JP4531946B2 - 水銀を含まないメタルハライドランプ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ウォームホワイトの光色と高い演色評価数とを有しており、内部に電極が真空密に挿入された放電管を有しており、イオン化可能な封入物を放電管内に有している、水銀を含まないメタルハライドランプに関する。ここでは特に、一般照明のためのウォームホワイトWDLの光色のランプ、特に調光可能なランプに関する。
【0002】
【従来の技術】
ドイツ連邦共和国特許出願公開第19731168号明細書から既に、水銀を含まないメタルハライドランプが公知である。このランプは2つのグループの金属ハロゲン化物、すなわち主として水銀の役割を引き受ける電圧形成物質と、特に希土類金属である光形成物質とを使用している。これにより3500K程度のウォームホワイトの光色が目指される。ただし赤色の演色性が充分ではないので、DyまたはAlを添加することによりこれを制御している。類似した封入物の系は国際公開第99/05699号明細書およびヨーロッパ特許出願公開第833160号明細書にも記載されている。
【0003】
国際公開第98/45872号明細書には水銀を含むメタルハライドランプが記載されており、このランプの封入物は主としてNaおよびTlを有する金属ハロゲン化物を含んでいる。さらにDy金属ハロゲン化物およびCa金属ハロゲン化物が加わる。こうした封入物は3900K〜4200Kのニュートラルホワイトの光色に関連している。
【0004】
ウォームホワイトおよびニュートラルホワイトの光色を実現するためにナトリウムを使用することには欠点がある。なぜならナトリウムはそのイオン半径が小さいために容易に拡散してしまうからである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、請求項1の上位概念に記載のメタルハライドランプを提供して、環境保護の観点から水銀を省略するだけでなく、ナトリウムの使用を完全に回避するかまたは大幅に低減して、これに関連する周知の問題点を回避することである。この問題点は特に一方側がベースとなっているランプの構造に関連している(光電離の問題)。
【0006】
【課題を解決するための手段】
この課題は、封入物が緩衝ガスとして作用する希ガスと、第1のグループの金属ハロゲン化物と、第2のグループの金属ハロゲン化物との成分を有しており、第1のグループの金属ハロゲン化物の沸点は1000℃以上であり(有利には1150℃よりも高い)、該第1のグループは金属として少なくともDyおよびCaを同時に使用しており、2つの金属ハロゲン化物のモル比Ca‐MH:Dy‐MHは0.1〜10であり、第2のグループの金属ハロゲン化物の沸点は1000℃より低く(有利には900℃より低い)、第2のグループは金属としてIn、Zn、Hf、Zrのうち少なくとも1つの元素を有しており、第1のグループの金属ハロゲン化物の全封入量は5μmol/cm3〜100μmol/cm3であり、第2のグループの金属ハロゲン化物の全封入量は1μmol/cm3〜50μmol/cm3であり、色温度は2700K〜3500Kであり、一般的な演色評価数は少なくともRa=90であり、同時に赤色の演色評価数は少なくともR9=60である構成のメタルハライドランプにより解決される。
【0007】
特に有利な実施形態は従属請求項に記載されている。
【0008】
【発明の実施の形態】
有利には2つの金属ハロゲン化物のモル比Ca‐MH:Dy‐MHは0.3〜4である。第2のグループは有利には付加的にTlの金属ハロゲン化物を30μmol/cm3までの量、有利には5μmol/cm3〜25μmol/cm3の量で有している。
【0009】
さらに第1のグループはNaの金属ハロゲン化物を全体量の30mol%まで、有利には多くとも5mol%まで含んでいる。
【0010】
有利には第1のグループは付加的にCsの金属ハロゲン化物を40μmol/cm3までの量、有利には5μmol/cm3〜30μmol/cm3の量で有している。また希ガスの冷間封入圧は有利には100mbar〜10000mbarである。
【0011】
第2のグループの成分は付加的に金属として成分内に30mol%まで加えることができる。さらに付加的に少なくとも1つの元素の金属、またはAl、Ga、Sn、Mg、Mn、Sb、Bi、Scの金属の金属ハロゲン化物が第2のグループに加えられる。これは全体の40mol%の量まで添加される。
【0012】
さらに付加的にSr、Ba、Liの金属および/または希土類金属の少なくとも1つの金属ハロゲン化物が第1のグループに添加される。これは全体の30mol%の量まで添加される。
