JP4559428B2 - 情報記録装置、情報記録方法及び情報記録プログラム - Google Patents
情報記録装置、情報記録方法及び情報記録プログラム Download PDFInfo
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Description
【技術分野】
本発明は、光ディスクなどの情報記録媒体に情報を記録する技術に関する。
【0002】
【背景技術】
例えば、光ディスク等の情報記録媒体に情報を記録する情報記録再生装置においては、光ディスクの種類、情報記録再生装置の種類及び記録速度等に応じて、OPC(Optimum Power Calibration)処理により、例えば記録動作に用いられるレーザ光の最適記録パワーが設定される。即ち、レーザパワーのキャリブレーション(較正)が行われる。これにより、適切な記録動作を実現できる。例えば、光ディスクが装填されて書き込みのコマンドが入力されると、順次段階的に光強度が切り換えられて試し書き用のデータがOPCエリアに記録され、いわゆる試し書きの処理が実行される。その後、このようにして記録された試し書き用のデータが再生され、この再生結果が所定の評価基準により判定されて、最適記録パワーが設定される。なお、最適記録パワーの決定方法の一例が特許文献1に記載されている。
【0003】
他方、光ディスクの回転速度を高くすることで、情報の記録速度(或いは、再生速度)を増加させる技術が開発されている。例えば光ディスクの一例たるCD−Rでは、光ディスクの回転速度が高くなるに従って、データの記録速度が24倍速、48倍速等の高速化が図られている。
【0004】
このように光ディスクの回転速度を速めた場合、OPC処理は、実際にデータが記録される際における記録トラックに沿った線速度で行なわれることが好ましい。しかしながら、OPC処理は概ね光ディスクの最内周側で行われるので、同一回転速度に対して最も線速度が出難い。このため、当該回転を制御するモータの規格的な或いは物理的な制約により、最内周側で実際の線速度を実現することができない。特に、光ディスクのいずれの記録領域においてもその線速度が一定となるCLV(Constant Liner Velocity)では、最内周側の回転速度は最外周側の回転速度と比較して大きくなる。このため、例えば光ディスクの一具体例たるDVDにおいて8倍速の記録速度或いは線速度を実現するためには、最内周側において、12000rpmもの高速回転が必要とされる。このような高速回転はモータの規格上実現が困難であり、また当該回転速度で回転する光ディスクの破損にもつながるという技術的な問題点を有している。加えて、そのような高速回転を仮に実現したとしても、モータを制御するサーボが不安定になり、更にはアシンメトリ、β値などの検出精度が低下するという技術的な問題点を有している。この問題点を解決するために、低い回転速度でOPC処理を行い、その結果から高速回転時の最適記録パワーを予測して求める技術が、光ディスクの一具体例たるCD−Rに導入されている。
【0005】
しかし、上記の方法では、実記録時と異なった記録パワー領域での試し書き情報から、実記録時の最適記録パワーを決定(予測)しているので、最適記録パワーの決定精度が低い。よって、実記録時に最適記録パワーの補正を行おうとしても、既に記録パワーがパワーマージン外となってしまっていることがある。また、試し書き時に得られる実記録パワー情報(記録パワーと、アシンメトリやβ値などとの関係)の精度が悪いため、それを実記録開始後の記録パワー補正量の算出に使用することができないか、又は、使用したとしても適切な補正量の算出が難しい。従って、実記録開始後に効率よく記録パワーの補正を行うことができない。
【0006】
【特許文献1】
特許第3159454号公報
【0007】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとする課題には、上記のようなものが一例として挙げられる。本発明は、試し書き時に取得した実記録パワー情報に基づいて、実記録中に高精度かつ効率よく記録パワーを制御することが可能な情報記録装置、情報記録方法及び情報記録プログラムを提供することを課題とする。
【0008】
本発明の1つの実施形態によれば、レーザ光を情報記録媒体に照射して当該情報記録媒体にデータを記録する情報記録装置は、第1記録速度にて、前記第1記録速度とは異なる第2記録速度で前記データの記録を行う際の前記レーザ光の最適記録パワーを算出するために用いられる前記レーザ光の波形を規定する特別OPCストラテジを取得し、前記第1記録速度にて前記特別OPCストラテジを用いて試し書きを行い、前記最適記録パワーを算出する試し書き手段と、前記第2記録速度にて前記情報の記録を行うために用いられる前記レーザ光の波形を規定する記録ストラテジを取得し、取得した前記記録ストラテジを用いて前記第2記録速度で前記情報記録媒体に対してデータの記録を行う記録手段と、実際のデータ記録のときに、所定量のデータを記録した時点で前記記録手段による記録を中断し、記録されたデータを再生して得られる再生データに基づいて、前記記録されたデータの記録品質が適正範囲内であるか否かの判定を行う判定手段と、前記記録品質が適正範囲外であると判定された場合に、前記記録品質が適正範囲内となるように、前記記録手段の記録パワーを補正する補正手段と、を備え、前記記録手段は、実際のデータ記録の開始から前記所定量のデータを記録する時点までは、前記試し書き手段により決定された最適記録パワーで記録を行い、前記所定量のデータを記録した後は、前記判定手段により記録データの記録品質が適正範囲内であると判定された場合には引き続き前記試し書き手段により決定された前記最適記録パワーで記録を行い、また、前記判定手段により記録データの記録品質が適正範囲外であると判定された場合には前記補正手段による補正後の記録パワーで記録を行う。
【0009】
上記の情報記録装置は、例えば光ディスクなどの情報記録媒体にレーザ光を照射してデータを記録し、レーザ光を照射して記録されたデータを再生する。ここで、ユーザの指定したデータなどの実データの記録の開始後、情報記録装置は、所定量のデータを記録した時点で一時的に記録を中断し、記録品質の確認を行う。即ち、記録したデータを再生し、再生データに基づいて記録品質を判定する。記録品質が適正範囲内であると判定された場合は、そのときの記録パワーで実データの記録を継続する。一方、記録品質が適正範囲外であると判定された場合は、適正範囲内となるように記録パワーを補正し、実データの記録を行う。これにより、実データの記録時に何らかの要因や条件変化などにより最適な記録パワーが変動した場合でも、それに応じて記録パワーを補正することができ、適正な記録パワーで正確な情報記録が可能となる。また、試し書き手段は、実際のデータ記録時とは線速度が異なるが、実際のデータ記録時と同一又はほぼ同一な記録パワーで試し書きを行う特別OPCストラテジを用いて試し書きを行い、最適記録パワーを決定する。従って、実際のデータ記録時と同等の記録パワーで記録を行った場合に相当する実記録パワー情報、即ち記録パワーと記録品質評価パラメータとの関係を取得することができるので、これに基づいて記録パワーの補正を高精度で行うことが可能となる。
【0010】
上記の情報記録装置の好適な例では、前記試し書き手段は、前記試し書きにより、記録品質評価パラメータと記録パワーとの関係を取得し、前記補正手段は、前記記録品質評価パラメータと記録パワーとの関係に基づいて前記記録パワーの補正を行う。
【0011】
この態様では、実際のデータ記録に先だって行われる試し書きにおいて、当該情報記録媒体に対する所定の記録品質評価パラメータと記録パワーとの関係を求めておく。そして、記録開始後に記録品質が適正範囲外であると判定された場合には、その関係に基づいて、適正記録品質となるように記録パワーを補正する。よって、試し書きにより得られた所定の記録品質評価パラメータと記録パワーとの関係が正確であれば、実際のデータ記録後においても記録パワーを正確に補正することが可能となる。
【0012】
上記の情報記録装置の好適な例では、前記判定手段は、記録品質評価パラメータが所定範囲内にあるときに、前記記録品質が適正範囲内にあると判定する。ここで、記録品質評価パラメータは、例えば記録されたデータを再生して算出されるアシンメトリ、β値及び変調度などとすることができる。また、記録品質評価パラメータとして、記録されたデータを再生して算出されるアシンメトリを使用する場合には、判定手段は、例えばアシンメトリが0%を中心として5%ppの範囲内であるときに記録品質が適正範囲内にあると判定することができる。情報記録媒体から記録したデータを再生し、RF信号などを取得してアシンメトリ、β値、変調度などを算出してその値が所定範囲内にあるか否かを判定することにより、記録品質を容易に確認することができる。
【0013】
上記の情報記録装置の好適な例では、前記所定量は、前記品質評価パラメータを必要な精度で算出可能な最小のデータ量とすることができる。記録品質を判定するためには、上記の品質評価パラメータを算出できる程度の再生データが必要であるが、その一方で、実際のデータ記録の開始後には記録品質の確認のために記録するデータ量はできる限り少ないことが望ましい。そこで、一時停止するまでに記録する実データの所定量は、品質評価パラメータを必要な精度で算出可能な最小のデータ量とすることが望ましい。
