JP4569960B2 - 導電性ペースト - Google Patents
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Description
また、このような耐電圧性の低下や静電容量不足は、積層セラミックコンデンサーのヒビやカケ破断の原因にもなっている。
しかしながら、これらの溶剤は、ポリビニルブチラール樹脂に対する溶解性が高く、完全にシートアタック現象を抑制することができていないのが現状である。今後さらに欠品の削減や多層セラミック電子部品の薄膜化、高密度化に対応するためには、有機ビヒクルのエチルセルロース樹脂に対する溶解性を維持したままで、ポリビニルブチラール樹脂に代表される有機バインダーに対する溶解性をさらに下げる必要がある。
また、上記テルペン−ジカルボン酸エステル系化合物および/またはその水添物は、好ましくは、テルペン系化合物と不飽和ジカルボン酸もしくはその無水物とをディールス−アルダー反応を用いて製造されるテルペン−ジカルボン酸系ディールス−アルダー化合物をさらにアルコール類でエステル化してなるエステル化物、あるいは、テルペン系化合物と不飽和ジカルボン酸エステル系化合物とをディールス−アルダー反応を用いて製造されるテルペン−ジカルボン酸エステル系ディールス−アルダー化合物、および/またはこれらの水添物で、エステル側鎖部分が炭素数1〜7の炭化水素基を有する化合物である。
本発明に用いられるテルペン−ジカルボン酸エステル系化合物は、通常、テルペン系化合物と不飽和ジカルボン酸エステル系化合物を反応させて得られる化合物およびその水添物である。
これらの化合物は、テルペン系化合物と不飽和ジカルボン酸またはその無水物を反応させて得られる化合物とアルコール類とをエステル化することによって得ることもできるが、コストなどの面から、より好ましくはテルペン系化合物と不飽和ジカルボン酸エステル系化合物を直接反応させて得る方法がよい。
本発明のテルペン−ジカルボン酸エステル系ディールス−アルダー化合物は、テルペン系化合物と不飽和ジカルボン酸エステル系化合物をディールス−アルダー反応させて得られる化合物およびその水添物、ならびにテルペン系化合物と不飽和ジカルボン酸(またはその無水物)をディールス−アルダー反応後、アルコール類とエステル化させて得られるエステル化合物およびその水添物である。
テルペン系化合物としては、α−テルピネン、ミルセン、アロオシメン、オシメン、フェランドレンなどの共役二重結合を有するテルペン化合物が好ましい。
ただし、本発明は、これらに限定されるものではない。
その場合、用いられる不飽和ジカルボン酸としては、上記不飽和ジカルボン酸エステル系化合物に対応する不飽和ジカルボン酸、またはその無水物、すなわちマレイン酸、フマル酸、無水マレイン酸などが挙げられる。
また、用いられるアルコール類としては、具体的にはメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、2−ブタノール、t−ブタノール、ペンタノール、2−ペンタノール、アミルアルコール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、ヘプタノールなどが挙げられる。
ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。
本発明のテルペン化合物と不飽和ジカルボン酸エステル系化合物とのディールス−アルダー反応とは、環化付加反応である。
ディールス−アルダー反応は、一般的な化学書などに記載されている公知の反応であり、共役二重結合(1,3−ジエン)を有する化合物が、オレフィン類と環状付加して、シクロヘキセン骨格を生成する反応である。このようにして得られる化合物は、通常、二重結合を有する環化付加反応物である。
なお、ディールス−アルダー反応におけるテルペン系化合物と、不飽和ジカルボン酸エステル系化合物との反応は、テルペン系化合物1モルに対し、通常、不飽和ジカルボン酸エステル系化合物が0.2〜3.0モル、好ましくは0.5〜1.5モルである。不飽和ジカルボン酸エステル系化合物が0.2モル未満ではテルペン化合物が過剰に存在することになり製造コスト的に好ましくなく、一方、3.0モルを超えると不飽和ジカルボン酸エステル化合物が過剰に存在することになり製造コスト的に好ましくない。
