この結果、オペレータは、血流画像の表示モードを、高分解能フローモードと従来のBモード及び/又はCFMモードとの間で自在に切り替えることができる。したがって、同じ血流を多角的に観察することでき、診断の確実性に寄与可能になるとともに、装置の汎用性も高くなる。
【0100】
(5)第5の実施形態
図8及び図39に基づき、第8の実施形態に係る超音波診断装置を説明する。
この超音波診断装置は、本発明に係る高分解能フローモードと従来から使用されている通常のBモードとの合成表示に関する。
【0101】
図8に示す如く、帯域可変フィルタ87、HPF又は差分器84及びフローデータ処理器85に拠る高分解能フロー処理部にBモード処理系回路96Aが併設されている。この高分解能フロー処理部の最終段の処理器85とBモード処理系回路96Aとの出力は、画像データを画素毎に合成する合成器99を介して表示器86に至る。
【0102】
なお、図示しない制御回路による送受信の制御機能によって、Bモード処理系96Aに送るエコー信号は各ラスタ当たり1回の超音波パルスの送受信により生成される。
【0103】
この結果、合成器99により、図39(b)に説明的に示す如く、Bモード断層像に高分解能フローモードの血流画像が重畳されて表示される(図39(a)には、比較のため、従来のドプラ速度画像を説明的に例示する)。血流速度が遅くても、また径が細い血流であっても、高感度に検出される。このため、Bモード断層像が背景画像となって、血流の位置を認識し易い高分解能の血流画像が提供される。
【0104】
(6)第6の実施形態
図9に基づき、第6の実施形態に係る超音波診断装置を説明する。この超音波診断装置は、本発明に係る「高分解能フローモード」に基づき「高分解能カラー」と呼ばれる血流画像を得る機能を有する。この超音波診断装置は、コントラストエコー法及び非コントラストエコー法の何れでも実施される。
【0105】
この超音波診断装置は、図9に示す如く、受信系回路83の出力側に、HPF84及びフローデータ処理器85から成る高分解能フローモードを実現する回路と、Bモード処理系回路96Aとが併設されている。両回路は更に合成器99を介して表示器86に至る。合成器99には、血流像と形態画像との表示バランス(合成バランス)を制御するためのバランス制御器100及びスイッチ101が接続されている。
【0106】
この内、フローデータ処理器85は、CFMモードにおけるパワー演算と同じか又はそれに準じるレベルのパワー演算を行うとともに、パワー値に応じた輝度を有するカラーデータにコーディングする。
【0107】
また、合成器99は、高分解能カラーモード処理回路の出力であるフローデータ処理器85の出力とBモード処理系回路96Aの出力とを合成して1つの画像データに生成する。
【0108】
バランス制御器100は、スイッチ101からの例えば手動操作信号を受ける。この信号に応じて、制御器100は、Bモード画像データ及び血流画像データの合成の仕方を調整できるようになっている。
【0109】
このため、高分解能フローモード時に受信系回路83から送られてきたエコー信号はHPF84でハイパスフィルタリングを受け、血流又は造影剤に由来したエコー信号として抽出される。フローデータ処理器85はそのエコー信号を入力して、信号のパワー値を演算するとともに、そのパワー値に応じた輝度を有するカラー画像データを生成する。このカラー画像データは合成器99に送られる。
【0110】
一方、Bモード時に受信系回路83から送られてきたエコー信号はBモード処理系回路96Aにより、信号強度に応じた輝度値で成るグレイスケールのBモード画像デーが生成される。このBモード画像データも合成器99に送られる。
【0111】
この合成器99によって、Bモード画像に血流画像が重畳されるように、画像データの合成が画素毎に行われる。具体的には、Bモード画像データ又は血流画像データの何れか一方しか存在しない画素については、その存在する画素のデータが採用される。一方、両画像のデータが共に存在する画素については、2つの合成法を選択的に用いることができる。1つの合成法は、血流画像の画素データを優先して採用する手法である。この合成法を用いると、断層像上に血流画像が洩れなく表示される。もう1つの合成法は、血流画像とBモード画像との画素値の混合割合を調整しながら合成する手法である。この合成法により、断層像を透かして見ながら血流画像を洩れなく表示することができる。
【0112】
両合成法は、例えば、両合成法の間で連続的に切り替えられることが望ましい。即ち、混合合成法において血流画像の混合比を100%に設定した状態が、前者の血流画像を優先する合成法に相当する。スイッチ101からの設定状態に応じて、バランス制御器100は、この混合割合を調整する。
【0113】
この合成像のデータは表示器86に送られ、表示される。この結果、Bモード画像を背景として、これに血流画像が重畳した画像が殆どリアルタイムに表示される。つまり、形態情報であるBモード画像上に血流画像が重なって表示される。
【0114】
そこで、オペレータは表示器86に表示された画像を見ながら、スイッチ101を適宜に操作することができる。これにより、Bモード画像と血流画像との合成バランスを相対的に変えて、例えば関心部位の画像上での確認を容易に行うことができる。
【0115】
なお、上述の超音波診断装置は、本発明に係る「高分解能フローモード」に基づき「グレースケールフロー」と呼ばれる血流画像を得る機能を有することもできる。その場合には、フローデータ処理器85に、上述した構成に代えて、Bモードの輝度演算と同じか又はそれに準じるレベルの輝度演算を行う構成を備えればよい。これによって、コントラストエコー法又は非コントラストエコー法の実施状態において、通常のBモード像を背景とし、これに「高分解能フローモード」の輝度情報に拠る血流画像を重畳させて表示できる。このときも、スイッチ101を操作することで合成器99での混合比を調整でき、Bモード画像である背景像と輝度情報から成る血流画像の合成バランスを相対的にコントロールすることができる。
【0116】
(7)第7の実施形態
図10に基づき、第7の実施形態に係る超音波診断装置を説明する。この超音波診断装置は、第6の実施形態と同様に、本発明に係る「高分解能フローモード」に基づき「高分解能カラー」と呼ばれる血流画像を得る機能を有する。この超音波診断装置は、コントラストエコー法及び非コントラストエコー法の何れでも実施される。
【0117】
この超音波診断装置は、図10に示す如く、受信系回路83の出力側に、差分器84及びフローデータ処理器85から成る高分解能フローモードを実現する回路と、Bモード処理系回路96Aとが併設されている。その他の回路要素は前述した図9のものと同等である。
【0118】
したがって、本実施形態においても、高分解能フローモード時に受信系回路83から送られてきたエコー信号は差分器84で差分演算を受け、血流又は造影剤に由来したエコー信号として抽出される。フローデータ処理器85はそのエコー信号を入力して、信号のパワー値を演算するとともに、そのパワー値に応じた輝度を有するカラー画像データを生成する。このカラー画像データは合成器99に送られる。
【0119】
一方、Bモード時に受信系回路83から送られてきたエコー信号はBモード処理系回路96Aにより、信号強度に応じた輝度値で成るグレイスケールのBモード画像デーが生成される。このBモード画像データも合成器99に送られる。
【0120】
この合成器99により、Bモード画像に血流画像が重畳されるように、画像データの合成が画素毎に行われる。具体的には、Bモード画像データ又は血流画像データの何れか一方しか存在しない画素については、その存在する画素のデータが採用される。一方、両画像のデータが共に存在する画素については、2つの合成法を選択的に用いることができる。1つの合成法は、血流画像の画素データを優先して採用する手法である。この合成法を用いると、断層像上に血流画像が洩れなく表示される。もう1つの合成法は、血流画像とBモード画像との画素値の混合割合を調整しながら合成する手法である。この合成法により、断層像を透かして見ながら血流画像を洩れなく表示することができる。
【0121】
両合成法は、例えば、両合成法の間で連続的に切り替えられることが望ましい。即ち、混合合成法において血流画像の混合比を100%に設定した状態が、前者の血流画像を優先する合成法に相当する。スイッチ101からの設定状態に応じて、バランス制御器100は、この混合割合を調整する。
【0122】
この合成像のデータは表示器86に送られ、表示される。この結果、Bモード画像を背景として、これに血流画像が重畳した画像が殆どリアルタイムに表示される。
【0123】
このため、オペレータはスイッチ101を適宜に操作することで、Bモード画像と血流画像との合成バランスを相対的に変えることができる。
【0124】
なお、上述の超音波診断装置は、本発明に係る「高分解能フローモード」に基づき「グレースケールフロー」と呼ばれる血流画像を得る機能を有することもできる。その場合には、フローデータ処理器85に、上述した構成に代えて、Bモードの輝度演算と同じか又はそれに準じるレベルの輝度演算を行う構成を備えればよい。
【0125】
なお、前述した第4〜第7の実施形態において、異なる種類の画像(例えばBモード又はCFMモードの画像と、本発明に係る「高分解能フローモード」の血流画像)を表示器86に表示させるときに、必ずしもそれらを重畳する必要はない。例えば同一画面を分割して個々に表示してもよい。また、表示器を複数台設置して、それらの画像を個々に表示させてもよい。
【0126】
(8)第8の実施形態
第8の実施形態に係る超音波診断装置を、図11〜15、40、及び41に基づき説明する。
【0127】
この超音波診断装置は、造影剤投与下で行うBモードまたはハーモニックBモードの診断に本発明を適用した例に関する。
【0128】
図11は、この超音波診断装置の概略構成を示すブロック図である。この装置では、プローブ81に送信系回路82および受信系回路83が併設されており、受信系回路83の出力側に、帯域可変フィルタ104、差分フィルタ105、Bモード処理系回路106、および表示器107がこの順に設けられている。
【0129】
送信系回路82は、広帯域の超音波パルスを発生させる広帯域送信パルス発生器82Aと、その超音波パルスを遅延させてプローブ81に印加する送信ビームフォーマ82Bとを備える。また、受信系回路83は、プローブで検出したエコー信号を増幅するプリアンプ83Aと、このアンプの出力信号を遅延加算する受信ビームフォーマ83Bとを備える。この内、広帯域送信パルス発生器82Aおよび送信ビームフォーマ82Bは送信チャンネル数分に対応した個別の回路要素を含み、プリアンプ83Aおよび受信ビームフォーマ83Bは受信チャンネル数分に対応した個別の回路要素を含む。
【0130】
送信系回路82は、詳しくは、図12に示す回路構成になっている。すなわち、広帯域送信パルス発生器82Aは、送信トリガ発生器191、パルス発生器192、分周器193、およびパルス長設定器194を備える。また、送信ビームフォーマ82Bは送信回路195および遅延データ設定器196を備える。
【0131】
送信トリガ発生器191は、図13に示す如く、送信パルスを発生させるためのタイミング信号を所定レート周期Tで出力する。このタイミング信号はパルス発生器192および分周器193に与えられる。パルス長設定器194は、広帯域の超音波パルスを送信するためのパルス長設定信号をパルス発生器192に送っている。
【0132】
パルス発生器192は、タイミング信号およびパルス長設定信号に応答して送信チャンネル数分の駆動パルスを発生し、これを送信回路195に与える。分周器193はタイミング信号を所定周期に分周して(図13参照;同図には1/2分周の場合を図示している)、その分周信号を遅延データ設定器196に送る。
【0133】
さらに、遅延データ設定器196は、例えば電子セクタスキャンの如くラスタ(走査線)方向を変更するための送信チャンネル毎の遅延量データを分周信号の入力毎(すなわち、ラスタ毎に)に発生し、これを送信回路195の送信チャンネル毎の遅延要素に与える(図13参照)。このため、送信回路195は、送信チャンネル毎に、駆動パルスを遅延させ、その後、増幅してプローブ81の複数の振動子に与える。したがって、プローブ81から被検体内に送信された超音波パルスは遅延量データに応じた送信指向性を有する。
【0134】
