JP4542258B2 - 超音波診断装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は超音波診断装置に関し、特に超音波画像に含まれるノイズの低減に関する。
【0002】
【従来の技術及びその課題】
超音波診断装置は生体への超音波の送受波により超音波画像を表示する装置である。超音波画像としては、二次元白黒断層画像であるBモード画像が周知である。かかるBモード画像内には、生体内の構造物とは関係のない超音波波面の干渉によって生じる粒状模様のスペックルというアーチファクトが含まれる。そのようなノイズはBモード画像の観察において障害となる無用なデータである。なお、そのようなスペックルあるいはアーチファクトはMモード画像などの他の超音波画像においても認められる。
【0003】
本発明は、上記従来の課題に鑑みなされたものであり、その目的は、超音波画像の画質を向上することにある。本発明の他の目的は、受信信号自体を利用してそれに含まれるノイズ成分を特定することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
(1)上記目的を達成するために、本発明は、超音波を送受波し、受信信号を出力する送受波手段と、前記受信信号から、第1周波数帯域の第1信号成分及び第2周波数帯域の第2信号成分を抽出する成分抽出手段と、前記第1信号成分から第1包絡線データを求める第1検波手段と、前記第2信号成分から第2包絡線データを求める第2検波手段と、前記第1包絡線データ及び前記第2包絡線データの相互相関演算を行って相互相関値を演算する相互相関演算手段と、前記相互相関値に応じて受信信号に対するフィルタリングを行うフィルタ手段と、を含むことを特徴とする。
【0005】
上記構成によれば、検波後のエンベロープ信号としての第1包絡線データと第2包絡線データについて相互相関演算が実行され、その相互相関値に基づいて受信信号(エコーデータあるいは画像データ)に対するフィルタリングがなされる。これは生体組織からの真のエコーの場合には相互相関値が比較的大きくなり、ノイズの場合には相互相関値が比較的小さくなるという傾向を利用したものである。よって、本発明によれば、ノイズを選択的に除去、抑圧できるので、超音波画像の画質を高めることが可能となる。フィルタリングは一次元的に行うようにしてもよいが、二次元的に行うようにしてもよい。
【0006】
望ましくは、前記第1包絡線データ及び前記第2包絡線データは時間軸上のデータであり、前記相互相関演算手段は時間軸上において第1包絡線データ及び第2包絡線データの相互相関演算を実行する。
【0007】
望ましくは、前記第1包絡線データ及び前記第2包絡線データは周波数軸上のデータであり、前記相互相関演算手段は周波数軸上において第1包絡線データ及び第2包絡線データの相互相関演算を実行する。
【0008】
望ましくは、前記フィルタ手段はローパスフィルタであり、前記相互相関値が大きい場合には前記ローパスフィルタのカットオフ周波数を高く設定し、前記相互相関値が小さい場合には前記ローパスフィルタのカットオフ周波数を低く設定するフィルタ特性設定手段が設けられる。この構成によれば、真のエコーデータに対するフィルタリングをできるだけ回避してノイズに対して選択的かつ能率的にフィルタリングを行える。もちろん、カットオフ周波数の可変の他、通過帯域の可変やゲイン調整を行うのもフィルタリングの一態様である。
【0009】
(2)また、上記目的を達成するために、本発明は、超音波を送受波し、受信信号を出力する送受波手段と、前記受信信号から第1周波数帯域の第1信号成分及び第2周波数帯域の第2信号成分を抽出する成分抽出手段と、前記第1信号成分から第1包絡線データを求める第1検波手段と、前記第2信号成分から第2包絡線データを求める第2検波手段と、信号時系列に沿って一次元のウインドをスキャンさせながら、各ウインド位置において切り出される第1包絡線データ及び第2包絡線データの相互相関演算を行って相互相関値を演算する相互相関演算手段と、前記相互相関値に応じて受信信号に対するフィルタリングを行うフィルタ手段と、を含むことを特徴とする。
【0010】
