JP4562992B2 - イリジウム化合物触媒等を用いた有機化合物の製造法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、周期表9族元素化合物触媒を用いた有機化合物の製造法、より詳細には、周期表9族元素化合物触媒を用いて、α位に水素原子を有するカルボニル化合物と第1級又は第2級アルコールから、前記α位において炭素鎖が伸長したカルボニル化合物又はその還元体であるアルコールを製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ケトン等のカルボニル化合物のα−アルキル化反応は、炭素−炭素結合形成反応として有機合成上最も基本的な反応の1つである。しかし、アルコールを用いてカルボニル化合物のα−アルキル化を行った例は極めて少ない(非特許文献1参照)。
【0003】
【非特許文献1】
Tetrahedron Lett., 43,7987(2002)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、アルコールを用いたカルボニル化合物のα−アルキル化により炭素鎖の伸長したカルボニル化合物又はその還元体であるアルコールを温和な条件下で簡易に製造できる方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記目的を達成するため鋭意検討した結果、特定の触媒を用いてα位に水素原子を有するカルボニル化合物と第1級又は第2級アルコールとを反応させると、前記カルボニル化合物のα位がアルキル化され、炭素鎖の伸長したカルボニル化合物及び/又は該カルボニル化合物の還元体であるアルコールが、温和な条件下で簡易に得られることを見いだし、本発明を完成した。
【0006】
すなわち、本発明は、シクロペンテン、ジシクロペンタジエン、シクロオクテン、1,5−シクロオクタジエン、及びペンタメチルシクロペンタジエンからなる群から選択される少なくとも1種の不飽和炭化水素を配位子として有する有機イリジウム錯体と塩基の存在下、下記式(1)
【化4】
(式中、R1 は水素原子を示す。R 2 は、水素原子、又は、C 1-10 アルキル基、C 6-10 芳香族炭化水素基、及びC 7-14 アラルキル基からなる群から選択されるいずれか1種の基、Yは、水素原子、又は、C 1-10 アルキル基、C 6-10 芳香族炭化水素基、C 7-14 アラルキル基、及びC 1-6 アルコキシ基からなる群から選択されるいずれか1種の基を示す。R1、R2及びYのうち少なくとも2つが互いに結合して隣接する1又は2個の炭素原子と共に環を形成していてもよい)
で表される、鎖状ケトン、5〜15員の環状ケトン、アルデヒド、または炭素数2〜10の脂肪族カルボン酸のエステルであるカルボニル化合物と、下記式(2)
【化5】
(式中、R 3 は水素原子を示す。R 4 は、水素原子、又は、C 1-10 アルキル基、C 6-10 芳香族炭化水素基、及びC 7-14 アラルキル基からなる群から選択されるいずれか1種の基を示す。)
で表される、炭素数1〜15の飽和脂肪族第1級アルコール、または芳香族第1級アルコールであるアルコールとを反応させて、下記式(3a)及び/又は(3b)
【化6】
(式中、R1、R2、R3、R4、Yは前記に同じ)
で表される炭素鎖が伸長したカルボニル化合物及び/又はその還元体であるアルコールを生成させることを特徴とする有機化合物の製造法を提供する。
【0007】
式(1)で表されるカルボニル化合物として、ケトン、アルデヒド、エステル、ラクトン、アミド、ラクタムなどが挙げられる。
【0008】
なお、本明細書において、「カルボニル化合物」は、ケトン及びアルデヒドのほか、エステル、ラクトン、アミド、ラクタム、カルボン酸、カルボン酸塩等の−(C=O)−基を有する広範な化合物を含む意味に用いられる。また、「有機基」は、炭素原子含有基だけでなく、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、メルカプト基、アミノ基、ニトロ基、スルホン酸基などの非金属原子含有基を含む広い意味に用いられる。また、本明細書では、周期表9族元素化合物と塩基の存在下、前記式(1)で表されるカルボニル化合物と、前記式(2)で表されるアルコールとを反応させて、前記式(3a)及び/又は(3b)で表される炭素鎖が伸長したカルボニル化合物及び/又はその還元体であるアルコールを生成させることを特徴とする有機化合物の製造法についても説明する。
【0009】
【発明の実施の形態】
[周期表9族元素化合物]
本発明では周期表9族元素化合物(金属単体を含む)を触媒として用いる。周期表9族元素(金属)には、コバルト、ロジウム、イリジウムが含まれる。周期表9族元素化合物には、周期表9族元素を含む広範な無機及び有機化合物が含まれる。無機化合物としては、例えば、金属単体、酸化物、硫化物、水酸化物、ハロゲン化物、硫酸塩、周期表9族元素を含むオキソ酸又はその塩、無機錯体などが挙げられる。有機化合物としては、例えば、シアン化物、有機酸塩(酢酸塩など)、有機錯体などが挙げられる。これらの中でも有機錯体などの有機化合物が好ましい。錯体の配位子には公知の配位子が含まれる。周期表9族元素化合物における9族元素の価数は0〜6程度、好ましくは0〜3である。特にイリジウム化合物などの場合には1価又は3価が好ましい。周期表9族元素化合物は単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
【0010】
