JP4568409B2 - 熱可塑性樹脂発泡体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、特定のイソブチレン系ブロック共重合体からなる熱可塑性樹脂発泡体に関する。また、そのための発泡性熱可塑性樹脂組成物に関する。本発明の熱可塑性樹脂発泡体は柔軟性、緩衝性、制振性、防音性、保温性、ガスバリヤー性、耐候性、熱的安定性等に優れるため、自動車内装用用途、家電用部材用途、食品用包装材用途、日用雑貨用途、玩具・運動用具用途、衣料用途、土木シート・防水シート・ガスケット等の土木・建築用途等に利用可能である。
【0002】
【従来の技術】
熱可塑性樹脂による発泡体は、成形加工性に優れ、柔軟性、緩衝性などの特性により、種々の用途で広く用いられている。
【0003】
スチレン・共役ジエンブロック共重合体の水素添加物を発泡させて成形したことを特徴とする技術(特開平6−218741)があるが、柔軟性が十分では無い欠点を有する。
【0004】
柔軟性を改良する目的で、熱可塑性アクリル系重合体とスチレン・共役ジエンブロック共重合体の水素添加物との混合物からなる発泡体の技術(特開平9−241414)があるが、アクリル系重合体を別途、合成し、混合する必要があり、工程が猥雑であり、また、コストアップにもつながり好ましくない。
【0005】
また、軟質塩化ビニル樹脂よりなる発泡体は、加工性、耐久性に優れ、また、常温での柔軟性に優れているため、人造皮革(発泡レザー)などとして、自動車内装用シートなどに汎用されているが、多量の可塑剤が用いられており、可塑剤の滲みだし(ブリードアウト)や移行が問題となる場合が多い。しかも、塩化ビニル樹脂はガラス転移温度が比較的高いことから、低温時には硬くなって柔軟性が失われ、風合を損ねるという欠点を有している。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、材料の調整や成形加工が容易であり、常温、及び低温での柔軟性、緩衝性、制振性、防音性、保温性、ガスバリヤー性が高く、可塑剤の滲み出しが無く、耐候性、熱的安定性等に優れた熱可塑性樹脂発泡体を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を積み重ねた結果、特定のイソブチレン系ブロック共重合体からなる熱可塑性樹脂組発泡体が前記課題を解決することを見出し、本発明に至ったものである。
即ち本発明は、イソブチレンを主成分とする重合体ブロックとイソブチレンを主成分としない単量体成分からなる重合体ブロックからなるイソブチレン系ブロック共重合体と発泡剤からなる熱可塑性樹脂組成物を発泡して得られる熱可塑性樹脂発泡体に関する。また、そのための発泡性熱可塑性樹脂組成物に関する。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明のイソブチレン系ブロック共重合体は、イソブチレンを主成分とする重合体ブロック及びイソブチレンを主成分としない単量体成分からなる重合体ブロックを有しているものであれば特に制限はなく、例えば、直鎖状、分岐状、星状等の構造を有するブロック共重合体、ジブロック共重合体、トリブロック共重合体、マルチブロック共重合体等のいずれも選択可能である。好ましいブロック共重合体としては、物性バランス及び軟化剤の吸収能の点からイソブチレンを主成分としない単量体成分からなる重合体ブロック−イソブチレンを主成分とする重合体ブロック−イソブチレンを主成分としない単量体成分からなる重合体ブロックからなるトリブロック共重合体、イソブチレンを主成分としない単量体成分からなる重合体ブロック−イソブチレンを主成分とする重合体ブロックからなるジブロック共重合体、イソブチレンを主成分としない単量体成分からなる重合体ブロックとイソブチレンを主成分とする重合体ブロックからなるアームを3本以上有する星型ブロック共重合体等が挙げられる。これらは所望の物性・成形加工性を得る為に1種又は2種以上を組み合わせて使用可能である。
【0009】
本発明のイソブチレンを主成分としない単量体成分は、イソブチレンの含有量が30重量%以下である単量体成分を示す。イソブチレンを主成分としない単量体成分中のイソブチレンの含有量は10重量%以下であることが好ましく、3重量%以下であることが好ましい。
【0010】
