JP7061795B2 - 高分子化合物及びそれを含む高分子組成物、並びに無機粒子含有組成物 - Google Patents
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1)熱分解性(燃焼性)の向上。焼成による熱分解処理後においてもカーボン等の灰分が残存していると、MLCCの電気特性を悪化させたり層間の剥離を引き起こしてしまう。
2)印刷性の向上。昨今、スクリーン印刷によって形成される電極パターンの微細化や薄膜化が進んでおり、パターンサイズは100μmを下回るようになっている。このため、電極ペーストにおいては、いわゆる糸曳現象を生じないバインダーが求められる。糸曳現象とは、バインダーポリマーの影響で印刷する工程において用いるペースト等が伸長して細い糸を曳く現象であり、欠陥品を生じる原因となる。
3)無機粒子の均一分散性、膜強度(ペーストから形成される層の強度)及び各層間の密着性の向上。これらは、チップを構成する各層の薄膜化に伴う要求特性である。
本発明の他の目的は、上記高分子化合物を含むポリマーブレンド型高分子組成物を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、上記高分子化合物単独あるいは上記高分子化合物を含むポリマーブレンド型高分子組成物と無機粒子とを含む無機粒子含有組成物を提供することにある。
[1] 第1セルロース系化合物から形成される第1セグメントと、
第1ポリビニルアセタール系化合物から形成される第2セグメントと、
前記第1セグメントと前記第2セグメントとを結合する結合基と、
を分子内に含み、
前記結合基が、-S-基又は1,2,3-トリアゾールジイル基を含む、高分子化合物。
[2] 第1セルロース系化合物が、反応性官能基(A)を有するセルロース誘導体であり、
第1ポリビニルアセタール系化合物が、反応性官能基(B)を有するポリビニルアセタールであり、
反応性官能基(A)と反応性官能基(B)との組み合わせは、チオール基とビニル基との組み合わせであるか、又はアルキニル基とアジド基との組み合わせである、[1]に記載の高分子化合物。
[3] [1]又は[2]に記載の高分子化合物を含む、相溶化剤。
[4] [1]又は[2]に記載の高分子化合物と、
第2セルロース系化合物と、
第2ポリビニルアセタール系化合物と、
を含む、高分子組成物。
[5] 第2セルロース系化合物は、反応性官能基(C)を有していてもよいセルロース誘導体であり、
第2ポリビニルアセタール系化合物は、反応性官能基(D)を有していてもよいポリビニルアセタールであり、
反応性官能基(C)と反応性官能基(D)との組み合わせは、チオール基とビニル基との組み合わせであるか、又はアルキニル基とアジド基との組み合わせである、[4]に記載の高分子組成物。
[6] 第2セルロース誘導体は、反応性官能基(C)を有しないセルロース誘導体であり、
第2ポリビニルアセタールは、反応性官能基(D)を有しないポリビニルアセタールである、[5]に記載の高分子組成物。
[7] [1]又は[2]に記載の高分子化合物と、
無機粒子と、
有機溶剤と、
を含む、無機粒子含有組成物。
[8] [1]又は[2]に記載の高分子化合物と、
第2セルロース系化合物と、
第2ポリビニルアセタール系化合物と、
無機粒子と、
有機溶剤と、
を含む、無機粒子含有組成物。
[9] 第2セルロース系化合物は、反応性官能基(C)を有していてもよいセルロース誘導体であり、
第2ポリビニルアセタール系化合物は、反応性官能基(D)を有していてもよいポリビニルアセタールであり、
反応性官能基(C)と反応性官能基(D)との組み合わせは、チオール基とビニル基との組み合わせであるか、又はアルキニル基とアジド基との組み合わせである、[8]に記載の無機粒子含有組成物。
[10] 第2セルロース誘導体は、反応性官能基(C)を有しないセルロース誘導体であり、
第2ポリビニルアセタールは、反応性官能基(D)を有しないポリビニルアセタールである、[9]に記載の無機粒子含有組成物。
上記高分子化合物を含むポリマーブレンド型高分子組成物を提供することができる。
上記高分子化合物単独あるいは上記高分子化合物を含むポリマーブレンド型高分子組成物と無機粒子とを含む無機粒子含有組成物を提供することができる。
なお、本明細書において「A~B」(A及びBは数値である。)との記載は、特記ない限り「A以上B以下」を表す。
