JP4566158B2 - 硬質皮膜被覆部材 - Google Patents

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本願発明は、耐摩耗性や耐欠損性向上を要求される硬質皮膜被覆部材に関する。
硬質膜被覆部材において、引張残留応力を有する硬質皮膜を化学蒸着法(以下、CVDと記す。)により被覆する技術と、圧縮残留応力を有する硬質皮膜を物理蒸着法(以下、PVDと記す。)により被覆する技術とを組み合わせて被覆することが、以下の特許文献1、2に開示されている。PVD膜の耐摩耗性と耐熱性とを改善する技術が特許文献3、4に、PVD膜にS成分を添加して潤滑性を改善する技術が特許文献5に開示されている。
特開平01−252305号公報 特表平06−502352号公報 特開2003−136302号公報 特開2003−145313号公報 特開2005−226102号公報
特許文献1、2は、引張残留応力を有するCVD膜と圧縮残留応力を有するPVD膜を組み合わせ、硬質膜全体の残留応力を相殺し、見かけ上の残留応力をなくすことにより、切削工具の耐チッピング性を高めることが提案されている。しかし、PVD膜にTi、Zr、Hfの炭化物、窒化物、炭窒化物、炭酸化物、炭窒酸化物を被覆することのみを検討しているため、PVD膜の圧縮残留応力が小さく、皮膜全体の耐欠損性改善が不十分であり、皮膜の耐溶着性と摺動性とが劣る欠点がある。特許文献3、4は、(200)面が高配向し、その回折ピークの半価幅が2θで0.6度以下ある(TiAl)C層や(TiAl)N層、0.5度以下の(TiAlSi)N層をPVD法で蒸着し、高温耐酸化性と高温硬さが優れる表面被覆超硬合金製切削工具を開示している。しかし、特許文献3、4はPVD層を基体表面に直接成膜しているため、基体と皮膜間の密着強度が劣り、皮膜が剥がれやすい欠点がある。また、これらの皮膜は被加工材と反応し易く、耐溶着性が劣る欠点がある。特許文献5はPVD法により(TiAl)N系の硬質皮膜にS、O元素を添加して潤滑性を改善しているが、CVD膜と組み合わせることや、残留応力の低減に関する記載はない。
そこで本願発明が解決しようとする課題は、硬質皮膜の密着性と耐摩耗性と耐欠損性とが優れ、しかも、耐溶着性と摺動性とが格段に優れた硬質膜被覆部材を提供することである。
本願発明は、部材表面に硬質皮膜を被覆した硬質皮膜被覆部材において、該硬質皮膜は引張残留応力を有する内層と、圧縮残留応力を有する外層とからなり、該外層は、イオンプレーティング方式で、反応ガス導入後の圧力を3.0〜10Paで、4a、5a、6a族元素のうち1種以上、Al、Si、Bのうち1種以上及びSを含有した窒化物、炭窒化物、酸炭窒化物層を被覆しCukα1で測定したX線回折で、該外層の結晶構造は面心立方構造であり、該面心立方構造の(200)面の半価幅をW(度)としたとき、0.6<W≦1.2、としたことを特徴とする硬質皮膜被覆部材である。本願発明の要件を満たすことにより、硬質皮膜の密着性と耐摩耗性と耐欠損性とが優れ、しかも、耐溶着性と摺動性とが格段に優れた硬質膜被覆部材を提供することができる。更に、本願発明の硬質皮膜被覆部材該内層はTiの炭化物又は炭窒化物であり、その膜厚が0.05〜2μmであることを特徴とする硬質皮膜被覆部材であることが好ましい。
本願発明により、硬質皮膜の密着性と耐摩耗性と耐欠損性とが優れ、しかも、耐溶着性と摺動性とが格段に優れた、硬質膜被覆部材を提供することができた。
本願発明の硬質皮膜被覆部材は、内層が引張残留応力を有し、内層と部材表面との間に優れた密着強度が得られる。外層が圧縮残留応力を有していることにより、内層の引張残留応力が実質的に低減され、その結果、耐欠損性が改善され、皮膜全体に格段に優れた耐欠損性が得られる。外層により大きな圧縮残留応力を付与するため、外層の構成元素として、イオン半径が0.041〜0.1nmと大きい4a、5a、6a族元素の1種以上と、イオン半径が0.002〜0.04nmと小さいAl、Si、Bのうちの1種以上とを含有していることにより、より大きな圧縮残留応力が発生する。その結果、外層の膜厚を厚くすることなく、内層におけるクラック発生を緩和する効果が得られる。