本発明のイソブチレンを主成分としない単量体成分中の、イソブチレン以外の単量体は、カチオン重合可能な単量体成分であれば特に限定されないが、脂肪族オレフィン類、芳香族ビニル類、ジエン類、ビニルエーテル類、シラン類、ビニルカルバゾール、β−ピネン、アセナフチレン等の単量体が例示できる。これらは1種又は2種以上組み合わせて使用される。
【0011】
脂肪族オレフィン系単量体としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、ペンテン、ヘキセン、シクロヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、ビニルシクロヘキサン、オクテン、ノルボルネン等が挙げられる。
【0012】
芳香族ビニル系単量体としては、スチレン、o−、m−又はp−メチルスチレン、α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、2,6−ジメチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、α−メチル−o−メチルスチレン、α−メチル−m−メチルスチレン、α−メチル−p−メチルスチレン、β−メチル−o−メチルスチレン、β−メチル−m−メチルスチレン、β−メチル−p−メチルスチレン、2,4,6−トリメチルスチレン、α−メチル−2,6−ジメチルスチレン、α−メチル−2,4−ジメチルスチレン、β−メチル−2,6−ジメチルスチレン、β−メチル−2,4−ジメチルスチレン、o−、m−又はp−クロロスチレン、2,6−ジクロロスチレン、2,4−ジクロロスチレン、α−クロロ−o−クロロスチレン、α−クロロ−m−クロロスチレン、α−クロロ−p−クロロスチレン、β−クロロ−o−クロロスチレン、β−クロロ−m−クロロスチレン、β−クロロ−p−クロロスチレン、2,4,6−トリクロロスチレン、α−クロロ−2,6−ジクロロスチレン、α−クロロ−2,4−ジクロロスチレン、β−クロロ−2,6−ジクロロスチレン、β−クロロ−2,4−ジクロロスチレン、o−、m−又はp−t−ブチルスチレン、o−、m−又はp−メトキシスチレン、o−、m−又はp−クロロメチルスチレン、o−、m−又はp−ブロモメチルスチレン、シリル基で置換されたスチレン誘導体、インデン、ビニルナフタレン等が挙げられる。
【0013】
ジエン系単量体としては、ブタジエン、イソプレン、ヘキサジエン、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、ジビニルベンゼン、エチリデンノルボルネン等が挙げられる。
【0014】
ビニルエーテル系単量体としては、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、(n−、イソ)プロピルビニルエーテル、(n−、sec−、tert−、イソ)ブチルビニルエーテル、メチルプロペニルエーテル、エチルプロペニルエーテル等が挙げられる。
【0015】
シラン化合物としては、ビニルトリクロロシラン、ビニルメチルジクロロシラン、ビニルジメチルクロロシラン、ビニルジメチルメトキシシラン、ビニルトリメチルシラン、ジビニルジクロロシラン、ジビニルジメトキシシラン、ジビニルジメチルシラン、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、トリビニルメチルシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。
【0016】
本発明のイソブチレンを主成分としない単量体成分は、物性及び重合特性等のバランスから、芳香族ビニル系単量体を主成分とする単量体成分であることが好ましい。本発明の芳香族ビニル系単量体は、芳香族ビニル系単量体の含有量が60重量%以上、好ましくは80重量%以上である単量体成分を示す。芳香族ビニル系単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、インデンからなる群から選ばれる1種以上の単量体を使用することが好ましく、コストの面からスチレン、α−メチルスチレン、あるいはこれらの混合物を用いることが特に好ましい。
【0017】
また本発明のイソブチレンを主成分とする単量体成分は、イソブチレン以外の単量体を含んでいても含んでいなくても良い。イソブチレン以外の単量体としてはカチオン重合可能な単量体であれば特に制限はないが、例えば上記の単量体等が挙げられる。