なお、図14には、この図12の回路構成に対応した従来の送信系回路82´を参考のために示す。すなわち、分周器を用いない回路となっており、パルス長設定器は本発明の特徴の1つとする広帯域ではない所望のパルス長を設定する。
また、図15には、図14の回路構成による動作を対比のために示す。
【0135】
一方、プローブ81で受信された送信超音波パルスの反射信号は、受信チャンネル毎に電気量のエコー信号として、受信系回路83のプリアンプ83Aを介して受信ビームフォーマ83Bに入力する。このビームフォーマ83Bでは送信時と同様にエコー信号に遅延加算が施され、ビームフォーミングがなされる。
【0136】
このビームフォーミングされたエコー信号は、深さ毎に所望の特性あるいは通過帯域が設定された帯域可変フィルタ104により、深さ毎に所望の周波数成分が抽出される。帯域可変フィルタ104としては、RF信号を帯域ろ波するフィルタ、中間周波信号を帯域ろ波するフィルタ、直交位相検波後の信号を低域ろ波するフィルタなどを採用できる。中間周波方式または直交位相検波方式を採用する場合、基準周波数(リファレンス周波数)とフィルタ帯域幅が各ラスタ方向の深さに応じて変更される。ハーモニックBモードで画像表示する場合、受信信号帯域は、送信信号帯域のみならず、非線形信号帯域をも含むように設定されている。
【0137】
本実施形態では、少なくとも2回以上、超音波パルスが同一ラスタ方向に送受信される。そこで、差分フィルタ105により、これらの同一ラスタ方向に沿った複数回の受信エコー信号について空間基準での差分処理が行われ、造影剤由来の信号が検出される。この信号がBモード処理系回路106を経て表示器107に送られ、この表示器107のモニタに表示される。
【0138】
なお、空間基準の差分処理は、2データ間の単純な差分には限定されない。この差分処理は、周囲組織由来の信号成分の除去を目的としており、2回以上の同一ラスタ方向への送信で2個以上のデータに対する高域ろ波処理も含まれる。
【0139】
以上のように、通常のBモードまたはハーモニックBモードの表示を行うことができ、このときに、広帯域の超音波パルスが送信されるので、空間分解能の高いBモード像が得られ、かつ、帯域可変フィルタの帯域特性などが深さに応じて変更されるので、検出感度も良く、S/Nも高い。また空間上の各点毎に差分処理が行われるので、不要な生体組織エコーが除去され、造影剤からの信号が確実に抽出される。差分処理は最低2回の送受信で済むから、従来のCFMモード比べて高いフレームレートを維持することができる。さらに、Bモードは本来的にダイナミックレンジが大きい。したがって、このBモードおよびハーモニックBモードのスキャンよって、高分解能、高フレームレート、および高ダイナミックレンジの造影剤画像、すなわち血流画像が得られる。
【0140】
とくに、造影剤を投与することで、生体組織内のパフュージョン像を提供することもできる。図40(b)に、この高分解能フロー画像としての、造影剤を用いたパフュージョン画像の例を説明的に示す(同図(a)には、比較のため、従来のドプラ速度画像を説明的に示す。このドプラ速度画像にはパフュージョンは殆ど描出されない)。超音波造影剤の主成分は微小気泡であるので、送信超音波パルスの音圧を所定範囲内(生体の安全基準の制限値内で)高くしていくと、微小気泡を消失させることができる。消失する微小気泡からの反射信号には、微小気泡(造影剤)が生体組織内に静止している場合でも、それが動いている状態のときと同様の信号成分が含まれる。したがって、超音波パルスで造影剤を消失させるとともに、差分処理で静止している不要な生体組織エコーを除去することで、Bモードであっても、高分解能、高フレームレート、高ダイナミックレンジで生体組織内のパフュージョン像を提供することができる。
【0141】
造影剤の微小気泡は、送信した超音波信号の照射エネルギによって消失する現象が知られている。この消失時における造影剤由来の信号によるデータ間の変化の速さを利用することで、場合によっては、クッパー細胞に取り込まれ且つ臓器に対して静止している造影剤信号を、動きの遅い周囲組織由来の信号から弁別することができる。
【0142】
また、本発明に係る本実施形態において、超音波パルスの音圧は造影剤が消失しない値に設定される。造影剤は、この造影剤が消失しない音圧で、不規則な振動を起こす。このとき、同一ラスタ方向に対する複数回の送信に対する微小気泡(造影剤)からの反射信号の位相は、毎回異なった値になる。これは、この反射信号が、動いている状態と同様の信号として認識されることを示す。従って、微小気泡が消失するときと同様のパフュージョン画像が、造影剤を消失させること無く、得られる。また、従来では、ドプラ法に拠る血流速度画像では得ることができなかった直交血流の検出が、この不規則振動現象を起こさせることで可能となる。図41(b)には、高分解能フロー画像として、超音波ビームに直交する血流を検出した血流画像の例を説明的に示す(同図(a)には、比較のため、直交流を従来のドプラ速度画像により観察した説明図を例示する)。
【0143】
造影剤を消失させないので、今までのような造影剤消失後の感度低下を補うための再充満を待つ必要が無く、造影剤を用いたパフュージョン及び血流の、本来の意味でのリアルタイム画像が得られる。また、Bモード(基本波)であっても画像化が可能であるので、高感度な画像が得られる。
【0144】
(9)第9の実施形態
本発明の第9の実施形態に係る超音波診断装置を図16に基づき説明する。
【0145】
この超音波診断装置は、被検体に造影剤を例えば静脈から注入した状態で血流情報をイメージングするCFM(カラーフローマッピング)モードの診断に供される。造影剤としては、例えば、LevovistやOptison(商品名)が使用される。
【0146】
図16に、この超音波診断装置の機能ブロック図を示す。なお、この超音波診断装置は、本発明に係る各種の特徴のいくつかを具体化するときの概要構成として示すもので、その特徴の詳細は第10の実施形態にて説明される。
【0147】
同図に示すように、この超音波診断装置は、被検体の体表に当接させて使用する超音波プローブ(以下、プローブという)1を備える一方で、このプローブ1に電気的に接続された送信系回路2および受信系回路3と、この受信系回路3に電気的に接続されたBモード処理系回路4およびCFMモード処理系回路5と、この両処理系回路4、5に電気的に接続された表示系回路6とを備える。
【0148】
プローブ1は、超音波信号と電気信号の間で双方向に信号変換する機能を有する。このプローブ1は、一例として、その先端にリニアに配置されたアレイ型圧電振動子を備える。アレイ型振動子は複数の圧電素子を並列に配置し、その配置方向を走査方向としたもので、複数の圧電素子それぞれが送受信の各チャンネルを成す。
【0149】
送信系回路2は、広帯域な送信用パルスを発生させる広帯域送信パルス発生器2Aと、その送信用パルスを遅延制御するとともに駆動パルス信号に変換してプローブ1の送信チャンネル毎の振動子を励振する送信ビームフォーマ2Bとを備える。これにより、プローブ1から被検体内に送信される超音波パルスは、例えばバースト波数が3未満の広帯域を有する。したがって、プローブ1を介して、広帯域な超音波パルスで送受信が行われ、このパルスを被検体の断面上の同一ラスタ方向について少なくとも2回以上、送受信するスキャンが行われる。広帯域な超音波パルスであるので、空間分解能が高くなる。
【0150】
プローブ1は、反射超音波パルスを電気量の信号に変換して、これを受信系回路3に送る。受信系回路3は、受信チャンネル毎のプリアンプ3Aと、受信遅延加算用の受信ビームフォーマ3Bとを備え、受信した信号を遅延加算することで送信時と同一方向にビームフォーミングしたエコー信号を形成する。このエコー信号はBモード処理系回路4およびCFMモード処理系回路5に送られる。
【0151】
Bモード処理系回路4により、超音波パルス送受信で得たエコー信号が検波され、Bモードの断層像データが生成される。
【0152】
これに対し、CFMモード処理系回路5は、図16に示す如く、その入力側から位相検波器5A、帯域可変フィルタ5B、MTIフィルタ5C、および血流情報検出器5Dをこの順に備えている。
【0153】
この内、位相検波器5Aはエコー信号を直交位相検波してドプラ信号を抽出する要素である。この直交位相検波時に用いられる基準信号の周波数は、被検体の断面上の各ラスタ方向における位置、すなわち被検体の体表からの深さに応じてリアルタイムに変更制御される。これにより、広帯域な超音波パルスの送受信に伴う、生体内の周波数依存性減衰の影響が排除または大幅に抑制される。また、帯域可変フィルタ5Bは、エコー信号のみを濾波し、ノイズを除去するために挿入されている。このフィルタ5Bの周波数帯域も、ラスタ方向の深さに応じてリアルタイムに変更される。これにより、ノイズが有効に除去される。このように、基準信号の周波数およびフィルタの帯域を深さに応じて変更することで、送受信する超音波パルスが広帯域(高分解能)であっても、S/Nを向上させて検出感度を上げることができる。
【0154】
このノイズ除去されたドプラ信号(ドプラデータの列)は、固定反射体に起因したクラッタと血流ドプラ信号を含むが、その後段のMTIフィルタ5Cに与えられる。このMTIフィルタ5Cにより、ドプラシフト量の違いを利用して、ドプラ信号から固定反射体に起因したクラッタ成分が除去される。
【0155】
この後、ドプラ信号(詳しくは血流ドプラ信号)は血流情報検出器5Dに送られ、その信号の周波数解析を通して血流の速度(平均速度)が求めらるとともに、血流からの反射信号のパワー、速度分布の分散などの血流動態の情報、いわゆる血流情報が演算される。このパワー値を演算するときには、造影剤の投与下でのスキャンなどを考慮して、表示ダイナミックレンジを広く設定したパワーが演算される。これにより、表示飽和に因るパワー情報の欠落が防止される。また、この検出器5Dでは、上述のように基準信号の周波数を変更制御していることに対応して、速度モードで複数の折り返り速度を演算している。この折り返り速度の演算は、後述する第10の実施形態で詳述するように種種の態様で実施可能である。
【0156】
この血流情報は表示系回路6に送られる。表示系回路6は、画像合成器6Aおよび表示器6Bを備える。画像合成器6Aは、例えばBモードの断層像データにCFMモードに係る血流情報を重畳し且つ折り返り速度を併記した状態の画像データを作成し、これを表示器6Bに表示させる。
【0157】
(10)第10の実施形態
本発明の第10の実施形態に係る超音波診断装置を図17〜36に基づき説明する。この実施形態では、上述した第9の実施形態に係る超音波診断装置の構成をさらに具体化して説明する。この装置による全体動作の流れは、第9の実施形態のものと同様である。
【0158】
10.1.装置構成の概要
最初に、この超音波診断装置の構成の概要を説明する。図17に示す超音波診断装置は、第1の実施形態の装置と同様に全体的には、プローブ11、送信系回路12、受信系回路13、Bモード処理系回路14、CFMモード処理系回路15、および表示系回路16を備える一方で、オペレータが必要な情報を入力するための操作パネル17、および、その操作情報を取り込んで対応する制御情報を生成して、この情報を装置内の必要なユニットに送る制御装置18を備える。制御装置18はCPUを備えており、ソフトウエア的に与えられた各種の演算を行う。なお、制御装置18は、論理回路などのデジタル回路を中心に構成してもよい。
【0159】
10.2.各部の構成および動作
プローブ11は、第9の実施形態で説明したものと同様に、一例として、アレイ形振動子を用いた電子セクタスキャン用の構造を有している。
【0160】
10.2.1.送信系の構成および動作
送信系回路12は、図17に示す如く、送信トリガ発生器21、パルス発生器22、送信回路23を送信経路に沿ってこの順に備えるとともに、パルス長設定器24、並列同時受信時の方向数設定器25、同一方向に対する送信回数設定器26、および、エコー法切替スイッチ27を備える。
【0161】
