JP4700364B2 - 金属板材の熱間プレス成形方法 - Google Patents
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Description
さらには、加熱炉等の加熱装置で加熱した金属板材を、これを保持するハンド部を備える搬送装置によって冷却槽等の冷却装置まで搬送し、前記冷却装置において所定の冷却手段により冷却して、焼入れされた金属板材を得る金属板材の熱処理方法およびその装置であって、特に金属板材各部の焼入れ硬さを任意に設定することができる金属板材の熱処理方法およびその装置に関する。
しかし、近年におけるプレス製品、特に自動車部品には軽量化等の観点から高強度化が求められており、これにより成形性の低下、特にスプリングバック等の発生による形状凍結性の低下を招来し、複雑な形状をしたプレス製品を製造することが困難となっている。
しかし、細心の注意を払って搬送するとはいえども、搬送時には高温に加熱した金属板材と搬送装置とが所定の部位において、例えば、搬送装置の保持手段であるハンド部において接触するので、当該部位では接触による抜熱が生じて金属板材に温度むらが発生する。したがって、搬送装置または搬送方法に特段の工夫を凝らさない限り、金属板材に温度むらが発生することは避けることはできない。
このため、搬送に伴う金属板材の温度むら、ひいては当該温度むらに起因するプレス成形品の焼入れ硬さのむらを防ぐべく、金型内部において金属板材を加熱する方法が提案されている。例えば、パンチとダイの間にセットした金属板材に複数の電極を取り付け、相対する電極間に電力を供給してジュール熱を発生させ、この方法により均一に加熱した金属板材を熱間プレスする方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
しかし、この方法によれば搬送時に金属板材に温度むらが発生する問題については解決することはできるが、金型にセットするたびに金属板材に複数の電極を取り付けなければならず、しかもジュール熱によって加熱するので、生産性が著しく低下する。したがって、生産性が要求される金属板材のプレス成形に当該方法を適用するには実用上かなりの問題がある。
このため、成形部位毎に金型成形面の接触面積や金型温度を異ならせて、後加工が必要な部位の焼入れ硬さを低下させて、当該部位の加工を容易にする方法が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
しかし、この方法によれば後加工は容易となるが、前記したように搬送によって金属板材に温度むらが生じている場合には、後加工が必要な部位のみならず、強度が必要な部位の焼入れ硬さも低下してしまう可能性が残る。
このため、近年における自動車部品等には、板厚や強度の異なる複数の金属板材を溶接により結合して一体化したプレス素材、すなわち、テーラードブランクが広く用いられている。テーラードブランクは、1つの金属板材の特性を目的に合わせて部分的に変更することができるという優れた特徴を有し、例えば、強度が必要な部位にのみ高強度鋼板を適用することで成形品としての必要な強度を保ちつつ、強度が不要な部分の軽量化を図ることができる。また、テーラードブランクは、目的に合う板厚や強度を有する金属板材を選択し、これを溶接結合して一体化するので、プレス成形品各部の強度を目的に合わせて正確かつ任意に設定することが可能である。このため、商品力あるデザイン性を満足しつつも衝突安全性に優れるボディを製造することができるとともに、部品点数をも削減することができる。
また、前記したようにテーラードブランクは目的に合う板厚や強度を有する金属板材を選択し、これを溶接結合して一体化するため、自動車ボディ等の部品点数を削減する効果を有しているが、金属板材各部の焼入れ硬さを任意に設定することのできる金属板材の熱処理技術、および部位によって焼入れ硬さの異なる金属板材を製造することができれば、テーラードブランクを構成するブランクの数や溶接に要する作業時間を大幅に低減・短縮することができる。
また、本発明の解決すべきもう一つの課題は、加熱炉等の加熱装置で加熱した金属板材を、これを保持するハンド部を備える搬送装置によって冷却槽等の冷却装置まで搬送し、前記冷却装置において所定の冷却手段、例えば、前記冷却槽に金属板材を投入・浸漬する等により冷却して、焼入れされた金属板材を得る金属板材の熱処理においても、熱間プレスと同様に、搬送時において金属板材に温度むらが発生するという問題、および焼入れ硬さが上昇しすぎて後加工が困難になるという問題を抱えていることから、当該問題を合理的に解決するとともに、金属板材各部の焼入れ硬さを任意に設定することのできる金属板材の熱処理方法およびその装置を提供することである。
したがって、本発明の解決すべきさらにもう一つの課題は、従来の熱間プレス成形技術では実現できなかったドロー成形や曲率の厳しいフォーム成形を可能とする熱間プレス成形方法およびその装置を提供することである。
さらには、従来方法によって後加工の問題を解決するためには、搬送後において、例えば、金属板材を金型にセットした後において、プレス成形品の焼入れ硬さを部分的に変更するための処理工程が必要となるが、上記のように搬送しながらに積極的に金属板材に対して温度制御を行えば、プレス成形品の焼入れ硬さを部分的に変更するための処理工程を省略できるか処理時間を短縮することができ、生産性の向上をも図れること。
