JP4537685B2 - 水素製造用のメンブレンリアクター - Google Patents
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Description
燃料電池の中で、天然ガス、ガソリン、ブタンガス、メタノール等の炭化水素系燃料を改質して得られる水素ガスと、空気中の酸素とを電気化学的に反応させて電気を取り出す燃料電池は、一般に炭化水素系燃料を水蒸気改質して水素ガスを生成する改質器と、電気を発生させる燃料電池本体等で構成される。
また、固体高分子型燃料電池(PEFC)のように、触媒として白金を使用する燃料電池本体では、電極触媒が少量のCOによって被毒し、特に高電流密度領域において著しく性能が劣化する。このため、マイクロリアクターで生成された改質ガス(水素リッチガス)に含有される不純物であるCO濃度を10ppm程度まで低減する必要がある。このため、CO濃度を10ppm程度まで低減するためのフィルタをマイクロリアクターに併設する必要があるが、携帯機器用の燃料電池では、マイクロリアクターに許容されるスペースの制限が厳しく、より高効率、省スペース化が可能なマイクロリアクターが強く要望されている。
本発明は上述のような事情に鑑みてなされたものであり、小型で、かつ、CO濃度の低い水素ガスを高い効率で製造することができるメンブレンリアクターを提供することを目的とする。
本発明の他の態様として、前記水素透過フィルタの金属基材が、前記原料改質部の金属基板および前記ガス回収部の金属基板にそれぞれ拡散接合されているような構成とした。
本発明の他の態様として、前記水素透過フィルタの前記水素透過領域は、前記微細溝部と前記回収用溝部とが対向する部位と同じパターンで設けられているような構成とした。
本発明の他の態様として、前記原料改質部は、前記微細溝部に連通するように不純物排出用の孔部を備えるような構成とした。
図1および図2において、本発明のメンブレンリアクター1は、原料改質部2とガス回収部4とを水素透過フィルタ3を介して接合一体化したものであり、原料改質部2は原料導入口5を有し、ガス回収部4はガス排出口6を有するものである。
メンブレンリアクター1を構成する原料改質部2は、一方の面12aに微細溝部13を備えた金属基板12と、この微細溝部13内に金属酸化膜14を介して担持された触媒Cとを有している。そして、金属基板12は、その面12aにおいて水素透過フィルタ3と接合されており、上記の微細溝部13は水素透過フィルタ3に対向している。これにより、流路15が形成され、この流路15は原料導入口5に接続されている。また、金属基板12の微細溝部13が形成されていない面12bと側面12cには、金属酸化膜からなる絶縁膜16が配設されており、金属基板12の表面12b上には絶縁膜16を介して設けられた発熱体17を備えている。発熱体17には電極18,18が形成され、この電極18,18が露出するような電極開口部19a,19aを有する発熱体保護層19が、発熱体17を覆うように設けられている。
メンブレンリアクター1を構成する水素透過フィルタ3は、水素透過領域33を備えた金属基材32を有している。そして、水素透過領域33は、上述の原料改質部2の微細溝部13とガス回収部4の回収用溝部23とが対向する部位に設けられている。すなわち、180°で進路を変えながら蛇行して連続する微細溝部13と回収用溝部23の直線箇所が対向する部位に水素透過領域33が配設されている。
また、図6は水素透過フィルタ3の他の例を示す部分拡大断面図である。図6において、水素透過フィルタ3は、金属基材32と、この金属基材32に設けられた複数の貫通孔34と、金属基材32の一方の面32aに、各貫通孔34に対応して形成され内部に貫通孔34が露出している複数の凹部37と、複数の凹部37を被覆するように金属基材32の一方の面32aに配設されたPd合金膜35とを備えている。そして、複数の貫通孔34とPd合金膜35とが配設されている領域が水素透過領域33となる。このような構造の水素透過フィルタ3は、Pd合金膜が配設された面を原料改質部2側とすることが強度維持の点から好ましい。