【0013】
有利には放電管はセラミクスであり、内部の縦横の最大寸法の典型的な比は最高で3.5である。
【0014】
有利には内壁表面の寸法は、動作中に内壁の負荷が10W/cm2〜60W/cm2となるように選定される。
【0015】
Hgフリーの封入物は主としてNaの少ない封入物(有利には沸点>1000℃の封入物成分で多くとも5mol%)である。この封入物の組成は、少なくともDyハロゲン化物およびCaハロゲン化物が沸点>1000℃の封入物質成分として含まれ、In、Zn、Hf、Zrから選択された少なくとも1つの金属ハロゲン化物MHが<1000℃の封入物質成分として含まれるように選定されている。
【0016】
特に比Ca‐MH:Dy‐MH>2である(特にこの値が>4である)場合、別の金属ハロゲン化物を封入物に添加すると有利である。有利にはこの別の金属は次に述べるランタノイドであり、25mol%までの量である。これにより、CaJ2の成分に起因する赤色のスペクトル領域における突出部を較正することができる。
【0017】
第1のグループの放電管内の全封入量はCaX2+DyX3=5μmol/cm3〜100μmol/cm3の値である(XはJ、Br、Clから選択された任意のハロゲン化物である)。さらに第2のグループ、すなわち金属In、Zn、Hf、Zrの当該の金属ハロゲン化物MeXnの全封入量は全体でMeXn=1μmol/cm3〜50μmol/cm3の値となる。この値が小さく選定されている場合には、電圧グラジエントは50V/cm以下となり、これは実際には使用できない。
【0018】
有利にはTl‐MHへの添加物はTlX=5μmol/cm3〜30μmol/cm3の範囲に存在する。最適な量は他の構成成分に依存して選択され、これによりプランク特性曲線からの偏差を最小にすることができる。
【0019】
光源のスペクトル放射はウォームホワイトのスペクトル領域で2700K〜3500Kであり、一般の演色評価数は有利にはRa>90であり、ここで飽和赤の赤色の演色評価数はR9>60である。
【0020】
本発明の特に考察に値する特徴は、演色評価数の際だった恒常性がランプをランプ出力の約50%まで調光した場合にも維持される点である。従来の封入物は調光には適していない。これはCa(および場合によりCs)が蒸気相において分子の形成(錯体の形成)により濃度が高くなる可能性と関連して、DyとCaとの混合物を正確に計量することによっている。この機構は水銀を含まない封入物で特に効率的である。これによりスペクトル放射分布と出力との独立関係はスペクトル可視領域で、印加された調光能力に相応して達成される。
【0021】
ランプの封入物は沸点>1000℃、所定のmol%濃度、有利には10%〜50%の濃度の封入物質の封入物成分でCsハロゲン化物を含んでいる。ここでCsXの全体量は典型的には5μmol/cm3〜40μmol/cm3である。なぜならCsXはアークの安定性を改善し、光効率を上昇させるからである。
【0022】
さらにランプの封入物は沸点<1000℃の少なくとも1つの金属ハロゲン化物を含むことができる。この金属はAl、Ga、Sn、Mg、Mn、Sb、Bi、Scのグループから成る。これらの物質は正確な電圧調整のために混合される。複数の物質がスペクトル放射の分布への作用にも適している。
【0023】
別の実施形態では、ランプの封入物は付加的に少なくとも1つの元素金属を含んでおり、この元素金属はTl、In、Zn、Al、Ga、Sn、Mg、Mn、Sb、Bi、Scのグループから成る。封入量は0.5μmol/cm3〜50μmol/cm3の範囲である。これらの物質は電気的な特性を改善するために混合され、例えば再点弧時のピークを低減するために用いられる。
【0024】
Naハロゲン化物の最適な量は封入成分の封入量の30mol%まで含むことができ、このNaハロゲン化物は沸点>1000℃である。確かにNaJは典型的には調光特性または演色評価数の恒常性を劣化させるが、光効率を上昇させるために混合してもよい。
【0025】
別の有利な実施形態では、沸点>1000℃の封入成分にランタノイドおよびSr、Ba、Liのグループから選択された少なくとも1つのハロゲン化物が典型的には35mol%までのモル濃度で含まれている。これらの物質はスペクトル分布を可視のスペクトル領域で最適化するために混合される。例えばSr、Ba、Liは赤色のスペクトル領域での放射を更に改善するために、またランタノイドは青色および緑色のスペクトル領域での放射を改善するために混合される。
【0026】