これらの要素の動作概要を説明する。まず、送信トリガ発生器21は、送信トリガを発生する。パルス発生器22は、その送信トリガを受けて送信パルスを発生する。さらに送信回路23は、その送信パルスを駆動パルスに変換してプローブ1の各振動子に与える。一方、パルス長設定器24は、パルス長を設定するために搭載されており、その設定信号をパルス発生器22およびCFMモード処理系回路15に送る。方向数設定器25は、並列同時受信の方向数を設定するために搭載されており、その設定信号を送信回路23、受信系回路13、Bモード処理系回路14、およびCFMモード処理系回路15に送る。送信回数設定器26は、送信時における同一方向への超音波パルスの送信回数を設定するために搭載されており、その設定信号を送信回路23、受信系回路13、およびCFMモード処理系回路15に送る。さらに、エコー法切替スイッチ27は、コントラストエコー法および非コントラストエコー法との間の切替を指令するスイッチであり、そのスイッチ信号は方向数設定器25および送信回数設定器26に与えられる。
【0162】
これらの要素の構成および動作を更に詳述する。
【0163】
送信トリガ発生器21は、超音波送信間隔(レート周期)Τで送信トリガ信号Strgを発生し(図19参照)、この送信トリガ信号Strgを後段のパルス発生器22に送って同発生器にトリガをかける。
【0164】
パルス長設定器24は、パルス長を決めるパラメータである送信周波数fおよびバースト波数Mの情報をパルス発生器22に与える。
【0165】
パルス発生器22は、図18に示す如く、パルス長演算器221、カウンタ222、D型フリップフロップ(D−F/F)223、およびインバータ224、225を備える。この内、パルス長演算器221は、パルス長設定器24が与える送信周波数f(=1/T)およびバースト波数M、さらには図示しない基準クロック発生器から与えられる基準クロック周期Tを入力する。そして、この演算器221は、「M・T/T」の演算を行なって基準クロックで換算したパルス長を演算して、そのパルス長を表すパルス長信号Slngを出力するとともに、パルス長設定信号Ssetを出力する。
【0166】
カウンタ222は、それらパルス長信号Slngおよびパルス長設定信号Ssetを入力するとともに、図示しない基準クロック発生器から基準クロックパルスPckを、さらに前述した送信トリガ発生器21から送信トリガ信号Strgをインバータ224を介して負論理で入力している。また、このカウンタ222の出力パルスSoutはインバータ225を介してD−F/F223の負論理のクリヤ端子に与えられ、かつ送信トリガ信号Strgがインバータ224を介してクロック端子に与えられている。
【0167】
このため、送信トリガ信号Strgがオンときは、カウンタ222はクリヤされ、その出力信号Soutはオフである。D−F/F223の出力パルス、すなわちパルス発生器22の出力Splsはイニシャル状態ではオフになっている。
送信トリガ信号Strgがオンからオフに立ち下がると、その立ち下がりに応答してカウンタ222による基準クロックパルスPckの計測が開始され、同時にD−F/F223がセットされる。カウンタ222が「M・T/T」分の基準クロックパルスPckをカウントするまでは、その出力パルスSoutがオフを維持し、その維持の間、D−F/F223のセット状態(パルス発生器22の出力Splsのオン)も維持される。
【0168】
そして、カウンタ222が「M・T/T」分の基準クロックパルスPckをカウントし終わると、その出力パルスSoutがオン状態になる。このオンに付勢されて、D−F/F223がクリアされる。つまり、パルス発生器22の出力Splsもオフになる。したがって、カウンタ222の計測期間M・Tに相当するパルスSplsがパルス発生器22から送信回路23に出力される。
【0169】
このように、パルス発生器22は、送信周波数f、バースト波数1波(この場合は、「M・T/T」においてM=1とする)の電気信号パルスSplsをレート周期Τで発生する(図19参照)。このパルスSplsは送信回路23に与えられる。
【0170】
一方、エコー法切替スイッチ27には、超音波イメージングをコントラストエコー法で行うのか、非コントラストエコー法で行うのかの設定が例えばオペレータにより手動でなされている。この設定されたスイッチ情報は、上記両設定器25および26に与えられている。
【0171】
そこで、受信方向数設定器25はかかるスイッチ情報に応じて、すなわちコントラストエコー法であるのか、または、非コントラストエコー法であるのかに応じて、異なる並列同時受信数を自動的に切替設定する。また送信回数設定器26はかかるスイッチ情報に応じて、すなわちコントラストエコー法であるのか、または、非コントラストエコー法であるのかに応じて、異なる同一方向の送信回数を自動的に切替設定する。つまり、超音波造影剤を使用するか否かに応じてエコー法切替スイッチ27を操作することで、並列同時受信数および同一方向送信回数を切り替えることができる。
【0172】
送信回路23にはまた、上述のようにコントラストエコー法か非コントラストエコー法かに応じて切替可能な、受信方向数設定器25からの並列同時受信数を示す情報および送信回数設定器26かの送信時の同一方向への送信回数を示す情報が与えられている。
【0173】
そこで、送信回路23は、パルス発生器22から与えられたパルスSplsを増幅して駆動パルスを生成する一方で、その駆動パルスの遅延時間を並列同時受信のビーム数およびビーム位置を加味した遅延時間パターンで送信チャンネル毎に制御する。これにより、送信回路23から、所望数の並列同時受信に対する遅延制御がなされた所望パルス長(送信周波数f、バースト波数=1)の駆動パルスがレート周期Tでプローブ11の各圧電振動子に繰返し供給される。
【0174】
プローブ11は、送信回路23から供給される電気量の駆動パルスを超音波パルスに変換し、これを被検体内に送信させる。この送信はレート周期T毎に繰り返される。この繰り返しを行う中で、同一のラスタ方向について、指定された回数分の送信が同一ラスタ方向について行われる。この送信された超音波パルスのビームは、所望数の並列同時受信の受信ビームをカバーするようにそのビーム開口が広げられる。
【0175】
Bモードの送信の場合、送信回路23により、並列同時受信に拠る遅延時間制御の状態で、超音波送受信毎に各圧電振動子に与える駆動パルスの遅延時間を少しずつ変化させる。これにより、被検体の断面がBモード用にスキャンされる。
一方、CFMモードの送信の場合、送信回路23により、並列同時受信に拠る遅延時間制御の状態で、各圧電振動子に同一の遅延時間の駆動パルスを同一送信方向数N回(例えば16回)繰返し供給する。これにより、プローブ11から超音波パルスが同一ラスタ方向についてN回繰返し送信される。次に、その遅延時間制御の状態を維持したまま、各圧電振動子に与える駆動パルスの遅延時間を少し変化させ、同様の繰返し送信を行う。これにより、被検体の断面がスキャンされる。BモードおよびCFMモードの各1フレーム分のパルス送信の順番は適宜に、例えば交互に行われる。また、送信周波数fおよび/または設定電圧(送信音圧に相当)はCFMモードおよびBモードで別々に設定してもよく、通常、そのようにモード別にマッチした送信条件が与えられる。
【0176】
このように送信された超音波パルスは被検体内部を伝播し、音響インピーダンスの異なる境界面でその一部が反射してエコー信号になる。このエコー信号の一部または全部はプローブ11の1つまたは複数の振動子で受信され、対応する電気量のエコー信号に変換される。
【0177】
10.2.2.受信側の構成および動作
続いて、受信系回路13、Bモード処理系回路14、CFMモード処理系回路15および表示系回路16について説明する。
【0178】
プローブ11の振動子には、送信系回路12と並列に、受信系回路13が接続されている。この受信系回路13の出力側にはさらにBモード処理系回路14およびCFMモード処理系回路15が併設され、この両モードの出力側に表示系回路16が接続されている。
【0179】
受信系回路13は、プローブの各振動子に電気的に接続された複数の受信チャンネルの信号処理系を有する。この受信チャンネルのそれぞれの信号処理系の入力側にはプリアンプ31a(…31n)が挿入され、各プリアンプ31a(…31n)の後段にA/D変換器32a(…32n)、デジタルタイプの受信遅延回路33a(…33n)がこの順に挿入されている。受信遅延回路33a…33nの遅延出力は、デジタルタイプの加算器34で加算される。
【0180】
受信遅延回路33a〜33nおよび加算器34には、前述した方向数設定器25からの並列同時受信の方向数および送信回数設定器26からの送信時の同一方向への送信回数がエコー法の種類毎の指定値として与えられている。
【0181】
プローブ11が受信したエコー信号は、対応する電気量のアナログ信号として受信チャンネル毎に受信系回路13に取り込まれる。このエコー信号は受信チャンネル毎に増幅された後、デジタル量のエコー信号に変換される。このエコー信号は、受信遅延回路33a〜33nにより、送信時と逆の遅延時間パターンに並列同時受信数Lに応じた異なるL種類の遅延時間パターンを加えたトータルの遅延時間パターンから決まる遅延時間を用いて受信チャンネル毎に並列に遅延制御される。遅延制御された各エコー信号は、加算器34により、指定された並列同時受信数Lを形成する信号毎に同時に並行して加算される。これにより、複数の受信ビームには、送信時とほぼ同じだが僅かに方向が異なるL種類の受信指向性が与えられ、並列同時受信が行われる。この並列同時受信数は、エコー法の種類(コントラストエコー法か非コントラストエコー法か)に応じて変更される。また、そのエコー法の種類に応じて同一ビーム(ラスタ)方向への送信回数も変更されるので、これに対応して、同一の受信方向に対する受信遅延加算も変更制御される。
【0182】
以下、説明を簡潔にするため、並列同時受信(受信数L)に関する動作は説明せず、1つの受信ビーム方向の動作についてのみ説明するが、他のL−1方向についても全く同じ動作が時間的に並列に行われるだけである。
【0183】
10.2.2.1.Bモード処理系の構成および動作
Bモード処理系回路14は、ここではデジタル信号を処理するデジタルタイプの回路群から成り、受信回路13から供給されたデジタル量のエコー信号からBモードの画像データを生成する機能を有する。
【0184】
この回路14の詳細は図示しないが、対数増幅器、包絡線検波器を有する。この回路14では、エコー信号はまず対数増幅器で対数的に増幅され、その対数増幅器の出力信号の包絡線が包絡線検波回路で検波される。この検波信号は断層像データとして表示系回路16のDSCのフレームメモリに送られる。この動作は、並列同時受信ビームのそれぞれに対応して実行される。
【0185】
10.2.2.2.CFMモード処理系の構成および動作
またCFMモード処理系回路15は、CFMモードで血流動態を観測する画像データの作成を担う回路群であり、デジタル信号の状態で各種の処理を行うデジタルタイプの回路群により構成されている。
【0186】
このCFMモード処理系回路15は、その入力側から2系統に信号処理系(2チャンネルa,b)が分岐し、その各系統にミキサ41a(41b)、LPF42a(42b)、帯域可変フィルタ43a(43b)、バッファメモリ44a(44b)、およびMTIフィルタ45a(45b)をこの順に挿入してある。MTIフィルタ45a,45bの出力側は演算回路46を介して表示系回路16に至る。
【0187】
この内、ミキサ41a,41bには基準信号発生器47およびπ/2位相器48が接続されている。また、バッファメモリ44a,44bにはそのデータ書込みおよび読出し用のアドレスカウンタ49,50が接続されている。
【0188】
さらに、このCFM処理系回路15には、後述する動作を行う、基準信号周波数設定器51、時間(深さ)カウンタ52、および周波数帯域設定器53を備えられている。
【0189】
前述したパルス長設定器24から出力されたパルス長設定信号は、基準信号周波数設定器51および周波数帯域設定器53に与えられる。この内、基準信号周波数設定器51が後述するように設定した信号は、基準信号発生器47および演算回路46に供給される。周波数帯域設定器53が後述するように設定した信号は、帯域可変フィルタ43a,43bに供給される。
【0190】
また、送信トリガ発生器21が発生した送信トリガ信号Strgは時間(深さ)カウンタ52に与えられる。このカウンタ52が後述するようにカウントしたカウント値に相当する信号は、基準信号周波数発生器51、周波数帯域設定器53、および演算回路46に与えられる。
【0191】
なお、基準信号周波数設定器51および時間(深さ)カウンタ52が発生した信号は後述する表示系回路16にも供給され、画面表示に供される。