本発明に係る高分子化合物(以下、単に「高分子化合物」ともいう。)は、第1セルロース系化合物から形成される第1セグメント、第1ポリビニルアセタール系化合物から形成される第2セグメント、及び、第1セグメントと第2セグメントとを結合する結合基とを分子内に含む高分子化合物である。
この高分子化合物は、2種以上の成分からなるポリマーブレンド型バインダー、とりわけセルロース系化合物とポリビニルアセタール系化合物と含むバインダーの相溶化剤として好適である。
第1セグメントを形成する第1セルロース系化合物は、第2セグメントを形成する第1ポリビニルアセタール系化合物と反応可能な反応性官能基(A)を有する化合物であり、好ましくは、反応性官能基(A)を有するセルロース誘導体である。第1セルロース系化合物は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
セルロース誘導体とは、天然高分子であるセルロースが有するヒドロキシ基の一部に化学修飾を施した変性セルロースをいう。ヒドロキシ基の化学修飾としては、特に制限されないが、ヒドロキシ基のアルキルエーテル化、ヒドロキシアルキルエーテル化、エステル化等が挙げられる。
数平均分子量が0.5万未満であると溶液粘度が極端に低くなり無機粒子含有組成物(ペースト又はスラリー)の粘度調整が困難となり、また、無機粒子含有組成物を塗布、乾燥してなる膜の強度や密着性が低下するおそれがある。
一方で、数平均分子量が15万を超えると溶液粘度が極端に大きくなり、無機粒子含有組成物の粘度調整が困難となり得、また印刷性が低下するおそれがある。
反応性官能基(A)は、好ましくは、下記のX群から選択されるいずれかの官能基、又は下記のY群から選択されるいずれかの官能基である。
(X群)
チオール基(-SH)、アルキニル基、アミノ基
(Y群)
ビニル基、アジド基、カルボキシル基
ヒドロキシ基と反応可能な基としては、カルボキシル基、酸無水物基、酸塩化物基、イソシアネート基、ハロゲン基(ハロゲン原子)等が挙げられる。
ビニル基には、(メタ)アクリレート基((メタ)アクリロイルオキシ基)や、アリル基等が含まれる。
本明細書において「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及び/又はメタクリレートを意味し、(メタ)アクリル、(メタ)アクリロイル等というときの「(メタ)」も同様の趣旨である。
第2セグメントを形成する第1ポリビニルアセタール系化合物は、第1セグメントを形成する第1セルロース系化合物の反応性官能基(A)と反応可能な反応性官能基(B)を有するポリビニルアセタールである。
ポリビニルアセタールは通常、ビニルアセタール/ビニルアルコール/酢酸ビニルのモノマー単位から構成されるポリマーであり、ポリビニルアルコールをアセタール化することによって得ることができる。具体的には、ポリビニルアルコールをブチラール化したもの(ポリビニルブチラール)、ポリビニルアルコールをホルマール化したもの(ポリビニルホルマール)等が挙げられる。
数平均分子量が0.5万未満であると溶液粘度が極端に低くなり無機粒子含有組成物(ペースト又はスラリー)の粘度調整が困難となり、また、無機粒子含有組成物を塗布、乾燥してなる膜の強度や密着性が低下するおそれがある。
一方で、数平均分子量が15万を超えると溶液粘度が極端に大きくなり、無機粒子含有組成物の粘度調整が困難となり得、また印刷性が低下するおそれがある。
ここで、反応性官能基(A)がX群から選択される場合、反応性官能基(B)はY群から選択され、反応性官能基(A)がY群から選択される場合、反応性官能基(B)はX群から選択される。
より具体的には、第1セルロース系化合物が有する反応性官能基(A)と第1ポリビニルアセタール系化合物が有する反応性官能基(B)との組み合わせは、チオール基とビニル基との組み合わせであるか、アルキニル基とアジド基との組み合わせであるか、又は、アミノ基とカルボキシル基との組み合わせであることが好ましい。
ここでいう組み合わせとは、例えばチオール基とビニル基との組み合わせである場合、(反応性官能基(A),反応性官能基(B))の組み合わせは、(チオール基,ビニル基)であってもよく、(ビニル基,チオール基)であってもよいことを意味する。
ヒドロキシ基と反応可能な基としては、カルボキシル基、酸無水物基、酸塩化物基、イソシアネート基、ハロゲン基(ハロゲン原子)等が挙げられる。ヒドロキシ基と反応可能な基及び反応性官能基(B)を有する化合物の具体例は、上記「(1)第1セルロース系化合物」の項で挙げた化合物と同様である。
