JP4565812B2 - 非水電解質二次電池 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は正極合剤が正極集電体に塗布された帯状正極と、負極合剤が負極集電体に塗布された帯状負極が帯状セパレータを介して相対向して渦巻状に巻回された渦巻状電極群とゲル状非水電解質を外装体内に備えた非水電解質二次電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、携帯電話、ノートパソコン、小型ビデオカメラ等の携帯用電子・通信機器等に用いられる電池として、リチウムイオンの吸蔵・放出が可能な正極活物質(例えば、コバルト酸リチウム(LiCoO2)、マンガン酸リチウム(LiMn2O4)等のリチウム含有遷移金属酸化物)と、リチウムイオンの吸蔵・放出が可能な負極活物質(例えば、黒鉛、炭素等)とを備えた非水電解質二次電池が、小型軽量でかつ高容量な電池として広く使用されるようになった。
【0003】
この種の非水電解質二次電池は以下のようにして作製されるのが一般的である。即ち、まず、正極集電体に正極活物質を含有する正極合剤を塗布して帯状正極を作製するとともに、負極集電体に負極活物質を含有する負極合剤を塗布して帯状負極を作製する。この後、得られた帯状正極と帯状負極を帯状セパレータを介して相対向させて積層した後、これらを渦巻状に巻回して横断面形状が真円形状の渦巻状電極群とする。ついで、これを円筒状外装缶に収容したり、あるいは真円形状の渦巻状電極群を加圧成形して横断面形状が扁平な楕円形状とし、これを角筒状外装缶あるいはフィルム状外装体に収容して、非水電解液を注液して非水電解質二次電池としている。
【0004】
ところで、正極と負極との間を隔離するセパレータの機能としては、基本的には、正極と負極の直接短絡を防止する短絡防止機能を有するとともに、その微多孔構造によりイオンを透過させて電池反応が可能となるようなイオン透過機能を有することが必要条件となる。しかしながら、この種の非水電解質二次電池に用いられるセパレータとしては、安全性向上の観点からシャットダウン機能(SD機能)を有するものが採用されるようになってきている。このSD機能とは、誤接続などにより異常電流が発生した場合に、電池内部温度の上昇に伴ってセパレータ材料の合成樹脂が溶融変形して微多孔を塞ぎ、電池反応を停止させる機能を有することを意味する。
【0005】
ところが、電池の異常発熱時においては、セパレータの収縮に起因する内部短絡が発生して安全性が低下する恐れを生じた。このため、セパレータの収縮を抑制するために、高分子量のポリエチレンを用いたり、あるいはポリプロピレンを混合する手段が講じられるようになった。しかしながら、シャットダウン温度が上昇して電流遮断機能が作動しにくくなるという問題を生じた。また、幅方向に一軸延伸したセパレータを用いると、幅方向の収縮を抑えることができるが、延伸方向に裂けやすいという問題を生じた。
【0006】
そこで、渦巻状電極群の最外周の上部に短絡防止テープを貼着することにより、セパレータが熱収縮しても電極と外装缶とが接触する内部短絡を防止するようにした電池が特許文献1(特開2000−251866号公報)にて提案されるようになった。しかしながら、この特許文献1にて提案された電池においては、渦巻状電極群の内周部に配置されたセパレータの収縮は防止することができないため、収縮したセパレータに対向する両電極が電極群の上部あるいは下部で短絡するという問題を生じた。
【0007】
このため、特許文献2(特開2003−22794号公報)にて、高温時のセパレータの収縮による内部短絡を防止するために、セパレータの上下端を溶着することが提案されるようになった。これによれば、リード部付近のセパレータを溶着したり、電池が高温に曝されたときにセパレータ同士を溶着させて電極を包み込むような構造としている。この結果、高温時のセパレータの収縮による内部短絡を防止することが可能となる。
【特許文献1】
特開2000−251866号公報
【特許文献2】
