JP4542654B2 - 樹脂組成物及びその用途 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、エマルジョン(乳化液)の放置安定性、塗膜の耐候性、耐汚染性、耐水性、耐溶剤性、耐割れ性等に優れた水性樹脂組成物、特には水性コーティング剤組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリアルコキシポリシロキサンあるいはテトラアルコキシシランや、アルコキシシリル基(加水分解性シリル基)含有単量体等を含有する樹脂、特にアクリル−シリコン系樹脂は常温硬化性を有し、高硬度の塗膜を形成し、耐候性、耐汚染性等の性能に優れるため、従来より接着剤や塗料用バインダー、紙コーティング剤として使用されている。
【0003】
例えば、特開平6−145453号公報には、アルコキシシリル基含有アクリル共重合体、テトラアルキルシリケート(テトラアルコキシシラン)及び/又はその縮合物、及び硬化触媒よりなる親水性硬化性組成物が開示され、塗膜表面が親水性となるので、汚染物質を雨水等により洗い流せることができ、耐汚染性が良好であることが記載されている。
【0004】
しかし、近年、塗料や接着剤の分野において、公害対策あるいは省資源の観点より、有機溶剤を使用するものから、水性あるいは水分散性樹脂への樹脂の転換が試みられているが、上記開示技術では、有機溶剤系での重合が中心で、水系では、安定な重合が出来ず目的とするエマルジョンの製造にはかなりの技術が必要となる。
【0005】
かかる水系での重合について種々の工夫が試みられており、例えば、アルコキシシリル基含有単量体を用いた乳化重合の例としては、特開平3−227312号公報にはメタクリル酸アルキルエステル、アルコキシシラン基含有単量体、アクリルアミド等を乳化重合してなるエマルジョンが開示され、また、特開平5−25354号公報には加水分解性シリル基とアミンイミド基を各々1分子中に少なくとも1個有する樹脂を含有する反応型樹脂エマルジョンが開示されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これらの開示技術では、ある程度の塗膜の耐候性、耐溶剤性は向上するものの、更なる改良が求められており、特にエマルジョンの放置安定性、塗膜の耐汚染性についてはまだまだ満足のいくものは得られていない。
更に、近年では耐汚染性に対する要求が高まるにつれ、ポリアルコキシポリシロキサンの系内への含有量が増えてきており、これに対してエマルジョンの放置安定性の更なる向上や割れ・クラック等の経時劣化の生じない耐候性に優れた塗膜の形成が求められている。
【0007】
又、ポリアルコキシポリシロキサンを用いる水系での重合は前述したように、ポリアルコキシポリシロキサンが水媒体中で安定に存在しがたく、又、一般に行われている乳化重合法、即ち、水媒体中にポリアルコキシポリシロキサン及び重合性単量体の一部を乳化分散させ開始剤の存在下、ポリアルコキシポリシロキサン及び重合性単量体を仕込みながら、加熱重合を行う方法では、ポリアルコキシポリシロキサンをエマルジョン粒子中に安定に導入できないという欠点があり、目的とするエマルジョンは得難いものであった。
【0008】
そこで、本発明ではこのような背景下において、エマルジョンの放置安定性が良好で、塗膜の耐候性、耐水性、耐溶剤性、耐汚染性や塗膜の経時によるヒビ、ワレの防止に優れる樹脂組成物、とりわけコーティング剤組成物を提供することを目的とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
しかるに、本発明者等がかかる課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、ポリアルコキシポリシロキサン(a1)と該ポリシロキサンと反応可能な官能基を有する高分子化合物(a2)を反応させて得られるポリアルコキシポリシロキサン系化合物(A)、ラジカル重合性不飽和単量体(B)の重合物(B′)及びシリケートオリゴマー(C)を含有してなる樹脂組成物であり、
シロキサンと反応可能な官能基を有する高分子化合物(a2)が、水酸基又はカルボキシル基を含有するアクリル系樹脂であること、
ポリアルコキシポリシロキサン(A)の配合量が、ラジカル重合性不飽和化合物(B)100重量部に対して0.01〜100重量部であること、
シリケートオリゴマー(C)の配合量が、ラジカル重合性不飽和化合物(B)100重量部に対して0.1〜100重量部であること、
ポリアルコキシポリシロキサン(a1)と該シロキサンと反応可能な官能基を有する高分子化合物(a2)と反応させて得られるポリアルコキシポリシロキサン系化合物(A)、ラジカル重合性不飽和単量体(B)及びシリケートオリゴマー(C)を予備乳化させた水性乳化液を重合して得られるものである樹脂組成物が、上記目的に合致することを見出し、本発明を完成した。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について具体的に説明する。
本発明で用いるポリアルコキシポリシロキサン系化合物(A)としては、ポリアルコキシポリシロキサン(a1)と該ポリシロキサンと反応可能な官能基を有する高分子化合物(a2)を反応させて得られるものであればよい。
ポリアルコキシポリシロキサン(a1)としては、下記一般式(1)で示される化合物であればよい。
