JP4548644B2 - 生体材料 - Google Patents

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【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、生体内分解性と生体適合性に優れたポリマー組成物を基剤とし、一定の期間、薬剤あるいは生理活性物質を連続的に放出できる生体材料である。また生体材料の成形性、柔軟性、機械的強度、形態保持性に優れ、生体欠損部の補綴あるいは生体組織再生までの間に他組織の侵入防止、癒着防止をすることにより、生体組織再生の促進を行うと共に、細胞増殖に適合した生体内分解吸収性支持体として適用できる生体材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、生体への薬剤投与が効果的であり、しかも副作用を抑制することを目的に、薬剤の血中濃度が副作用発現濃度と最低有効濃度範囲の最適治療濃度領域となるように、製剤からの薬剤放出速度、薬剤放出量を制御する方法が検討されている。
このような薬剤を連続的に放出し、薬剤の副作用の低減を目的とした薬剤の血中濃度が副作用の発現濃度より低く、有効領域で効果を発現する薬物徐放システムが考案され、これに適合する種々の高分子材料が検討されている。
【0003】
従来技術では、マトリックスを形成する材料が非分解性である不溶性マトリックス材料として、エチレン−酢酸ビニル共重合体、シリコン樹脂等を薬剤の放出制御に使用する方法が検討されていた。
しかし、このような材料を生体内に移植すると、薬剤が放出された後も基材は残存することから、残存物が生体に影響を及ぼす場合には、これを取り除く必要が生じた。
非分解型のこのような材料に代えて、水溶性ポリマーであるポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、キトサン等を用いる技術があり、溶解度の低い薬剤を用いる時あるいは短期間の放出には影響が少ないものの、水溶性の薬剤の場合には放出期間が短かすぎるという問題があった。
更には、生体内の体液がマトリックス内に浸透し、これによって薬剤の放出速度が不連続性を生ずるという問題もある。
【0004】
別に、生体内で分解性を有する天然素材であるコラーゲン、ゼラチン、アルブミン、フィブリン、ヒアルロン酸、アルギン酸、キチン等の天然素材の使用も検討されている。しかし、これらは天然の素材であるため、その組成、分子量、保水性等が一定でないばかりか、反応、精製処理の過程で抗原性等を有する物質の除去が必要であり、これが完全に行われないために、免疫学的な問題を生じる場合がある。
【0005】
合成系材料として、生体内分解型の薬剤放出用のポリマー基材に、ポリ乳酸、乳酸−グリコール酸共重合体、ポリヒドロキシ酪酸、ポリε−カプロラクトン等のヒドロキシカルボン酸を基本骨格とした脂肪族ポリエステルを使用することが知られている。
また、このような脂肪族ポリエステル材料の構造に酸素原子が結合に関与したp−ジオキサノン、トリメチレンカーボネート等との組み合わせによる共重合体等のオリゴマーまたはポリマーと、薬剤からなる高分子マトリックス等に関して種々の組成が知られている。(特許文献1参照。)
この特許文献1では種々の剤形が検討されている。
しかし、疎水性ポリマーと薬剤とのマトリックスでは、薬剤の放出に際してマトリックス表面からの薬剤の初期突出を生じ、更にポリマーからオリゴマーへの分解時に薬剤の突出が生じるなど、薬剤の放出速度がポリマー中に浸透する水に対する薬剤の溶解速度を律速としているため、ポリマーの生体内での分解時間が薬剤の溶出時間と比例せず、必要とされる薬剤の放出量と時間との調節が困難であるいう欠点を有している。
【0006】
【特許文献1】
特公昭50−17525号公報
また、薬物の溶解性を改善し、かつ薬剤の溶出速度を調節するために水溶性ポリマーをポリ乳酸等の脂肪族ポリエステルに混合したマトリックスが開示されている。(特許文献2、3参照。)
しかし、水溶性のポリマーを物理的に混合しただけの基材では、水溶性ポリマーによるマトリックス中への水浸透性促進のため、薬物の突出を防ぐことができない上、薬物が水和した水溶性ポリマーに溶解しやすくなり放出量の調節は困難となる。
【0007】
【特許文献2】
特開平5−4924号公報
【特許文献3】
特表平9−510477号公報
これらの問題を解決し、基剤中に不純物が含まれず、副作用がなく周囲の細胞に対する影響も少ない材料として、疎水性と親水性の両物性を有する線状、分岐状及びグラフトポリマーが知られており、ポリ乳酸または乳酸−グリコール酸共重合体、ポリグリコール酸、ポリ−ε−カプロラクトンと、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、プルロニック、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド等との共重合体が開示されている。(特許文献4、特許文献5参照。)
しかし、特許文献4及び5で開示される単にポリエチレングリコールのような親水性セグメントと疎水性セグメントとしての脂肪族ポリエステルの使用では、水が基材中に浸透し膨潤して、バルクで分解が進行することと形状が崩壊するため、ポリマーの分解による薬理学的活性剤の放出制御は困難となる。
【0008】
【特許文献4】
特開昭58−191714号公報
【特許文献5】
特開昭61−15846号公報
