JP4513515B2 - 耐食性に優れた溶接継手 - Google Patents

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Description

この発明は、疲労亀裂進展抵抗特性に優れた鋼材の溶接継手およびその溶接継手を用いた構造物に関する。さらに詳しくは、溶接部の耐食性(耐局部腐食性)に優れた溶接継手およびその溶接継手を用いた構造物に関する。
近年、溶接構造物が大型化される傾向が顕著になってきており、構造部材の高強度化と軽量化が望まれている。しかし、高強度鋼を使用すると設計応力が上昇するため、溶接部から疲労破壊が発生しやすくなり、その改善が重要な問題となっている。構造用鋼材などの厚鋼板では一般に溶接施工が施されるため、溶接部から発生して進展する疲労亀裂を鋼材で停留させることができれば、構造物の疲労寿命の延長に有効である。このため、疲労亀裂の進展抑制効果を有する各種の鋼板が提案されている。
代表的なものとして、特許文献1には、組織が主にフェライト、パーライト、およびベイナイトの1種または2種以上で構成され、さらに平均存在間隔が20μm以下で平均扁平比が5以上の形状の島状マルテンサイトを体積率で0.5〜5%の割合で存在させた、耐疲労亀裂伝播性に優れた鋼板が示されている。
特許文献2には、硬質部の素地と、この素地に分散した軟質部とからなる組織を有し、この2部分の硬度差がビッカース硬度で150以上であることを特徴とする、疲労亀裂の進展抑制効果を有する鋼板が開示されている。
しかし、これらの鋼板には、高強度を確保するため、または組織制御を行うため、各種の合金元素を含有させる必要がある。そのため、これらの鋼板を溶接する場合、溶接材料によっては母材と溶接金属とで化学成分が異なることとなり、母材に比べて溶接部が局部的に腐食する恐れがある。溶接部の局部腐食は応力集中につながり、破壊にいたる原因ともなるため、大きな問題となる。
溶接部の局部腐食は、鋼母材と溶接金属との間で異なった組成、組織をもつ部分が電位差をもち、その電位差によって局部電池が形成される結果、いわゆる電気化学的なガルバニック腐食を生ずることに原因がある。したがって、この腐食を防止するには、母材に合った溶接金属を使用する必要がある。
母材と溶接部との間で起こる局部腐食の場合、例えば、組織が互いに異なることに原因がある場合には、溶接部の組織を母材の組織とほぼ同じにすることによって、局部腐食をある程度防止することができる。具体的な方法として、溶接部を後熱処理する方法があるが、現場溶接の場合、後熱処理は工数がかかることから、後熱処理を極力なくす方向で検討されている。従って、この方法は望ましいものではない。
ガルバニック腐食を考えた場合、溶接金属の化学組成を母材よりも電気化学的に貴にすれば、溶接金属の局部腐食を防ぐことができる。このため、鋼材と溶接金属の化学組成を規定し、両者に電位差をつけて防食しようとする試みがある。例えば、特許文献3には、所定組成の鋼材を3〜6重量%のNiを含有する溶接材料で溶接するというように、溶接金属の化学組成中のNiを母材より高くすることが開示されている。しかし、この方法では、溶接金属が母材に対して貴となりすぎるため、母材との電位差が大きくなりすぎて、今度は母材が腐食されるという問題がある。
溶接金属の局部腐食を防止する方法として、例えば特許文献4には、ベイナイト主体の鋼材のサブマージ溶接に、溶接ワイヤとフラックス原料およびCr、Cu、Ni等の金属粉を混合した焼成フラックスとを使うことにより、海水環境中で使用される溶接部の局部腐食を防止することが開示されている。