周期表9族元素化合物の代表的な例をイリジウムを例にとって示すと、例えば、金属イリジウム、酸化イリジウム、硫化イリジウム、水酸化イリジウム、フッ化イリジウム、塩化イリジウム、臭化イリジウム、ヨウ化イリジウム、硫酸イリジウム、イリジウム酸又はその塩(例えば、イリジウム酸カリウムなど)、無機イリジウム錯体[例えば、ヘキサアンミンイリジウム(III)塩、クロロペンタアンミンイリジウム(III)塩等]などが挙げられる。
【0011】
有機のイリジウム化合物としては、例えば、シアン化イリジウムのほか、有機イリジウム錯体を用いることができる。該有機イリジウム錯体として、例えば、トリス(アセチルアセトナト)イリジウム、ドデカカルボニル四イリジウム(0)、クロロトリカルボニルイリジウム(I)、ジ−μ−クロロテトラキス(シクロオクテン)二イリジウム(I)、ジ−μ−クロロテトラキス(エチレン)二イリジウム(I)、ジ−μ−クロロビス(1,5−シクロオクタジエン)二イリジウム(I)[IrCl(cod)]2、ジ−μ−クロロジクロロビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)二イリジウム(III)、トリクロロトリス(トリエチルホスフィン)イリジウム(III)、ペンタヒドリドビス(トリメチルホスフィン)イリジウム(V)、クロロカルボニルビス(トリフェニルホスフィン)イリジウム(I)、クロロエチレンビス(トリフェニルホスフィン)イリジウム(I)、(ペンタメチルシクロペンタジエニル)ジカルボニルイリジウム(I)、ビス{1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン}イリジウム(I)塩化物、ペンタメチルシクロペンタジエニルビス(エチレン)イリジウム(I)、カルボニルメチルビス(トリフェニルホスフィン)イリジウム(I)、(1,5−シクロオクタジエン)(ジホスフィン)イリジウム(I)ハロゲン化物、1,5−シクロオクタジエン(1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン)イリジウム(I)ヘキサフルオロリン酸塩、(1,5−シクロオクタジエン)ビス(トリアルキルホスフィン)イリジウム(I)ハロゲン化物、ビス(1,5−シクロオクタジエン)イリジウムテトラフルオロボレート、(1,5−シクロオクタジエン)(アセトニトリル)イリジウムテトラフルオロボレート等]などが挙げられる。
【0012】
好ましいイリジウム化合物にはイリジウム錯体が含まれる。これらの中でも、有機イリジウム錯体、特に、シクロペンテン、ジシクロペンタジエン、シクロオクテン、1,5−シクロオクタジエン、エチレン、ペンタメチルシクロペンタジエン、ベンゼン、トルエンなどの不飽和炭化水素;アセトニトリルなどのニトリル類;テトラヒドロフランなどのエーテル類を配位子として有する有機イリジウム錯体[例えば、ジ−μ−クロロテトラキス(シクロオクテン)二イリジウム(I)、ジ−μ−クロロテトラキス(エチレン)二イリジウム(I)、ジ−μ−クロロビス(1,5−シクロオクタジエン)二イリジウム(I)、ビス(1,5−シクロオクタジエン)イリジウムテトラフルオロボレート、(1,5−シクロオクタジエン)(アセトニトリル)イリジウムテトラフルオロボレート等]が好ましい。
【0013】
イリジウム化合物以外の周期表9族元素化合物の例としては、上記イリジウム化合物に対応する化合物[例えば、ジクロロビス(1,5−シクロオクタジエン)二ロジウム等]や、文献等(例えば、日本化学会編、第4版実験化学講座17及び18、丸善株式会社発行など)に記載の公知の化合物などが挙げられる。イリジウム以外の周期表9族元素化合物においても、例えば、シクロペンテン、ジシクロペンタジエン、シクロオクテン、1,5−シクロオクタジエン、エチレン、ペンタメチルシクロペンタジエン、ベンゼン、トルエンなどの不飽和炭化水素;アセトニトリルなどのニトリル類;テトラヒドロフランなどのエーテル類を配位子として有する有機錯体が特に好ましい。
【0014】
周期表9族元素化合物は、そのままで又は担体に担持した形態で使用できる。
前記担体としては、触媒担持用の慣用の担体、例えば、シリカ、アルミナ、シリカ−アルミナ、ゼオライト、チタニア、マグネシアなどの金属酸化物や活性炭などが挙げられる。担体担持型触媒において、周期表9族元素化合物の担持量は、担体に対して、例えば0.1〜50重量%、好ましくは1〜20重量%程度である。触媒の担持は、慣用の方法、例えば、含浸法、沈殿法、イオン交換法などにより行うことができる。
【0015】
周期表9族元素化合物の使用量は、原料の種類や触媒の種類等によって適宜選択できるが、一般には、原料として用いるカルボニル化合物及びアルコールのうち少ない方の成分1モルに対して、例えば0.0001〜1モル、好ましくは0.001〜0.3モル、さらに好ましくは0.005〜0.1モル程度である。
【0016】
本発明では、有機錯体等の周期表9族元素化合物は適当な配位子と組み合わせて使用することもできる。配位子としては、例えば、リン原子含有配位子、酸素原子含有配位子、窒素原子含有配位子、炭素−炭素二重結合含有配位子などが挙げられる。配位子としては、リン原子含有配位子を好適に用いることができる。リン原子含有配位子としては、例えば、トリシクロヘキシルホスフィン等のトリシクロアルキルホスフィン、トリメチルホスフィンやトリブチルホスフィン等のトリアルキルホスフィン、トリフェニルホスフィン等のトリアリールホスフィンなどの単座配位子;1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、2,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン等のビス(ジアリールホスフィノ)アルカンなどの二座配位子などが挙げられる。
