JP4542439B2 - 金属板材の熱間プレス成形方法およびその装置 - Google Patents
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Description
しかし、近年におけるプレス製品、特に自動車部品には軽量化等の観点から高強度化が求められており、これにより成形性の低下、特にスプリングバック等の発生による形状凍結性の低下を招来し、複雑な形状をしたプレス製品を製造することが困難となっている。
このため、搬送に伴う金属板材の温度むら、ひいては当該温度むらに起因するプレス製品間の強度ばらつきを防ぐべく、加熱炉等の加熱装置で金属板材を加熱して、これを搬送するのではなく、金型内部において金属板材を加熱する方法が提案されている。例えば、パンチとダイスの間にセットした金属板材に複数の電極を取り付け、相対する電極間に電力を供給してジュール熱を発生させ、この方法により均一に加熱された金属板材を熱間プレスする方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
しかし、この方法によれば搬送時に金属板材に温度むらが発生する問題については解決することはできるが、金型にセットするたびに金属板材に複数の電極を取り付けなければならず、しかもジュール熱によって加熱するので、生産性が著しく低下するであろうことは想像するに難しくない。したがって、生産性が要求される金属板材のプレス成形に当該方法を適用するには実用上かなりの問題がある。
このため、前記したような金型接触抜熱効果による冷却プロセスのみならず、新たな冷却プロセスとしてダイスとパンチの成形面の少なくとも一方に冷媒導入溝を設け、前記冷媒導入溝に冷媒を導入し、当該冷媒による冷却効果によって金型内保持時間を短縮し、生産性を向上させる方法も開示されている(例えば、特許文献2参照)。
このため、成形部位毎に金型成形面の接触面積や金型温度を異ならせて、後加工が必要な部位の焼入れ硬さを低下させるという新たな冷却プロセスを導入し、当該部位の加工を容易にする方法が開示されている(例えば、特許文献3参照)。
しかし、上記説明した技術は、いずれもプレス成形品の局部的な強度、すなわち、高強度化が必要な部位や後加工が必要な部位等の特定部位の強度を所定の冷却プロセスにより局部的に変更するものに過ぎず、プレス成形品各部の強度を任意に設定できるものではなかった。また、その特定部位の強度についても精度の優れたものではなく、プレス成形品各部の強度を正確に設定あるいは調整できるものではなかった。
このため、近年における自動車部品等には、板厚や強度の異なる複数の金属板材を溶接により結合して一体化したプレス素材、すなわち、テーラードブランクが広く用いられている。テーラードブランクは、1つの金属板材の特性を目的に合わせて部分的に変更することができるという優れた特徴を有し、例えば、強度が必要な部位にのみ高強度鋼板を適用することで成形品としての必要な強度を保ちつつ、強度が不要な部分の軽量化を図ることができる。また、目的に合う板厚や強度を有する金属板材を選択し、これを溶接結合して一体化するので、プレス成形品各部の強度を目的に合わせて正確かつ任意に設定することが可能である。このため、商品力あるデザイン性を満足しつつも衝突安全性に優れるボディを製造することができるとともに、部品点数をも削減することができる。
しかし、自動車ボディの軽量化や高強度化のみならず、デザイン性や衝突安全性などの向上にも資するテーラードブランクではあるが、前記したように金属板材を溶接により結合して一体化するため、テーラードブランクの製造には高度な溶接技術が必要とされる。すなわち、高度な溶接技術を適用しないと、プレス成形したときに溶接部において破断が生じやすく、溶接部の強度が確保できないようでは、前記したようなテーラードブランクの有する優れた特性を発揮することもできない。しかも、自動車部品の高強度化が進展している現状においては、ますます高度な溶接技術が必要とされる。