更に、ポリエチレングリコール水溶液の濃度と温度変化では良く知られた水分子の配位性の差に基づく温度変化でのゾルゲル転移を用いた熱可逆性ポリマーが知られている。(特許文献6、7、8、9、10及び11参照。)
しかし、これらのポリマーは、親水性セグメントに対する疎水性セグメントの結合構造が従来のものと変わらず、全体がとりうる構造も殆ど従来の基材と同一であり、薬剤の放出制御機能に関して本質的な解決となっていない。
【0009】
【特許文献6】
特開平2−78629号公報
【特許文献7】
特開平2−203861号公報
【特許文献8】
国際公開第00/18821号パンフレット
【特許文献9】
国際公開第99/18142号パンフレット
【特許文献10】
国際公開第97/15389号パンフレット
【特許文献11】
国際公開第97/15287号パンフレット
一方、水溶性で2重結合を有するアクリレートモノマー、オリゴマーに、ポリヒドロキシ酸を結合させた実質的に水溶性のマクロマーとアクリル末端を有する水不溶性ポリマーが知られている。(特許文献12、13参照。)
更に、アクリル酸とラクチドとε−カプロラクトンとからなる共重合体とアクリル酸をAlBNにより重合させたものが開示されている。(非特許文献1参照。)
この非特許文献1では、親水性セグメントと疎水性セグメントの結合構造を変える試みは行っているが、個々のセグメント鎖長及び親水セグメントと疎水セグメントのバランスが不十分なため、目的とした性状が得られていない。
【0010】
【特許文献12】
国際公開第93/17669号パンフレット
【特許文献13】
特表平4−503163号報
【非特許文献1】
J Po1ym. Sci. Part A, No.39, p.4214〜,2001年
また、従来より骨組織、軟骨組織のような硬組織あるいは上皮組織、結合組織、神経組織のような軟組織が外傷、炎症、腫瘍、老化などにより欠損部を生じたり、あるいは手術等によって損傷を受けた場合に、同種、異種、自家移植や種々の方法によって補綴、修復等が行なわれている。
【0011】
近年、生化学的研究の発展、細胞培養技術の開発により、生体内の細胞を用いてその機能を維持したまま生体外で培養し、これを患部に移植することによって組織を回復させようとする組織再生工学的研究が進められており、再生した組織を欠損部に移植するという方法が提案されている。
この方法は、患者自身の細胞組織を使用するため免疫上の問題がなく、採取する組織も少量で良いため患者の負担も軽減されるが、増殖あるいは機能を発現させるためには付着の足場となる基質が存在する必要がある。従って、機能を維持した状態で細胞を培養するためには三次元培養法を行う必要があり、そのためには、培養基材に毒性がなく、付着表面積が大きく栄養分の供給、老廃物の代謝が阻害されない培養基材を細胞外マトリックスとして使用することが要求される。
【0012】
これらに用いられる材料も、非分解性材料から生体内分解性材料まで、生体非活性材料から生体親和性材料まで数多く研究され、生体由来の天然高分子材料や脂肪族ポリエステル等の合成高分子材料が使用されている(非特許文献2参照。

【非特許文献2】
田畑,先端ウォッチング調査「21世紀の化学の潮流を探る」,No.6,「バイオマテリアル;生命機能の制御と再生医療をめざして」,p.29-41,2001年,社団法人日本化学会発行
この非特許文献2の中で、免疫学的に問題の少ない合成系のポリ乳酸等の脂肪族ポリエステルを骨格とする生体材料は、生体内分解性と機械的強度、成形加工性と種々の点で優れた材料であるが、主として乳酸、グリコール酸の重合体またはこれらの共重合体であり、材料としての物性は高結晶性あるいは非晶性の組成に於いても剛直性を示すこと、生体との界面に於ける親和性が良好でないことから材料と生体組織との接合性に欠点を有している。
【0013】
本発明者らは前述の各種基材の問題点を解決すべく、生体内で分解性を有し、生体内に於いて異物反応を引き起こさず、生理活性物質による組織修復を阻害しない且つ適正な強度と生体親和性を有し、形態付与性に優れた細胞培養基材を得るべく鋭意研究を重ねた。
そして、アクリル酸系重合体及び/又はメタクリル酸系重合体と、ラクトン類化合物及び/又はヒドロキシカルボン酸類化合物とを反応させた共重合体からなる生体材料を見出し先に出願した。(特許文献14参照。)
しかし、その後更に検討を重ねた結果、この特許文献14に記載される生体材料は、加水分解過程に於いて、分解生成物が水溶性を示すオリゴマーまで分解されない限り生体内に残存することや更に、材料内部から拡散されずに共存するオリゴマーによって、その分解促進のため組織の修復速度に対応し難いという点で未だ効果が充分でないことが判明した。
【0014】
【特許文献14】
特開2002−167428号公報
このように、現在まで数多くの研究がなされ、それに基づいた提案があるものの、薬剤の溶出速度、基材の分解性、安全性、実用性等に適合し、所望期間内に所定量の薬剤を生体内部に放出する機能が付与された生体材料は未だ見い出されていないのが現状であり、また、組織と基材界面での生体親和性及び形態付与性に優れ、組織が本来のマトリックスを形成するまでの期間、強度および形態を維持し分解吸収されることにより、生体組織の再建に適合し得る生体材料が求められている。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは前述の各種基材の問題点を解決すべく、生体内で分解性、特に基剤の表面から溶解しながら分解する特性を有し、生体内に於いて異物反応を引き起こさず、生理活性物質による組織修復を阻害しない且つ適正な強度と生体親和性を有し、形態付与性に優れた細胞培養基材を得るべく鋭意研究を重ねた。