(3)また、上記目的を達成するために、本発明は、超音波ビームを走査し、各ビーム位置ごとに受信信号を出力する送受波手段と、前記受信信号から第1周波数帯域の第1信号成分及び第2周波数帯域の第2信号成分を抽出する成分抽出手段と、前記第1信号成分から第1包絡線データを求める第1検波手段と、前記第2信号成分から第2包絡線データを求める第2検波手段と、超音波ビーム上の深さ方向と超音波ビームの走査方向とによって定義される二次元座標系上において、二次元のウインドをスキャンさせながら、各ウインド位置において切り出される第1包絡線データ及び第2包絡線データの相互相関演算を行って相互相関値を演算する相互相関演算手段と、前記相互相関値に応じて受信信号に対するフィルタリングを行うフィルタ手段と、を含むことを特徴とする。この構成によれば、二次元的に相関演算を行えるので、よりノイズ判定精度を高めることができる。
【0011】
(4)以下に、本発明の原理について説明する。超音波の送受波により得られた受信信号に含まれるノイズ(特にスペックル)を特定するため、その受信信号から互いに異なる複数の(望ましくは2つの)周波数帯域の信号成分が抽出される。
【0012】
図1には、受信信号のスペクトル300が示されており、符号302はその全体域を抽出する場合のバンドバスフィルタの通過帯域特性を示し、符号304及び符号306は、それぞれ上記のように2つの周波数帯域の信号成分を抽出するためのバンドパスフィルタの通過帯域を示している。符号304で示す通過帯域特性は受信信号のスペクトル300における低域側に設定され、符号306で示す通過帯域特性は受信信号のスペクトル300における高域側に設定されている。それらの通過帯域特性は実質的に分離され、一部の裾が相互にオーバーラップしている。もちろん、全体として2つの通過帯域特性に違いがあれば、各種の通過帯域特性を設定することが可能である。
【0013】
さて、それぞれの周波数帯域の信号成分の包絡線データ相互間において相関演算を実行すると、生体内の構造体からの真のエコー成分の包絡線の形状は互いに似ているため相互相関値が大きくなり、一方、ノイズの包絡線の形状はランダムであるために相互相関値が小さくなる。よって、そのような相互相関値の大きさから、個々の受信信号が真のエコー成分(あるいはノイズ)である確率を求めることができ、あるいは、真のエコー成分かノイズかの判別を行うことができる。
【0014】
より詳しくは、、例えば、まず受信信号から2つの周波数帯域の信号成分(データ列)が抽出され、各信号成分が検波されて包絡線(エンベロープ)データ(データ列)とされ、それぞれのデータ列が1ライン分(あるいは1フレーム分)を単位としてメモリに個別的に格納される。そして、それぞれのデータ列から、所定のウインド(図2参照)内のN個のデータからなる2組のデータ列(xi,yi)(但し、i=1,2,・・・,N)が切り出され、そのような2組のデータ列(xi,yi)について相互相関演算がなされる。ちなみに、図2には、超音波ビーム308を電子走査することにより形成される走査面306が示され、上記のデータ列の切り出しは、各超音波ビーム308上において一次元のウインド310を設定することに相当する。なお、信号成分の抽出をデータ列の切り出し後に行うようにしてもよい。
【0015】
相関演算は、相互相関値をRxyとして以下の数式によって表される。
【0016】
【数1】
この相互相関値Rxyは、互いのデータ列がまったく同一であれば1となり、まったく異なれば0となる。つまり、違いが大きい程、相互相関値は小さくなる。ここで、スペックル(ノイズ)の場合には、相互相関値は非常に小さくなる。
一方、生体内の構造体からのエコー(真のエコー)の場合には、相互相関値は大きくなる。よって、相互相関値を基準としてスペックルか真のエコーかを弁別することが可能であり、更に、その相互相関値にフィルタ特性を連動させれば、スペックルに対して選択的に抑圧処理を行うことができる。例えば、真のエコーである場合には、当該データが通過するローパスフィルタ(LPF)のカットオフ周波数を高くして当該データをそのまま通過させ、一方、スペックルである場合には、LPFのカットオフ周波数を低くして当該データが抑圧、除去されるようにする。
【0017】
あるウインド位置において上記相互相関演算が実行されると、ウインド位置がシフトされて上記同様の相互相関演算が実行される。そして、これが繰り返されると、全データに対してノイズ低減処理を行える。
【0018】
上記のウインドは、深さ方向(超音波ビーム方向)に沿った1次元のウインドであったが、図3に示すように、二次元のウインドであってもよい。図3において、Jは深さ方向(超音波ビーム方向)、Iは超音波ビームの走査方向あるいはBモード画像の水平方向に対応している。二次元マトリクス312上において、二次元のウインド314がラスタースキャンされ、各スキャン位置においてデータ列が切り出される。ウインド314のサイズはWI×WJであり、その場合、以下の演算式によって相互相関値Rxyが求められる。
