JP2020151794A - 表面被覆切削工具 - Google Patents

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Abstract

【課題】ダクタイル鋳鉄等の高速高送り加工等でも、長期間、優れた耐チッピング性、耐摩耗性を発揮する被覆工具の提供【解決手段】工具基体の硬質被覆層が、平均層厚1.0〜20.0μmのNaCl型面心立方構造の結晶粒を有するTiとAlの複合窒化物または複合炭窒化物層を含み、工具基体に平行な切断面について、結晶粒A群の組成は(Ti1−XAAlXA)(CYAN1−YA)で、XAの平均XAavgが0.75≦XAavg≦0.95、YAの平均YAavgが0.0000≦YAavg≦0.0150、結晶粒B群を組成は(Ti1−XBAlXB)(CYBN1−YB)で、XBの平均XBavgが0.70≦XBavg≦0.90、0.05≦XAavg−XBavg≦0.25、YBの平均YBavgが0.0000≦YBavg≦0.0150で、結晶粒A群の面積割合が20〜80%の表面被覆切削工具。【選択図】図1

Description

本発明は、高熱発生を伴うとともに、切刃に対して強い衝撃的な負荷が作用する高速高送り断続切削加工において、硬質被覆層が優れた耐チッピング性、耐摩耗性を備えることにより、長期の使用にわたって優れた切削性能を発揮する表面被覆切削工具(以下、被覆工具ということがある)に関するものである。
従来、炭化タングステン(以下、WCで示す)基超硬合金等で構成された工具基体(以下、これらを総称して工具基体という)の表面に、硬質被覆層として、Ti−Al系の複合窒化物層を蒸着法により被覆形成した被覆工具があり、これらは、優れた耐摩耗性を発揮することが知られている。
ただ、前記従来のTi−Al系の複合窒化物層を被覆形成した被覆工具は、比較的耐摩耗性に優れるものの、高速高送り断続切削条件で用いた場合に異常損耗を発生しやすいことから、硬質被覆層の改善についての種々の提案がなされている。
例えば、特許文献1には、工具基体の表面に、(Ti1−xAl)(C1−y)層(但し、Alの平均含有割合xavgおよびCの平均含有割合yavgは、0.60≦xavg≦0.95、0≦yavg≦0.005を満たす)を被覆形成した被覆工具であって、該層のNaCl型の面心立方構造を有する結晶粒は{111}配向を有し、該NaCl型の面心立方構造を有する個々の結晶粒の平均粒子幅Wは0.1〜2.0μm、平均アスペクト比Aは2〜10である柱状組織を有し、また、該NaCl型の面心立方構造を有する個々の結晶粒内に、組成式:(Ti1−xAl)(C1−y)におけるTiとAlの周期的な組成変化が存在し、周期的に変化するxの極大値の平均と極小値の平均の差Δxが0.03〜0.25である被覆工具が記載されている。
また、例えば、特許文献2には、工具基体と、CVDプロセスにより適用され3μm〜25μmの範囲内の厚みの単層または多層の摩耗保護コーティングと、を有し、
該摩耗保護コーティングは、1.5μm〜17μmの厚みの少なくとも1つのTi1−xAl(0.70≦x<1、0≦y<0.25、0.75≦z<1.15)層であって、前記Ti1−xAl層が150nm以下複数の層を備える層状構造であって、同じ結晶構造(結晶相)を有し、Ti及びAlの化学量論的割合が交互に異なる周期的に交番する領域で形成されていること、および、少なくとも90vol%の面心立方結晶構造を有すること、を特徴とする被覆工具が記載されている。
特開2016−64485号公報 特表2017−508632号公報
近年の切削加工における省力化および省エネルギー化の要求は強く、これに伴い、切削加工は一段と高速化、高効率化の傾向にあり、被覆工具には、より一層、耐チッピング性、耐欠損性、耐剥離性等の耐異常損傷性が求められるとともに、長期の使用にわたって優れた耐摩耗性が求められている。