本発明に係る高分子化合物は、第1セルロース系化合物と第1ポリビニルアセタール系化合物との反応物であり、第1セルロース系化合物が有する反応性官能基(A)と第1ポリビニルアセタール系化合物が有する反応性官能基(B)との反応によって結合基が形成される。
結合基は、-S-基、1,2,3-トリアゾールジイル基又はアミド基を含む。
(反応性官能基(A),反応性官能基(B))の組み合わせが(アルキニル基,アジド基)であるとき、結合基は、1,2,3-トリアゾールジイル基を含む。
(反応性官能基(A),反応性官能基(B))の組み合わせが(アミノ基,カルボキシル基)であるとき、結合基は、アミド基を含む。
第1セグメントは、第1セルロース系化合物のうち、結合基を形成する構造部分以外の構造部分を指す。
第2セグメントは、第1ポリビニルアセタール系化合物のうち、結合基を形成する構造部分以外の構造部分を指す。
高分子化合物は、第1セグメントと第2セグメントとを、0.05:0.95~0.95~0.05の質量比の範囲で含むことが好ましい。さらには0.1:0.9~0.9:0.1の重量比の範囲が好ましい。この範囲を逸脱すると相溶化剤あるいは相溶化剤を含むポリマーブレンド型高分子組成物としの所望の特性が得られなくなる可能性がある。
高分子化合物の数平均分子量は、GPCによる標準ポリスチレン換算値で、1万~20万であることが好ましく、1万~15万であることがより好ましく、2万~12万であることがさらに好ましい。高分子化合物の数平均分子量が1万未満であると、相溶化剤としての機能が不十分になる傾向がある。一方で20万を超えると粘度が高くなりすぎる傾向がある。
なお、セルロース誘導体を含む高分子材料は、ポリビニルアセタールとの結合反応によって溶液中での高分子鎖の広がり等に変化が起こり、GPCでの分子量の測定値が、使用した原料の分子量との間には相関性が無い場合もある。
(1)第1セルロース系化合物及び第1ポリビニルアセタール系化合物の製造
反応性官能基(A)を有する第1セルロース系化合物及び反応性官能基(B)を有する第1ポリビニルアセタール系化合物は、上述のように、それぞれセルロース誘導体、ポリビニルアセタールのヒドロキシ基と、該ヒドロキシ基と反応可能な基及び反応性官能基(A)又は反応性官能基(B)を有する化合物とを反応させることによって得ることができる。
第1セルロース系化合物が有する反応性官能基(A)と第1ポリビニルアセタール系化合物が有する反応性官能基(B)とを化学反応容器を用いて有機溶剤中等で反応させることによって高分子化合物が得られる。
アジド基とアルキニル基とのクリック反応では銅触媒やルテニウム触媒などの金属触媒が使用される。
アミンとカルボン酸とのアミド化反応では、前記したカルボジイミド等を触媒とした反応等が実施可能である。
上記いずれの反応においても、反応に使用する触媒量や反応条件は先行技術と同様な一般的な化学反応プロセスで実施することが可能である。
なお、結合反応においては各高分子に導入された全て官能基が全て反応する必要は無く、過剰に存在する一方の官能基が少量残存しても特性には大きな影響は無いため問題ない。
本発明に係る相溶化剤(以下、単に「相溶化剤」ともいう。)は、上記本発明に係る高分子化合物を含む。相溶化剤は、本発明に係る高分子化合物からなっていてもよい。
相溶化剤は、1種又は2種以上の高分子化合物を含むことができる。高分子化合物の種類が異なる場合とは、例えば、高分子化合物を形成する第1セルロース系化合物及び/又は第1ポリビニルアセタール系化合物の種類(化学構造、分子量等)が異なる場合等が挙げられる。
本発明に係る高分子組成物(以下、単に「高分子組成物」ともいう。)は、上記本発明に係る高分子化合物と、第2セルロース系化合物と、第2ポリビニルアセタール系化合物とを含む。また、有機溶剤を含んでいても構わない。
高分子組成物は、1種又は2種以上の高分子化合物(相溶化剤)を含むことができる。
高分子組成物は、1種又は2種以上の第2セルロース系化合物を含むことができる。
高分子組成物は、1種又は2種以上の第2ポリビニルアセタール系化合物を含むことができる。
第2セルロース系化合物及び第2ポリビニルアセタール系化合物は、無機粒子含有組成物(ペースト又はスラリー)のバインダー又はその一部として好適に用いられるポリマー材料である。