【0018】
イソブチレンを主成分とする重合体ブロックとイソブチレンを主成分としない単量体成分からなる重合体ブロックの割合に関しては、特に制限はないが、各種物性の面から、イソブチレンを主成分とする重合体ブロックが95から40重量%、イソブチレンを主成分としない単量体成分からなる重合体ブロックが5から60重量%であることが好ましく、イソブチレンを主成分とする重合体ブロックが85から50重量%、イソブチレンを主成分としない単量体成分からなる重合体ブロックが15から50重量%であることが特に好ましい。
【0019】
またイソブチレン系ブロック共重合体の数平均分子量にも特に制限はないが、流動性、加工性、物性等の面から、30000〜300000であることが好ましく、40000〜100000であることがさらに好ましく、40000〜80000であることが特に好ましい。イソブチレン系ブロック共重合体の数平均分子量が上記範囲よりも低い場合には十分な発泡性が得られない傾向があり、一方上記範囲を超える場合には流動性、加工性の面で不利である。
【0020】
イソブチレン系ブロック共重合体の製造方法については特に制限はないが、例えば、下記一般式(1)で表される化合物の存在下に、イソブチレンを主成分とする単量体及びイソブチレンを主成分としない単量体成分を重合させることにより得られる。
(CR1R2X)nR3 (1)
[式中Xはハロゲン原子、炭素数1〜6のアルコキシ基またはアシロキシ基から選ばれる置換基、R1、R2はそれぞれ水素原子または炭素数1〜6の1価炭化水素基でR1、R2は同一であっても異なっていても良く、R3は多価芳香族炭化水素基または多価脂肪族炭化水素基であり、nは1〜6の自然数を示す。]
上記一般式(1)で表わされる化合物は開始剤となるものでルイス酸等の存在下炭素陽イオンを生成し、カチオン重合の開始点になると考えられる。本発明で用いられる一般式(1)の化合物の例としては、次のような化合物等が挙げられる。
【0021】
(1−クロル−1−メチルエチル)ベンゼン
C6H5C(CH3)2Cl
1,4−ビス(1−クロル−1−メチルエチル)ベンゼン
1,4−Cl(CH3)2CC6H4C(CH3)2Cl
1,3−ビス(1−クロル−1−メチルエチル)ベンゼン
1,3−Cl(CH3)2CC6H4C(CH3)2Cl
1,3,5−トリス(1−クロル−1−メチルエチル)ベンゼン
1,3,5−(ClC(CH3)2)3C6H3
1,3−ビス(1−クロル−1−メチルエチル)−5−(tert−ブチル)ベンゼン 1,3−(C(CH3)2Cl)2-5−(C(CH3)3)C6H3
これらの中でも特に好ましいのはビス(1−クロル−1−メチルエチル)ベンゼン[C6H4(C(CH3)2Cl)2]、トリス(1−クロル−1−メチルエチル)ベンゼン[(ClC(CH3)2)3C6H3]である。[なおビス(1−クロル−1−メチルエチル)ベンゼンは、ビス(α−クロロイソプロピル)ベンゼン、ビス(2−クロロ−2−プロピル)ベンゼンあるいはジクミルクロライドとも呼ばれ、トリス(1−クロル−1−メチルエチル)ベンゼンは、トリス(α−クロロイソプロピル)ベンゼン、トリス(2−クロロ−2−プロピル)ベンゼンあるいはトリクミルクロライドとも呼ばれる]。
【0022】
イソブチレン系ブロック共重合体の重合に際し、さらにルイス酸触媒を共存させることもできる。このようなルイス酸としてはカチオン重合に使用できるものであれば良く、TiCl4、TiBr4、BCl3、BF3、BF3・OEt2、SnCl4、SbCl5、SbF5、WCl6、TaCl5、VCl5、FeCl3、ZnBr2、AlCl3、AlBr3等の金属ハロゲン化物;Et2AlCl、EtAlCl2等の有機金属ハロゲン化物を好適に使用することができる。中でも触媒としての能力、工業的な入手の容易さを考えた場合、TiCl4、BCl3、SnCl4が好ましい。ルイス酸の使用量は、特に限定されないが、使用する単量体の重合特性あるいは重合濃度等を鑑みて設定することができる。通常は一般式(1)で表される化合物に対して0.1〜100モル当量使用することができ、好ましくは1〜50モル当量の範囲である。
【0023】