【0014】
上記の情報記録装置の好適な例では、前記判定手段は、前記補正手段による補正後の記録パワーにより得られる前記記録品質が適正範囲内となるまで、前記判定を繰り返す。これにより、記録品質が適正範囲外にあるまま実データの記録が継続されることが防止される。
【0015】
上記の情報記録装置の好適な例では、前記判定手段は、前記所定量のデータを記録した時点以降において、さらに前記実際のデータ記録が所定記録データ量行われたときに、前記判定を行うことができる。単一の情報記録媒体であっても、その記録面上の位置などにより記録感度が異なる場合がある。そこで、実際のデータ記録の開始直後のみならず、その後に所定記録データ量だけ記録が行われるごとに、繰り返し記録品質の判定を行うことにより、そのような記録感度差の影響を抑制し、情報記録媒体全体にわたって高精度な記録が可能となる。
【0016】
上記の情報記録装置の好適な例では、前記判定手段は、前記所定量のデータを記録した時点以降において、さらに前記レーザ光の光源近傍の温度が所定温度変化したときに、前記判定を行う。記録のためのレーザ光を出射するレーザダイオードその他の光源は、温度により出射するレーザ光の特性が変化する性質を有する。よって、所定以上の温度変化が生じたときには、記録品質の判定を行い、必要に応じて記録パワーの補正を行うことにより、記録継続中の環境変化などの影響を受けることなく、正確な記録を継続することが可能となる。
【0017】
本発明の他の実施形態によれば、レーザ光を情報記録媒体に照射して当該情報記録媒体にデータを記録する情報記録方法は、第1記録速度にて、前記第1記録速度とは異なる第2記録速度で前記データの記録を行う際の前記レーザ光の最適記録パワーを算出するために用いられる前記レーザ光の波形を規定する特別OPCストラテジを取得し、前記第1記録速度にて前記特別OPCストラテジを用いて試し書きを行い、前記最適記録パワーを算出する試し書き工程と、前記第2記録速度にて前記情報の記録を行うために用いられる前記レーザ光の波形を規定する記録ストラテジを取得し、取得した前記記録ストラテジを用いて前記第2記録速度で前記情報記録媒体に対してデータの記録を行う記録工程と、実際のデータ記録のときに、所定量のデータを記録した時点で前記記録工程による記録を中断し、記録されたデータを再生して得られる再生データに基づいて、前記記録されたデータの記録品質が適正範囲内であるか否かの判定を行う判定工程と、前記記録品質が適正範囲外であると判定された場合に、前記記録品質が適正範囲内となるように、前記記録工程の記録パワーを補正する補正工程と、を備え、前記記録工程は、実際のデータ記録の開始から前記所定量のデータを記録する時点までは、前記試し書き工程により決定された最適記録パワーで記録を行い、前記所定量のデータを記録した後は、前記判定工程により記録データの記録品質が適正範囲内であると判定された場合には引き続き前記試し書き工程により決定された前記最適記録パワーで記録を行い、また、前記判定工程により記録データの記録品質が適正範囲外であると判定された場合には前記補正工程による補正後の記録パワーで記録を行う。
【0018】
本発明の他の実施形態によれば、コンピュータを備える情報記録装置により実行され、レーザ光を情報記録媒体に照射して当該情報記録媒体にデータを記録する情報記録プログラムは、第1記録速度にて、前記第1記録速度とは異なる第2記録速度で前記データの記録を行う際の前記レーザ光の最適記録パワーを算出するために用いられる前記レーザ光の波形を規定する特別OPCストラテジを取得し、前記第1記録速度にて前記特別OPCストラテジを用いて試し書きを行い、前記最適記録パワーを算出する試し書き手段、前記第2記録速度にて前記情報の記録を行うために用いられる前記レーザ光の波形を規定する記録ストラテジを取得し、取得した前記記録ストラテジを用いて前記第2記録速度で前記情報記録媒体に対してデータの記録を行う記録手段、実際のデータ記録のときに、所定量のデータを記録した時点で前記記録手段による記録を中断し、記録されたデータを再生して得られる再生データに基づいて、前記記録されたデータの記録品質が適正範囲内であるか否かの判定を行う判定手段、前記記録品質が適正範囲外であると判定された場合に、前記記録品質が適正範囲内となるように、前記記録手段の記録パワーを補正する補正手段、として前記コンピュータを機能させ、前記記録手段は、実際のデータ記録の開始から前記所定量のデータを記録する時点までは、前記試し書き手段により決定された最適記録パワーで記録を行い、前記所定量のデータを記録した後は、前記判定手段により記録データの記録品質が適正範囲内であると判定された場合には引き続き前記試し書き手段により決定された前記最適記録パワーで記録を行い、また、前記判定手段により記録データの記録品質が適正範囲外であると判定された場合には前記補正手段による補正後の記録パワーで記録を行う。
【0019】
この情報記録プログラムを、コンピュータを備える情報記録装置上で実行することにより、前述の情報記録装置を実現することができる。
【0020】
以下、本発明の好適な実施例を図面に基づいて説明する。
[情報記録媒体の例]
先ず、図1を参照して、情報記録媒体の例としての光ディスクについて説明する。ここに、図1は、上側に複数のエリアを有する光ディスクの構造を概略平面図で示すと共に、下側にその径方向におけるエリア構造を概念図で対応付けて示すものである。
図1に示すように、光ディスク100は、例えば、記録(書き込み)が複数回又は1回のみ可能な、光磁気方式、相変化方式等の各種記録方式で記録可能とされており、DVDと同じく直径12cm程度のディスク本体上の記録面に、センターホール102を中心として内周から外周に向けて、PCA(Power Calibration Area)107、リードインエリア104、データ記録エリア106及びリードアウトエリア108が設けられている。そして、各エリアには、例えば、センターホール102を中心にスパイラル状或いは同心円状に、グルーブトラック及びランドトラックが交互に設けられており、このグルーブトラックはウォブリングされてもよいし、これらのうち一方又は両方のトラックにプレピットが形成されていてもよい。
【0021】
リードインエリア104内には実際のデータ記録及び試し書きなどに使用されるストラテジを記録したストラテジ記録エリア103が設けられている。試し書きは、ストラテジ記録エリア103内に記録された各種のストラテジを用いてOPCエリアとしてのPCA107内で行われるが、これについてはさらに後述する。
【0022】
尚、本発明の情報記録の対象となる情報記録媒体は、このような三つのエリアを有する光ディスクには特に限定されない。例えば、リードインエリア104やリードアウトエリア108が存在せずとも、以下に説明するファイル構造は構築可能である。また、後述するように、リードインエリア104やリードアウトエリア108は更に細分化された構成であってもよい。
【0023】
[情報記録再生装置の構成]
次に、図2を参照して、実施例に係る情報記録再生装置300の構成について説明する。ここに、図2は、実施例に係る情報記録再生装置300のブロック図である。尚、情報記録再生装置300は、光ディスク100に記録データを記録する機能と、光ディスク100に記録された記録データを再生する機能とを備える。
【0024】
図2を参照して情報記録再生装置300の内部構成を説明する。情報記録再生装置300は、CPU354の制御下で、光ディスク100に情報を記録すると共に、光ディスク100に記録された情報を読み取る装置である。
【0025】
情報記録再生装置300は、光ディスク100、スピンドルモータ351、光ピックアップ352、信号記録再生手段353、CPU(ドライブ制御手段)354、メモリ355、バス357、LDドライバ358、OPCパターン発生器359及びデータ入出力制御手段306を備えて構成されている。
【0026】
スピンドルモータ351は光ディスク100を回転及び停止させるもので、光ディスクへのアクセス時に動作する。より詳細には、スピンドルモータ351は、図示しないサーボユニット等によりスピンドルサーボを受けつつ所定速度で光ディスク100を回転及び停止させる。
【0027】
8xの記録速度でデータを記録する場合には、4x或いは6xの記録速度でデータを記録する場合と比較してより高速に光ディスク100が回転するようにスピンドルモータ351は動作する。6xの記録速度でデータを記録する場合には、4xの記録速度でデータを記録する場合と比較してより高速に光ディスク100が回転するようにスピンドルモータ351は動作する。
【0028】
光ピックアップ352は光ディスク100への記録再生を行うもので、レーザ装置(例えば、レーザダイオード等)とレンズとを含んで構成される。より詳細には、光ピックアップ352は、光ディスク100に対してレーザビーム等の光ビームを、再生時には読み取り光として第1のパワーで照射し、記録時には書き込み光として第2のパワーで且つ変調させながら照射する。
【0029】
信号記録再生手段353は、スピンドルモータ351と光ピックアップ352を制御することで光ディスク100に対して記録再生を行う。
【0030】