特開2003−22794号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上述した特開2003−22794号公報にて提案された非水電解質二次電池においては、非水電解質として液状の電解質(電解液)を用いるようにしている。このため、電池温度が上昇してセパレータの熱収縮が起こり始めると、渦巻状電極群上下の溶着部間のテンションが大きくなり、電極群内部のセパレータに皺が発生するようになる。この結果、僅かな刺激で破膜したり、裂けが生じるようになって、破膜や裂けが生じた部分で短絡が発生するという問題を生じた。
【0009】
また、上述した特開2003−22794号公報で提案されるように、セパレータ同士を熱溶着させる方法においては、電極から発生するガスなどの影響により僅かでも電極群が変形すると、実質的な溶着効果が得られなくなるという問題を生じた。また、電極を包み込むような形で均一に溶着させることは不可能に近いことが明らかになった。
【0010】
さらに、この種の非水電解質二次電池の高エネルギー密度化の要求に対して、ラミネートフィルムを外装材に用いたラミネート型電池の開発が近年においては進められるようになった。ところが、このようなラミネート型電池においては、アルミニウムなどの金属製外装缶を用いた場合よりも押圧力が極めて小さくなるため、電極群の変形が起こりやすいという問題を生じた。特に、電池が高温に曝された場合においては、多量のガスが発生するため、電極群の変形・歪みは金属製外装缶を用いた場合よりも著しいこととなる。このため、上述のように電極群を構成しても内部短絡に対しては、殆ど効果が得られないという問題を生じた。
【0011】
そこで、本発明は上記問題点を解消するためになされたものであって、電池が異常に発熱してセパレータが収縮しても、電極群の上下端部での内部短絡の発生を抑制して、電池が破裂、発火に至らないように安全性が向上した非水電解質二次電池を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明の非水電解質二次電池は、帯状正極と帯状負極が帯状セパレータを介して相対向して渦巻状に巻回された扁平状電極群とゲル状非水電解質を外装体内に備えるとともに、帯状セパレータは扁平状電極群の各電極より上下方向に突出して配設されており、突出した部分の少なくとも一方の一部はセパレータ同士が溶着あるいは接着により一体的に接合されているとともに、接合部分の幅寸法は扁平状電極群の幅寸法の5%以上で、95%以下であることを特徴とする。
【0013】
このように、外装体内にゲル状非水電解質を備え、かつ扁平状電極群の各電極より上下方向に突出してセパレータが配設されているとともに、突出した部分の少なくとも一方の一部はセパレータ同士が溶着あるいは接着により一体的に接合されていると、高温放置してセパレータの熱収縮が起こり始めても、ゲル状電解質の接着力により、セパレータと各電極との密着性が向上することとなる。このため、セパレータの熱収縮が抑制され、内部短絡が発生するのを減少させることが可能となる。この場合、扁平状電極群の幅方向の中央部近傍は両端部近傍よりも構成圧が低いため、セパレータの収縮が起こりやすくなる。このため、接合部は扁平状電極群の幅方向の中央部近傍に形成するのが望ましい。
【0014】
なお、接合部の幅寸法が短かすぎると、内部短絡を防止する効果が不十分であり、接合部の幅寸法が長すぎると、発生したガスが電極群内に滞留するようになって、電極群の変形・歪みが大きくなって、逆に内部短絡が発生するようになる。このため、ゲル状電解質が充填された場合、セパレータの上部あるいは下部もしくは上下部の一部に形成する接合部の幅寸法は、扁平状電極群の幅寸法に対して5%以上で、95%以下にするのが望ましい。
【0015】
【発明の実施の形態】
ついで、本発明の実施の形態を以下の図1及び図2に基づいて説明するが、本発明はこの実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。なお、図1は本発明の非水電解液二次電池に用いられる電極群を模式的に示す図であり、図1(a)は上面図であり、図1(b)は正面図であり、図1(c)は下面図である。図2は本発明の非水電解液二次電池を模式的に示す図であり、図2(a)は斜視図であり、図2(b)は図2(a)のA−A断面を示す断面図である。
【0016】
1.正極の作製