【0017】
配位子の使用量は、反応を阻害しない範囲内で適宜選択できるが、一般には、前記周期表9族元素化合物1モルに対して、0.5〜10モル程度、好ましくは1〜5モル程度である。
【0018】
また、配位子の使用量は、例えば、原料として用いるカルボニル化合物及びアルコールのうち少ない方の成分(特にカルボニル化合物)1モルに対して、0.001〜1モル程度、好ましくは0.005〜0.3モル程度、さらに好ましくは0.01〜0.1モル程度の範囲から選択してもよい。
【0019】
[塩基]
本発明では、前記周期表9族元素化合物と共に塩基を用いる。塩基は、無機塩基、有機塩基、ルイス塩基等の何れであってもよく、アルドール縮合に通常用いられる塩基が好適である。
【0020】
無機塩基としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム等のアルカリ金属水酸化物;炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム等のアルカリ金属炭酸塩;炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素セシウム等のアルカリ金属炭酸水素塩;水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム等のアルカリ土類金属水酸化物;炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム等のアルカリ土類金属炭酸塩などが挙げられる。
【0021】
有機塩基としては、例えば、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシドなどのアルカリ金属アルコキシド;酢酸ナトリウムなどのアルカリ金属有機酸塩;トリエチルアミン、ピペリジン、N−メチルピペリジン、ピリジンなどのアミン類(第3級アミンなど)や含窒素複素環化合物などが挙げられる。
【0022】
これらの中でも、特に、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸セシウムなどのアルカリ金属炭酸塩、炭酸水素ナトリウムなどのアルカリ金属炭酸水素塩、アルカリ金属アルコキシド、アルカリ金属有機酸塩などのアルカリ金属元素含有塩基が好ましい。
【0023】
塩基の添加量は、原料の種類や周期表9族元素化合物等によっても異なるが、通常、原料として用いるカルボニル化合物及びアルコールのうち少ない方の成分(特にカルボニル化合物)1モルに対して、0.01〜0.5モル程度、好ましくは0.05〜0.3モル程度である。
【0024】
[カルボニル化合物]
式(1)で表されるカルボニル化合物において、R1、R2、Yは、それぞれ、水素原子又は有機基を示す。有機基としては、本反応を阻害しないような基(例えば、本方法における反応条件下で非反応性の基)であればよく、例えば、ハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素原子)、炭化水素基、複素環式基、置換オキシカルボニル基(アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基、シクロアルキルオキシカルボニル基など)、カルボキシル基、置換又は無置換カルバモイル基、シアノ基、ニトロ基、硫黄酸基、硫黄酸エステル基、アシル基(アセチル基等の脂肪族アシル基;ベンゾイル基等の芳香族アシル基など)、置換オキシ基(メトキシ基、エトキシ基等のC1-6アルコキシ基などのアルコキシ基;ビニルオキシ基、アリルオキシ基等のC2-6アルケニルオキシ基などのアルケニルオキシ基;シクロヘキシルオキシ基などのシクロアルキルオキシ基;フェノキシ基などのアリールオキシ基;ベンジルオキシ基などのアラルキルオキシ基;アセトキシ基などのアシルオキシ基など)、ヒドロキシル基、置換又は無置換アミノ基(アミノ基;N−メチルアミノ基、N,N−ジメチルアミノ基などのモノ又はジC1-6アルキル置換アミノ基;1−ピロリジニル基、ピペリジノ基、モルホリノ基などの環状アミノ基)など、及びこれらが2以上結合した基などが挙げられる。前記カルボキシル基、ヒドロキシル基、アミノ基などは有機合成の分野で公知乃至慣用の保護基で保護されていてもよく、金属で置換されていてもよい。
【0025】
前記炭化水素基及び複素環式基には、置換基を有する炭化水素基及び複素環式基も含まれる。前記炭化水素基には、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基及びこれらの結合した基が含まれる。脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、デシル、ドデシル基などの炭素数1〜20(好ましくは1〜10、さらに好ましくは1〜3)程度のアルキル基;ビニル、アリル、1−ブテニル基などの炭素数2〜20(好ましくは2〜10、さらに好ましくは2〜3)程度のアルケニル基;エチニル、プロピニル基などの炭素数2〜20(好ましくは2〜10、さらに好ましくは2〜3)程度のアルキニル基などが挙げられる。
【0026】