【0192】
以下、このCFMモード処理系回路15の具体的動作を、この回路で実施される信号処理の特徴を中心に説明する。この特徴は、本発明のいくつかの態様を実施して得られるもので、前述した広帯域送信を行った場合でも、被検体の体表面からの深さに応じた信号処理を行って良好なS/Nを維持することである。
【0193】
被検体内に送信された超音波パルスは、その内部を伝搬する間に減衰する。この減衰の程度は、伝搬距離が大きくなるほど大きくなるので、生体内の深いサンプル点(深さ位置)ほど信号強度(信号感度)は弱くなる。また、この伝搬は周波数特性もあり、同じ深さであっても超音波の周波数が高いほど、減衰も大きくなる。つまり、周波数に依存した減衰特性(周波数依存性減衰)を示す。
【0194】
これを従来の狭帯域送信と比較して説明する。従来のようにバースト波が3波以上の狭帯域送信の場合の送信パルス波形を図20(a)に示す。送信周波数はfであり、被検体の減衰特性を合わせて示してある。この狭帯域の超音波パルスで送信したときの受信パルス波形を、深さをパラメータとして同図(b)にそれぞれ示す。超音波パルスは深さに応じて減衰するので、より深い生体内位置から反射してくる受信パルスほど、その感度は弱くなる。しかし、この場合は狭帯域であるので、各深さ位置での最大感度周波数はほぼfになる。したがって、直交位相検波の基準信号の周波数fを、ほぼfの一定値に設定しておくことにより、感度が最大で受信することができる。
【0195】
これに対し、本発明の実施に対応する、バースト波数=1の広帯域送信の場合を図21(a),(b)で説明する。同図(a)は広帯域の送信パルス波形を示すもので、送信周波数はfであり、被検体の減衰特性を合わせて示してある。
同図(b)はその受信パルス波形を示す。超音波パルスは深さに応じて減衰するので、この受信パルス波形によれば、受信パルスの反射位置が深いほど、受信感度は弱くなる。この点は狭帯域送信の場合と同じである。しかし、この場合は広帯域であるので、深さに応じて最大感度周波数は異なる。具体的に、深部になるほど、最大感度周波数は低くなり、しかも、その値は送信周波数fよりも低くなるとともに、その帯域幅は深部になるほど狭くなることがわかる。
【0196】
このような広帯域送信に伴う受信パルス特性に鑑みて、本実施形態のCFMモード処理系回路15にあっては、以下に示す2つの特徴ある処理を行い、S/Nを維持または向上させる。
【0197】
第1の特徴ある処理は、図22(a)に示す如く、基準信号(リファレンス信号)の周波数fを検出深さに応じて変えて、常にほぼ最大感度の周波数に合わせることである。具体的には、送信トリガ発生器21からの送信トリガ信号Strgを参照して、深さ=0のときの時刻を認識し、さらに、
【数5】
d=T1・c/2 …… (3)
の式から深さdとこれに対応する時間T1との関係を求めることができる。ここで、cは音速である。
【0198】
この時間・深さの関係は時間(深さ)カウンタ52によって演算される。カウンタ52は、送信トリガ発生器21から送出される、深さ=0を表す送信トリガ信号Strgを受信し、この受信時から経過時間T1をカウントするとともに、このカウント時間T1を用いて上記(3)式から深さdを演算し、この演算値を基準信号周波数設定器51、周波数帯域設定器53、および演算回路46に逐一送る。
【0199】
このため、基準信号周波数設定器51には、パルス長設定器24からパルス長を設定するデータ(送信周波数fおよびバースト波数=1)が入力し、また時間(深さ)カウンタ52から深さdのデータが入力する。そこで、この設定器51は、パルス長設定データおよび深さデータを用いて、各深さにおける受信パルスの最大感度周波数に相当する基準信号周波数を演算し、この周波数値を表す設定信号を基準信号発生器47に与えるように構成する。
【0200】
実際には、生体内での超音波パルスの減衰には、超音波周波数、被検体部位、固体差などに応じたばらつきがあるので、送信パルスの周波数を変更し、各部位毎に各深さの受信パルスの最大感度周波数を測定し、多数の固体の平均をとることで精度を高める。この精度の高い値(最大感度周波数)をROMに書き込み、このROMを基準信号周波数設定器51に内蔵させる。このROMからその格納データを読み出すには、送信周波数f、バースト波数M(=3未満)、深さ、被検体の部位などを示すパラメータをアドレスとしてROMに与える。これにより、対応する最大感度周波数が読み出される。
【0201】
被検体の部位は、操作パネル17内のパネルスイッチ(図示せず)からオペレータが指定し、装置内のCPU(図示せず)がこれを認識して数値化し、CFMモード処理系回路15の適当なバッファを介して基準信号周波数設定器51に設定するように構成される。
【0202】
基準信号発生器47は、上述のように基準信号周波数設定器51からリアルタイムに送られてくる各深さ毎の周波数値と同じ周波数信号を基準信号f(d)(:深さの関数)として発生する。このように形成された基準信号f(d)は直交位相検波器の一部を成すミキサ41a,41bに供給される。
【0203】
ミキサ41a,41bおよびLPF42a,42bは直交位相検波器を構成し、デジタル量のエコー信号を直交位相検波して各送受信毎且つ各深さ位置毎のドプラデータを抽出する。基準信号発生器から発生される基準信号の周波数は、上述したように、基準信号周波数設定器51からの設定信号に応じて変更されるので、その値は深さに応じて変わり、常にほぼ最大受信感度を呈する周波数にリアルタイムに合わせられる。この基準信号は、一方のミキサ41bとπ/2移相器48に与えられる。移相器48は、基準信号に正確に90度の位相差を与えてもう一方のミキサ41aに供給する。
【0204】
この結果、受信系回路13から出力されたエコー信号と基準信号とがミキサ41a及び41bにより乗算される。この乗算によって得られる、位相が90゜異なった結果信号はそれぞれLPF42a、42bを通過してミキシングで発生する高調波成分が除去され、これにより、ベース帯域のドプラデータが得られる。
つまり、スキャン断面の同一場所、すなわち同一ラスタを複数のN回スキャンし、その各回のスキャン毎に、得られたエコー信号から直交位相検波によりドプラデータが抽出される。この直交位相検波を行うことにより、プローブに近づく血球からの信号と遠ざかる血球からの信号とを分離して検出すること(方向分離)が可能になる。
【0205】
したがって、この直交位相検波において、位相検波用の基準信号が常に最大受信感度を呈する周波数にリアルタイムに調整されているので、広帯域送信の場合であっても、常に高い受信感度を維持させることができる。
【0206】
このように常にほぼ最大の受信感度で抽出されたドプラデータは、その後、2系統各別に、帯域可変フィルタ43a,43bに送られる。
【0207】
このCFMモード処理系回路15における第2の特徴ある処理は、この帯域可変フィルタ43a,43bに関する。
【0208】
この帯域可変フィルタ43a,43bは、BPF(バンドパスフイルタ)として形成されており、その周波数帯域は、周波数帯域設定器53からの設定信号に応じてほぼリアルタイムに変更される。ここでは、深さに応じて変化する受信パルスの周波数帯域に合わせて変更され、ノイズが有効に除去されることである。
つまり、帯域可変フィルタ43a,43bそれぞれの周波数特性を、図22(b)に示す如く、直交位相検波により生成されたドプラデータの周波数帯域にほぼ一致させる。この制御は深さ位置毎にほぼリアルタイムに行われる。
【0209】
具体的手法を説明する。S/Nを最優先にするときは、各深さ位置において受信パルスの帯域特性と全く同じ特性を帯域可変フィルタ43a,43bに持たせればよいが、この場合、距離分解能が多少、劣化する。このため、距離方向の分解能をあまり劣化させないように帯域可変フィルタ43a,43bの特性を多少調整してもよい。
【0210】
帯域可変フィルタ43a,43bの特性を設定するには、周波数帯域設定器53に、基準信号周波数設定器51のときと同様にROM(図示せず)を内蔵させる手法を採用することが好適である。このROMには、送信周波数を変えて、各部位毎に各深さ位置の受信パルスの周波数帯域を測定し、しかも、多数の固体の平均をとることにより精度および信頼性を高めた帯域値を予め格納しておく。周波数帯域設定器53には、前述したように、パルス長設定器24、時間(深さ)カウンタ52、および制御装置18からそれぞれデータが入力する。このデータは、送信周波数f、バースト波数M(=3未満)、深さ位置、被検体部位を示す数値である。この数値は周波数帯域設定器53にてアドレス信号に変換され、このアドレス信号が同設定器の内蔵ROMに与えられる。これにより、アドレス信号、すなわち入力データに対応した周波数帯域特性のデータがROMから読み出され、読み出されたデータが設定信号として帯域可変フィルタ43a,43bに送られる。
【0211】
したがって、このフィルタ43a,43bでは、図22(a)の浅部、中間部、および深部として模式的に例示する如く、設定信号にしたがって各深さ位置毎の周波数帯域特性がリアルタイムに変更される。このように常に、受信パルス(ドプラデータ)の周波数帯域に合わせてフィルタリングすることで、ノイズを効率よくかつ十分に低レベルまで除去でき、広帯域送信であっても、S/Nを良好なレベルに維持または改善できる。
【0212】
とくに、上述した第1、第2の特徴、すなわち、「基準信号周波数の深さ位置に応じた変更制御」、および、「ノイズフィルタの周波数帯域を受信パルスのそれに合わせた変更制御」を併用することで、送信パルスが広帯域であっても、高いS/Nを確保することができる。
【0213】
このようにノイズ除去されたドプラデータは、チャンネルa,bそれぞれにおいて、ドプラ用バッファメモリ44a,44bに順次、書き込まれる。
【0214】
ドプラ信号は、前述したように、同一サンプル位置(深さ位置)をレート周期Tで走査して得られる血流からの反射信号の、単位時間内の位相シフト量(ドプラシフト量)のデータ列である。このドプラ信号から血流速度が求められる。
この演算に供するため、例えばN回、同一ラスタ位置を走査して得られた受信パルスデータがバッファメモリ44a,44bに順次格納される。
【0215】
このようにしてスキャン断面上のサンプル位置それぞれをN回走査して得られる時系列方向に並んだドプラ信号から各サンプル位置の血流速度が演算されることになる。しかし、この時点のドプラ信号には未だ、血球のように移動している物体からの反射波と、血管壁や臓器実質のように殆ど移動しない固定物体からの反射波とが混在しており、しかも、それらの反射強度は後者(固定物体)の方が支配的である。これに反し、血球からの反射波の周波数にはドプラシフトが生じているのに対して、固定反射体からの反射波(クラッタ信号)には係るドプラシフトは殆ど生じていない。そこで、このドプラシフトの差を利用してクラッタ信号を除去するため、MTIフィルタ45a,45bがチャンネルa,bそれぞれに介挿されている。
【0216】
バッファメモリ44a,44bそれぞれから各サンプル位置毎に時系列方向に読み出されたN個のドプラデータの列、すなわちドプラ信号は、対応するMTIフィルタ45a,45bにそれぞれ与えられる。これにより、上述したドプラシフトの差によって、クラッタ成分は殆ど除去され、殆どが血球からの反射波のみとなって、この血流成分が演算回路46に送られる。
【0217】
この演算回路46による演算処理の概要は、各深さのサンプル位置毎に、時系列方向のN個のドプラデータを対象とする周波数分析によるスペクトルの平均値(ドプラ周波数)、分散、あるいは血球からの反射信号の強度(パワー)の演算である。これらの演算値は血流情報として次段の表示系回路16に送られる。
【0218】
ここで、演算回路46は、本発明のさらに第3の特徴に係わる回路であるので、これを詳述する。
【0219】
この演算回路46は、図23に示す如く、ドプラ周波数演算回路461と、従来のドプラ速度演算回路の代わりとしてのドプラ速度範囲演算回路462とを備えるとともに、従来のパワー演算回路の代わりとして、広ダイナミックレンジ・パワー演算回路463を備える。さらに、周波数分散演算回路464をも備える。ドプラ速度範囲演算回路462は、時問(深さ)カウンタ52および基準信号周波数設定器51の出力情報から、折り返り速度範囲を演算する。また、広ダイナミックレンジ・パワー演算回路463は、パワーの表示ダイナミックレンジを拡大するために搭載されている。