すなわち、近年におけるプレス製品の高強度化に伴い、従来の冷間プレス成型技術では形状凍結性が低下するという問題が発生し、これに対応すべく注目されている熱間プレス成形方法ではあるが、金属板材を高温に加熱する熱間プレス成形技術においては、一旦成形に伴う伸びを生じると当該部分の断面積が小さくなるため、伸びにより板厚が減少する部分の強度はますます低くなり、深絞り成形に代表される成形加工に伴う材料流動の激しいプレス成形を行った場合には、伸びが生じた部分において局所的な減肉や破断が生じて、いわゆるドロー成形ができないという問題があった。また、深絞り成形と比較すると加工に伴う材料流動の激しくないフォーム成形においても、曲率が厳しい場合には破断が生じるという問題があった。
また、本発明の解決すべきもう一つの課題は、従来の熱間プレス成形技術では実現できなかったドロー成形や曲率の厳しいフォーム成形を可能とする熱間プレス成形方法およびその装置を提供することである。
(A)被成形材である金属板材の温度分布や冷却速度を所定の手段により制御しながらプレス成形を行うと、プレス成形品各部の強度を正確かつ任意に設定することができること。具体的には、プレス開始前において金属板材各部、例えば、プレス成形品各部に対応する部位の温度を計測し、加熱手段と冷却手段のいずれか一方又は両方によって、金属板材各部の温度をプレス成形品各部の強度に応じた温度に設定してからプレス成形を開始すると、プレス成形品各部の強度を正確かつ任意に設定することができること。さらには、上記方法によるプレス開始前における温度設定のみならず、成形開始後においては金属板材各部の冷却速度を制御することにより、プレス成形品各部の強度をより正確かつ任意に設定することができること。
(C)また、前記冷媒吐出を、冷媒の吐出量、吐出流速、吐出圧力、吐出時間、吐出タイミングから選択される1又は2以上のパラメータを制御し、かつ、各冷媒吐出口毎にまたは複数の冷媒吐出口からの冷媒吐出をグループ化してグループ毎に制御すれば、冷媒吐出による冷却の熱伝達係数を自在に可変することが可能であり、これによって成形品各部の強度を自在に制御することが可能であること。
(D)冷間プレスにおいては、伸びが生じた部分の変形抵抗は加工硬化により向上するが、熱間プレスでは金属板材を高温に加熱した状態でプレス成形するため、金属板材の変形抵抗が低く、一旦成形に伴う伸びを生じると、図9(c)に示すように、伸びが生じた部分の断面積が小さくなるため、伸びにより板厚が減少する部分の強度はますます低くなり、最終的には破断が生じること。なお、図9(a)は均一に加熱した被成形材たる金属板材を、図9(b)は前記金属板材を用いて円筒絞り成形をしたときのプレス成形品を模式的に示している。
(F)また、図9(d)に示すような形態の温度分布のみならず、図9(e)に示すような形態の温度分布、すなわち、加工度の大きな部分において強度の高い部分と強度の低い部分とが交互に出現するような温度分布を形成しておくことによっても、上記効果を得られること。
(G)また、伸びにより板厚が減少する部分の位置、すなわち、加工度に応じた温度設定をすべき金属板材の位置については、あらかじめ行う実験によって特定することが可能であること。
(H)したがって、プレス成形開始前にあらかじめ金属板材各部の温度を計測しておき、加熱手段と冷却手段のいずれか一方または両方によって、金属板材各部の温度をプレス成形品各部の加工度に応じた温度に設定してからプレス成形を開始すれば、被成形材たる金属板材の局所的な減肉や破断を生ずることなく、熱間プレスによるドロー成形、曲率の厳しいフォーム成形等の成形加工が可能となること。