【0012】
【化1】
ここで、R1は炭素数1〜4のアルキル基、R2、R3、R4は炭素数1〜4のアルキル基又はアルコキシ基で、R2、R3、R4の少なくとも一つはアルコキシ基、nは1〜10の整数である。
【0013】
一般式(1)で示される化合物として、例えばテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロピオキシシラン、テトラブトキシシラン等のテトラアルコキシシラン、モノメチルトリメトキシシラン、モノエチルトリエトキシシラン等のモノアルキルトリアルコキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン等のジアルキルジアルコキシシラン、ポリメトキシポリシロキサン、ポリエトキシポリシロキサン、ポリプロピオキシポリシロキサン、ポリブトキシポリシロキサン等のポリアルコキシポリシロキサン等が挙げられる。
【0014】
該ポリアルコキシポリシロキサンの製造法としては特に制限されないが、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロピオキシシラン、テトラブトキシシラン等のテトラアルコキシシランを加水分解(縮合)することにより得られる。縮合度は加水分解率を制御することにより調整できる。
【0015】
加水分解反応自体は、公知の方法によることができ、例えば、上記テトラアルコキシシランに所定量の水を加えて酸触媒の存在下に、副生するアルコールを留去しながら通常、室温程度〜100℃で反応させることで可能である。加水分解の程度は、使用する水の量により適宜調節することができる。
【0016】
該ポリシロキサンと反応可能な官能基を有する高分子化合物(a2)としては、水酸基又はカルボキシル基を有するアクリル系樹脂であることが必要である。
【0017】
高分子化合物(a2)中の官能基の含有量は0.01〜50重量%であることが好ましく、より好ましくは0.1〜20重量%、特に好ましくは1.0〜10重量%である。かかる含有量が0.01重量%未満では架橋点が少ないために放置安定性が低下したり、塗膜の経時劣化が生じたりし、50重量%を越えると架橋点が多くなるため製造不良や放置安定性不良となり好ましくない。
又、かかる高分子化合物(a2)の重量平均分子量は500〜100,000であることが好ましく、より好ましくは1,000〜50,000である。
【0018】
例えば、水酸基を有するアクリル系樹脂の場合は、水酸基含有(メタ)アクリレートを共重合成分として含み、その他のアクリル系モノマーと共重合すればよく、カルボキシル基含有アクリル系樹脂の場合は、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸等を共重合成分として含み、その他のアクリル系モノマーと共重合すればよい。
【0019】
ポリアルコキシポリシロキサン(a1)と高分子化合物(a2)の反応については、特に限定はなく、通常の縮合反応を行えばよく、例えばポリアルコキシポリシロキサン(a1)と高分子化合物(a2)の混合物を室温〜200℃、好ましくは50〜100℃で反応させればよい。
かかる縮合反応において、ブチル錫トリオクテート、ジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジラウレート、ビス(ジブチル錫モノラウレート)オキサイド、ジブチル錫ジアセテート、ビス(ジブチル錫モノアセテート)オキサイド、モノブチル錫トリオクテート等の触媒を使用するが好ましい。
【0020】
ポリアルコキシポリシロキサン系化合物(A)中のポリアルコキシポリシロキサン(a1)の含有量は0.1〜99.5重量%であることが好ましく、より好ましくは1.0〜99.0重量%、特に好ましくは5.0〜95.0重量%である。かかる含有量が0.1重量%未満では耐候性、耐汚染性が低下し、99.5重量%を越えると放置安定性が低下したり、塗膜の経時劣化が生じ好ましくない。
【0021】
本発明で用いるラジカル重合性不飽和単量体(B)としては、ラジカル重合性を有するものであれば特には限定されないが、具体的には、スチレン、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソプチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、酢酸ビニル、t−デカン酸ビニル、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ビニルトルエン、(メタ)アクリロニトリル、イタコン酸ジアルキルエステル、フマル酸ジアルキルエステル、マレイン酸ジアルキルエステル、アクリルクロライド、アセトアセチル化(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミドや(メタ)アクリル酸、クロトン酸、フマール酸、(無水)マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、リシノール酸等のカルボキシル基含有単量体及びそれらの塩(アミン塩、ナトリウム塩、カリウム塩)等が挙げられ、これらは単独もしくは2種以上の混合物にて使用される。これらの中でも、スチレン、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸(アンモニウム塩、ジエチルアミン塩)、クロトン酸(アンモニウム塩、ジエチルアミン塩)、イタコン酸(アンモニウム塩、ジエチルアミン塩)が好ましく用いられる。