そこで、本発明はこのような状況をかんがみてなされたもので、ダクタイル鋳鉄等の高速高送り切削加工等に供した場合であっても、長期の使用にわたって優れた耐チッピング性、耐摩耗性を発揮する被覆工具を提供することを目的とする。
本発明者は、TiとAlの複合窒化物層または複合炭窒化物層(以下、これらを総称して、「TiAlCN層」ということがある)を含む被覆工具の耐チッピング性、耐摩耗性の向上をはかるべく、鋭意検討を重ねた。
その結果、工具基体に平行なTiAlCN層の切断面において、Al含有割合の所定の差を有するNaCl型の面心立方構造を有する結晶粒の2つの群が特定の割合で存在するとき、Alの含有割合の違いに起因する熱膨張係数の差がTiAlCN層内に局所的な歪みを発生させ、耐欠損性を向上させるという新規な知見を得た。
本発明は、この知見に基づくもので以下のとおりのものである。
「(1)工具基体の表面に、硬質被覆層が設けられた表面被覆切削工具であって、
(a)前記硬質被覆層は、平均層厚1.0〜20.0μmのTiとAlの複合窒化物または複合炭窒化物層を少なくとも含み、
(b)前記TiとAlの複合窒化物層または複合炭窒化物層は、NaCl型の面心立方構造の結晶粒を少なくとも含み、
(c)前記工具基体の表面に垂直な方向から、前記工具基体に平行な切断面について解析した場合、TiとAlの組成が異なる前記NaCl型の面心立法構造の結晶粒が複数存在し、ぞれぞれを、結晶粒A群と結晶粒B群と区分するとき、
前記結晶粒A群を組成式:(Ti1−XAAlXA)(CYA1−YA)で表すとき、AlのTiとAlの合量に占める含有割合Xの平均XAavg、および、CのCとNの合量に占める含有割合Yの平均YAavg(但し、XAavg、YAavgはいずれも原子比)が、それぞれ、0.75≦XAavg≦0.95、0.0000≦YAavg≦0.0150を満足し、
前記結晶粒B群を組成式:(Ti1−XBAlXB)(CYB1−YB)で表すとき、AlのTiとAlの合量に占める含有割合Xの平均XBavg、および、CのCとNの合量に占める含有割合Yの平均YBavg(但し、XBavg、YBavgはいずれも原子比)が、0.70≦XBavg≦0.90、0.05≦XAavg−XBavg≦0.25、0.0000≦YBavg≦0.0150を満足し、
(d)前記切断面において、前記結晶粒A群の占める面積割合が20〜80%である、
ことを特徴とする表面被覆切削工具。
(2)前記結晶粒A群の結晶粒内に、TiとAlの周期的な組成変化が該結晶粒の<001>で表される等価の結晶方位のうちの一つの方位に沿って存在し、周期的に変化するXの極大値の平均値と極小値の平均値との差ΔXが0.03〜0.25であることを特徴とする前記(1)に記載の表面被覆切削工具。
(3)前記結晶粒B群の結晶粒内に、TiとAlの周期的な組成変化が該結晶粒の<001>で表される等価の結晶方位のうちの一つの方位に沿って存在し、周期的に変化するXの極大値の平均値と極小値の平均値との差ΔXが0.03〜0.25であることを特徴とする前記(1)または(2)に記載の表面被覆切削工具。
(4)前記工具基体と前記TiとAlの複合窒化物または複合炭窒化物層との間にTiの炭化物層、窒化物層、炭窒化物層、炭酸化物層および炭窒酸化物層のうちの1層または2層以上からなり、0.1〜20μmの合計平均層厚を有する下部層が存在することを特徴とする前記(1)乃至(3)のいずれかに記載の表面被覆切削工具。
(5)前記複合窒化物または複合炭窒化物層の上部に、少なくとも酸化アルミニウム層を含む上部層が1〜25μmの合計平均層厚で存在することを特徴とする前記(1)乃至(4)のいずれかに記載の表面被覆切削工具。」
本発明の切削工具は、ダクタイル鋳鉄等の高速高送り切削加工等に供した場合であっても、長期の使用にわたって優れた耐チッピング性、耐摩耗性を発揮する。
本発明のTiAlCN層の工具基体に平行な切断面における組織を示す模式図であり、各組織の形状や寸法は、実際の焼結組織を模写したものではない。 TiとAlの周期的な組成変化の周期、極大値、局所値を示す模式図である。 TiとAlの周期的な組成変化が存在するNaCl型の面心立法構造を有する結晶粒子において組成変化を示す模式図である。