イソブチレン系ブロック共重合体の重合に際しては、さらに必要に応じて電子供与体成分を共存させることもできる。この電子供与体成分は、カチオン重合に際して、成長炭素カチオンを安定化させる効果があるものと考えられており、電子供与体の添加によって分子量分布の狭い構造が制御された重合体が生成する。使用可能な電子供与体成分としては特に限定されないが、例えば、ピリジン類、アミン類、アミド類、スルホキシド類、エステル類、または金属原子に結合した酸素原子を有する金属化合物等を挙げることができる。
【0024】
イソブチレン系ブロック共重合体の重合は必要に応じて有機溶媒中で行うことができ、有機溶媒としてはカチオン重合を本質的に阻害しなければ特に制約なく使用することができる。具体的には、塩化メチル、ジクロロメタン、クロロホルム、塩化エチル、ジクロロエタン、n−プロピルクロライド、n−ブチルクロライド、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、ブチルベンゼン等のアルキルベンゼン類;エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン等の直鎖式脂肪族炭化水素類;2−メチルプロパン、2−メチルブタン、2,3,3−トリメチルペンタン、2,2,5−トリメチルヘキサン等の分岐式脂肪族炭化水素類;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の環式脂肪族炭化水素類;石油留分を水添精製したパラフィン油等を挙げることができる。
【0025】
これらの溶媒は、ブロック共重合体を構成する単量体の重合特性及び生成する重合体の溶解性等のバランスを考慮して単独又は2種以上を組み合わせて使用される。上記溶媒の使用量は、得られる重合体溶液の粘度や除熱の容易さを考慮して、重合体の濃度が1〜50wt%、好ましくは5〜35wt%となるように決定される。
【0026】
実際の重合を行うに当たっては、各成分を冷却下例えば−100℃以上0℃未満の温度で混合する。エネルギーコストと重合の安定性を釣り合わせるために、特に好ましい温度範囲は−30℃〜−80℃である。
【0027】
本発明に使用される発泡体としては、化学発泡剤(加熱分解型発泡剤)および物理的発泡剤(不活性ガスまたは不活性気体よりなる発泡剤)のいずれもが使用可能である。それらのうちでも化学発泡剤が好ましく用いられる。化学発泡剤としては、無機系化学発泡剤および有機系化学発泡剤のいずれもが使用でき、そのような化学発泡剤としては、例えば、重炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウムなどの炭酸塩からなる無機系発泡剤、アゾ化合物(例えばアゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロジニトリル、アゾジアミノベンゼン、アゾヘキサヒドロベンゾニトリル、バリウムアゾジカルボキシレート等)、ニトロソ化合物(例えばN,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン、N,N’−ジニトロソ−N,N’−ジメチルテレフタルアミド、t−ブチルアミノニトリル等)、ヒドラジド化合物[例えばp−トルエンスルホニルヒドラジド、p,p’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)等]、ヒドラゾン化合物(例えばp−トルエンスルホニルアセトンヒドラゾン等)などの有機系発泡剤を挙げることができる。本発明では上記した発泡剤の1種または2種以上を使用して発泡体を製造することができ、そのうちでも、炭酸塩、アゾ化合物、ヒドラジド化合物が好ましく用いられる。また、さらに好ましくは重炭酸ナトリウム、アゾジカルボンアミド、ヒドラジド化合物が好ましく用いられる。また、好ましくはこれらの2種以上を併用して用いられる。
【0028】
また、物理的発泡剤としては、例えばブタン、ペンタン、ヘキサン、プロパン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素類、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロブタンなどの脂環式炭化水素類、ジクロロジフルオロメタン、ジクロロフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、クロロメタン、ジクロロメタン、クロロエタン、ジクロロテトラフルオロエタン、トリクロロトリフルオロエタン、パーフルオロシクロブタン等のハロゲン化炭化水素類等の1種または2種以上があげられる。また、水、二酸化炭素等の無機系化合物類もあげられる。