反応性官能基(C)を有するセルロース誘導体は、上記反応性官能基(A)を有するセルロース誘導体と同様であってよい。反応性官能基(C)を有するセルロース誘導体については、反応性官能基(A)を有するセルロース誘導体についての上記記述が引用される。高分子組成物に含まれる高分子化合物を製造する際に用いた第1セルロース系化合物が有する反応性官能基(A)と、高分子組成物に含まれる第2セルロース系化合物が有する反応性官能基(C)とは同一であってもよいし、異なっていてもよい。
反応性官能基(C)を有しないセルロース誘導体としては、第1セルロース系化合物について述べたセルロース誘導体が挙げられるが、使用する相溶化剤の構成成分と異なるものを使用してもよい。セルロース誘導体は、エチルセルロースであることが好ましい。
数平均分子量が0.5万未満であると溶液粘度が極端に低くなり無機粒子含有組成物(ペースト又はスラリー)の粘度調整が困難となり、また、無機粒子含有組成物を塗布、乾燥してなる膜の強度や密着性が低下するおそれがある。
一方で、数平均分子量が15万を超えると溶液粘度が極端に大きくなり、無機粒子含有組成物の粘度調整が困難となり得、また印刷性が低下するおそれがある。
反応性官能基(D)を有するポリビニルアセタールは、上記反応性官能基(B)を有するポリビニルアセタールと同様であってよい。反応性官能基(D)を有するポリビニルアセタールについては、反応性官能基(B)を有するポリビニルアセタールについての上記記述が引用される。高分子組成物に含まれる高分子化合物を製造する際に用いた第1ポリビニルアセタール系化合物が有する反応性官能基(B)と、高分子組成物に含まれる第2ポリビニルアセタール系化合物が有する反応性官能基(D)とは同一であってもよいし、異なっていてもよい。
反応性官能基(D)は、反応性官能基(C)と反応可能な基であり、好ましくは、上記のX群から選択されるいずれかの官能基、又は上記のY群から選択されるいずれかの官能基である。
ここで、第2セルロース系化合物が反応性官能基(C)を有し、かつ第2ポリビニルアセタール系化合物が反応性官能基(D)を有するときには、反応性官能基(C)がX群から選択される場合、反応性官能基(D)はY群から選択されることが好ましく、反応性官能基(C)がY群から選択される場合、反応性官能基(D)はX群から選択されることが好ましい。
より具体的には、第2セルロース系化合物が有する反応性官能基(C)と第2ポリビニルアセタール系化合物が有する反応性官能基(D)との組み合わせは、チオール基とビニル基との組み合わせであるか、アルキニル基とアジド基との組み合わせであるか、又は、アミノ基とカルボキシル基との組み合わせであることが好ましい。
ここでいう組み合わせとは、例えばチオール基とビニル基との組み合わせである場合、(反応性官能基(C),反応性官能基(D))の組み合わせは、(チオール基,ビニル基)であってもよく、(ビニル基,チオール基)であってもよいことを意味する。
数平均分子量が0.5万未満であると溶液粘度が極端に低くなり無機粒子含有組成物(ペースト又はスラリー)の粘度調整が困難となり、また、無機粒子含有組成物を塗布、乾燥してなる膜の強度や密着性が低下するおそれがある。
一方で、数平均分子量が15万を超えると溶液粘度が極端に大きくなり、無機粒子含有組成物の粘度調整が困難となり得、また印刷性が低下するおそれがある。
第1の実施形態に係る高分子組成物は、ポリマーブレンド型バインダー及び相溶化剤を含み、該ポリマーブレンド型バインダー及び該相溶化剤が、上記<高分子化合物の製造方法>で述べた製造方法によって得られた生成物である。この形態において、該生成物は、ポリマーブレンド型バインダーであるだけでなく、その中に含まれる本発明に係る高分子化合物が相溶化剤として機能する。
第2の実施形態に係る高分子組成物は、ポリマーブレンド型バインダー及び相溶化剤を含み、該ポリマーブレンド型バインダーがセルロース系化合物及びポリビニルアセタール系化合物を含み、相溶化剤が上記<高分子化合物の製造方法>で述べた製造方法によって得られた生成物を含む。該生成物に含まれる本発明に係る高分子化合物以外の部分がポリマーブレンド型バインダーの一部をなしていてもよい。
第1の実施形態用として用いる場合には、反応性官能基の導入量を相対的に少なくすることが好ましい。例えば、導入する反応性官能基の数は、1分子あたり2未満、さらには1以下が望ましい。
一方、第2の実施形態用として用いる場合には、反応性官能基の導入量を相対的に多くすることが好ましい。第2の実施形態用として用いる場合、第1セルロース系化合物及び第1ポリビニルアセタール系化合物に導入する反応性官能基の数は、1分子あたり平均2個以上であることが好ましい。