メモリ355は、記録再生データのバッファ領域や、記録再生データを信号記録再生手段353で使用出来るデータに変換する時の中間バッファとして使用される領域などディスクドライブ300におけるデータ処理全般において使用される。また、メモリ355はこれらレコーダ機器としての動作を行うためのプログラムが格納されるROM領域と、映像データの圧縮伸張で用いるバッファやプログラム動作に必要な変数が格納されるRAM領域などから構成される。
【0031】
本実施例では特に、メモリ355には、後述する8x用記録ストラテジ(或いは、4x用記録ストラテジ及び6x用記録ストラテジ)や4x用特別OPCストラテジや6x用特別OPCストラテジ、或いはその他各種ストラテジが記録されていてもよい。
【0032】
CPU(ドライブ制御手段)354は、信号記録再生手段353、メモリ355と、バス357を介して接続され、各制御手段に指示を行うことで、情報記録再生装置300全体の制御を行う。通常、CPU354が動作するためのソフトウェアは、メモリ355に格納されている。
【0033】
LDドライバ358は、光ピックアップ352のレーザダイオード等を所定の周波数で発振させることで、該光ピックアップ352から照射されるレーザビームを制御する。
【0034】
OPCパターン発生器359は、後述する各種ストラテジ(特に、mx用特別OPCストラテジやnx用平常OPCストラテジ等)を用いて、所定のOPCパターンを生成するために用いられる。
【0035】
データ入出力制御手段306は、情報記録再生装置300に対する外部からデータ入出力を制御し、メモリ355上のデータバッファへの格納及び取り出しを行う。
【0036】
[最適記録パワー決定]
次に、本発明による最適記録パワーの決定方法について説明する。本発明による最適記録パワー決定方法を簡単に説明すると、最初に、実データ(データ記録エリア106に実際に記録されるユーザデータなどであり、試し書き用データなどと区別するためにこう呼ぶ。)をデータ記録エリア106に記録するのに先立って、いわゆるOPC(Optimum Power Control)による試し書きを行う。試し書きにより、実記録パワー情報を取得し、これに基づいて記録パワーを決定する。この試し書きは、後述する特別OPCストラテジを用いて行われる。実記録パワー情報とは、記録パワーと、各種の記録品質評価パラメータとの関係を示す情報である。記録品質評価パラメータは、光ディスクに記録されたデータの記録品質を評価するために使用されるパラメータであり、アシンメトリ、β値、変調度などを含む。
【0037】
こうして試し書きが終了した後、決定された記録パワーを用いて実データをデータ記録エリア106内に記録する。実データの記録開始後、所定量の実データが記録された時点で、一時的に記録を停止し、記録した実データを再生して記録品質を評価する。そして、記録品質が適正範囲内に無い場合には、試し書き時に取得した実記録パワー情報を用いて記録パワーの補正を行う。
【0038】
次に、記録品質評価パラメータについて説明しておく。記録品質評価評価パラメータは、光ディスクに記録されたデータの記録品質を評価するために使用されるパラメータであり、アシンメトリ、変調度、β値を含む。
【0039】
図3に変調度及びアシンメトリを概念的に示す。「変調度」とは、記録媒体に記録したデータを読み出して得られるRF信号(記録媒体からの戻り光を光電変換して得られるものであり、DC成分を含むRF信号)の振幅と、RF信号のゼロレベルとピークレベルとの差との割合をいう。図3には、記録媒体を再生して得られるRF信号波形の例を示している。即ち、変調度は、RF信号振幅I14と、ゼロレベルとピークレベルとの差I14Hとの割合であり、下式で与えられる。
変調度 = I14/I14H (1)
【0040】
一般に、記録パワーが足りないなどの理由で、記録媒体に対する記録マークの形成が不十分であると変調度が低くなり、再生信号におけるノイズの影響が大きくなる。よって、S/N比が低下し、再生互換性に悪影響が生じる。なお、再生互換性があるとは、ある記録装置により記録した記録媒体を他の再生装置により適正に再生できることをいう。
【0041】
「アシンメトリ」とは、記録媒体から再生されたRF信号において、最大振幅を与える所定の長マークに対する、最短マークの位置をいい、具体的には下式で与えられる。
アシンメトリ = {(I14H+I14L)/2−(I3H+I3L)/2}/I14 (2)
即ち、図3に示すように、所定の長マーク(14Tマーク)に対応するRF信号のレベルI14HとI14Lとの中間レベルと、最短マークに対応するRF信号のレベルI3HとI3Lの中間レベルとの位置関係を示している。
【0042】
図4に、β値の定義を模式的に示す。β値は、RF信号の平均レベルと、RF信号の振幅レベルのセンター値(全マークのセンター値)とのずれ量を示すパラメータである。RF信号の平均レベルは、例えばRF信号をLPFに通過させることにより得ることができる。また、RF信号の振幅レベルのセンター値は、再生した記録データに対応するRF信号の最小レベルと最大レベルから計算により求めることができる。β値は、「0」に近い値、即ちRF信号の平均レベルと、RF信号の振幅レベルのセンター値とのずれが小さいほど好ましい。
【0043】
次に、実記録時と試し書き時の記録パワーの特性について説明する。図5(a)は実記録時と試し書き(OPC)時の記録パワーとジッターとの関係を示し、図5(b)は実記録時と試し書き時の記録パワーとアシンメトリとの関係を示す。なお、図5(a)及び(b)において、試し書きによる特性は「OPC」として示している。ここでの試し書きは、試し書き用の特別OPCストラテジを用いて行ったものである。特別OPCストラテジは、実記録時のストラテジと時間幅でほぼ同一幅(特に3Tで同一幅)となるように生成されたものであり、試し書き時と実記録時とでレーザ出射波形がほぼ同一となる。
【0044】
図5(a)に示すように、記録パワーとジッターとの関係は、実記録時と試し書き時においてずれが生じている。一方、図5(b)に示すように、記録パワーとアシンメトリとの関係は、実記録時と試し書き時においてほぼ一致しており、記録パワーに対するアシンメトリの変化率は、実記録時の必要記録パワー領域、即ち実記録において使用する記録パワー領域においてほぼ一致している。よって、上記の特別OPCストラテジによる試し書きにより、実記録時と同等な記録パワーとアシンメトリとの関係を取得することができる。言い換えれば、上記の特別OPCストラテジを用いて試し書きを行うことにより、実記録時と同等の記録パワーで記録を行った場合の特性(実記録パワー情報)を得ることができる。
【0045】
前述のように、試し書きは実記録時と同じ線速度で行うことが望ましいが、通常、試し書きはディスクの再内周で行われるため、特に6x、8xなどの高速記録の場合には実記録時と同様の記録パワーで試し書きを行うことができず、一般的に低速記録時の最適記録パワーから高速記録時の最適記録パワーを予測する手法が採用されている。しかし、これには予測誤差が含まれ、精度は十分ではない。この点、上記の特別OPCストラテジによれば、実記録時と同等のレーザ出射波形(同等の時間幅)で試し書きを行うことができるので、実記録時と同等の記録パワーとアシンメトリの関係を取得することができる。これは、予測による場合と比較して精度が格段によい。よって、実記録時における記録パワーの補正に、試し書きにおいて得られた特性を用いることにより、高精度で記録パワーの補正を高精度で行うことができる。
【0046】
なお、図5(b)に示すように、通常、実記録時と特別OPCストラテジによる試し書き時における記録パワーとアシンメトリの関係には一定のオフセットが生じる(図5(b)では、オフセット分だけ各特性が上下方向にずれている)が、このオフセット分はほぼ固定値であるので、この固定オフセット分を考慮して記録パワーの補正を行うこととすれば、オフセットの存在は問題とならない。また、特別OPCストラテジの設定によっては、このオフセット値を「0」とすることも可能であり、その場合には、記録パワーの補正においてオフセット分を考慮する必要は無くなる。
【0047】
ここでは、特別OPCストラテジによる試し書きで取得した記録パワーとアシンメトリとの関係を用いて、実記録時における記録パワーを補正すると述べたが、これは一例にすぎない。前述のように、記録品質評価パラメータとしては、アシンメトリ以外に、β値、変調度などを使用することができる(特別OPCストラテジによる試し書きで取得した、記録パワーと記録品質評価パラメータのいずれかとの関係を示す情報を、「実記録パワー情報」と呼ぶ)。よって、試し書き時に実記録パワー情報として、記録パワーとβ値との関係、又は、記録パワーと変調度との関係を取得しておき、実記録時においてその関係に基づいて記録パワーを補正することとしてもよい。いずれの場合でも、特別OPCストラテジによる試し書きにおいて取得した実記録パワー情報を用いて記録パワーを行う限り、実記録時において高精度の補正が可能となる。
【0048】
次に、記録メディア毎の特性のばらつきに関して説明する。図6(a)に、あるメディアAの記録パワーとジッターの関係、図6(b)にメディアAの記録パワーとアシンメトリとの関係を示す。また、図7(a)に、あるメディアBの記録パワーとジッターの関係、図7(b)にメディアBの記録パワーとアシンメトリとの関係を示す。ここで、メディアAは好ましくない特性を有するメディアの例であり、メディアBは好ましい特性を有するメディアの例である。