(E)そして、所定の冷却手段としては、生産性および焼入れ開始温度や冷却速度の制御性の観点から、金型表面に設けた複数の冷媒吐出口からの冷媒吐出による冷却が望ましいこと。また、金型表面に設けた複数の冷媒回収口から冷媒を順次回収することにより、当該冷媒吐出による冷却効率および熱伝達係数の制御性がさらに向上すること。
(F)さらには、前記冷媒吐出を、冷媒の吐出量、吐出流速、吐出圧力、吐出時間、吐出タイミングから選択される1又は2以上のパラメータを制御し、かつ、各冷媒吐出口毎にまたは複数の冷媒吐出口からの冷媒吐出をグループ化してグループ毎に独立に制御すれば、冷媒吐出による冷却の熱伝達係数を自在に可変することが可能であり、これによって成形品各部の焼入れ硬さを自在に制御することが可能であること。
さらには、従来方法によって後加工の問題を解決するためには、搬送後において金属板材の焼入れ硬さを部分的に変更するための処理工程が必要となるが、搬送しながらに積極的に金属板材の温度制御を行えば、当該処理工程を省略できるか処理時間を短縮することができ、生産性が向上すること。
(I)冷間プレスにおいては、伸びが生じた部分の変形抵抗は加工硬化により向上するが、熱間プレスでは金属板材を高温に加熱した状態でプレス成形するため、金属板材の変形抵抗が低く、一旦成形に伴う伸びを生じると、図12(c)に示すように、伸びが生じた部分の断面積が小さくなるため、伸びにより板厚が減少する部分の強度はますます低くなり、最終的には破断が生じること。なお、図12(a)は均一に加熱した被成形材たる金属板材を、図12(b)は前記金属板材を用いて円筒絞り成形をしたときのプレス成形品を模式的に示している。
(K)また、図12(d)に示すような形態の温度分布のみならず、図12(e)に示すような形態の温度分布、すなわち、加工度の大きな部分において強度の高い部分と強度の低い部分とが交互に出現するような温度分布を形成しておくことによっても、上記効果を得られること。
(L)また、伸びにより板厚が減少する部分の位置、すなわち、加工度に応じた温度設定をすべき金属板材の位置については、あらかじめ行う実験によって特定することが可能であること。
(M)したがって、金属板材の所定の部位、すなわちプレス成形中にドロー成形とフォーム成形のいずれか一方又は両方を受ける部位が前記ハンド部と接触するように金属板材を保持して搬送し、前記ハンド部と接触する部位の温度をドロー成形若しくはフォーム成形の加工度に応じた温度に設定してからプレス成形を開始すれば、被成形材たる金属板材の局所的な減肉や破断を生ずることなく、熱間プレスによるドロー成形や曲率の厳しいフォーム成形等の成形加工が可能となること。
(O)そして、成形開始後における金属板材各部の冷却速度を制御するための所定の冷却手段としては、前記した金型表面に設けた複数の冷媒吐出口からの冷媒吐出による冷却が望ましいこと。また、金型表面に設けた複数の冷媒回収口から冷媒を順次回収することにより、当該冷媒吐出による冷却効率や制御性がさらに向上すること。
(3)前記金属板材の所定の部位が、プレス成形後に機械加工を受ける部位、またはプレス成形中にドロー成形とフォーム成形のいずれか一方又は両方を受ける部位であり、前記ハンド部と接触する部位の温度を、機械加工を受ける部位の強度に応じた温度、または、ドロー成形若しくはフォーム成形の加工度に応じた温度に設定することを特徴とする前記(1)または(2)に記載の熱間プレス成形方法。
(4)前記金属板材が、鋼板であることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれか1項に記載の熱間プレス成形方法。
(5)前記鋼板が、マルテンサイト変態またはベイナイト変態をする鋼板であることを特徴とする前記(4)に記載の熱間プレス成形方法。
さらには、従来方法によって後者の問題を解決するためには、搬送後、例えば、金属板材を金型にセットした後においてプレス成形品の焼入れ硬さを部分的に変更するための処理工程が必要となるが、搬送しながらにして積極的に金属板材の温度制御、特に接触部位における温度制御を行う本発明によれば、当該処理工程を省略できるか処理時間を短縮することができ、生産性の向上を図ることができる。
さらには、上記方法によるプレス開始前における温度設定のみならず、成形開始後において金属板材各部の冷却速度を制御することにより、成形性をさらに向上させることができる。具体的には、金属板材の所定の部位、すなわちプレス成形中にドロー成形とフォーム成形のいずれか一方又は両方を受ける部位が前記ハンド部と接触するように、あるいは、プレス成形中にドロー成形とフォーム成形のいずれか一方又は両方を受ける部位のみが前記ハンド部と接触するように金属板材を保持して搬送し、前記ハンド部と接触する部位の温度をドロー成形若しくはフォーム成形の加工度に応じた温度に設定してからプレス成形を開始し、成形開始後においては、所定の冷却手段により金属板材各部の冷却速度を制御することにより、伸びが生じる部分の負荷分散をより精度よく制御することができ、その結果として熱間プレスによるドロー成形性やフォーム成形性をさらに向上させることができる。
(E)さらには、冷媒吐出による冷却を行うので、形状凍結性に優れ、良好な寸法精度を有するプレス製品を製造できることはいうまでもない。また、金型内保持時間の短縮による生産性の向上をも図ることができる。
図2は本発明に係る熱間プレス成形装置の概略説明図である。
図3は本発明に係る搬送装置の一例を示す説明図であり、(a)はハンド部を吸引パッドにより構成した場合を示す図、(b)は搬送後の金属板材の温度分布を示す図、(c)はプレス成形品の焼入れ硬さの分布を示す図である。