原料改質部2を構成する金属基板12は、陽極酸化により金属酸化膜(絶縁膜)14,16を形成することができる金属を使用することができる。このような金属としては、例えば、Al、Si、Ta、Nb、V、Bi、Y、W、Mo、Zr、Hf等を挙げることできる。これらの金属の中で、特にAlが加工適性や、熱容量、熱伝導率等の特性、単価の点から好ましく使用される。このような金属基板12への陽極酸化による金属酸化膜(絶縁膜)14,16の形成は、金属基板12を外部電極の陽極に接続した状態で、陽極酸化溶液に浸漬して陰極と対向させ通電することにより行うことができる。金属酸化膜(絶縁膜)14,16の厚みは、例えば、5〜150μm程度の範囲で設定することができる。
また、ガス回収部4を構成する金属基板22も、上記の金属基板12として挙げた金属材料の中から適宜使用することができる。
金属基板12に形成される微細溝部13は、図2、図3に示されるような形状に限定されるものではなく、微細溝部13内に担持する触媒Cの量が多くなり、かつ、原料が触媒Cと接触する流路長が長くなるような任意の形状とすることができる。通常、微細溝部13の深さは50〜1000μm程度の範囲内、幅は50〜1000μm程度の範囲内で設定することができ、流路長は30〜400mm程度の範囲とすることができる。
また、金属基板22に形成される回収用溝部23は、図2、図3に示されるような形状に限定されるものではなく、水素透過フィルタ3を介して微細溝部13に対向可能な形状であれば特に制限はない。通常、回収用溝部23の深さは50〜1000μm程度の範囲内、幅は50〜1000μm程度の範囲内で設定することができ、流路長は微細溝部13と同様とすることができる。
触媒Cとしては、従来から水蒸気改質に使用されている公知の触媒を使用することができる。例えば、Cu−ZnO/Al2O3等を使用することができる。
このような発熱体17には、通電用の電極18,18が形成されている。通電用の電極18,18は、Au、Ag、Pd、Pd−Ag等の導電材料を用いて形成することができる。
水素透過フィルタ3を構成する金属基材32は、SUS304、SUS430等のオーステナイト系、フェライト系のステンレス等を使用することができ、厚みは20〜500μm、好ましくは50〜300μmの範囲で適宜設定することができる。また、貫通孔34は、所定のレジストパターンを介したエッチング、打ち抜き、レーザ加工等により形成することができ、開口寸法は10〜500μm、好ましくは50〜300μmの範囲内、水素透過領域33に占める複数の貫通孔34の開口面積の合計は5〜75%、好ましくは10〜50%の範囲内とすることができる。上記の開口寸法は、貫通孔34の開口形状が円形状の場合は直径であり、多角形等の場合は最大開口部位と最小開口部位の平均である。また、深さ方向で貫通孔34の開口寸法が変化している場合、最も開口が小さい部位の寸法である。
形成するPd合金膜の厚みは0.5〜30μm、好ましくは1〜15μm程度とすることができる。
尚、水素透過フィルタ3の金属基材32が露出している部位(図3において、水素透過領域33が設けられていない部位)の形状は、本実施形態に示されるものに限定されるものではない。例えば、水素透過領域33を、上述の微細溝部13や回収用溝部23と同様に、180°で進路を変えながら蛇行して連続する形状とし、この形状を除く部位にて金属基材32を露出させるようにしてもよい。
また、原料改質部2を構成する金属基板12上に金属酸化膜からなる絶縁膜16を介して発熱体17が配設されているが、金属酸化膜からなる絶縁膜16の代わりに、ポリイミド、セラミック(Al2O3、SiO2)等からなる絶縁膜を使用してもよい。このような絶縁膜の厚みは、使用する材料の特性等を考慮して適宜設定することができ、例えば、1〜30μm程度の範囲で設定することができる。
さらに、原料導入口5、ガス排出口6の位置は特に限定されず、また、原料改質部2を構成する金属基板12の形状、水素透過フィルタ3を構成する金属基材32の形状、ガス回収部4を構成する金属基板22の形状も、図示例のものに限定されるものではない。