脂環式炭化水素基としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロオクチル基などの3〜20員(好ましくは3〜15員、さらに好ましくは5〜8員)程度のシクロアルキル基;シクロペンテニル、シクロへキセニル基などの3〜20員(好ましくは3〜15員、さらに好ましくは5〜8員)程度のシクロアルケニル基;パーヒドロナフタレン−1−イル基、ノルボルニル、アダマンチル、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン−3−イル基などの橋かけ環式炭化水素基などが挙げられる。芳香族炭化水素基としては、フェニル、ナフチル基などの炭素数6〜14(好ましくは6〜10)程度の芳香族炭化水素基が挙げられる。
【0027】
脂肪族炭化水素基と脂環式炭化水素基とが結合した炭化水素基には、シクロペンチルメチル、シクロヘキシルメチル、2−シクロヘキシルエチル基などのシクロアルキル−アルキル基(例えば、C3-20シクロアルキル−C1-4アルキル基など)などが含まれる。また、脂肪族炭化水素基と芳香族炭化水素基とが結合した炭化水素基には、アラルキル基(例えば、C7-18アラルキル基など)、アルキル置換アリール基(例えば、1〜4個程度のC1-4アルキル基が置換したフェニル基又はナフチル基など)などが含まれる。
【0028】
好ましい炭化水素基には、C1-10アルキル基、C2-10アルケニル基、C2-10アルキニル基、C3-15シクロアルキル基、C6-10芳香族炭化水素基、C3-15シクロアルキル−C1-4アルキル基、C7-14アラルキル基等が含まれる。
【0029】
上記炭化水素基は、種々の置換基、例えば、ハロゲン原子、オキソ基、ヒドロキシル基、置換オキシ基(例えば、アルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アシルオキシ基など)、カルボキシル基、置換オキシカルボニル基(アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基など)、置換又は無置換カルバモイル基、シアノ基、ニトロ基、置換又は無置換アミノ基、スルホ基、複素環式基などを有していてもよい。前記ヒドロキシル基やカルボキシル基は有機合成の分野で慣用の保護基で保護されていてもよい。また、脂環式炭化水素基や芳香族炭化水素基の環には芳香族性又は非芳香属性の複素環が縮合していてもよい。
【0030】
前記R1等における複素環式基を構成する複素環には、芳香族性複素環及び非芳香族性複素環が含まれる。このような複素環としては、例えば、ヘテロ原子として酸素原子を含む複素環(例えば、フラン、テトラヒドロフラン、オキサゾール、イソオキサゾール、γ−ブチロラクトン環などの5員環、4−オキソ−4H−ピラン、テトラヒドロピラン、モルホリン環などの6員環、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、4−オキソ−4H−クロメン、クロマン、イソクロマン環などの縮合環、3−オキサトリシクロ[4.3.1.14,8]ウンデカン−2−オン環、3−オキサトリシクロ[4.2.1.04,8]ノナン−2−オン環などの橋かけ環)、ヘテロ原子としてイオウ原子を含む複素環(例えば、チオフェン、チアゾール、イソチアゾール、チアジアゾール環などの5員環、4−オキソ−4H−チオピラン環などの6員環、ベンゾチオフェン環などの縮合環など)、ヘテロ原子として窒素原子を含む複素環(例えば、ピロール、ピロリジン、ピラゾール、イミダゾール、トリアゾール環などの5員環、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、ピペリジン、ピペラジン環などの6員環、インドール、インドリン、キノリン、アクリジン、ナフチリジン、キナゾリン、プリン環などの縮合環など)などが挙げられる。上記複素環式基には、前記炭化水素基が有していてもよい置換基のほか、アルキル基(例えば、メチル、エチル基などのC1-4アルキル基など)、シクロアルキル基、アリール基(例えば、フェニル、ナフチル基など)などの置換基を有していてもよい。
【0031】
式(1)において、R1、R2及びYのうち少なくとも2つが互いに結合して隣接する1又は2個の炭素原子と共に環を形成していてもよい。このような環として、炭化水素環及び複素環が挙げられる。炭化水素環としては、例えば、シクロプロパン環、シクロブタン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロヘプタン環、シクロオクタン環、シクロデカン環、シクロドデカン環などの3〜20員程度のシクロアルカン環;シクロペンテン環、シクロヘキセン環などの3〜20員程度のシクロアルケン環;アダマンタン環、ノルボルナン環、ノルボルネン環などの橋かけ炭化水素環などが例示される。複素環としては、ペルヒドロアゾール環、ペルヒドロアジン環、ペルヒドロアゼピン環、オキソラン環、オキサン環、オキセパン環、チオラン環、チアン環、チエパン環などの4〜20員程度の複素環(窒素原子、酸素原子及び硫黄原子から選択された少なくとも1つのヘテロ原子を含む複素環)が挙げられる。
【0032】
好ましいR1には、水素原子及び炭化水素基(例えば、C1-10アルキル基、C2-10アルケニル基、C2-10アルキニル基、C3-15シクロアルキル基、C6-10芳香族炭化水素基、C3-12シクロアルキル−C1-4アルキル基、C7-14アラルキル基など)などが含まれる。R1としては、特に水素原子が好ましい。
【0033】
好ましいR2には、水素原子、炭化水素基(例えば、C1-10アルキル基、C2-10アルケニル基、C2-10アルキニル基、C3-15シクロアルキル基、C6-10芳香族炭化水素基、C3-12シクロアルキル−C1-4アルキル基、C7-14アラルキル基など)、置換オキシカルボニル基(C1-6アルコキシ−カルボニル基、C6-14アリールオキシ−カルボニル基、C7-15アラルキルオキシカルボニル基、3〜8員のシクロアルキルオキシカルボニル基など)などが含まれる。