【0019】
【数2】
上記の構成を採用する場合、受信信号を処理するフィルタ手段として、二次元のLPFを利用するようにしてもよい。相互相関演算は時間軸上の他、周波数軸上で行うようにしてもよい。
【0020】
なお、受信信号スペクトルは、周波数依存減衰などの影響により、反射点の深さに依存して変化するため、それに応じて図1の通過帯域特性304及び306を動的に変化させるようにするのが望ましい。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。
【0022】
図4には、本発明に係る超音波診断装置の好適な実施形態が示されており、図4はその全体構成を示すブロック図である。
【0023】
図4において、アレイ振動子10は、図示されていない超音波探触子内に設けられるものであり、そのアレイ振動子は複数の振動素子によって構成される。そのアレイ振動子上において超音波ビームが電子走査され、これによって図2に示したような走査面306が形成される。
【0024】
送信器12はいわゆる送信ビームフォーマーとして機能するものであり、アレイ振動子を構成する複数の振動素子に対して送信信号を供給する回路である。受信器13は、いわゆる受信ビームフォーマーとして機能するものであり、アレイ振動子を構成する複数の振動素子からの複数の受信信号に対して整相加算処理を実行し、整相加算後の受信信号を出力する回路である。この受信信号は本実施形態において3つの信号処理部14,16,18に並列的に入力されている。
【0025】
まず、信号処理部14について説明すると、この信号処理部14は従来の超音波診断装置においても一般的に設けられているものであり、受信信号に対して直交検波などの検波処理を実行する検波器20と、その検波後の受信信号(複素信号)に対して振幅演算を実行する振幅演算器22と、演算された振幅値すなわちエコーデータを超音波ビーム1本分ごとに格納するラインメモリ部24と、で構成されている。検波器20の具体的な構成例については後に図5及び図6を用いて説明する。また、振幅演算器22については後に図7を用いて説明する。ラインメモリ部24は、本実施形態において2つのラインメモリによって構成され、いわゆるデータの書き込み及び読み出しに関してそれらの2つのメモリを交互に使用するピンポン動作を行わせている。
【0026】
フィルタ42は本実施形態においてローパスフィルタを構成しており、カットオフ周波数が後に詳述する相互相関値によって動的に設定される。フィルタ42から出力されたデータはスキャン変換器44に入力され、ここで計測座標系から表示座標系への座標変換などの処理を経た後、そのデータが表示器46に表示される。具体的には、表示器46にはBモード画像などの超音波画像が表示される。ちなみに、スキャン変換器44は例えばデジタルスキャンコンバータなどによって構成される。
【0027】
次に、信号処理部16,18について説明する。これらの信号処理部16,18は上述した信号処理部14と同様の構成を有しており、すなわち検波器26,28と、振幅演算器30,32と、ラインメモリ部34,36と、によって構成されている。ただし、検波器20,26,28はそれぞれ互いに異なる通過帯域特性をもったフィルタを有している。具体的に説明すると、検波器20は、図1において符号302で示した全周波数帯域をカバーする通過帯域特性をもったフィルタを有している。検波器26は図1において符号304で示した低域側の通過帯域特性をもったフィルタを備えている。また、検波器28は図1において符号306で示した高域側の通過帯域特性をもったフィルタを備えている。各検波器はRF信号を包絡線信号に変換する機能を有する。
【0028】
したがって、振幅演算器22では、受信信号の全周波数帯域における振幅が演算され、一方、振幅演算器30においては低域側の信号成分の振幅が演算され、振幅演算器32においては高域側の信号成分の振幅が演算されることになる。ラインメモリ部34,36には以上のようにして演算された振幅値をもったデータ列が超音波ビーム1本分ごとに格納される。
【0029】
