以下、図面を参照して本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1に示すように、本実施の形態のインクジェット記録装置90には、筐体52に設けられたロッド54と、該ロッド54に沿って移動するとともに、画像を記録するインクジェットヘッド10が設けられている。このインクジェットヘッド10をロッド54に沿って移動させながらインクを噴射することにより、主走査方向Xの記録が行われる。また、筐体52には、各種データやメッセージ等を表示するための表示部14が設けられている。
インクジェット記録装置90には、印字媒体としての用紙Pを載置するためのプラテン94が設けられている。このプラテン94上を用紙Pがインクジェットヘッド10の移動方向と交差する方向に移動することによって、副走査方向Yの記録が行なわれる。すなわち、インクジェットヘッド10をロッド54に沿って主走査方向に走査しながら、インクジェットヘッド10からインクを噴射することにより主走査方向に画像が形成される。そして、主走査方向の画像形成と副走査方向の用紙送りを行なうことによって、用紙P全面に画像形成が行われる。
また、インクジェット記録装置90には、インクジェットヘッド10の回復動作を行う回復手段12、及びインクジェット記録装置90本体を制御するためのメイン回路16が設けられている。インクジェットヘッド10が回復手段12の設置位置に位置するときに、インクジェットヘッド10は、回復手段12によって回復可能な状態となる。
図2及び図3に示すように、インクジェットヘッド10は、ヘッド本体42、駆動回路50、及び電圧検出部52を含んで構成されている。ヘッド本体42には、インクをインクジェットヘッド10の外部へ噴射するための複数のノズル401〜408が設けられている。複数のノズル401〜408は、ノズル401〜408各々のインク噴射面が略平面状となるように配列されている。なお、本実施の形態では、説明を簡略化するために、ヘッド本体42には、8個のノズル401〜408を設けた例について説明したが、ノズルの数は、8個に限られるものではない。
複数のノズル401〜408各々には、複数のインク圧力室441〜448が連通されている。複数のインク圧力室441〜448には、複数のインク圧力室441〜448各々にインクを供給するインク供給路461〜468が連通されており、各インク供給路461〜468は、インクを供給するための図示を省略したインクタンクに接続された共通インク室47に連通されている。
複数の各インク圧力室441〜448各々には、ピエゾ素子で構成された複数の圧電素子481〜488が電極491〜498各々を介して各インク圧力室441〜448に接するように設けられている。各圧電素子481〜488は、スイッチ511〜518を介して、メイン回路16に接続された駆動回路50に接続されている。
メイン回路16から駆動回路50へ、印字する画像データに応じた駆動信号が入力されると、駆動回路50は、入力された駆動信号に基づいて、各スイッチ511〜518をオンするとともに、各スイッチ511〜518を介して各圧電素子481〜488へ駆動電圧を印加する。駆動回路50から各圧電素子481〜488へ駆動電圧が印加されることによって、各圧電素子481〜488が変形すると、インク圧力室441〜448各々の内圧が上昇し、対応するノズル401〜408各々からインクが噴射される。
電圧検出部52は、メイン回路16に接続されるとともに、複数の各圧電素子481〜488各々に接続されており、各圧電素子481〜488の出力電圧を検出し、メイン回路16へ出力する。詳細には、電圧検出部52は、スイッチ511〜518各々を介して圧電素子481〜488各々の一端に接続されるとともに、電極491〜498各々を介して圧電素子481〜488各々の他端に接続されている。このため、電圧検出部52には、各圧電素子481〜488が変形すると、圧電素子481〜488の変形に応じた出力電圧が入力され、電圧検出部52によって検出される。検知された出力電圧は、メイン回路16へ出力される。なお、電圧検出部52は、スイッチ511〜518各々がオンのときに、各圧電素子481〜488の変形に応じて出力された出力電圧を検出可能な状態となるように設けられている。
図2に示すように、回復手段12は、ヘッド本体42に設けられた複数のノズル401〜408のインク噴射面が露呈する端面全域を覆うためのキャップ54、キャップ内54を負圧状態にするための負圧生成部56、及び負圧生成部56による負圧生成動作を制御するための回復動作回路58を備えている。回復動作回路58は、メイン回路16に接続されている。