[原料改質部の作製]
金属基板として厚み1000μmのステンレス基板(SUS304、250mm×250mm)を準備し、このステンレス基板の両面に感光性レジスト材料(東京応化工業(株)製OFPR)をディップ法により塗布(膜厚7μm(乾燥時))した。次に、ステンレス基板の微細溝部を形成する側のレジスト塗膜上に、幅1500μmのストライプ状の遮光部がピッチ2000μmで左右から交互に突出(突出長30mm)した形状のフォトマスクを配した。次いで、このフォトマスクを介してレジスト塗布膜を露光し、炭酸水素ナトリウム溶液を使用して現像した。これにより、ステンレス基板の一方の面には、幅500μmのストライプ状の開口部がピッチ2000μmで配列され、隣接するストライプ状の開口部が、その端部において交互に連続するようなレジストパターンが形成された。
(エッチング条件)
・温度 : 80℃
・エッチング液(塩化第二鉄溶液)比重:45ボーメ(°B’e)
次に、微細溝部が形成されていないステンレス基板面に、絶縁膜用塗布液としてポリイミド前駆体溶液(東レ(株)製フォトニース)をスクリーン印刷により印刷し、350℃で硬化させて厚み20μmの絶縁膜を形成した。
(発熱体用ペーストの組成)
・カーボン粉末 … 20重量部
・微粉末シリカ … 25重量部
・キシレンフェノール樹脂 … 36重量部
・ブチルカルビトール … 19重量部
(電極用ペーストの組成)
・銀めっき銅粉末 … 90重量部
・フェノール樹脂 … 6.5重量部
・ブチルカルビトール … 3.5重量部
(保護層用ペーストの組成)
・樹脂分濃度 … 30重量部
・シリカフィラー … 10重量部
・ラクトン系溶剤(ペンタ1−4−ラクトン) … 60重量部
(触媒水溶液の組成)
・Al … 41.2重量%
・Cu … 2.6重量%
・Zn … 2.8重量%
次に、ステンレス基板の微細溝部形成面側をアルミナ粉により研磨してステンレス基板面を露出させた。これにより、原料改質部を作製した。
上記と同じステンレス基板を準備し、このステンレス基板に、上記と同様にしてハーフエッチングを行って回収用溝部を形成した。これにより、ステンレス基板の一方の面に、幅1000μm、深さ650μm、長さ30mmのストライプ形状の微細溝が2000μmのピッチで形成され、隣接する微細溝の端部において交互に連続するような形状(図3に示されるような180度折り返しながら蛇行して連続する形状)の回収用溝部(流路長300mm)が形成された。この回収用溝部の一方の端部は、ガス排出口をなすために、
蛇行している部位よりも長く延びたものとし、ガス回収部を作製した。
このガス回収部は、回収用溝部が形成された面を、上記の原料改質部の微細溝部が形成された面と当接させた場合、ガス排出口となる延長部分および原料導入口となる延長部分を除いて、回収用溝部が微細溝部と対向するものであった。そして、ガス排出口となる延長部分および原料導入口となる延長部分は、それぞれステンレス基板の一端面の両端部近傍に位置するものであった。
金属基板として厚み50μmのステンレス基材(SUS304、250mm×250mm)を準備し、このステンレス基材の両面に感光性レジスト材料(東京応化工業(株)製OFPR)をディップ法により塗布(膜厚7μm(乾燥時))した。次に、幅500μm、長さ30mm、ピッチ2000μmの複数のストライプ状の領域内に、開口寸法(開口直径)が390μmである円形状の開口部をピッチ430μmで複数備えたフォトマスクを準備し、このフォトマスクをレジスト塗膜上に配した。次いで、このフォトマスクを介してレジスト塗布膜を露光し、炭酸水素ナトリウム溶液を使用して現像した。これにより、開口寸法(開口直径)が390μmである円形状の開口部を有するレジストパターンをステンレス基材の両面に形成した。尚、各面に形成したレジストパターンの各開口部の中心はステンレス基材を介して一致するようにした。
(エッチング条件)
・温度 : 50℃
・エッチング液(塩化第二鉄溶液)比重:45ボーメ(°B’e)
次いで、上記のステンレス基材の一方の面に、絶縁性の感光性レジストフィルムを貼り付け、他方の面に対して、下記の条件で電解銅めっきを行い、貫通孔を銅めっきで埋めると共に、表面に銅めっき層(厚み約80μm)を形成した。