そして、本実施形態においては、ラインメモリ部34,36から、上述したようにN個のデータからなるデータ列が抽出され、それらの2組のデータ列に対して相互相関器40において相互相関演算が実行される。ここで、ラインメモリ部34,36からのN個のデータの切り出しは上述したように所定のウインドの設定によってなされており、そのウインドをデータ列方向に沿ってスキャンすることにより、各ウインド位置において相互相関演算が実行される。
【0030】
上述の説明から理解されるように、図4に示す相互相関器40は、時間軸上において2組のデータ列間で相互相関演算を実行するものであり、その相互相関の演算式としては上述した式(1)などの数式が用いられる。その相互相関演算結果である相互相関値はフィルタ42に出力され、その相互相関値にフィルタ42におけるフィルタ特性が適応的に設定されることになる。これにより、ある深さにおけるエコーデータに対して、相互相関値に応じてフィルタリングを行うことができ、そのエコーデータがノイズであればそのフィルタリングによって当該ノイズを効果的に除去・低減することが可能となる。
【0031】
図5には、図4に示した検波器20,26,28の具体的な構成例が示されている。この図5に示す構成例はいわゆる直交検波器を示すものである。
【0032】
2つのミキサ70,72の一方の入力端子には受信信号が入力され、他方の入力端子には参照信号が入力されている。ミキサ72はπ/2位相シフタ68を介して位相角が90度ずれた参照信号が入力されており、一方、ミキサ72は入力される参照信号がそのまま入力されている。このような2つの参照信号の位相関係によって直交検波を行うことができ、その直交検波後の信号のうちベースバンド領域の信号成分が低域通過フィルタ74,76によって抽出されている。この場合において、図4に示した各検波器20,26,28ごとに低域通過フィルタ74,76の通過帯域特性が設定されており、すなわちそれぞれの通過帯域特性は図1において符号302,304,306で示したものが設定されている。
【0033】
図6には、検波器20,26,28の他の構成例が示されており、この図6に示す構成例はいわゆる直交サンプリング回路である。帯域通過フィルタ78には受信信号が入力され、その帯域通過フィルタ78を通過した受信信号がサンプリング回路82,84に並列的に入力される。ここで、サンプリング回路82は、サンプリングクロックに従ってサンプリングを行うものであり、サンプリング84はπ/2シフタ80を介して90度位相がずれたサンプリングクロックに従ってサンプリングを実行している。このような直交サンプリング方式により周知のように直交検波と同様の検波信号を得ることが可能となる。もちろん、検波器20,26,28の相互間においては帯域通過フィルタ78の帯域通過特性としてそれぞれ異なる特性が設定されており、具体的にはそれぞれの通過帯域特性として図1において符号302,304,306で示したものが設定されている。
【0034】
図7には、振幅演算器22,30,32の構成例が示されている。絶対値演算器86は、検波器20から出力される複素信号における実数部の二乗及び虚数部の二乗を加算し、その加算結果の平方根をとることによって絶対値を求めている。これによってエコーデータの振幅を演算することが可能となる。
【0035】
その振幅を表すデータは対数変換器88に入力され、その対数変換器88において対数圧縮処理がなされる。そして、その対数圧縮後のデータに対して加算器90に係数βが加算され、また乗算器92において係数αが乗算される。ここで加算器90はゲイン調整回路として機能し、乗算器92はコントラスト回路として機能するものである。乗算器92から出力されるデータはローパスフィルタ94に入力され、ローパスフィルタ94直後のデシメータ96によるリサンプリング処理のために帯域が制限され、ローパスフィルタ94から出力されたデータがデシメータ96に入力され、そのデシメータ96において表示ピクセルレートに従ったリサンプリング処理が実行される。
【0036】
図8には、ラインメモリ部34,36に格納されるデータ列が概念的に示されている。ここで符号304Aはラインメモリ部34に格納されたデータ列であり、このデータ列は図1において通過帯域特性304によって抽出された信号成分に相当する。また図8において符号306Aは、ラインメモリ部36に格納されたデータ列を示しており、これは図1において通過帯域特性306によって抽出された信号成分に相当する。
【0037】
上述したように、このような2つのデータ列からウインドによって2組のデータ列が部分的に切り出され、そのウインド内のデータ列に対して相互相関演算が実行される。