負圧生成部56は、負圧生成部56は、異なる3段階の負圧レベル、具体的には、負圧レベル「1」、「2」、及び「3」へ順に高い負圧を示す3段階の負圧を生成可能に設けられている。
負圧生成部56によって負圧が生成されると、キャップ54内部は負圧状態となる。キャップ54内部が負圧状態となると、ノズル401〜408を介してインク圧力室441〜448が負圧状態となり、負圧生成部56によって生成された負圧に応じた吸引圧力で、全てのノズル401〜408内のインクや異物60等が吸引除去される。
このようにインク圧力室441〜448が負圧状態となり、401〜408各々が吸引されると、各ノズル401〜408各々の吸引圧力に応じて、各インク圧力室441〜448に接するように設けられた圧電素子481〜488が変形し、各圧電素子481〜488は、各圧電素子481〜488各々の変形に応じた出力電圧を出力する。各圧電素子圧電素子481〜488各々から出力された出力電圧は、電圧検出部52によって検出される。
図4に示すように、メイン回路16は、制御部18、入出力インターフェース(以下、入出力I/Fという)20、入出力I/F22、及び表示部14を含んで構成されている。表示部14、入出力I/20、及び入出力I/F22は、制御部18とデータや信号の授受可能に接続されている。
制御部18は、印字するための画像データに基づく駆動信号を生成するための駆動波形生成部24、及びノズル401〜408各々の回復状態を監視するための監視部26を含んで構成されている。
監視部26は、回復手段12によってノズル401〜408各々の回復動作時に、ノズル401〜408の中に回復状態が異常である異常ノズルが存在するか否かを判定する回復状態判定部30、及び回復状態判定部30による判定結果に基づいて、回復手段12の回復動作を制御するための回復動作制御部28を含んで構成されている。詳細には、回復動作制御部28は、回復状態判定部30によって異常ノズルが存在すると判定されたときに回復動作を継続し、異常ノズルが存在しないと判定されたときに回復動作を停止するように回復手段12を制御する。
入出力I/F22には、インクジェットヘッド10が接続されている。駆動波形生成部24で生成された画像データに基づく駆動信号は、入出力I/F22を介して、インクジェットヘッド10へ出力される。入出力I/F20には、回復手段12が接続されており、回復動作制御部28によって、回復手段12によるインクジェットヘッド10の回復動作が制御される。
なお、図示は省略するが、メイン回路16は、更に出力I/Fを備えており、該出力I/Fは、用紙Pを副走査方向に搬送するための図示を省略した用紙搬送モータを駆動するドライバ、及びインクジェットヘッド10を移動するための図示を省略したモータを駆動するドライバに接続されている。
次に、回復手段12によってインクジェットヘッド10の回復動作が行われるときの、インクジェット記録装置90の作用を説明する。
図5には、回復手段12によって回復動作が行われるときに、制御部18で実行される回復処理を示す処理ルーチンを示した。
また、回復手段12による回復動作の実行以前に、負圧生成部56によって生成する負圧レベル及び回復手段12によるノズル401〜408各々の吸引回数は初期化されている。本実施の形態では、回復手段12による回復動作の実行以前には、負圧レベルは最も負圧レベルの低いレベル「1」に設定され、吸引回数は「1」回に設定されている。
制御部18の制御によって回復手段12によるノズル401〜408の回復動作が開始されると、ステップ100へ進み、吸引負圧発生処理が実行される。ステップ100の処理は、回復手段12の負圧生成部56において負圧レベル「1」の負圧を発生するための指示信号を、回復手段12へ出力するものである。ステップ100の処理によって、負圧レベル「1」の負圧を発生するための指示信号が入力されると、負圧生成部56は負圧レベル「1」の負圧を発生する。これによって、ノズル401〜408は負圧レベル「1」に相当する吸引圧力で吸引される。
次にステップ104では、予め定めた所定時間(T=1)が経過するまで否定判断を繰り返す。ステップ104の判断によって、負圧生成部56による負圧発生開始から所定時間経過してキャップ54内が一定の負圧状態となるまで、待機することができる。
上記ステップ104で肯定されると、ステップ106へ進み、各圧電素子481〜488各々から出力される出力電圧の検出結果を取得する、電圧検出結果の取得処理が実行される。