【0049】
図7(a)及び(b)に示されるように、メディアBは小さいジッター値を示す記録パワー領域が大きいので記録パワーに対する記録マージンが広く、かつ、記録メディアの内周位置、中周位置及び外周位置におけるジッター及びアシンメトリのばらつきが小さい。通常、光ディスクにおいては、記録面の内周から外周に至る位置に依存して記録感度差(「面内記録感度差」ともいう。)を有する。一般的に、外周位置は記録感度が低い傾向があるが、メディアBは面内記録感度差によるRF信号の記録品質の差が少ない。
【0050】
これに対し、図6(a)及び(b)に示されるように、メディアAは記録パワーに対する記録マージンが狭く、かつ、メディアの面内記録感度差に起因する記録品質の劣化が大きい。よって、前述の特別OPCストラテジを用いた試し書きにより最適記録パワーを決定し、その記録パワーで実データの記録を行ったとしても、記録マージンが狭く、ディスク内外周位置における記録品質の劣化に起因して、試し書きにより得られた最適記録パワーが、実記録時における最適記録パワーとはずれてしまうことが生じる。
【0051】
そこで、本発明では、試し書き時に最適記録パワーを決定し、それを用いて実データの記録を開始した後、一時的に記録を停止して、記録データの記録品質を確認し、必要に応じて記録パワーの補正を行う。即ち、実記録中に、必要に応じて記録パワーの確認及び補正を行う。これにより、上記のメディアAのように望ましくない記録特性を有するメディアについて記録品質の悪化を防止するとともに、メディアBのように望ましい記録特性を有するメディアについても記録品質の安定を図る。
【0052】
次に、本発明による最適記録パワー決定処理の第1例について説明する。図8は、最適記録パワー決定処理の第1例のフローチャートである。なお、この処理は、図2に示したCPU354が、メモリ355又は他のメモリなどに記憶された最適記録パワー決定処理のプログラムを実行し、図2に示す各構成要素を制御することにより実現される。
【0053】
まず、CPU354は、ユーザからの記録開始指示が入力されたか否かを判定する(ステップS1)。記録開始指示が入力されると(ステップS1;Yes)、CPU354はPCA107内で前述の特別OPCストラテジを用いた試し書きを行い、記録パワーを決定する(ステップS2)。この試し書きにより、CPU354は、記録パワーと記録品質評価パラメータ(アシンメトリ、β値又は変調度)との関係を示す実記録パワー情報を取得する。なお、特別OPCストラテジを用いた試し書き(OPC)については、後に詳しく述べる。
【0054】
試し書きが終了すると、CPU354は実記録、即ちユーザデータなどの実データのデータ記録エリア106への記録を開始する。そして、予め決められた所定量の実データを記録すると(ステップS3)、記録を一時停止し、記録した実データを再生する(ステップS4)。
【0055】
ここで、「所定量」のデータとは、記録データの再生RF信号に基づいて、アシンメトリなどの記録品質評価パラメータを算出するために必要な範囲で最小のデータ量である。即ち、記録品質を判定するためにある程度のデータ量が必要であるが、既に実データを記録しているので、最小限のデータ量にとどめて記録パワーの確認、補正を行う。実際には、記録を一時停止した際には、その位置でトラックジャンプを繰り返すこととなるので、所定量は例えば1トラックに対応するデータ量とすることができる。また、そのトラックジャンプ時に隣接トラックからのクロストークの影響を排除するためには、所定量を3トラック分のデータ量とし、その3トラックのうち、中央のトラックでトラックジャンプを繰り返すこととしてもよい。
【0056】
ステップS4で、CPU354は記録した実データを再生し、再生RF信号に基づいてアシンメトリなどの品質評価パラメータを算出する。そして、算出した品質評価パラメータに基づいて、記録品質が所定範囲内であるか否かを判定する(ステップS5)。
【0057】
記録品質が所定範囲内であるか否かの判定は、具体的には以下のように行われる。品質評価パラメータとしてアシンメトリ又はβ値を用いる場合には、例えばその値が0%を中心として5%pp(peak to peak)以内であるときに記録品質が所定範囲内にあると判定することができる。また、DVD−Rなどの規格における望ましいアシンメトリの範囲などに基づき、アシンメトリ又はβ値が0〜10%の範囲内であるときに記録品質が所定範囲内であるとすることもできる。もしくは、アシンメトリ又はβ値が、記録に使用するメディアのアシンメトリマージンの約50%以内であるときに記録品質が所定範囲内にあると判定することもできる。また、記録品質評価パラメータとして変調度を使用する場合には、再生RF信号から得られた変調度が所定の目標変調度値のから所定範囲(例えば2.5%程度)内であるときに、記録品質が所定範囲内にあると判定することができる。
【0058】
上記いずれかの基準により、記録品質が所定範囲内にないと判定された場合、CPU354は試し書きにより得られた実記録パワー情報に基づいて、記録パワーを補正する(ステップS6)。今、仮に試し書き時に実記録パワー情報として、図5(b)に示す記録パワー対アシンメトリの特性(OPCのグラフの方)が取得されているとすると、CPU354はこの特性を参照して、記録パワーの補正量を決定する。例えば、この特性に基づいて、アシンメトリが0%となるように、現在の記録パワーを補正する。
【0059】
そして、CPU354はステップS3へ戻り、再度ステップS3〜S5の処理を繰り返す。こうして、ステップS5において記録品質が所定範囲内にあると判断されると、最適記録パワー決定処理は終了する。なお、その後は、当該最適記録パワー決定処理により決定された(即ち、必要な補正後の)記録パワーにより、実データの記録が継続される。
【0060】
このように、本発明では、試し書きにおいて得られた記録パワーで実データの記録を開始した後、所定量の実データが記録された時点で一時的に記録を停止して、記録品質の確認を行う。そして、記録品質が所定範囲内にない場合には、記録パワーの補正を行う。よって、記録パワーマージンが小さいメディアや面内記録感度差が大きいメディアなどについても、最適記録パワーを高精度で決定することができ、実記録開始後にRF信号品質がパワーマージン外となってしまう確率を低下させることができる。また、記録パワーの補正は、特別OPCストラテジを用いた試し書きにより得られた、実記録時の特性と同等の実記録パワー情報に基づいて行われるため、高精度で最適記録パワーを決定することができる。
【0061】
次に、最適記録パワー決定処理の第2例について説明する。上記の処理では、実記録の開始直後に記録パワーの確認及び補正を行っているが、その後の実記録継続中には記録パワーの確認及び補正を行っていない。しかし、前述のように、記録メディアによっては記録面内の記録位置(内周、中周、外周)によって面内記録感度差が存在するので、記録位置によって最適記録パワーが異なることがありうる。また、実記録を継続すると、レーザ光の光源であるレーザダイオード(LD)などの温度が上昇し、記録波長が変動するなどして最適記録パワーが変動することがありうる。よって、以下の第2例では、第1例と同様に実記録開始直後に記録パワーの確認を行うことに加え、所定データ量の記録時及び/又は所定以上の温度変化時にも記録パワーの確認を行う。
【0062】
図9に最適記録パワー決定処理の第2例のフローチャートを示す。ステップS11〜S16は、図8に示す第1例のステップS1〜S6と同一であるので説明は省略する。ステップS15で、実記録開始直後の記録パワー確認が終了すると、CPU354は記録を終了するか否かを判定する(ステップS17)。これは、例えばユーザが指定した実データを全て記録したか否かを判定することにより行うことができる。
【0063】
記録すべき実データが残っている場合、CPU354は所定のデータ量を記録したか、及び/又は、記録開始時から所定以上の温度変化があったかを判定する(ステップS18)。これらの判定は、いずれか一方のみを採用してもよいし、両方を採用してもよい。
【0064】
ここでいう「所定のデータ量」とは、メディア毎の面内記録感度差が生じる程度に光ディスク上の記録位置が移動するデータ量である。例えば、前述のように、光ディスクを内周位置、中周位置、外周位置に分類し、各位置においてステップS15の記録パワー確認を行うように所定のデータ量を決定することができる。また、通常、光ディスクの面内記録感度差は外周へ向かうほど大きくなる傾向があるので、内周位置、中周位置で記録パワーの確認を行った後、外周位置では確認回数を増加させたり、確認ステップを短くしたりしてもよい。例えば、直径12cmの光ディスクの場合、外周位置に対応する中心から55mmの位置より内周側では10mm毎に記録パワーの確認を行い、それより外周側では1mm毎に記録パワーの確認を行うように所定のデータ量を決定してもよい。
【0065】