図4は本発明に係る搬送装置の他の一例を示す説明図であり、(a)はハンド部をクランプにより構成した場合を示す図、(b)は搬送後の金属板材の温度分布を示す図、(c)はプレス成形品の焼入れ硬さの分布を示す図である。
図5は本発明に係る熱間プレス成形装置を構成する金型の概略説明図であり、(a)はダイスホルダーとパンチホルダーを記載した図、(b)は装置の構成を明確にするためにダイスホルダーとパンチホルダーを省略して記載した図である。
図6は本発明に係る冷媒吐出機能を有する金型を示す説明図であり、パンチに当該機能を具備した場合の断面図である。
図7は本発明に係る金型の一例を示す説明図であり、冷媒吐出口、冷媒回収口および突起部を形成した金型の表面を示す図である。
図8は本発明に係る金型の一例を示す断面図であり、冷媒吐出口、冷媒回収口および突起部を形成した金型の断面を示す図である。
図9は本発明に係る金型の他の一例を示す断面図であり、冷媒吐出口、冷媒回収口および突起部を形成した金型の断面を示す図である。
図10は本発明に係る金属板材の熱処理装置の概略説明図である。
また、本発明に係る熱間プレス成形方法の二つ目の特徴は、加熱手段42と冷却手段43のいずれか一方又は両方を備える吸引パッドまたはクランプによって前記ハンド部35を構成して、接触抜熱若しくは冷却手段43による冷却と加熱手段42による昇温のいずれか一方または両方によって、接触部位の焼入れ開始温度を機械加工を受ける部位の強度に応じた温度に設定してからプレス成形を開始し、接触部位、すなわち機械加工を受ける部位の焼入れ硬さを任意に設定することである。
さらに、本発明に係る熱間プレス成形方法の三つ目の特徴は、上記方法により接触部位の焼入れ開始温度を制御した金属板材1を金型にセットした後において、より詳細には、成形前、成形中および成形後の少なくとも1つの状態において、金型表面に設けた複数の冷媒吐出口12からの冷媒吐出、または、金型表面に設けた複数の冷媒吐出口12からの冷媒吐出と冷媒回収口17からの冷媒回収により、金属板材各部の焼入れ開始温度と冷却速度のいずれか一方又は両方を制御して、プレス成形品各部の焼入れ硬さを任意に設定することである。
また、本発明に係る熱間プレス成形方法の四つ目の特徴は、搬送段階におけるハンド部との接触抜熱や、それに続く金型表面に設けた複数の冷媒吐出からの冷媒吐出等によって、金属板材各部の強度を制御し、これにより熱間プレスによるドロー成形や曲率の厳しいフォーム成形を行うものである。
以下、前記した本発明に係る熱間プレス成形方法の特徴を詳細に説明すべく、(1)本発明で用いる被成形材およびその加熱方法、(2)加熱した金属板材の搬送装置、(3)搬送した金属板材を成形するための金型(冷媒吐出機能を有する金型)および(4)冷媒吐出の制御方法・装置について順を追って説明する。
本発明で用いる被成形材は金属板材1であり、Alめっき鋼板、Znめっき鋼板、高強度鋼板、普通鋼等のいずれの鋼板にも適用することができる。
また、マルテンサイト変態またはベイナイト変態をする鋼板であれば、冷媒吐出または金型との接触抜熱による焼入れにより高強度化を図ることができるので、マルテンサイト変態またはベイナイト変態をする鋼板が望ましい。なお、冷媒吐出時または金型との接触抜熱時に必ずしも変態する必要はなく、成形後に変態してもかまわない。
金属板材1を加熱する方法としては、特に限定されるものではなく、金属板材1をA1変態点以上に加熱できる方法であれば、電気炉、ガス炉での加熱や火炎加熱、通電加熱、高周波加熱、誘導加熱等のいずれの方法でもよい。
本発明に係る熱間プレス成形装置2を構成する搬送装置30は、図2〜4に示すように、台座31、アーム32、そして加熱した金属板材1を保持するハンド部35とから構成されるが、本発明の特徴の一つは、金属板材1の所定の部位、例えば、プレス成形後に機械加工を受ける部位、またはプレス成形中にドロー成形とフォーム成形のいずれか一方又は両方を受ける部位が前記ハンド部35と接触するように金属板材1を保持して搬送することであるから、ハンド部35としては、金属板材1の所定の部位に接触させることが容易な吸引パッド37により構成するか、クランプ44により構成することが望ましい。
このスカート部39を構成する材料としては、高温に加熱した金属板材1あるいはその雰囲気温度に対し十分な熱間強度が得られるものであれば特に限定されないが、加工やライニングが容易である炭素鋼、ステンレス鋼、耐熱合金、サーメット、グラファイトおよびセラミックスのいずれか1つまたは2つ以上の組み合わせからなることが望ましい。
例えば、金属板材1の温度が200〜700℃である高温域での耐用を求める場合については、耐熱合金によりパッド部40を構成するのが効果的であり、耐熱合金としては、溶接肉盛などによって肉盛れる材料が望ましく、Fe基合金、Ni基合金、Co基合金、粒子分散強化合金のいずれか1つまたは2つ以上の組み合わせからなることが望ましい。なお、これらは熱軟化性の材料であるため、この温度域では充分にかつ過度でない軟化が生じ、シール性を確保することができる。
また、耐熱合金の耐用温度より高い500〜1500℃の温度域の金属板材1を搬送する場合には、セラミックスやグラファイトによりパッド部40を構成することが望ましく、セラミックスについては、焼成前の加工によって形状の造り込みが可能な、アルミナ、シリカ、クロミア、チタニア、ジルコニア、窒化珪素、炭化珪素、ホウ化チタン、ホウ化珪素のいずれか1つまたは2つ以上の組み合わせからなることが望ましい。なお、セラミックスは耐熱合金に対して熱による軟化がほとんど生じないが、この温度域では、被加熱対象物側の表面が十分に軟化して、シール性を確保することができる。