各圧電素子481〜488各々から出力される出力電圧の検出結果の取得は、例えば、図6に示すように、スイッチ511〜518各々を順次オンするための駆動信号を、ノズル切り替え信号として駆動回路50へ出力することによって行われる。詳細には、回復手段12によって回復動作が行われることによって圧電素子481〜488各々が変形することにより、各圧電素子481〜488の変形に応じた出力電圧が各圧電素子481〜488から出力されると、出力された各出力電圧は、スイッチ511〜518各々がオンであるときに、順次電圧検出部52によって検出される。電圧検出部52によって検出された各圧電素子481〜488各々から出力された出力電圧は、電圧検出部52によってメイン回路16へ出力される。このように、スイッチ511〜518各々を順次オンするための駆動信号を順次駆動回路50へ出力することによって、回復動作時に圧電素子481〜488各々で発生した出力電圧48A、48B、48C、48D、48E、48F、48G、及び48H各々が、電圧検出部52で検出され、各圧電素子481〜488各々から出力される出力電圧の検出結果を取得することができる。
ステップ106の処理によって、回復手段12によるノズル401〜408各々の回復動作中に、各ノズル401〜408各々に対応する圧電素子481〜488各々から出力される出力電圧の検出結果を取得することができるので、回復動作と同時に各ノズル401〜408各々に対応する圧電素子481〜488各々から出力される出力電圧を監視することができる。
次にステップ108では、上記ステップ106で取り込んだ各圧電素子481〜488各々の出力電圧の検出結果に基づいて、回復状態が異常である異常ノズルが存在するか否かを判断する。回復状態が異常である異常ノズルとは、図2に示すような異物60や乾燥インクの付着等によって、異物60や乾燥インクの付着等のない回復状態が正常なノズルに比べて、インクの噴射能力が低下した状態にあるノズルである。
ここで、図2に示すような異物60や乾燥インク等によって詰まりが発生し、正常にインクを噴射することが困難な異常ノズル405が存在する場合、該異常ノズル405は、回復状態が正常なノズル401〜404及びノズル406〜408に対して、回復手段12の吸引によって生じるインク圧力室441〜448内の圧力変化が少ない。このため、異常ノズル405に対応する圧電素子485から出力される出力電圧は、正常なノズル401〜404及び406〜408に比べて小さくなる。
異常ノズルに対応する圧電素子の出力電圧は、他のノズルに対応する圧電素子の出力電圧48A、48B、48C、48D、48F、48G、及び48Hより低くなる。このとき、ノズル405に隣接するノズル404及びノズル406に対応する圧電素子484及び圧電素子486の出力電圧48D及び出力電圧48Fは、ノズル405に隣接しないノズルに対応する圧電素子の出力電圧48A、48B、48C、48G、及び48Hに比べて高くなる傾向にある。また、ノズル401〜408の並び方向全体においても、回復手段12の吸引口57(図2参照)に対するノズル401〜408の位置関係や、インクジェットヘッド10のノズル401〜408と、インク供給路461〜468、及び共通インク室47との位置関係のばらつきによる流路抵抗のばらつきにより、全てのノズル401〜408の回復状態が正常である場合であっても、各圧電素子481〜488から出力される出力電圧にはばらつきが発生する可能性がある。また、圧電素子481〜488各々から出力される出力電圧は、回復動作時のインクの粘度やキャップ54のインクジェットヘッド10への密着状態によって変動するおそれがある。
そこで、ステップ108の判断は、隣り合う圧電素子481〜488間の出力電圧の差分の変化率が、所定値より大きいか否かを判別することによって、異常ノズルが存在するか否かを判断することが好ましい。
なお、ステップ108の判断は、各圧電素子481〜488から出力される出力電圧各々が、予め定めた所定値より大きいか否かを判別することによって、各圧電素子481〜488に対応するノズル401〜408が回復状態にあるか否かを判別するようにしてもよい。
また、各圧電素子481〜488の出力電圧を比較し、比較結果に基づいて、異常ノズルの有無を判別するようにしてもよい。例えば、図6では、ノズル405に対応する圧電素子485からの出力電圧が、他のノズル401〜404及び406〜408に対応する圧電素子481〜484及び486〜488からの出力電圧が予め定めた所定値比べて低いことから、異常ノズルが存在することを判別することができる。