特許文献5には、溶接金属中のCu, Ni, Cr, Moと母材のCr量との最適なバランスを保つことにより、溶接部の局部腐食を防止した溶接継手が開示されている。
しかし、上記の特許文献に開示された方法では、いずれも溶接棒またはフラックスに特殊元素を入れて成分調整する必要があり、コストが高くなるとともに、溶接施工者にとっては、特殊な溶接棒を扱うことになり、作業性が悪化するという問題がある。
特開平6-271985号公報 特開平7-242992号公報 特開平1-142024号公報 特開平5-8042号公報 特開平7-155951号公報
本発明の目的は、溶接構造物を構成する鋼材として、特に疲労亀裂進展特性に優れた鋼材を使用した場合に、溶接部の耐局部腐食性に優れた溶接継手を提供することである。
発明者らは、溶接部の局部腐食の原因が溶接金属と母材との電位差にあるとの前提にたって、各種鋼材の溶接部を多数調査し、以下の知見を得るに至った。
1)炭素鋼の共金溶接部においては、溶接金属が凝固組織のため、一般にそうでない母材よりも、自然電位が幾分卑である。そのため、最初は電位の貴な母材がカソード、卑な溶接金属がアノードとなり、電池が形成されて、アノードとなる溶接金属で腐食が発生する。
2)腐食が進行・成長した段階では、アノードではpHが低下し、かつ腐食生成物で覆われるため酸素が不足する。一方、母材カソードでは、酸素の供給は十分である。そのため、両者の間で酸素濃淡電池が形成され、1)で発生した溶接金属の腐食がさらに成長する。
3)このような局部腐食の発生・成長を防止するためには、まず、溶接金属の自然電位を母材並みにまで貴化させる必要がある。
4)鋼の自然電位を貴化させる合金元素として、Cu、Ni、Moが考えられる。これらの元素の溶接金属への添加により、pHの低下した環境(アノード)下での耐食性も高まる。したがって、CuとNiとMoを母材中の含有量よりやや多くなるように溶接金属に添加すれば、溶接金属と母材との自然電位差は小さくなるか、あるいは差がなくなる。しかし、溶接金属へのCu添加量は溶接性の問題で限られるし、Ni添加はコスト高になるため、これらの元素の含有量を調整するだけでは十分ではなく、他の元素にも分担させることが考えられる。
5)そこで、発明者らはSiとCrに着目した。Si添加は鋼の自然電位を卑化させる働きをもち、CrもpHの低下した溶液中では、鋼の自然電位を卑化させる働きをすることがわかった。したがって、溶接金属中のSi、Crを適切に制御させれば、局部腐食を回避することが可能となる。
この知見に基づき、Cu、Ni、Moの量は溶接金属の方が母材より高めとし、Cr、Siの量については溶接金属中の量を適切に制御とすることで、母材と溶接金属の自然電位を近づけることができる。
本発明は上記の知見により完成したものであって、鋼材の組成が、質量%で、C:0.01〜0.20%、Si:0.60%以下、Mn:0.50〜2.0%、P:0.02%以下、S:0.02%以下、Al:0.003〜0.10%、Cu:0.01〜1.5%、Ni:0.02〜1.5%、Cr:0.02〜1.2%、Mo:0.01〜1.0%、Ti:0.010〜0.1%およびNb:0.005〜0.1%を含有し、残部が鉄および不純物であり、鋼材が、最大引張・圧縮歪±0.012、繰り返し速度0.5Hz、最大歪までの波数12の漸増・漸減繰り返し負荷を15回与えたときの1回目の最大歪時の応力σ1と15回目の最大歪時の応力σ15との比σ15/σ1で示される繰り返し軟化パラメータが0.65〜0.95であり、鋼材同士を溶接した溶接継手において、下記(1)式と(2)式または(1)式と(3)式を同時に満足することを特徴とする溶接継手である:
(ΔCu+ΔNi+ΔMo)≦0.0 ・・・・(1)式