また、200〜500℃の温度域の金属板材1を搬送する場合には、経済的に有利な炭素鋼またはステンレス鋼をパッド部40に用いることが可能である。
シール材41としては、熱軟化性材料を用いることが望ましく、ガラス、金属、合金、膨張黒鉛のいずれか1つまたは2つ以上の組み合わせから構成することが望ましい。当該ガラス材料は、ソーダガラス(Na2O−CaO−SiO2系ガラス)、結晶化ガラス(ケイ酸塩ガラス、アルミノケイ酸塩ガラス、ホウ酸塩ガラス、ホウケイ酸塩ガラス、リンケイ酸塩ガラス)、石英ガラス、はんだガラス、結晶性はんだガラス、ランタンガラス、中性ガラス、鉛ガラス、含水リン酸塩ガラス、テルライトガラス、カルコゲナイドガラス、泡ガラスのいずれか1つまたは2つ以上の組み合わせであることが可能である。なお、パッド部40への固定は、金属板材1の保持、固定に支障のない強度で固定できるものであれば特に限定されないが、機械的な勘合、ネジ止め、ピン止め、摩擦による締結による固定が望ましい。また、溶射や塗布による方法も可能である。
また、高温で柔らかくなる金属または合金をシール材41に適用することも可能である。金属または合金は、鉄、コバルト、ニッケル、ベリリウム、マンガン、銅、金、銀、カルシウム、バリウム、アルミニウム、マグネシウム、ストロンチウム、亜鉛、アンチモン、錫、鉛のいずれか1つの金属または2つ以上の組み合わせからなる合金であることが望ましい。この場合におけるパッド部40への固定についても、金属板材1の保持、固定に支障のない強度で固定できるものであれば特に限定されないが、機械的な勘合、ネジ止め、ピン止め、摩擦による締結による固定が望ましい。また、溶射やメッキによる方法も可能である。
すなわち、吸引パッド37の取り付け位置やパッド部40の形状、大きさおよび材質の少なくとも1つを調整することにより、本発明に係る熱間プレス成形方法の一つ目の特徴、すなわち、金属板材1の所定の部位、例えば、図3(a)に示すように後加工(ピアスやトリム等)の必要な部位がパッド部40と接触するように金属板材1を吸着して搬送することができ、これによって図3(b)に示すようにパッド部40との接触部位の温度は接触抜熱によってその他の部位の温度と異なることから、図3(c)に示すようにパッド部40との接触部位とその他の部位とでプレス成形品の焼入れ硬さを異ならせることができ、当該部位における後加工を容易に行うことができる。
また、図12(d)に示すように、加工度の大きな部分、例えば、ドロー成形やフォーム成形に伴う伸びにより板厚が減少する部分において接触部位が形成されるように吸引パッド37の取り付け位置やパッド部40の形状・大きさ等を調整すれば、本発明に係る熱間プレス成形方法の4つ目の特徴、すなわち、熱間プレスによるドロー成形やフォーム成形を行うことができる。
例えば、図12(a)に示す形状の金属板材1を用いて、図12(b)に示す形状のプレス成形品60を得る場合、あらかじめ行う実験によって伸びにより板厚が減少する部分の位置、すなわち、加工度に応じた温度設定をすべき金属板材の位置を特定しておき、当該位置において接触部位が形成されるように、吸引パッド37の取り付け位置やパッド部40の形状、大きさおよび材質の少なくとも1つを調整して金属板材1を搬送すれば、当該接触部位の温度はパッド部40との接触抜熱によりその他の部位の温度より低下することから、接触部位の強度はその他の部位よりも上昇する。
したがって、プレス成形中にドロー成形とフォーム成形のいずれか一方又は両方を受ける部位がパッド部40と接触するように金属板材1を保持して搬送し、前記パッド部40と接触する部位の温度をドロー成形若しくはフォーム成形の加工度に応じた温度に設定してからプレス成形を開始すれば、図12(f)に示すように接触部位よりも強度の低い他の部分が伸びるので、被成形材たる金属板材1の局所的な減肉や破断を生ずることなく、熱間プレスによるドロー成形や曲率の厳しいフォーム成形を行うことができる。
伸びにより板厚が減少する部分の位置、すなわち、加工度に応じた温度設定をすべき金属板材の位置については、あらかじめ行う実験によって特定しておくことが可能である。したがって、あらかじめ行う実験によって特定しておいた加工度の高い部位に、例えば、図12(d)に示すような形態の温度分布を形成し、加工度の高い部位の温度を他の部位の温度よりも下げて強度を上げておくことにより、プレス成形を開始したときに図12(f)に示すように、当該強度を上げた部位よりも他の強度の低い部分が伸びるので、破断を防ぐことができる。
なお、図12(d)および図12(e)に示す温度調整領域64は、接触抜熱等によって当該領域の温度を調整したことを示すものであり、例えば、当該温度調整領域64の温度をその周辺領域よりも低く設定すれば、当該温度調整領域64における強度がその他の部分よりも上昇するので、プレス成形を開始したときに図12(f)に示すように、当該強度を上げた部位よりも他の強度の低い部分が伸びるので、破断を防ぐことができる。
また、プレス開始前に金属板材1に付与すべき温度分布の形態は図12(d)に示す形態に限定されるものではなく、プレス成形品60の加工度に応じた温度分布を形成することが望ましい。例えば、図12(b)に示すプレス成形品60においては、縦壁部62が最も加工度の大きな部位であるが、これに相当する金属板材の部位に、図12(e)に示すような形態の温度分布、すなわち、強度の高い部分と強度の低い部分とが交互に出現するような温度分布を形成しておけば、加工度の大きな部位、換言すれば伸びが生じる部位への負荷集中を防ぐことができ、破断を防ぐことができる。