以下、本発明の被覆工具について、より詳細に説明する。なお、本明細書、特許請求の範囲において、数値範囲を「〜」を用いて表現する場合、その範囲は上限および下限の数値を含むものとする。
1.硬質被覆層の平均層厚:
硬質被覆層は、TiAlCN層を少なくとも含む。このTiAlCN層を含む硬質被覆層は、硬さが高く、優れた耐摩耗性を有するが、特に平均層厚が1.0〜20.0μmのとき、その効果が際立って発揮される。その理由は、平均層厚が1.0μm未満では、平均層厚が薄いため長期の使用にわたって耐摩耗性を十分確保することができず、一方、その平均層厚が20.0μmを超えると、TiAlCN層の結晶粒が粗大化し易くなり、チッピングを発生しやすくなるためである。
2.TiAlCN層におけるNaCl型の面心立方構造の結晶粒
TiAlCN層においてNaCl型の面心立方構造の結晶粒が含まれていなければ本発明の目的を達成することは困難である。この目的を達成するためには、工具基体表面に平行な断面において、NaCl型の面心立方構造の結晶粒の占める面積割合が60%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは、100%(全ての結晶粒がNaCl型の面心立方構造)であるとよい。
3.硬質被覆層を構成するTiAlCN層の組成:
硬質被覆層を構成するTiAlCN層は、Al含有割合が異なる結晶粒A群と結晶粒B群を含む。
結晶粒A群の組成は、組成式:(Ti1−XAAlXA)(CYA1−YA)で表すとき、AlのTiとAlの合量に占める含有割合Xの平均XAavgおよびCのCとNの合量に占める含有割合Yの平均YAavg(但し、XAavg、YAavgはいずれも原子比)が、それぞれ、0.75≦XAavg≦0.95、0.0000≦YAavg≦0.0150を満足し、
結晶粒B群の組成は、組成式:(Ti1−XBAlXB)(CYB1−YB)で表すとき、AlのTiとAlの合量に占める含有割合Xの平均XBavgおよびCのCとNの合量に占める含有割合Yの平均YBavg(但し、XBavg、YBavgはいずれも原子比)が、0.70≦XBavg≦0.90、0.05≦XAavg−XBavg≦0.25、0.0000≦YBavg≦0.0150を満足することが好ましい。
次に、結晶粒A群および結晶粒B群の組成を前記範囲を好ましいとする理由について説明する。
(1)Alの平均含有割合
Alの平均含有割合が、結晶粒A群では、0.75≦XAavg≦0.95、結晶粒B群では、0.70≦XBavg≦0.90を満足することより、TiAlCN層は硬さを確保し、ダクタイル鋳鉄等の高速高送り切削に供した場合に、耐摩耗性が十分となり、しかも、相対的にTiの含有割合が減少させることがないため、脆化を招くことなく、耐チッピング性確保できるためである。
そして、結晶粒A群と結晶粒B群のAl含有割合が0.05≦XAavg−XBavg≦0.25を満足することにより、結晶粒A群と結晶粒B群との間で熱膨張係数の差が適切となって、適度な局所的な歪みが入り、耐欠損性が向上する。
(2)Cの平均含有割合
結晶粒A群および結晶粒B群のCの平均含有割合YAavgとYBavgが共に、0.0000以上、0.0150以下の範囲の微量であるとき、TiAlCN層と工具基体もしくは後述する下部層との密着性が向上し、かつ、潤滑性が向上することによって切削時の衝撃を緩和し、結果としてTiAlCN層の耐欠損性および耐チッピング性が向上する。一方、Cの平均含有割合がこの範囲を逸脱すると、TiAlCN層の靭性が低下するため耐欠損性および耐チッピング性が逆に損なわれるため好ましくない。