(G)そして、成形開始後における金属板材各部の冷却速度を制御するための所定の冷却手段としては、前記した金型表面に設けた複数の冷媒吐出口からの冷媒吐出による冷却が望ましいこと。また、金型表面に設けた複数の冷媒回収口から冷媒を順次回収することにより、当該冷媒吐出による冷却効率や制御性がさらに向上すること。
(2)加熱した金属板材を金型を用いて熱間成形及び冷却プロセスによりプレス成形品の強度を調整する熱間プレス成形方法において、金属板材各部の温度を計測し、加熱手段と冷却手段のいずれか一方又は両方によって、金属板材各部の温度をプレス成形品各部の加工度に応じた温度に設定してからプレス成形を開始し、成形開始後においては、金型表面に設けた複数の冷媒吐出口からの冷媒吐出、または、金型表面に設けた複数の冷媒吐出口からの冷媒吐出と冷媒回収口からの冷媒回収によって、プレス成形中における金属板材各部の冷却速度を制御することを特徴とする熱間プレス成形方法。
(4)前記金属板材が、鋼板であることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれか1項に記載の熱間プレス成形方法。
(5)前記鋼板が、マルテンサイト変態またはベイナイト変態をする鋼板であることを特徴とする前記(4)に記載の熱間プレス成形方法。
(7)加熱した金属板材を金型を用いて成形する熱間プレス成形装置において、金属板材各部の温度を計測する手段と、金属板材各部の温度をプレス成形品各部の強度または加工度に応じた温度まで冷却する冷却手段と、表面に複数の冷媒吐出口を備え、内部に各冷媒吐出口と連通し、かつ、開閉弁、流量調整弁および圧力調整弁の少なくとも1つを備えた冷媒供給管を配した金型と、前記冷媒供給管に備えた開閉弁、流量調整弁および圧力調整弁の少なくとも1つを制御することにより各冷媒吐出口からの冷媒吐出を制御する制御手段を備え、当該制御手段が各冷媒吐出口からの冷媒吐出を制御することによって、プレス成形中における金属板材各部の冷却速度を制御することを特徴とする熱間プレス成形装置。
(9)前記金型が、表面に複数の冷媒回収口を備え、内部に各冷媒回収口と連通する冷媒回収管を配した金型であることを特徴とする前記(6)〜(8)のいずれか1項に記載の熱間プレス成形装置。
(10)前記金型が、表面に面積率が1〜90%、直径又は外接円の直径が10μm〜5mm、高さが5μm〜1mmの突起部を複数有することを特徴とする前記(6)〜(9)のいずれか1項に記載の熱間プレス成形装置。
(B)また、プレス開始前において被成形材たる金属板材の各部、具体的には、プレス成形品各部に対応する部位の温度を計測し、加熱手段と冷却手段のいずれか一方又は両方によって、金属板材各部の温度をプレス成形品各部の強度に応じた温度に設定してからプレス成形を開始するので、プレス成形品各部の強度を目的に合わせて正確かつ任意に設定することができる。
(C)さらには、上記方法によるプレス開始前における金属板材各部の温度設定のみならず、プレス成形開始後においては、金型表面に設けた複数の冷媒吐出口からの冷媒吐出により金属板材各部の冷却速度を自在に可変することができるので、プレス成形品各部の強度をより正確かつ任意に設定することができる。すなわち、本発明によれば、テーラードブランクのように板厚や強度の異なる複数の金属板材を溶接により結合することなく、プレス成形品各部の強度を目的に合わせて正確かつ任意に設定することができる。なお、プレス成形品の強度を均一にできることは言うまでもない。具体的には、強度が必要な部位に対しては、冷却開始温度や冷却速度を上昇させることによりマルテンサイト変態またはベイナイト変態による高強度化を図ることができる一方、穴加工(ピアス)や切断加工(トリム)等の後加工が必要な部位、すなわち強度が不要な部位に対しては、プレス開始前に冷却開始温度を下げておくか、成形中と成形後のいずれか一方又は両方における冷却速度を弱めることにより、強度を低下させることができる。また、金属板材の温度を成形品部位毎に異ならせてからプレス成形を開始すれば、成形品部位毎の強度が異なるプレス成形品を得ることができ、また、成形中と成形後のいずれか一方又は両方における金属板材の冷却速度を成形品部位毎に異ならせれば、成形品部位毎の強度が異なるプレス成形品を得ることもできる。