なお、スカート部39へのパッド部40の取り付け構造、あるいはフレーム36への吸引パッド37の取り付け構造についても、固定に支障の無い強度で固定できるものであれば特に限定されるものではなく、機械的な勘合、ネジ止め、ピン止め等が望ましい。
具体的には、接触部位の温度を吸引パッドに設けた加熱手段により昇温して、金属板材各部の温度を均一にすることにより、成形品各部の焼入れ硬さを均一にすることができる一方、穴加工(ピアス)や切断加工(トリム)等の後加工が必要な部位、すなわち焼入れ硬さが不要な部位に対しては、接触部位の焼入れ開始温度を吸引パッドとの接触抜熱や吸引パッドに設けた冷却手段による冷却により下げておくことにより、焼入れ硬度を低下させることができる。また、金属板材の温度を成形品部位毎に異ならせてからプレス成形を開始すれば、成形品部位毎の焼入れ硬さが異なるプレス成形品を得ることができる。
また、パッド部40に加熱手段42と冷却手段43のいずれか一方又は両方を備えることにより、前記した熱間プレスによるドロー成形性やフォーム成形性をさらに向上させることができる。例えば、パッド部40との接触抜熱により接触部位の温度をドロー成形若しくはフォーム成形の加工度に応じた温度に設定する前記方法においては、接触抜熱による冷却のみを実現することができるので接触部位を過冷却して必要以上の強度を付与するおそれがあるが、パッド部40に加熱手段42を備えることにより、これを回避することができ、また接触部位の温度を任意に設定することも可能となる。また、パッド部40に冷却手段43を備えれば、冷却能率が向上するので冷却時間を短縮することができ、生産性も向上する。
加熱手段42としては、電熱ヒータ、ガスバーナ、誘導コイル等があり、これらのいずれか1つまたは2つ以上の組み合わせによって接触部位の温度を昇温させることが可能である。なお、ガスバーナについてはラジアント式が望ましい。また、冷却手段43としては、パッド部40内に水路を配して、常時通水することにより、接触部位を冷却することが可能である。
この上部クランププレート45および下部クランププレート46を構成する材料としては、高温に加熱した金属板材1あるいはその雰囲気温度に対し十分な熱間強度が得られるものであれば特に限定されないが、加工やライニングが容易である炭素鋼、ステンレス鋼、耐熱合金、サーメット、グラファイトおよびセラミックスのいずれか1つまたは2つ以上の組み合わせからなることが望ましい。
なお、爪部49とクランププレートとは一体成形としてもよいが、両者を分離できる構造とすることが望ましく、さらに好ましくは、クランププレートの任意の位置に爪部49を取り付けられる構造とすることが望ましい。このような構造にすれば、金属板材1と接触する部位である爪部49の取り付け位置を変更することにより、例えば、クランププレートに沿って爪部49をスライドさせることにより、金属板材1の所定の位置に接触部位を形成することが可能となる。また、材質、特に熱伝導率の異なる爪部49を用いると接触部位における抜熱効果を変化させることができる。
すなわち、爪部49の取り付け位置や爪部49の形状、大きさおよび材質の少なくとも1つを調整することにより、本発明に係る熱間プレス成形方法の一つ目の特徴、すなわち、図4(a)に示すように金属板材1の所定の部位、例えば、後加工(ピアスやトリム等)の必要な部位が爪部49と接触するように金属板材1を挟持して搬送することができ、これによって図4(b)に示すように爪部49との接触部位の温度は接触抜熱によってその他の部位の温度と異なることから、図4(c)に示すように爪部49との接触部位とその他の部位とでプレス成形品の焼入れ硬さを異ならせることができ、当該部位における後加工を容易に行うことができる。
また、加工度の大きな部分、例えば、ドロー成形やフォーム成形に伴う伸びにより板厚が減少する部分において接触部位が形成されるように爪部49の取り付け位置や爪部49の形状・大きさ等を調整すれば、本発明に係る熱間プレス成形方法の4つ目の特徴、すなわち、熱間プレスによるドロー成形やフォーム成形を行うことができる。
例えば、あらかじめ行う実験によって伸びにより板厚が減少する部分の位置、すなわち、加工度に応じた温度設定をすべき金属板材の位置を特定しておき、当該位置において接触部位が形成されるように、爪部49の取り付け位置や爪部49の形状、大きさおよび材質の少なくとも1つを調整して金属板材1を搬送すれば、当該接触部位の温度は爪部49との接触抜熱によりその他の部位の温度より低下することから、接触部位の強度はその他の部位よりも上昇する。
したがって、プレス成形中にドロー成形とフォーム成形のいずれか一方又は両方を受ける部位が爪部49と接触するように金属板材1を保持して搬送し、前記爪部49と接触する部位の温度をドロー成形若しくはフォーム成形の加工度に応じた温度に設定してからプレス成形を開始すれば、接触部位よりも強度の低い他の部分が伸びるので、被成形材たる金属板材1の局所的な減肉や破断を生ずることなく、熱間プレスによるドロー成形や曲率の厳しいフォーム成形を行うことができる。
また、加工度の大きな部分において強度の高い部分と強度の低い部分とが交互に出現するような温度分布を爪部49との接触抜熱により形成しておくことによっても、上記効果を得られることができる。
なお、クランププレートへの爪部49の取り付け構造についても、固定に支障の無い強度で固定できるものであれば特に限定されるものではなく、機械的な勘合、ネジ止め、ピン止め等が望ましい。