なお、本実施の形態では、ステップ108において異常ノズルが存在するか否かの判断を行う場合を説明するが、異常ノズルが存在する場合には、更に、異常特定ノズルの特定処理を行うようにしてもよい。異常ノズルの特定は、上述のようにスイッチ511〜518各々を順次オンするための駆動信号を順次駆動回路50へ出力した後に、回復動作時に圧電素子481〜488各々で発生した出力電圧48A、48B、48C、48D、48E、48F、48G、及び48H各々が、電圧検出部52で検出されると、電圧検出部52で順次検出された出力電圧の検出順序に基づいて、対応するノズル401〜408を判別するようにすればよい。このようにすれば、異常ノズルのアドレスまたは位置を特定することができ、複数のノズル401〜408の内の、何れのノズルが異常ノズルであるかを特定することができる。
上記ステップ108で肯定され、異常ノズルが存在せず、全てのノズル401〜408の回復状態が正常であると判別されると、ステップ110へ進み、吸引負圧発生停止処理が実行される。ステップ110の処理は、回復手段12の負圧生成部56における負圧の発生を停止するための停止信号を、回復手段12へ出力するものである。ステップ108の処理によって、負圧生成部56による負圧の発生が停止されて、回復手段12による回復動作が停止される。
次にステップ111では、回復手段12において発生する負圧レベルの初期化及び吸引回数の初期化を実行した後に、本ルーチンを終了する。
一方、上記ステップ108で否定されて、異常ノズルが存在する場合には、ステップ112へ進み、現在の吸引回数が、予め吸引回数の最大値として定めた所定回数以上であるか否かを判別することによって、吸引回数が所定回数以上であるか否かを判断する。
上記ステップ112で否定され、現在の吸引回数が所定回数未満である場合には、ステップ120へ進み、吸引回数をカウントアップする。
次にステップ122では、予め定めた所定時間(T2)が経過するまで否定判断を繰り返し、肯定されると、上記ステップ106へ戻る。
上記ステップ112、ステップ120、及びステップ122の処理によって、予め定めた吸引回数の最大値となるまで、一定の負圧レベルの発生によりノズル401〜408各々を吸引する回復動作を継続して実行することができる。また、予め定めた吸引回数の最大値となるまで、該一定の負圧レベル下において、各圧電素子481〜488から出力される出力電圧の検出を繰り返し実行することができる。
上記ステップ112で肯定され、予め定めた吸引回数の最大値となるまで回復動作を継続して実行しても異常ノズルが存在する場合には、ステップ114へ進み、負圧レベルPは最大レベルか否かを判別する。ステップ114の判断は、現在の負圧レベルPの設定値が、予め定めた最大レベルと等しいか否かを判別することによって可能である。本実施の形態では、負圧レベルは、「1」、「2」、及び「3」の異なる3種の負圧レベルが予め用意されている。このため、ステップ114の判断では、負圧レベルが最大レベルである「3」に設定されているか否かを判別することによって、判断可能である。
ステップ114で否定されて、負圧レベルが最大レベルに設定されていない場合には、ステップ124へ進み、負圧レベルをカウントアップし、負圧レベル変更処理が実行される。ステップ114及びステップ124の処理によって、一定の負圧レベルで予め定めた吸引回数の最大値となるまで回復動作を継続して実行しても異常ノズルが存在する場合には、前回発生した負圧レベルより大きなレベルの負圧を発生するように、負圧レベルを変更することができる。
次にステップ125では、吸引負圧変更処理が実行される。ステップ125の処理は、上記ステップ124で変更された負圧レベルに基づいて、該負圧を発生するための指示信号を回復手段12へ出力するものである。ステップ125の処理によって、負圧生成部56により発生する負圧レベルが変更されることにより、キャップ54内の負圧レベルが変更されるので、前回の吸引圧力より大きい吸引圧力でノズル401〜408が吸引される。
次にステップ126では、設定された吸引回数を初期化する初期化処理が実行された後に、上記ステップ106へ戻る。ステップ126の処理は、設定された吸引回数の値を初期値である「0」に設定する処理である。
ステップ114及びステップ124乃至ステップ126の処理によって、回復手段12による回復動作中に異常ノズルが存在すると判別され、一定回数の吸引を行っても異常ノズルが存在する場合には、前回の吸引圧力より大きい吸引圧力でノズル401〜408を吸引するように、負圧生成部56により発生する負圧レベルを変更することができる。
一方、上記ステップ114で肯定されて、設定された吸引回数が所定回数以上であるとともに、設定された負圧レベルが最大レベルである場合には、ステップ116へ進み、吸引負圧発生停止処理が実行される。