【0220】
ドプラ周波数演算回路461は、自己相関器などの周波数解析器を備え、MTIフィルタ45a,45bから出力される実数部および虚数部に対応するドプラ信号をそれぞれ入力して、各サンプル位置のスペクトルのドプラ周波数(平均速度)の解析を行うとともに、対応するドプラ周波数コードに変換して出力する。
また、この解析結果は、周波数分散回路464にも与えられる。
【0221】
まず、折り返り速度について説明する。ドプラ速度vは、前述した如く(式(1)を再掲する)、通常、
【数6】
Figure 0004574790
の式を用いて演算される。従来の演算の場合、上記(1)式において、cおよびfは一定値に設定されるが、θはスキャン断面上の各サンプル位置において異なる。このため、同じドプラ周波数であってもドプラ速度は一般に異なる(これはドプラ速度の角度依存性と呼ばれる)。この角度依存性を解消する手法は、現時点では実用化に至っていないが、その代替手法として次のような方法が採られている。すなわち、式(1)においてθ=0のときに本来のドプラ速度を計算可能であり、このときの折り返り速度v/2が前述した
【数7】
/2=(f/2)・(c/2f
の式(前記(2)式を再掲した)で示されるので、この式から演算される折り返り速度の値をカラーバーと共に表示されている。
【0222】
しかし、本実施形態の場合、この表示法をそのまま採用することはできない。
それは、広帯域送信でありながらS/Nを向上させる対策を講じているため、基準信号の周波数fをサンプル位置の深さに応じてリアルタイムに変更している。したがって、折り返り速度もサンプル位置の深さに応じて変わってしまうからである。
【0223】
そこで、本実施形態においては、複数の折り返り速度を表示する。そのための具体的な手法としては、CFMモードによるイメージングの表示範囲を示すROIの最浅部と最深部の値を示す手法、深さ=0と断層像の最深部の値を示す手法、これらの値に加えて、さらに、表示画像上に深さマーカを設け、その深さを表示する手法などがある。勿論、そのほかの表示法を採ってもよい。ここでは一例として、ROIの最浅部と最深部の折り返り速度を示す表示法について説明する。
【0224】
この表示を行うため、演算回路46内のドプラ速度範囲演算回路461には、制御装置18からレート周波数f、音速c、およびROI深さ設定値d1(最浅部)、d2(最深部)、時間(深さ)カウンタ52から深さdが、さらには基準信号周波数設定器51から深さdに同期して基準信号周波数fがそれぞれ与えられている。そこで、ドプラ速度範囲演算回路461は、常に深さdをモニタしており、d=d1を認識したときの基準信号周波数fMd1を用いて、前記(2)式に基づく、ROI最浅部の折り返り速度vrd1を、
【数8】
Figure 0004574790
により演算する。同様に、深さd=d2を認識したときの基準信号周波数fMd2を用いて、前記(2)式に基づく、ROI最深部の折り返り速度vrd2を、
【数9】
Figure 0004574790
により演算する。これらの折り返り速度vrd1/2およびvrd2/2は、ROI深さd1、d2と組み合わせて表示系回路16のDSC内のフレームメモリに格納される。
【0225】
次いで、パワーモードの表示ダイナミックレンジについて説明する。
【0226】
これは、本発明の第4の特徴に関する。表示ダイナミックレンジは、実際には演算回路46内で設定されてしまう要素である。表示階調として64階調(階調0〜63)を例示するが、ほかの階調度であっても同様である。
【0227】
受信エコー信号の処理においては、通常、微弱な信号を見逃さないようにするため、ノイズレベルを基準にしてゲインを設定する。ゆえに、表示ダイナミックレンジが信号強度に対して狭すぎると、表示ダイナミックレンジよりも大きい強度を有する信号は飽和する。このため、飽和した信号値はその値の如何を問わず、その表示ダイナミックレンジの上限値で一律に表示されてしまう。階調は全て63の最高度で表される。つまり、画像は一部、階調性の無い平坦な感じのものとなり、表示分可能は低く、重要なパワー情報が喪失することにもなる。
【0228】
従来から行われている通常のCFMにおいて得られる血流信号は、血球からの反射信号のパワーに基づく信号である。血球からの反射信号は強度が弱いため、パワーの表示ダイナミックレンジもそれに見合って狭く、せいぜい40dB程度である。いま、この表示ダイナミックレンジを40dBとして図24に基づき説明する。
【0229】
図24(a)に、従来から行われている通常の表示ダイナミックレンジを設定するときの入出力パワーの特性例を示す。出力パワーの上限値、すなわち表示ダイナミックレンジは10、20、30、40dBにそれぞれ可変設定できる。この可変設定は、表示階調が64と固定であるため、飽和しない範囲で信号強度に合わせた、なるべく広いダイナミックレンジとなるように表示ダイナミックレンジを設定し、階調性が失われないようにするためである。例えば、ある被検体の最大信号強度が16dBであるときに、表示ダイナミックレンジを40dBに設定すると、表示階調は実際には、
【数10】
64・(16dB/40dB)=26階調
となり、階調性が低下し、暗い画像となる。これは診断能の低下を招いてしまう。また、20dBに設定したとすれば、表示階調は実際には、
【数11】
64・(16dB/20dB)=51階調
となり、階調性が上がり、明るい画像となる。当然に診断能も向上する。
【0230】
このように、血球からの反射信号のパワーの場合、表示ダイナミックレンジは通常、40dBもあれば十分である。しかし、被検体に造影剤を投与した場合、エコー信号の反射強度は数十dB増強されるので、表示ダイナミックレンジを40dBの最高レンジに設定した場合でも、必ずと言ってよいほど、表示画像上の至る個所で飽和し、階調性が無いまたは少ない、平坦な感じの画像しか得られない。これは、診断能の低下を招くことにもなる。
【0231】
そこで、本実施形態では、図24(b)に示す如く、表示ダイナミックレンジを最大、例えば90dBまで拡大し、10dBから90dBまで、10dBずつ可変設定できるようにする。これにより、血球からの反射信号のみならず、造影剤の微小気泡から高強度の反射信号が返ってきた場合にも、表示ダイナミックレンジを最適に設定することができる。
【0232】
これを実現するため、図23に示す如く、演算回路46に広ダイナミックレンジパワー演算回路463が設けられる。この演算回路463の内部は、図示していないが、その入力側に位置してパワー値を演算する演算器と、その出力側に置かれたROMとを備える。ROMには図24(b)の入出力特性を表すデータとして書き込まれている。このため、演算回路463は、MTIフィルタ45a,45bの出力である血流からの反射信号からそのパワー値を演算し、このパワー値と表示ダイナミックレンジの上限設定値がアドレス情報としてROMに与えられる。この上限設定値は、例えば、操作パネル17を介してオペレータが指定した値を制御装置18のCPUが広ダイナミックレンジ・パワー演算回路463に与えることで設定される。このため、入力パワー値に対応したパワー値がROMから読み出され、図24(b)の入出力特性に基づいたパワーコードが出力される。
【0233】
一方、演算回路46の周波数分散演算回路464は、周波数解析結果から速度分布の分散を演算し、それに対応する周波数分散コードをそれぞれ出力する。
【0234】
以上のように演算回路46で演算されたドプラ周波数コード、周波数分散コード、パワーコード、および折り返り速度とROI深さの情報は血流動態を表すドプラデータとして、表示系回路16のDSCのフレームメモリに送られる。
【0235】
10.2.2.3.表示系回路の構成および動作
表示系回路16は、Bモード用およびCFMモード用の2種類のフレームメモリおよびその書込み/読出し制御回路を備えたデジタルスキャンコンバータ(DSC)61、表示用のROI、カラーバー、目盛、アノテーションなどの表示データを発生させるデータ発生器62、ピクセルのカラー付与処理を行うカラー処理器63、D/A変換器64、および表示用のTVモニタ65を備える。Bモード処理系回路14およびCFMモード処理系回路15から出力されたデジタル量の断層像データおよびドプラデータはDSC61のフレームメモリに夫々書き込まれる。また、操作パネル17を介してオペレータから与えられる各種の操作情報は、制御装置18を介して、データ発生器62にも与えられる。
【0236】
DSC61では、Bモード用フレームメモリおよびCFMモード用フレームメモリに格納されたデータが各別に標準TV方式で読み出される。また、この読出しと並行して、両フレームメモリの共通画素同士の一方が択一的に選択され、Bモード断層像(背景像)にCFMモードのCFM画像(造影剤、すなわち血流速度、分散、パワーなどの血流動態を表すドプラデータ)が重畳された1フレームの画像データが形成される。さらに、この画像データに、データ発生器62が発生した表示データが重畳される。このように作成された画像データの内のドプラデータにはカラー処理器63でカラー付与処理が施される。さらに、この画像データはD/A変換器64により所定タイミング毎にアナログ信号に変換され、TVモニタ65にCFM画像として表示される。
【0237】
図25に、この表示例を示す。同図(a)はモニタ表示画面の一例を示す。この画面の中央には、Bモードの断層像が表示され、その一部にコンベックス状のROIが設定され、そのROI内にCFM画像が重畳して表示される。画面の隅には、各種の提供データが数値や目盛で表示される(図中の点線部分参照)。さらに、同図において、画面の左側サイドにはプローブからの深さを示す目盛が表示され、これに隣接してカラーバーが表示される。
【0238】
同図(b)には、カラーバーの一例として、血流速度を表すカラーバーを示す。従来と同様に、このカラーバーは、プローブに対する血流方向を分離した速度を示す。同じに、このカラーバーの上方の所定画面位置には、ROIの深さ上限値および下限値、並びに、それらの深さに応じた折り返り速度が、これらに割り当てられたウィンドウ内にほぼリアルタイムに表示される。
【0239】
また、この速度のカラーバーの詳細な表示例を、同図(c),(d)にそれぞれ示す。この内、同図(c)のものは、その縦軸に方向分離したドプラ周波数(血流速度)を、その横軸に深さをそれぞれとり、かつ、同じ速度を同一色で表すものである。縦軸の両端の周波数は折り返り周波数±f/2である。本実施形態では、基準信号の周波数を深さ方向の深さに応じて変更されるようにしているので、同じドプラ周波数であっても演算されるドプラ速度は異なる値を呈し、折り返り周波数f/2に対する折り返り速度も深さに応じて異なる値をとっている。このため、同図(c)に模式的に示されるカラーマップ(バー)となる。一方、同図(d)に示す速度のカラーバーでは、縦軸に方向分離されたドプラ速度を、横軸に深さをそれぞれとり、同じ速度を同一色相で表している。深さ方向の位置に応じて基準信号の周波数を変更するようにしているので、このカラーバーの場合も、折り返り速度が深さに応じて異なる値になる。このため、各深さ位置の折り返り速度は同図(d)に模式的に示されるカラーマップ(バー)となる。
【0240】
さらに、図25(e)にパワー値のカラーバーの一例を示す。従来と同様のダイナミックレンジを示すカラーバー(ここでは、一例として64階調)の上方の隣接位置に、10dB〜90dBまで変更可能な最大ダイナミックレンジを表示している。
【0241】
10.3.全体的な動作および作用効果
上述したように、この超音波診断装置では、送信系回路12からの送信遅延された駆動信号にプローブ11が応答して被検体内に超音波パルスを送信する。この送信された超音波パルスは、被検体内から反射波として戻ってきてプローブ11で検出される。これにより、プローブ11から電気量のエコー信号が出力され、このエコー信号が受信系回路13でデジタル信号に変換された後、受信遅延される。このエコー信号はさらにBモード処理系回路14およびCFMモード処理系回路15に並行して入力し、前述したようにスキャン面の断層像データおよびその面内の血流動態を表すCFM像データが生成される。そして、表示系回路16にて、表示系断層像データにCFM像データが重畳され、最終的なCFM像としてTVモニタ65に表示される。
【0242】