外層の構成元素が、イオン半径の異なる元素を複数個組み合わせて含有していることにより、結晶格子内に歪が大きく発生し、膜厚に比してより大きな圧縮残留応力が発生する。従って、外層が高硬度化する。被覆にあたっては、Tiをベースとし、他に、Nb、Cr、W、V、Zr、Mo等の4a、5a、6a族元素と、Al、Si、Bのうちの1種以上を選択した場合、外層はより大きな圧縮残留応力が発生する。TiN、ZrN、HfNのみを含有していても、Al、Si、Bのうちの1種以上を含有していないと、次の様な不都合が生じる。第1として、外層の圧縮残留応力が小さくなってしまう。第2として、外層が内層の引張残留応力を緩和するのに必要な圧縮残留応力を得るために、1.0Pa以下と極めて低い圧力で成膜することが必要になってしまう。そして、外層内に過大なひずみが発生し、むしろ耐欠損性が悪くなる欠点が現れる。第3として、通常の成膜条件によって外層を成膜すると、充分な圧縮残留応力を得るために、外層の膜厚を厚くしなければならず、非経済的であると伴に、外層と内層間の密着強度が低下する欠点が現れる。
更に、本願発明の硬質膜被覆部材は、外層にSを含有している。これにより、例えば部材を工具等に使用したとき、皮膜表面が高温になる前の比較的に早い段階で、皮膜表面に酸化保護膜が形成され、優れた耐溶着性と摺動性とを有する硬質皮膜被覆部材を実現できる。ここで、Sを含有させるためには、反応ガスを使用する方法もあるが、安全、環境への配慮から、ターゲット中にSを含有させ、これをアーク放電やグロー放電等により蒸発、イオン化させることにより、S含有皮膜を成膜することが好ましい。
本願発明の硬質皮膜被覆部材は、外層に含有されるSの量が、原子%で、0.3%以上、10.0%以下であることにより、より優れた耐溶着性と摺動性とを有する外層が得られ、好ましい。S量が0.3%未満ではSの効果が弱くなり、10.0%を超えて大きいと、外層の結晶性が悪くなり、耐摩耗性と耐酸化性とが低下する傾向が現れる。外層がSを含まない場合は、著しい溶着が発生する欠点が現れる。この様な場合として、4a、5a、6a族元素や、Al、Si、Bのみを含有した化合物皮膜が挙げられ、例えば、TiN、ZrN、HfN、(TiAl)Nなどである。外層にOやCを含有させることによって、皮膜表面に形成される酸化保護膜形成が、更に早い段階で形成され、優れた耐溶着性と摺動性を有する。外層におけるNの1部がOやCに置換されることにより、結晶格子内に歪が大きく発生し、より大きな圧縮残留応力が発生し、高硬度化が実現できる。
外層の結晶構造を面心立方構造にすることによって、より高硬度で耐摩耗性と耐熱安定性が格段に優れた硬質皮膜が得られる。面心立方構造でない場合、硬度が低く、耐摩耗性が不十分になる欠点が現れる。
外層のX線回折ピークにおける面心立方構造の(200)面のW値をCukα1で測定したとき、0.6<W≦1.2にすることにより、結晶性を有する皮膜が得られる。そして圧縮残留応力が大きく、耐摩耗性も優れた硬質皮膜が得られる。W値が0.6度以下では、皮膜内の歪が大きくなり過ぎ、転移等の内部欠陥が多くなり、機械的強度が著しく低下する欠点が現れる。また、1.2度を超えて大きいと硬質皮膜の結晶性が低下し、膜硬度と耐摩耗性とが大幅に低下する欠点が現れる。更に内層との密着性が悪化し、耐欠損性も著しく低下する欠点が現れる。
該面心立方構造の(200)面のW値が、0.6<W≦1.2、の硬質皮膜は、成膜条件を制御することによって得られる。例えば、圧力を3〜10Paの範囲に設定し、成膜時に発生するプラズマ密度を高くするとともに、直流バイアス電圧を15〜300Vの範囲に設定することが好ましい。圧力を3.0Paよりも低く設定するとW値は大きくなり1.2度を超え易くなる。しかし、10Paを超えると0.6度を下回る。バイアス電圧を15V未満に設定するとW値は小さくなり、0.6度を下回る。しかし、300Vを超えると1.2度より大きくなりやすい。但し、最適な成膜条件は、使用するターゲットや成膜装置に依存するため、膜の密着性等を考慮して、最適値を実験によりもとめ、調整することが必要である。ここで、硬質皮膜の残留残留応力が、引張残留応力であるか、圧縮残留応力あるかは、X線残留応力測定法による並傾法により、次の化1における残留残留応力σの符号を求めることにより判別できる。