【0038】
図9には、図4に示したフィルタ42の構成例が示されている。
【0039】
フィルタ特性選択テーブル98には、相互相関値が入力されており、その相互相関値に応じたフィルタ特性を表す選択信号がフィルタ係数テーブル100に出力される。フィルタ係数テーブル100は例えば図10に示すようなテーブル内容を有しており、具体的には、ローパスフィルタとしての当該フィルタ42のカットオフ周波数を相互相関値に応じて変化させるために、複数のフィルタ特性に対応付けられたフィルタ係数列が格納されている。上記のフィルタ特性の選択信号が入力されると、フィルタ係数テーブル100から当該選択信号によって選択選択されるフィルタ特性を表すフィルタ係数列a1〜anが出力され、それぞれのフィルタ係数がそれに対応する乗算器104−1〜104−nの一方の入力端子に入力される。受信信号は直列接続された複数のディレイライン102−1〜102−nに順番に入力されており、それぞれのディレイラインの前後及び中間のポイントから出力されたデータが各乗算器104−1〜104−nの他方の入力端子に入力されている。そして、各乗算器104−1〜104−nはそれぞれのデータに対してフィルタ係数を乗算し、その乗算結果が加算器106において加算されている。
【0040】
図11には、相互相関値とローパスフィルタのカットオフ周波数との関係が示されており、本実施形態においては相互相関値が小さくなるほどカットオフ周波数が低められており、一方、相互相関値が高くなるほどカットオフ周波数が高められている。図においてはS字関数のような周波数変化特性が示されている。
【0041】
図12には、他の実施形態に係る超音波診断装置の全体構成がブロック図として示されている。なお、図4に示した構成と同様の構成には同一符号を付しその説明を省略する。
【0042】
この図12に示す構成例においては各信号処理部50,52,54において振幅演算器22,30,32の後段にスキャン変換器56,60,62及びフレームメモリ部58,64,66が設けられている。ここで、各スキャン変換器56,60,62はそれぞれ図4に示したスキャン変換器44に相当するものであり、すなわちスキャン変換器56,60,62において送受波座標系から表示座標系への座標変換がなされる。そして、そのデータはそれぞれフレームメモリ部58,64,66に1フレームごとに格納されることになる。
【0043】
このようにフレームメモリ部64,66へのデータの格納がなされると図3に示した二次元のウインド314が利用され、そのウインド314をラスタースキャンさせながら各ウインド位置においてデータ列が抽出され、相互相関器40においては2組の二次元のデータ列の相互相関値が演算される。そしてその相関値に従って、フィルタ42がフレームメモリ部58から出力されるデータに対してフィルタリングを実行している。
【0044】
図13には、図4の相互相関器40の周波数軸上での処理構成例を示す。この構成例では、2つの一次元データ列に対してそれぞれFFT回路110,112においてFFT演算がなされ、これによりそれらのデータ列が周波数軸上のデータ列に変換される。それらのデータ列は乗算器113で乗算され、その乗算結果(相互相関値に相当)がIFFT回路114に入力され、そこで逆FFT演算が実行される。
【0045】
図14には図12の相互相関器40の周波数軸上での処理構成例を示す。この構成例では、2つの二次元データ列に対してそれぞれFFT回路128,130において二次元のFFT演算がなされ、これによりそれらのデータ列が周波数軸上のデータ列に変換される。それらのデータ列は乗算器131で乗算され、その乗算結果(相互相関値に相当)が二次元IFFT回路132に入力され、そこで二次元の逆FFT演算が実行される。
【0046】
以上のように、上記の各実施形態によれば、受信信号における2つの周波数成分から相互相関値を求め、その相互相関値に応じて受信信号に対するフィルタリングを実行することによりノイズ(特にスペックル)に対して効果的な除去処理を行うことが可能となる。上記の実施形態においては、2つの通過帯域特性を設定したが、それぞれの通過帯域特性が部分的にオーバーラップしていてもよい。
【0047】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、超音波画像内におけるノイズを効果的に低減して超音波画像の画質を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 受信信号のスペクトルと通過帯域特性の関係を示す図である。