その結果、アクリル酸系重合体及び/又はメタクリル酸系重合体と、ラクトン化合物及び/又はヒドロキシカルボン酸化合物と、エチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシド化合物とを反応させた共重合体からなる材料が、前述の課題を解決する優れた生体材料となることを見出し、係る知見に基づき本発明を完成させたものである。
【0016】
【課題を解決するための手段】
即ち本発明は、アクリル酸系重合体及び/又はメタクリル酸系重合体と、ラクトン化合物及び/又はヒドロキシカルボン酸化合物と、エチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシド化合物とを反応させた共重合体からなる生体材料に関する
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明の生体材料は、アクリル酸系重合体及び/又はメタクリル酸系重合体(以下、2種の化合物を(メタ)アクリル酸系重合体と略記する。)の側鎖カルボキシル基に、ラクトン化合物及び/又はヒドロキシカルボン酸化合物と、エチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシド化合物とを反応させることにより共重合体を製造し、これを薬剤の放出制御に優れた基材として使用するものである。
また、この基材は適度な強度と分解特性を有し、生体親和性、形態付与性に優れるため、生体組織再生を円滑に促進し、細胞培養用の基材として優れたものである。
この基材の製造法は、例えば以下の通りである。
【0018】
ポリ(メタ)アクリル酸の存在下、ラクチド等のラクトン化合物とポリエチレングリコールを触媒存在下で開環重合させ、ポリ(メタ)アクリル酸側鎖のカルボキシル基に乳酸とポリエチレングリコールの共重合体が結合した共重合体を合成する。あるいは、ポリ(メタ)アクリル酸の存在下、乳酸等のヒドロキシカルボン酸を重縮合させ、側鎖に乳酸から誘導されるモノマー単位、コーモノマー単位鎖長を有するポリマーを合成した後、これとポリエチレングリコールとを脱水重縮合する。
あるいは、ポリ(メタ)アクリル酸とポリエチレングリコールとを反応させた後、これとラクチド等のラクトン化合物または乳酸、グリコール酸等のヒドロキカルボン酸を反応させる。
【0019】
本発明で使用する(メタ)アクリル酸系重合体の種類としては、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸の他、(メタ)アクリル酸と共重合可能なモノマーとを共重合して得られる化合物として、例えば(メタ)アクリル酸−アクリルアミド共重合体、(メタ)アクリル酸−エチレン共重合体、(メタ)アクリル酸−ブタジエン共重合体、(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸メチル共重合体、(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エチル共重合体、(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸ブチル共重合体、(メタ)アクリル酸−スチレン共重合体が挙げられる。
また、例えば、(メタ)アクリル酸−エチレン共重合体のカルボキシル基のプロトンを、ナトリウムまたは亜鉛などで置換したアイオノマー等も使用できる。更には(メタ)アクリル酸とマレイン酸、フマル酸、クロトン酸等との共重合体、カーボポール(商品名)等が挙げられるが、好ましくはポリアクリル酸、ポリメタクリル酸である。
【0020】
これら(メタ)アクリル酸系重合体の分子量としては、数平均分子量が概ね500〜2,000,000の範囲のものを使用する。この数平均分子量が500を下廻ると、得られる重合体が体温で流動し易くなり、分解性が大きくなる。更に、生体内での局所に於けるpHが低下し、生体組織反応を生じるため好ましくない。
また、反対に数平均分子量が2,000,000を上廻ると、このものが生体から***されなくなり、生体への影響が大きくなるため好ましくない。
(メタ)アクリル酸系重合体の製造方法としては、例えば溶液重合、乳化重合、疎水性溶媒中での懸濁重合等の方法があるが、別段このような方法に限定されるものではなく、公知の何れの方法を用いて製造してもよい。
【0021】
(メタ)アクリル酸系重合体と反応させるラクトン化合物の種類としては、ラクチド、グリコリド、テトラメチルグリコリド、p−ジオキサノン、トリメチレンカーボネート、ε−カプロラクトン、δ−バレロラクトン、β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、ε−デカラクトン等が例示される。
これらの環状モノマーは、得られる共重合体の側鎖の調節による分解特性あるいは疎水性の調節のために単独あるいは混合して使用される。また、ラクチドに関しては、L、DL、D体の何れであってもよく、これらを混合して使用してもよい。
【0022】
ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール又はエチレンオキシドとプロピレンオキシドの共重合体の数平均分子量は、概ね150〜50,000の範囲のものを使用する。この数平均分子量が150を下廻ると、得られる重合体が流動し易くなる上、分解性が大きくなる。
反対に、数平均分子量が50,000を上廻ると、このものが生体から***されなくなり、生体への影響が大きくなるため使用は好ましくない。従って、この数平均分子量は、更に好ましくは200〜6,000の範囲である。