式(II)の化合物は、原料である式(I)の化合物を水素添加(水添)することにより得られたものである。
式(III)の化合物は、例えばテルペン系化合物としてアロオシメン、不飽和ジカルボン酸エステル系化合物として、ジブチルマレートなどを使用して、ディールス−アルダー反応で得られた化合物である。
式(IV)の化合物は、原料である式(III)の化合物を水素添加(水添)することにより得られたものである。
式(V)の化合物は、例えばテルペン系化合物としてミルセン、不飽和ジカルボン酸エステル系化合物として、ジブチルマレートなどを使用して、ディールス−アルダー反応で得られた化合物を水素添加(水添)することにより得られたものである。
水添する方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、パラジウム、ルテニウム、ロジウムなどの貴金属またはそれらを活性炭素、活性アルミナ、珪藻土などの坦体上に担持したものを触媒として使用して行う方法が挙げられる。
この時、粉末状の触媒を懸濁攪拌しながら反応を行うバッチ方式にすることも、成形した触媒を充填した反応塔を用いた連続方式にすることも可能であり、反応形式に特に制限はない。
また、本発明の導電性ペーストの溶剤中には、必要に応じて、各種添加剤、溶剤を含有させてもよい。
積層セラミックコンデンサーは、セラミック誘電層とPd(パラジウム)などの貴金属電極が交互に数十層積み重ねた積層体に外部電極が設けられた構造になっている。
セラミックグリーンシートは、このセラミック誘電層に相当するものであり、貴金属電極層が、塗布された、本発明の導電性ペーストに相当するものである。
このセラミックグリーンシートは、例えば、チタン酸バリウムや鉛を含むペロブスカイト型酸化物などのセラミック誘電体粉末とポリビニルブチラールなどの有機バインダー樹脂を混合して、ドクターブレード法により、シート状にしたものである。
このセラミックグリーンシートは、誘電体グリーンシートとも呼ばれている。
本発明の導電性ペーストは、貴金属電極層に相当するもので、有機バインダーとなる樹脂をテルペン−ジカルボン酸エステル系化合物である本発明の有機溶剤に溶解して得られる有機ビヒクル中に、Pdなどの金属粉末を分散させたものである。
有機ビヒクル中のテルペン−ジカルボン酸エステル系化合物は、60〜95重量%であることが好ましい。より好ましくは、65〜85重量%である。
60重量%未満では、エチルセルロースなどの溶解性が悪くなり、一方、95重量%を超えると、有機ビヒクルの粘度が低くなり過ぎて好ましくない。
有機バインダーとしては、エチルセルロース、ニトロセルロースなどのセルロース系樹脂や、ブチルメタクリレート、メチルメタクリレートなどのアクリル系樹脂が使用される。
導電性ペースト中には、粘度調整用の希釈溶剤を使用してもよい。
導電性ペースト中における、該有機ビヒクルは、5〜40重量%であることが好ましい。より好ましくは、10〜30重量%である。
有機ビヒクルは、5重量%未満であると、乾燥膜の強度が弱くなり、一方、40重量%を超えると、焼成後の電極厚さが薄くなりすぎて好ましくない。
具体的には、塗布膜厚などの粘度調製として、一般に回転粘度計において100回転での粘度が40,000cps以下になるようにエチルアルコール、トルエン、トリメチルベンゼンなどに希釈溶剤を加えていることが多い。
本発明の溶剤成分に含有されるテルペン−ジカルボン酸エステル系化合物は、セラミックグリーンシートに使用されるポリビニルブチラールなどの有機バインダー樹脂に対する溶解性が低く、一方、導電性ペーストに使用されるエチルセルロース、ニトロセルロース、ブチルメタクリレート、メチルメタクリレートなどの有機バインダーに対しては良好な溶解性を示すものである。
したがって、セラミック誘電層とPd(パラジウム)などの貴金属電極が交互に、規則性をもって積み重ねた積層体を製造することが可能となり、デラミネーションが生じない、電気的特性の劣化の発生しない、積層セラミックコンデンサーを提供することを可能にするものである。
合成例1
(式(I)で表される化合物の合成)
