JP4506112B2 - 薄膜形成方法及び薄膜形成装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規の防汚膜の薄膜形成方法、薄膜形成装置に関し、詳しくは、フッ素原子を有する有機基を有する有機金属化合物を含有する薄膜形成ガスと、励起放電ガスとにより、被処理体上に高機能の防汚膜を形成する薄膜形成方法薄膜形成装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
現在、人の手指が直接触れるタッチパネル、CRTや液晶ディスプレイなどの画像表示装置表面、めがね表面、レンズ表面、あるいは外気に晒されて塵埃等が付着しやすい太陽電池や窓ガラスなどの透明材料の表面には、その表面を保護し、視認性を損なう汚れや塵等の付着を防止したり、あるいは付着した汚れや塵等を簡単に取り去ることのできる防汚膜を、その表面に設けることが知られている。
【0003】
従来、防汚膜の形成方法としては、防汚膜形成用の液体材料を、物品の表面に塗布する方法が広く知られており、また実用化されている(特許文献1参照。)。一例としては、液晶ディスプレイなどで用いる反射防止膜表面を、末端シラノール有機ポリシロキサンを、塗布方式により被覆して、表面上の防汚性を向上させる方法がある(特許文献2参照。)。
【0004】
しかしながら、塗布方式による防汚膜の形成方法は、塗布液を構成する溶剤に対する化学的な耐性を必要とするため、用いることのできる基材の材質が制限を受けること、塗布後に乾燥工程を必要とするため製造工程にコスト上の負荷がかかること、対象とする基材表面が凹凸を有している場合には、塗布後の乾燥工程でレベリングを起こしたり、材質により塗布液の濡れ性が不適切となり、塗布ムラやはじき故障を引き起こし、均一の膜厚を有する防汚膜を形成することが難しいとの課題を抱えている。
【0005】
上記の課題を踏まえて、大気圧プラズマCVDを用いて簡易に防汚膜を形成する方法が提案されている(特許文献3参照。)。この方法によれば、乾燥工程を必要とせず、凹凸の表面形状を有する基材であっても、均一な厚さからなる防汚膜を安定して形成することが可能となる。
【0006】
【特許文献1】
特開2000−144097号公報 (特許請求の範囲)
【0007】
【特許文献2】
特開平2−36921号公報 (特許請求の範囲)
【0008】
【特許文献3】
特開2003−98303号公報 (特許請求の範囲)
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記方法は、対象基材を対向電極間に載置して、直接放電空間に薄膜形成用ガスを導入する大気圧プラズマCVD法であり、また、防汚性能(例えば、撥水性、撥油性、皮脂やインクのふき取り性等)に関しては、必ずしも満足のいくレベルではないことが判明した。
【0010】
また、特開平9−59777号公報に記載の方法は、被処理部に処理ガスを供給しながら、不活性ガス中で発生させた放電プラズマを当該被処理部に向けて突出させる放電プラズマ処理方法であるが、この記載されている処理条件(不活性ガス条件、処理ガス条件、印加電界条件、処理時間等)では、反応性の高い処理ガスを均一に分解し、被処理体表面と反応させることが困難であるため、所望の性能(親水性、撥水性等)を安定に付与することが難しい。
【0011】
従って、本発明の目的は、被処理体への影響が無く、優れた撥水性、撥油性、皮脂やインクの拭き取り性及びその繰り返し耐久性を有し、かつ耐擦過性が良好な薄膜形成方法薄膜形成装置を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、下記の構成により達成される。
【0013】
1.下記一般式(3)で表されるフッ素原子を有する有機基を有する有機金属化合物を含有する薄膜形成ガスを被処理体に供給しながら、大気圧もしくは大気圧近傍の圧力下で、少なくとも窒素ガスと水素ガスを含有する放電ガスを放電空間に導入して励起した励起放電ガスを、該被処理体に供給して防汚膜を形成することを特徴とする薄膜形成方法。
一般式(3)
Rf−X−(CH −M(OR 12
〔式中、MはSi、Ti、Ge、ZrまたはSnを表し、Rfは水素原子の少なくとも1つがフッ素原子により置換されたアルキル基またはアルケニル基を表し、Xは単なる結合手または2価の基を表す。R 12 は、アルキル基、アルケニル基、アリール基を表し、kは0〜50の整数を表す。〕
【0021】