また、爪部49に加熱手段42と冷却手段43のいずれか一方又は両方を備えることにより、前記した熱間プレスによるドロー成形性やフォーム成形性をさらに向上させることができる。例えば、爪部49との接触抜熱により接触部位の温度をドロー成形若しくはフォーム成形の加工度に応じた温度に設定する前記方法においては、接触抜熱による冷却のみを実現することができるので接触部位を過冷却して必要以上の強度を付与するおそれがあるが、爪部49に加熱手段42を備えることにより、これを回避することができ、また接触部位の温度を任意に設定することも可能となる。また、爪部49に冷却手段43を備えれば、冷却能率が向上するので冷却時間を短縮することができ、生産性も向上する。
なお、加熱手段42としては、電熱ヒータ、ガスバーナ、誘導コイル等があり、これらのいずれか1つまたは2つ以上の組み合わせによって接触部位の温度を昇温させることが可能である。なお、ガスバーナについてはラジアント式が望ましい。また、冷却手段43としては、パッド部40内に水路を配して、常時通水することにより、接触部位を冷却することが可能である。
本発明に係る冷媒吐出機能を有する金型は、図6に示すように被成形材たる金属板材1に冷媒を吐出するための複数の冷媒吐出口12を表面に備え、内部には前記冷媒吐出口12と連通し、かつ、開閉弁14、流量調整弁15および圧力調整弁16の少なくとも1つを備えた冷媒供給管13を配している。
なお、図6はパンチ4の縦壁部に冷媒吐出口12を設けた例であるが、頂部に設けてもよいし、縦壁部と頂部の両方に設けてもよい。これは、板押さえ6に冷媒吐出口12を設ける場合についても同様である。一方、上型であるダイス3やパッド5に冷媒吐出口12を設ける場合には、底部に設けてもよいし、縦壁部と底部の両方に設けてもよい。
また、冷媒供給管13は冷媒吐出口12と連通していれば冷媒吐出機能を果たすため、冷媒吐出口12や冷媒供給管13を金型に穿孔する代わりに、金型内部から外表面に貫通する気孔を有する多孔質金属に冷媒供給管13を接続してもよい。なお、この場合には、肉厚方向に貫通する直径100μm〜1mm、ピッチ100μm〜10mmの孔を複数有する多孔質金属を使用することが望ましい。例えば、図6に示す構成のパンチにおいて、中子20をダイス鋼とし、パンチ4を多孔質金属とすれば、微細でピッチの小さな冷媒吐出口12および冷媒供給管13を形成することができる。なお、このような多孔質金属は、粉末を成形後に焼結するか、金属を溶融させた後、温度制御により凝固組織の方向を一定にする一方向凝固によって製造することができる。
なお、本発明に係る熱間プレス成形方法および装置においては、このような金型で冷媒吐出をさせてプレス成形加工を行うが、冷媒を使用するほど急冷を必要とせず、加工が厳しくなく、金型との接触による抜熱で充分な冷却速度が取れる場合、冷媒吐出をせずにプレス成形加工を行っても良い。
一般に冷媒による冷却能力については熱伝達係数αを用いて表すことができ、当該熱伝達係数α、冷媒の吐出量Q、吐出流速U、吐出圧力Pおよび吐出時間Tとの関係は以下の式により表すことができる。なお、f、g、hは、それぞれ関数を表し、例えば、熱伝達係数αは冷媒の吐出量Qの関数として成立することを示す。
熱伝達係数α =f(冷媒の吐出量Q) ・・・ (1)
冷媒の吐出量Q =g(吐出流速U、吐出時間T) ・・・ (2)
吐出流速U =h(吐出圧力P) ・・・ (3)
なお、前記弁は応答性を良好に保つために冷媒吐出口12に近い金型内部に内蔵してもよいが、弁の調整を行うたびに金型を分解する手間を要するため、ダイセット11に設置することが望ましい。
さらには、柱状のプレス製品を成形する場合には、パンチ押し込み量が同一となる位置関係にある複数の冷媒吐出口からの冷媒吐出をグループ化してグループ毎に制御すれば、成形性を向上させることが可能である。
さらには、冷媒回収管18から真空発生装置等の吸引手段により冷媒を回収することにより冷却効率を向上させることができる。これは、気化しきれなかった冷媒は、金型の成形面に沿って、例えば、後述する突起部19の底部に付着するか溜まって当該付着部等における冷却に寄与するが、付着したあるいは溜まったままの状態であると、新たに冷媒を吐出したときに当該付着部等における熱伝達係数αが冷媒が残存していないときと比較すると低下してしまうことに起因するものである。このため、冷媒吐出後においては、真空発生装置等の吸引手段により気化しきれなかった冷媒を回収することが望ましく、これにより冷却効率および熱伝達係数αの制御性を向上させることができる。
なお、冷媒回収口17および冷媒回収管18は、前記した冷媒吐出口12や冷媒供給管13の形成方法と同様の方法により形成することができる。また、冷媒回収口17はパンチ4の頂部に設けてもよいし、縦壁部と頂部の両方に設けてもよい。これは、板押さえ6に冷媒回収口17を設ける場合についても同様である。一方、上型であるダイス3やパッド5に冷媒回収口17を設ける場合には、底部に設けてもよいし、縦壁部と底部の両方に設けてもよいが、縦壁部に設けた方が被成形材に吐出した冷媒を効率よく回収することができる。
なお、図7および8に例示した突起部19は、金型の成形面に所定の間隔で設けた円柱状の形状であるが、水平断面の形状は、円状、多角形状、星型形状のいずれかであることが望ましく、垂直断面の形状は、長方形又は台形であることが望ましく、半球状でもよい。
なお、前記突起部19は、成形面の表面にそのまま形成してもよいが、成形条件によっては、突起部の形状が成形品に転写されて成形品の表面性状を害することがあるので、突起部周囲の金型部分を除去して窪みを形成するか、図9に示すように突起部形成位置における金型部分に突起部の高さと一致する深さの窪みを形成し、当該窪みに突起部19を形成することが望ましい。