ここで、TiAlCN層のAlの平均含有割合XAavg、XBavg、Cの平均含有割合YAavg、YBavgは、以下のように求めた。工具基体の表面に垂直な方向から、工具基体に平行な表面研磨面に対して、電子線マイクロアナライザ(EPMA,Electron−Probe−Micro−Analyser)を用い、電子線を試料表面側から照射し、マッピング分析を行う。前記マッピング分析結果よりそれぞれの結晶粒毎に平均組成を求め、Al含有量が相対的に高い結晶粒群と相対的に低い結晶粒群に分けられ、Al含有量が相対的に高い結晶粒群(結晶粒A群)のAlの平均含有割合XAavg、Cの平均含有割合YAavg、Al含有量が相対的に低い結晶粒群(結晶粒B群)のAlの平均含有割合XBavg、Cの平均含有割合YBavgを求めた。
4.結晶粒A群と結晶粒B群との鑑別
前記に記載の通り、結晶粒A群と結晶粒B群との鑑別を行う。結晶粒内にTiとAlの周期的な組成変化が存在する試料等について、前記手法で鑑別が困難な場合、下記手法を追加で用いることで鑑別する。工具基体の表面に垂直な方向から、工具基体に平行な表面研磨面に対して、透過型電子顕微鏡を用いて、エネルギー分散型X線分析(Energy Dispersive X−ray Spectrometry:EDS)により、マッピング分析を行う。前記マッピング分析結果よりそれぞれの結晶粒毎に平均組成を求めと、Al含有量が相対的に高い結晶粒群と相対的に低い結晶粒群に分けられ、Al含有量が相対的に高い結晶粒群を結晶粒A群とし、Al含有量が相対的に低い結晶粒群を結晶粒B群とする。
5.結晶粒A群の占める面積割合
工具基体に平行な断面において結晶粒A群の占める面積割合は、20〜80面積%であることが好ましい。この範囲とする理由は、20面積%未満であると、相対的に結晶粒B群の面積割合が増えて、結晶粒A群との熱膨張係数差に起因して生じる局所的なひずみの発生が小さくなり、一方、80面積%を超えると相対的に結晶粒A群の面積割合が支配的となり、結晶粒B群との熱膨張係数差に起因して生じる局所的なひずみの発生が小さくなるためである。より好ましい面積割合は、40〜60面積%である。
6.結晶粒A群内および結晶粒B群内の組成変化
(1)結晶粒A群
結晶粒A群の結晶粒内に、TiとAlの周期的な組成変化が、その結晶粒の<001>で表される等価の結晶方位のうちの一つの方位に沿って存在することが好ましい。
ここで、周期的な組成変化とは、結晶粒の<001>で表される等価の結晶方位のうちの一つの方位に沿って、ライン分析を行い、Alの含有割合Xの変化をグラフ化したとき、Xの値がある間隔で繰り返されることを云う。図2に示すように、Xの変化を直線(Xm)で近似する。この直線は、直線と繰り返し変化を示す曲線に囲まれた領域の面積が直線の上側と下側とで等しくなるように引いたものである。この繰り返し変化をこの直線が横切る領域毎に、極大値(Pmax)と極小値(Pmin)を求め、この極大値の平均値と極小値の平均値との差ΔXが0.03〜0.25であることが好ましい。ΔXがこの範囲にあると、十分な硬度や耐欠損性がより一層向上する。
なお、グラフ化に当たり公知の測定ノイズ除去方法(例えば、移動平均法)を行うことはいうまでもない。
(2)結晶粒B郡
結晶粒B群の結晶粒内に、TiとAlの周期的な組成変化が、その結晶粒の<001>で表される等価の結晶方位のうちの一つの方位に沿って存在することが好ましい。
ここで、周期的な組成変化は、結晶粒A群と同じようにして求めるものであって、この極大値の平均値と極小値の平均値との差ΔXが0.03〜0.25であることが好ましい。ΔXがこの範囲にあると、十分な硬度や耐欠損性がより一層向上する。
(3)TiとAlの周期的な組成変化の測定