(E)さらには、冷媒吐出による冷却を行うので、形状凍結性に優れ、良好な寸法精度を有するプレス製品を製造できることはいうまでもない。また、金型内保持時間の短縮による生産性の向上をも図ることができる。
なお、冷媒吐出機能を有する金型は、成形中と成形後のいずれか一方又は両方において金属板材各部の冷却速度を制御するのみならず、成形開始前においても図3に示すように金属板材各部の温度を制御することができることを付言しておく。なお、図3は本発明の原理を模式的に示す概略説明図であり、本図においては黒丸で示した位置にある冷媒吐出口12から冷媒を吐出していることを模式的に示している。
以下、(1)本発明で用いる被成形材およびその加熱方法、(2)金属板材各部の温度をプレス成形品各部の強度または加工度に応じた温度に設定するための計測手段、冷却手段および加熱手段、(3)冷媒吐出機能を有する金型、(4)冷媒吐出のための制御方法・装置について順を追って説明する。
本発明で用いる被成形材は金属板材1であり、Alめっき鋼板、Znめっき鋼板、高強度鋼板、普通鋼等のいずれの鋼板にも適用することができる。
また、マルテンサイト変態またはベイナイト変態をする鋼板であれば、冷媒吐出による焼入れにより高強度化を図ることができるので、マルテンサイト変態またはベイナイト変態をする鋼板が望ましい。なお、冷媒吐出時に必ずしも変態する必要はなく、成形後に変態してもかまわない。
金属板材1を加熱する方法としては、特に限定されるものではなく、金属板材1をA1変態点以上に加熱できる方法であれば、電気炉、ガス炉での加熱や火炎加熱、通電加熱、高周波加熱、誘導加熱等のいずれの方法でもよい。
そして、プレス成形品各部の強度に応じた温度に満たない場合は加熱手段25によって当該温度まで昇温し、プレス成形品各部の強度に応じた温度を超える場合は冷却手段26によって当該温度まで冷却し、金属板材各部の温度が前記温度に設定されたところで、押込みを開始する。すなわち、当該プレス成形品各部の強度に応じた温度が図1に示すところの冷却開始温度であり、例えば、金属板材各部の冷却開始温度を一定にし、プレス開始後の金属板材各部の冷却速度が一定になるように制御すると、強度が均一なプレス成形品30を得ることができる。また、金属板材各部の冷却開始温度を一定にしても、プレス開始後の金属板材各部の冷却速度が異なるように制御すると、任意の部分でそれぞれ異なった機械的特性を有するプレス成形品30を得ることができる。
加熱手段25としては、通電加熱、赤外線ヒートビーム、レーザービーム、誘導加熱等があるが電熱ヒータが望ましい。また、冷却手段26としては、前記したように本発明に係る冷媒吐出機能を有する金型を用いて冷却してもよいし、あらかじめ加熱炉等の中でマスキングを施して、所定の温度分布を形成しておいてもよい。あるいは、加熱炉等の加熱装置から金型に加熱した金属板材1を搬送する段階において、搬送装置との接触抜熱によって所定の温度分布を形成してもよい。
本発明に係る熱間プレス成形装置2を構成する金型は、図2に示すように、ダイス3、パッド5、ダイスホルダー9およびダイベース7を備えた上型と、パンチ4、板押さえ6、パンチホルダー10およびダイベース8を備えた下型とから構成される。なお、ダイスホルダー9はパッドホルダーを、パンチホルダー10は板押さえホルダーをそれぞれ兼ねており、以降は、これら一式をダイセット11と称する。なお、図2(b)は、装置の構成を明確にするためにダイスホルダーとパンチホルダーを省略して記載した図である。