突起部の水平断面形状が円状である場合には突起部19の直径、多角形状又は星型形状である場合には突起部の外接円の直径が10μm〜5mmであることが望ましい。突起部の直径又は外接円の直径が10μm未満では突起部の摩耗が大きく、長期間にわたり効果を発揮することができず、5mmを超える場合は均一に冷却することができない。
突起部19の高さは、5μm〜1mmであることが望ましい。突起部の高さが5μm未満では被成形材との隙間が小さすぎるため、金型と被成形材の間に冷媒を循環させることが困難であり、1mmを越す場合は隙間が過大となるため、加工量が増え経済的でなくなる。
化学エッチングは、可視光硬化型感光性樹脂を金型表面に塗布、乾燥した後、可視光を遮断するマスクで被覆して可視光を照射し、照射部を硬化させ、硬化部以外の樹脂を有機溶剤により除去する方法である。例えば、塩化ナトリウム水溶液等のエッチング液に金型表面を1〜30分程度浸漬し、エッチングすればよい。突起部の直径又はピッチは可視光を遮断するマスクの形状によって適宜選択することが可能であり、突起部の高さはエッチング時間によって適宜調整することができる。
放電加工は、目的とする突起部形状を反転させた凹部を表面パターンとして有する銅電極を金型に対向して設置し、電流ピーク値、パルス幅を変え、直流パルス電流を流す加工方法である。好ましい電流値は2〜100A、パルス幅は2〜1000μsecであり、金型材質、及び所望の突起部形状に応じて、適宜調整すればよい。
めっき法の場合、半球状突起部の直径を10μm以上とするため、めっきの厚みを10μm以上とすることが好ましく、上限は剥離を防止するため80μm以下とすることが望ましい。めっき層は、アルカリ脱脂し、めっき液中で金型を陽極として電解処理する電解エッチングを行った後、所定の浴温、電流密度で形成することができる。なお、クロムめっきの場合はクロムめっき液中で、電流密度1〜200A/dm2程度、浴温30〜60℃程度、NiWめっきの場合は、NiWめっき液中、電流密度1〜100A/dm2程度、浴温30〜80℃程度の条件にすれば、10〜80μmの厚みのめっき層を設けることができる。なお、半球状突起形状を有するめっき層を形成するには、例えば、電流密度を段階的に増加させた後、一定電流密度でめっきすればよい。
当該制御装置23としては、特に限定されるものではなく、前記冷媒供給管13に備えた開閉弁14、流量調整弁15および圧力調整弁16の開閉を制御できるものであれば、機械的、電子的手段を問わず、あるいはこれらを複合させた手段であってもよい。例えば、これらの弁機構にリレースイッチを採用し、当該リレースイッチの開閉(オン・オフ)を計算機(コンピュータ)により制御することにより、前記冷媒供給管13と連通する冷媒吐出口12からの冷媒吐出、結果的には当該冷媒吐出口12における熱伝達係数αを調整することができる。
また、柱状のプレス製品を成形する場合には、パンチ押し込み量が同一となる位置関係にある複数の冷媒吐出口12における冷媒吐出を同一にすることにより成形性が向上するので、この場合には、パンチ押し込み量が同一となる位置関係にある複数の冷媒吐出口12と連通する冷媒供給管13の開閉弁等の制御を同一にすることが望ましい。
なお、冷媒は、液体でも気体でもよい。冷媒として気体を用いる場合、熱伝達係数が低いので、比較的加工の厳しくない場合や、マルテンサイト変態、ベイナイト変態させない場合に限られる。また、表面の酸化を避けるために活性の低い窒素、CO2、不活性ガスを用いることが望ましい。さらに、冷媒が気体である場合は、成形品や熱間プレス成形装置に付着して残ることがないので、不必要な汚れやさびなどを生じさせることが少ないという効果がある。
このため、本発明に係る金属板材の熱処理方法においても、本発明に係る熱間プレス成形方法と同様に、金属板材1を搬送しながらに積極的に金属板材各部の温度制御を行う。具体的には、図10に示すように、本発明に係る熱間プレス成形装置2を構成する搬送装置30を用いて、金属板材の所定の部位、例えば、焼入れ処理後に機械加工を受ける部位が搬送装置30のハンド部35と接触するように金属板材1を保持して搬送する。
また、従来方法によって後加工の問題を解決するためには、搬送後において金属板材の焼入れ硬さを部分的に変更するための処理工程が必要となるが、搬送しながらに積極的に金属板材の温度制御を行うので、当該処理工程を省略できるか処理時間を短縮することができ、生産性を向上させることができる。
さらには、加熱手段42と冷却手段43のいずれか一方又は両方を備える吸引パッドまたはクランプによって前記ハンド部35を構成すれば、接触部位の温度を、接触抜熱若しくは冷却手段43による冷却と加熱手段42による昇温のいずれか一方または両方によって制御することができるので、接触部位の焼入れ硬さを任意に設定することができる。
金属板材1を加熱する方法としては、特に限定されるものではなく、金属板材1をA1変態点以上に加熱できる方法であれば、電気炉、ガス炉での加熱や火炎加熱、通電加熱、高周波加熱、誘導加熱等のいずれの方法でもよい。
実施例の条件および結果を表1に示す。本実施例は、加熱炉で均一に過熱した金属板材を図2および3に示す吸引パッドを備えた搬送装置によって搬送し、図5に記載した熱間プレス成形装置2を用いて、図11(b)に示す円筒絞り成形品を成形した例を示すものであり、被成形材には加熱炉の中で900℃(保定時間5分)に加熱した図11(a)に示す板厚1.6mm、半径140mmの0.2%C鋼板(初期破断強度500MPa相当)を用いた。なお、プレス成形品60は頂部61、縦壁部62およびフランジ部63とから構成され、縦壁部62の高さは20mmである。