また、「所定の温度変化」とは、光源であるLDの出力パワーに変動が生じる程度の温度変化に設定することができる。この温度変化は、ピックアップ内のLD近傍に配置された温度センサからの出力に基づいて算出することができる。具体的には、記録開始時のLDの温度を初期温度として検出、記憶しておき、その初期温度に対して、所定以上の温度変化があったときにステップS15の記録パワー確認を行い、以後は所定以上の温度変化が生じるたびに記録パワー確認を行うこととすればよい。
【0066】
ステップS18において、所定のデータ量が記録された、及び/又は、所定以上の温度変化が検出されたと判断された場合には、CPU354はステップS14と同様に、記録を一時停止し、その際の最終記録部分を再生する(ステップS19)。そして、処理はステップS15へ進み、記録品質が所定範囲内にあるか否かの判定がなされる。こうして、実記録中にも、所定のデータ量が記録された場合、及び/又は、所定以上の温度変化が検出された場合には、記録パワーの確認及び必要な補正が行われ、全ての実データが記録されたときに(ステップS17;Yes)、処理は終了する。
【0067】
このように、最適記録パワー決定処理の第2例によれば、実記録の開始直後のみならず、継続的な実記録中に、最適記録パワーの変動要因が発生しうるタイミングで繰り返し記録パワーの確認及び必要な補正を行うので、光源であるLDの特性ばらつき及び温度変化、環境変化、記録装置(ドライブ装置)間の記録品質のばらつき、記録メディアの記録特性のばらつきなどを吸収し、常に最適記録パワーで記録を行うことが可能となる。
【0068】
[特別OPCストラテジによる試し書き(OPC処理)]
次に、上記の最適記録パワー決定処理のステップS2及びS12にて行われる、特別OPCストラテジによる試し書き(OPC処理)について説明する。この特別OPCストラテジによる試し書きは、実記録時とは異なった線速度においても、実記録時とほぼ同等の記録パワーで試し書きを行う点に特徴を有する。これにより、実記録時に使用する記録パワーと記録品質評価パラメータとの関係、即ち実記録パワー情報を得ることが可能となる。
【0069】
尚、以下の説明において、定数xを所定の基準値として、光ディスクへのデータの記録速度を4x、6x及び8xにて示す。即ち、8xにて表される記録速度は、4xにて表される記録速度の概ね2倍であることを示している。この基準値たるxは、ドライブや光ディスクの規格等により定められるものであってもよいし、或いは情報記録再生装置のメーカ等により任意に定められるものであってもよい。以下の説明では、光ディスク100の記録速度として、4x、6x及び8xの3種類が存在するものとして説明を進める。そして、本発明における「第1記録速度」の一具体例が、「4xの記録速度」或いは「6xの記録速度」に相当し、本発明における「第2記録速度」が、本実施例における「8xの記録速度」に相当する。
【0070】
また以下の説明に頻出する各種ストラテジについてここで簡単に説明する。「lx用記録ストラテジ(l=4、6、8)」は、nxの記録速度で通常のコンテンツ等を含む各種データの記録を行うためのレーザビームの波形等を制御するために用いられるストラテジ情報である。即ち、本発明における「記録ストラテジ」の一具体例に相当する。
【0071】
「mx用特別OPCストラテジ(m=4、6)」は、8xの記録速度における最適記録パワーを算出するために、mxの記録速度で後述のOPCパターンを記録する際のレーザビームの波形等を制御するために用いられるストラテジ情報である。即ち、本発明における「特別OPCストラテジ」の一具体例に相当する。
【0072】
「nx用平常OPCストラテジ(n=4、6)」は、nxの記録速度における最適記録パワーを算出するために、nxの記録速度で後述のOPCパターンを記録する際のレーザビームの波形等を制御するために用いられるストラテジ情報である。即ち、本発明における「平常OPCストラテジ」の一具体例に相当する。
【0073】
本実施例では特に、図1下部に示すように、リードインエリア104内に、本発明における「制御エリア」の一具体例たるストラテジ記録エリア103が設けられている。当該ストラテジ記録エリア103には、後述の8x用記録ストラテジ及び後述の4x用特別OPCストラテジ(或いは、6x用特別OPCストラテジ)が記録されている。8x用記録ストラテジとは、8xの記録速度でデータの記録を行うためのレーザビームの波形等を制御するための制御情報である。4x用特別OPCストラテジとは、8xの記録速度における最適記録パワーを算出するために、4xの記録速度でOPCパターンを記録する際のレーザビームの波形等を制御するための制御情報である。6x用特別OPCストラテジとは、8xの記録速度における最適記録パワーを算出するために、6xの記録速度でOPCパターンを記録する際のレーザビームの波形等を制御するための制御情報である。
【0074】
加えて、4xの記録速度でデータの記録を行うためのレーザビームの波形等を制御するための4x用記録ストラテジや6xの記録速度でデータの記録を行うためのレーザビームの波形等を制御するための6x用記録ストラテジが記録されている。更に、4xの記録速度における最適記録パワーを算出するために、4xの記録速度でOPCパターンを記録する際のレーザビームの波形等を制御するための4x用平常OPCストラテジや、6xの記録速度における最適記録パワーを算出するために、6xの記録速度でOPCパターンを記録する際のレーザビームの波形等を制御するための6x用平常OPCストラテジが記録されている。
【0075】
そして、これらのストラテジは、ランドトラック上に形成されるランドプリピット(LPP)により記録されていてもよいし、データ(或いは、ファイル)として記録されていてもよい。特にデータとして記録しておけば、当該ストラテジを適宜記録し直すことも可能であるという利点を有する。なお、ストラテジ記録エリア103は、リードインエリア104内に設けられなくとも、データ記録エリア106或いはリードアウトエリア108内に設けられていてもよい。
【0076】
続いて図10及び図11を参照して、本実施例に係る情報記録装置の基本動作について説明する。ここに、図10は、本実施例に係る情報記録装置の基本動作の流れを示すフローチャートであり、図11は、16パワーステップの場合の1回のOPC処理を示した模式的タイミングチャート図である。
【0077】
図10に示すように、CPU354の制御の下に、光ディスク100へのデータの記録速度が8x未満か否かが判定される(ステップS101)。このとき、その記録速度が具体的にどの数値を示しているかを判定可能に構成されていることが好ましい。
【0078】
この判定の結果、記録速度が8x未満(即ち、4x又は6x)であると判定されれば(ステップS101:Yes)、夫々の記録速度に対応する最適記録パワーがOPC処理により算出される。具体的には、例えば記録速度が4xであると判定されれば、4xの記録速度を実現できるように光ディスク100を回転させ、4x用平常OPCストラテジを用いてOPC処理を行う。記録速度が6xであると判定されれば、6xの記録速度を実現できるように光ディスク100を回転させ、6x用平常OPCストラテジを用いてOPC処理を行う。
【0079】
これらの4x用平常OPCストラテジ(或いは、6x用平常OPCストラテジ)は、リードインエリア104内のストラテジ記録エリア103から取得してもよいし、或いは当該情報記録再生装置300が備えるメモリ355等から取得してもよい。
【0080】
ここで、OPC処理について詳細な説明を加える。まず、CPU354による制御下で、光ピックアップ352がリードインエリア104内に設けられたPCA107などのOPCエリアへ移動され、OPCパターン発生器358及びLDドライバ359の動作により、順次段階的に(例えば、相互に異なる16段階の)記録レーザパワーが切り換えられて、OPCパターンがOPCエリアに記録される。具体的には、図11に示すような基準OPCパターンが記録される。例えば2Tパルスに相当する短ピット(マーク)及び8Tパルスに相当する長ピット(マーク)を夫々同一の長さの無記録区間(スペース)と共に交互に形成した記録パターンが一つの例として挙げられる。本実施例では、このときのレーザビームの波形として、4x用平常OPCストラテジ(或いは、6x用平常OPCストラテジ)により規定される波形が用いられ、基準OPCパターンと異なる所定のOPCパターンが記録される。また、後述するステップS102においては、4x用特別OPCストラテジ(或いは、6x用特別OPCストラテジ)により規定される波形が用いられ基準OPCパターンと異なる所定のOPCパターンが記録される。
【0081】
LDドライバ358は、このOPCパターン発生器359から出力されるOPCパターンにより、レーザパワーを順次段階的に切り換えるように、光ピックアップ352内の半導体レーザを駆動する。
更に、このようなOPCエリアへの試し書きの完了後には、CPU354の制御下で、該OPCエリアにおいて試し書きされたOPCパターンが再生される。具体的には、図示しないエンベロープ検波器に入力されたRF信号より、当該RF信号のエンベロープ検波のピーク値及びボトム値がサンプリングされる。その後、このようなOPCパターンの再生が、1回のOPC処理において、例えば記録されたOPCパターンの回数に応じて行われた後に、最適記録パワーが決定される。即ち、これらのピーク値及びボトム値より求められるアシンメトリから、例えば記録特性の品質を表すジッター値が最小付近となるような最適記録パワーが算出される。
【0082】