第2の実施形態において、ポリマーブレンド型バインダーとしてのセルロース系化合物とポリビニルアセタール系化合物(第2セルロース系化合物と第2ポリビニルアセタール系化合物)の含有比率は、質量比で、好ましくは1:9~9:1の範囲であり、より好ましくは2:8~8:2の範囲である。
本発明に係る無機粒子含有組成物(以下、単に「無機粒子含有組成物」ともいう。)は、上記本発明に係る高分子化合物と無機粒子と有機溶剤とを含むか、又は、上記本発明に係る高分子化合物と第2セルロース系化合物と第2ポリビニルアセタール系化合物と無機粒子と有機溶剤とを含む。
無機粒子含有組成物は、1種又は2種以上の高分子化合物(相溶化剤)を含むことができる。
無機粒子含有組成物は、1種又は2種以上の第2セルロース系化合物を含むことができる。
無機粒子含有組成物は、1種又は2種以上の第2ポリビニルアセタール系化合物を含むことができる。
無機粒子含有組成物は、1種又は2種以上の無機粒子を含むことができる。
無機粒子含有組成物は、1種又は2種以上の有機溶剤を含むことができる。
第2セルロース系化合物及び第2ポリビニルアセタール系化合物は、無機粒子含有組成物(ペースト又はスラリー)のバインダーとして好適に用いられるポリマー材料である。
導電性無機材料としては、例えば、金、銀、銅、白金、パラジウム、ニッケル、アルミニウム、タングステン、鉄等の金属;銀-パラジウム合金等の前記金属のいずれかを含む合金;ITO等からなる金属酸化物;炭素粉末等が挙げられる。
セラミックとしては、例えば、チタン酸バリウム、酸化チタン、アルミナ、ジルコニア、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素、炭化ケイ素、及びフェライト等の磁性セラミック等が挙げられる。
ガラスとしては、二酸化ケイ素を含むもの(通常は、これを主成分とするもの)が挙げられ、その融点は特に制限されない。
無機粒子の粒子径は、通常20nm~1mmの範囲である。
有機溶剤(2種以上の有機溶剤を含有する場合はその合計含有量)の含有量は、上記樹脂成分100質量部に対して、通常100質量部~10000質量部である。
無機粒子含有組成物が添加剤を含有する場合、その含有量(2種以上の添加剤を含有する場合はその合計含有量)は、上記樹脂成分100質量部に対して、通常0.1~30質量部である。
焼成により得られる層又はパターンは通常、無機粒子の焼結体からなる。
(アリル基を有するセルロース系化合物(1a)の合成)
エチルセルロース(ダウケミカル製の「エトセルSTD-200」、数平均分子量Mn(GPCによる標準ポリスチレン換算値):80733、置換度(DS値、エーテル化度):2.52)を用意し、乾燥させた。なお、置換度2.52とは、1個のグルコース環に存在する3個のヒドロキシ基のうち平均して2.52個がエチルエーテル化されており、0.48個のヒドロキシ基が残存しているという意味である。
ポリビニルブチラール(積水化学社製の「BH-S」、数平均分子量Mn(GPCによる標準ポリスチレン換算値):66000、ヒドロキシ基量:約22モル%)を用意し、乾燥させた。乾燥させたポリビニルブチラール100部を酢酸エチル900部に溶解させた。得られた溶液に、ポリビニルブチラール一分子に対して平均5個の導入量に相当する3-メルカプトプロピオン酸0.80部、縮合剤としてのジイソプロピルカルボジイミド0.96部、反応促進剤としてのジメチルアミノピリジン0.019部を添加し、温度40℃で5時間撹拌して反応を行った。その後、酢酸エチルを留去することにより、固体として、ポリビニルブチラールにメルカプト基が導入されたポリビニルアセタール系化合物(1b)を得た。
ベースポリマーであるエチルセルロース及びポリビニルブチラールへの官能基の平均導入量(表1において、エチルセルロース及びポリビニルブチラールへの官能基の平均導入量は、同じ合成例において互いに同じである。)、並びに、使用したベースポリマーの種類を表1にまとめた。
エチルセルロース一分子に対して平均1個(合成例2)及び0.1個(合成例3)の導入量に相当する3-アリルオキシプロピオン酸を使用し、これに相応する量のジイソプロピルカルボジイミド及びジメチルアミノピリジンを用いたこと以外は、合成例1と同様にして、エチルセルロースにアリル基が導入されたセルロース系化合物(2a)、(3a)を得た。