本発明に係る冷媒吐出機能を有する金型は、図4に示すように被成形材たる金属板材1に冷媒を吐出するための複数の冷媒吐出口12を表面に備え、内部には前記冷媒吐出口12と連通し、かつ、開閉弁14、流量調整弁15および圧力調整弁16の少なくとも1つを備えた冷媒供給管13を配している。
なお、図4はパンチ4の縦壁部に冷媒吐出口12を設けた例であるが、頂部に設けてもよいし、縦壁部と頂部の両方に設けてもよい。これは、板押さえ6に冷媒吐出口12を設ける場合についても同様である。一方、上型であるダイス3やパッド5に冷媒吐出口12を設ける場合には、底部に設けてもよいし、縦壁部と底部の両方に設けてもよい。
また、冷媒供給管13は冷媒吐出口12と連通していれば冷媒吐出機能を果たすため、冷媒吐出口12や冷媒供給管13を金型に穿孔する代わりに、金型内部から外表面に貫通する気孔を有する多孔質金属に冷媒供給管13を接続してもよい。なお、この場合には、肉厚方向に貫通する直径100μm〜1mm、ピッチ100μm〜10mmの孔を複数有する多孔質金属を使用することが望ましい。例えば、図3に示す構成のパンチにおいて、中子20をダイス鋼とし、パンチ4を多孔質金属とすれば、微細でピッチの小さな冷媒吐出口12および冷媒供給管13を形成することができる。なお、このような多孔質金属は、粉末を成形後に焼結するか、金属を溶融させた後、温度制御により凝固組織の方向を一定にする一方向凝固によって製造することができる。
このような金型で冷媒吐出をさせてプレス成形加工を行うが、冷媒を使用するほど急冷を必要とせず、加工が厳しくなく、金型との接触による抜熱で充分な冷却速度が取れる場合、冷媒吐出をせずにプレス成形加工を行っても良い。
一般に冷媒による冷却能力については熱伝達係数αを用いて表すことができ、当該熱伝達係数α、冷媒の吐出量Q、吐出流速U、吐出圧力Pおよび吐出時間Tとの関係は以下の式により表すことができる。なお、f、g、hは、それぞれ関数を表し、例えば、熱伝達係数αは冷媒の吐出量Qの関数として成立することを示す。
熱伝達係数α =f(冷媒の吐出量Q) ・・・ (1)
冷媒の吐出量Q =g(吐出流速U、吐出時間T) ・・・ (2)
吐出流速U =h(吐出圧力P) ・・・ (3)
なお、前記弁は応答性を良好に保つために冷媒吐出口12に近い金型内部に内蔵してもよいが、弁の調整を行うたびに金型を分解する手間を要するため、ダイセット11に設置することが望ましい。
さらには、柱状のプレス製品を成形する場合には、パンチ押し込み量が同一となる位置関係にある複数の冷媒吐出口からの冷媒吐出をグループ化してグループ毎に制御すれば、成形性を向上させることが可能である。
なお、冷媒回収口17および冷媒回収管18は、前記した冷媒吐出口12や冷媒供給管13の形成方法と同様の方法により形成することができる。また、冷媒回収口17はパンチ4の頂部に設けてもよいし、縦壁部と頂部の両方に設けてもよい。これは、板押さえ6に冷媒回収口17を設ける場合についても同様である。一方、上型であるダイス3やパッド5に冷媒回収口17を設ける場合には、底部に設けてもよいし、縦壁部と底部の両方に設けてもよいが、縦壁部に設けた方が被成形材に吐出した冷媒を効率よく回収することができる。
なお、図5および6に例示した突起部19は、金型の成形面に所定の間隔で設けた円柱状の形状であるが、水平断面の形状は、円状、多角形状、星型形状のいずれかであることが望ましく、垂直断面の形状は、長方形又は台形であることが望ましく、半球状でもよい。