他方、ステップS101における判定の結果、記録速度が8x未満でない(即ち、8xである)と判定されれば(ステップS101:No)、4x用特別OPCストラテジ及び6x用特別OPCストラテジを用いてOPC処理が行なわれ、本発明における「パワー算出手段」の一具体例たるCPU354の動作により、8xの記録速度における最適記録パワーが算出される(ステップS102)。この4x用特別OPCストラテジ及び6x用特別OPCストラテジは、本発明における「取得手段」の一具体例たるCPU354の制御の下に、光ディスク100のストラテジ記録エリア103から取得するように構成してもよいし、或いはメモリ355に当該ストラテジが記録されていれば、当該メモリ355より取得するように構成してもよい。
【0083】
ここで、これまでの動作において用いられる各種ストラテジ及び該ストラテジにより規定されるレーザビームの波形について、図12及び図13を参照してより詳細に説明する。ここに、図12は、光ピックアップから照射されるレーザビームのパルス波形を示す説明図であり、図13は、夫々のストラテジに対応するレーザビームのパルス波形を示す説明図である。
【0084】
まず、図12を参照して、OPC処理に用いられる4x用特別OPCストラテジ、並びにその比較として、通常の記録動作に用いられる4x用記録ストラテジ及び8x用記録ストラテジにより照射されるレーザビームの波形パルスについて説明する。
【0085】
図12(a)に示すように、4x用記録ストラテジにより規定されるレーザビームの波形は、パルスの立ち上がりと立下りが振動する波形を有している。このような立ち上がり及び立下りが振動する波形は、情報記録再生装置300の特性の違いや光ピックアップ352の経年変化による劣化やレーザビームの出射パワーの相違に起因して発生する。そして、情報記録再生装置300は、図12(a)に示すレーザビームの波形を用いて、4xの記録速度で光ディスク100に所定のデータを記録することができる。
【0086】
一方、図12(a)に示されるパルスを用いて記録されるデータと同一のデータを8xの記録速度で光ディスク100に記録するためには、図12(b)に示される8x用記録ストラテジにより規定されるレーザビームのパルス波形を用いる。図12(b)に示すパルスは、時間軸上において、図12(a)に示すパルスを半分にした波形となっている。これは、8xの記録速度は、4xの記録速度と比較して概ね2倍となっているため、光ディスクの回転速度(或いは、所定の記録領域における線速度)も同様に、8xの場合は4xの場合と比較して概ね2倍となっている。従って、同一のピットを形成するために必要なレーザビームの照射期間は、概ね半分で足りることに起因する。
【0087】
図示しない6xの記録速度でのデータの記録に用いられる6x用記録ストラテジも同様に、図12(a)に示すパルス波形よりもパルス幅が短く、且つ図12(b)に示すパルス波形よりもパルス幅が長い波形を有する。そして、情報記録装置300は、これらの各種記録ストラテジにより規定されるレーザビームを用いて、4x、6x或いは8xの記録速度でデータの記録を行う。加えて、4x用平常OPCストラテジにより規定されるレーザビームを用いてOPCパターンを記録することで、4xの記録速度における最適記録パワーが算出される。図示しない6x用平常OPCストラテジにより規定されるレーザビームを用いてOPCパターンを記録することで、6xの記録速度における最適記録パワーが算出される。
【0088】
他方、8xの記録速度における最適記録パワーを算出する際には、本実施例に係る情報記録装置300は、図12(b)に示すような8x用記録ストラテジにより規定されるレーザビームを用いてOPCパターンを記録する必要はない。本実施例では、8xの記録速度における最適記録パワーを求める際には、図12(c)に示す4x用特別OPCストラテジにより規定されるレーザビームのパルス波形を用いて、且つ4xの記録速度でOPCパターンを記録する。即ち、本来の4x用記録ストラテジと比較してそのパルス幅が短くなった(或いは、8x用記録ストラテジと概ね同一形状の)パルス波形を用いてOPC処理を行う。
【0089】
このOPC処理に用いられるパルス波形、即ち、4x用特別OPCストラテジ及び6x用特別OPCストラテジについて、図13を参照してより詳細に説明する。
【0090】
図13(a)中左側のグラフに示すように、8xの記録速度で光ディスク100に“3Tパターン”のデータを記録する際には、10nsのパルスに相当するレーザビームを照射する。また、“5Tパターン”のデータを記録する際には、図13(a)中右側のグラフに示すような20nsのパルスに相当するレーザビームを照射する。これらのパルスの形状は、例えばCPU354の制御の下に、8x用記録ストラテジに基づいて規定される。
【0091】
図13(b)中左側中部のグラフに示すように、6xの記録速度で光ディスク100に“3Tパターン”のデータを記録する際には、15nsのパルスに相当するレーザビームを照射する。また、“5Tパターン”のデータを記録する際には、図13(b)中右側中部のグラフに示すような30nsのパルスに相当するレーザビームを照射する。これらのパルスの形状は、例えばCPU354の制御の下に、6x用記録ストラテジに基づいて規定される。
【0092】
対して、8xの記録速度における最適記録パワーを算出するために、6xの記録速度で“3Tパターン”のOPCパターンを記録する際には、図13(b)中左側下部に示すように、6x用特別OPCストラテジに基づき、10nsのパルスに相当するレーザビームを照射する。即ち、8xの記録速度で“3Tパターン”を記録する際と同様の形状を有するパルスを照射する。他方、6xの記録速度で“5Tパターン”のOPCパターンを記録する際には、図13中(b)右側下部に示すような25nsのパルスに相当するレーザビームを照射する。このときのパルス幅は、8xの記録速度で“5Tパターン”のデータを記録する際より長い。
【0093】
図13(c)中左側中部のグラフに示すように、4xの記録速度で光ディスク100に“3Tパターン”のデータを記録する際には、20nsのパルスに相当するレーザビームを照射する。また、“5Tパターン”のデータを記録する際には、図13(c)中右側中部のグラフに示すような40nsのパルスに相当するレーザビームを照射する。これらのパルスの形状は、例えばCPU354の制御の下に、4x用記録ストラテジに基づいて規定される。
【0094】
対して、8xの記録速度における最適記録パワーを算出するために、4xの記録速度で“3Tパターン”のOPCパターンを記録する際には、図13(c)中左側下部に示すように、4x用特別OPCストラテジに基づき、10nsのパルスに相当するレーザビームを照射する。即ち、8xの記録速度で“3Tパターン”を記録する際と同様の形状を有するパルスを照射する。他方、4xの記録速度で“5Tパターン”のOPCパターンを記録する際には、図13(c)中右側下部に示すような30nsのパルスに相当するレーザビームを照射する。このときのパルス幅は、8xの記録速度で“5Tパターン”を記録する際より長い。
【0095】
以上の説明の如く、4x用特別OPCストラテジ及び6x用特別OPCストラテジを用いて、8xの記録速度における最適記録パワーを算出する際には、本来データを記録する際に用いる4x用記録ストラテジ或いは6x用記録ストラテジにより規定されるレーザビームのパルスと比較してより短いパルスのレーザビームを照射してOPCパターンを記録する。より具体的に説明すると、6x用特別OPCストラテジによれば、“3Tパターン”のデータを記録するためのパルスは、そのパルス幅が15nsから10nsに(即ち、約67パーセントに)短縮される。また、“5Tパターン”のデータを記録するためのパルスは、そのパルス幅が30nsから25nsに(即ち、約83パーセントに)短縮される。一方、4x用特別OPCストラテジによれば、“3Tパターン”のデータを記録するためのパルスは、そのパルス幅が20nsから10nsに(即ち、約50パーセントに)短縮される。また、“5Tパターン”のデータを記録するためのパルスは、そのパルス幅が40nsから30nsに(即ち、約75パーセントに)短縮される。
【0096】
即ち、いずれの場合も、特別OPCストラテジに基づき、本来のデータを記録する際に用いる記録ストラテジにより規定されるパルス幅よりも、8x用記録ストラテジにより規定されるパルス幅に近づくように、そのパルス幅が変化する。特に、短いパターンである“3Tパターン”のデータにおいては、本来8xの記録速度でデータを記録する際に用いられるパルス幅と同じパルス幅のレーザビームが照射されている。より具体的に言い換えると、相対的に短いパターンのデータ(例えば“3Tパターン”等)は相対的により短く、相対的に長いパターンのデータ(例えば“11Tパターン”等)は、相対的に短いパターンのデータの変化ほど短くならないように変化するように、4x用特別OPCストラテジ及び6x用特別OPCストラテジは規定されている。
【0097】