冷却管、温度計、撹拌棒を備えた1,000mlガラス製四つ口フラスコに、α−テルピネン 314g(ヤスハラケミカル(株)製α−テルピネンの精留品、純度65%、1.5モル)およびジブチルフマレート 345g(和光純薬製、純度99%、1.5モル)を仕込み、撹拌しながら昇温して、160〜180℃で12時間反応させた。反応後、反応液を減圧蒸留(1.0mmHg、175〜180℃)することにより式(I)で表されるジブチルフマレート化テルピネン 335g(収率62.0%、純度99%)を得た。
(式(II)で表される化合物の合成)
合成例1で得られた式(I)で表される化合物を240g、および粉末状の活性化ニッケル 2.4gを仕込み、次いで、これを密閉し、雰囲気を窒素ガスで置換した後、水素ガス 10kgf/cm2の圧力をかけながら導入した。そして攪拌しながら加熱し50℃となったところで、水素の圧力を50kgf/cm2とし、吸収された水素を補うことで圧力を50kgf/cm2に保ちながら6時間反応させた。反応後、反応油に含まれる触媒を吸引ろ過にて除去し、減圧蒸留(3.0mmHg、170〜175℃)することにより式(II)で表される水添ジブチルフマレート化テルピネン 198g(収率82.0%、純度99.0%)を得た。
(式(III)で表される化合物の合成)
温度計、撹拌棒を備えた容積1,000mlのガラス製オートクレーブに、アロオシメン 222g(ヤスハラケミカル(株)製、アロオシメンの精留品、純度92%、1.5モル)およびジブチルマレート 345g(和光純薬製、純度99%、1.5モル)を仕込み、撹拌しながら昇温して、150〜170℃で12時間反応させた。反応後、反応液を減圧蒸留(3.0mmHg、175〜180℃)することにより式(III)で表されるジブチルマレート化アロオシメン 338g(収率62.0%、純度98%)を得た。
(式(IV)で表される化合物の合成)
温度計、撹拌棒を備えた1,000mlガラス製オートクレーブに、アロオシメン 222g(ヤスハラケミカル(株)製、アロオシメンの精留品、純度92%、1.5モル)およびジメチルマレート 218g(和光純薬製、純度99%、1.5モル)を仕込み、撹拌しながら昇温して、150〜170℃で12時間反応させた。反応後、反応液を減圧蒸留(3.0mmHg、165〜170℃)することによりジメチルマレート化アロオシメン 223g(収率51.5%、純度97%)を得た。得られた化合物を100g用い、合成例2と同様の方法で水添反応を行った。反応後、反応油に含まれる触媒を吸引ろ過にて除去し、減圧蒸留(4.5mmHg、170〜175℃)することにより式(IV)で表される水添ジメチルマレート化アロオシメン 81.1g(収率80.0%、純度97%)を得た。
(式(V)で表される化合物の合成)
ミルセン 255g(ヤスハラケミカル(株)製、ミルセンの精留品、純度80%、1.5モル)およびジブチルマレート 345g(和光純薬製、純度99%、1.5モル)を用い、反応例1と同様の方法で反応させた。反応後、反応液を減圧蒸留(3.0mmHg、150〜155℃)することによりジブチルマレート化ミルセン 279g(収率50.0%、純度98%)を得た。得られた化合物を150g用い、合成例2と同様の方法で水添反応を行った。反応後、反応油に含まれる触媒を吸引ろ過にて除去し、減圧蒸留式(3.0mmHg、155〜160℃)することにより式(V)で表される水添ジブチルマレート化ミルセン 121g(収率80.1%、純度98%)を得た。
(ブチラール樹脂の溶解性試験)
50mL共栓付試験管にブチラール樹脂(和光純薬製:重量平均分子量(MW)2,400、住友化学製:S−LEC BH−3)をそれぞれ500mgと本発明の各溶剤(合成例1〜4で得られた式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)の溶剤)25gを入れ、スターラーで撹拌しながら60℃で2時間加温した。加温終了後上清を分取し、さらに2,000rpmで5分間遠沈操作を行った。このものの上澄みを1g取り、標品(旭電化工業製アデカスタブAO−20)を50mg加えてGPCを測定した。測定後、ブチラール樹脂の分子量に相当するピークエリアと標品のピークエリア比より、各溶剤25gに溶解したブチラール樹脂量(mg)を算出した。その結果を表1に示す。