TiとAlの周期的な組成変化は、透過型電子顕微鏡(TEM:例えば、倍率200000倍)を用いたTiAlCN層の観察にてその存在を確認する。その後、例えば、EDSを用いて、工具基体表面に平行な断面における400nm×400nmの領域について面分析を行い、NaCl型の面心立方構造の立方晶の結晶粒において縞状に色の濃淡の変化が見られたとき(図3を参照)、前記立方晶の結晶粒内に、TiAlCNにおけるTiとAlの周期的な組成変化が存在すると判断する。そして、当該結晶粒について、電子線解析を行うことにより周期的な組成変化がNaCl型の面心立方構造を有する結晶粒の<001>で表される等価の結晶方位のうちの一つの方位に沿って存在することを確認し、その方位に沿った、前記面分析の結果に基づいて濃淡から10周期分程度の組成変化が測定範囲に入る様に倍率を設定した上で、工具基体表面の法線方向に沿ってEDSによる線分析を5周期分の範囲で行い、その変化をグラフにプロットし、Alの含有割合の変化を直線近似した直により画定される領域ごとに、Alの含有割合の変化の極大値と極小値を求め、その差の平均値の差を算出する。
7.下部層
TiAlCN層を含む硬質被覆層は、それだけでも十分な耐チッピング性、耐摩耗性を奏するが、Tiの炭化物層、窒化物層、炭酸化物層および炭窒酸化物層のうちの1層または2層以上のTi化合物層からなり、0.1〜20.0μmの合計平均層厚を有する下部層を設けた場合には、この層が奏する効果と相俟って、より一層優れた耐チッピング性、耐摩耗性が発揮される。ただし、Tiの炭化物層、窒化物層、炭酸化物層および炭窒酸化物層のうちの1層または2層以上のTi化合物層からなる下部層を設ける場合、下部層の合計平均層厚が0.1μm未満では、下部層の効果が十分に奏されず、一方、20.0μmを超えると結晶粒が粗大化し易くなり、チッピングを発生しやすくなる。
8.上部層
TiAlCN層の上部に、酸化アルミニウムを含む層を1.0〜25.0μmの合計平均層厚で上部層を設けると、より一層優れた耐チッピング性、耐摩耗性が発揮されて好ましい。ここで、合計平均層厚が1.0μm未満であると、上部層を設けた効果が十分に発揮されず、一方、25μmを超えると、チッピングが発生しやすくなる。
9.工具基体
工具基体は、この種の工具基体として従来公知の基材であれば、本発明の目的を達成することを阻害するものでない限り、いずれのものも使用可能である。一例を挙げるならば、超硬合金(WC基超硬合金、WCの他、Coを含み、あるいはTi、Ta、Nb等の炭窒化物を添加したものも含むもの等)、サーメット(TiC、TiN、TiCN等を主成分とするもの等)、セラミックス(炭化チタン、炭化珪素、窒化珪素、窒化アルミニウム、酸化アルミニウムなど)、cBN焼結体、またはダイヤモンド焼結体のいずれかであることが好ましい。
10.製造方法
TiAlCN層は、例えば、工具基体もしくは当該工具基体上にある前記下部層の上に、
特定組成の反応ガスを所定条件でCVD装置に供給することにより得ることができる。
すなわち、反応ガスは、NH、N、Hからなるガス群Aと、AlCl、Al(CH、TiCl、N、Hとからなガス群Bを別々にCVD装置に供給して、被成膜体の直前で混合する。
反応ガスの組成は、例えば、
ガス群A:NH:0.8〜1.6%、N:0.0〜2.0%、H:30.0〜35.0%
ガス群B:AlCl:0.5〜0.7%、Al(CH:0.00〜0.08%、
TiCl:0.1〜0.3%、N:0.0〜6.0%、H:残り
(ガス群Aとガス群Bの%は、ガス群Aとガス群Bガスの合計に対する体積%である)
であり、
反応雰囲気圧力:4.5〜5.0kPa
反応雰囲気温度:750〜800℃
である。
具体的なガス群Aとガス群Bの供給は、特開2016−117934号公報、または、特開2017−20111号公報の記載に従い、ガス供給管の回転速度、およびガス供給管の噴出孔角度を所定の値とする。
次に、実施例について説明する。
ここでは、本発明被覆工具の実施例として、工具基体としてWC基超高圧焼結体を用いたインサート切削工具に適用したものについて述べるが、工具基体として、前記したものを用いた場合であっても同様であるし、ドリル、エンドミルに適用した場合も同様である。