正極活物質としてのコバルト酸リチウム(LiCoO2)粉末と、導電剤としてのアセチレンブラックあるいはグラファイトなどの炭素系粉末(例えば、5質量%)を混合して正極合剤を調製した。この正極合剤と、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)からなる結着剤(例えば、3質量%)をN−メチル−2−ピロリドン(NMP)からなる有機溶剤に溶解した結着剤溶液とを混練して、正極活物質スラリーあるいは正極活物質ペーストを調製した。
【0017】
ついで、アルミニウム箔(例えば、厚みが15μmで、幅が54.0mmのもの)からなる正極集電体を用意し、上述のように作製した正極活物質スラリーあるいは正極活物質ペーストを正極集電体の両面に均一に塗布して、正極合剤層を形成した。ここで、スラリーの場合はダイコータあるいはドクターブレードを用いて塗布し、ペーストの場合はローラコーティング法により塗布した。この後、乾燥機中を通過させて、スラリーあるいはペースト作製時に必要であった有機溶剤(NMP)を除去して乾燥させた。乾燥後、ロールプレス機により厚みが0.17mmになるまで圧延し、所定の形状に切断して帯状正極11を作製した。なお、帯状正極11においては、巻回時に最外周に配置される部分には正極スラリーを塗布せず、アルミニウム製集電タブを超音波溶着して正極リード11aを形成している。
【0018】
なお、正極活物質としては上述したLiCoO2以外に、LixMO2(但し、MはCo,Ni,Mnの少なくとも1種で、0.45≦x≦1.20)で表されるリチウム遷移金属複合酸化物、例えば、LiNiO2,LiNiyCo1-yO2(但し、0.01≦y≦0.99),Li0.5MnO2,LiMnO2などの1種単独、もしくは複数種を混合して用いるようにしてもよい。
【0019】
2.負極の作製
負極活物質としての天然黒鉛粉末と、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)からなる結着剤(例えば、3質量%)をN−メチル−2−ピロリドン(NMP)からなる有機溶剤に溶解した結着剤溶液とを混練して、負極活物質スラリーあるいは負極活物質ペーストを調製した。ついで、銅箔(例えば、厚みが12μmで、幅が56.0mmのもの)からなる負極集電体を用意し、上述のように作製した負極活物質スラリーあるいは負極活物質ペーストを負極集電体の両面に均一に塗布して、負極合剤層を形成した。
【0020】
ここで、スラリーの場合はダイコータあるいはドクターブレードを用いて塗布し、ペーストの場合はローラコーティング法により塗布した。この後、乾燥機中を通過させて、スラリーあるいはペースト作製時に必要であった有機溶剤(NMP)を除去して乾燥させた。乾燥後、ロールプレス機により厚みが0.14mmになるまで圧延し、所定の形状に切断して帯状負極12を作製した。なお、帯状負極12においては、巻回時に最外周に配置される部分には負極スラリーを塗布せず、ニッケル製集電タブを超音波溶着して負極リード12aを形成している。
【0021】
なお、負極活物質としては上述した天然黒鉛以外に、リチウムイオンを吸蔵・脱離し得るカーボン系材料、例えば、人造黒鉛、カーボンブラック、コークス、ガラス状炭素、炭素繊維、またはこれらの焼成体等を用いてもよいし、金属リチウム、リチウム−アルミニウム合金、リチウム−鉛合金、リチウム−錫合金等のリチウム合金、SnO2、SnO、TiO2、Nb2O3等の電位が正極活物質に比べて卑な金属酸化物を用いてもよい。
【0022】
3.電極群の作製
ついで、上述のようにして作製した帯状正極11と帯状負極12とを用意し、これらの間にポリエチレン製微多孔膜(厚みが0.025mmで、幅が59.0mmのもの)からなる帯状セパレータ13を介在させ、かつ、これらの幅方向の中心線が一致するように重ね合わせた。この後、巻取機によりこれらを渦巻状に巻回した後、最外周をテープ止めして渦巻状電極群とした。ついで、これを横断面形状が扁平な楕円状になるように押しつぶして扁平状電極群10aを作製した。
【0023】