かかるラジカル重合性不飽和単量体(B)を重合することにより、重合物(B′)が得られる。
【0022】
又、シリケートオリゴマー(C)としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロピオキシシラン、テトラブトキシシラン等のテトラアルコキシシラン又はテトラフェノキシシランを加水分解(縮合)することにより得られる。縮合度は加水分解率を制御することにより調整できる。
【0023】
加水分解反応自体は、公知の方法によることができ、例えば、上記テトラアルコキシシランに所定量の水を加えて酸触媒の存在下に、副生するアルコールを留去しながら、通常、室温程度〜100℃で反応させる。この反応によりアルコキシシランは加水分解し、更に縮合反応によりヒドロキシル基を2以上有する液状のシリケートオリゴマー(通常平均重合度2〜8程度、好ましくは3〜6)が加水分解物として得られる。加水分解の程度は、使用する水の量により適宜調節することができるが、コーティング剤組成物の物性あるいは塗膜の硬化を考慮すると、本発明においては通常40〜90%程度、好適には60〜80%程度から選ばれる。上記範囲以上の場合は接着性が低下し、それ以下の場合は硬度が低下し好ましくない。
【0024】
こうして得られたシリケートオリゴマーにはモノマーが通常2〜10%程度含有されている。このモノマーが含有されているとコーティング剤組成物の保存安定性が欠け、保存中に増粘し、薄膜形成が困難となるので、モノマー含有量が1%以下、好ましくは0.3%以下になるように、このモノマー除去をフラシュ蒸留、真空蒸留で行う。
【0025】
かくして上記ポリアルコキシポリシロキサン系化合物(A)、ラジカル重合性不飽和単量体(B)及びシリケートオリゴマー(C)を用いて、本発明の樹脂組成物が得られる。
以下、本発明の樹脂組成物について説明する。
【0026】
本発明の樹脂組成物は、ポリアルコキシポリシロキサン系化合物(A)、ラジカル重合性不飽和単量体(B)の重合物(B′)及びシリケートオリゴマー(C)を含有してなるが、その方法としては、
【0027】
(1)ポリアルコキシポリシロキサン系化合物(A)、ラジカル性不飽和単量体(B)及びシリケートオリゴマー(C)を予備乳化させた水性乳化液を重合する方法であり、シリケートオリゴマー(C)の加水分解抑制により放置安定性が得られ、高分子化合物(a2)の塗膜中への均一化により塗膜の経時劣化が抑制されるの点で最も好ましい。
【0028】
以下、(1)の重合方法について説明する。
予備乳化させた水性乳化液を得る際には乳化剤(E)を用いることが好ましく、本発明で用いる乳化剤(E)としては、ポリアルコキシポリシロキサン系化合物(A)、ラジカル重合性不飽和単量体(B)及びシリケートオリゴマー(C)の各成分を水媒体中に乳化させ得る機能を持つものであれば特には限定されず、反応性(イオン性)界面活性剤、非反応性(イオン性)界面活性剤等が挙げられるが、塗膜の耐水性の点で反応性界面活性剤が好ましい。
【0029】
反応性界面活性剤とは、ポリアルコキシポリシロキサン系化合物(A)、ラジカル重合性不飽和単量体(B)とラジカル反応性を有するイオン性、非イオン性の界面活性剤であればよく、該反応性界面活性剤としては例えば、下記一般式(2)〜(7)のような構造をもつものである。
【0030】
【化2】
【0031】
【化3】
【0032】
【化4】
【0033】
【化5】
【0034】
【化6】
【0035】
【化7】
ここで、一般式(2)〜(7)において、R5はアルキル基、R6は水素又はメチル基、R7はアルキレン基、hは1以上の整数、Zは水素、SO3NH4、SO3Naのいずれかである。
【0036】
上記界面活性剤として具体的には、アデカリアリープSE−20N(アニオン性)、アデカリアリープSE−10N(アニオン性)、アデカリアリープNE−10(ノニオン性)、アデカリアリープNE−20(ノニオン性)、アデカリアリープNE−30(ノニオン性)〔以上、旭電化(株)製〕、エレミノールJS−2(アニオン性)、エレミノールRS−30(アニオン性)〔以上、三洋化成(株)製〕、ラテムルS−180A(アニオン性)、ラテムルS−120A(アニオン性)〔以上、花王(株)製〕、アクアロンBC−05(アニオン性)、アクアロンBC−10(アニオン性)、アクアロンBC−20(アニオン性)、アクアロンHS−05(アニオン性)、アクアロンHS−10(アニオン性)、アクアロンHS−20(アニオン性)、アクアロンRN−10(ノニオン性)、アクアロンRN−20(ノニオン性)、アクアロンRN−30(ノニオン性)、アクアロンRN−50(ノニオン性)、ニューフロンティアS−510(アニオン)〔以上、第一工業製薬(株)製〕、フォスフィノ−ルTX(アニオン性)〔東邦化学工業(株)製〕)等の市販品が挙げられる。
【0037】
更に本発明では、重合を安定に行うために重合の際に加水分解抑制剤(D)を添加して予備乳化させた水性乳化液として用いることが好ましく、該加水分解抑制剤(D)は特に限定されないが、塩基で中和してなる酸官能基及び/又はアミンイミド基を含有する化合物であることが好ましい。該化合物としては分散機能を有する高分子化合物、pH緩衝機能を有する化合物、ラジカル重合機能を有する化合物等が挙げられるが、分散機能を有する高分子化合物が特に好ましい。