【0034】
好ましいYには、水素原子、炭化水素基(例えば、C1-10アルキル基、C2-10アルケニル基、C2-10アルキニル基、C3-15シクロアルキル基、C6-10芳香族炭化水素基、C3-12シクロアルキル−C1-4アルキル基、C7-14アラルキル基など)、置換オキシ基(例えば、C1-6アルコキシ基などのアルコキシ基、C2-6アルケニルオキシ基などのアルケニルオキシ基、3〜8員のシクロアルキルオキシ基、C6-14アリールオキシ基、C7-15アラルキルオキシ基など)、置換アミノ基(モノ又はジC1-6アルキル置換アミノ基;環状アミノ基)などが含まれる。
【0035】
また、R2とYとが、隣接する2つの炭素原子と共に、3〜20員程度の炭化水素環又は4〜20員程度の複素環を形成しているのも好ましい。
【0036】
式(1)で表されるカルボニル化合物は、特に、ケトン(鎖状ケトン、環状ケトン、β−ケトエステル等)、アルデヒド、エステル、ラクトン、アミド又はラクタムであるのが好ましい。
【0037】
式(1)で表されるカルボニル化合物のうち、ケトンの代表的な例として、アセトン、エチルメチルケトン、3−メチル−2−ブタノン、3,3−ジメチル−2−ブタノン、2−ペンタノン、3−ペンタノン、4−メチル−2−ペンタノン、3−メチル−2−ペンタノン、2−ヘキサノン、4−ヘプタノン、2−オクタノン、3−オクタノン、2−ノナノン、5−ノナノン、2−デカノン、2−ドデカノン、シクロヘキシルメチルケトン、3−フェニル−2−プロパノン、4−フェニル−2−ブタノン、アセトフェノン、プロピオフェノン、アセチルアセトンなどの鎖状ケトン;シクロペンタノン、シクロヘキサノン、2−メチルシクロヘキサノン、シクロオクタノンなどの5〜15員程度の環状ケトン;アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸プロピル、アセト酢酸フェニル、プロピオニル酢酸エチル、ベンゾイル酢酸エチル、シクロペンタノン−2−カルボン酸メチルなどのβ−ケトエステルなどが挙げられる。
【0038】
式(1)で表されるカルボニル化合物のうち、アルデヒドの代表的な例として、アセトアルデヒド、プロパナール、ブタナール、ペンタナール、デカナール、2−メチルプロパナール、2−メチルブタナール、2−フェニルアセトアルデヒド、3−フェニルプロパナールなどが挙げられる。
【0039】
式(1)で表されるカルボニル化合物のうち、エステルの代表的な例として、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸t−ブチル、酢酸ビニル、酢酸アリル、酢酸フェニル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、ブタン酸メチル、ブタン酸エチル、ペンタン酸エチル、ヘキサン酸エチル、ヘプタン酸エチル、オクタン酸エチル、デカン酸エチル、フェニル酢酸メチル、フェニル酢酸エチル、3−フェニルプロピオン酸エチル、シクロヘキサン酸エチル、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチルなどが挙げられる。これらの中でも、酢酸エステル、プロピオン酸エステルなどの炭素数2〜10程度の脂肪族カルボン酸のエステル、フェニル酢酸エチルなどのフェニル酢酸エステル、マロン酸ジエチルなどのマロン酸エステルなどが特に好ましい。
【0040】
式(1)で表されるカルボニル化合物のうち、ラクトンの代表的な例として、γ−ブチロラクトン、γ,γ−ジメチル−γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトンなどの5〜16員のラクトンなどが挙げられる。
【0041】
式(1)で表されるカルボニル化合物のうち、アミドの代表的な例として、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルプロピオンアミド、1−アセチルピロリジン、1−アセチルピペリジンなどが挙げられる。
【0042】
式(1)で表されるカルボニル化合物のうち、ラクタムの代表的な例として、N−メチル−α−ピロリドン、N−メチル−α−ピリドンなどが挙げられる。
【0043】
[アルコール]
式(2)で表されるアルコールにおいて、R3、R4は、同一又は異なって、水素原子又は有機基を示す。R3及びR4は互いに結合して隣接する炭素原子と共に環を形成していてもよい。式(2)で表されるアルコールには第1級アルコール及び第2級アルコールが含まれる。アルコールは1価アルコール、2価アルコール、多価アルコールの何れであってもよい。
【0044】
前記有機基としては、本反応を阻害しないような基(例えば、本方法における反応条件下で非反応性の基)であればよく、例えば、前記R1、R2、Yにおける有機基と同様のものが例示される。代表的な有機基には炭化水素基、複素環式基等が含まれる。炭化水素基、複素環式基としては、前記R1、R2、Yにおける炭化水素基、複素環式基と同様のものを例示できる。前記炭化水素基及び複素環式基には、置換基を有する炭化水素基及び複素環式基(これらに環が縮合している場合も含む)も含まれる。置換基としては反応を阻害しないものであれば特に制限はなく、例えば、前記R1等における炭化水素基及び複素環式基が有していてもよい置換基と同様のものを例示できる。
【0045】