ステップ116の処理は、回復手段12の負圧生成部56における負圧の発生を停止するための指示信号を、回復手段12へ出力するものである。ステップ116の処理によって、負圧生成部56による負圧の発生は停止され、キャップ54内が負圧状態から開放されて、ノズル401〜408の吸引が停止される。
ステップ114及びステップ116の処理によって、設定可能な最大レベルの負圧を発生し、設定可能な最大の吸引圧力でノズル401〜408を吸引した場合であっても、異常ノズルの存在が判断される場合には、回復動作を停止することができる。
次にステップ118では、ヘッドの交換を促すメッセージを表示部14に表示するエラー表示処理が実行された後に、上記ステップ111へ進む。
以上説明したように、本実施の形態のインクジェット記録装置90では、回復手段12による回復動作時に、各ノズル401〜408各々に対応する圧電素子481〜488から出力される出力電圧を検出することができるので、回復動作時にノズル401〜408各々の回復状態を監視することができる。
また、各ノズル401〜408各々に対応する圧電素子481〜488から出力された出力電圧の検出結果に基づいて、回復状態が異常である異常ノズルが存在するか否かを判別し、異常ノズルが存在する場合には、回復手段12による回復動作を継続し、異常ノズルが存在しない場合には、回復手段12による回復動作を停止することができるので、必要最小限の回復動作によりノズルの回復動作を行うことができる。また、過度な回復動作の継続を抑制することができ、ノズル401〜408の吸引によるインクの消費を抑制することができる。
また、異常ノズルが存在する場合には、予め定めた回数まで、一定の負圧レベルを発生して一定の吸引圧力でノズル401〜408各々の吸引動作による回復動作を継続して行うことができる。
また、更に、一定回数以上回復動作を継続して行った場合であっても、異常ノズルが存在する場合には、前回の吸引圧力より大きい吸引圧力でノズル401〜408を吸引するように、前回の負圧レベルより大きいレベルの負圧を発生するように回復手段12を制御することができるので、効率よくノズル401〜408各々の回復動作を行うことができる。
なお、本実施の形態で説明した吸引回数の最大値や、負圧生成部56で発生する負圧の最大レベルは、適宜変更可能であるものとする。
なお、本実施の形態では、回復動作時に異常ノズルが存在すると判断した場合には、負圧生成部56により発生する負圧レベルを変更して、ノズル401〜408の吸引負圧を変更するものとして説明したが、単に、負圧生成部56により発生する負圧レベルを変更するのみではなく、各ノズル401〜408各々からダミーインク噴射を行うダミーインク噴射処理を併せて実行するようにしてもよい。この場合、ステップ126の吸引回数初期化処理の後に、各ノズル401〜408各々からダミーインク噴射を行うように、駆動回路50に信号を出力するダミーインク噴射処理を行った後に、ステップ106へ戻るようにすればよい。
次に第2の実施の形態について説明する。
第1の実施の形態では、図2に示すように、回復手段12は、ヘッド本体42に設けられた複数のノズル401〜408面が露呈する端面全域を覆うためのキャップ54を備えており、キャップ内54を負圧状態にするための負圧生成部56によって負圧が生成されると、キャップ54内部が負圧状態となり、ノズル401〜408を吸引するものとして説明した。本実施の形態では、図7に示すように、ノズル401〜408を1または複数ノズル単位で部分的に吸引することによって、ノズル401〜408各々の回復動作を行う場合について説明する。
なお、本実施の形態のインクジェット記録装置91は、第1の実施の形態のインクジェット記録装置90と略同様の構成であるため、同一部分には同一番号を付し、詳細な説明を省略する。
図7に示すように、インクジェット記録装置91は、インクジェットヘッド11及びインクジェットヘッド11の回復動作を行う回復手段13及びメイン回路16を備えている。回復手段13は、ヘッド本体42の複数のノズル401〜408各々について、1または数ノズル面が露呈する端面に面した大きさに形成された吸引用開口部70が設けられた吸引ノズル72、吸引ノズル72内を負圧状態にするための負圧生成部56、及びメイン回路16に接続された回復動作回路58を備えている。インクジェット記録装置91は、更に、吸引ノズル72をノズル401〜408の配列方向に向かって相対的に移動させる移動部74を備えている。移動部74は、ドライバ76を介してメイン回路16に接続されており、本実施の形態ではステッピングモータとして構成され、メイン回路16からドライバ76を介して入力されたパルス数に応じた移動量となるように、吸引ノズル72を移動させる。
