JP4534136B2 - 自動車のフロントサスペンション装置 - Google Patents
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Description
前置き式のステアリングギアユニットにおいて、このような回転が生じた場合、タイロッドが取り付けられるホイールサポート8の車体前方端部8dは、下方且つ車体後方側に変位する。
従って、例えば、図6(a)中仮想線で示すように、ホイールサポート8の回転に伴い、タイロッド18の傾斜角は減少し、一方、タイロッド自体の長さは変化しないので、その取付点8dは、下方側且つ車体後方側に変位すると共に車幅方向外方にも変位することになる。従って、車輪はトーアウト方向に向く。
このように、タイロッド18がホイールサポート8の車体前方端部8dに取り付けられていること、及び、タイロッド18に傾斜角が付けられていることに起因して、制動時には、車輪がトーアウト方向に向いてしまい、特に高速走行時において、制動時の車両安定性が低下する場合があるという問題があった。
一方、このようなトーアウトを防止するために、弾性ブッシュのコンプライアンスを減少させると、乗り心地を悪化させることになる。
このように構成された本発明においては、ステアリングギアユニットは、サスペンションクロスメンバのアッパアーム及びロアアームより車体前方の位置に固定されており、タイロッドは、このステアリングギアユニットから車幅方向外方に斜め前方に延びステアリングギアユニットとホイールサポートの車体前方端部とを連結している。このように構成されたタイロッドにより、アッカーマンジオメトリを成立させることが出来る。一方、このようなタイロッドの構成では、アッパアーム及びロアアームが弾性ブッシュを介してサスペンションクロスメンバに取り付けられていることに起因して、制動時にホイールサポートの車体前方端部が車幅方向外方に変位して車輪がトーアウト方向に向こうとする。しかしながら、ロアアームの後方アーム部の取付部の弾性ブッシュは、その中心軸線が車体上下方向に延びるように設けられ、この弾性ブッシュは、平面視でその車幅方向に延びる軸線より車体前方側且つ車体前後方向に延びる軸線より車体内方側の領域に形成された第1の低弾性部を有するので、制動時に、弾性ブッシュを車体後方且つ車幅方向外方に斜め方向に変形させて、ロアアームを、車体後方且つ車幅方向外方に斜め方向に変位させることが出来る。従って、制動時には、ホイールサポートの車体前方端部及びロアアームのホイールサポートへの取付部の両方が車幅方向外方に変位することになる。このようにして、ホイールサポートを全体的に車幅方向外方に移動させて、車輪の制動時のトーアウトを抑制することが出来る。その結果、弾性ブッシュのコンプライアンスを増大させて乗り心地を確保しても、制動時の車両安定性を確保することが出来る。
このように構成された本発明においては、すぐり部は、その長手方向の一端部が、平面視で弾性ブッシュの車体前後方向の軸線から0乃至5度の位置になるように形成されているので、より確実に乗り心地及び操安性の両立を図ることが出来る。
このように構成された本発明においては、すぐり部は、タイロッドが延びる方向とほぼ平行な方向に延びるので、より効果的に、車輪の制動時のトーアウトを抑制することが出来る。
先ず、図1により、フロントサスペンション装置1を説明する。図1は、本発明の実施形態による自動車のフロントサスペンション装置を示す斜視図である。
本発明の実施形態によるフロントサスペンション装置1は、車体(図示せず)に固定されたサスペンションクロスメンバ2に取り付けられている。このサスペンションクロスメンバ2は、車幅方向に延びると共にその両側から車体後方に向かって延びるコ字状の前側部材2a、この前側部材2aの車幅方向両側にそれぞれ固定された上方に延びる上方部材2b、及び、前側部材2aの後方で車幅方向に延び、その両端部が前側部材2aに固定された後側部材2cで構成されている。
先ず、図2に示すように、アッパアーム4は、前方アーム部4a及び後方アーム部4bを有するA型アームであり、2箇所の取付部20、22で、サスペンションクロスメンバ2の上方部材2bに取り付けられている。これらの取付部20、22では、各アーム部4a、4bの車幅方向内方端部4c、4dが、円筒状の弾性ブッシュ24を介して車体側に取り付けられている。これらの弾性ブッシュ24は、車体前後方向に中心軸線を有するように設けられている。
車体前方側の取付部26の弾性ブッシュ24は、車体前後方向に中心軸線を有するように設けられ、車体後方側の取付部28の弾性ブッシュ24は、車体上下方向に中心軸線を有するように設けられている。また、ロアアーム6に設けたこれらの各ブッシュ24は、乗り心地を確保するためにコンプライアンスが大きなものとなっている。一方、操安性の確保のために、車体前方側の取付部26の弾性ブッシュ24は、車体後方側の取付部28の弾性ブッシュ24より、コンプライアンスが比較的小さなものとなっている。
また、図2に示すように、ホイールサポート8は、車体前方に延びるタイロッド連結用の延長部(ナックルアーム)8cを備え、この延長部8cの先端部8dに、タイロッド18の車幅方向外方端部が取り付けられている。タイロッド18の車幅方向内方端部はステアリングギアユニット16に取り付けられている。
また、図3に示すように、タイロッド18は、正面視で、車幅方向外方に斜め上方に延び、水平線に対し傾斜角βが付けられている。この傾斜角βにより、このフロントサスペンション装置1がバンプトーイン特性を有するようにして、バンプしている旋回外輪がトーアウトに向くことを抑制している。