Figure 0004566158
化1のEは弾性定数、νはポアソン比、θ0は無歪みの格子面からの標準ブラッグ回折角、Ψは回折格子面法線と試料面法線との傾き、θは測定試料の角度がΨの時のブラッグ回折角である。化1より、残留応力σの符合が正、負のいずれであるかを決定するには2θ−sin2Ψ線図の勾配のみが必要であり、弾性定数Eやポアソン比ν、常に正のcotθoの正確な値は必要としないことがわかる。残留応力σの符合が正の時が引張残留応力であり、負の時に圧縮残留応力が働いている。
本願発明の硬質皮膜被覆部材は、基体表面内層がTiの炭化物又は炭窒化物層であり、膜厚が0.05〜2μmであることにより、基体と内層との間に、より優れた密着性が得られ、特に被覆回転工具に好適である。Tiの炭化物や炭窒化物層でなく、例えば、窒化物層であると基体と内層間の密着性が低下する傾向が現れ、膜厚が0.05μm未満の時は基体との密着性が低下する傾向が現れ、2μmを超えて大きいと、耐摩耗性が低下する傾向が現れる。
本願発明の硬質皮膜被覆部材は、内層に酸化アルミニウム膜が含まれていることにより、耐酸化性と耐熱性の優れた硬質皮膜被覆部材が実現でき、好ましい。
本願発明の硬質皮膜被覆部材は、基体に炭化タングステン基超硬合金、高速度工具鋼基体、サーメットを用いることにより、耐摩耗性と靱性のバランスが良くなり、好ましい。
本願発明の硬質皮膜被覆部材は、耐摩耗性、耐熱性安定性、摺動性が必要とされる用途、特に金属部品加工、金型加工用の切削工具、金型、軸受け、ダイス、ロール、ピストンリング、摺動部材、及び耐摩耗部材や内燃機関部品などの耐熱部材に用いることが好ましい。特に被覆回転工具に好適である。
インサート形状の超硬合金製基体の表面に、予めCVD法にて硬質皮膜を被覆した後、その表面に、PVD法のイオンプレーティング方式を用いて硬質皮膜を被覆した。
CVD法では、基体直上に水素キヤリヤーガスと四塩化チタンガスとメタンガスを原料ガスに用いてTiC膜を960℃で成膜した。TiCN膜は、窒素ガスを35vol%を用いたて成膜した。このCVD皮膜の上に、硬質皮膜をPVD法にて被覆した。皮膜材料は、Sと4a、5a、6a族、Al、Si、Bの1種以上とを含有した硬質皮膜を被覆した。反応ガスは、窒素、メタン、アセチレン、アルゴンと酸素の混合ガス、窒素と酸素の混合ガスから、目的の硬質膜が得られるものを選択し用いた。蒸発源は、Sを含む各種合金製ターゲットを選択して用いた。Sは極めて優れた耐溶着性を得るために、硬質皮膜中への添加を行った。本発明例1は、Sを含有したTiAlSターゲットを使用した。組成は、原子%で、Ti:50、Al:48、S:2とした。被覆処理温度は600℃、反応圧力を6.0Paとし、直流バイアス電圧を50Vで(TiAlS)Nを成膜した。作製した試料の詳細を表1に示す。
Figure 0004566158
本発明例2以降は、特に断りの限り、本発明例1の成膜条件に準拠した。
本発明例2〜5は、外層となる圧縮残留応力を有する硬質皮膜のW値の大小が及ぼす効果を見るために、バイアス電圧のみを50V〜300Vの範囲に変化させた。本発明例6、7は、硬質皮膜中にB、Siを添加するため、ターゲット材にTiBS、TiSiSを使用した。本発明例8、9は、外層膜に大きな圧縮残留応力を付与し、高硬度化を図るために、本発明例1と同様のターゲット中にCr、Nbを添加した。本発明例10〜16は、基体直上の内層であるTiCの成膜時間を変えて、TiCの膜厚を変えた。本発明例17、18の内層は、水素キヤリヤーガスと四塩化チタンガス、メタンガス及び窒素ガスを原料ガスに用いて、980℃で、Ti(CN)を成膜した。本発明例19〜24は、外層に含有するS量を変化させるために、ターゲット中に含有するS量を変更した。本発明例25〜27は、外層に酸素や炭素を含有させるために、成膜時に酸素や炭化水素系のメタンやアセチレン等のガスを導入した。