【0038】
まず、分散機能を有する高分子化合物について述べる。該高分子化合物はスルホン酸基、カルボキシル基、リン酸基等の酸官能基をもち、該官能基を塩基で中和した高分子化合物等が挙げられるが、カルボキシル基含有重合体を塩基で中和してなる高分子化合物が特に好ましい。
該カルボキシル基含有重合体とは、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、フマール酸、(無水)マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、リシノール酸(好ましくは(メタ)アクリル酸、フマール酸)等のカルボキシル基含有単量体を単独重合又は他の不飽和単量体と共重合させて得られる。
【0039】
又、上記高分子化合物は、アミンイミド基を含有するものも好ましく、該高分子化合物はアミンイミド基含有単量体を単独重合、又は他の不飽和単量体と共重合させて得られる。
該アミンイミド基含有単量体としては、1,1,1−トリメチルアミンメタクリルイミド、1,1−ジメチル−1−エチルアミンメタクリルイミド、1,1−ジメチル−1−(2−ヒドロキシプロピル)アミンメタクリルイミド、1,1−ジメチル−1−(2’−フェニル−2’−ヒドロキシエチル)アミンメタクリルイミド、1,1−ジメチル−1−(2’−ヒドロキシ−3’−フェノキシプロピル)アミンメタクリルイミド、1,1,1−トリメチルアミンアクリルイミド、あるいは下記一般式(8)、一般式(9)で示される単量体が挙げられる。
【0040】
【化8】
【0041】
【化9】
【0042】
共重合の際に用いる他の不飽和単量体としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル、酢酸ビニル、スチレン、バーサチック酸ビニルエステル等の脂肪酸エステル等が単独又は併用して用いられる。
【0043】
上記の高分子化合物の分子量については、特には限定されないが、数平均分子量として、500〜500,000が好ましく、更に好ましくは700〜30,000で、該分子量が500未満の時は得られるコーティング剤組成物の重合時の安定性が低下し、500,000を越える時は高粘度化し重合時の希釈剤が多くなり不経済であり好ましくない。
【0044】
上記カルボキシル基含有共重合体を更に塩基性化合物で中和するに当たり、該塩基性化合物としては、例えばアンモニア、N,N−ジメチルエタノールアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モルフォリン、2−ジメチルアミノ−2−メチル−1−プロパノール、モノイソプロパノールアミン、モノエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、N−メチルジエタノール、ジイソプロパノールアミン、N−エチル−ジエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、トリエタノールアミン等が挙げられ、好ましくはアンモニア、ジエチルアミンが用いられる。
【0045】
次に加水分解抑制剤(D)がpH緩衝機能を有する化合物である場合について説明する。該化合物としては、反応系をpH6〜10に保持できるものであれば特に制限されないが、具体的には、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、リン酸一ナトリウム、リン酸一カリウム、リン酸二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、酢酸ナトリウム、酢酸アンモニウム、蟻酸ナトリウム、ギ酸アンモニウム等が挙げられる。
又、上記加水分解抑制剤(D)は、同種異種の化合物を2種以上組合せて使用することもできる。
【0046】
本発明において、(1)の重合方法は、ポリアルコキシポリシロキサン系化合物(A)、ラジカル重合性不飽和単量体(B)及びシリケートオリゴマー(C)、好ましくは加水分解抑制剤(D)を添加して予備乳化させた水性乳化液を重合するものであり、かかる重合に際しては重合開始剤(F)が用いられる。
【0047】
本発明で用いられる重合開始剤(F)としては、特に制限されず、水溶性、油溶性のいずれのものも用いることが可能で、具体的には、アルキルパーオキサイド、t−ブチルヒドロパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド、p−メタンヒドロパーオキサイド、イソブチルパーオキサイド、ラウロリルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジクロルベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド、ジ−イソブチルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシイソブチレート等の有機過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル、ジメチルアゾジイソブチレート、2