このように、4x用特別OPCストラテジ及び6x用特別OPCストラテジを用いることにより、8x用記録ストラテジにより規定されるパルスの形状と同一、概ね同一或いは近似するパルス幅を用いて、4x及び6xの記録速度でOPCパターンを記録することができる。またこのとき、図13(a)に示される8x用記録ストラテジにより規定されるレーザビームの波形の振幅と、図13(b)及び図13(c)に示される4x用特別OPCストラテジ及び6x用特別OPCストラテジにより規定されるレーザビームの波形の振幅とは同一或いは概ね同一であることが好ましい。即ち、実際に8xの記録速度でデータを記録する際のレーザパワーと同一或いは概ね同一のレーザパワーにてOPC処理を行うことが好ましい。
【0098】
そして、この4x用特別OPCストラテジ及び6x用特別OPCストラテジを用いてOPC処理を行った結果について、図14を参照して説明する。ここに、図14は、OPC処理の結果得られるデータを示すグラフである。
【0099】
図14(a)に示すように、4xの記録速度で4x用特別OPCストラテジを用いてOPCを行った結果のグラフと6xの記録速度で6x用特別OPCストラテジを用いてOPCを行った結果のグラフが示される。
【0100】
上述したように、相対的に短いパターンのデータは相対的により短く、相対的に長いパターンのデータは相対的に短いパターンのデータの変化ほど短くならないように変化させることで、4x用特別OPCストラテジ及び6x用特別OPCストラテジを用いたOPCの結果を示すグラフが、パワー軸に対して図中右側へシフトする。言い換えれば、8xの記録速度における最適記録パワーの実出射パワーと同等程度の領域において、OPCの結果を得ることができる。
【0101】
ここで、8xの記録速度における最適記録レーザパワーを求めるために、ターゲットβなる目標アシンメトリ値を設定する。ターゲットβは、8xの記録速度における最適記録パワー(特に、実際に出射するレーザパワー)を実現するアシンメトリ値である。
【0102】
具体的な数値を用いて説明すると、8xの記録速度における最適記録パワーのターゲットβを“−0.075”と設定すると、図14に示すグラフより、4xの記録速度でのターゲットβは“0.02”となり、6xの記録速度でのターゲットβは“−0.1”となる。従って、図14に示すグラフより、8xにおける最適記録パワーは、4xの記録速度においてターゲットβ=“0.02”を実現し、且つ6xの記録速度におけるターゲットβ=“−0.1”を実現する“27.2mW”と算出することができる。
【0103】
このように、8x用記録ストラテジと同等程度のパルス幅を規定する4x用特別OPCストラテジ及び6x用特別OPCストラテジを用いることで、8xの記録速度における実出射パワーと同等程度のレーザパワーで、且つ同等程度のパルス幅を有するレーザビームにてOPC処理を行うことが可能となる。従って、光ピックアップ352に入力する電流値と実際に光ピックアップ352から出射されるレーザビームのパワーとの特性変化による最適記録パワーの誤差を低減或いはなくすことが可能となる。その結果、4x及び6xの記録速度でOPCパターンを記録することで、8xの記録速度における最適記録パワーを適切に且つ高精度に算出することが可能となる。
【0104】
特に、当該OPC処理を行う情報記録装置300が変わったとしても、異なる出射パワーによりOPC処理を行ったとしても、或いは光ピックアップ352の経年変化によっても、4x用特別OPCストラテジ及び6x用特別OPCストラテジを用いてOPC処理を行えば、ターゲットβの値を同一にすることができる。また、4x及び8xの記録速度の夫々のターゲットβの差たるΔターゲットβ(from 4x to 8x)や6x及び8xの記録速度の夫々のターゲットβの差たるΔターゲットβ(from 4x to 8x)を0にすることも可能である。これは、ドライブ等に依存することなく、適切に8xの記録速度における最適記録パワーを算出することができるという大きな利点を有していることを示している。
【0105】
また、4x用特別OPCストラテジ及び6x用特別OPCストラテジを調整する(具体的には、レーザビームのパルス幅を変化させる)ことで、図14(b)に示すように、4xの記録速度におけるOPCの結果及び6xの記録速度におけるOPCの結果が概ね同一のグラフとなるようにOPC処理を行うことも可能である。即ち、8xの記録速度における最適記録パワーにおいて、夫々のグラフが交わる結果となるようにOPC処理を行うことも可能である。言い換えれば、上述のΔターゲットβの値は、特別OPCストラテジを調整することで、変化させることが可能である。
【0106】
尚、本実施例において説明した手法によらずとも、OPC用のストラテジを用いることなく、4x用記録ストラテジ及び6x用記録ストラテジを用いてOPC処理を行い、その結果から8xの記録速度における最適記録パワーを算出することもできる。しかしながら、この場合、4x用記録ストラテジ及び6x用記録ストラテジは、8xの記録速度を考慮することなく定められるストラテジであるため、そのOPC処理を行う際のレーザパワーも8xの記録速度でデータを記録する際のレーザパワーと大きく異なるし、そのパルス幅も大きく異なる。このため、あくまで予測としての最適記録パワーを算出することはできても、特性の変化等によってはその精度は必ずしも高いとはいえない。
【0107】
これについて、具体的に図15を参照して説明する。ここに、図15は、4x及び6xの記録速度にてOPC処理を行った際の、8xの記録速度における最適記録パワーを示すグラフである。
【0108】
図15(a)に示すように、予測によるOPC処理では、その特性が点線の如く変化している場合に適切に対応することができないという問題点を有している。しかるに、本実施例によれば、図15(b)に示すように、4x及び6xの記録速度でのOPC処理により求められる8xの最適記録パワーと実際の8xの記録速度における最適記録パワーとが概ね同一の値をとる。そして、当該OPC処理を行う情報記録装置300が変わったとしても、或いは光ピックアップ352の経年変化や特性の変化によっても、図15(b)に示すように、そのグラフは平行移動するに過ぎない。即ち、この場合であっても、8xの最適記録パワーと実際の8xの記録速度における最適記録パワーとが概ね同一の値をとる。これは、8x用記録ストラテジと同一のパルス幅を規定する4x用特別OPCストラテジ及び6x用特別OPCストラテジを用いるためである。これにより、特性の変化によらず、8xの記録速度における最適記録パワーを適切に算出することができるという大きな利点を有している。言い換えれば、4x(或いは、6x)の記録速度で算出された最適記録パワーがそのまま8xの記録速度における最適記録パワーとして用いることができるという、従来のOPC処理では実現できなかった大きな利点を有している。
【0109】
再び図10において、ステップS102又はステップS103で求めた最適記録パワーでレーザビームが照射されるように、本発明における「制御手段」の一具体例たるCPU354の制御により、光ピックアップ352が制御される(ステップS104)。そして、lx用記録ストラテジを用いて、且つステップS102又はステップS103で算出された最適記録パワーが記録レーザパワーとして設定される。
【0110】
以上説明したように、特別OPCストラテジを用いた試し書き(OPC処理)によれば、実際に8xの記録速度でOPC処理を行わなくとも、4x及び6xの記録速度でOPC処理を行えば、8xの記録速度における最適記録パワーを算出することができる。特に、記録速度が高速になると、光ディスク100の回転速度もそれに伴い高速になる。このため、光ディスクの特に内周側では、当該回転速度を実現することができず、或いは当該回転速度を実現したとしても光ディスク100の破損につながったり、サーボが不安定になったり、ターゲットβの検出精度が低下することで、適切にOPC処理を行うことができないおそれがある。特別OPCストラテジによるOPC処理は、このような不都合を解決し、記録速度が高速になっても、より低い記録速度でOPC処理を行えば、当該高速な記録速度における最適記録パワーを算出することができるという大きな利点を有している。
【0111】
尚、上述した例においては、より高速な8xの記録速度における最適記録パワーを算出するために、より低速な4xの記録速度でOPC処理を行っているが、もちろん同様の手法により、4xの記録速度における最適記録パワーを算出するために、より高速な8xの記録速度で且つ8x用特別OPCストラテジを用いてOPC処理を行ってもよいことは当然である。即ち、実際にデータを記録する4xの記録速度よりも高速な8xの記録速度でOPC処理を行うことで、4xの記録速度における最適記録パワーを求めることができる。加えて、この場合、相対的に高速な8xの記録速度でOPCパターンを記録できることから、最適記録パワーの算出に要する時間を低減できるという利点をも有する。
【0113】
上述の実施例では、情報記録媒体の一例として光ディスク100及び情報記録装置の一例として光ディスク100に係るレコーダについて説明したが、本発明は、光ディスクのレコーダに限られるものではなく、他の高密度記録或いは高転送レート対応の各種情報記録媒体並びにそのレコーダにも適用可能である。
【0114】
本発明は、上述した実施例に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う情報記録再生装置、情報記録媒体等もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【0115】