また、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール又はエチレンオキシドとプロピレンオキシドの共重合体は、一方の末端水酸基がメチル基等で封鎖されていてもよく、後者の共重合体はランダムポリマーでもブロックポリマーでもよい。
【0023】
これらのラクトン化合物とポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール又はエチレンオキシドとプロピレンオキシド共重合体と、(メタ)アクリル酸系重合体との共重合を開環重合によって行う場合、使用する触媒の種類としては、2−エチルヘキサン酸スズ、ジラウリン酸ジブチルスズ、塩化第一スズ、塩化第二スズ、ジエチル亜鉛、塩基性炭酸亜鉛、チタニウムテトライソプロポキシド等あるいはKriche1dorf,H.R.らの報告(Macromo1. Chem.,Suppl.,12,25−38(1985))に記載されている触媒を使用し、反応は溶融状態で行う。
【0024】
ポリ(メタ)アクリル酸と、ラクチド等の環状モノマー、ポリエチレングリコール等との反応は、前者が加熱下に於いても固体であるため固液反応で行うことになり、反応速度は遅く収率も低い。
しかし、何れの場合にもポリ(メタ)アクリル酸とラクトン化合物又はヒドロキシカルボン酸との反応性を高めるため、予めポリ(メタ)アクリル酸と低分子量のポリヒドロキシカルボン酸とを反応させあるいはポリエチレングリコールと反応させ、比較的低温で軟化するオリゴマーを合成し、溶融状態でそのオリゴマーと反応できるようにすることも可能である。
【0025】
一方、(メタ)アクリル酸系重合体とヒドロキシカルボン酸化合物を反応させる場合、ヒドロキシカルボン酸化合物の種類としては、乳酸、グリコール酸、α、β、γ−ヒドロキシ酪酸、α−ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシデカン酸等を例示でき、これら化合物は前述のラクトン化合物からなる環状モノマーとの併用で使用してもよい。また、本発明で使用するこれらヒドロキシカルボン酸化合物として、乳酸またはグリコール酸を使用することが最も望ましい。
更に、この反応を行う際に使用する触媒としては、リン酸、塩化第一スズ等を使用することができる。
また、この反応は触媒無添加でも反応はある程度進行するが、触媒の使用、不使用のいずれの場合でも、反応温度は100℃以上が好ましく、窒素導入下あるいは減圧下で重縮合反応を行う。
【0026】
本発明に於いて、(メタ)アクリル酸系重合体の構成単量体の全構成単位に対するモル比は、20:1〜1:3000の範囲となる組成で反応を行う。
両者の割合がこの範囲を逸脱し、20:1を下廻り、(メタ)アクリル酸系重合体の割合が多くなると、重合の際に(メタ)アクリル酸系重合体とラクトン化合物及び/又はヒドロキシカルボン酸化合物との混合が困難となり、また、局所的に反応が進行するため、目的の組成の材料が得られ難くなる。また、得られる材料は親水性が高くなり、水溶性の性質が強くなるため、徐放性薬剤の担体として使用できない。
また反対に、モル比が1:3000を上廻り、(メタ)アクリル酸系重合体の割合が少なくなると、得られる材料の疎水性が強くなるため、生体に対する親和性が低下し、更には分解速度が低下するため、徐放性薬剤の担体として使用した場合に、薬剤放出後も長期間生体内に基材が残存することになり、何れも本発明の生体材料として好ましくないものとなる。
【0027】
ラクトン化合物及び/又はヒドロキシカルボン酸化合物の構成単位とエチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシド化合物との構成単位のモル比は、99:1〜1:99である。
【0028】
これら構成単位は、アクリル酸系重合体及び/又はメタクリル酸系重合体と、ラクトン化合物及び/又はヒドロキシカルボン酸化合物と、エチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシド化合物とを反応させた共重合体の構成単量体のモル比として、0.05〜95/0.5〜99/3〜99の範囲である。
【0029】
次に、反応状態に関しては、何れの反応も最終的には溶液または溶融状態で重合が進行するが、モノマー、ポリマーを適当な溶媒に溶解あるいは懸濁させて溶媒中で行うことも可能である。
このような溶媒としては、塩化メチレン、クロロホルム、アセトン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジオキサン等が例示できる。
【0030】
反応後に得られる反応生成物は、溶媒に溶解し再沈殿法により精製を行う。このような溶媒としては、アセトン、クロロホルム等が例示できる。このような溶媒に生成物を溶解した後、エーテル、石油エーテル、ヘキサン等をその溶液の6〜1O容量倍加えて反応生成物を析出させ、不純物となる低分子量のポリマーやホモポリマーあるいは未反応原料を除去する。また、ポリマーの分別を行う場合には、メタノール等を加えた混合溶媒で行う。
このようにして得られる共重合体は、1.1〜1.8の分子量分布を有する本発明の生体材料となる。
【0031】
得られた本発明の生体材料は、(メタ)アクリル酸系重合体と、ラクトン化合物及び/又はヒドロキシカルボン酸化合物と、エチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシド化合物からなる共重合体であり、この組成比、分子量等を調整することによって、特に生理活性物質等の薬理学的活性剤を含有させ、生体内でこれを安定に放出する機能を有する基材として適している。