有利にはイオン化可能な封入物は少なくとも1つの希ガス(Ar、Kr、Xe)から成り、冷間封入圧100mbar〜10000mbarで存在している。典型的には500mbar以上の冷間封入圧でArでは特に長い寿命が得られる。100mbar以下では強い電極負荷がランプの始動フェーズ中に発生し、これによりメンテナンス特性が劣化する。
【0027】
【実施例】
以下に本発明を複数の実施例に則して詳細に説明する。
【0028】
図1には概略的に出力70Wのメタルハライドランプが示されている。このランプはシリンダ形のクォーツガラスから成る外管から形成されており、この外管はランプ軸線を規定し、両側をベースによって封止され(2、3)ている。Al2O3セラミクスから成る軸方向に配置された放電管4は楕円体をなしており、中央部5に膨らみをつけられ、2つのシリンダ形の端部6a、6bを有している。またこの放電管は細長い細管を栓として有するシリンダ形状であってもよい。放電管は2つの電流供給線7によって外管1に支承されており、電流供給線はシート8を介してベース部3に接続されている。電流供給線7は導入線9、10に溶接されており、これらの導入線はそれぞれ放電管の端部で端部栓11にはめ込まれている。
【0029】
導入線9、10は例えばモリブデンピンである。2つの導入線9、10は両側の栓11の個所で突出しており、放電側で電極14を支承している。この電極はタングステンから成る電極シャフトと、放電側の端部に乗せられた螺旋体16とから形成されている。導入線9、10はそれぞれ電極シャフト15および外部の電流供給線7とに突き合わせ溶接されている。
【0030】
端部栓11は主としてそれ自体では周知のサーメット、すなわちセラミクス成分Al203および金属成分のタングステンまたはモリブデンから成る。
【0031】
第2の端部6bにはさらに栓11に軸と平行な孔12が設けられており、この孔は放電管の排気および封入のために周知の手段で用いられる。孔12は封入後にピン13を用いて閉鎖される。ただし基本的にはセラミクス放電管の周知の別の構造、および別の溶接技術を選択することができる。
【0032】
放電管の封入物は不活性の点弧ガス/緩衝ガスと種々の金属ハロゲン化物の添加物とから成っている。緩衝ガスはここでは250mbarの冷間封入圧のアルゴンである。
【0033】
本発明の封入物の3つの実施例が表1に示されている。右側の2つの列には金属ハロゲン化物の沸点が示されている。いずれの場合にも楕円体形状に成形されたセラミクスの放電管は0.32cm3の内部容量、2.35cm2の内部表面積、および9mmのアーク長さを有している。
【0034】
燃焼電圧は第1の実施例では約60Vである。モル比Ca‐MH:Dy‐MHはここでは60:15=4.0である。これにより70WのWDLメタルハライドランプを実現することができ、その放射スペクトルはCaJ2の帯域のものが優勢である(図2を参照)。このランプは626nm〜642nmの赤色のスペクトル領域にある。
【0035】
【表1】
【0036】
図3に示されているように、光効率は50lm/Wである。演色評価数RaおよびR9の値は100に僅かに足りない程度である。これらのきわめて良好な値は全出力を50%までにカットする調光から独立している。これは調光パラメータとして内壁負荷が20W/cm2、30W/cm2、40W/cm2の間で(50%、75%、100%の調光度に相応して)変化する図2、図3からわかる。したがってランプは白熱電球に置換されるのにきわめて良好に適している。色温度Tnは調光によって緩やかに3400K〜2950Kの間で制御される。調光される際の色座標x、yの変化は迅速かつ正確にプランク曲線に沿って追従される(図4を参照)。ここでTlJの添加物の正確な量が重要である。この結果は特に従来の封入物と比べて特に有利である。
【0037】
図5にスペクトルが示されている第2の実施例では、燃焼電圧は80Vである。モル比Ca‐MH:Dy‐MH=29:39=0.74である。R9の評価数は図6によれば60〜85の範囲で調光度に応じて変化し、Raは常に90以上である。色温度は50%〜100%で迅速に調光される場合ほぼ3100Kで一定である。R9の値は50%程度までの低い調光度では(20w/cm2の壁負荷に相応して)ほぼ50であるが、可能な出力の100%までの高い調光度では(典型的に32W/cm2の壁負荷で)75〜80である。色座標x、yは図7に示されている。
【0038】
図8にスペクトルが示されている第3の実施例では、燃焼電圧は73Vである。モル比Ca‐MH:Dy‐MHは30:45=0.67である。電圧の適合化のためにInJおよびHfBr4から成る混合物が使用されている。調光の際にもきわめて安定した特性が示されている(図9を参照)。すなわち全ての色評価数(Ra、R9)がほぼ一定の特性を示しており、調光度には依存しない。赤の値R9は明らかに70以上であり、Raは約95である。色座標x、yは調光の際にも約3000Kの一定の色温度にある(図10を参照)。