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素、4,4’−アゾビス−4−シアノバレリックアシッドのアンモニウム(アミン)塩、2,2’−アゾビス(2−メチルアミドオキシム)ジヒドロクロライド、2,2’−アゾビス(2−メチルブタンアミドオキシム)ジヒドロクロライドテトラヒドレート、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−〔1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル〕−プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス〔2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−プロピオンアミド}、各種レドックス系触媒(この場合酸化剤としては、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過酸化水素、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、キュメンハイドロパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイド等が、還元剤としては亜硫酸ナトリウム、酸性亜硫酸ナトリウム、ロンガリット、アスコルビン酸等が用いられる。)等が挙げられ、これらの中でもアゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス〔2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−プロピオンアミド}、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、4,4’−アゾビス−4−シアノバレリックアシッドのアンモニウム(アミン)塩等が挙げられる。
【0048】
尚、該重合開始剤(F)は重合缶内に予め加えておいてもよいし、重合開始直前に加えてもよいし、又、乳化の前の(A)、(B)の混合液あるいは(A)、(B)、(C)の混合液、又は(A)、(B)、(C)、(D)の混合液に予め添加したり、該乳化後の乳化液に添加してもよい。
【0049】
上記ポリアルコキシポリシロキサン系化合物(A)、ラジカル重合性不飽和単量体(B)、シリケートオリゴマー(C)、加水分解抑制剤(D)、乳化剤(E)、重合開始剤(F)の他に、本発明の効果を損わない範囲で公知の連鎖移動剤、消泡剤、防腐剤、防錆剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤等を添加してもよい。又、塗膜の硬化を促進するため、有機スズ化合物、有機アルミニウム化合物等の有機金属化合物等の硬化剤を添加してもよく、該硬化剤はエマルジョンの形で添加してもよい。
【0050】
次に、上記で述べたポリアルコキシポリシロキサン系化合物(A)、ラジカル重合性不飽和単量体(B)、シリケートオリゴマー(C)、好ましくは更に加水分解抑制剤(D)を予め乳化させ、水性乳化液を得る方法について説明する。
【0051】
上記の各成分の仕込方法としては、特に限定されないが、水に乳化剤(E)を溶解した後、その他の成分を仕込むのが好ましい。
ポリアルコキシポリシロキサン系化合物(A)、ラジカル重合性不飽和単量体(B)の配合量については、ラジカル重合性不飽和単量体(B)100重量部に対して、ポリアルコキシポリシロキサン系化合物(A)が0.01〜100重量部であることが必要であり、より好ましくは0.1〜50重量部、特に好ましくは1〜30重量部である。ポリアルコキシポリシロキサン系化合物(A)の配合量が0.01重量部未満では耐汚染性、耐溶剤性が充分ではなく、又保存安定性が低下することとなり、100重量部を越えると塗膜が脆くなったり、安定した製造ができなくなったりと好ましくない。
【0052】
又、シリケートオリゴマー(C)の配合量は、ラジカル重合性不飽和単量体(B)100重量部に対して、0.1〜100重量部であることが必要であり、より好ましくは1〜80重量部、特に好ましくは1〜60重量部である。かかる配合量が0.1重量部未満では耐汚染性、耐溶剤性が充分ではなく、100重量部を越えると塗膜が脆くなったり、安定した製造ができない等好ましくない。
【0053】
又、乳化剤(E)の配合量がポリアルコキシポリシロキサン系化合物(A)、ラジカル重合性不飽和単量体(B)及びシリケートオリゴマー(C)の合計量100重量部に対して0.1〜10重量部とすることが好ましく、更に好ましくは0.3〜5重量部である。乳化剤(E)が0.1重量部未満では、充分な乳化性能を保持できず安定性が低下することとなり、10重量部を越えると樹脂組成物を皮膜にした時、耐水性が悪くなり好ましくない。
【0054】
又、加水分解抑制剤(D)を配合する場合、該配合量はポリアルコキシポリシロキサン系化合物(A)、ラジカル重合性不飽和単量体(B)及びシリケートオリゴマー(C)の合計量100重量部に対して0.01〜10重量部とすることが好ましく、更に好ましくは0.03〜3重量部である。かかる配合量が0.01重量部未満ではシリケートオリゴマー(C)の加水分解が進行し安定性不良を招くこととなり、10重量部を越えると樹脂組成物を皮膜にした時の耐水性が低下したり、重合安定性が低下することがあり好ましくない。
