JP4557372B2 - 蓄電池の寿命判定方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、蓄電池の寿命判定方法に関し、特に、エンジンの始動、ランプ点灯、エアコンの駆動等に使用される車載用の鉛蓄電池に対して好適に実施される寿命判定方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車に搭載される鉛蓄電池は、エンジンの始動、ランプの点灯、エアコン駆動等に使用されており、走行時には、鉛蓄電池の充電状態(SOC:State Of Charge)が100%程度以上になるように、規定された電圧により定電圧充電が行われている。
【0003】
近年、自動車の燃費向上を目的に、減速時のエネルギーを回生電力として蓄電池に回収することが検討されている。蓄電池において回生電力を効率よく回収するためには、蓄電池を、部分充電状態、すなわち、SOCが100%未満の状態で制御する必要がある。
【0004】
このような鉛蓄電池では、SOCを低く設定して充放電を行うと、劣化が進行しやすいことが判明している。特に、SOCが低下した状態、とりわけ、SOCを50%以下の状態で充放電を連続して行うと、正極においては、電解液中の硫酸濃度が15%程度以下になり、鉛合金製の正極格子の腐食速度が急激に進行し、負極においては、放電生成物である硫酸鉛が粗大化することによって、電池の放電容量が急激に劣化する。
【0005】
従って、SOCを低くして鉛蓄電池を充放電する場合には、SOCを50%以上に制御する必要があるとともに、ある程度以上の頻度でリフレッシュ充電を行うことにより、SOCをほぼ100%の状態にすることが必要である。
【0006】
鉛蓄電池のSOCは、通常、鉛蓄電池の開路電圧OCV(Open Circuit Voltage)に基づいて算出される。鉛蓄電池のSOCとOCVとは、ほぼ一定の関係になっており、SOCが低下すると、OCVも直線的に低下する。そして、SOCが所定値よりも低下していることが検出された場合、あるいは、所定の時間間隔によって、鉛蓄電池がリフレッシュ充電される。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
このような車載用の鉛蓄電池は、使用によって劣化すると、SOCが100%になるように設定してリフレッシュ充電しても、SOCが設定された100%にまで上昇しなくなり、鉛蓄電池の性能が低下するという問題がある。このように、SOCを100%に設定したリフレッシュ充電によって、SOCが100%に上昇しない劣化した鉛蓄電池を使用し続けると、鉛蓄電池が急激に寿命に達することによって、突然、使用不能な状態になる。鉛蓄電池の劣化状態は、必ずしも明確に把握することができないために、鉛蓄電池は、予期せぬ状態で使用不能になるおそれがある。
【0008】
本発明は、このような問題を解決するものであり、その目的は、蓄電池の寿命を正確に判定することができるために、蓄電池が急に使用不能になることを回避することができる蓄電池の寿命判定方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の蓄電池の寿命判定方法は、蓄電池をリフレッシュ充電し、このリフレッシュ充電後の蓄電池の充電状態(SOC)を100%に設定し、充放電を実施し、この充放電での電気量に基づいて得られる前記充放電後のSOC(1)と、前記蓄電池の開路電圧(OCV)または放電時の放電電圧に基づいて得られるSOC(2)とを比較し、両者の差に基づいて蓄電池の寿命判定を行うことを特徴とする。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0012】
図1は、電圧が12Vのシール形鉛蓄電池(容量30Ah/5HR)のSOC−OCV特性を示すグラフである。図1に示すように、25℃における鉛蓄電池のSOCは、OCVが上昇することによって、ほぼ直線的に上昇しており、ほぼ比例関係になっている。
【0013】
本発明の蓄電池の寿命判定方法は、このようなOCVとSOCとの関係を利用する。
【0014】
図2は、本発明の鉛蓄電池の寿命判定方法の一例を示すフローチャートである。図2に示すフローチャートは、自動車に搭載された鉛蓄電池の寿命判定方法を示しており、この寿命判定方法は、例えば、鉛蓄電池がリフレッシュ充電される毎に実施される。