(ΔSi+1.5×ΔCr)≧0.2 ・・・・(2)式
0.0≧(ΔSi+1.5×ΔCr)≧−0.2 ・・・・(3)式
式中、ΔCu=CuM−CuW、ΔNi=NiM−NiW、ΔMo=MoM−MoW、
ΔSi=SiM−SiW、ΔCr=CrM−CrWであり、
CuW、NiW、SiW、CrW、MoWは溶接金属の各元素含有量(質量%)、
CuM、NiM、SiM、CrM、MoMは母材の各元素含有量(質量%)である。
上記鋼材の組成が、さらに、質量%で、1.5%を超えない含有量のV、1.0%を超えない含有量のW、0.01%を超えない含有量のREMのうち、1種または2種以上を有していてもよい。
本発明はまた、このような溶接継手を有する鋼材の溶接構造物にも関する。
本発明によれば、特に疲労亀裂進展特性に優れた鋼材において、溶接部の腐食が母材に対して想定される腐食の範囲内に収まる、溶接部の耐局部腐食性に優れた溶接部を有する溶接継手が、特殊な溶接棒や高価な元素を使用せずに実現される。従って、本発明の溶接継手を有する溶接構造物は、母材の腐食寿命だけを考慮すればよいので、疲労亀裂進展特性の良好な鋼材から構築された、長い疲労寿命を有する溶接構造物が、溶接部から破壊して寿命が設計寿命より短くなるという事態の発生が避けられる。
本発明は、鋼材同士を溶接した溶接継手において、溶接金属と母材のCu,Ni,Mo含有量が下記の(1)式を満足し、さらにそれらのSiおよびCr含有量が下記の(2)式または(3)式のいずれかを満たす溶接継手である。
(ΔCu+ΔNi+ΔMo)≦0.0 ・・・・(1)式
(ΔSi+1.5×ΔCr)≧0.2 ・・・・(2)式
0.0≧(ΔSi+1.5×ΔCr)≧−0.2 ・・・・(3)式
式中、ΔCu=CuM−CuW、ΔNi=NiM−NiW、ΔMo=MoM−MoW、
ΔSi=SiM−SiW、ΔCr=CrM−CrWであり、
CuW、NiW、SiW、CrW、MoWは溶接金属の各元素含有量(質量%)、
CuM、NiM、SiM、CrM、MoMは母材の各元素含有量(質量%)である。
発明者らは、試験用に溝状の開先形状を設けた鋼材(図4参照)に対して、様々な組成を有する溶接材料を用いて、炭酸ガスアーク溶接および被覆アーク溶接を行った。同じ組成を有する溶接材料について2つのサンプルを作製して加速腐食試験および流水状態の海水浸漬試験を行い、溶接部の溶接金属(図1〜3にはdepoと表示)とHAZ部(熱影響部;図1〜3にはHAZと表示)における選択腐食の有無を調べた。選択腐食は、各部分での平均腐食深さaを求め、母材の平均腐食深さbとの比率(a/b)が1.2より大である場合に、その部分での選択腐食であると判定した。この試験結果を、X軸をΔSi+1.5×ΔCrとし、Y軸をΔCu+ΔNi+ΔMoとして整理したグラフを図1および2に示す。
図1は、加速腐食試験の結果を示したものである。図1より、溶接部の選択腐食を生じないサンプルは、図の下半分(ΔCu+ΔNi+ΔMoが負の領域)に集中する傾向があった。一方、ΔSi+1.5×ΔCrが負の領域では、その絶対値が大きくなると、depo部で選択腐食が起こる傾向が強かった。逆に、ΔSi+1.5×ΔCrが正の領域では、ゼロに近い場合に、HAZ部での選択腐食が起こる傾向が見られた。
図2は、流水状態の海水浸漬試験の結果を示したものである。図2においても、図1と同様の傾向が見られた。即ち、溶接部の選択腐食を生じないサンプルが図の下半分(ΔCu+ΔNi+ΔMoが負の領域)に集中する傾向があり、さらにΔSi+1.5×ΔCrが負の領域では、その絶対値が大きくなるとdepo部で選択腐食が起こる傾向が強くなり、ΔSi+1.5×ΔCrが正の領域では、ゼロに近い場合にHAZ部での選択腐食が起こる傾向があった。