【0029】
発泡剤の使用量は、製造を目的とする発泡体の発泡倍率(比重)、発泡体の用途、発泡剤のガス発生量などに応じて調節することができるが、通常、ブロック共重合体の合計100重量部に対して、0.05〜10重量部程度であることが好ましく、0.1〜5重量部であることがより好ましく、2〜3重量部であることが更に好ましい。発泡剤を上記した0.05〜10重量部の割合で使用すると、一般に、比重が0.9〜0.01の範囲である発泡体を得ることができる。発泡剤の使用量が少なすぎると発泡倍率が低くなり過ぎて柔軟性に優れる発泡体が得られにくくなり、一方、発泡剤の使用量が多すぎると過発泡状態となって気泡の崩れ、粗大気泡の発生などが生じて均一で微細な気泡を有する発泡体が得られにくくなる。
【0030】
また、本発明では、上記した化学発泡剤を用いて発泡体を製造する場合に、発泡を円滑に行わせて、より均一で微細な気泡を有する発泡体を得るために、発泡助剤を併用することが好ましい。その場合の発泡助剤としては、例えば脂肪族モノカルボン酸の金属塩、アルキルアリールスルホン酸の金属塩などを挙げることができる。より具体的には、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リシノール酸、ヒドロキシステアリン酸、エルカ酸、ベヘン酸、モンタン酸、その他の炭素数8〜30の脂肪族モノカルボン酸(構造中に側鎖、水酸基、ケトン基、アルデヒド基、エポキシ基などがあってもよい)の周期律表第I族または第II族の金属(Li,Na,K,Mg,Ca,Zn等)の塩、p−トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸などの炭素数3〜16のアルキル基で置換されたアルキルベンゼンスルホン酸の周期律表第I族または第II族の金属の塩、イソプロピルナフタレンスルホン酸、ジブチルナフタレンスルホン酸、アミルナフタレンスルホン酸などのアルキルナフタレンスルホン酸の周期律表第I族または第II族の金属の塩などを挙げることができる。
【0031】
本発明には、成形加工性改良等の目的でポリオレフィン系樹脂を混合することが可能である。ポリオレフィン系樹脂としては、α−オレフィンの単独重合体、ランダム共重合体、ブロック共重合体及びそれらの混合物、またはα−オレフィンと他の不飽和単量体とのランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体及びこれら重合体の酸化、ハロゲン化又はスルホン化したもの等を1種又は2種以上組み合わせて使用できる。具体的には、ポリエチレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−ヘキセン共重合体、エチレン−オクテン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、塩素化ポリエチレン等のポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン、プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−エチレンブロック共重合体、塩素化ポリプロピレン等のポリプロピレン系樹脂、ポリブテン、ポリイソブチレン、ポリメチルペンテン、環状オレフィンの(共)重合体等が例示できる。これらの中でコスト、熱可塑性樹脂の物性バランスの点からポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、又はこれらの混合物が好ましく使用できる。
【0032】
成分ポリオレフィン系樹脂の配合量は、イソブチレン系ブロック共重合体100重量部に対して、5〜400重量部、好ましくは10〜200重量部、さらに好ましくは20〜100重量部である。400重量部を超えると得られる熱可塑性樹脂組成物のゴム的な感触が低下してしまう。
【0033】