ここで、帯状セパレータ13の幅方向(図1(b)においては高さ方向となる)の端部は、負極12の上端部よりも1.5mmだけ上方に突出した上突出部13aが形成され、下端部よりも1.5mmだけ下方に突出した下突出部13bが形成されることとなる。ついで、この上突出部13aの幅方向中央部のx部分(扁平状電極群10aの幅Xに対して60%の部分)を互いに熱溶着して一体的に接合するとともに、下突出部13bの幅方向中央部のy部分(扁平状電極群10aの幅Xに対して60%の部分)を互いに熱溶着して一体的に接合して、電極群a1とした。また、突出部13a,13bを熱溶着しなくてそのままのものを電極群x1とした。なお、熱溶着により一体化する代わりに、電池反応に悪影響を及ぼさない接着剤(例えば、エポキシ系接着剤、アクリル系接着剤など)を用いて一体的に接合するようにしてよい。
【0024】
4.非水電解液二次電池の作製
まず、エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)を3:7の容積比で混合した混合溶媒に、電解質としてLiPF6を1モル/リットルの割合で溶解させて非水電解液を調製し、これを電解液e1とした。また、このように調製した電解液e1に、熱重合性モノマー材料としてのテトラエチレングリコールジアクリレート3.0質量%とトリメチロールプロパントリアクリレート1.0質量%を添加するとともに、重合開始剤としてのt−ヘキシルパーオキシピバレート0.3質量%を添加してゲル用非水電解液を調製し、これを電解液e2とした。
【0025】
ついで、扁平状電極群10a(a1,x1)をアルミニウムラミネートフィルムからなる外装体14内に収容し、これをドライボックス内に配置した後、上述のように調製した電解液e1,e2を外装体14内に注液した。ついで、ドライボックス内を真空ポンプで吸引して、減圧の雰囲気にした。これにより、外装体14内に注液された電解液は電極群内に含浸されることとなる。この後、外装体14の開口部を仮封止して、ドライボックスから取り出した。ついで、電解液e2を用いたものにおいては、加熱装置内に配置した後、加熱装置内を60℃の温度に保持して5時間加熱した。これにより、熱重合性のモノマー材料を重合させて、電解液をゲル化により硬化させた。
【0026】
ついで、初回の充電を行って発生したガスを飛散させた後、外装体14の開口部を本封止することにより、非水電解質電池A1,X1,Y1,Y2をそれぞれ作製した。このとき、正極11から延出した正極リード11aおよび負極12から延出した負極リード12aが外装体14の上部開口部に液密に封止されるように本封止した。ここで、電極群a1を用いるとともにゲル用非水電解液e2を用いたものを電池A1とした。同様に、電極群x1を用いるとともにゲル用非水電解液e2を用いたものを電池X1とし、電極群a1を用いるとともに非水電解液e1を用いたものを電池Y1とし、電極群x1を用いるとともに非水電解液e1を用いたものを電池Y2とした。
【0027】
5.高温放置試験
ついで、これらの各電池A1,X1,Y1,Y2をそれぞれ50個ずつ用いて、室温(約25℃)で、1ItmAの放電電流で電池電圧が2.75Vになるまで放電させた。この後、室温(約25℃)で、1ItmAの充電電流で電池電圧が4.2Vになるまで定電流で充電した後、4.2Vに到達した後は電流値が30mA以下になるまで定電圧で充電を行った。ついで、このような充電状態の各電池A1,X1,Y1,Y2を5℃/分の昇温速度で150℃まで昇温させた後、150℃の温度を3時間保持させるという高温放置試験を行った。その後、これらの各電池A1,X1,Y1,Y2の電圧を測定して、試験前後の電圧差が0.5V以上(試験後の電池電圧が3.7V以下)のものを内部短絡が発生した電池と判定すると、下記の表1に示すような結果が得られた。
【0028】
【表1】
【0029】
上記表1の結果から明らかなように、セパレータの上下に溶着部を形成しなかった電極群x1を用い、かつ電解液e1を用いた電池Y2においては、全ての電池に内部短絡が発生していたことが分かる。また、セパレータの上下に溶着部13c,13dを形成した電極群a1を用いても、電解液e1を用いた電池Y1においては、内部短絡の発生個数が多いことが分かる。これは、溶着部が未形成の電極群x1に電解液e1が充填された電池Y2を充電状態で高温放置すると、高温によりセパレータの熱収縮が発生して、電極群x1の上下端部での短絡が発生したためと考えられる。
【0030】