【0015】
リフレッシュ充電は、SOCがほぼ100%(満充電)になるように設定されて、例えば12V系鉛蓄電池においては、充電制御電圧を14〜16V程度の高電圧として充電する方法である。このリフレッシュ充電は、例えば、鉛蓄電池のSOC(充電状態:State Of Charge)が50%未満の場合、および、一定時間毎に実施される。鉛蓄電池のSOCは、例えばアイドリングストップ時等においてエンジンが停止して、電池が充放電されていない状態において、鉛蓄電池の開路電圧OCV(Open Circuit Voltage)を測定し、測定されたOCVに基づいて求められる。
【0016】
鉛蓄電池は、SOCが50%未満になると、電解液中の硫酸濃度が15%程度以下にまで低下してたおり、このような状態で充放電を実施することにより、鉛合金によって構成された正極格子の腐食速度が急激に上昇する。そして、正極格子の腐食速度が速くなることによって、鉛蓄電池の寿命が低下することになる。
【0017】
このために、SOCが50%未満になると、SOCが100%になるように設定されたリフレッシュ充電を実施し、SOCを50%以上とすることにより、電解液中の硫酸濃度が低下した状態において充放電が実施されないようにする。これにより、鉛蓄電池を高寿命化することができる。
【0018】
本発明の寿命判定方法では、SOCを100%に設定したリフレッシュ充電が開始された後に、リフレッシュ充電が終了したことを検出すると(図2のステップS1参照、以下同様)、鉛蓄電池の充放電を開始する(ステップS2)。このとき、充放電電流量をリセット状態として、電流センサーによって、新たに充放電電流量を積算して充放電電気量を求める(ステップS3)。
【0019】
その後、例えば、エンジンが停止されて充放電が実施されないアイドルストップ状態になることによって、鉛蓄電池の充放電が停止されたことが検出されると(ステップS4)、その充放電時間内において実際の放電の積算電流量に基づいて、充放電が終了した時点でのSOCを算出する。なお、この場合に算出されたSOCをSOC1とする(ステップS3)。
【0020】
例えば、実際に充放電された電気量に相当するSOCをΔSOCとすると、SOCを100%に設定したリフレッシュ充電を実施することによって、SOCは100%になっているものとみなして、充放電が終了した時点でのSOC1は、次の(1)式によって演算される。
【0021】
SOC1=100−ΔSOC …(1)
また、充放電が終了すると、鉛蓄電池のOCVが測定されて、測定されたOCVに基づいてSOCが求められる。なお、この場合に求められたSOCをSOC2とする(ステップS5)。
【0022】
COVに基づいてSOC2が求められると、リフレッシュ充電後に得られたSOC1とSOC2との差SOC3を演算する(ステップS6)。そして、SOC3が、予め設定された所定値Kと比較し(ステップS7)、SOC3が、所定値K以上になっている場合に、鉛蓄電池が寿命になったものと判定する(ステップS8)。
【0023】
鉛蓄電池においては、使用による劣化によって、SOCが100%になるように設定したリフレッシュ充電を実施しても、実際のSOCは、100%にならず、100%よりも低くなる。リフレッシュ充電によって得られるSOCは、鉛蓄電池が劣化するほど低下し、寿命に達すると、リフレッシュ充電によってもSOCは60%程度にしかならない。
【0024】
鉛蓄電池が劣化していない初期状態では、リフレッシュ充電によって、SOCはほぼ100%に達するために、その後の充放電によって、例えば、図1に示すように、実際の充放電電気量に対するSOC量(ΔSOC)が20%であるとすると、前記(1)式から、充電終了後におけるSOC1は80%になる。また、この場合、鉛蓄電池は、実際にSOCが100%程度になるまで充電されているために、充電終了時において、OCVに基づいて算出されるSOC2も、80%になる。従って、劣化していない初期状態の鉛蓄電池は、実際の充放電電気量に基づいて算出されるSOC1と、充電少量時においてOCVによって求められるSOC2との差は、ほとんどない。
【0025】