本発明は、浸み出しが問題とならない範囲で可塑剤の使用が可能である。可塑剤としては特に限定されないが、通常、室温で液体又は液状の材料が好適に用いられる。また親水性及び疎水性のいずれの可塑剤も使用できる。このような可塑剤としては鉱物油系、植物油系、合成系等の各種ゴム用又は樹脂用可塑剤が挙げられる。鉱物油系としては、ナフテン系、パラフィン系等のプロセスオイル等が、植物油系としては、ひまし油、綿実油、あまみ油、なたね油、大豆油、パーム油、やし油、落花生油、木ろう、パインオイル、オリーブ油等が、合成系としてはポリブテン、低分子量ポリブタジエン等が例示できる。これらの中でも成分(a)との相溶性あるいは熱可塑性樹脂組成物の物性バランスの点から、パラフィン系プロセスオイル又はポリブテンが好ましく用いられる。これら可塑剤は所望の粘度及び物性を得るために2種以上を適宜組み合わせて使用することも可能である。
【0034】
可塑剤の配合量は、イソブチレン系ブロック共重合体100重量部に対して、0〜200重量部、好ましくは5〜100重量部、さらに好ましくは10〜70重量部である。200重量部を超えると可塑剤のブリードアウトが発生するため好ましくない。
【0035】
さらに本発明の熱可塑性樹脂発泡体には、物性改良あるいは経済上のメリットから充填材を配合することができる。好適な充填材としては、クレー、珪藻土、シリカ、タルク、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、金属酸化物、マイカ、グラファイト、水酸化アルミニウム等の麟片状無機充填材、各種の金属粉、木片、ガラス粉、セラミックス粉、カーボンブラック、粒状ないし粉末ポリマー等の粒状ないし粉末状固体充填材、その他の各種の天然又は人工の短繊維、長繊維等が例示できる。また中空フィラー、例えば、ガラスバルーン、シリカバルーン等の無機中空フィラー、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン共重合体からなる有機中空フィラーを配合することにより、軽量化を図ることができる。
【0036】
充填材の配合量は、ポリイソブチレン系ブロック共重合体成分100重量部に対して0〜200重量部であり、好ましくは0〜100重量部である。200重量部を超えると得られる熱可塑性樹脂組発泡体の発泡倍率の低下が起こり、柔軟性も損なわれるので好ましくない。
【0037】
また本発明の熱可塑性樹脂組成物には、必要に応じて、酸化防止剤及び/又は紫外線吸収剤を配合することができ、配合量は熱可塑性樹脂100重量部に対して、0〜10重量部、好ましくは0〜5重量部である。さらに他の添加剤として難燃剤、抗菌剤、光安定剤、着色剤、流動性改良剤、滑剤、ブロッキング防止剤、帯電防止剤、架橋剤、架橋助剤等を添加することができ、これらは1種又は2種以上を組み合わせて使用可能である。さらに本発明の熱可塑性樹脂組成物の性能を損なわない範囲であれば、その他の各種熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、熱可塑性エラストマー等を配合しても良い。
【0038】
本発明の熱可塑性樹脂組発泡体の製造方法には、特に制限はなく、公知の方法を適用することができる。例えば、本発明の発泡性熱可塑性重合体組成物は熱可塑性であり、一般に約150〜300℃の温度に加熱することにより溶融する。そのため、本発明の発泡性熱可塑性重合体組成物は、溶融成形や加熱加工が可能であり、押出成形、射出成形、カレンダー成形、流延成形、プレス成形、注型などの任意の成形方法によって、種々の形状や構造の発泡成形品または発泡性成形品(発泡前の成形品)に成形することができる。ここで、発泡性熱可塑性重合体組成物を用いて成形・加工と同時に発泡を行わせる場合は、成形・加工の少なくともある段階で発泡剤の分解温度以上の温度を採用して、成形・加工を行えばよい。そして、発泡剤の種類や併用する発泡助剤の種類などによってその発泡温度は異なり得るが、上記したような加熱分解型発泡剤(化学発泡剤)は一般に150〜250℃の範囲で分解するので、発泡剤を分解させて発泡体を製造するには、使用する発泡剤や発泡助剤の種類などに応じて、150〜250℃またはそれ以上の温度を採用して加熱発泡するとよい。また、発泡性熱可塑性重合体組成物を用いて未発泡のシート、フイルム、板、管、積層体、その他の成形品を一旦製造した後にそれを加熱して発泡させる場合は、発泡性熱可塑性重合体組成物を該組成物の成形加工が可能な温度であって且つ発泡剤が分解しない温度で成形・加工して未発泡の成形品等を製造し、次いで該未発泡の成形品等を発泡剤の分解温度以上に加熱すると発泡成形品を得ることができる。
【0039】