このCFM像を得るに際し、この超音波診断装置では、以下に要約するように各種の作用効果を得ることができる。
【0243】
第1に、広帯域送信にすることに拠る効果がある。TVモニタ65には、図25(a)に例示したように、CFM像上にROIが表示される。このROI内のCFM像は次のように表示される。CFM像は、造影剤を投与しない状態(非コントラスト法)でスキャンした場合でもその感度は向上するが、とくに被検体に造影剤を投与したコントラスト法でスキャンした場合には、血流の検出感度は数十dB程度、増強される。このコントラストエコー法を実施する場合、本実施形態では前述した如く、送信系回路12によって、送信超音波パルスの周波数帯域を広帯域に設定される。これにより、血流信号が高い空間分解能で検出される。
例えば、バースト波数=1に設定した場合、図26に示すように、従来のCFMに比べて距離分解能が格段に向上したCFM像(血流画像)が得られる。したがって、ブルーミングは殆ど発生しない。
【0244】
第2に、並列同時受信数の増加が可能なことに拠る効果がある。被検体に造影剤を投与してスキャンする場合、前述したように、検出感度は通常、数十dB程度、増強されるので、送信ビームを広げて並列同時受信数を増加させても検出感度は十分に確保される。そこで、方向数設定器25は、エコー法切替スイッチ27からコントラストエコー法の実施が指令されたときには、非コントラストエコー法のときよりも並列同時受信数を増やす。これにより、フレーム数(すなわち時間分解能)が格段に上がり、血流動態を高いリアルタイム性で観察できる。一例として、並列同時受信を行わない通常のCFMのときに6フレーム/秒であれば、並列同時受信数=4方向に設定すると24フレーム/秒に、並列同時受信数=8方向に設定すると48フレーム/秒にそれぞれ上がり、リアルタイム性が飛躍的に向上する。
【0245】
第3に、送信時の同一方向送信回数を減らすことが可能なことに伴う効果がある。血流信号の強度は低いので、ノイズの影響を浮け易く、血流動態の情報の値が変動し易い。この影響を減らすため、血流信号検出時には、通常、同一ラスタ方向に16回、超音波パルスを送受信して同じ信号源(スキャン断面上のサンプル位置)から時系列方向に複数個の血流データを検出し、それらを平均したドプラ周波数(ドプラ速度)を得ている。ところが、コントラストエコー法を実施する場合、血流からの検出感度が数十dB程度、増強されるので、S/Nが大幅に良くなって、血流信号はノイズの影響を殆ど受けなくなる。つまり、同一ラスタ方向への超音波パルスの送信回数を減らしても、高S/Nの安定した血流信号が得られる。そこで、エコー法切替スイッチ27を介してコントラストエコー法が指令されたときには、送信回数設定器26より、かかる同一方向の送信回数は減らされる。この送信回数の減少により、単位時間あたりのフレーム数(時間分解能に相当)が多くなり、リアルタイム性の高いCFM像を提供することができる。一例として、通常のCFMのときに6フレーム/秒であれば、同一方向送信回数を1/2に減らすと、フレーム数は12フレーム/秒に倍増し、リアルタイム性は飛躍的に向上する。
【0246】
さらに、本実施形態では、上述した並列同時受信の方向数の増加および同一方向の送信回数の低減の両手法を併用しているので、リアルタイム性の向上の効果は極めて高いものになる。なお、必要に応じて、上述した並列同時受信方向数の増加および同一方向送信回数の低減の両手法の内の一方のみを採用する構成を採ってもよい。
【0247】
ところで、上述したCFMモード処理系回路は直交位相検波器の後ろに、2チャンネルa,b別々に帯域可変フィルタとしてのBPFを挿入する構成としている。このBPFの挿入位置の場合、BPFの設計が容易化されるという利点がある。
【0248】
また、本実施形態の超音波診断装置にあっては、その受信・処理系回路13〜15を、受信増幅器の直後にA/D変換器を置いたデジタルタイプの回路で構成している。このデジタル化により、回路動作の安定化は勿論のこと、受信系回路や処理系回路の性能向上と処理の多様化とを推進することができる。
【0249】
なお、この実施形態のCFMモードにあっては、断層像上にCFM画像を表示する態様で説明してきたが、必ずしもそのような表示態様に限定されるものではない。
【0250】
またなお、本発明は、とくに、造影剤を被検体に投与することにより血流の検出感度を十分に上げてスキャンするコントラストエコー法を実施する超音波診断装置や、造影剤を投与しなくても血流の検出感度を向上させた非コントラストエコー法を実施する超音波診断装置に実施することが好適である。
【0251】
また、第8の実施形態で説明した、造影剤が消失するときの画像化、及び、造影剤の微小気泡が不規則な振動をするときの画像化の手法は、本実施形態にも適用可能である。
【0252】
10.4.第10の実施形態の変形例
上述した第10の実施形態に関して、以下のように、様々な変形例を提供できる。
【0253】
(第1の変形例)
第1の変形例は、CFMモード処理系回路15に挿入する帯域可変フィルタ43a,43bに関する。受信したエコー信号を直交位相検波した超音波パルスの周波数スペクトルは、最大感度周波数f、f、またはf(図21参照)を中心に高周波側と低周波側はほぼ対称であるから、帯域可変フィルタ43a,43bは実数型フィルタでも十分であり、上述した実施形態にあっては2チャンネル別々にフィルタを持たせた実数型フィルタで示した。しかし、図27に示す如く、かかる周波数スペクトルは実際には完全に対称ではないので、帯域可変フィルタを2チャンネル組み合わせた複素数型フィルタに形成し、スペクトル特性を最大感度周波数に対して非対称に設定し、直交位相検波された出力信号に合わせ込めば、フィルタリング精度を更に向上させることができる。この複素帯域可変フィルタ43cを搭載した超音波診断装置の構成例を図28に示す。
【0254】
(第2の変形例)
第2の変形例は、帯域可変フィルタの帯域特性のみを制御して距離分解能を大幅に改善させることに関する。この変形例によれば、S/Nの改善効果は上述した実施形態ほど大きくはないが、距離分解能を大幅に改善できるものである。
【0255】
この変形例では、基準信号の周波数fを常にほぼ一定とする(前述したように深さに応じて変化させない。ただし、下記の所望の周波数特性如何では、適宜、変更することも可能である)。しかし、図29(a)に模式的に示す如く、深さに拠って変化する入力信号の周波数スペクトラムに応じて、帯域可変フィルタ43a,43bの帯域特性を深さ毎に変更制御する。この結果、同図(b)に示す如く、帯域可変フィルタ43a,43bの出力信号が深さに依存せず、常にほぼ同一の周波数帯域となるようにする(更に、一般的表現としては、深さ毎に所望の周波数帯域特性が得られるようにする)。つまり、これにより、S/N改善効果が得られると同時に、信号帯域を広げることができるので、距離分解能、とくに深部における距離分解能を大幅に改善することができる。すなわち、広帯域特性を有する送信超音波パルスの距離分解能に匹敵する優れた距離分解能を維持することができる。
【0256】
この場合、帯域可変フィルタは実数型でも複素数型であってもよい。複素数型フィルタとした場合、図29(c)に示す如く、その帯域特性を非対称に設定することができ、かかる特性を設計する場合の自由度は高い。この変形例の場合、帯域可変フィルタをデジタルフィルタで構成することが望ましく、これにより、フィルタ特性をよりフレキシブルに設計できる。
【0257】
(第3の変形例)
第3の変形例は、造影剤を用いたときの帯域可変フィルタの帯域設定に関する。
【0258】
造影剤の主成分を成す微小気泡から反射してきたエコー信号には非線形な振動特性に因って、高調波、分調波、超調波などが含まれる。一例として、図30には、送信1波のときの基本波と第2高調波のスペクトラムの例を示す。送信を1波で行うと、その基本波と高調波は一部重畳して戻ってくる。造影剤からの信号の強度自体については基本波の方が第2高調波よりも強いが、組織エコー(クラッタ)の第2高調波の強度は弱いので、第2高調波に関しては造影剤のエコーの方が支配的である。
【0259】
したがって、図31に示すように、帯域可変フィルタの帯域幅Wは変えずに、基準信号周波数を例えばf,f,2fとずらし、造影剤の感度を優先するときは基本波を主体に取り込み、一方、クラッタ除去能力を優先したいときには第2高調波を主体に取り込むようにすることができ、これにより、信号の有効な使い方が可能になる。例えば、一般に浅部での感度は十分に採れるので、浅部ではクラッタ除去能力を優先して第2高調波を主体に帯域設定し(基準信号の周波数は一例として第2高調波の中心周波数2fの位置)、深部では生体減衰の影響を補うために感度を優先させるべく基本波主体に帯域設定し(基準信号の周波数は一例として基本波の中心周波数fの位置:このとき、クラッタは後段のMTIフィルタで主に除去させる)、さらに中間の深さでは両者を混合した帯域になるように設定(基準信号の周波数は一例として基本波と第2高調波の中心位置fの位置)することが好適である。
【0260】
また別の設定法として、図32に示すように、基準信号周波数fを基本波の中心周波数fと第2高調波の中心周波数2fの間に設定し、送信帯域Wよりも帯域可変フィルタWの帯域を広くして、基本波と高調波に跨らせれば、送信帯域よりも広帯域の信号を得ることができ、距離分解能を向上させることができる。
【0261】
前述した図4には、造影剤からの受信信号のスペクトラムを示す。造影剤の主成分を成す微小気泡から反射してきたエコー信号には非線形な振動特性に因り高調波、分調波、超調波などが含まれる。したがって、ハーモニックBモードで画像表示する場合、受信信号帯域は、送信信号帯域のみならず、非線形信号帯域をも含むように設定させることができる。
【0262】
(第4の変形例)
第4の変形例は、帯域可変フィルタの挿入位置に関する。帯域可変フィルタは必ずしも直交位相検波器のLPFの後段に挿入する構成に限定されることなく、図33に示す如く、直交位相検波器のミキサ回路の前段に帯域可変フィルタ43dを挿入してもよい。この場合、帯域可変フィルタ43dは高周波でのフィルタリングとなるが、その個数は1チャンネル分で済む。
【0263】
(第5の変形例)
第5の変形例は、クラッタ成分を除去するフィルタの変形に関する。前述したCFMモード処理系回路15はクラッタ成分を除去するMTIフィルタ45a,45bを用いている。このMTIフィルタは機能的にはハイパスフィルタ(HPF)である。これに対し、このMTIフィルタの代わりに、差分フィルタを用いることもできる。差分フィルタ45c,45dを搭載した装置の一例を図34に示す。差分法であるので、通常のHPFのように過渡応答現象が発生しない。このため、差分フィルタ45c,45dを用いる分、同一ラスタ方向への超音波パルスの送信回数を減らすことができ、単位時間当たりにフレーム数を増加させて時間分可能(リアルタイム性)を向上させることができる。具体的には、パワーデータを得るには同一方向への送信は最低2回で可能であり、速度データを得るには最低3回の送信で可能である。
【0264】
(第6の変形例)
第6の変形例は、受信側に挿入するA/D変換器の挿入位置をCFMモード処理系回路15に置く、いわゆるアナログタイプの受信処理系の構成に関する。
【0265】
第2の実施形態およびその変形例において、これまで説明してきた受信処理系の回路構成は、例えば図17に示す如く、A/D変換器32a(…,32n)を受信系回路13のプリアンプ31a(…,31n)の直ぐ後ろに置いて、それ以降の受信処理をデジタル信号の形態で行う、いわゆる「デジタルタイプ」で構成している。これに対し、この変形例の受信処理系では、図35に示す如く、かかるA/D変換器を2個(71a,71b)、CFMモード処理系回路15内の帯域可変フィルタ43a,43bとバッファメモリ44a,44との間にチャンネル毎に挿入している。これにより、A/D変換器の数を減らすこともできる。
【0266】
このA/D変換器71a,71bは、図36に示す如く、直交位相検波器のLPF42a,42bと帯域可変フィルタ43a,43bとの間にチャンネル毎に挿入してもよい。この場合は、帯域可変フィルタ43a,43bをデジタルタイプのフィルタで構成できる。このようにすると、帯域可変フィルタをデジタルフィルタとして構成できるので、経時変化や温度変化などに対する耐性が良好で、フィルタリング特性が安定する。
【0267】