.前記励起放電ガスの放出口及び電極対を備えた固体誘電体容器内に放電ガスを流通させた状態で、電極と、該電極と対向して対をなす他の電極との間に電界を印加することにより、大気圧もしくは大気圧近傍の圧力下で、前記放電ガスを放電空間に導入して励起放電ガスを発生させ、該励起放電ガスの供給方向と交差する方向から、前記被処理体に向けて前記薄膜形成ガスを供給することを特徴とする前記1項に記載の薄膜形成方法。
【0022】
.前記放電空間が、高周波電界により形成されたものであることを特徴とする前記1または2に記載の薄膜形成方法。
【0025】
.前記放電ガスが、窒素ガスを50体積%以上含有することを特徴とする前記1〜項のいずれか1項に記載の薄膜形成方法。
【0026】
.前記放電空間が、パルス化電界を印加することにより形成されたものであることを特徴とする前記1〜項のいずれか1項に記載の薄膜形成方法。
【0027】
.前記被処理体を放電空間または前記励起放電ガスに晒して前処理を行った後、薄膜形成を行うことを特徴とする前記1〜項のいずれか1項に記載の薄膜形成方法。
【0028】
.電極が外面に配設され、励起放電ガス放出口を有する固体誘電体容器、該電極と対向して対をなす他の電極、及び下記一般式(3)で表されるフッ素原子を有する有機基を有する有機金属化合物を含有する薄膜形成ガス供給部からなる被処理体上に薄膜を形成する薄膜形成装置であって、該固体誘電体容器に放電ガスを流通させた状態で、対向して対をなす電極間に電界を印加することにより、大気圧もしくは大気圧近傍の圧力下で、少なくとも窒素ガスと水素ガスを含有する放電ガスを放電空間に導入して励起放電ガスを発生させ、かつ該励起放電ガスの供給方向と、該薄膜形成ガス供給部からの薄膜形成ガスの供給方向とが、交差する位置に配置されていることを特徴とする薄膜形成装置。
一般式(3)
Rf−X−(CH −M(OR 12
〔式中、MはSi、Ti、Ge、ZrまたはSnを表し、Rfは水素原子の少なくとも1つがフッ素原子により置換されたアルキル基またはアルケニル基を表し、Xは単なる結合手または2価の基を表す。R 12 は、アルキル基、アルケニル基、アリール基を表し、kは0〜50の整数を表す。〕
【0030】
.前記固体誘電体容器と、前記薄膜形成ガス供給部とが可動治具により連結されており、該固体誘電体容器と該薄膜形成ガス供給部とが、略一定の相対位置を保ちながら移動可能であることを特徴とする前記項に記載の薄膜形成装置。
【0031】
.被処理体移動装置を有し、該被処理体移動装置上に設置した被処理体が、前記励起放電ガスの供給部近傍に移動して、該励起放電ガスに晒されていることを特徴とする前記7または8項に記載の薄膜形成装置。
【0032】
10.前記対向して対をなす電極間に印加する電界が、パルス化されたものであることを特徴とする前記7〜9項のいずれか1項に記載の薄膜形成装置。
【0033】
11.前記被処理体を放電空間または前記励起放電ガスに晒して前処理を行った後、薄膜形成を行うことを特徴とする前記7〜10項のいずれか1項に記載の薄膜形成装置。
【0036】
.薄膜形成を行う被処理体表面が、無機化合物を含有することを特徴とする前記1〜項のいずれか1項に記載の薄膜形成方法
【0037】
.薄膜形成を行う被処理体表面の主成分が、酸化金属であることを特徴とする前記1〜6、12項のいずれか1項に記載の薄膜形成方法
【0038】
.被処理体上に形成された防汚膜表面の表面比抵抗値が、23℃、55%RH条件下で1×1012Ω/□以下であることを特徴とする前記1〜6、12、13項のいずれか1項に記載の薄膜形成方法
また、以下に示す態様も、本発明と同様の効果を奏する。
17.フッ素原子を有する有機基を有する有機金属化合物を含有する薄膜形成ガスを被処理体に供給しながら、大気圧もしくは大気圧近傍の圧力下で、放電ガスを放電空間に導入して励起した励起放電ガスを、該被処理体に供給することを特徴とする薄膜形成方法。
18.前記フッ素原子を有する有機基を有する有機金属化合物が、下記一般式(1)で表される化合物であることを特徴とする前記17項に記載の薄膜形成方法。
【化A】
Figure 0004506112
〔式中、MはSi、Ti、Ge、ZrまたはSnを表し、R〜Rは各々水素原子または一価の基を表し、R〜Rで表される基の少なくとも1つは、フッ素原子を有する基である。jは0〜150の整数を表す。〕
19.前記一般式(1)で表される化合物が、下記一般式(2)で表される化合物であることを特徴とする前記18項に記載の薄膜形成方法。
一般式(2)
[Rf−X−(CH−M(R10(OR11
〔式中、MはSi、Ti、Ge、ZrまたはSnを表し、Rfは水素原子の少なくとも1つがフッ素原子により置換されたアルキル基またはアルケニル基を表し、Xは単なる結合手または2価の基を表す。R10はアルキル基、アルケニル基を、またR11はアルキル基、アルケニル基、アリール基を表す。また、kは0〜50の整数を表し、q+r+t=4であり、q≧1、またt≧1である。また、r≧2の時2つのR10は連結して環を形成してもよい。〕