一方、セパレータ13の上下に溶着部13c,13dが形成された電極群a1に電解液e1が充填された電池Y1を充電状態で高温放置して、セパレータ13の熱収縮が起こり始めると、電極群上下の溶着部間でのセパレータ13のテンションが大きくなって、電極群の内部のセパレータ13に皺が発生するようになる。この結果、僅かな刺激で破膜したり、裂けが生じるようになって、破膜や裂けが生じた部分で短絡が発生したと考えられる。
【0031】
これらに対して、セパレータ13の上下に溶着部を形成しなかった電極群x1を用いても、ゲル状電解質(e2)を用いてゲル化された電池X1においては、セパレータ13の上下に溶着部13c,13dを形成した電極群a1に電解液e1が充填された電池Y1よりも内部短絡の発生個数が減少していることが分かる。さらに、セパレータ13の上下に溶着部13c,13dを形成した電極群a1を用い、かつゲル状電解質(e2)を用いた電池A1においては、内部短絡が発生していないことが分かる。
【0032】
これは、溶着部が未形成の電極群x1にゲル状電解質(e2)が充填された電池X1においては、ゲル状電解質(e2)の接着力により、セパレータ13と各電極11,12との密着性が向上し、セパレータ13の熱収縮が抑制されたからであると考えられる。しかしながら、ゲル状電解質によるセパレータ13の熱収縮の抑制だけでは、液状電解液を使用した電池Y1,Y2よりは内部短絡の発生を減少できているが、それでも十分であるとは言えない。
【0033】
一方、セパレータ13の上下に溶着部13c,13dが形成された電極群a1にゲル状電解質(e2)が充填された電池A1においては、ゲル状電解質(e2)の接着力によるセパレータ13と各電極11,12とが密着することによってセパレータの熱収縮が抑制されると共に、セパレータ13の上部13aおよび下部13bにそれぞれ溶着部13c,13dが形成されているので、高温放置しても、電極群a1上下の溶着部間でのセパレータ13のテンションが大きくなり、電極群a1の内部のセパレータ13に皺が発生することがなく、内部短絡が発生しなかったと考えられる。
【0034】
6.セパレータの溶着幅の検討
ついで、セパレータ13の溶着部13c,13dの溶着幅x,yについて検討を行った。そこで、上突出部13aに溶着部を形成することなく、下突出部13bに溶着幅yが扁平状電極群10aの幅Xに対して5%となるように溶着部13dを形成した電極群を作製し、これを電極群a2とした。また、上突出部13aに溶着幅xが扁平状電極群10aの幅Xに対して5%となるように溶着部13cを形成し、下突出部13bに溶着部を形成することなく電極群を作製し、これを電極群a3とした。また、上突出部13aに溶着幅xが扁平状電極群10aの幅Xに対して40%となるように溶着部13cを形成し、下突出部13bに溶着部を形成することなく電極群を作製し、これを電極群a4とした。
【0035】
また、上突出部13aに溶着幅xが扁平状電極群10aの幅Xに対して60%となるように溶着部13cを形成し、下突出部13bに溶着部を形成することなく電極群を作製し、これを電極群a5とした。また、上突出部13aに溶着幅xが扁平状電極群10aの幅Xに対して95%となるように溶着部13cを形成し、下突出部13bに溶着部を形成することなく電極群を作製し、これを電極群a6とした。また、上突出部13aに溶着幅xが扁平状電極群10aの幅Xに対して95%となるように溶着部13cを形成し、かつ下突出部13bに溶着幅yが扁平状電極群10aの幅Xに対して60%となるように溶着部13dを形成して電極群を作製し、これを電極群a7とした。
【0036】
さらに、上突出部13aに溶着幅xが扁平状電極群10aの幅Xに対して100%となるように溶着部13cを形成し、下突出部13bに溶着部を形成することなく電極群を作製し、これを電極群x2とした。また、上突出部13aに溶着幅xが扁平状電極群10aの幅Xに対して100%となるように溶着部13cを形成し、かつ下突出部13bに溶着幅yが扁平状電極群10aの幅Xに対して100%となるように溶着部13dを形成して電極群を作製し、これを電極群x3とした。
【0037】