(銅めっき条件)
・使用浴:硫酸銅めっき浴
・液温:30℃
・電流密度:1A/dm2
(電解めっきによるPd合金膜の成膜条件)
・使用浴:塩化Pdめっき浴(Pd濃度:12g/L)
・pH:7〜8
・電流密度:1A/dm2
・液温:40℃
次に、銅めっき層を選択的にエッチングして除去した。これにより、幅500μm、長さ30mm、ピッチ2000μmのストライプ状の水素透過領域が、原料改質部の微細溝部、および、ガス回収部の回収用溝部と一致するように位置合せされて作製された水素透過フィルタを得た。
上述にように作製した原料改質部の微細溝部形成面側と、水素透過フィルタのPd合金膜形成側とを当接させ、また、ガス回収部の回収用溝部形成面側と、水素透過フィルタのPd合金膜形成面の反対側とを当接させ、下記の条件で拡散接合して図1に示されるような本発明のメンブレンリアクターを作製した。
(拡散接合条件)
・雰囲気 :真空中
・接合温度 :1000℃
・接合時間 :8時間
上述のように作製した本発明のメンブレンリアクターは、水素透過フィルタの水素透過領域を介して、原料改質部の微細溝部とガス回収部の回収用溝部とが対向しており、原料導入口から導入された原料は、微細溝部に担持された触媒により改質され、生成された改質ガスから水素ガスのみが水素透過フィルタの水素透過領域を透過してガス回収部の回収用溝部内に移行し、高純度水素ガスとしてガス排出口から排出可能なものであった。
2…原料改質部
3…水素透過フィルタ
4…がス回収部
5…原料導入口
6…ガス排出口
12…金属基板
13…微細溝部
14,16…金属酸化膜
15…流路
17…発熱体
18…電極
19…発熱体保護層
22…金属基板
23…回収用溝部
24…流路
32…金属基材
33…水素透過領域
34…貫通孔
35…Pd合金膜
37…凹部
C…触媒
Claims (5)
- 原料を改質して水素ガスを得るためのメンブレンリアクターにおいて、
原料導入口を有する原料改質部と、ガス排出口を有するガス回収部とを水素透過フィルタを介し一体化して備え、
前記原料改質部は、触媒を担持した微細溝部を一方の面に備えた金属基板を有し、前記微細溝部が前記水素透過フィルタに対向しており、前記触媒は金属酸化膜を介して前記微細溝部に担持されており、
前記ガス回収部は、回収用溝部を一方の面に備えた金属基板を有し、前記回収用溝部が前記水素透過フィルタに対向するとともに、前記回収用溝部の少なくとも一部は前記水素透過フィルタを介して前記原料改質部の微細溝部と対向し、
前記水素透過フィルタは、少なくとも一部に水素透過領域を備えた金属基材を有し、該水素透過領域は前記微細溝部と前記回収用溝部とが対向する部位の少なくとも一部に位置するとともに、内部をPd合金膜で閉塞された複数の貫通孔を有し、
前記原料改質部の金属基板の前記微細溝部が形成されていない面には発熱体を備えることを特徴とするメンブレンリアクター。 - 前記原料改質部の微細溝部と、前記ガス回収部の回収用溝部とが、前記水素透過フィルタを介して面対称となるパターン形状であることを特徴とする請求項1に記載のメンブレンリアクター。
- 前記水素透過フィルタの金属基材が、前記原料改質部の金属基板および前記ガス回収部の金属基板にそれぞれ拡散接合されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のメンブレンリアクター。
- 前記水素透過フィルタの前記水素透過領域は、前記微細溝部と前記回収用溝部とが対向する部位と同じパターンで設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のメンブレンリアクター。
- 前記原料改質部は、前記微細溝部に連通するように不純物排出用の孔部を備えることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のメンブレンリアクター。
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