R3及びR4が互いに結合して隣接する炭素原子と共に形成する環としては、前記R1、R2及びYのうち少なくとも2つが互いに結合して隣接する1又は2個の炭素原子と共に形成する環と同様のものが例示される。
【0046】
好ましいR3、R4には、水素原子、炭化水素基(例えば、C1-10アルキル基、C2-10アルケニル基、C2-10アルキニル基、C3-15シクロアルキル基、C6-10芳香族炭化水素基、C3-12シクロアルキル−C1-4アルキル基、C7-14アラルキル基など)、複素環式基(例えば、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子から選択された少なくとも1つのヘテロ原子を含む3〜15員程度の複素環を有する複素環式基)などが含まれる。また、R3とR4とが隣接する炭素原子と共に3〜20員程度の炭化水素環又は4〜20員程度の複素環を形成しているのも好ましい。
【0047】
式(2)で表されるアルコールのうち、第1級アルコールの代表的な例としては、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、1−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、1−ペンタノール、1−ヘキサノール、1−オクタノール、1−デカノール、1−ヘキサデカノール、2−ブテン−1−オール、エチレングリコール、トリメチレングリコール、グリセリン、ヘキサメチレングリコール、ペンタエリスリトールなどの炭素数1〜30(好ましくは1〜20、さらに好ましくは1〜15)程度の飽和又は不飽和脂肪族第1級アルコール;シクロペンチルメチルアルコール、シクロヘキシルメチルアルコール、2−シクロヘキシルエチルアルコール、1−アダマンタンメタノール、1−アダマンタンエタノールなどの飽和又は不飽和脂環式第1級アルコール;ベンジルアルコール、1,2−(1,3−又は1,4−)ビス(ヒドロキシメチル)ベンゼン、1,2,3−(1,2,4−又は1,3,5)−トリス(ヒドロキシメチル)ベンゼン、2−フェニルエチルアルコール、3−フェニルプロピルアルコール、桂皮アルコールなどの芳香族第1級アルコール;2−ヒドロキシメチルピリジンなどの複素環式第1級アルコールなどが挙げられる。また、炭化水素部位に置換基を有する第1級アルコールとして、例えば、グリコール酸メチル、グリコール酸エチル等のグリコール酸エステル;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等のアルキレングリコールモノアルキルエーテル;エチレングリコールモノアセテート等のアルキレングリコールモノエステルなどが挙げられる。
【0048】
代表的な第2級アルコールとしては、例えば、2−プロパノール、s−ブチルアルコール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、3,3−ジメチル−2−ブタノール、2−オクタノール、4−デカノール、2−ヘキサデカノール、2−ペンテン−4−オール、グリセリン、1,2−プロパンジオール、2,3−ブタンジオールや2,3−ペンタンジオールなどのビシナルジオール類などの炭素数3〜30(好ましくは3〜20、さらに好ましくは3〜15)程度の飽和又は不飽和脂肪族第2級アルコール;1−シクロペンチルエタノール、1−シクロヘキシルエタノールなどの、ヒドロキシル基の結合した炭素原子に脂肪族炭化水素基と脂環式炭化水素基(シクロアルキル基など)とが結合している第2級アルコール;シクロブタノール、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、シクロオクタノール、シクロドデカノール、2−シクロヘプテン−1−オール、2−シクロヘキセン−1−オール、2−アダマンタノール、アダマンタン環にオキソ基を有する2−アダマンタノール、2−ヒドロキシノルボルナン、2,5−ジヒドロキシノルボルナン、3−ヒドロキシテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカンなどの3〜20員(好ましくは3〜15員、さらに好ましくは5〜15員、特に5〜8員)程度の飽和又は不飽和脂環式第2級アルコール(橋かけ環式第2級アルコールを含む);1−フェニルエタノール、1−フェニルプロパノール、1−フェニルメチルエタノール、ジフェニルメタノールなどの芳香族第2級アルコール;1−(2−ピリジル)エタノールなどの複素環式第2級アルコールなどが例示される。
【0049】
[反応]
式(1)で表されるカルボニル化合物と式(2)で表されるアルコールとの反応は、溶媒の存在下又は非存在下で行われる。前記溶媒としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタンなどの脂肪族炭化水素;シクロヘキサンなどの脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素;クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素;ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチルなどのエステル;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどのアミド;アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリルなどが挙げられる。これらの溶媒は単独で又は2種以上を混合して用いられる。