図3は、図1と図2を重ね合わせた図である。これからわかるように、(ΔCu+ΔNi+ΔMo)が負であって(即ち、上記(1)式を満たす)、かつ(ΔSi+1.5×ΔCr)が0.2以上であるか(上記(2)式を満たす)、または−0.2から0である(上記(3)式を満たす)場合には、depo部とHAZ部のいずれにおいても腐食が起こりにくいことがわかる。
ここで、ΔCu+ΔNi+ΔMoが負である場合、すなわち、(1)式を満足する場合に、腐食が起こりづらくなるのは、先に4)で述べたとおりである。一方、ΔSi+1.5×ΔCrが−0.2より大きい場合に腐食が起こりづらくなる傾向が見られるのは、同じく先に5)に述べたとおりである。
しかし、ΔSi+1.5×ΔCrが−0.2より大きい場合であっても、ΔSi+1.5×ΔCrが0から0.2の領域では、特にHAZ部に腐食が見られた。これに関しては、HAZ部のミクロ組織がベイナイト含有組織となり、母材のフェライト−パーライト組織と異なるため、HAZ部電位が溶接金属の電位より20mV以上も卑になることが多いので、HAZ部が選択的に腐食されると考えられる。
なお、溶接金属とは、溶接施工時に一度溶融状態まで昇温した材料領域のことを示す。溶接方法は手溶接、SAW(サブマージドアーク溶接)等どのような方法であってもかまわないが、溶接金属の化学成分は溶加材の化学成分だけで決まるものではなく、溶融に伴い母材成分の影響も受ける。すなわち、母材の希釈程度は開先形状、溶接狙い位置、溶接条件、溶接姿勢など数多くの因子が影響する。そのため、溶接金属の化学成分は母材からの希釈の程度を考慮し、溶接材料を選択する必要である。
本発明の溶接継手では、母材となる鋼材が疲労亀裂進展特性に優れたものであることが好ましい。具体的には、最大引張・圧縮歪±0.012、繰り返し速度0.5Hz、最大歪までの波数12の漸増・漸減繰り返し負荷を15回与えたときの1回目の最大歪時の応力σ1と15回目の最大歪時の応力σ15との比σ15/σ1で示される繰り返し軟化パラメータが0.65〜0.95であることで示される疲労特性を有する鋼材が好ましい。
本発明者らが特開2001-41868号公報に述べたように、硬化組織を有する鋼材を繰り返し軟化させた時の繰り返し軟化パラメータσ15/σ1は、通常用いられる応力拡大係数範囲(ΔK)が20MPa・√mにおける疲労亀裂進展速度(da/dN)と良好な相関を示す。
この繰り返し軟化パラメータが0.65を下回ると、亀裂進展速度は遅くなるが、鋼材の靭性や溶接性が劣化し、溶接構造用鋼として用途が著しく限定される。他方、繰り返し軟化パラメータが0.95を上回ると、亀裂進展速度が速くなるだけでなく、強度の低下も引き起こす。繰り返し軟化パラメータが0.65以上0.95以下であると、鋼材の疲労亀裂進展抵抗特性が優れ、靱性や溶接性の劣化も生じない。
このような繰り返し軟化パラメータを有する鋼材としては、例えば、質量%で下記組成を有するものが例示される:C:0.01〜0.20%、Si:0.60%以下、Mn:0.50〜2.0%、P:0.02%以下、S:0.02%以下、Al:0.003〜0.10%、Cu:0〜1.5%、Ni:0〜1.5%、Cr:0〜1.2%、Mo:0〜1.0%、V:0〜1.5%、Ti:0〜0.1%、Nb:0〜0.1%、W:0〜1.0%、REM:0〜0.01%および残部が鉄および不純物。
本発明における上記の鋼組成の限定理由を次に説明する。鋼組成に関する%は全て質量%である。
C:0.01〜0.20%