原料粉末として、いずれも1〜3μmの平均粒径を有するWC粉末、TiC粉末、TaC粉末、NbC粉末、Cr粉末およびCo粉末を用意し、これら原料粉末を、表1に示される配合組成に配合し、さらにワックスを加えてアセトン中で24時間ボールミル混合し、減圧乾燥した後、98MPaの圧力で所定形状の圧粉体にプレス成形し、この圧粉体を5Paの真空中、1370〜1470℃の範囲内の所定の温度に1時間保持の条件で真空焼結し、焼結後、三菱マテリアル社製JOMU140715ZZER−Mのインサート形状をもったWC基超硬合金製の工具基体A〜Cをそれぞれ製造した。
次に、これら工具基体A〜Cの表面に、特開2016−117934号公報に記載されたCVD装置を用いて、表2に示される条件により、TiAlCN層をCVDにより形成し、表5に示される本発明被覆工具1〜10を得た。
TiAlCN層を成膜するためのガス組成等は概ね以下のとおりである。
ガス群A:NH:0.8〜1.6%、N:0.0〜2.0%、H:30.0〜35.0%
ガス群B:AlCl:0.5〜0.7%、Al(CH:0.00〜0.08%、
TiCl:0.1〜0.3%、N:0.0〜6.0%、H:残り
(ガス群Aとガス群Bの%は、ガス群Aとガス群Bガスの合計に対する体積%である)
反応雰囲気圧力:4.5〜5.0kPa
反応雰囲気温度:750〜800℃
ここで、ガス群Aとガス群Bは、それぞれ、前記特開2016−117934号公報に記載されたCVD装置の、原料ガスA、原料ガスBとして供給され、ガス供給管の回転速度、ガス供給管の噴出孔角度は以下のとおりである。
ガス供給管の回転速度:10〜30rpm
ガス供給管の噴出孔角度:
α:60〜90°
β1およびβ2:90〜120°
γ1およびγ2:180°
なお、本発明被覆工具は4〜10は、表3に記載された成膜条件により、表4に示された下部層および/または上部層を形成した。
また、比較の目的で、工具基体A〜Cの表面に、表2に示される条件によりCVDを行うことにより、表5に示されるTiAlCN層を含む硬質被覆層を蒸着形成して比較被覆工具1〜10を製造した。
なお、比較被覆工具4〜10については、表3に示される形成条件により、表4に示された下部層および/または上部層を形成した。
また、本発明被覆工具1〜10、比較被覆工具1〜10の硬質被覆層の工具基体に垂直な方向の断面を、走査型電子顕微鏡(倍率5000倍)を用いて測定し、観察視野内の5点の層厚を測って平均して平均層厚を求めたところ、いずれも表4および表5に示される平均層厚を示した。
前記本発明被覆工具1〜10、比較被覆工具1〜10の硬質被覆層について、前述した方法を用いて、平均Al含有割合XAavg、XBavgと平均C含有割合YAavg、YBavgを算出した。また、TiとAlの組成変化の<001>で表される等価の方位に沿った周期の有無とAl含有割合の極大値の平均値と極小値の平均との差ΔX、ΔXを求めた。
これらの結果を表5にまとめた。なお、表5には記載していないが、発明被覆工具1〜10、比較被覆工具1〜10のいずれも、NaCl型面心立方構造の面積率は60%以上であることを確認している。
Figure 2020151794
Figure 2020151794
Figure 2020151794
Figure 2020151794
Figure 2020151794
続いて、前記本発明被覆工具1〜10および比較被覆工具1〜10について、いずれもカッタ径63mmの工具鋼製カッタ先端部に固定治具にてクランプした状態で、ダクタイル鋳鉄の湿式正面フライス切削加工試験を実施し、切刃の逃げ面摩耗幅を測定した。
切削試験は以下のとおりである。
切削試験:湿式正面フライス切削加工
被削材:ダクタイル鋳鉄FCD450:幅 45mm
切削速度: 200m/min
切り込み: 1.0mm
一刃送り量: 1.0mm/刃
切削時間: 7分
(通常の切削速度: 150m/min)
表6に切削試験の結果を示す。なお、比較被覆工具1〜10については、チッピング発生が原因で寿命に至ったため、寿命に至るまでの時間を示す。
Figure 2020151794