【0032】
本発明の生体材料への使用に適する薬理学的活性剤物質の種類としては、抗炎症剤、抗生物質、アルキル化剤、制癌剤、免疫抑制剤、免疫刺激剤、血圧降下剤、ホルモン等、あるいは神経成長因子、成長分化因子、軟骨由来成長因子、骨盤成長因子、上皮成長因子、線維牙細胞由来成長因子、血小板由来成長因子、コロニー刺激因子、エリスロポエチン、インターロイキン1,2,3,インターフェロンα,β,γ,トランスフォーミング成長因子、インシュリン、カルシトニン、プロスタグランジン等、更には、日本組織培養学会編,朝倉書店刊"細胞成長因子Part I,II"に記載されている種類のポリペプタイド等が挙げられる。
またこの他に、アンチセンスDNA、プラスミッドDNA,RNA等の遺伝子も含有させることが可能で、適用法によってはこれらの数種類を組合せて使用することもできる。遺伝子等の導入には、リソゾーム内のpH低下を利用したポリプロピルアクリル酸のような酸性ポリマーを用いるが、本発明生体材料の(メタ)アクリル酸系重合体のカルボキシル基を残存させることにより可能となる。
【0033】
これらの薬理学的活性剤物質は、多孔質化されたヒドロキシアパタイト、バイオグラス、セラピタール、トリカルシウムホスフェート、テトラカルシウムホスフェート、カルシウムアルミネート、炭酸カルシウム等に予め含浸あるいは各々の微粉末と混合したり、あるいはさらに水溶性のグリセリン、クエン酸トリエチルあるいはポリエテレングリコールと前記の複合体を混合することにより薬物徐放の複合化効果を発現させることも可能であり、骨膜等の生体組織との複合化も可能である。
【0034】
本発明の生体材料に薬理学的活性剤物質を含有させる方法としては、一般的に用いられている方法により行うことができる。
例えば、先ず、本発明生体材料を蒸発し易い溶媒に溶解あるいは分散させた後、薬理学的活性剤物質を均一に分散させた後、溶媒を除去する。この場合に用いる溶媒の種類としては、アセトン、塩化メチレン、クロロホルム、エタノール等が好ましく、その溶媒は目的に応じてその一種または二種以上を組み合わせてもよい。
複合体はフィルム状、多孔質体あるいはそれらを粉砕した微粒子として適用できる。また、耐熱性の高い薬理学的活性剤物質を用いる場合は、加熱下で混合し、ホットプレートを使用してフィルム化も可能となる。
【0035】
マイクロスフェアーの場合は、薬理学的活性剤物質と本発明生体材料を溶媒に分散させ、ポリビニルアルコールを溶解した水溶液に滴下乳化させ、乳化液から溶媒を除去、水で洗浄、濾過し調製することができる。
更には、水の存在下で膨潤する組成の本発明生体材料を使用する場合については、薬理学的活性剤物質の水溶液、懸濁液中に本発明生体材料を加え、このポリマーの膨潤により薬理学的活性剤物質を吸着させた後、これを凍結乾燥して複合体とすることも可能である。
また、本発明生体材料の水溶性組成のものは、界面活性剤としての性質を有するため、腎臓での濾過作用を受けない5〜200nmのミセル内に薬理学的活性剤物質を閉じ込めた注射用液として、また、ゾルゲル転移を起こすものあるいは曇点を有するものは、DNAや薬理学的活性剤物質を閉じ込め、その性質を利用し凝集あるいは分散させた複合体として適用できる。
本発明生体材料は、低分子量のものと組み合わせて流動性を増大させて使用することも可能であり、遊離している末端のカルボキシル基をメチルエステル化して用い任意の剤形を調製することも可能である。
【0036】
【実施例】
以下に本発明の実施例を挙げてさらに詳細に説明をおこなうが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0037】
[実施例1]
温度計、排気口を備えた内容積300mlの反応容器に、ポリアクリル酸(アルドリッチ社製、試薬、数平均分子量2000)0.75g、dl-ラクチド(東京化成製、試薬)130gおよびポリエチレングリコール(キシダ化学製、数平均分子量4000)120gを加え、これに触媒としてオクタン酸スズ(シグマ社製、試薬)0.025gを添加した。1×10-1mmHgの減圧下、160℃で90時間反応をおこなった。反応後得られた共重合体を約10w/v%となるようにアセトンに溶解し、約6倍のヘキサン中で共重合体を析出させることにより精製処理をおこなった。処理後、ポリアクリル酸-ポリ乳酸-ポリエチレングリコール共重合体からなる本発明生体材料185gを得た。得られた本発明生体材料の組成(モル比)をH-NMRにより求めた結果、生体材料中のアクリル酸構成単量体単位と乳酸構成単量体単位とエチレンオキシド構成単量体単位のモル比は、0.1:36:63.9であった。また、この生体材料の分子量をGPCから求めた結果、数平均分子量8900であった。
【0038】
[実施例2]
温度計、窒素導入管、排気口を備えた内容積300mlの反応容器に、dl-乳酸(和光純薬製、試薬、90%)145gとポリアクリル酸(アルドリッチ社製、試薬、数平均分子量2000)100gを加え、これに触媒としてリン酸(和光純薬製、試薬、85%)0.35gを添加して120ml/min.の窒素気流下、135℃で20時間反応させた。得られた反応物を約10w/v%となるようにアセトンに溶解し、約10倍のヘキサン中で共重合体を析出させることにより精製処理をおこない、70℃で真空乾燥して、ポリアクリル酸-ポリ乳酸共重合体190gを得た。
【0039】