また、発明例2〜4の金型成形面には、面積率が50%、高さが1mm、直径が2mm、水平断面形状が円状で垂直断面形状が長方形の突起部19を形成している。また、パンチ4は直径70mmを使用し、成形速度は10mm/secとした。
冷媒吐出能力については、熱伝達係数αが1000と3000kcal/m2hr℃のいずれかになるように弁を調整している。なお、冷媒吐出を行わない場合の熱伝達係数αについては、金型成形面に突起部19を形成しない場合は1000kcal/m2hr℃、形成した場合は200kcal/m2hr℃である。
鋼板各部の温度測定には放射温度計を使用し、図11(a)のA〜C部を測定した直後にプレス成形を開始した。なお、表1にA部以外の温度は記載していないが、B、C部の温度はプレス成形開始直前においては800℃であった。
しかし、比較例1については、金型成形面に突起部を形成せず、また、本発明に係る特徴のひとつである冷媒吐出を行わないので、下死点保持時間が長く、500個製作時の合格率も80%を満たすことができず、成形性を満足することはできなかった。
これに対して、搬送段階において吸引パッドとの接触抜熱によりA部温度を600℃に設定した発明例1については、下死点における冷媒吐出を行わないにも拘らず、成形性ならびに強度を満足するプレス成形品を得ることができた。
また、搬送段階において吸引パッドとの接触抜熱によりA部温度を600℃に設定し、下死点における冷媒吐出を行った発明例2については下死点保持時間が短く、成形性、強度ならびに生産性を満足できることを確認することができた。
さらに、発明例3は縦壁部とそれ以外で、冷却速度を異なるように制御したものであるが、この方法によっても成形品各部で強度の異なるプレス成形品60を得ることができることを確認することができた。
同様に、発明例4は搬送段階における吸引パッドとの接触抜熱により冷却開始温度を異なるように制御したものであるが、この方法によっても成形品各部で強度の異なるプレス成形品60を得ることができることを確認することができた。
3 ダイス 4 パンチ
5 パッド 6 板押さえ
7 ダイベース(上型) 8 ダイベース(下型)
9 ダイスホルダー 10 パンチホルダー
11 ダイセット 12 冷媒吐出口
13 冷媒供給管 14 開閉弁
15 流量調整弁 16 圧力調整弁
17 冷媒回収口 18 冷媒回収管
19 突起部 20 中子
21 シール 22 金型全体冷却部
23 制御装置 30 搬送装置
31 台座 32 アーム
33 真空発生装置 34 真空ホース
35 ハンド部 36 フレーム
37 吸引パッド 38 導管
39 スカート部 40 パッド部
41 シール材 42 加熱手段
43 冷却手段 44 クランプ
45 上部クランププレート 46 下部クランププレート
47 エアシリンダ 48 ガイド
49 爪部 50 接触部位
51 加熱装置 52 冷却装置
53 冷却液 54 シール材を固定するねじ
55 真空または減圧される空間 60 プレス成形品
61 頂部 62 縦壁部
63 フランジ部 64 温度調整領域
Claims (5)
- 加熱装置で加熱した金属板材を、加熱手段と冷却手段のいずれか一方又は両方を備える吸引パッドまたはクランプにより構成したハンド部を備える搬送装置によってプレス成形装置を構成する金型まで搬送し、前記金型を用いて前記金属板材を成形する熱間プレス成形方法であって、
金属板材の所定の部位が前記ハンド部と接触するように前記吸引パッドの吸着効果によって又は前記クランプで挟持して金属板材を搬送する際に、前記ハンド部と接触する部位の温度を、接触抜熱若しくは冷却手段による冷却と加熱手段による昇温のいずれか一方または両方によってその他の部位の温度と異ならせ、
搬送した金属板材を金型にセットした後には、成形前、成形中、成形後の少なくとも成形中に、金型表面に設けた複数の冷媒吐出口から液体からなる冷媒を金属板材に吐出することにより、または、前記金属板材に対する冷媒吐出と当該吐出した冷媒を金型表面に設けた複数の冷媒回収口から順次回収することにより、金属板材各部の焼入れ開始温度と冷却速度のいずれか一方又は両方を任意に制御して、これによりプレス成形品各部の焼入れ硬さを任意に設定することを特徴とする熱間プレス成形方法。 - 前記冷媒吐出を、冷媒の吐出量、吐出流速、吐出圧力、吐出時間、吐出タイミングから選択される1又は2以上のパラメータを制御し、かつ、各冷媒吐出口毎にまたは複数の冷媒吐出口からの冷媒吐出をグループ化してグループ毎に制御することを特徴とする請求項1に記載の熱間プレス成形方法。
- 前記金属板材の所定の部位が、プレス成形後に機械加工を受ける部位、またはプレス成形中にドロー成形とフォーム成形のいずれか一方又は両方を受ける部位であり、前記ハンド部と接触する部位の温度を、機械加工を受ける部位の強度に応じた温度、またはドロー成形若しくはフォーム成形の加工度に応じた温度に設定することを特徴とする請求項1または2に記載の熱間プレス成形方法。
- 前記金属板材が、鋼板であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱間プレス成形方法。
- 前記鋼板が、マルテンサイト変態またはベイナイト変態をする鋼板であることを特徴とする請求項4に記載の熱間プレス成形方法。
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