これに対して、劣化が進んでほぼ寿命に達した鉛蓄電池においては、SOCを100%に設定したリフレッシュ充電を実施しても、SOCは、60%程度にしかならない。このような状態で充放電を実施した場合に、実際の充放電電気量に基づくSOCの低下量ΔSOCが20%になっていると、前記(1)式からSOC1は、初期状態の鉛蓄電池の場合と同様に80%になる。
【0026】
これに対して、リフレッシュ充電によって鉛蓄電池の実際のSOCは60%程度にしかなっていないために、充放電が終了した時点において、OCVに基づいて求められるSOC2は、SOCが60%の充電状態から実際の充放電電気量に相当する20%が低下した40%になる。
【0027】
このように、寿命に達した鉛蓄電池では、実際の充放電電気量に対応したSOCに基づいて算出されるSOC1が80%であるのに対して、充放電終了時においてOCVから得られる実際のSOC2は40%になり、その差SOC3(=SOC1−SOC2)は、40%になる。このように、SOC3が40%になっていることにより、鉛蓄電池は寿命に達していることを判定することができる。
【0028】
鉛蓄電池が寿命になっていることを判定するSOC3の値としては、例えば、35%程度が設定される。SOC3が35%以上になっていることによって、鉛蓄電池は寿命に達したものと判定される。
【0029】
なお、充放電が終了した時点でのSOCは、OCVに基づいて算出する構成に限らず、所定の放電電流以下、例えば充放電が停止されたアイドルストップ状態の放電電圧に基づいてSOCを算出するようにしてもよい。所定の放電電流以下における放電電圧とSOCの関係も、OCVとSOCと同様に、ほぼ比例関係になっている。
【0030】
また、本発明の寿命判定方法では、このようなOCVまたは放電電圧によって求められるSOCを使用する構成に限らず、DC−IR値に基づいてSOCを求めて、そのSOC基づいて、鉛蓄電池の寿命を判定するようにしてもよい。DC−IR値は、放電電圧と放電電流との関係から得られる抵抗値である。
【0031】
図3は、鉛蓄電池(12V、電池容量30AH/5HR)のDC−IR値とSOCとの関係を示すグラフである。このグラフから明らかなように、鉛蓄電池におけるSOCの制御範囲(50〜100%)では、DC−IR値が低下すると、SOCも、ほぼ一定の割合で低下しており、両者は反比例の関係になっている。
そして、鉛蓄電池が劣化していない初期状態の場合には、50〜100%のSOCの範囲において、DC−IR値は低く、5mΩ程度(25℃)であるが、電解液の減少、正極格子の腐食および電解液中の硫酸濃度の低下等によって、DC−IR値は高くなる。鉛蓄電池が寿命になると、DC−IR値は、15mΩ程度にまで上昇する。
【0032】
このために、鉛蓄電池が劣化していない初期状態におけるDC−IR値を、予め求めておいて、その初期状態のDC−IR値に対して3倍以上のDC−IR値になると、鉛蓄電池は寿命に達したものと判定することができる。なお、DC−IR値は、温度によって変化するので温度補正を行えば、より高精度な寿命判定が可能になる。
【0033】
【発明の効果】
本発明の蓄電池の寿命判定方法は、このように、充電後のSOCに基づいて、あるいは、DC−IR値に基づいて、蓄電池が寿命になっていることを、正確に判定することができる。従って、鉛蓄電池が急に使用不能になるような事態を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】鉛蓄電池のSOC−OCV特性を示すグラフである。
【図2】本発明の蓄電池の寿命判定方法の一例を示すフローチャートである。
【図3】鉛蓄電池の経時的な劣化に伴うSOCとDC−IRとの関係を示すグラフである。
【符号の説明】
S1〜S8 ステップ
Claims (1)
- 蓄電池をリフレッシュ充電し、このリフレッシュ充電後の蓄電池の充電状態(SOC)を100%に設定し、充放電を実施し、この充放電での電気量に基づいて得られる前記充放電後のSOC(1)と、前記蓄電池の開路電圧(OCV)または放電時の放電電圧に基づいて得られるSOC(2)とを比較し、両者の差に基づいて蓄電池の寿命判定を行うことを特徴とする蓄電池の寿命判定方法。
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