なおここで、詳細な実施形態の代表である図17の装置構成との対応関係を説明すると、プローブ11、送信系回路12、受信系回路13、および制御装置18がスキャン手段を構成する。また、Bモード処理系回路14、CFMモード処理系回路15の内のミキサ41a,41b、LPF42a,42b、帯域可変フィルタ43a,43b、バッファメモリ44a,44b、MTIフィルタ45a,45b、基準信号発生器47、π/2移相器48、基準信号周波数設定器51、時間カウンタ52、および周波数帯域設定器53、送信系回路12内に設けたパルス長設定器24、方向数設定器25、送信回数設定器26、並びに制御装置18が第1の信号処理手段を構成する。さらに、表示系回路16および制御回路18は表示手段に相当する。さらに、CFMモード処理系回路15内に設置した演算回路46、基準信号周波数設定器51、時間カウンタ52、送信系回路12に設けた送信トリガ発生器21およびパルス長設定器24、並びに制御装置18が第1の信号処理手段を構成する。
【0268】
なお、本発明は上述した実施例に限定されることなくその要旨を逸脱しない範囲で種々変形、組合せ実施可能である。
【0269】
例えば、装置構成に関しては、「高分解能フローモード」で実施する図1の構成において、HPF又は差分器84と受信系回路83との間に、図37に示したように、直交位相検波器102を介挿する。この検波器102により、受信信号をベースバンド信号に生成させた後、ドプラ信号のデータ列を検出し、このデータ列にハイパスフィルタリング又は差分演算を施すことで組織からの信号(クラッタ成分)を除去し、血流画像を表示させる。このとき、直交位相検波器102で使用する基準信号の周波数をラスタ方向の深さに応じて調整するとよい。
【0270】
また、「高分解能フローモード」を実施する第1〜第7の実施形態の構成において、広帯域な超音波パルスの音圧レベルを、造影剤が消失可能であって且つエコー信号に造影剤の消失に起因したエコー成分が含まれる値に設定するようにしてもよい。また、広帯域な超音波パルスの音圧レベルを、造影剤が消失せずに不規則な振動が起こり且つエコー信号に造影剤の不規則な振動に起因したエコー成分が含まれる値に設定するようにしてもよい。このとき、エコー信号の所望の周波数成分を通過させるフィルタの帯域特性を超音波パルスの基本波成分及び高調波成分の少なくとも一方についてラスタ方向の深さ毎に設定するようにしてもよい。
【0271】
さらに、「高分解能フローモード」を実施する第1〜第7の実施形態の構成において、第10の実施形態で説明した、造影剤に起因したエコー成分のパワーを非飽和の状態で処理できる広いダイナミックレンジに関する構成を採用してもよい。
【0272】
また、例えば、前述した実施形態およびその変形例では、送信用の広帯域な超音波パルスをバースト波数で表したが、送信パルスの包絡線が矩形でない場合、バースト波数では表現できないので、これに代わる表現法として−6dBでの比帯域、または、−6dBでの波連長で規定すればよい。また、ほかの様々な定義法でバースト波数=3未満を定義してもよい。
【0273】
さらに、前述した実施形態およびその変形例では、得られたドプラ信号から血流速度、スペクトラムの分散、ドプラ信号のパワー値などの情報を演算して断層像と共に表示しているが、この内の所望の情報のみを適宜な態様で直接、表示してもよい。
【0274】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば以下のような効果が得られる。
【0275】
第1に、血流画像はエコー信号の輝度又はパワーを表す画像として提供されるため、従来の単なるCFM像のような、ドプラ法に基づく血流速度の分布像に比べて、微細な血流や速度が遅い血流をも確実に捕捉し、血流の存在を精細に表した血流画像を提供できる。
【0276】
第2に、バースト波数が3未満、とりわけ最も好適な条件では1波と広帯域であるので、ブルーミングが無いまたは殆ど無い空間分解能の良い血流画像を表示でき、従来法と比べて診断能を格段に向上させることができる。
【0277】
第3に、バースト波数を広帯域に設定するので、被検体の周波数依存性減衰の影響により、体表からの深さ位置毎にエコー信号の受信時の最大感度周波数と周波数帯域が変化してしまう。具体的には、深さが深いほど最大感度周波数は低くなり、受信周波数帯域は狭くなるが、本発明では各種の補正処理により、かかる変動を補正でき、S/Nを著しく向上させる。また、クラッタ除去効果の向上、感度の向上、さらには距離分解能の向上を図ることができ、これにより、診断能が向上する。
【0278】
さらに、第4に、本発明では、表示ダイナミックレンジを従来法よりも広く可変設定できるので、造影剤を投与するコントラストエコー法を実施する場合でも、常に適切な表示ダイナミックレンジを設定でき、表示画像データを飽和させず、かつ階調性も十分に確保でき、これにより、演算した血流パワーの情報をフルに表示でき、診断能を向上させることができる。
【0279】
さらに、第5に、コントラストエコー法の実施時には、並列同時受信数を非コントラストエコー法の実施時に比べて増やすので、リアルタイム性(時間分解能)の良い血流像を提供することができる。これにより、大幅に単位時間当たり検出率が上がり、診断能を格段に向上させることができる。また、コントラストエコー法を実施するときには、同一方向送信回数を非コントラストエコー法実施時よりも減らすので、これによってもリアルタイム性の良い血流像を提供することができ、大幅に検出率をさせて診断能向上に貢献できる。
【0280】
このように、本発明によれば、血流の存在を精細に表した空間分解能の高い血流像を提供でき、診断能を向上させる。また、従来のCFMに比べて、空間分解能が高く、かつS/Nの良い血流像を提供でき、診断能を向上させる。さらに、造影剤を投与するコントラストエコー法の実施時には、空間分解能が高く、S/Nが良く、フレームレート(時間分解能)が高く、かつ表示ダイナミックレンジが広い血流像あるいはパフュージョン像を提供でき、飛躍的に診断能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る超音波診断装置の概略構成を示すブロック図。
【図2】広帯域の送信超音波パルスのバースト波形を説明する図。
【図3】広帯域の送信超音波パルスの比帯域を説明する図。
【図4】ハーモニックイメージングを行うときの周波数領域の波形の一例を示す図。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る超音波診断装置の概略構成を示すブロック図。
【図6】本発明の第3の実施形態に係る超音波診断装置の概略構成を示すブロック図。
【図7】本発明の第4の実施形態に係る超音波診断装置の概略構成を示すブロック図。
【図8】本発明の第5の実施形態に係る超音波診断装置の概略構成を示すブロック図。
【図9】本発明の第6の実施形態に係る超音波診断装置の概略構成を示すブロック図。
【図10】本発明の第7の実施形態に係る超音波診断装置の概略構成を示すブロック図。
【図11】本発明の第8の実施形態に係る超音波診断装置の概略構成を示すブロック図。
【図12】第8の実施形態の装置に搭載された送信系回路のブロック図。
【図13】第8の実施形態で用いる送信系回路の動作を説明するタイミングチャート。
【図14】対比説明のために記載した従来装置の送信系回路のブロック図。
【図15】対比説明のために記載した従来装置の送信系回路のタイミングチャート。
【図16】本発明の第9の実施形態に係る超音波診断装置の機能ブロック図。
【図17】本発明の第10の実施形態に係るデジタルタイプの超音波診断装置のブロック図。
【図18】第10の実施形態で採用しているパルス発生器の詳細を説明するブロック図。
【図19】パルス発生器の動作の一例を説明するタイミングチャート。
【図20】従来装置で送受信される超音波パルスの周波数領域波形の説明図。
【図21】実施形態の装置で送受信される超音波パルスの周波数領域波形の説明図。
【図22】実施形態の装置で用いられる帯域可変フィルタの特性を説明する図。
【図23】実施形態の装置に搭載された演算回路の構成を示すブロック図。
【図24】実施形態の装置で用いるパワーのダイナミックレンジ演算を、従来法と対比して説明する図。
【図25】実施形態の装置のモニタに表示される画像およびカラーバーを例示する図。
【図26】送信される広帯域の超音波パルスと空間分解能を説明する図。
【図27】帯域可変フィルタの別の特性を説明する図。
【図28】第10の実施形態の第1の変形例に係る複素帯域可変デジタルフィルタを搭載した超音波診断装置のブロック図。
【図29】第10の実施形態の第2の変形例に係る帯域可変フィルタのさらに別の特性を説明する図。
【図30】第10の実施形態の第3の変形例を説明するスペクトル図。
【図31】上記第3の変形例を説明する帯域可変フィルタの帯域シフトの説明図。
【図32】上記第3の変形例を説明する帯域可変フィルタの帯域設定の説明図。
【図33】第10の実施形態の第4の変形例に係る帯域可変デジタルフィルタを検波器の前段に挿入した超音波診断装置のブロック図。
【図34】第10の実施形態の第5の変形例に係るクラッタ成分を除去するフィルタとして差分フィルタを搭載した超音波診断装置のブロック図。
【図35】第10の実施形態の第6の変形例に係るアナログタイプの超音波診断装置のブロック図。
【図36】アナログタイプの別の超音波診断装置を示すブロック図。
【図37】さらに別の変形例を示す超音波診断装置のブロック図。
【図38】従来の血流イメージングに拠る不都合を説明する画像図。
【図39】第1及び第5の実施形態に係る高分解能フローモードに拠る血流画像の例を、従来のドプラ速度画像と対比させて説明する図。
【図40】第8の実施形態に係る、コントラストエコー法に基づく高分解能フローモードに拠るパフュージョン画像の例を、従来のドプラ速度画像と対比させて説明する図。
【図41】第8の実施形態に係る、直交流に対する高分解能フローモードに拠る血流画像の例を、従来のドプラ速度画像と対比させて説明する図。
【符号の説明】
11 プローブ
12 送信系回路
13 受信系回路
15 CFMモード処理系回路
16 表示系回路
17 操作パネル
18 制御装置
21 送信トリガ発生器
22 パルス発生器
23 送信回路
24 パルス長設定器
25 方向数設定器
26 送信回数設定器
27 エコー法切替スイッチ
32a,…,32n A/D変換器
41a,41b ミキサ
42a,42b LPF
43a,43b 帯域可変フィルタ
43c 複素帯域可変デジタルフィルタ
43d 帯域可変デジタルフィルタ
45a,45b MTIフィルタ
45c,45d 差分フィルタ
46 演算回路
51 基準信号周波数設定器
52 時間(深さ)カウンタ
53 周波数帯域設定器
61 DSC
62 データ発生器
71a,71b A/D変換器
81 プローブ
82 送信系回路
82A 広帯域送信パルス発生器
83 受信系回路
84 HPF又は差分器
85 フローデータ処理器
86 表示器
87 帯域可変フィルタ
88 周波数帯域設定器
91 エコー法切替スイッチ
92 送信回数設定器
93 方向数設定器
95 選択器
96 Bモード及び/CFMモード処理系回路
96A Bモード処理系回路
97 スイッチ
98 モード切替コントローラ
99 合成器
100 バランス制御器
101 スイッチ
104 帯域可変フィルタ
105 差分フィルタ
106 Bモード処理系回路
107 表示器

Claims (37)

  1. 被検体内の同一方向にバースト波数が3未満の広帯域な周波数特性を有する超音波パルスを少なくとも2回ずつ送信しながら画像化したい断面をスキャンし且つその超音波パルスの反射に伴う電気量のエコー信号を各回の送信毎に得るスキャン手段と、
    前記スキャン手段によって得られる各エコー信号に対して位相検波を行い、前記位相検波を行った各位相検波信号のうち、同一深さ位置の各信号に対して低域周波数成分を遮断すると共に高域周波数成分を通過させる高域濾波処理を施す処理手段と、
    前記処理手段よって処理された信号から、2次元画像のデータである輝度情報、パワー情報、またはドプラ成分に基づく速度情報を生成する生成手段と、
    前記2次元画像のデータに基づく画像表示を行う表示手段と、
    を備えたことを特徴とした超音波診断装置。
  2. 請求項1記載の超音波診断装置において、