なお、前記突起部19は、成形面の表面にそのまま形成してもよいが、成形条件によっては、突起部の形状が成形品に転写されて成形品の表面性状を害することがあるので、突起部周囲の金型部分を除去して窪みを形成するか、図7に示すように突起部形成位置における金型部分に突起部の高さと一致する深さの窪みを形成し、当該窪みに突起部19を形成することが望ましい。
突起部の水平断面形状が円状である場合には突起部19の直径、多角形状又は星型形状である場合には突起部の外接円の直径が10μm〜5mmであることが望ましい。突起部の直径又は外接円の直径が10μm未満では突起部の摩耗が大きく、長期間にわたり効果を発揮することができず、5mmを超える場合は均一に冷却することができない。
突起部19の高さは、5μm〜1mmであることが望ましい。突起部の高さが5μm未満では被成形材との隙間が小さすぎるため、金型と被成形材の間に冷媒を循環させることが困難であり、1mmを越す場合は隙間が過大となるため、加工量が増え経済的でなくなる。
化学エッチングは、可視光硬化型感光性樹脂を金型表面に塗布、乾燥した後、可視光を遮断するマスクで被覆して可視光を照射し、照射部を硬化させ、硬化部以外の樹脂を有機溶剤により除去する方法である。例えば、塩化ナトリウム水溶液等のエッチング液に金型表面を1〜30分程度浸漬し、エッチングすればよい。突起部の直径又はピッチは可視光を遮断するマスクの形状によって適宜選択することが可能であり、突起部の高さはエッチング時間によって適宜調整することができる。
放電加工は、目的とする突起部形状を反転させた凹部を表面パターンとして有する銅電極を金型に対向して設置し、電流ピーク値、パルス幅を変え、直流パルス電流を流す加工方法である。好ましい電流値は2〜100A、パルス幅は2〜1000μsecであり、金型材質、及び所望の突起部形状に応じて、適宜調整すればよい。
めっき法の場合、半球状突起部の直径を10μm以上とするため、めっきの厚みを10μm以上とすることが好ましく、上限は剥離を防止するため80μm以下とすることが望ましい。めっき層は、アルカリ脱脂し、めっき液中で金型を陽極として電解処理する電解エッチングを行った後、所定の浴温、電流密度で形成することができる。なお、クロムめっきの場合はクロムめっき液中で、電流密度1〜200A/dm2程度、浴温30〜60℃程度、NiWめっきの場合は、NiWめっき液中、電流密度1〜100A/dm2程度、浴温30〜80℃程度の条件にすれば、10〜80μmの厚みのめっき層を設けることができる。なお、半球状突起部形状を有するめっき層を形成するには、例えば、電流密度を段階的に増加させた後、一定電流密度でめっきすればよい。
当該制御装置23としては、特に限定されるものではなく、前記冷媒供給管13に備えた開閉弁14、流量調整弁15および圧力調整弁16の開閉を制御できるものであれば、機械的、電子的手段を問わず、あるいはこれらを複合させた手段であってもよい。例えば、これらの弁機構にリレースイッチを採用し、当該リレースイッチの開閉(オン・オフ)を計算機(コンピュータ)により制御することにより、前記冷媒供給管13と連通する冷媒吐出口12からの冷媒吐出、具体的には当該冷媒吐出口12における熱伝達係数αを調整することができる。
また、柱状のプレス製品を成形する場合には、パンチ押し込み量が同一となる位置関係にある複数の冷媒吐出口12における冷媒吐出を同一にすることにより成形性が向上するので、この場合には、パンチ押し込み量が同一となる位置関係にある複数の冷媒吐出口12と連通する冷媒供給管13の開閉弁等の制御を同一にすることが望ましい。
なお、冷媒は、液体でも気体でもよい。冷媒として気体を用いる場合、熱伝達係数が低いので、比較的加工の厳しくない場合や、マルテンサイト変態、ベイナイト変態させない場合に限られる。また、表面の酸化を避けるために活性の低い窒素、CO2、不活性ガスを用いることが望ましい。さらに、冷媒が気体である場合は、成形品や熱間プレス成形装置に付着して残ることがないので、不必要な汚れやさびなどを生じさせることが少ないという効果がある。