また、ポリビニルブチラール一分子に対して平均1個(合成例2)及び0.1個(合成例3)の導入量に相当する3-メルカプトプロピオン酸を使用し、これに相応する量のジイソプロピルカルボジイミド及びジメチルアミノピリジンを用いたこと以外は、合成例1と同様にして、ポリビニルブチラールにメルカプト基が導入されたポリビニルアセタール系化合物(2b)、(3b)を得た。
ベースポリマーであるエチルセルロース及びポリビニルブチラールへの官能基の平均導入量、並びに、使用したベースポリマーの種類を表1にまとめた。
得られたそれぞれの化合物について、FT-IR及び1H-NMRで分析したところ、エステル結合の生成が確認されるとともに、仕込んだ官能基導入用の試薬と同モル量の官能基がベースポリマーに導入されていることが確認された。
ベースポリマーであるエチルセルロース及びポリビニルブチラールの種類を表1に示されるとおりにしたこと、ベースポリマーへの官能基の平均導入量を表1に示されるとおりにしたこと以外は合成例1と同様にして、セルロース系化合物及びポリビニルアセタール系化合物を得た。
得られたそれぞれの化合物について、FT-IR及び1H-NMRで分析したところ、エステル結合の生成が確認されるとともに、仕込んだ官能基導入用の試薬と同モル量の官能基がベースポリマーに導入されていることが確認された。
STD 100:ダウケミカル社製の「エトセルSTD-100」、数平均分子量Mn(GPCによる標準ポリスチレン換算値):63400、置換度(DS値、エーテル化度):2.52
STD 45:ダウケミカル社製の「エトセルSTD-45」、数平均分子量Mn(GPCによる標準ポリスチレン換算値):56500、置換度:2.52
BM-S:積水化学社製の「BM-S」、数平均分子量Mn(GPCによる標準ポリスチレン換算値):53000、ヒドロキシ基量:約22モル%
BL-S:積水化学社製の「BL-S」、数平均分子量Mn(GPCによる標準ポリスチレン換算値):23000、ヒドロキシ基量:約22モル%
エチルセルロース、ポリビニルブチラールに導入する官能基の種類を互いに交換した化合物を合成した。すなわち、エチルセルロースにはメルカプト基を、ポリビニルブチラールにはアリル基を導入したこと以外は合成例1と同様にして、セルロース系化合物及びポリビニルアセタール系化合物を得た。
ベースポリマーであるエチルセルロース及びポリビニルブチラールへの官能基の平均導入量、並びに、使用したベースポリマーの種類を表1にまとめた。
得られたそれぞれの化合物について、FT-IR及び1H-NMRで分析したところ、エステル結合の生成が確認されるとともに、仕込んだ官能基導入用の試薬と同モル量の官能基がベースポリマーに導入されていることが確認された。
(アジド基を有するセルロース系化合物(11a)の合成)
エチルセルロース(ダウケミカル製の「エトセルSTD-200」)を用意し、乾燥させた。乾燥させたエチルセルロース100部を酢酸エチル900部に溶解させた。得られた溶液に、エチルセルロース一分子に対して平均5個の導入量に相当する5-アジドペンタン酸0.89部、縮合剤としてのジイソプロピルカルボジイミド0.78部、反応促進剤としてのジメチルアミノピリジン0.015部を添加し、温度40℃で5時間撹拌して反応を行った。その後、酢酸エチルを留去することにより、固体として、エチルセルロースにアジド基が導入されたセルロース系化合物(11a)を得た。
ポリビニルブチラール(積水化学社製の「BH-S」)を用意し、乾燥させた。乾燥させたポリビニルブチラール100部を酢酸エチル900部に溶解させた。得られた溶液に、ポリビニルブチラール一分子に対して平均5個の導入量に相当する5-ヘキシン酸0.85部、縮合剤としてのジイソプロピルカルボジイミド0.96部、反応促進剤としてのジメチルアミノピリジン0.019部を添加し、温度40℃で5時間撹拌して反応を行った。その後、酢酸エチルを留去することにより、固体として、ポリビニルブチラールにアルキニル基が導入されたポリビニルアセタール系化合物(11b)を得た。
ベースポリマーであるエチルセルロース及びポリビニルブチラールの種類を表1に示されるとおりにしたこと、ベースポリマーへの官能基の平均導入量や官能基の組み合わせを表1に示されるとおりにしたこと以外は合成例11と同様にして、セルロース系化合物及びポリビニルアセタール系化合物を得た。
得られたそれぞれの化合物について、FT-IR及び1H-NMRで分析したところ、エステル結合の生成が確認されるとともに、仕込んだ官能基導入用の試薬と同モル量の官能基がベースポリマーに導入されていることが確認された。