すなわち、第2の実施の形態では、回復手段12の吸引ノズル72の位置に対応するノズル401〜408について、1または数ノズル単位で回復手段12による回復可能な状態となるように吸引ノズル72が設けられている。また、負圧生成部56によって負圧が生成されると、吸引ノズル72内部が負圧状態となり、吸引ノズル72による吸引位置に対応する位置のノズル401〜408の何れかを介してインク圧力室441〜448の何れかが負圧状態となり、対応するノズル401〜408内のインクや異物60等が吸引除去される。そして、負圧状態となったインク圧力室441〜448に接するように設けられた圧電素子481〜488が変形し、変形に応じた出力電圧が電圧検出部52によって検出される。
図8に示すように、メイン回路16は、制御部19、入出力I/F21、入出力I/F22、及び表示部14を含んで構成されている。表示部14、入出力I/21、及び入出力I/F22は、制御部18と信号授受可能に接続されている。
制御部19は、移動部74による回復手段13の吸引ノズル72の移動を制御するための回復手段移動制御部25、駆動波形生成部24、及びノズル401〜408各々の回復状態を監視するための監視部26を含んで構成されている。入出力I/F21には、回復手段13が接続されており、制御部19によって、回復手段13によるインクジェットヘッド11の回復動作が制御される。また、入出力I/F21には、ドライバ76を介して移動部74が接続されている。
本実施の形態では、図7及び図8のように構成された回復手段13によるノズル401〜408各々の回復動作の実行前に、ノズル401〜408に対する回復手段13の吸引用開口部70の位置制御を行うために、制御部19は、図10に示す、位置制御処理を実行する。
図10に示すように、ステップ200では、基準ノズル設定処理が実行される。ステップ200の処理は、インクジェットヘッド11に設けられた複数のノズル401〜408の内の何れかのノズルを基準ノズルとして設定するとともに、移動部74の移動量を初期値、すなわち「0」となるようにリセットするものである。具体的には、移動部74を移動させるためのパルス数を初期化して「0」に設定する。
本実施の形態において、ステップ200では、圧電素子484に対応するノズル404を基準ノズルとして設定するとともに、移動部74の移動量を初期化するものとして説明する。
次にステップ204では、基準ノズルの電圧検出結果取得開始処理が実行される。ステップ204の処理によって、上記ステップ200で基準ノズルとして設定されたノズル404に対応する圧電素子484の出力電圧の、検出結果の取得が開始される。
次にステップ206では、吸引ノズル72の移動を開始する。ステップ206の処理は、配列された複数のノズル401〜408の一端から他端のノズルへノズル並び方向に吸引ノズル72を相対的に等速度で移動させるために、ステッピングモータとして構成された移動部74に、パルス数を示す信号を出力することによって可能である。ステップ206の処理によって、吸引ノズル72がノズルの並び方向の他端へと等速で移動する吸引ノズル72の移動が開始される。
次にステップ207では、パルス数の計測が開始される。ステップ207の処理によって、吸引ノズル72を移動するステッピングモータとして構成された移動部74の移動開始からのパルス数の計測が開始される。従って、ステップ207の処理によって、吸引ノズル72の移動が開始されてからの移動量の計測が開始される。
次にステップ208では、最終位置まで吸引ノズル72が移動したことが判別されるまで否定判断を繰り返し、肯定されるとステップ210へ進む。ステップ208の判断は、例えば、予め、配列された複数のノズル401〜408の一端から他端のノズルへノズル並び方向に吸引ノズル72を相対的に等速度で移動させるために必要な、移動部74に出力されるパルス数を記憶し、上記ステップ207で計測を開始したパルス数が、予め記憶した、配列された複数のノズル401〜408の一端から他端のノズルへノズル並び方向に吸引ノズル72を相対的に等速度で移動させるために必要なパルス数と等しいか否かを判別することによって判断可能である。ステップ208の判断によって、配列された複数のノズル401〜408の全てを網羅するように、吸引ノズル72を移動させることができる。