特に射出成形による発泡体成形法としては、発泡材を配合したブロック共重合体を金型のキャビティー内に射出して金型のキャビティー内を満たした後、該キャビティーの容積を拡大し発泡させて成形することによって発泡成形体が得られる。上記成形法により得られる発泡成形体は、単層或いは多層のいずれにおいても得ることができる。該多層による成形体は、発泡層と発泡層との組み合わせ、或いは、発泡層と非発泡層との組み合わせによるものいずれのものでも得ることができる。
【0040】
上記のようにして得られる発泡体は、そのまま使用してもよいし、他の材料を基材とし、これと積層したり、また基材と積層以外の方法で組み合わせて、複合材料として使用してもよい。その場合に、複合材料を形成するのに用いる他の基材は特に制限されず、発泡体の使用目的や使用形態などに応じて適宜選択することができる。限定されるものではないが、発泡体と組み合わせて用い得る基材としては、例えば、天然繊維、合成繊維、半合成繊維、無機繊維などからなる織布、編布、不織布などの布帛類;紙;プラスチックやゴムからなるフイルム、シート、板、その他の形状物;金属からなる箔、シート、板、その他の形状物;木材;セラミックなどを挙げることができる。発泡体と基材からなる複合材料の製造に当たっては、発泡体を製造した後に該発泡体を基材と一体複合化しても、発泡性熱可塑性重合体組成物を発泡させる際に、同時に基材との一体複合化を行っても、または発泡前に基材と一体複合化しておき、その後に発泡を行ってもよい。発泡体または発泡性熱可塑性重合体組成物と基材との複合一体化に当たっては、それらの間の親和性、接着性などに応じて、例えば加熱圧着、接着剤による接着、押出ラミネートのような成形と同時に積層を行う方法などの任意の方法を使用することができる。
【0041】
特に、上記した複合材料が発泡体と基材とからなる積層構造物である場合には、例えば、1つの発泡体層と1つの基材との2層構造であっても、発泡体の両面に基材を有する3層構造(サンドイッチ構造)であっても、発泡体と他の材料が交互に積層した4層以上の多層構造であっても、またはそれ以外の積層構造であってもよく、基材を2層以上有する多層構造の場合は、それぞれの層が同じ材料からなっていてもまたは異なる材料からなっていてもよい。
【0042】
【実施例】
以下実施例により本発明をさらに具体的に説明する。尚、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において適宜変更実施可能である。
【0043】
本実施例に示すブロック共重合体の分子量及び熱可塑性樹脂組成物の物性は以下に示す方法で測定した。
【0044】
(1)分子量:
Waters社製GPCシステム(カラム:昭和電工(株)製Shodex K−804(ポリスチレンゲル)、移動相:クロロホルム)。数平均分子量はポリスチレン換算で表記。
【0045】
(2)発泡倍率:
水中置換法、JIS−K−7112により発泡体の比重を測定し、未発泡体の比重で割った値を発泡倍率とした。
【0046】
(3)未発泡成形体、及び、発泡成形体の硬度:
発泡体をJIS−K6301によるJIS−A硬度を用いて測定した。多層構造発泡体についても表面層等を含む全体の硬度を測定した。
【0047】
(4)発泡体の表面性:
発泡体の外観を目視で判断した。
×:表面全体が荒れている
△:表面の一部が荒れている
○:表面がほぼ平滑
◎:表面が平滑
(5)発泡体の制振性:
発泡体を圧縮変形で粘弾性を測定した。
×:tanδピークの高さが低い
○:tanδピークの高さが高い
(発泡体の成形法)
射出成形により発泡体を成形した。発泡用樹脂を金型内にフルショットした直後に、可動型を移動させキャビティー内容積を増大して発泡させた後、成形された発泡体が十分に冷却された時点で発泡体を金型から取り出した。
【0048】
(イソブチレン系ブロック共重合体の製造例)
攪拌機付き10L反応容器に、メチルシクロヘキサン(モレキュラーシーブスで乾燥したもの)2166mL、塩化メチレン(モレキュラーシーブスで乾燥したもの)1634mL、p−ジクミルクロライド1.756gを加えた。反応容器を−70℃に冷却した後、α−ピコリン(2−メチルピリジン)0.75mL、イソブチレン633mLを添加した。さらに四塩化チタン30mLを加えて重合を開始し、−70℃で溶液を攪拌しながら1.5時間反応させた。次いで反応溶液にスチレン270mLを添加し、さらに20分間反応を続けた後、大量のメタノールを添加して反応を停止させた。反応溶液から溶剤等を除去した後に、重合体をトルエンに溶解して2回水洗した。このトルエン溶液をアセトン−メタノール混合物に加えて重合体を沈殿させ、得られた重合体を60℃で24時間真空乾燥することによりイソブチレン系ブロック共重合体を得た(以下、SIBS−1と略す)。