同様の反応容器に得られたポリアクリル酸-ポリ乳酸共重合体47gとポリエチレングリコール(キシダ化学製、数平均分子量600)200gを添加し、120ml/min.の窒素気流下、165℃で10時間反応をおこなった。反応後得られた共重合体を約10w/v%となるようにアセトンに溶解し、約6倍のヘキサン中で共重合体を析出させることにより精製処理をおこなった。処理後、ポリアクリル酸-ポリ乳酸-ポリエチレングリコール共重合体からなる本発明生体材料45gを得た。得られた本発明生体材料の組成(モル比)をH-NMRにより求めた結果、生体材料中のアクリル酸構成単量体単位と乳酸構成単量体単位とエチレンオキシド構成単量体単位のモル比は、5:6:89であった。また、この生体材料の分子量をGPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)から求めた結果、数平均分子量1200であった。
【0040】
[実施例3]
実施例2の反応容器に、dl-乳酸(和光純薬製、試薬、90%)220gとポリアクリル酸(アルドリッチ社製、試薬、数平均分子量2000)30gを加え、これに触媒としてリン酸(和光純薬製、試薬、85%)0.5gを添加した。120ml/min.の窒素気流下、135℃で15時間反応させた。得られた反応物を約10w/v%となるようにアセトンに溶解し、約10倍のヘキサン中で共重合体を析出させることにより精製処理をおこない、70℃で真空乾燥して、ポリアクリル酸-ポリ乳酸共重合体95gを得た。
【0041】
実施例1の反応容器に、得られたポリアクリル酸-ポリ乳酸共重合体25g、dl-ラクチド(東京化成製、試薬)173gおよびポリエチレングリコール(キシダ化学製、数平均分子量4000)51gを加え、これに触媒としてオクタン酸スズ(シグマ社製、試薬)0.025gを添加した。反応容器内を1×10-1mmHgに減圧し、160℃で50時間反応をおこなった。反応後得られた共重合体を約10w/v%となるようにアセトンに溶解し、約6倍のヘキサン中で共重合体を析出させることにより精製処理をおこなった。処理後、ポリアクリル酸-ポリ乳酸-ポリエチレングリコール共重合体からなる本発明生体材料172gを得た。得られた本発明生体材料の組成(モル比)をH-NMRにより求めた結果、生体材料中のアクリル酸構成単量体単位と乳酸構成単量体単位とエチレンオキシド構成単量体単位のモル比は、
11:62:27であった。また、この生体材料の分子量をGPCから求めた結果、数平均分子量は19000であった。
【0042】
[実施例4]
実施例1の反応容器に、ポリメタクリル酸(アルドリッチ社製、試薬、数平均分子量500)0.77g、dl-ラクチド(東京化成製、試薬)193gおよびポリエチレングリコール(キシダ化学製、数平均分子量2000)30gを加え、これに触媒としてオクタン酸スズ(シグマ社製、試薬)0.022gを添加した。1×10-1mmHgの減圧下、170℃で50時間反応をおこなった。反応後得られた共重合体を約10w/v%となるようにアセトンに溶解し、約6倍のヘキサン中で共重合体を析出させることにより精製処理をおこなった。処理後、ポリメタクリル酸-ポリ乳酸-ポリエチレングリコール共重合体からなる本発明生体材料150gを得た。得られた本発明生体材料の組成(モル比)をH-NMRにより求めた結果、生体材料中のメタクリル酸構成単量体単位と乳酸構成単量体単位とエチレンオキシド構成単量体単位のモル比は、0.1:72.4:27.5であった。また、この生体材料の分子量をGPCから求めた結果、数平均分子量13000であった。
【0043】
[実施例5]
実施例2の反応容器に、dl-乳酸(和光純薬製、試薬、90%)145gとポリアクリル酸(アルドリッチ社製、試薬、数平均分子量2000)100gを加え、これに触媒としてリン酸(和光純薬製、試薬、85%)0.35gを添加して120ml/min.の窒素気流下、135℃で20時間反応させた。得られた反応物を約10w/v%となるようにアセトンに溶解し、約10倍のヘキサン中で共重合体を析出させることにより精製処理をおこない、70℃で真空乾燥して、ポリアクリル酸-ポリ乳酸共重合体190gを得た。
【0044】
同様の反応容器に得られたポリアクリル酸-ポリ乳酸共重合体50gとポリプロピレングリコール(アルドリッチ社製、数平均分子量3500)145gを添加し、120ml/min.の窒素気流下、175℃で20時間反応をおこなった。反応後得られた共重合体を約10w/v%となるようにアセトンに溶解し、約6倍のヘキサン中で共重合体を析出させることにより精製処理をおこなった。処理後、ポリアクリル酸-ポリ乳酸-ポリエチレングリコール共重合体からなる本発明生体材料75gを得た。得られた本発明生体材料の組成(モル比)をH-NMRにより求めた結果、生体材料中のアクリル酸構成単量体単位と乳酸構成単量体単位とプロピレンオキシド構成単量体単位のモル比は、3:7:90であった。また、この生体材料の分子量をGPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)から求めた結果、数平均分子量2700であった。
【0045】
[実施例6]
実施例1の反応容器に、ポリアクリル酸(アルドリッチ社製、試薬、数平均分子量2000)0.37g、ポリメタクリル酸(アルドリッチ社製、試薬、数平均分子量500)0.37g、dl-ラクチド(東京化成製、試薬)215gおよびポリエチレングリコール(キシダ化学製、数平均分子量4000)33gを加え、これに触媒としてオクタン酸スズ(シグマ社製、試薬)0.025gを添加した。1×10-1mmHgの減圧下、170℃で110時間反応をおこなった。反応後得られた共重合体を約10w/v%となるようにアセトンに溶解し、約6倍のヘキサン中で共重合体を析出させることにより精製処理をおこなった。処理後、ポリアクリル酸-ポリメタクリル酸-ポリ乳酸-ポリエチレングリコール共重合体からなる本発明生体材料125gを得た。得られた本発明生体材料の組成(モル比)をH-NMRにより求めた結果、生体材料中のアクリル酸構成単量体単位とメタクリル酸構成単量体単位と乳酸構成単量体単位とエチレンオキシド構成単量体単位のモル比は、0.1:0.4:65:35であった。また、この生体材料の分子量をGPCから求めた結果、数平均分子量11000であった。