【0055】
水の使用量は、ポリアルコキシポリシロキサン系化合物(A)、ラジカル重合性不飽和単量体(B)及びシリケートオリゴマー(C)の合計量100重量部に対して50〜400重量部が好ましく、更には70〜200重量部とすることが好ましく、50重量部未満では水性乳化液が高粘度となり、又、重合安定性も低下することとなり、400重量部を越えると生成する水性乳化液の濃度が低くなり、塗膜化する際の乾燥性が低下し好ましくない。
【0056】
乳化するに当たっては、高圧ホモジナイザー、超音波処理装置等の乳化装置を用いることが重要で、高圧ホモジナイザーを用いる際の圧力は10〜1500kg/cm2にすることが好ましく、更に好ましくは30〜1000kg/cm2である。
乳化時の温度は、乳化中に組成物が反応しない程度の温度であれば問題なく、通常5〜60℃程度が適当である。又、乳化液の通過(Pass)回数は1〜5回程度が好ましい。
尚、上記の乳化する前に、撹拌、震動等により予備乳化しておくのが好ましい。
【0057】
上記の乳化装置により、ポリアルコキシポリシロキサン系化合物(A)、ラジカル重合性不飽和単量体(B)及びシリケートオリゴマー(C)等の油滴成分を水媒体中で乳化させる。
油滴の径については1000nm以下にすることが好ましく、より好ましくは50〜1000nm、更に好ましくは100〜500nmである。該油滴の径が1000nmを越えると樹脂組成物の重合安定性が低下するので好ましくない。
【0058】
上記の予備乳化終了後、乳化液を昇温して重合を開始するのであるが、その方法としては例えば、(ア)乳化液全量をそのまま昇温して重合する、(イ)乳化液の一部を昇温して重合を開始し、残りの乳化液を滴下して重合を継続する、(ウ)反応缶に水(必要に応じて一部の乳化剤及び一部又は全部の加水分解抑制剤、重合開始剤を仕込んでおいてもよい)を仕込んで昇温した後、乳化液を全量滴下又は、分割、連続滴下して重合する等が挙げられるが、重合温度の制御が容易であり、重合安定性も良い点で(イ)が最も好ましい。
【0059】
重合開始剤(F)は、ポリアルコキシポリシロキサン系化合物(A)、ラジカル重合性不飽和単量体(B)及びシリケートオリゴマー(C)の合計量100重量部に対して0.03〜2重量部使用することが好ましく、更に好ましくは0.05〜1重量部である。かかる使用量が上記範囲より少ない場合は重合速度が遅くなり、上記範囲を越えると樹脂組成物を塗膜にしたとき、耐溶剤性、耐候性が低下する場合があり好ましくない。
【0060】
(ア)の重合条件としては、通常40〜90℃程度の範囲が適当であり、昇温開始後1〜8時間程度で反応が終了する。
(イ)の重合条件としては反応液の5〜50重量%を40〜90℃で0.1〜4時間重合した後、残りの反応液を1〜5時間程度かけて滴下して、その後同温度で1〜3時間程度熟成する。
(ウ)の重合条件としては水を反応液の5〜100重量%となるように仕込み、40〜90℃に昇温し、反応液を2〜5時間程度かけて滴下し、その後同温度で1〜3時間程度熟成する。
【0061】
いずれの場合も反応終了後、アンモニア水等のアルカリ液を添加し、pH6〜8、好ましくは7〜8に調整することにより、樹脂組成物、とりわけコーティング剤組成物として有用なエマルジョンが得られる。
かかるエマルジョンの粒子径は50〜1000nmの微粒子であることが好ましい。
【0064】
かくしてポリアルコキシポリシロキサン系化合物(A)、ラジカル重合性不飽和単量体(B)の重合物(B′)及びシリケートオリゴマー(C)を含有してなる樹脂組成物、好ましくはポリアルコキシポリシロキサン系化合物(A)、ラジカル重合性不飽和単量体(B)及びシリケートオリゴマー(C)を予備乳化させた水性乳化液を重合してなる樹脂組成物が得られ、該樹脂組成物は、エマルジョンの放置安定性が良好で、塗膜の耐候性、耐水性、耐溶剤性、耐汚染性、耐割れ性等に優れ、特にコーティング剤組成物として有用である。中でも建材塗料、接着剤、紙コーティング剤等に有用である。
【0065】
【実施例】
以下、本発明について実施例を挙げて具体的に説明する。
尚、例中「%」、「部」とあるのは特に断りのない限り重量基準である。
【0066】
実施例1
[高分子化合物(a2−1)の製造]
コンデンサー、温度計、撹拌翼を備えたフラスコに、アセトン1000部を仕込み、80℃に昇温した。次いで、メチルメタクリレート414部、n−ブチルアクリレート430部、2−ヒドロキシエチルアクリレート156部、1−ドデカンチオール10部、アゾビスイソブチロニトリル10部を溶解した混合液を80℃で4時間かけて滴下重合し、更に80℃3時間重合を行った。重合後、得られた高分子化合物(a2−1)は、無色透明の粘稠液体で、分子量32000、粘度560mPa・s/25℃であった。
【0067】
[ポリアルコキシポリシロキサン系化合物(A−1)の製造]
ポリアルコキシポリシロキサン(a1)としてメチルシリケート(三菱化学社製、「MS−51」)626.1部と、上記高分子化合物(a2−1)373.8部、ブチル錫トリオクテート(三共有機社製、「SCAT−24」)0.1部を混合し、該混合物を90℃で1時間反応させた後、減圧蒸留によりポリアルコキシポリシロキサン系化合物(A−1)(無色透明の粘稠液体)を得た。
【0068】
[コーティング剤組成物の製造]