Cは構造部材の強度確保に有効な元素である。しかし、その含有量が0.01%未満では強度向上効果が得がたい。一方、Cの含有量が0.20%を超えると、溶接性が低下するので溶接施工が困難となり、構造用鋼としての使用領域が著しく限定されてしまう。大きな強度を確保するとともに溶接性をも確保するため、C含有量は0.04〜0.15%とすることが望ましい。
Si:0〜0.60%
Siは脱酸作用を有する。しかし、その含有量が0.60%を超えると靭性が劣化する。望ましい含有量は0.05〜0.5%である。
Mn:0.50〜2.0%
Mnは強度の確保に有効な元素である。しかし、その含有量が0.50%未満ではその効果が十分ではない。一方、Mnの含有量が2.0%を超えると靭性が劣化する。望ましい含有量は0.70〜1.8%である。
P:0.02%以下
Pは、不純物として存在し、その含有量が多いと、鋼の靭性に影響を与える。特に、0.02%を超えると母材だけでなくHAZの靭性が著しく低下する。
S:0.02%以下
Sは、不純物として存在し、その含有量が多いと、母材のHAZ靭性を阻害し、板厚方向の延性も低下させる。さらに、MnS介在物の生成原因にもなり、疲労き裂の起点ともなるので、0.02%以下とした。
Al:0.003〜0.10%
Alは脱酸作用を有する。しかし、その含有量が0.003%未満ではその効果が十分ではなく、鋼中の酸化物が増加するため靭性が劣化する。一方、Alの含有量が0.10%を超えると靭性が低下する。望ましい含有量は0.010〜0.050%である。
Cu:0〜1.5%
Cuは強度の確保、耐食性改善に有効な元素である。しかし、Cu含有量が1.5%を超えると靱性の劣化を引き起こす。望ましい含有量は0.01〜1.0%である。
Ni:0〜1.5%
Niは強度の確保、靭性改善に有効な元素である。しかし、Niが1.5%を超えるように含有させても、その効果が飽和するばかりか、コストの上昇を招く。望ましい含有量は0.02〜1.3%である。
Cr:0〜1.20%
Cuと同様に、Crも強度の確保、耐食性改善に有効な元素である。しかし、Cr含有量が1.20%を超えると、靱性の劣化を引き起こす。望ましい含有量は0.02〜1.0%である。
Mo:0〜1.0%
Moは、焼入れ性を高め、強度を改善するのに有効な元素である。しかし、Mo含有量が1.0%を超えると靱性の劣化を引き起こすばかりでなく、コストの上昇を招く。望ましい含有量は0.01〜0.8%である。
V:0〜1.5%
Vは鋼の強度、靭性を高める効果がある。しかし、1.5%を超えて含有させると、靭性の劣化を引き起こす。望ましい含有量は0.05〜1.0%である。
Ti:0〜0.1%
Tiは靭性を確保するのに有効な元素である。しかし、その含有量が0.1%を超えると、かえって靭性が低下してしまう。望ましいTi含有量は0.01〜0.05%である。
Nb:0〜0.1%
Nbは靭性を確保するのに有効な元素である。しかし、その含有量が0.1%を超えるとかえって靭性が低下してしまう。望ましい含有量は0.005〜0.05%である。
W:0〜1.0%
Wは鋼の強度向上効果があるとともに、疲労亀裂進展抑制にも効果がある。さらには耐食性に効果があるため、サワー原油中などの腐食環境下においても疲労亀裂進展抑制に効果がある。しかし、その含有量が1.0%を超えると靭性の劣化を引き起こす。Wの望ましい含有量は0.05〜0.5%である。
REM:0〜0.01%
REMは組織を微細化し、靭性改善に効果がある。しかし、その含有量が0.01%を超えると靭性が劣化する。REMの望ましい含有量は、0.0005〜0.01%である。