【0049】
得られたイソブチレン系ブロック共重合体(SIBS−1)のGPC分析を行ったところ、数平均分子量が98000、分子量分布が1.15であった。またスチレンの含有量は29重量%であった。
【0050】
また、同様にして、開始剤であるp−ジクミルクロライド、イソブチレン、スチレン等の比率を変化させ、平均分子量が72000、分子量分布が1.16、スチレン含有量が28%のイソブチレン系ブロック共重合体を得た(以下、SIBS−2と略す)。
下記の原料を使用して、熱可塑性樹脂組発泡体を製造した。
[ブロック共重合体]
イソブチレン系ブロック共重合体(SIBS−1、SIBS−2):製造例で製造したものにヒンダードフェノール系酸化防止剤:Irganox1010(チバガイギー社製)を0.5部添加したもの。
【0051】
スチレン−エチレン/プロピレン−スチレンブロック共重合体(以下、SEPSと略す):数平均分子量87000、スチレン含有量30重量%(SEPS−1;セプトン2007)、数平均分子量63000、スチレン含有量30重量%(SEPS−2;セプトン2002)
(実施例1〜3、比較例1〜2)
表1に示したブロック共重合体、及び条件で、射出成形により発泡体を成形した。発泡剤は、重炭酸ナトリウムとアゾジカルボンアミドを併用し、1.5部添加した。得られた発泡体の各種物性を評価し、その結果を表1に示した。また、発泡倍率は型開速度を変化させることで調整した。
【0052】
【表1】
【0053】
本発明で得られた発泡体は、従来品に較べて、硬度が低く、柔軟性の特徴を有していることがわかる。また、発泡体の制振性に優れることがわかる。
また、射出成形による発泡体であり、表面層を有する多層発泡体で、硬度の低いものが得られることがわかる。
【0054】
【発明の効果】
本発明によれば、材料の調整や加工が容易であり、常温、及び低温での柔軟性、緩衝性、制振性、防音性、保温性、ガスバリヤー性が高く、可塑剤の滲み出しが無く、耐候性、熱的安定性等に優れた熱可塑性樹脂発泡体が得られる。
Claims (8)
- 85〜50重量%のイソブチレンを主成分とする重合体ブロックと15〜50重量%の芳香族ビニル系単量体を主成分とする単量体からなる重合体ブロックからなるイソブチレン系ブロック共重合体100重量部、発泡剤0.05〜10重量部からなる熱可塑性樹脂組成物を発泡させて得られる熱可塑性樹脂発泡体であって、JIS−K6301によるJIS−A硬度が25〜36である、熱可塑性樹脂発泡体。
- 前記熱可塑性樹脂組成物が、前記イソブチレン系ブロック共重合体100重量部に対して、さらに、ポリオレフィン系樹脂5〜400重量部、可塑剤0〜200重量部を含有する請求項1記載の熱可塑性樹脂発泡体。
- 芳香族ビニル系単量体がスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、インデンからなる群から選ばれる少なくとも1種以上である請求項1または2記載の熱可塑性樹脂発泡体。
- イソブチレン系ブロック共重合体の数平均分子量が40000〜80000であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂発泡体。
- 射出発泡成形により得られたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂発泡体。
- 射出発泡成形により得られ、多層構造を有することを特徴とする請求項5記載の熱可塑性樹脂発泡体。
- 押し出し発泡成形により得られたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂発泡体。
- 発泡剤が、炭酸塩、アゾ化合物、ヒドラジド化合物の少なくとも一つからなることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂発泡体。
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