【0039】
全ての実施例で、楕円体の放電管に対して内部の縦横寸法の比は約1.7である。内部の軸線の長さは前述の楕円体の全体の長さを(図1に点線で示されている個所を含めて)考えると12mmであり、円形の膨らみをつけられた放電管内部のランプ軸線に対して横方向の最大径は7mmである。
【図面の簡単な説明】
【図1】セラミクスの放電管を有するメタルハライドランプを示す図である。
【図2】第1の実施例のメタルハライドランプのスペクトル図である。
【図3】第1の実施例のRa、R9および色温度を調光度に依存して示した図である。
【図4】第1の実施例の調光度の関数としての色座標を示した図である。
【図5】第2の実施例のメタルハライドランプのスペクトル図である。
【図6】第2の実施例のRa、R9および色温度を調光度に依存して示した図である。
【図7】第2の実施例の調光度の関数としての色座標を示した図である。
【図8】第3の実施例のメタルハライドランプのスペクトル図である。
【図9】第3の実施例のRa、R9および色温度を調光度に依存して示した図である。
【図10】第3の実施例の調光度の関数としての色座標を示した図である。
【符号の説明】
1 外管
2 封止部
3 ベース部
4 放電管
5 中央部
6a、6b 端部
7 電流供給線
8 シート
9、10 導入線
11 端部線
12 孔
13 ピン
14 電極
15 電極シャフト
16 螺旋体
Claims (11)
- ウォームホワイトの光色と高い演色評価数(Ra)とを有しており、
内部に電極が真空密に挿入された放電管を有しており、イオン化可能な封入物を該放電管内に有している、
水銀を含まないメタルハライドランプにおいて、
封入物は、緩衝ガスとして作用する希ガスと、第1のグループの金属ハロゲン化物(MH)と、第2のグループの金属ハロゲン化物との成分を有しており、
前記第1のグループの金属ハロゲン化物の沸点は1000℃以上であり、該第1のグループは金属として少なくともDyおよびCaを同時に使用しており、2つの金属ハロゲン化物のモル比Ca‐MH:Dy‐MHは0.1〜10であり、
前記第2のグループの金属ハロゲン化物の沸点は1000℃より低く、該第2のグループは金属としてIn、Zn、Hf、Zrのうち少なくとも1つの元素を有しており、
前記第1のグループの金属ハロゲン化物の全封入量は5μmol/cm3〜100μmol/cm3であり、
前記第2のグループの金属ハロゲン化物の全封入量は1μmol/cm3〜50μmol/cm3であり、
色温度は2700K〜3500Kであり、
一般的な演色評価数は少なくともRa=90であり、同時に赤色の演色評価数は少なくともR9=60である、
ことを特徴とする水銀を含まないメタルハライドランプ。 - 2つの金属ハロゲン化物のモル比Ca‐MH:Dy‐MHは0.2〜5である、請求項1記載のランプ。
- 前記第2のグループは付加的にTlの金属ハロゲン化物を30μmol/cm3までの量、有利には5μmol/cm3〜25μmol/cm3の量で有している、請求項1記載のランプ。
- 前記第1のグループはNaの金属ハロゲン化物を全体量の30mol%までの量、有利には多くとも5mol%までの量で有している、請求項1記載のランプ。
- 前記第1のグループは付加的にCsの金属ハロゲン化物を40μmol/cm 3 までの量、有利には5μmol/cm3〜30μmol/cm3の量で有している、請求項1記載のランプ。
- 希ガスの冷間封入圧は100mbar〜10000mbarである、請求項1記載のランプ。
- 前記第2のグループの成分は付加的に金属として30mol%までの量で添加される、請求項1記載のランプ。
- 付加的にAl、Ga、Sn、Mg、Mn、Sb、Bi、Scの金属のうち少なくとも1つの金属ハロゲン化物が前記第2のグループに全体で40mol%までの量で添加される、請求項1記載のランプ。
- 付加的にSr、Ba、Liの金属および/または希土類金属のうち少なくとも1つの金属ハロゲン化物が前記第1のグループに全体で30mol%までの量で添加される、請求項1記載のランプ。
- セラミクスから成る放電管は最高で3.5の内部の縦横最大寸法の比を有する、請求項1記載のランプ。
- 放電管の内壁表面は壁負荷が10W/cm2〜60W/cm2となるように設計されている、請求項1記載のランプ。
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