また、さらには、成形開始後において成形中と成形後のいずれか一方又は両方において、冷媒吐出機能を有する金型を用いて金属板材各部の冷却速度を制御するので、より正確にプレス成形品各部の強度を正確かつ任意に設定することができる。
なお、図9(d)および図9(e)に示す温度調整領域34は、温度計測手段24による金属板材各部の温度計測後、加熱手段25と冷却手段26のいずれか一方または両方によって当該領域の温度を調整したことを示すものであり、例えば、当該温度調整領域34の温度をその周辺領域よりも低く設定すれば、当該温度調整領域34における強度がその他の部分よりも上昇するので、プレス成形を開始したときに図9(f)に示すように、当該強度を上げた部位よりも他の強度の低い部分が伸びるので、破断を防ぐことができる。
実施例の条件を表1に、結果を表2に示す。本実施例は、図2に記載した熱間プレス成形装置2を用いて、図8(b)に示す円筒絞り成形品を成形した例を示すものであり、被成形材には加熱炉の中で900℃(保定時間5分)に加熱した図8(a)に示す板厚1.6mm、半径140mmの0.2%C鋼板(初期破断強度500MPa相当)を用いた。なお、プレス成形品30は頂部31、縦壁部32およびフランジ部33とから構成され、縦壁部32の高さは20mmである。
また、発明例2〜5の金型成形面には、面積率が50%、高さが1mm、直径が2mm、水平断面形状が円状で垂直断面形状が長方形の突起部19を形成している。また、パンチ4は直径70mmを使用し、成形速度は10mm/secとした。
鋼板各部の温度測定には放射温度計を使用し、図8(a)の各部(A〜C)の代表点(a〜c)を測定し、各点の温度が指定温度の±10℃になった時点で押込みを開始した。
一方、発明例1は、プレス開始温度およびプレス開始後の冷却速度を成形品各部で一定に制御したものであるが、成形性、生産性および強度ともに満足することのできる強度が均一な成形品を得ることができた。
また、発明例2と3は、鋼板各部のプレス開始温度を異ならせて、冷却速度を同じように制御したものであるが、これにより成形品各部で強度の異なるプレス成形品30を得ることを確認することができた。また、発明例4は、発明例2と3とは反対に、鋼板各部のプレス開始温度を一定にして、冷却速度を異なるように制御したものであるが、この方法によっても成形品各部で強度の異なるプレス成形品30を得ることを確認することができた。
以上から、金属板材1の温度を成形品部位毎に異ならせてからプレス成形を開始すれば、成形品部位毎の強度が異なるプレス成形品30を得ることができ、また、成形中と成形後のいずれか一方又は両方における金属板材1の冷却速度を成形品部位毎に異ならせれば、成形品部位毎の強度が異なるプレス成形品30を得ることもできることを確認することができた。
3 ダイス 4 パンチ
5 パッド 6 板押さえ
7 ダイベース(上型) 8 ダイベース(下型)
9 ダイスホルダー 10 パンチホルダー
11 ダイセット 12 冷媒吐出口
13 冷媒供給管 14 開閉弁
15 流量調整弁 16 圧力調整弁
17 冷媒回収口 18 冷媒回収管
19 突起部 20 中子
21 シール 22 金型全体冷却部
23 制御装置 24 温度計測手段
25 加熱手段 26 冷却手段
30 プレス成形品 31 頂部
32 縦壁部 33 フランジ部
34 温度調整領域
Claims (10)
- 加熱した金属板材を金型を用いて熱間成形及び冷却プロセスによりプレス成形品の強度を調整する熱間プレス成形方法において、
金属板材各部の温度を計測し、加熱手段と冷却手段のいずれか一方又は両方によって、金属板材各部の温度をプレス成形品各部の強度に応じた温度に設定してからプレス成形を開始し、