コンデンサー、温度計、撹拌翼を備えたフラスコに、イソプロピルアルコール100部を仕込み、80℃に昇温した。次いでアクリル酸15部、メチルメタクリレート35部、2−エチルヘキシルアクリレート50部にアゾビスイソブチロニトリル1部を溶解した混合液を80℃で4時間かけて滴下重合し、更に、80℃で3時間重合させた。次いで、撹拌しながらアンモニア水を添加し、更にイソプロピルアルコールを留去し、最後にアンモニア水でpH=8.0に調整して、加水分解抑制剤(D)の25%水溶液を得た。
【0069】
次に乳化剤(E)(旭電化(株)製、「アデカリアリープSE−10N」)2.4部及び上記加水分解抑制剤(D)1部を水84.1部((D)に含まれる水も含む)に溶解し、次いで上記ポリアルコキシポリシロキサン系化合物(A−1)2.1部、ラジカル重合性不飽和単量体(B)としてメチルメタクリレート58.3部、n−ブチルアクリレート20.5部、シリケートオリゴマー(C)としてエチルシリケート(コルコート(株)製、「ES−48」)19.1部、更にアゾビスイソブチルニトリル1.0部を溶解混合したものを添加し、撹拌混合し予備乳化を行った。該予備乳化液を高圧ホモジナイザー(GAULIN社製)で圧力500kg/cm2、常温で1Pass処理し、200nmの径の油滴をもつ乳化液185.5部を調製した。
【0070】
次に重合缶に水27.3部と上記乳化液22.7部を仕込み、80℃で1時間初期重合を行い、残りの乳化液を3時間かけて滴下し重合を行った。滴下後更に80℃で2時間重合を続け、冷却後、5%アンモニア水でpHを8.5に調整し、水性コーティング剤組成物(エマルジョン)を得た(固形分45.5%であった)。
該水性コーティング剤組成物に対して以下の評価を行った。
【0071】
(油滴の径及び平均粒子径)
乳化後の油滴の径と乳化重合後のエマルジョンの平均粒子径を大塚電子製レーザー光散乱粒径測定機DLS−700で測定した。
(粘度)
JIS K7117に準拠する回転粘度計及び条件を用いて25℃にて粘度を測定した。
【0072】
(粗粒子量)
得られたコーティング剤組成物を100meshの金網で濾過し、濾過残分を105℃で1時間乾燥して得られた粗粒子の重量をエマルジョン100gに対する重量で示した。
(残留アルコール量)
該コーティング剤組成物を遠心分離後、水層についてHITACHI 163型 FIDガスクロマトグラフィーを使用して残留アルコール量を測定した。
【0073】
(放置安定性)
該コーティング剤組成物を60℃で1ケ月放置して、状態を目視で観察した。
○・・・変化無し
△・・・やや粘度上昇あり
×・・・粘度上昇又はゲル化
【0074】
(耐候性)
上記コーティング剤組成物をガラス板にキャスティング(条件は膜厚100μmとなるようにアプリケータでキャスティング)し室温で7日間乾燥後、屋外暴露を6カ月行い、塗膜の様子を目視で観察した。
◎・・・光沢のある透明皮膜であった。
○・・・やや光沢の低下が認められる程度で、皮膜状態は良好であった。
△・・・光沢の低下と皮膜の破壊が認められた。
×・・・光沢の著しい低下と著しい皮膜の破壊(白化、クラック)が認められた。
【0075】
(耐汚染性)
上記コーティング剤組成物をガラス板にキャスティング(条件は膜厚100μmとなるようにアプリケータでキャスティング)し室温で7日間乾燥後、屋外暴露を6カ月行い、塗膜の雨筋を目視で観察した。
◎・・・ほとんど雨筋が認められない。
○・・・一部にうっすら雨筋が認められた。
△・・・ところどころに雨筋が認められた。
×・・・全面にはっきり雨筋が認められた。
【0076】
(耐水性)
上記コーティング剤組成物をガラス板にキャスティングし、室温で7日間乾燥後蒸留水に24時間浸漬後の表面状態を目視で観察した。
◎・・・全く白化、膨れは認められなかった。
○・・・わずかに白化が認められたが、膨れは認められなかった。
△・・・白化、膨れが認められた。
×・・・白化、膨れが進行し、ところどころで溶出していた。
【0077】
(耐溶剤性)
上記コーティング剤組成物をガラス板にキャスティングし、室温で7日間乾燥後酢酸エチルに24時間浸漬後の表面状態を目視で観察した。
◎・・・変化なし
○・・・表面にやや膨れ、白化が認められた。
△・・・膨れ、白化が全面に広がった。
×・・・全体に膨れ、白化が進行し、ガラス板より塗膜が脱落した。
【0078】
(耐割れ性)
上記コーティング剤組成物をガラス板にキャスティングし、室温で7日間乾燥後、EYE SUPER UV TESTER SUV−W23(岩崎電気社製)にて、▲1▼50%RH、63℃の条件下で4時間放置した後、60秒間水でシャワーし、更に▲2▼95%RH、25℃の条件下で2時間放置した後、60秒間水でシャワーした。再び、▲1▼を行った後、▲2▼を行う操作を繰り返し、経時後(250時間後、500時間後、750時間後、1000時間後)の表面状態を目視観察し、下記の基準で評価した。
◎・・・1000時間後で異常が認められなかった。
○・・・750時間後で異常が認められなかった。
△・・・500時間後で異常が認められなかった。
×・・・250時間後でヒビ、割れが認められた。
【0079】
実施例2
実施例1において、ポリアルコキシポリシロキサン系化合物(A)として、下記のポリアルコキシポリシロキサン系化合物(A−2)を用いた以外は同様に行いコーティング剤組成物(エマルジョン)を調製し、実施例1と同様の評価を行った。