    前記スキャン手段、処理手段、及び生成手段は、各々、前記被検体に造影剤を投与した状態でコントラストエコー法を実施する手段であることを特徴とした超音波診断装置。
  3. 請求項1記載の超音波診断装置において、
    前記超音波パルスは、パルス長が1波であることを特徴とした超音波診断装置。
  4. 請求項1項記載の超音波診断装置において、
    前記スキャン手段は、前記広帯域な超音波パルスとして、−6dBにおける比帯域が30%以上である超音波パルスを設定する広帯域設定手段を有することを特徴とする超音波診断装置。
  5. 請求項1の記載の超音波診断装置において、
    前記スキャン手段は、前記広帯域な超音波パルスとして、−6dBにおける波連長が3波長未満である超音波パルスを設定する広帯域設定手段を有することを特徴とする超音波診断装置。
  6. 請求項2記載の超音波診断装置において、
    前記2次元画像のデータは、前記被検体の断面上に在る造影剤に起因した前記エコー信号の輝度情報又はパワー情報を表すデータであることを特徴とした超音波診断装置。
  7. 請求項1記載の超音波診断装置において、
    前記処理手段は、前記エコー信号を基準信号に基づいて位相検波する位相検波手段と、前記基準信号の周波数を前記超音波パルスに拠るラスタ方向の深さに応じて変更する基準信号周波数変更手段と、前記位相検波されたエコー信号に前記高域濾波処理を施すエコー信号処理手段とを備えることを特徴とした超音波診断装置。
  8. 請求項7記載の超音波診断装置において、
    前記基準信号周波数変更手段は、前記基準信号の周波数を、前記ラスタ方向の深さに応じて当該各深さにおける前記エコー信号の周波数帯域の中で最も検出感度の高い周波数に変更する手段であることを特徴とする超音波診断装置。
  9. 請求項1記載の超音波診断装置において、
    前記処理手段は、前記エコー信号の所望の周波数成分を通過させるフィルタ手段と、このフィルタ手段によりフィルタリングされたエコー信号に前記高域濾波処理を施すエコー信号処理手段とを備えることを特徴とした超音波診断装置。
  10. 請求項9記載の超音波診断装置において、
    前記フィルタ手段は、前記超音波パルスに拠るラスタ方向に対する帯域特性を変更可能な帯域可変フィルタであることを特徴とした超音波診断装置。
  11. 請求項10記載の超音波診断装置において、
    前記処理手段は、前記ラスタ方向の深さに応じて前記帯域可変フィルタの帯域特性を変更する帯域特性変更手段を備えたことを特徴とする超音波診断装置。
  12. 請求項11記載の超音波診断装置において、
    前記帯域特性変更手段は、前記帯域特性を前記ラスタ方向の深さに応じて当該各深さにおけるエコー信号帯域と略同一の帯域特性に変更する手段であることを特徴とする超音波診断装置。
  13. 請求項9記載の超音波診断装置において、
    前記フィルタ手段は、前記被検体の生体減衰を含むファクタに因り変化する前記エコー信号帯域の特性に応じて前記エコー信号を整形するフィルタであることを特徴とする超音波診断装置。
  14. 請求項1乃至13の何れか一項記載の超音波診断装置において、
    前記断面のBモード断層像を得る手段を備え、
    前記表示手段は、前記Bモード断層像と前記2次元画像のデータとを同時に表示する手段であることを特徴とした超音波診断装置。
  15. 請求項14記載の超音波診断装置において、
    前記表示手段は、前記Bモード断層像に前記2次元画像のデータを重ね合わせて表示する手段であることを特徴とした超音波診断装置。
  16. 請求項1乃至15の何れか一項記載の超音波診断装置において、
    従来法に拠る表示モードの画像データを得る手段と、前記処理手段及び前記生成手段に基づく表示モードと前記従来法に拠る表示モードの切換を指令するモード切換指令手段とを備えたことを特徴とする超音波診断装置。
  17. 請求項16記載の超音波診断装置において、
    前記従来法に拠る表示モードはBモード又はCFM(カラーフローマッピング)モードであることを特徴とする超音波診断装置。
  18. 請求項1記載の超音波診断装置において、
    前記被検体に造影剤を投与して前記断面の画像化を行うコントラストエコー法と前記被検体に造影剤を投与しないで前記断面の画像化を行う非コントラストエコー法とを選択的に指示する指示手段と、この指示手段を介して指示されるコントラストエコー法又は非コントラストエコー法に対して前記超音波パルスの送信及び前記エコー信号の処理の内の少なくとも一方に関して前記エコー法毎に最適な条件に切り替える切替制御手段とを備えたことを特徴とする超音波診断装置。
  19. 請求項18記載の超音波診断装置において、
    前記切替制御手段は、前記コントラストエコー法が指示されたときには、前記非コントラストエコー法時に比較して、前記断面上での送信1方向に対する並列同時受信の方向数を増加させるように切り替える手段であることを特徴とする超音波診断装置。
  20. 請求項18記載の超音波診断装置において、
    前記切替制御手段は、前記コントラストエコー法が指示されたときには、前記非コントラストエコー法時に比較して、前記断面上での同一方向に対する送受信の回数を減らすように切り替える手段であることを特徴とする超音波診断装置。
  21. 請求項2記載の超音波診断装置において、
    前記スキャン手段は、前記広帯域な超音波パルスの音圧レベルを、前記造影剤が消失可能であって且つ前記エコー信号に前記造影剤の消失に起因したエコー成分が含まれる値に設定するか、又は、前記造影剤が不規則な振動を起こし且つ前記エコー信号に前記造影剤の不規則な振動に起因したエコー成分が含まれる値に設定する手段を有することを特徴とした超音波診断装置。
  22. 請求項21記載の超音波診断装置において、
    前記処理手段は、前記エコー信号の所望の周波数成分を通過させるフィルタ手段と、このフィルタ手段の帯域特性を前記超音波パルスの基本波成分及び高調波成分の少なくとも一方について前記超音波パルスに拠るラスタ方向の深さ毎に設定する設定手段とを備えたことを特徴とする超音波診断装置。
  23. 請求項1記載の超音波診断装置において、
    前記生成手段および前記表示手段は、前記処理手段から得られる造影剤に起因したエコー成分のパワーを非飽和の状態で処理できる広いダイナミックレンジを共に有することを特徴とした超音波診断装置。
  24. 請求項23記載の超音波診断装置において、
    前記広いダイナミックレンジは、Bモード用のダイナミックレンジと同等のレンジであることを特徴とした超音波診断装置。
  25. 請求項23記載の超音波診断装置において、
    前記広いダイナミックレンジは、40dBを超え且つ90dBまでの値を上限値として持つように設定されたダイナミックレンジであることを特徴とした超音波診断装置。
  26. 請求項1記載の超音波診断装置において、
    前記処理手段は、基準信号に基づいて前記エコー信号を位相検波する位相検波手段を有し、前記生成手段は、前記基準信号に基づいて動き要素の運動速度又はドプラ周波数を含む情報を演算する速度演算手段を有する一方で、
    本装置は、前記基準信号の周波数を前記超音波パルスに拠るラスタ方向の深さに応じて変更する基準信号周波数変更手段を備えることを特徴とした超音波診断装置。
  27. 請求項26記載の超音波診断装置において、
    前記表示手段は、前記ドプラ周波数及び前記速度の少なくとも一方を表示するとともに、前記ドプラ周波数の表示には折り返り周波数値を付随して表示し且つ前記速度の表示には前記基準周波数を前記深さに応じて変更することに連動した複数の折り返り速度値を付随して表示する手段を備えることを特徴とした超音波診断装置。
  28. 請求項27記載の超音波診断装置において、
    前記表示手段は、前記速度が同一値の場合には同一の色相で表わす態様にしたがって当該速度をカラーバーと伴に表示する手段であって、前記カラーバーはドプラ周波数軸と深さ軸を仮想的に又は実質的に付したカラーバーであり、これにより、前記深さ毎の前記ドプラ周波数に対応した前記速度を当該カラーバー上に2次元表示することを特徴とした超音波診断装置。
  29. 請求項27記載の超音波診断装置において、
    前記表示手段は、前記速度が同一値の場合には同一の色相で表わす態様にしたがって当該速度をカラーバーと伴に表示する手段であって、前記カラーバーは速度軸と深さ軸を仮想的に又は実質的に付したカラーバーであり、これにより、前記深さ毎の折り返り速度を当該カラーバー上に2次元表示することを特徴とした超音波診断装置。
  30. 請求項1または2の何れか一項記載の超音波診断装置において、
    前記生成手段は、前記2次元画像のデータとして、CFM(カラーフローマッピング)モードに拠る動き要素の運動速度のカラーマッピング像の画像データを生成する手段である超音波診断装置。
  31. 請求項1乃至30の何れか一項記載の超音波診断装置において、
    前記スキャン手段は、前記超音波パルスの送受信を担うプローブと、このプローブが出力した前記超音波パルスの反射に伴う電気量の信号をデジタル量に変換するA/D変換器と、このデジタル量の信号を遅延加算して前記エコー信号を生成する遅延制御回路とを備え、
    前記処理手段及び前記生成手段は、前記デジタル量のエコー信号に対して各手段に割り当てられた処理および演算を行うデジタルタイプの回路構成を備えることを特徴とした超音波診断装置。
  32. 超音波送受信用のプローブと、
    バースト波数が3未満の広帯域なパルス駆動信号を設定する設定手段と、
    前記パルス駆動信号で前記プローブを駆動して被検体に超音波パルスを送信させるプローブ駆動手段と、前記パルス駆動信号を遅延制御することで前記被検体の断面に沿って同一方向に前記超音波パルスを少なくとも2回ずつ送信させる送信手段と、
    前記プローブで受信される前記超音波パルスの反射に伴うエコー信号を受信する受信手段と、
    前記受信手段によって得られる前記各エコー信号に対して位相検波を行い、前記位相検波を行った各位相検波信号のうち、同一深さ位置の各信号に対して低域周波数成分を遮断すると共に高域周波数成分を通過させる高域濾波処理を施す処理手段と、
    前記処理手段よって処理された信号から、2次元画像のデータである輝度情報、パワー情報、またはドプラ成分に基づく速度情報を生成する生成手段と、
    前記2次元画像のデータに基づく画像表示を行う表示手段と、
    を備えたことを特徴とする超音波診断装置。
  33. 被検体内の同一方向にバースト波数が3未満の広帯域な周波数特性を有する超音波パルスを少なくとも2回ずつ送信しながら画像化したい断面をスキャンし且つその超音波パルスの反射に伴う電気量のエコー信号を各回の送信毎に得て、このスキャンによって前記断面上の各サンプル位置に対応して収集される前記各エコー信号に対して位相検波を行い、前記位相検波を行った各位相検波信号のうち、同一深さ位置の各信号に対して低域周波数成分を遮断すると共に高域周波数成分を通過させる高域濾波処理を施し、この処理された信号から、2次元画像のデータである輝度情報、パワー情報、またはドプラ成分に基づく速度情報を生成し、この2次元画像のデータに基づく画像表示を行うことを特徴とした超音波診断方法。
  34. 請求項33記載の超音波診断方法において、
    前記スキャン、処理、及び生成の工程は、前記被検体に造影剤を投与した状態で実施される工程であることを特徴とした超音波診断方法。
  35. 請求項33記載の超音波診断方法において、
    前記2次元画像のデータは、前記被検体の断面内の動き要素により反射された前記エコー信号の輝度情報又はパワー情報を表すデータであることを特徴とした超音波診断方法。
  36. 請求項33記載の超音波診断方法において、
    前記処理は、前記エコー信号を、周波数が前記超音波パルスに拠るラスタ方向の深さに応じて変更される基準信号に基づいて位相検波し、この位相検波されたエコー信号に前記高域濾波処理を施すことを特徴とした超音波診断方法。
  37. 請求項33記載の超音波診断方法において、
    前記処理は、前記エコー信号の所望の周波数成分を通過させ、このフィルタリングされたエコー信号に前記高域濾波処理を施すことを特徴とした超音波診断方法。
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