【0050】
式(1)で表されるカルボニル化合物と式(2)で表されるアルコールとの割合は、反応性及び原料コスト等を考慮して適宜選択できる。通常、式(2)で表されるアルコールの使用量は、式(1)で表されるカルボニル化合物1モルに対して、0.1〜100モル程度、好ましくは0.5〜50モル程度、さらに好ましくは0.8〜10モル程度である。
【0051】
なお、反応系に、式(2)で表されるアルコールに対応するカルボニル化合物[R3−C(=O)−R4](ケトン又はアルデヒド)を少量添加してもよい。該カルボニル化合物の添加により、反応速度が向上する場合がある。
【0052】
反応は重合禁止剤の存在下で行ってもよい。反応温度は、反応成分や触媒の種類などに応じて適宜選択でき、例えば、20〜200℃、好ましくは50〜150℃、さらに好ましくは70〜120℃程度である。反応は常圧で行ってもよく、減圧又は加圧下で行ってもよい。反応の雰囲気は反応を阻害しない限り特に限定されず、例えば、空気雰囲気、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気などの何れであってもよい。また、反応はバッチ式、セミバッチ式、連続式などの何れの方法で行うこともできる。
【0053】
本発明の方法では、反応により、温和な条件下で、対応する式(3a)で表される炭素鎖が伸長したカルボニル化合物及び/又は該カルボニル化合物の還元体である式(3b)で表されるアルコールが生成する。反応機構としては、必ずしも明らかではないが、まず式(2)で表されるアルコールが周期表9族元素化合物により酸化脱水素されてカルボニル化合物となり(この時、周期表9族元素化合物は水素化される)、これが式(1)で表されるカルボニル化合物とアルドール型の縮合反応を起こしてα,β−不飽和カルボニル化合物が生成し、この生成物が上記水素化された周期表9族元素化合物により水素添加されて式(3a)で表されるカルボニル化合物が生成し(この時、元のしゅうきひょうが再生する)、さらに条件によっては、該カルボニル化合物が前記水素化された周期表9族元素化合物によりさらに還元されて式(3b)で表されるアルコールが生成するものと推測される。
【0054】
反応終了後、反応生成物は、例えば、濾過、濃縮、蒸留、抽出、晶析、再結晶、カラムクロマトグラフィーなどの分離手段や、これらを組み合わせた分離手段により分離精製できる。
【0055】
【発明の効果】
本発明の製造法によれば、アルコールを用いたカルボニル化合物のα−アルキル化により炭素鎖の伸長したカルボニル化合物又はその還元体であるアルコールを温和な条件下で簡易に製造することができる。
【0056】
【実施例】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0057】
実施例1
反応器に、アセトフェノン(1ミリモル)、1−ブタノール(20ミリモル)、ジ−μ−クロロビス(1,5−シクロオクタジエン)二イリジウム(I)[IrCl(cod)]2(0.02ミリモル)、水酸化カリウム(0.1ミリモル)、トリフェニルホスフィン(0.05ミリモル)、及びトルエン1mlを入れ、窒素雰囲気下、100℃で4時間撹拌した。反応後、溶媒を除去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製したところ、1−フェニル−1−ヘキサノンが収率87%、1−フェニル−1−ヘキサノールが収率3%、1,5−ジフェニル−3−プロピル−1,5−ペンタンジオンが収率1%で得られた。
【0058】
実施例2
トリフェニルホスフィンを用いなかった点以外は実施例1と同様の操作を行ったところ、1−フェニル−1−ヘキサノンが収率28%、1−フェニル−1−ヘキサノールが収率1%、1,5−ジフェニル−3−プロピル−1,5−ペンタンジオンが収率1%で得られた。
【0059】
実施例3
トリフェニルホスフィンに代えて、ジフェニルホスフィノプロパン(dppp)を0.02ミリモル用いた点以外は実施例1と同様にして反応を行った。反応後、反応液をガスクロマトグラフィーにより分析した結果、1−フェニル−1−ヘキサノンが収率64%、1−フェニル−1−ヘキサノールが収率2%、1,5−ジフェニル−3−プロピル−1,5−ペンタンジオンが収率1%で生成していた。
【0060】
実施例4
水酸化カリウムの使用量を1ミリモルとした点以外は実施例1と同様にして反応を行った。反応後、反応液をガスクロマトグラフィーにより分析した結果、1−フェニル−1−ヘキサノンが収率69%、1−フェニル−1−ヘキサノールが収率15%、1,5−ジフェニル−3−プロピル−1,5−ペンタンジオンが収率3%で生成していた。
【0061】
実施例5
水酸化カリウムの使用量を0.2ミリモルとした点以外は実施例1と同様にして反応を行った。反応後、反応液をガスクロマトグラフィーにより分析した結果、1−フェニル−1−ヘキサノンが収率92%、1−フェニル−1−ヘキサノールが収率7%、1,5−ジフェニル−3−プロピル−1,5−ペンタンジオンが収率1%で生成していた。
【0062】
実施例6
1−ブタノールの使用量を1ミリモルとした点以外は実施例1と同様にして反応を行った。反応後、反応液をガスクロマトグラフィーにより分析した結果、1−フェニル−1−ヘキサノンが収率45%、1−フェニル−1−ヘキサノールが収率7%、1,5−ジフェニル−3−プロピル−1,5−ペンタンジオンが収率10%で生成していた。
【0063】
実施例7