50mL共栓付試験管にエチルセルロースSTD45(DOW製)1,250mgと本発明の各溶剤(合成例1〜4で得られた式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)の溶剤)25gを入れ、スターラーで撹拌しながら60℃で2時間加温した。加温終了後室温まで放冷し、エチルセルロースの溶け残りが無いか目視で確認した。完全に溶解したものについては○、溶け残りが確認されたものについては×とした。その結果を表1に示す。
ターピネオール、ジヒドロターピネオール、イソボルニルアセテート、ノピルアセテート、ターピニルアセテート、ならびにジヒドロターピニルアセテートを比較溶剤として用い、実施例と同様のブチラール樹脂溶解性試験、ならびにエチルセルロースの溶解性試験を行った。その結果を表1に示す。
積層セラミックコンデンサーを製造する場合について、以下の方法で、本発明の導電性ペーストを評価した。
微細化したチタン酸バリウム粉末 90重量%とポリビニルブチラール(積水化学工業(株)製S−LEC BH3) 4重量%、エチルアルコール 6重量%からなる有機ビヒクルを混練してセラミックスラリーを作製し、ドクターブレード法により、誘電体グリーンシートを作製した。
次に、合成例1〜5および上記比較例で使用したそれぞれの溶剤 30重量部に、エチルセルロース樹脂(DOW(株)製、エチルセルロース)5重量部を溶解させ、有機ビヒクルを調合した。次に、この有機ビヒクル 10重量部と、Pd(パラジウム)粉末を10重量部混練して、導電性ペーストを作製した。
上記誘電体グリーンシート上に、この導電性ペーストをスクリーン印刷し、そのシートを120℃で10分間乾燥させた。その後、そのシートを積層し、80℃、100kg/cm2、3分間で熱圧着し、30層の積層体である内部電極を作製した。その積層体を3mm×5mm角に切断し、大気炉にて1,350℃で2時間焼成した。その後、焼成体を研磨し、断面を光学顕微鏡で観察し、デラミネーションの発生の有無を観察した。結果を表1に記載した。
Claims (6)
- セラミック誘導体粉末およびポリビニルブチラール樹脂を含むセラミックスラリーを成型してなるセラミックグリーンシート上に印刷される金属電極層となるものであり、セルロース系樹脂あるいはアクリル系樹脂を含む有機バインダーおよび有機溶剤を含有する有機ビヒクル中に金属粉末が分散されてなる、多層セラミック部品を製造する際に用いる導電性ペーストにおいて、当該有機溶剤として、テルペン−ジカルボン酸エステル系化合物および/またはその水添物を含有し、かつ当該テルペン−ジカルボン酸エステル系化合物および/またはその水添物が、テルペン系化合物と不飽和ジカルボン酸もしくはその無水物とをディールス−アルダー反応を用いて製造されるテルペン−ジカルボン酸系ディールス−アルダー化合物をさらにアルコール類でエステル化してなるエステル化物、あるいは、テルペン系化合物と不飽和ジカルボン酸エステル系化合物とをディールス−アルダー反応を用いて製造されるテルペン−ジカルボン酸エステル系ディールス−アルダー化合物、および/またはこれらの水添物で、エステル側鎖部分が炭素数1〜7の炭化水素基を有する化合物であることを特徴とした導電性ペースト。
- テルペン系化合物がα−テルピネンであり、テルペン−ジカルボン酸エステル系化合物が下記式(I)で表され、その水添物が下記式(II)で表される化合物である請求項1記載の導電性ペースト。
- テルペン系化合物がアロオシメンであり、テルペン−ジカルボン酸エステル系化合物が下記式(III)で表され、その水添物が下記式(IV)で表される化合物である請求項1記載の導電性ペースト。
- テルペン系化合物がミルセンであり、テルペン−ジカルボン酸エステル系化合物の水添物が下記式(V)で表される化合物である請求項1記載の導電性ペースト。
- 有機ビヒクルを構成する有機バインダーが、セルロース系樹脂の場合はエチルセルロースまたはニトロセルロース、アクリル系樹脂の場合はブチルメタクリレートまたはブチルメタクリレートであり、導電性ペーストを構成する金属粉末は、Ni、Cu、AgおよびPdから選ばれたものである、請求項1〜4いずれかに記載の導電性ペースト。
- 有機溶剤として用いられる前記テルペン−ジカルボン酸エステル系化合物および/またはその水添物の割合が有機ビヒクル中に60〜95重量%であり、かつ導電性ペースト中における有機ビヒクルの割合が5〜40重量%である、請求項1〜5いずれかに記載の導電性ペースト。
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