成形開始後においては、金型表面に設けた複数の冷媒吐出口からの冷媒吐出、または、金型表面に設けた複数の冷媒吐出口からの冷媒吐出と冷媒回収口からの冷媒回収によって、プレス成形中における金属板材各部の冷却速度を制御することを特徴とする熱間プレス成形方法。 - 加熱した金属板材を金型を用いて熱間成形及び冷却プロセスによりプレス成形品の強度を調整する熱間プレス成形方法において、
金属板材各部の温度を計測し、加熱手段と冷却手段のいずれか一方又は両方によって、金属板材各部の温度をプレス成形品各部の加工度に応じた温度に設定してからプレス成形を開始し、
成形開始後においては、金型表面に設けた複数の冷媒吐出口からの冷媒吐出、または、金型表面に設けた複数の冷媒吐出口からの冷媒吐出と冷媒回収口からの冷媒回収によって、プレス成形中における金属板材各部の冷却速度を制御することを特徴とする熱間プレス成形方法。 - 前記冷媒吐出を、冷媒の吐出量、吐出流速、吐出圧力、吐出時間、吐出タイミングから選択される1又は2以上のパラメータを制御し、かつ、各冷媒吐出口毎にまたは複数の冷媒吐出口からの冷媒吐出をグループ化してグループ毎に制御することを特徴とする請求項1または2に記載の熱間プレス成形方法。
- 前記金属板材が、鋼板であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱間プレス成形方法。
- 前記鋼板が、マルテンサイト変態またはベイナイト変態をする鋼板であることを特徴とする請求項4に記載の熱間プレス成形方法。
- 加熱した金属板材を金型を用いて成形する熱間プレス成形装置において、
金属板材各部の温度を計測する手段と、
金属板材各部の温度をプレス成形品各部の強度または加工度に応じた温度まで昇温する加熱手段と、
表面に複数の冷媒吐出口を備え、内部に各冷媒吐出口と連通し、かつ、開閉弁、流量調整弁および圧力調整弁の少なくとも1つを備えた冷媒供給管を配した金型と、
前記冷媒供給管に備えた開閉弁、流量調整弁および圧力調整弁の少なくとも1つを制御することにより各冷媒吐出口からの冷媒吐出を制御する制御手段を備え、
当該制御手段が各冷媒吐出口からの冷媒吐出を制御することによって、プレス成形中における金属板材各部の冷却速度を制御することを特徴とする熱間プレス成形装置。 - 加熱した金属板材を金型を用いて成形する熱間プレス成形装置において、
金属板材各部の温度を計測する手段と、
金属板材各部の温度をプレス成形品各部の強度または加工度に応じた温度まで冷却する冷却手段と、
表面に複数の冷媒吐出口を備え、内部に各冷媒吐出口と連通し、かつ、開閉弁、流量調整弁および圧力調整弁の少なくとも1つを備えた冷媒供給管を配した金型と、
前記冷媒供給管に備えた開閉弁、流量調整弁および圧力調整弁の少なくとも1つを制御することにより各冷媒吐出口からの冷媒吐出を制御する制御手段を備え、
当該制御手段が各冷媒吐出口からの冷媒吐出を制御することによって、プレス成形中における金属板材各部の冷却速度を制御することを特徴とする熱間プレス成形装置。 - 前記冷媒供給管の開閉弁、流量調整弁および圧力調整弁をダイセットに設置したことを特徴とする請求項6または7に記載の熱間プレス成形装置。
- 前記金型が、表面に複数の冷媒回収口を備え、内部に各冷媒回収口と連通する冷媒回収管を配した金型であることを特徴とする請求項6〜8のいずれか1項に記載の熱間プレス成形装置。
- 前記金型が、表面に面積率が1〜90%、直径又は外接円の直径が10μm〜5mm、高さが5μm〜1mmの突起部を複数有することを特徴とする請求項6〜9のいずれか1項に記載の熱間プレス成形装置。
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