【0080】
[ポリアルコキシポリシロキサン系化合物(A−2)の製造]
ポリアルコキシポリシロキサン(a1)としてメチルシリケート(三菱化学社製、「MS−51」)770.1部と、高分子化合物(a2)としてアクリルポリオール(日本合成化学工業社製、「ゴーセプレンA−1300」)229.9部、ブチル錫トリオクテート(三共有機社製、「SCAT−24」)0.1部を混合し、該混合物を90℃で1時間反応させた後、減圧蒸留によりポリアルコキシポリシロキサン系化合物(A−2)(無色透明の粘稠液体)を得た。
【0081】
実施例3
実施例1において、ラジカル重合性不飽和単量体(B)として、メチルメタクリレート42.7部、n−ブチルアクリレート36.7部、メタクリル酸アンモニウム塩の25%水溶液0.5部を用いた以外は同様に行い、コーティング剤組成物(エマルジョン)を調製し、実施例1と同様の評価を行った。
【0082】
実施例4
実施例1において、シリケートオリゴマー(C)として、メチルシリケート(三菱化学社製、「MS−56」)を用いた以外は同様に行い、コーティング剤組成物(エマルジョン)を調製し、実施例1と同様の評価を行った。
【0083】
実施例5
実施例1において、加水分解抑制剤(D)として、酢酸アンモニウムの25%水溶液4部を用いた以外は同様に行い、コーティング剤組成物(エマルジョン)を調製し、実施例1と同様の評価を行った。
【0084】
実施例6
実施例2において、ラジカル重合性不飽和単量体(B)として、メチルメタクリレート58.8部、n−ブチルアクリレート20.6部、シリケートオリゴマー(C)として、メチルシリケート(三菱化学社製、「MS−51」)18.9部、加水分解性抑制剤(D)として、実施例1と同様の加水分解抑制剤1.0部を用いた以外は同様に行い、コーティング剤組成物(エマルジョン)を調製し、実施例1と同様の評価を行った。
【0085】
比較例1
実施例1において、ポリアルコキシポリシロキサン系化合物(A−1)を用いず、ラジカル重合性不飽和単量体(B)として、メチルメタクリレート58.6部、n−ブチルアクリレート20.6部、シリケートオリゴマー(C)としてエチルシリケート(コルコート(株)製、ES−48)20.8部を用いた以外は同様に行い、コーティング剤組成物(エマルジョン)を調製し、実施例1と同様の評価を行った。
実施例1〜6、比較例1の評価結果を表1、2に示す。
【0086】
【0087】
【0088】
【発明の効果】
本発明は、ポリアルコキシポリシロキサン系化合物(A)、ラジカル重合性不飽和単量体(B)の重合物(B′)及びシリケートオリゴマー(C)を含有してなる樹脂組成物、好ましくはポリアルコキシポリシロキサン系化合物(A)、ラジカル重合性不飽和単量体(B)及びシリケートオリゴマー(C)を予備乳化させた水性乳化液を重合してなる樹脂組成物であり、シロキサンと反応可能な官能基を有する高分子化合物(a2)が、水酸基又はカルボキシル基を含有するアクリル系樹脂であること、ポリアルコキシポリシロキサン(A)の配合量が、ラジカル重合性不飽和化合物(B)100重量部に対して0.01〜100重量部であること、シリケートオリゴマー(C)の配合量が、ラジカル重合性不飽和化合物(B)100重量部に対して0.1〜100重量部であること、ポリアルコキシポリシロキサン(a1)と該シロキサンと反応可能な官能基を有する高分子化合物(a2)と反応させて得られるポリアルコキシポリシロキサン系化合物(A)、ラジカル重合性不飽和単量体(B)及びシリケートオリゴマー(C)を予備乳化させた水性乳化液を重合して得られるものである樹脂組成物であるため、樹脂組成物の放置安定性に優れ、塗膜の耐候性、耐水性、耐溶剤性、耐汚染性、耐割れ性に優れた効果を示すものであり、コーティング剤組成物として非常に有用で、中でも建材塗料、接着剤、紙コーティング剤等に有用である。
Claims (3)
- ポリアルコキシポリシロキサン(a1)と該シロキサンと反応可能な官能基を有する高分子化合物(a2)と反応させて得られるポリアルコキシポリシロキサン系化合物(A)、ラジカル重合性不飽和単量体(B)の重合物(B′)及びシリケートオリゴマー(C)を含有してなる樹脂組成物であり、
シロキサンと反応可能な官能基を有する高分子化合物(a2)が、水酸基又はカルボキシル基を含有するアクリル系樹脂であること、
ポリアルコキシポリシロキサン(A)の配合量が、ラジカル重合性不飽和化合物(B)100重量部に対して0.01〜100重量部であること、
シリケートオリゴマー(C)の配合量が、ラジカル重合性不飽和化合物(B)100重量部に対して0.1〜100重量部であること、
ポリアルコキシポリシロキサン(a1)と該シロキサンと反応可能な官能基を有する高分子化合物(a2)と反応させて得られるポリアルコキシポリシロキサン系化合物(A)、ラジカル重合性不飽和単量体(B)及びシリケートオリゴマー(C)を予備乳化させた水性乳化液を重合して得られるものである
ことを特徴とする樹脂組成物。 - 更に加水分解抑制剤(D)を添加して予備乳化させた水性乳化液を用いることを特徴とする請求項1記載の樹脂組成物。
- 請求項1または2記載の樹脂組成物を用いることを特徴とするコーティング剤組成物。
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