表1に示す組成の鋼塊を溶製し、熱間圧延で板厚25〜50mmの鋼板を製作した。この鋼板から、図4に示すように、95×160mmの中央に開先として台形状の溝を設けた溶接用試験材を作製した。板厚は、鋼種番号1および4の鋼板については20mmに減厚したが、残りの鋼板は元厚のままであった。この試験材の開先に対して、表2に示す組成の溶加材(溶接棒またはワイヤー)を用いて、溶接を実施した。鋼種と溶加材の組合あわせごとに2つの溶接サンプルを作製した。
溶接は、溶加材が表2にAで示すCO2用ワイヤである場合には、2層2パスの炭酸ガスアーク溶接(1層目と2層目のいずれも200A×25V×30cm/min,CO2ガス流量:25L/min)により行い、その他の溶加材の場合には、2層2パスの手溶接(1層目:160A×24V×20cm/min、2層目:160A×24V×15cm/min)により行った。
溶接後の各試験材(溶接サンプル)について、溶接金属の表面側を分光分析法により組成分析して、Si,Cr,Cu,Ni,Moの含有量を求め、母材である試験材中の含有量との差(Δ)を算出した。結果を表3に示す。表3において、試験材記号における、A〜Dの記号は、溶接に使用した溶加材(表2の記号)を意味する。
これらの各溶接試験材から、図5に示す寸法の試験片を採取して腐食試験に供した。腐食試験は、加速腐食試験および流水状態の海水浸漬試験の2通りで実施した。
加速腐食試験では、#600で試験片の溶接面側の表面を自動研磨し、脱脂した後、溶接ビードを含む12×42mmの範囲を残して、他はシリコーン樹脂で被覆したものを使用した。試験溶液には30℃に保持したASTM規格に基づく人工海水(ASTM D−1141)を用い、この試験溶液に試験片を72時間浸漬した。
流水状態の海水浸漬試験では、同様に#600で試験片の表面を自動研磨し、脱脂した後、上記と同様に被覆した試験片を、流動状態に保持した自然の生海水中に3ケ月浸漬した。
上記の各腐食試験後、試験片を海水から取り出し、クエン酸アンモニウムで脱スケールを行った。その後、溶接ビード部(溶接金属)、HAZ部、および母材のそれぞれの部分について、試験片断面の光学顕微鏡写真から、5点における腐食深さの平均値として各部分の平均腐食深さを求めた。腐食深さは、被覆した非腐食部分の厚みとの差として測定できる。
腐食は母材でも生じる。通常、構造物は、それに使用される鋼材(母材に相当する)の腐食深さを予め予測して腐食代を追加して、建造するため、母材部での腐食量がHAZ部および溶接金属での腐食量より大きくなる場合には、さほど問題ではない。しかし、母材に比べてHAZ部または溶接金属での腐食量が大きくなると、構造物の寿命は寿命予測より短くなるので、大きな問題となる。
このため、母材の平均腐食深さbを基準とし、HAZ部または溶接金属のそれぞれの平均腐食深さaが母材の平均腐食深さbの何倍であるか(即ち、a/b比を算出した。a/b比の値が1.2以上であると、その部位は選択的に腐食していると判定される。従って、HAZ部と溶接金属の少なくとも一方の部位の平均腐食深さが母材の1.2倍以上であると、溶接部(HAZ部と溶接金属とを含む)の腐食特性が不良(溶接部の選択腐食あり)である。
母材の平均腐食深さの1.2倍以上を溶接部での選択腐食があると判断した理由は次の通りである。母材の腐食深さにはばらつきがあるが、その最小および最大の腐食深さは、平均腐食深さの±20%程度である。したがって、母材の最大の腐食深さ(平均腐食深さ×1.2)より深い腐食は、母材に想定される腐食より大きな腐食、即ち、溶接部における局部的な腐食(選択腐食)になり、腐食特性が不良であると判断される。
