JP4559119B2 - 指用カフ - Google Patents

Description

本発明は血圧や血圧脈波の測定などに用いられるカフに関し、特に手や足の指に好適に使用可能な指用カフに関する。

血圧や脈派は、循環器疾患を非観血的に診断するために有用な生体情報として広く用いられている。また、近年では専門的な知識を持たなくても血圧や脈派を測定可能な機器も広く市販されている。

血圧や脈派の非観血的測定には様々な方法があるが、カフを用いた測定は代表的な測定方法である。カフは一般に空気等の気体を送り込むことで膨らみ、排気することによって萎むエアバッグ（ゴム嚢とも呼ばれる）により四肢などの装着部位を圧迫する器具である。そして、エアバッグに接続された圧力検出装置（圧力センサやピエゾ素子など）により、エアバッグ内の圧力変動を検出することにより、血圧を測定したり、脈派を検出したりする。

従来、カフの装着部位は腕や足など比較的太い部位であることが多く、得られる圧力変動もまた大きいため、エアバッグの材料には、塩化ビニルなどの材質が用いられ、エアバッグ自体の膨張率も低い。また、エアバッグはカフに内蔵され、装着部位にエアバッグが直接に接することはない。

一方、より手軽な測定や、末梢血管に対する測定を目的として、手や足の指など、腕や足と比較してより細い部位で測定を行うためのカフ（以下、便宜上指用カフと呼ぶ）がある。このような装着部位には趾の両側に細い血管が２本通っているため、腕や足に用いるカフ（以下、便宜上一般カフと呼ぶ）とその構造を異にする。

具体的には、被験者の負担を増大させずに一般カフよりも微小な圧力変動を検出可能とするため、エアバッグがむき出しになっており、かつエアバッグを直接装着部位に巻き付ける構成を有する。また、エアバッグ自体の材質も、薄く、伸縮性に富んだゴム状の材質が用いられ、加圧時にはエアバッグ自体が膨らむ。

実開平４−１１７６０４号公報

上述したように、指用カフは細い装着部位で確実に駆血を行う必要があるが、指は腕や足に比べて皮下組織が少なく、指の周囲を均等に圧迫することが難しい。また装着した状態でエアバッグ表面に皺が出来やすい。圧迫力が場所によって異なったり、エアバッグ表面に皺ができたりした場合、圧迫力の弱い部分や皺になった部分に駆血すべき血管が位置してしまうと、駆血がうまくいかない。このような場合には、適切にカフが装着された状態と比べて圧迫力を強くしないと駆血できなかったり、再度カフを装着し直さなければならなかったりする。前者の場合、痛みなど装着者に与える負担が大きくなり、また後者の場合は手間がかかる上、再装着してもまた同じ状況に至る可能性もある。

腕用のカフにおいて、カフの心材としてのカーラを上腕形状を模した円錐状とし、カフと上腕との接触面積を増大させる提案が特許文献１でなされている。しかし、指の装着部位には関節が含まれうること、特に足趾は根元が細くくびれた形状を有すること、装着部位の柔軟性が小さいこと（皮下組織が少ないため）など、単純な円錐形状とすることで有意な装着感向上を期待できる上腕とは形状や体組織構造において大きく異なっている。そのため、特許文献１に記載されるような構成を用いても適切な圧迫は行えない。

本発明はこのような従来技術の問題点に鑑みなされたものであり、容易に駆血することが可能な指用カフを提供することをその主な目的とする。

すなわち、本発明の要旨は、伸縮可能な材料で形成されるエアバッグと、装着者の手指又は足趾の根元で駆血するようにエアバッグを装着者の手指又は足趾に装着するためのカフ本体とを有する指用カフにおいて、エアバッグがカフ本体に取り付けられた状態で略扇型となるように形成され、かつ、装着時に装着者の指の根元側に位置する端部の長さが、装着時に装着者の指の先端側に位置する端部の長さよりも短いことを特徴とする指用カフに存する。

上述の構成により、本発明によれば、手指や足趾においても容易に駆血することが可能となる。

●（第１の実施形態）
以下、図面を参照して本発明をその好適な実施形態に基づき詳細に説明する。
図１は、本実施形態に係る指用カフ２２の構成例を示す図である。
カフ２２は、カフ本体２２ｂと、カフ本体に取り付けられたエアバッグ２２ａと、カフを固定するための面ファスナー２２ｔとから構成されている。合成繊維など柔軟な材料から構成されるベルト形状のカフ本体２２ｂの一表面に、面ファスナー２２ｔとエアバッグ２２ａが取り付けられる。なお、エアバッグ２２ａとカフ本体２２ｂとの取付は粘着剤等によって直接行っても良いが、ポンプから気体を送り込んだ際にエアバッグ２２ａがカフ本体２２ｂ側に膨らむのを抑制し、装着部位側へより膨らむようにして圧迫を効率的に行うために、樹脂などからなる比較的硬質な板状の部材（裏打ち板）２２ｅを介して取り付けることが好ましい。カフの装着時にはエアバッグ２２ａを直接足趾や手指に巻き付け、面ファスナー２２ｔをカフ本体２２ｂの他表面と係合させてカフを装着部位に固定する。装着時のカフの状態を図２に示す。