一方、上述したように、タイロッド18には、アッカーマンジオメトリやバンプトーイン特性を満足するために、傾斜角が付けられている。詳細には後述するように、タイロッド18がホイールサポート8の車体前方端部に取り付けられていること、及び、タイロッド18に傾斜角が付けられていることに起因して、制動時には、前輪16は制動時にトーアウト方向に向く傾向がある。そこで、本発明の実施形態では、ロアアーム6の弾性ブッシュ24にすぐり部(低弾性部)を設け、そのすぐり部の配置により前輪16の制動時のトーアウトを抑制するようにしている。
ロアアーム6の車幅方向内方端部6dは、車体上下方向に中心軸線A(図3参照)を有するように円筒状に形成され、その内方に車体上下方向に中心軸線A(図3参照)を有するように弾性ブッシュ24が圧入されている。この弾性ブッシュ24の内周部の表面には、金属製の内筒部32が接着されており、この内筒部32が、車体側、即ち、サスペンションクロスメンバ2に固定されている。
これらのすぐり部34のうち、第1のすぐり部34aは、平面視で、弾性ブッシュ24の車体前後方向軸線B(或いは中心軸線Aを通り車体前後方向に延びる中立面)より車幅方向内方側、且つ、弾性ブッシュ24の車幅方向軸線C(或いは中心軸線Aを通る車幅方向に延びる中立面)より車体前方側の領域24aに形成されている。
さらに、すぐり部34a、34bは、その長手方向の一端部が、車体前後方向軸線Bから0乃至5度の位置になるように形成されており、本実施形態では0度となっている。
また、これらのすぐり部34a、34bは、その長手方向が、タイロッド18が延びる方向とほぼ平行な方向に延びるように形成されている。即ち、角度γと傾斜角αがほぼ同一となっている。
この作用について、図4、図5及び図6により具体的に説明する。
先ず、図5に示すように、制動時には、車輪16に制動力Fが加わり、この制動力Fはホイールサポート8に伝達され、ホイールサポート8には、回転モーメント力Mが加わる。この回転モーメント力Mは、アッパアーム4及びロアアーム6に伝達され、この伝達された力は、アーム4、6の車体側への各取付部の弾性ブッシュ24を変形させる。その結果、アッパアーム4は、車体前方に向けて変位し(図中D1)、ロアアーム6は、車体後方に向けて変位し(図中D2)、ホイールサポート8は、図中D3のような方向に回転変位する。弾性ブッシュ24のコンプライアンスが大きい場合には、特に、このような変位D1、D2、D3が生じやすくなる。ホイールサポート8にこのような回転変位D3が生じると、タイロッド連結用の延長部(ナックルアーム)8cの先端部8dは、下方側且つ車体後方側に変位する。
また、各すぐり部34a、34bは、弾性ブッシュ24の外周部に沿って延び、その長手方向の中間部が、平面視で、車体前後方向軸線Bから25乃至35度(図中角度γ)の位置になるようになるように形成されているので、前輪16の制動時のトーアウトを抑制しつつ、弾性ブッシュ24の車体前後方向の変形量が比較的大きくなるようにして乗り心地を確保すると共に、車幅方向の変形量が過度に大きくならないようにして操安性をも確保することが出来る。
また、すぐり部34a、34bは、その長手方向が、タイロッド18が延びる方向、即ち、平面視で車幅方向に対して傾斜角αの方向とほぼ平行な方向に延びるように形成されているので、より効果的に、前輪16の制動時のトーアウトを抑制することが出来る。
2 サスペンションクロスメンバ
4 アッパアーム
6 ロアアーム
8 ホイールサポート
10 緩衝装置
16 前輪
20 アッパアームの車体への車体前方側の取付部
22 アッパアームの車体への車体後方側の取付部
24 弾性ブッシュ
26 ロアアームの車体への車体前方側の取付部
28 ロアアームの車体への車体後方側の取付部
34 すぐり部
Claims (3)
- 前置き式ステアリングギアユニットを備えた自動車のフロントサスペンション装置であって、
車体に弾性ブッシュを介して取り付けられたアッパアームと、
上記車体に2箇所において弾性ブッシュを介して取り付けられたロアアームであって、その車体前方側の取付部からほぼ車幅方向に延びる前方アーム部及び車体後方側の取付部から車幅方向外方に斜め前方に延びる後方アーム部を有するA型のロアアームと、
上記アッパアーム及び上記ロアアームに取り付けられ車輪を回転自在に支持するホイールサポートと、
上記車体の上記アッパアーム及び上記ロアアームより車体前方の位置に固定されたステアリングギアユニットと、
このステアリングギアユニットから車幅方向外方に斜め前方に延び上記ステアリングギアユニットと上記ホイールサポートの車体前方端部とを連結するタイロッドと、を有し、 上記ロアアームの後方アーム部の取付部の弾性ブッシュは、その中心軸線が車体上下方向に延びるように設けられ、この弾性ブッシュは、平面視でその車幅方向に延びる軸線より車体前方側且つ車体前後方向に延びる軸線より車体内方側の領域に形成された第1の低弾性部を有し、
この第1の低弾性部は、上記弾性ブッシュの外周部に沿って延びるすぐり部であり、このすぐり部は、その長手方向の中間部が、平面視で上記弾性ブッシュの上記車体前後方向の軸線から25乃至35度の位置になるように形成されていることを特徴とする自動車のフロントサスペンション装置。 - 上記すぐり部は、その長手方向の一端部が、平面視で上記弾性ブッシュの車体前後方向の軸線から0乃至5度の位置になるように形成されている請求項1記載の自動車のフロントサスペンション装置。
- 上記すぐり部は、上記タイロッドが延びる方向とほぼ平行な方向に延びる請求項1又は請求項2記載の自動車のフロントサスペンション装置。
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