合成例1で得られたアリル基を導入したセルロース系化合物(1a)とメルカプト基を導入したポリビニルアセタール系化合物(1b)とを以下の方法で反応させて、高分子化合物(1ab)を得た。
セルロース系化合物(1a)5質量部、ポリビニルアセタール系化合物(1b)5質量部をジヒドロターピネオールアセテート60質量部に溶解させた。この溶液をガラス製フラスコ反応容器に移し、窒素置換を行った後にラジカル発生剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.1質量部を溶液に添加し、撹拌しながら80℃で3時間反応を行って、高分子化合物を含む溶液を得た。
生成した高分子化合物をFT-IR及び1H-NMRによって分析したところ、-S-結合が確認され、目的の構造体が得られていた。
GPCの測定条件は以下のとおりである(他の実施例で得られた高分子化合物の数平均分子量についても同様)。
GPC装置:東ソー社製「HLC-8320GPC」
カラム:TSKgel GMHXL
測定温度(設定温度):40℃
移動相:テトラヒドロフラン
使用したセルロース化合物及びポリビニルアセタール系化合物の種類及びそれらの質量比、並びに、得られた高分子化合物の数平均分子量を表2にまとめた。
使用したセルロース化合物及びポリビニルアセタール系化合物の種類及びそれらの使用質量比を表2に示されるとおりとしたこと以外は実施例1と同様にして高分子化合物を得た。
使用したセルロース化合物及びポリビニルアセタール系化合物の種類及びそれらの質量比、並びに、得られた高分子化合物の数平均分子量を表2にまとめた。
合成例11で得られたアジド基を導入したセルロース系化合物(11a)とアルキニル基を導入したポリビニルアセタール系化合物(11b)とを以下の方法で反応させて、高分子化合物(13ab)を得た。
セルロース系化合物(11a)5質量部、ポリビニルアセタール系化合物(11b)5質量部をテトラヒドロフラン(THF)60質量部に溶解させた。この溶液をガラス製フラスコ反応容器に移し、反応触媒として硫酸銅・5水和物0.01質量部を溶液に添加し、撹拌しながら60℃で24時間反応を行って、高分子化合物を含む溶液を得た。
生成した高分子化合物をFT-IR及び1H-NMRによって分析したところ、1,2,3-トリアゾールジイル基が確認され、目的の構造体が得られていた。
GPCを用いて高分子化合物(13ab)の数平均分子量(Mn)を測定した。
使用したセルロース化合物及びポリビニルアセタール系化合物の種類及びそれらの質量比、並びに、得られた高分子化合物の数平均分子量を表2にまとめた。
使用したセルロース化合物及びポリビニルアセタール系化合物の種類及びそれらの使用質量比を表2に示されるとおりとしたこと以外は実施例1と同様にして高分子化合物を得た。
使用したセルロース化合物及びポリビニルアセタール系化合物の種類及びそれらの質量比、並びに、得られた高分子化合物の数平均分子量を表2にまとめた。
(1)バインダーの調製
表3に示される配合組成に従って配合成分を混合してバインダー(溶液)を調製した。実施例1A~22Aにおいては、高分子化合物を合成する実施例で得られた高分子化合物の単独、あるいは高分子化合物と第2セルロース系化合物及び第2ポリビニルアセタール系化合物を混合することによってバインダーを調製した。表3中、「配合質量比」は、固形分換算値である。
表3に示されるとおり、実施例1A~22Aにおいてバインダーは、高分子化合物のみからなるか、又は高分子化合物とセルロース系化合物とポリビニルアセタール系化合物とからなる。比較例1A~3Aにおいてバインダーは、セルロース系化合物のみからなるか、ポリビニルアセタール系化合物のみからなるか、又は、セルロース系化合物とポリビニルアセタール系化合物とからなる。
実施例、比較例で得られたバインダー及びそれを含む無機粒子含有組成物(ペースト)について、次の評価を行った。結果を表3に示す。
バインダーの乾燥固体サンプル10mgを、TG/DTA熱分析装置(セイコーインスツルメンツ株式会社製の「EXSTAR TG/DTA6200」)にて、窒素雰囲気下、10℃/minの昇温速度で500℃まで加熱したときの残渣量を測定し、次の評価基準に基づいてバインダーの熱分解性を評価した。残渣量(質量%)とは、上記乾燥固体サンプルの質量を100質量%としたときの測定後の残渣の量を示す。
(熱分解性の評価基準)
A:残渣量が1質量%以下である
B:残渣量が1質量%を超え、3質量%以下である