本発明例28は、本発明例1に用いたターゲット組成のTiをCrに置き換えて、同条件にて成膜した。比較例29〜31は、外層にSを含有する効果を明らかにするために作製した。比較例32と33は、外層の結晶構造が面心立方構造であり、(200)ピークのW値が、0.6<W≦1.2、である効果を明らかにするため、印加する直流バイアス電圧値を変更して作製した。本発明例と比較例の膜組成をエネルギー分散型X線分析装置(堀場製作所製S−792X1、以下、EDXと記す。)で測定し、外層のX線回折パターンをX線回折装置(理学電気(株)製RU−200BH)を用いて2θ−θ走査法により2θ=10〜145度の範囲で、X線回折パターンを測定した。X線源にはCuKα1線(λ=0.15405nm)を用い、バックグランドノイズは装置に内蔵されたソフトにより除去した。測定の結果、本発明例1〜28と比較例29〜33は、検出された2θのピーク位置が、結晶構造が面心立方構造であるTiNのX線回折パターン(JCPDSファイル番号38−1420)に略一致したので、その(200)面ピークのW値を測定した。同様にして、各試料の膜の残留応力符号をX線応力測定で求めた。このとき並傾法を用いた。本発明例と比較例はいずれも、内層が引張残留応力、外層が圧縮残留応力を有していた。本発明例と比較例の膜断面を17度斜めに傾けて研摩し、内層の組成と膜厚、及び、外層の組成を電子プローブマイクロアナライザー(日本電子(株)製JXA−8900R、以下、EPMAと記す。)を用いて、加速電圧15kV、試料電流0.2μAで分析した。同じ試料を用いて、内層の膜厚を光学顕微鏡を用いて測定した。この時、試料は17度斜めに傾けて研摩したものを用いて測定しているため、光学顕微鏡で測定した幅を0.29倍したものを膜厚とした。これらの評価結果を表1にまとめて示す。作製したインサートについて、以下の条件で断続切削評価を行い、切削長さ1m時に発生する溶着の有無を、光学顕微鏡を用いて、切刃逃げ面部を50倍に拡大して観察した。その後切削を継続し、10μm以上の微小チッピングを含む、欠損が発生した時点を工具寿命とし、その時点までの切削長を比較することによって性能を評価した。その評価結果を表1にあわせて示す。
(切削条件)
工具:特殊正面フライス
インサート形状:SDE53、特殊形状
切削方法:センターカット方式
被削材形状:幅125mm×長さ300mm、6mm穴付き、多孔面
被削材:SKD61、HRC47
軸方向切込み量:1.5mm
切削速度:70m/min
1刃当たりの送り量:0.6mm/刃
切削油:なし
表1より、本発明例は、極めて優れた耐欠損特性を示した。本発明例1、6、7の工具寿命は夫々、28.6、20.4、26.3mであり、一方、Sを含有しない比較例29、30、31は夫々、13.4、9.2、12.3mであった。従って、本発明例1、6、7は工具寿命が2倍以上長く、格段に優れていた。この理由は、比較例29、30、31がSを含有していないのに対して、本発明例1、6、7はSを含有しているため、切削の初期段階で皮膜表面に酸化保護膜が形成され、優れた耐溶着性と摺動性とが得られたからである。本発明例1の(TiAlS)Nに対して、膜中にCr、Nbを含有させた本発明例8、9は、夫々、工具寿命が34.8m、36.4mとなった。本発明例8、9は、本発明例1に対して、インサートが欠損するまでの工具寿命が1.2倍以上長く、優れていた。切削距離1m時の逃げ面最大摩耗幅を確認した所、本発明例1が0.04mmに対し、本発明例8が0.02mm、本発明例9が0.01mmと摩耗が少なかった。この理由は、膜中にCr、Nbを含有させたことにより、膜が高硬度化して、大きな残留圧縮応力が付与されたからである。基体表面に、引張残留応力を有する硬質皮膜からなる内層と、圧縮残留応力を有する硬質皮膜からなる外層とからなる硬質皮膜被覆層が形成されており、該外層が、4a、5a、6a族元素の1種であるTiと、Al、Si、Bのうち1種以上、及び、Sとを含有しており、外層の結晶構造が面心立方構造であるものの、(200)X線回折ピークのW値をCukα1で測定したときの値が0.4、1.3度と本発明の範囲外である比較例32、33の工具寿命がそれぞれ、10.2、9.2mであるのに対して、本発明例1〜5は、(200)X線回折ピークのW値が本発明規定の範囲内にあり、工具寿命は24m以上であった。