ついで、これらの電極群a2〜a7およびx2,x3を用いるとともに、上述のように調製したゲル用非水電解液e2を用いて、上述と同様にして非水電解質電池A2〜A7,X2,X3をそれぞれ作製した。なお、電極群a2を用いたものを電池A2とし、電極群a3を用いたものを電池A3とし、電極群a4を用いたものを電池A4とし、電極群a5を用いたものを電池A5とし、電極群a6を用いたものを電池A6とし、電極群a7を用いたものを電池A7とした。また、電極群x2を用いたものを電池X2とし、電極群x3を用いたものを電池X3とした。
【0038】
ついで、これらの各電池A2〜A7,X2,X3をそれぞれ50個ずつ用いて、上述と同様にして高温放置試験を行った後、これらの各電池A2〜A7,X2,X3の電圧を測定して、試験前後の電圧差が0.5V以上(試験後の電池電圧が3.7V以下)のものを内部短絡が発生した電池と判定すると、下記の表2に示すような結果が得られた。なお、表2には上述した電池A1と電池X1の結果も併せて示している。
【0039】
【表2】
【0040】
上記表2の結果から明らかなように、電池X1,X2,X3は内部短絡の発生個数が多いことが分かる。これは、ゲル状電解質が充填された場合、セパレータ13の上下の全幅に亘って溶着部13c,13dが形成された電極群x3を用いた電池X3を充電状態で高温放置すると、正極11から発生したガスが電極群x3内から放散しにくくなって、電極群x3内に滞留するようになる。この結果、電極群x3に変形を生じたり、歪みが生じるようになって内部短絡が発生しやすくなったと考えられる。また、セパレータ13の上部の全幅に亘って溶着部13cが形成された電極群x2を用いた電池X2を充電状態で高温放置しても、同様の理由で内部短絡が発生しやすくなったと考えられる。
【0041】
一方、電池A1〜A7は内部短絡の発生個数が激減していることが分かる。これは、ゲル状電解質が充填された場合、セパレータ13の上部あるいは下部もしくは上下部の一部に溶着部13c(13d)が形成されていると、充電状態で高温放置してセパレータ13の熱収縮が起こり始めても、ゲル状電解質(e2)の接着力により、セパレータ13と各電極11,12との密着性が向上しているため、セパレータ13の熱収縮が抑制され、内部短絡の発生個数が減少することとなる。この場合、電極群の幅方向の中央部近傍は両端部近傍よりも構成圧が低いため、セパレータ13の収縮が起こりやすくなる。このため、溶着部13c(13d)は電極群の幅方向の中央部近傍に形成するのが望ましい。
【0042】
これらのことから、ゲル状電解質が充填された場合、セパレータ13の上部あるいは下部もしくは上下部の一部に形成する溶着部13c(13d)の幅寸法x,yは、電極群の幅寸法Xに対して5%以上で、95%以下にするのが望ましいということができる。
【0043】
【発明の効果】
上述したように、本発明の非水電解質二次電池10においては、外装体14内にゲル状非水電解質を備え、かつ渦巻状電極群の各電極11,12より上下方向に突出してセパレータ13が配設されているとともに、突出した部分13a(13b)の少なくとも一方の一部はセパレータ13a(13b)同士が溶着により一体的に接合されている。このため、高温放置してセパレータ13に熱収縮が発生しても、ゲル状電解質の接着力により、セパレータ13と各電極11,12との密着性が向上しているため、セパレータ13の熱収縮が抑制され、内部短絡の発生個数が減少することとなる。
【0044】
なお、上述した実施の形態においては、非水電解質の有機溶媒として、エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)との混合溶媒を用いる例について説明したが、有機溶媒としては、カーボネート類、ラクトン類、エーテル類、ケトン類、ニトリル類、アミド類、スルホン系化合物、エステル類、芳香族炭化水素などを用いるようにしてもよいし、これら溶媒の2種類以上を混合して用いるようにしてもよい。これらの中でカーボネート類、ラクトン類、エーテル類、ケトン類、ニトリル類、エステル類などが好ましく、好適にはカーポネート類が望ましい。
【0045】
具体例としては、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、γ−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、アニソール、1,4−ジオキサン、4−メチルー2−ペンタノン、シクロヘキサノン、アセトニトリル、プロピオニトリル、ジエチルカーボネート、ジメチルホルムアミド、スルホラン、蟻酸メチル、蟻酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピオン酸エチルなどを挙げることができ、充放電効率を高める点からプロピレンカーボネート、エチレンカーボネートが好適である。