【図2】 走査面及び一次元のウインドを示す図である。
【図3】 二次元のウインドを示す図である。
【図4】 実施形態に係る超音波診断装置の全体構成を示すブロック図である。
【図5】 検波器の構成例を示すブロック図である。
【図6】 検波器の他の構成例を示すブロック図である。
【図7】 振幅演算器の構成例を示すブロック図である。
【図8】 ラインメモリ部に格納されるデータ列を示す図である。
【図9】 フィルタの構成例を示すブロック図である。
【図10】 フィルタ係数テーブルの構成例を示す概念図である。
【図11】 相互相関値とカットオフ周波数との関係を示す図である。
【図12】 他の実施形態に係る超音波診断装置の全体構成を示すブロック図である。
【図13】 周波数軸上での一次元相互相関処理の構成例を示す図である。
【図14】 周波数軸上での二次元相互相関処理の構成例を示す図である。
【符号の説明】
10 アレイ振動子、12 送信器、13 受信器、14,16,18 信号処理部、20,26,28 検波器、22,30,32 振幅演算器、24,34,36 ラインメモリ部、40 相互相関器、42 フィルタ、44 スキャン変換器、46 表示器。
Claims (6)
- 超音波を送受波し、受信信号を出力する送受波手段と、
前記受信信号から、第1周波数帯域の第1信号成分及び第2周波数帯域の第2信号成分を抽出する成分抽出手段と、
前記第1信号成分から第1包絡線データを求める第1検波手段と、
前記第2信号成分から第2包絡線データを求める第2検波手段と、
前記第1包絡線データ及び前記第2包絡線データの相互相関演算を行って相互相関値を演算する相互相関演算手段と、
前記相互相関値に応じて受信信号に対するフィルタリングを行うフィルタ手段と、
を含むことを特徴とする超音波診断装置。 - 請求項1記載の装置において、
前記第1包絡線データ及び前記第2包絡線データは時間軸上のデータであり、前記相互相関演算手段は時間軸上において第1包絡線データ及び第2包絡線データの相互相関演算を実行することを特徴とする超音波診断装置。 - 請求項1記載の装置において、
前記第1包絡線データ及び前記第2包絡線データは周波数軸上のデータであり、
前記相互相関演算手段は周波数軸上において第1包絡線データ及び第2包絡線データの相互相関演算を実行することを特徴とする超音波診断装置。 - 請求項1記載の装置において、
前記フィルタ手段はローパスフィルタであり、
前記相互相関値が大きい場合には前記ローパスフィルタのカットオフ周波数を高く設定し、前記相互相関値が小さい場合には前記ローパスフィルタのカットオフ周波数を低く設定するフィルタ特性設定手段が設けられたことを特徴とする超音波診断装置。 - 超音波を送受波し、受信信号を出力する送受波手段と、
前記受信信号から第1周波数帯域の第1信号成分及び第2周波数帯域の第2信号成分を抽出する成分抽出手段と、
前記第1信号成分から第1包絡線データを求める第1検波手段と、
前記第2信号成分から第2包絡線データを求める第2検波手段と、
信号時系列に沿って一次元のウインドをスキャンさせながら、各ウインド位置において切り出される第1包絡線データ及び第2包絡線データの相互相関演算を行って相互相関値を演算する相互相関演算手段と、
前記相互相関値に応じて受信信号に対するフィルタリングを行うフィルタ手段と、
を含むことを特徴とする超音波診断装置。 - 超音波ビームを走査し、各ビーム位置ごとに受信信号を出力する送受波手段と、
前記受信信号から第1周波数帯域の第1信号成分及び第2周波数帯域の第2信号成分を抽出する成分抽出手段と、
前記第1信号成分から第1包絡線データを求める第1検波手段と、
前記第2信号成分から第2包絡線データを求める第2検波手段と、
超音波ビーム上の深さ方向と超音波ビームの走査方向とによって定義される二次元座標系上において、二次元のウインドをスキャンさせながら、各ウインド位置において切り出される第1包絡線データ及び第2包絡線データの相互相関演算を行って相互相関値を演算する相互相関演算手段と、
前記相互相関値に応じて受信信号に対するフィルタリングを行うフィルタ手段と、
を含むことを特徴とする超音波診断装置。
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