C:残渣量が3質量%を超える
バインダーを電極ペーストに使用するケースを想定し、グリーンシートに対する密着性の評価を下記のモデル実験により実施した。
(密着性の評価基準)
A:破断強度が100N以上である
B:破断強度が100N未満、50N以上である
C:破断強度が50N未満である
バインダー溶液中の溶剤がジヒドロターピネオールアセテートでない場合にはジヒドロターピネオールアセテートに置換した後、ジヒドロターピネオールアセテートの含有量を調整してバインダー濃度が12質量%であるバインダー溶液を得た。
次いで、無機粒子としてのNi粒子(JFEミネラル社製の「NFP201S」、平均粒径0.2μm)100質量部、及び上記バインダー溶液25質量部を3本ロールミルで混合して、ペーストを得た。
(塗布膜質の評価基準)
A:1μmを超えるサイズの欠陥(穴)が認められない
B:1μmを超えるサイズの欠陥(穴)が認められる
上記(2-3)で調製したペーストを、マイクロテック印刷装置(MT-320シリーズ)を用い、メッシュ#500(中沼アートスクリーン製)をスクリーン版として、L/S=100μm/100μmのストライプ状パターンをPETフィルム上に印刷した。印刷パターンを顕微鏡で観察し、次の評価基準に基づいてスクリーン印刷性を評価した。
なお、糸曳欠陥とは、印刷時にスクリーン印刷版が被印刷体から引き離される段階でペースト等が伸長して細い糸を曳く現象によって印刷欠陥を生じるものである。この現象が起こると、印刷パターンのエッジ部から繊維状の異物が形成されてしまって電気的短絡が起こる、印刷パターン形状が不均一になることで要求特性が得られない等の問題を引き起こす。
(スクリーン印刷性の評価基準)
A:エッジ部に糸曳欠陥がない
B:エッジ部に糸曳欠陥がある
Claims (10)
- 第1セルロース系化合物から形成される第1セグメントと、
第1ポリビニルアセタール系化合物から形成される第2セグメントと、
前記第1セグメントと前記第2セグメントとを結合する結合基と、
を分子内に含み、
前記結合基が、-S-基又は1,2,3-トリアゾールジイル基を含む、高分子化合物。 - 第1セルロース系化合物が、反応性官能基(A)を有するセルロース誘導体であり、
第1ポリビニルアセタール系化合物が、反応性官能基(B)を有するポリビニルアセタールであり、
反応性官能基(A)と反応性官能基(B)との組み合わせは、チオール基とビニル基との組み合わせであるか、又はアルキニル基とアジド基との組み合わせである、請求項1に記載の高分子化合物。 - 請求項1又は2に記載の高分子化合物を含む、相溶化剤。
- 請求項1又は2に記載の高分子化合物と、
第2セルロース系化合物と、
第2ポリビニルアセタール系化合物と、
を含む、高分子組成物。 - 第2セルロース系化合物は、反応性官能基(C)を有していてもよいセルロース誘導体であり、
第2ポリビニルアセタール系化合物は、反応性官能基(D)を有していてもよいポリビニルアセタールであり、
反応性官能基(C)と反応性官能基(D)との組み合わせは、チオール基とビニル基との組み合わせであるか、又はアルキニル基とアジド基との組み合わせである、請求項4に記載の高分子組成物。 - 第2セルロース誘導体は、反応性官能基(C)を有しないセルロース誘導体であり、
第2ポリビニルアセタールは、反応性官能基(D)を有しないポリビニルアセタールである、請求項5に記載の高分子組成物。 - 請求項1又は2に記載の高分子化合物と、
無機粒子と、
有機溶剤と、
を含む、無機粒子含有組成物。 - 請求項1又は2に記載の高分子化合物と、
第2セルロース系化合物と、
第2ポリビニルアセタール系化合物と、
無機粒子と、
有機溶剤と、
を含む、無機粒子含有組成物。 - 第2セルロース系化合物は、反応性官能基(C)を有していてもよいセルロース誘導体であり、
第2ポリビニルアセタール系化合物は、反応性官能基(D)を有していてもよいポリビニルアセタールであり、
反応性官能基(C)と反応性官能基(D)との組み合わせは、チオール基とビニル基との組み合わせであるか、又はアルキニル基とアジド基との組み合わせである、請求項8に記載の無機粒子含有組成物。 - 第2セルロース誘導体は、反応性官能基(C)を有しないセルロース誘導体であり、
第2ポリビニルアセタールは、反応性官能基(D)を有しないポリビニルアセタールである、請求項9に記載の無機粒子含有組成物。
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