一方、比較例32、33はW値の値が0.55、1.3度と本発明の規定外であった。従って、本発明例1〜5は、工具寿命が2.3倍以上長く、格段に優れていた。この理由は、本発明例1〜5のX線回折ピークのW値が、本発明の規定内であるため、結晶性が格段に良く、圧縮残留応力が大きく、しかも耐摩耗性も優れた皮膜が形成出来たためである。次に、本発明例10〜16内を比較することによって、内層の膜厚の影響を考察した。TiCの膜厚が0.04μmである本発明例10の工具寿命が、20.9mであるのに対して、0.05μmである本発明例11は29.4mと、1.4倍以上であり優れていた。また、TiCの膜厚が2.1μmである本発明例16が、20.6mであるのに対して、2.0μmである本発明例15は26.9mと、1.3倍以上であり優れていた。更に、内層をTi(CN)とした本発明例17、18の工具寿命が、夫々35.3m、32.2mであるのに対して、同じ膜厚のTiC層を有する本発明例11、15は、夫々29.4m、32.3mであった。内層をTi(CN)とした方が1.2倍以上であり、優れていた。従って、内層はTiの炭化物又は炭窒化物であり、膜厚が0.05〜2μmであることが好ましい。この理由は、内層の膜厚が0.05μm〜2.0μmの範囲内で、特に、皮膜の密着性が優れるためである。本発明例19〜24内を比較することによって、外層のS含有量の影響について考察した。本発明例19のS含有量は0.2原子%であり、工具寿命は20.5mであるのに対して、本発明例20は0.3原子%で、27.8mと1.3倍以上あり優れていた。一方、本発明例24のS含有量は11原子%であり、工具寿命は20.6mであるのに対して、本発明例23は10原子%で、27.5mと1.3倍以上あり優れていた。この理由は、外層のS含有量を、0.3原子%〜10原子%の範囲内に規定することによって、特に耐溶着性が優れるためである。本発明例25、26、27は、成膜時に炭化水素系ガスのメタン、アセチレン、酸素のガスを導入して作製し、同様な評価を行った。他の条件は本発明例1と略同様の膜構造と成膜条件を用いた。その結果、外層の硬質皮膜中に炭素や酸素を含有している本発明例25、26、27はいずれも、本発明例1に対して、1.5倍以上の工具寿命を示し優れていた。切削距離1m時の刃先の損傷状態を確認した所、本発明例25、26、27は、本発明例1に対して、溶着が少なかった。この理由は、外層膜中にOやCが含有されることによって、皮膜表面の摺動特性が優れるためである。本発明例28は、ターゲット材の組成をTiからCrへ置き換えて作製し、同様な評価を行った。他の条件は本発明例1と略同様の膜構造と成膜条件を用いた。その結果、本発明例28は、本発明例1に対して1.7倍の工具寿命を示し優れていた。切削距離1m時の刃先の損傷状態を確認した所、本発明例28の逃げ面摩耗幅が、0.02mmであり、本発明例1は0.04mmであった。この逃げ面摩耗幅が少ない理由は、外層がCrを含有することにより、耐熱特性が優れるためである。

Claims (2)

  1. 部材表面に硬質皮膜を被覆した硬質皮膜被覆部材において、該硬質皮膜は引張残留応力を有する内層と、圧縮残留応力を有する外層とからなり、該外層は、イオンプレーティング方式で、反応ガス導入後の圧力を3.0〜10Paで、4a、5a、6a族元素のうち1種以上、Al、Si、Bのうち1種以上及びSを含有した窒化物、炭窒化物、酸炭窒化物層を被覆しCukα1で測定したX線回折で、該外層の結晶構造は面心立方構造であり、該面心立方構造の(200)面の半価幅をW(度)としたとき、0.6<W≦1.2、としたことを特徴とする硬質皮膜被覆部材。
  2. 請求項1記載の硬質皮膜被覆部材において、該内層はTiの炭化物又は炭窒化物で、その膜厚が0.05〜2μmであることを特徴とする硬質皮膜被覆部材。
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