ステップ210では、基準ノズル404に対応する圧電素子484から出力される出力電圧の検出結果に基づいて、出力電圧のピークを示すパルス数を、吸引ノズル72が移動することにより基準ノズル部404の位置に到達したときの移動量を示すパルス数として特定する。例えば、図11に示すように、吸引ノズル72の移動開始から移動量を示すパルス数に対する、基準ノズル404に対応する圧電素子484の出力電圧は、線図86によって示される。吸引ノズル72が移動して、基準ノズル404の位置に吸引ノズル72が位置したときに、基準ノズル404に対応する圧電素子484から出力される出力電圧はピーク87を示す。このため、この出力電圧のピーク87が検出されたときの吸引ノズル72の移動開始から計測されたパルス数を、吸引ノズル72の基準ノズル404に対応する位置として特定することができる。
次にステップ212では、回復手段位置調整処理が実行される。ステップ212の処理は、上記ステップ210で特定した、基準ノズル404に対応する位置として特定された、吸引ノズル72の移動開始から計測されたパルス数に基づいて、全てのノズル401〜408各々に対応する吸引ノズル72の位置を調整するように、移動部74による吸引ノズル72の移動を制御する。
次にステップ212では、パルス数を計測するためのタイマをリセットした後に、次のステップ214において、第1の実施の形態の図5に示す回復処理が実行された後に、本ルーチンを終了する。
上記ステップ200乃至ステップ212の処理が実行されることによって、出力電圧のピーク87が検出されたときの、吸引ノズル72の移動が開始されてから計測された吸引ノズル72のパルス数を、基準ノズル404に対応する位置として特定し、この特定結果に基づいて、全てのノズル401〜408各々に対応する吸引ノズル72の位置を調整するように、移動部74による吸引ノズル72の移動を制御するので、吸引ノズル72とインクを噴射するためのノズル401〜408各々との相対的な位置を精度良く調整することができる。
なお、本実施の形態では、基準ノズルとして1つのノズル404を設定する場合を説明したが、基準ノズルとして設定するノズルの数は1つに限られるものではない。例えば、ノズル401〜408の並び方向の両端に位置するノズル401及びノズル408、または3ノズル以上のノズルを基準ノズルとして設定するようにしてもよい。このように複数のノズルを基準ノズルとして設定した場合、基準ノズルとして設定した各ノズルについて、上記ステップ202乃至ステップ210の処理を行った後に、全ての基準ノズルの出力電圧のピーク測定時の吸引ノズル位置に基づいて、全てのノズル401〜408各々に対する吸引ノズル72の位置を調整するようにすればよい。このように、複数の基準ノズルを設定することによって、吸引ノズル72とノズル401〜408各々との相対的な位置をより精度良く調整することができる。
従って、予め吸引ノズル72とノズル401〜408各々との相対的な位置調整を、インクジェット記録装置91の装置構成時に精度良く調整する必要が無くなり、吸引ノズル72に対するノズル401〜408に対する組み付け精度はラフなものでよくなり、装置全体のコストダウンに寄与することができる。
また、予め異常ノズルの位置が判明している場合には、本実施の形態を適用することによって、異常ノズルの位置に吸引ノズル72を精度良く移動させて、異常ノズルに対して回復動作を行うことも可能となり、更なる回復動作の効率化とインク消費の低減に寄与することができる。
なお、本実施の形態では、ステップ214の回復処理における、異常ノズルが存在するか否かの判断(ステップ108に相当)は、回復動作開始から回復動作終了までに各圧電素子481〜488各々から出力された出力電圧の変化に基づいて行うようにしてもよい。
具体的には、図12に示すように、負圧生成部56において、所定周期で所定レベルの負圧の発生をオンオフするような吸引動作信号を負圧生成部56に出力するものとする。ここでは、説明を簡略化するために、ノズル401の位置に吸引ノズル72が位置する場合について説明する。吸引動作信号88が負圧生成部56に出力され、負圧生成部56により所定周期で所定レベルの負圧の発生が開始されると、吸引ノズル72の位置に対応するノズル401は、負圧の発生周期に応じた周期で所定の吸引圧力で吸引される。