エアバッグ２２ａはゴムなどの柔軟かつ伸縮性を有する素材で、かつ薄い部材で形成されている。また、エアバッグ２２ａのその略中央側面にはホース２２ｈの一端が接続され、ホース２２ｈからエアバッグ２２ａに空気を送り込んだり、エアバッグ２２ａの空気を逃がすことにより、エアバッグ２２ａ内部の圧力制御がなされる。ホース２２ｈの他端は図示しない駆血制御部のポンプ及び圧力センサに接続される。

本実施形態に係る指用カフ２２は、特にエアバッグ２２ａの形状に特徴を有する。具体的には、図３（ａ）に示すように、装着時に指の根元側に位置する端部の長さＷ１が指先側の端部の長さＷ２よりも小さい略扇型を有する。なお、図３（ａ）ではエアバッグがカフ本体に取り付けない状態で略扇型となるように形成されている場合を示しているが、少なくともカフ本体２２ｂに取り付けた状態において、図３（ａ）に示すような扇型となればよい。

Ｗ１＜Ｗ２であることにより、装着時に指の根元部分と指先部分が均一に圧迫されるようになる。Ｗ１≧Ｗ２である場合には、指の根元側の圧力が弱まり、駆血が確実に行えない。なお、Ｗ１とＷ２の差は適宜定めることができるが、差が大きすぎないことが好ましい。本発明者の検討によれば、例えばＷ２／Ｗ１が１．０８〜１．１２であることが好ましい。

指で駆血を行う場合には、指先より根元で駆血する方が容易かつ負担も少ない。特に根元がくびれ、関節が太い足趾で駆血する場合には、Ｗ１＝Ｗ２である従来のエアバッグを用いた場合、細い根元側は、指先と比較して隙間が大きく生じ、エアバッグが余計に膨張していた。しかし、本実施形態に係るカフでは装着時に指の根元側に位置する端部の長さＷ１を指先側に位置する端部の長さＷ２よりも小さくしているため、図２や図４（ａ）に示すように装着時には指の根元側と指先側は指との隙間がほぼ同等であり、均一に圧迫することができる（図４（ａ）ではエアバッグ２２ａの状態のみを模式的に示している）。そのため、指趾はもちろん、足趾に用いた場合であっても、図４（ｂ）に示すように指の根元を十分に圧迫することが可能となる。

また、本実施形態に係る指用カフとしては、図３（ａ）の構成に加え、図３（ｂ）に示すように、装着時に内側（指に接する側）となる面の長さＬ２が、装着時に外側（カフ本体２２ｂ側）となる面の長さＬ１よりも短い円弧形状を有することがより好ましい。図３（ｂ）は、図３（ａ）のエアバッグを矢印ａの方向から見た形状を示している。

Ｌ２＜Ｌ１であることにより、Ｌ２≧Ｌ１の場合に比べ、装着時にエアバッグの表面（指に接する面）に皺ができにくくなり、皺により圧迫されなかったり圧迫力が他の部分より弱くなる部分の発生を大幅に抑制できる。Ｌ２とＬ１との具体的な関係は、装着部位の曲率や個人差によるばらつきを考慮して適宜定めればよいが、本発明者の検討によれば、例えばＬ１／Ｌ２が１．２４〜１．４５であることが好ましい。なお、図３（ｂ）ではエアバッグがカフ本体に取り付けない状態で円弧形状となるように形成されている場合を示しているが、少なくともカフ本体２２ｂに取り付けた状態において、図３（ｂ）に示すような円弧形状となればよい。

このように、本実施形態に係る指用カフによれば、エアバッグの指の根元側の幅を指先側の幅より小さくした略扇形形状とすることにより、指の根元と指先とを均一に圧迫することが可能となる。また、さらに装着時内側となる面が外側となる面よりも短い円弧形状を有するようにすれば、装着時にエアバッグ表面に皺が出来にくくなるため、指の全周に渡って十分な圧迫が可能となり、一層好ましい。

●（第２の実施形態）
上述したように、指用カフは腕や足に用いられる一般カフとは異なり、それ自体が膨らむエアバッグを用い、かつエアバッグで直接指を圧迫する構成を有する。そして、このようなエアバッグは薄く柔軟性及び伸縮性を有する、ゴムを代表とする素材によって形成される。このようなエアバッグにおいて、例えばエアバッグ内面同士がくっつくなどしてポンプから送り込まれる気体がエアバッグ全体に均一に行き渡らない事態が生じると、エアバッグの一部の圧力が高くなり、エアバッグが破裂する可能性がある。また、エアバッグ全体を速やかに膨張させること、また排気により速やかに収縮させることは測定時間の短縮や装着者の負担軽減という観点からも重要である。