反応器に、アセトフェノン(1ミリモル)、ベンジルアルコール(1ミリモル)、ジ−μ−クロロビス(1,5−シクロオクタジエン)二イリジウム(I)[IrCl(cod)]2(0.015ミリモル)、水酸化カリウム(0.1ミリモル)、トリフェニルホスフィン(0.04ミリモル)、及びトルエン1mlを入れ、窒素雰囲気下、100℃で4時間撹拌した。反応後、反応液をガスクロマトグラフィーにより分析した結果、1,3−ジフェニル−1−プロパノンが収率88%、1,3−ジフェニル−1−プロパノールが収率6%で生成していた。
【0064】
実施例8
反応器に、2−オクタノン(1ミリモル)、1−ブタノール(1ミリモル)、ジ−μ−クロロビス(1,5−シクロオクタジエン)二イリジウム(I)[IrCl(cod)]2(0.02ミリモル)、水酸化カリウム(0.1ミリモル)、トリフェニルホスフィン(0.05ミリモル)、及びトルエン1mlを入れ、窒素雰囲気下、100℃で4時間撹拌した。反応後、反応液をガスクロマトグラフィーにより分析した結果、6−ドデカノンが収率63%、6−ドデカノールが収率2%で生成していた。
【0065】
実施例9
トルエンを用いなかった点以外は実施例8と同様の操作を行った。反応後、反応液をガスクロマトグラフィーにより分析した結果、6−ドデカノンが収率70%、6−ドデカノールが収率3%で生成していた。
【0066】
実施例10
1−ブタノールを2ミリモル用いた点以外は実施例9と同様の操作を行った。
反応後、反応液をガスクロマトグラフィーにより分析した結果、6−ドデカノンが収率80%、6−ドデカノールが収率4%で生成していた。
【0067】
実施例11
水酸化カリウムに代えて水酸化セシウムを0.1ミリモル用いた点以外は実施例10と同様の操作を行った。反応後、反応液をガスクロマトグラフィーにより分析した結果、6−ドデカノンが収率75%、6−ドデカノールが収率3%で生成していた。
【0068】
実施例12
反応器に、4−フェニル−2−ブタノン(1ミリモル)、1−ブタノール(2ミリモル)、ジ−μ−クロロビス(1,5−シクロオクタジエン)二イリジウム(I)[IrCl(cod)]2(0.015ミリモル)、水酸化カリウム(0.1ミリモル)、及びトリフェニルホスフィン(0.04ミリモル)を入れ、窒素雰囲気下、100℃で4時間撹拌した。反応後、反応液をガスクロマトグラフィーにより分析した結果、1−フェニル−3−オクタノンが収率63%、1−フェニル−3−オクタノールが収率2%で生成していた。
【0069】
実施例13
反応器に、3−ペンタノン(1ミリモル)、1−ブタノール(2ミリモル)、ジ−μ−クロロビス(1,5−シクロオクタジエン)二イリジウム(I)[IrCl(cod)]2(0.015ミリモル)、水酸化カリウム(0.1ミリモル)、及びトリフェニルホスフィン(0.04ミリモル)を入れ、窒素雰囲気下、100℃で4時間撹拌した。反応後、反応液をガスクロマトグラフィーにより分析した結果、4−メチル−3−オクタノンが収率38%、4−メチル−3−オクタノールが収率2%で生成していた。
【0070】
実施例14
反応器に、2−オクタノン(1ミリモル)、2−ブタノール(2ミリモル)、ジ−μ−クロロビス(1,5−シクロオクタジエン)二イリジウム(I)[IrCl(cod)]2(0.015ミリモル)、水酸化カリウム(0.1ミリモル)、及びトリフェニルホスフィン(0.04ミリモル)を入れ、窒素雰囲気下、100℃で4時間撹拌した。反応後、反応液をガスクロマトグラフィーにより分析した結果、3−メチル−5−ウンデカノンが収率12%、9−メチル−7−ペンタデカノンが収率20%で生成していた。
【0071】
実施例15
反応器に、シクロヘキサノン(1ミリモル)、1−ブタノール(2ミリモル)、ジ−μ−クロロビス(1,5−シクロオクタジエン)二イリジウム(I)[IrCl(cod)]2(0.015ミリモル)、水酸化カリウム(0.1ミリモル)、及びトリフェニルホスフィン(0.04ミリモル)を入れ、窒素雰囲気下、100℃で4時間撹拌した。反応後、反応液をガスクロマトグラフィーにより分析した結果、2−ブチルシクロヘキサノンが収率25%、2,6−ジブチルシクロヘキサノンが収率15%で生成していた。
【0072】
実施例16
反応器に、2−オクタノン(1ミリモル)、1−ブタノール(2ミリモル)、ジ−μ−クロロビス(1,5−シクロオクタジエン)二ロジウム(I)[RhCl(cod)]2(0.02ミリモル)、水酸化カリウム(0.1ミリモル)、及びトリフェニルホスフィン(0.05ミリモル)を入れ、窒素雰囲気下、100℃で4時間撹拌した。反応後、反応液をガスクロマトグラフィーにより分析した結果、6−ドデカノンが収率22%、6−ドデカノールが収率2%で生成していた。
Claims (2)
- シクロペンテン、ジシクロペンタジエン、シクロオクテン、1,5−シクロオクタジエン、及びペンタメチルシクロペンタジエンからなる群から選択される少なくとも1種の不飽和炭化水素を配位子として有する有機イリジウム錯体と塩基の存在下、下記式(1)
で表される、鎖状ケトン、5〜15員の環状ケトン、アルデヒド、または炭素数2〜10の脂肪族カルボン酸のエステルであるカルボニル化合物と、下記式(2)
で表される、炭素数1〜15の飽和脂肪族第1級アルコール、または芳香族第1級アルコールであるアルコールとを反応させて、下記式(3a)及び/又は(3b)
で表される炭素鎖が伸長したカルボニル化合物及び/又はその還元体であるアルコールを生成させることを特徴とする有機化合物の製造法。 - さらにリン原子含有配位子の共存下で反応を行う請求項1記載の有機化合物の製造法。
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