表3には、加速腐食試験と流水海水浸漬試験のそれぞれについて、HAZ部と溶接金属のa/b値のうちいずれか大きい方の数値とその数値を生じた部位とを示した。表3において、Depoとは溶接金属を意味する。HAZ部と溶接金属のいずれにおいてもa/b値が1未満である場合は、最大腐食部位が母材であるので、「母材で最大腐食」と表示した。その場合は、溶接部の耐食性(耐局部腐食性)が特に優れているので、表3に○と表示した。一方、溶接部の最大腐食深さのa/b値の比が1.2より大である場合は×(溶接部の耐食性が悪い)、1.0〜1.2の範囲である場合を△(許容範囲内)と表示した。
Figure 0004513515
Figure 0004513515
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表3より、本発明に従って、(ΔCu+ΔNi+ΔMo)の値が0または負であり(前記(1)式を満たす)、(ΔSi+1.5ΔCr)の値が−0.2〜0であるか、または0.2以上である(前記(2)式または(3)式を満たす)場合には、溶接部より母材での腐食が大きくなるか、或いはHAZ部または溶接金属での腐食が最も大きくても、母材での平均腐食深さの1.2倍以下であり、構造物の溶接継手として使用しても溶接部での腐食を考慮する必要はなく、母材(構造物に使用される鋼材)の腐食寿命を考慮するだけでよい。
一方、本発明の範囲外のものは、加速腐食試験および流水状態の海水浸漬試験の少なくとも一方において、HAZ部または溶接金属の少なくとも一方での腐食が大きくなる(a/b比が1.2より大になる)ため、溶接継手として使用するのは好ましくない。
加速腐食試験の結果を示す図である。 流水状態の海水浸漬試験の結果を示す図である。 図1と図2を重ねて得られる図である。 実施例で溶接試験に用いた試験材とその開先の形状を示す。 腐食試験に用いた溶接試験片の形状を示す。

Claims (3)

  1. 鋼材の組成が、質量%で、C:0.01〜0.20%、Si:0.60%以下、Mn:0.50〜2.0%、P:0.02%以下、S:0.02%以下、Al:0.003〜0.10%、Cu:0.01〜1.5%、Ni:0.02〜1.5%、Cr:0.02〜1.2%、Mo:0.01〜1.0%、Ti:0.010〜0.1%およびNb:0.005〜0.1%を含有し、残部が鉄および不純物であり、
    前記鋼材が、最大引張・圧縮歪±0.012、繰り返し速度0.5Hz、最大歪までの波数12の漸増・漸減繰り返し負荷を15回与えたときの1回目の最大歪時の応力σ1と15回目の最大歪時の応力σ15との比σ15/σ1で示される繰り返し軟化パラメータが0.65〜0.95であり、
    前記鋼材同士を溶接した溶接継手において、下記(1)式と(2)式または(1)式と(3)式を同時に満足することを特徴とする溶接継手。
    (ΔCu+ΔNi+ΔMo)≦0.0 ・・・・(1)式
    (ΔSi+1.5×ΔCr)≧0.2 ・・・・(2)式
    0.0≧(ΔSi+1.5×ΔCr)≧−0.2 ・・・・(3)式
    式中、ΔCu=CuM−CuW、ΔNi=NiM−NiW、ΔMo=MoM−MoW、
    ΔSi=SiM−SiW、ΔCr=CrM−CrWであり、
    CuW、NiW、SiW、CrW、MoWは溶接金属の各元素含有量(質量%)、
    CuM、NiM、SiM、CrM、MoMは母材の各元素含有量(質量%)である。
  2. 前記鋼材の組成が、さらに、質量%で、1.5%を超えない含有量のV、1.0%を超えない含有量のW、0.01%を超えない含有量のREMのうち、1種または2種以上を有することを特徴とする請求項1に記載の溶接継手。
  3. 請求項1または2に記載の溶接継手を有する溶接構造物。
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