そのため、ポンプから送り込まれる気体がエアバッグ全体に行き渡り、また排気時には気体がスムーズにエアバッグから抜けるようにすることが好ましい。そのため、本実施形態においては、第１の実施形態で説明した構成に加え、エアバッグ内面に凹凸を設けることで、エアバッグ内面同士の張り付き発生を防止している。

エアバッグ内面に凹凸を設ける方法としては様々な方法が考えられるが、例えば、材質が薄く、伸縮性を有することを利用し、エアバッグのカフ本体への取り付け方法を工夫することによりエアバッグ内面に凹凸を形成することができる。

図５（ａ）は、本実施形態に係るカフの厚み方向に平行な垂直断面図（部分）である。図５（ａ）に示すように、エアバッグ２２ａの、カフ本体２２ｂに取り付ける側に意図的に皺２２ｆを作り、その状態で表面が平らな裏打ち板２２ｅに取り付けることで、エアバッグ２２ａ内面に凸部を形成している。図６は本実施形態に係るカフの外観図を示す。皺はエアバッグ２２ａの上下（図５の紙面に垂直な方向）全体に渡って設けることもできるが、図６に示すように、途中まで延びる皺を両方向から互い違いに設けることもできる。

このような構成により、エアバッグ２２ａの対向する内面同士が張り付くことを防止でき、ホース２２ｈを通じたエアバッグ２２ａ内部とポンプとの通気が良好に行えるため、エアバッグ２２ａ全体への気体の導入及び排気を速やかに行うことが可能である。

（変形例１）
第２の実施形態ではエアバッグに意図的に皺を作り、平らな裏打ち板２２ｅに取り付けることでエアバッグ内面に凹凸を設けていたが、例えば図５（ｂ）に示すように、裏打ち板２２ｅ’のエアバッグ２２ａを取り付ける側の表面形状を凹凸を有する形状とし、その表面にエアバッグ２２ａを取り付けることにより、エアバッグ２２ａの内面に凸部２２ｇが形成され、同様の効果が得られる。

（変形例２）
また、エアバッグを形成する型に凹部を設けることで、エアバッグ内面に凸条（リブ）を設けることも可能である。この場合、リブは図６に示すような配置とすることが好ましい。皺を設ける方法よりも生産性に優れる点で好ましい。本変形例に係るエアバッグの外観は、内面の凸条２２ｆが皺ではなく成型により形成される点を除き、図６と同様である。図５（ｃ）に、本変形例に係るエアバッグの断面を示す。

以上説明したように、本実施形態によれば、第１の実施形態で述べた効果に加え、気体導入による膨張及び排気による収縮を速やかに行うことが可能となる。

本発明の第１の実施形態に係る指用カフの構成例を示す図である。 図１の指用カフ２２の装着時の状態例を示す図である。 本発明の実施形態に係る指用カフのエアバッグの形状を示す図である。 本発明の実施形態に係る指用カフを装着した際のエアバッグの状態を模式的に示す図である。 本発明の第２の実施形態に係る指用カフにおけるエアバッグの取り付け構造を説明する図である。 本発明の第２の実施形態に係る指用カフの構成例を示す図である。

Claims (5)

1. 伸縮可能な材料で形成されるエアバッグと、装着者の手指又は足趾の根元で駆血するように前記エアバッグを前記装着者の手指又は足趾に装着するためのカフ本体とを有する指用カフにおいて、
   前記エアバッグが前記カフ本体に取り付けられた状態で略扇型となるように形成され、かつ、装着時に装着者の指の根元側に位置する端部の長さが、装着時に装着者の指の先端側に位置する端部の長さよりも短いことを特徴とする指用カフ。
2. さらに、前記エアバッグの、装着時に装着者の指に接する側となる面の長さが、装着時に前記カフ本体側となる面の長さよりも短くなるように形成されていることを特徴とする請求項１記載の指用カフ。
3. 前記エアバッグの前記エアバッグ本体に取り付けられた側の内面に、前記エアバッグの内面同士の張り付きを防止するための凹凸が設けられていることを特徴とする請求項１又は請求項２記載の指用カフ。
4. 前記エアバッグの内面に設けられる凹凸が、前記エアバッグを構成する部材の表面に形成された凹凸により形成されることを特徴とする請求項３記載の指用カフ。
5. 前記エアバッグが裏打ち板を介して前記エアバッグ本体に取り付けられ、前記エアバッグの内面に設けられる凹凸が、前記裏打ち板の表面形状により形成されることを特徴とする請求項３記載の指用カフ。

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