【0046】
[実施例7]
実施例2と同様の反応容器に、l-乳酸(和光純薬製、試薬、90%)220gとポリアクリル酸(アルドリッチ社製、試薬、数平均分子量2000)30gを加え、これに触媒としてリン酸(和光純薬製、試薬、85%)0.5gを添加した。120ml/min.の窒素気流下、135℃で15時間反応させた。得られた反応物を約10w/v%となるようにアセトンに溶解し、約10倍のヘキサン中で共重合体を析出させることにより精製処理をおこない、70℃で真空乾燥して、ポリアクリル酸-ポリ乳酸共重合体95gを得た。
【0047】
実施例1と同様の反応容器に、得られたポリアクリル酸-ポリ乳酸共重合体17g、ε-カプロラクトン(東京化成製、試薬)195gおよびポリエチレングリコール(キシダ化学製、数平均分子量4000)35gを加え、これに触媒としてオクタン酸スズ(シグマ社製、試薬)0.025gを添加した。反応容器内を1×10-1mmHgに減圧し、160℃で50時間反応をおこなった。反応後得られた共重合体を約10w/v%となるようにアセトンに溶解し、約6倍のヘキサン中で共重合体を析出させることにより精製処理をおこなった。処理後、ポリアクリル酸-ポリ(乳酸-カプロラクトン)-ポリエチレングリコール共重合体からなる本発明生体材料150gを得た。
得られた本発明生体材料の組成(モル比)をH-NMRにより求めた結果、生体材料中のアクリル酸構成単量体単位と乳酸構成単量体単位とカプロラクトン構成単量体単位とエチレンオキシド構成単量体単位のモル比は、10:12:47:31であった。また、この生体材料の分子量をGPCから求めた結果、数平均分子量は8900であった。
【0048】
[実施例8]
実施例2と同様の反応容器に、ポリアクリル酸(アルドリッチ社製、試薬、数平均分子量2000)5gおよびポリエチレングリコール(キシダ化学製、数平均分子量4000)200gを加え、120ml/min.の窒素気流下、160℃で5時間反応させた。反応後得られた共重合体を約20w/v%となるようにアセトンに溶解し、約5倍のヘキサン中で共重合体を析出させることにより精製処理をおこなった。処理後、ポリアクリル酸-ポリエチレングリコール共重合体95gを得た。
【0049】
実施例1と同様の反応容器に得られたポリアクリル酸-ポリエチレングリコール共重合体45.3gとdl-ラクチド(東京化成製、試薬)205gを加え、これに触媒としてオクタン酸スズ(シグマ社製、試薬)0.025gを添加した。1×10-1mmHgの減圧下、160℃で20時間反応をおこなった。反応後得られた共重合体を約10w/v%となるようにアセトンに溶解し、約6倍のヘキサン中で共重合体を析出させることにより精製処理をおこなった。処理後、ポリアクリル酸-ポリ乳酸-ポリエチレングリコール共重合体からなる本発明生体材料 210gを得た。得られた本発明生体材料の組成(モル比)をH-NMRにより求めた結果、生体材料中のアクリル酸構成単量体単位と乳酸構成単量体単位とエチレンオキシド構成単量体単位のモル比は、0.5:86.9:12.6であった。また、この生体材料の分子量をGPCから求めた結果、数平均分子量31000であった。
【0050】
[実施例9]
温度計、排気口を備えた内容積300mlの反応容器に、ポリアクリル酸(アルドリッチ社製、試薬、数平均分子量2000)0.73g、dl-ラクチド(東京化成製、試薬)211gおよびポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコール共重合体(アルドリッチ社製、数平均分子量2000)37.2gを加え、これに触媒としてオクタン酸スズ(シグマ社製、試薬)0.025gを添加した。1×10-1mmHgの減圧下、160℃で90時間反応をおこなった。反応後得られた共重合体を約10w/v%となるようにアセトンに溶解し、約6倍のヘキサン中で共重合体を析出させることにより精製処理をおこなった。処理後、ポリアクリル酸-ポリ乳酸-ポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコール共重合体からなる本発明生体材料175gを得た。得られた本発明生体材料の組成(モル比)をH-NMRにより求めた結果、生体材料中のアクリル酸構成単量体単位と乳酸構成単量体単位と(エチレンオキシド+プロピレンオキシド)構成単量体単位のモル比は、0.2:77:23であった。また、この生体材料の分子量をGPCから求めた結果、数平均分子量15000であった。
【0051】
<生体材料適用試験1>
実施例1〜9で得られた本発明生体材料2.5gを塩化メチレン100mlに溶解した後、攪拌下(500rpm)、0.5%ポリビニルアルコール(けん化度87%)水溶液3Lに添加してW/Oエマルジョンを作成した。ポリマー組成により必要に応じて超音波処理(1〜5分間)をおこなった。25℃以下で2〜5時間攪拌を継続して塩化メチレンを除去した後、遠心分離により微粒子を単離し、凍結乾燥により平均粒径300〜1000nmの微粒子を得た。この微粒子は容易に蒸留水に再分散して懸濁液となり、注射器により注入することが可能であった。