【産業上の利用可能性】
本発明は、DVD−R/RW、DVD+R/RW、ブルーレイ(Blu-ray)ディスク、AOD(Advanced Optical Disc)、CD−R/RWなどの光ディスクにおける情報記録に利用することができる。
【0116】
【図面の簡単な説明】
【図1】 情報記録媒体の実施例を示す説明図であって、上側に複数のエリアを有する光ディスクの構造を概略平面図で示すと共に、下側にその径方向におけるエリア構造を概念図で対応付けて示すものである。
【図2】 実施例に係る情報記録再生装置のブロック図である。
【図3】 変調度及びアシンメトリの定義を説明する図である。
【図4】 β値の定義を模式的に示す図である。
【図5】 実記録時と試し書き時の記録パワー対ジッター、及び、記録パワー対アシンメトリの関係の一例を示すグラフである。
【図6】 ある記録メディアの内周、中周及び外周位置における記録パワーとジッター及びアシンメトリとの関係を示すグラフである。
【図7】 他の記録メディアの内周、中周及び外周位置における記録パワーとジッター及びアシンメトリとの関係を示すグラフである。
【図8】 最適記録パワー決定処理の第1例のフローチャートである。
【図9】 最適記録パワー決定処理の第2例のフローチャートである。
【図10】 本実施例に係る情報記録再生装置の基本動作の流れを示すフローチャートである。
【図11】 本実施例に係る情報記録再生装置における、16パワーステップの場合の1回のOPC処理を示した模式的タイミングチャート図である。
【図12】 情報記録再生装置における光ピックアップから照射されるレーザビームのパルス波形を示す説明図である。
【図13】 情報記録再生装置が用いる夫々のストラテジに対応するレーザビームのパルス波形を示す説明図である。
【図14】 情報記録再生装置において、特別OPCストラテジを用いて行うOPC処理の結果得られるデータを示すグラフである。
【図15】4x及び6xの記録速度にてOPC処理を行った際の、8xの記録速度における最適記録パワーを示すグラフである。
【符号の説明】
100・・・光ディスク
103・・・ストラテジ記録エリア
300・・・情報記録装置
352・・・光ピックアップ
354・・・CPU
355・・・メモリ
Claims (11)
- レーザ光を情報記録媒体に照射して当該情報記録媒体にデータを記録する情報記録装置であって、
第1記録速度にて、前記第1記録速度とは異なる第2記録速度で前記データの記録を行う際の前記レーザ光の最適記録パワーを算出するために用いられる前記レーザ光の波形を規定する特別OPCストラテジを取得し、前記第1記録速度にて前記特別OPCストラテジを用いて試し書きを行い、前記最適記録パワーを算出する試し書き手段と、
前記第2記録速度にて前記情報の記録を行うために用いられる前記レーザ光の波形を規定する記録ストラテジを取得し、取得した前記記録ストラテジを用いて前記第2記録速度で前記情報記録媒体に対してデータの記録を行う記録手段と、
実際のデータ記録のときに、所定量のデータを記録した時点で前記記録手段による記録を中断し、記録されたデータを再生して得られる再生データに基づいて、前記記録されたデータの記録品質が適正範囲内であるか否かの判定を行う判定手段と、
前記記録品質が適正範囲外であると判定された場合に、前記記録品質が適正範囲内となるように、前記記録手段の記録パワーを補正する補正手段と、を備え、
前記記録手段は、実際のデータ記録の開始から前記所定量のデータを記録する時点までは、前記試し書き手段により決定された最適記録パワーで記録を行い、前記所定量のデータを記録した後は、前記判定手段により記録データの記録品質が適正範囲内であると判定された場合には引き続き前記試し書き手段により決定された前記最適記録パワーで記録を行い、また、前記判定手段により記録データの記録品質が適正範囲外であると判定された場合には前記補正手段による補正後の記録パワーで記録を行うことを特徴とする情報記録装置。 - 前記試し書き手段は、前記試し書きにより、記録品質評価パラメータと記録パワーとの関係を取得し、
前記補正手段は、前記記録品質評価パラメータと記録パワーとの関係に基づいて前記記録パワーの補正を行うことを特徴とする請求の範囲第1項に記載の情報記録装置。 - 前記判定手段は、記録品質評価パラメータが所定範囲内にあるときに、前記記録品質が適正範囲内にあると判定することを特徴とする請求の範囲第1項に記載の情報記録装置。
- 前記記録品質評価パラメータは、前記記録されたデータを再生して算出されるアシンメトリ、β値及び変調度のいずれかであることを特徴とする請求の範囲第2項に記載の情報記録装置。
- 前記記録品質評価パラメータは、前記記録されたデータを再生して算出されるアシンメトリであり、
前記判定手段は、前記アシンメトリが0%を中心として5%ppの範囲内であるときに前記記録品質が適正範囲内にあると判定することを特徴とする請求の範囲第2項に記載の情報記録装置。 - 前記所定量は、前記品質評価パラメータを必要な精度で算出可能な最小のデータ量であることを特徴とする請求の範囲第2項に記載の情報記録装置。
- 前記判定手段は、前記補正手段による補正後の記録パワーにより得られる前記記録品質が適正範囲内となるまで、前記判定を繰り返すことを特徴とする請求の範囲第1項に記載の情報記録装置。
- 前記判定手段は、前記所定量のデータを記録した時点以降において、さらに前記実際のデータ記録が所定記録データ量行われたときに、前記判定を行うことを特徴とする請求の範囲第1項に記載の情報記録装置。
- 前記判定手段は、前記所定量のデータを記録した時点以降において、さらに前記レーザ光の光源近傍の温度が所定温度変化したときに、前記判定を行うことを特徴とする請求の範囲第1項に記載の情報記録装置。
- レーザ光を情報記録媒体に照射して当該情報記録媒体にデータを記録する情報記録方法であって、
第1記録速度にて、前記第1記録速度とは異なる第2記録速度で前記データの記録を行う際の前記レーザ光の最適記録パワーを算出するために用いられる前記レーザ光の波形を規定する特別OPCストラテジを取得し、前記第1記録速度にて前記特別OPCストラテジを用いて試し書きを行い、前記最適記録パワーを算出する試し書き工程と、
前記第2記録速度にて前記情報の記録を行うために用いられる前記レーザ光の波形を規定する記録ストラテジを取得し、取得した前記記録ストラテジを用いて前記第2記録速度で前記情報記録媒体に対してデータの記録を行う記録工程と、
実際のデータ記録のときに、所定量のデータを記録した時点で前記記録工程による記録を中断し、記録されたデータを再生して得られる再生データに基づいて、前記記録されたデータの記録品質が適正範囲内であるか否かの判定を行う判定工程と、
前記記録品質が適正範囲外であると判定された場合に、前記記録品質が適正範囲内となるように、前記記録工程の記録パワーを補正する補正工程と、を備え、
前記記録工程は、実際のデータ記録の開始から前記所定量のデータを記録する時点までは、前記試し書き工程により決定された最適記録パワーで記録を行い、前記所定量のデータを記録した後は、前記判定工程により記録データの記録品質が適正範囲内であると判定された場合には引き続き前記試し書き工程により決定された前記最適記録パワーで記録を行い、また、前記判定工程により記録データの記録品質が適正範囲外であると判定された場合には前記補正工程による補正後の記録パワーで記録を行うことを特徴とする情報記録方法。 - コンピュータを備える情報記録装置により実行され、レーザ光を情報記録媒体に照射して当該情報記録媒体にデータを記録する情報記録プログラムであって、
第1記録速度にて、前記第1記録速度とは異なる第2記録速度で前記データの記録を行う際の前記レーザ光の最適記録パワーを算出するために用いられる前記レーザ光の波形を規定する特別OPCストラテジを取得し、前記第1記録速度にて前記特別OPCストラテジを用いて試し書きを行い、前記最適記録パワーを算出する試し書き手段、
前記第2記録速度にて前記情報の記録を行うために用いられる前記レーザ光の波形を規定する記録ストラテジを取得し、取得した前記記録ストラテジを用いて前記第2記録速度で前記情報記録媒体に対してデータの記録を行う記録手段、
実際のデータ記録のときに、所定量のデータを記録した時点で前記記録手段による記録を中断し、記録されたデータを再生して得られる再生データに基づいて、前記記録されたデータの記録品質が適正範囲内であるか否かの判定を行う判定手段、
前記記録品質が適正範囲外であると判定された場合に、前記記録品質が適正範囲内となるように、前記記録手段の記録パワーを補正する補正手段、として前記コンピュータを機能させ、
前記記録手段は、実際のデータ記録の開始から前記所定量のデータを記録する時点までは、前記試し書き手段により決定された最適記録パワーで記録を行い、前記所定量のデータを記録した後は、前記判定手段により記録データの記録品質が適正範囲内であると判定された場合には引き続き前記試し書き手段により決定された前記最適記録パワーで記録を行い、また、前記判定手段により記録データの記録品質が適正範囲外であると判定された場合には前記補正手段による補正後の記録パワーで記録を行うことを特徴とする情報記録プログラム。
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