表6に示される結果から、本発明被覆工具1〜10は、いずれも硬質被覆層が優れた耐チッピング性、耐剥離性を有しているため、ダクタイル鋳鉄等の高速高送り切削加工に用いた場合であってもチッピングの発生がなく、長期にわたって優れた耐摩耗性を発揮する。これに対して、本発明の被覆工具に規定される事項を満足していない比較被覆工具1〜10は、ダクタイル鋳鉄等の高速高送り切削加工に用いた場合チッピングが発生し、短時間で使用寿命に至っている。
前述のように、本発明の被覆工具は、ダクタイル鋳鉄の高速高送り切削加工の被覆工具として用いることができ、しかも、長期にわたって優れた耐チッピング性、耐剥離性を発揮するものであるから、切削装置の高性能化並びに切削加工の省力化及び省エネルギー化、さらには低コスト化に十分に満足できる対応が可能である。

Claims (5)

  1. 工具基体の表面に、硬質被覆層が設けられた表面被覆切削工具であって、
    (a)前記硬質被覆層は、平均層厚1.0〜20.0μmのTiとAlの複合窒化物または複合炭窒化物層を少なくとも含み、
    (b)前記TiとAlの複合窒化物層または複合炭窒化物層は、NaCl型の面心立方構造の結晶粒を少なくとも含み、
    (c)前記工具基体の表面に垂直な方向から、前記工具基体に平行な切断面について解析した場合、TiとAlの組成が異なる前記NaCl型の面心立法構造の結晶粒が複数存在し、ぞれぞれを、結晶粒A群と結晶粒B群と区分するとき、
    前記結晶粒A群を組成式:(Ti1−XAAlXA)(CYA1−YA)で表すとき、AlのTiとAlの合量に占める含有割合Xの平均XAavg、および、CのCとNの合量に占める含有割合Yの平均YAavg(但し、XAavg、YAavgはいずれも原子比)が、それぞれ、0.75≦XAavg≦0.95、0.0000≦YAavg≦0.0150を満足し、
    前記結晶粒B群を組成式:(Ti1−XBAlXB)(CYB1−YB)で表すとき、AlのTiとAlの合量に占める含有割合Xの平均XBavg、および、CのCとNの合量に占める含有割合Yの平均YBavg(但し、XBavg、YBavgはいずれも原子比)が、0.70≦XBavg≦0.90、0.05≦XAavg−XBavg≦0.25、0.0000≦YBavg≦0.0150を満足し、
    (d)前記切断面において、前記結晶粒A群の占める面積割合が20〜80%である、
    ことを特徴とする表面被覆切削工具。
  2. 前記結晶粒A群の結晶粒内に、TiとAlの周期的な組成変化が該結晶粒の<001>で表される等価の結晶方位のうちの一つの方位に沿って存在し、周期的に変化するXの極大値の平均値と極小値の平均値との差ΔXが0.03〜0.25であることを特徴とする請求項1に記載の表面被覆切削工具。
  3. 前記結晶粒B群の結晶粒内に、TiとAlの周期的な組成変化が該結晶粒の<001>で表される等価の結晶方位のうちの一つの方位に沿って存在し、周期的に変化するXの極大値の平均値と極小値の平均値との差ΔXが0.03〜0.25であることを特徴とする請求項1または2に記載の表面被覆切削工具。
  4. 前記工具基体と前記TiとAlの複合窒化物または複合炭窒化物層との間にTiの炭化物層、窒化物層、炭窒化物層、炭酸化物層および炭窒酸化物層のうちの1層または2層以上からなり、0.1〜20μmの合計平均層厚を有する下部層が存在することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の表面被覆切削工具。
  5. 前記複合窒化物または複合炭窒化物層の上部に、少なくとも酸化アルミニウム層を含む上部層が1〜25μmの合計平均層厚で存在することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の表面被覆切削工具。
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