【0046】
また、上述した実施の形態においては、電解質として六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を用いる例について説明したが、これ以外の電解質としては、過塩素酸リチウム(LiClO4)、ホウフッ化リチウム(LiBF4)、六フッ化珪酸リチウム(LiAsF6)、トリフルオロメチルスルホン酸リチウム(LiCF3SO3)、ビストリフルオロメチルスルホニルイミドリチウム(LiN(CF3SO2)2)などのリチウム塩を用いるのが望ましい。中でも、LiPF6、LiBF4を用いるのが好ましく、有機溶媒に対する溶解量としては、0.5〜2.0モル/リットルとするのが好ましい。
【0047】
また、電極界面の被膜安定化、低被膜抵抗化などの目的で、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、トリフルオロメチルビニレンカーボネート、トリフルオロプロピレンカーボネート、無水マレイン酸、無水コハク酸、カテコール、レゾルシンなどを上記の如き電解液に添加するようにしてもよい。
【0048】
さらに、上述した実施の形態においては、ゲル用非水電解液を調製するに際して、熱重合性モノマー材料としてテトラエチレングリコールジアクリレートとトリメチロールプロパントリアクリレートを用い、重合開始剤としてt−ヘキシルパーオキシピバレートを用いる例について説明したが、これに限られることはない。例えば、機械的強度の高いPVdFなどの物理架橋ポリマーを用いても良く、PEO、PPO系のポリエーテル系、ポリエステル系、ポリカーボネート系などの高いイオン導電性を兼ね備える化学架橋ポリマーを用いても良い。
【0049】
また、モノマーを重合させる際には、重合開始剤を加えることなく電子線やγ線などの放射線を照射する方法、光増感剤などの紫外線重合開始剤を添加して紫外線を照射する方法、酸化還元系の開始剤を用いたレドックス系常温硬化法などが適用できるが、特別な装置を必要としない点で熱硬化法が好ましい。例えば、熱重合開始剤として有機過酸化物などを用いて恒温槽中で保持し、硬化することができる。電解液の質量に対するモノマーの量は1〜30質量%の範囲で添加することが好ましい。少なすぎる場合にはポリマーマトリックスの架橋密度が減少し、機械的強度が不足する結果、セパレータと電極との密着強度が得にくくなる。一方、多すぎる場合にはイオン伝導度が低下するため、急速充放電特性が低下してしまう。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の非水電解液二次電池に用いられる電極群を模式的に示す図であり、図1(a)は上面図であり、図1(b)は正面図であり、図1(c)は下面図である。
【図2】 本発明の非水電解液二次電池を模式的に示す図であり、図2(a)は斜視図であり、図2(b)は図2(a)のA−A断面を示す断面図である。
【符号の説明】
10…非水電解液二次電池、11…正極、11a…正極リード、12…負極、12a…負極リード、13…セパレータ、13a…上突出部、13b…下突出部、13c…上溶着部、13d…下溶着部、14…外装体
Claims (2)
- 帯状正極と帯状負極が帯状セパレータを介して相対向して渦巻状に巻回された扁平状電極群とゲル状非水電解質を外装体内に備えた非水電解質二次電池であって、
前記帯状セパレータは前記扁平状電極群の各電極より上下方向に突出して配設されており、
前記突出した部分の少なくとも一方の一部はセパレータ同士が溶着あるいは接着により一体的に接合されているとともに、接合部分の幅寸法は前記扁平状電極群の幅寸法の5%以上で、95%以下であることを特徴とする非水電解質二次電池。 - 前記外装体はフィルム状外装体であることを特徴とする請求項1に記載の非水電解質二次電池。
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