このとき、吸引ノズル72の位置に対応するノズル401に対応する圧電素子481から出力される出力電圧の検出結果は、波形89となる。波形89に示されるように、吸引動作信号の発生周期に応じて発生した負圧に応じた周期で、圧電素子481から出力された出力電圧が検出される。この圧電素子481からの出力電圧が予め定めた所定レベル89A以上となったときに、該圧電素子481に対応するノズル401の回復状態が正常となったと判別することができる。図12に示す例では、吸引動作信号による負圧生成部56の5回目の負圧発生時に、圧電素子481からの出力電圧が所定レベル89A以上となり、該圧電素子481に対応するノズル401の回復状態が正常となり、ノズル401の目詰まりや異物が除去されたと判断することができる。なお、所定レベル89A以上の出力電圧が負圧生成部56の負圧発生に応じて2回以上出力されたときに、ノズル401〜408の回復状態が正常であると判断してもよい。
なお、回復状態が異常であるノズルが存在しないと判断された後に、更に、所定時間T3経過するまで負圧生成部56による負圧の発生を継続した後に、負圧の発生を停止するようにしてもよい。このように、回復状態が異常であるノズルが存在しないと判断された場合であっても、所定時間経過するまで負圧生成部56による負圧の発生を継続するように制御することによって、脱落した異物や不要インクのノズル形成面からの確実な吸引除去を行うことができる。
また、負圧生成部56により所定周期で所定レベルの負圧を発生することによって、ノズル401〜408の回復動作による回復の早さを向上することができるとともに、継続して所定レベルの負圧を発生する場合に比べて、過剰な吸引によるインクの消費量の増加を抑制することができる。
なお、本実施の形態では、回復手段16の吸引ノズル70を、ノズル401〜408の配列方向に向かって相対的に移動させて回復動作を行う場合を説明したが、ノズル401〜408と、回復手段16とが相対的に移動すればよく、このような形態に限られるものではない。例えば、吸引ノズル70とともに、インクジェットヘッド11を、移動可能に設けるようにしてもよい。また、インクジェットヘッド11のみを移動可能に設けるようにしてもよい。この場合、インクジェットヘッド11は、該インクジェットヘッド11のノズル401〜408の配列方向に向かって吸引ノズル70が相対的に移動可能となるように設けるようにすればよい。
また、本実施の形態では、図1に示すように、ロッド54に沿ってインクジェットヘッド11を移動するとともに、移動しながらインクを噴射させて用紙Pへの主走査方向Xの記録を行い、用紙Pをインクジェットヘッド10の移動方向と交差する方向に移動させることによって、用紙Pへの副走査方向Yへの記録を行うインクジェット記録装置91において、ノズルの回復動作を行う場合について説明説明したが、このような形態のインクジェット記録装置91に限られるものではない。具体的には、インクジェットヘッド11を固定的に設けた形態のインクジェット記録装置にも適用可能である。このような場合のインクジェットヘッド11は、移動することなく用紙Pの副走査方向Yに対応する領域にインク噴射可能となるように、用紙Pの副走査方向Yに渡って対応して配列された複数のノズルを備えた形態とすればよく、更に、用紙Pを副走査方向Yへ移動させることで、用紙Pの副走査方向への記録を行われるようにすればよい。このようなインクジェット記録装置におけるインクジェットヘッドのノズル各々についても、上述の回復手段16による回復動作によって、吸引ノズル72とノズル401〜408各々との相対的な位置をより精度良く調整することができるとともに、回復動作を効率よく行うことができる。
なお、本実施の形態では、回復手段13は、各ノズル401〜408に対して吸引を行うことによって各ノズル401〜408の回復動作を行うものとして説明したが、回復手段13による回復処理は、各ノズル401〜408へ洗浄液滴を噴射することによって行う場合についても適用可能である。この場合、図9に示すように、回復手段15を、ヘッド本体42の複数のノズル401〜408各々について、1または数ノズル面が露呈する端面に面した大きさに形成された洗浄液滴噴射用開口部80が設けられた噴射ノズル84と、噴射ノズル84の洗浄液滴噴射用開口部80から洗浄液滴を噴射するための洗浄液滴噴射部57Aと、メイン回路16に接続され洗浄液滴噴射部57Aからの洗浄液滴の噴射を制御するための回復動作回路59と、を備えた構成とすればよい。また、インクジェット記録装置92に、インクジェット記録装置91の移動部74に変えて、噴射ノズル84をノズル401〜408の配列方向に向かって相対的に移動させる移動部79を備えるとともに、移動部79は、ドライバ80を介してメイン回路16に接続されるように構成すればよい。このように構成することによって、回復手段15によるノズル401〜408各々の回復動作の実行前に、ノズル401〜408に対応する回復手段15の噴射ノズル84の位置制御を行うことができる。