【0052】
<生体材料適用試験2>
実施例1〜9で得た本発明生体材料10gを氷冷した滅菌水(オートクレーブ、121℃、20分間)100mlに分散させ、インシュリン(シグマ社製)200μgを添加・混合した。約2時間攪拌することにより均一な低粘度液体となり、ゼータ電位計により平均粒径100nmのミセルが形成されていることを確認した。また、限外濾過によりミセルに含有されていない薬剤や低分子物質を除去した後凍結乾燥して得た微粒子のNMR分析から、ミセル中の薬剤の存在を確認した。こうして得られた低粘度液は18Gの注射針を有するシリンジでの注入が可能であった。
【0053】
<生体適合性評価>
実施例1〜9で製造した本発明生体材料をホットプレス(160℃)により厚さ200μmのフィルムを作成した。エーテル麻酔下のマウス(4週齢)の背部を切開し、皮下にエチレンオキシド滅菌したフィルムを埋め込んだ。埋め込んだフィルムは、8週間後に切開したところ、加水分解して消失していた。また、移植部位周辺の生体組織は、炎症反応等の組織為害性を示しておらず生体適合性が確認できた。
【0054】
<薬剤放出試験>
実施例1〜9で得られた本発明生体材料1gとアミノ安息香酸ブチル0.04gをアセトン10mlに溶解・混合後、減圧乾燥によりアセトンを除去した。得られた材料をリン酸緩衝生理食塩水100mlに浸漬し、アミノ安息香酸ブチルの経時毎の生理食塩水中への溶出量を経時毎に分光光度計により測定した。経過日数毎の各材料基剤からのアミノ安息香酸ブチル溶出量を示す結果を図1に示した。これらの材料は徐々に分解して薬剤を放出し、また薬剤放出後には材料は消失した。更に、本発明生体材料の組成の違いにより、添加した薬物の放出速度を制御することができた。
【0055】
<細胞培養試験>
実施例1で得られた本発明生体材料10gをヒト繊維芽細胞懸濁液(細胞濃度6.0×106cells/ml)を含む滅菌水(オートクレーブ、121℃、20分間)に添加・分散させ、初期細胞量が4.0×104cells/gとなるようにシャーレに分注した。これに、ウシ胎児血清10%を添加したDulbecco’s Modified Eagle’s Medium(以下DMEMと略記)培養液を添加し、インキュベーター中、37℃、5%CO2気相下で10日間培養を行った。その結果、細胞数が9.2×104cells/diskに増加し、本発明生体材料中での細胞増殖が確認できた。
【0056】
[比較例]
温度計、排気口を備えた内容積300mlの反応容器に、ポリアクリル酸(アルドリッチ社製、試薬、数平均分子量2000)0.75gおよびdl-ラクチド(東京化成製、試薬)225gを加え、これに触媒としてオクタン酸スズ(シグマ社製、試薬)0.025gを添加した。これを1×10-1mmHgの減圧下、160℃で20時間反応をおこなった。反応後得られた共重合体を約10w/v%となるようにアセトンに溶解し、約6倍のヘキサン中で共重合体を析出させることにより精製処理をおこなった。
処理後、得られた本発明生体材料の組成(モル比)をH-NMRにより求めた結果、生体材料中のアクリル酸構成単量体単位と乳酸構成単量体単位のモル比は、1:99であった。また、この生体材料の分子量をGPCから求めた結果、数平均分子量21000であった。
【0057】
この材料をリン酸緩衝生理食塩水に浸漬した結果、材料表面の溶解性は示さなかった。また、GPCの測定結果から、経時後の材料の加水分解により生成した分解生成物がポリマー中に残存していることが確認でき、本発明の目的とする生体材料には適さないことが確認できた。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1〜9で得られた本発明生体材料の薬剤放出特性を示す図である。

Claims (6)

  1. アクリル酸系重合体及び/又はメタクリル酸系重合体と、ラクトン化合物及び/又はヒドロキシカルボン酸化合物と、エチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシド化合物とを反応させた共重合体からなる生体材料。
  2. アクリル酸系重合体及び/又はメタクリル酸系重合体と、ラクトン化合物及び/又はヒドロキシカルボン酸化合物と、エチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシド化合物とを反応させた共重合体の構成単量体のモル比が0.05〜95/0.5〜99/3〜99の範囲である請求項1記載の生体材料。
  3. アクリル酸系重合体及び/又はメタクリル酸系重合体が、アクリル酸系単量体及び/又はメタクリル酸系単量体と共重合可能な他の単量体との共重合体である請求項1または2記載の生体材料。
  4. ラクトン化合物がラクチド及び/又はグリコリドを主成分とする化合物である請求項1、2または3記載の生体材料。
  5. ヒドロキシカルボン酸化合物が乳酸及び/又はグリコール酸を主成分とする化合物である請求項1〜4のいずれか1項記載の生体材料。
  6. エチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシド化合物が、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール又はエチレングリコールとプロピレングリコールの共重合体から選ばれた化合物である請求項1〜5のいずれか1項記載の生体材料。
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