20.前記フッ素原子を有する有機基を有する有機金属化合物が、下記一般式(4)で表される化合物であることを特徴とする前記17項に記載の薄膜形成方法。
【化B】
Figure 0004506112
〔式中、MはSi、Ti、Ge、ZrまたはSnを表し、R〜Rは各々水素原子または一価の基を表し、R〜Rで表される基の少なくとも1つは、フッ素原子を有する基である。Rは、水素原子または置換もしくは非置換のアルキル基を表す。jは0〜150の整数を表す。〕
21.前記フッ素原子を有する有機基を有する有機金属化合物が、下記一般式(5)で表される化合物であることを特徴とする前記17項に記載の薄膜形成方法。
一般式(5)
[Rf−X−(CH−Y]−M(R(OR
〔式中、MはIn、Al、Sb、YまたはLaを表し、Rfは水素原子の少なくとも1つがフッ素原子により置換されたアルキル基またはアルケニル基を表す。Xは単なる結合手または2価の基を表し、Yは単なる結合手または酸素原子を表す。Rは置換もしくは非置換のアルキル基、アルケニル基またはアリール基を表し、Rは置換もしくは非置換のアルキル基またはアルケニル基を表す。kは0〜50の整数を表し、m+n+p=3であり、mは少なくとも1であり、n、pはそれぞれ0〜2の整数を表す。〕
22.前記フッ素原子を有する有機基を有する有機金属化合物が、下記一般式(6)で表される化合物であることを特徴とする前記17項に記載の薄膜形成方法。
一般式(6)
f1(OCm1−O−(CFn1−(CHp1−Z−(CHq1−Si−(R
〔式中、Rf1は炭素数1〜16の直鎖状又は分岐状のパーフルオロアルキル基、Rは加水分解基、Zは−OCONH−又は−O−を表し、m1は1〜50の整数、n1は0〜3の整数、p1は0〜3の整数、q1は1〜6の整数を表し、6≧n1+p1>0である。〕
23.前記フッ素原子を有する有機基を有する有機金属化合物が、下記一般式(7)で表される化合物であることを特徴とする前記17項に記載の薄膜形成方法。
【化C】
Figure 0004506112
〔式中、Rfは炭素数1〜16の直鎖状または分岐状パーフルオロアルキル基、Xはヨウ素原子または水素原子、Yは水素原子または低級アルキル基、Zはフッ素原子またはトリフルオロメチル基、R21は加水分解可能な基、R22は水素原子または不活性な一価の有機基を表し、a、b、c、dはそれぞれ0〜200の整数、eは0または1、mおよびnは0〜2の整数、pは1〜10の整数を表す。〕
【0039】
以下、本発明の詳細について説明する。
本発明の薄膜形成方法においては、前記一般式(3)で表されるフッ素原子を有する有機基を有する有機金属化合物を含有する薄膜形成ガスを被処理体に供給しながら、大気圧もしくは大気圧近傍の圧力下で、少なくとも窒素ガスと水素ガスを含有する放電ガスを放電空間に導入して励起した励起放電ガスを、該被処理体に供給して防汚膜を形成することを特徴とする。
【0040】
はじめに、薄膜形成ガスに含有される本発明に係るフッ素原子を有する有機基を有する有機金属化合物である前記一般式(3)で表される化合物と、その他のフッ素原子を有する有機基を有する有機金属化合物について、その詳細を説明する。
【0041】
本発明に係るフッ素原子を有する有機基を有する有機金属化合物において、フッ素原子を有する有機基としては、フッ素原子を有するアルキル基、アルケニル基、アリール基等を含有する有機基が挙げられるが、本発明において用いられるフッ素原子を有する有機基を有する有機金属化合物は、これらのフッ素原子を有する有機基が、金属原子、例えば、珪素、チタン、ゲルマニウム、ジルコニウム、スズ、アルミニウム、インジウム、アンチモン、イットリウム、ランタニウム、鉄、ネオジウム、銅、ガリウム、ハーフニューム等の金属に直接結合した有機金属化合物である。これらの金属のうちでは、珪素、チタン、ゲルマニウム、ジルコニウム、スズ等が好ましく、更に好ましいのは珪素、チタンである。これらのフッ素を有する有機基は、金属化合物にいかなる形で結合していてもよく、例えば、シロキサン等複数の金属原子を有する化合物が、これらの有機基を有する場合、少なくとも1つの金属原子がフッ素を有する有機基を有していれば良く、またその位置も問わない。
【0042】
本発明の薄膜形成方法によると、フッ素原子を有する有機基を有する有機金属化合物が、シリカやガラス等の基板と結合を形成し易く、本発明の優れた効果を奏することができると推定している。
【0043】
フッ素原子を有する有機基を有する有機金属化合物の一例としては、前記一般式(1)で表される化合物が挙げられる
【0044】
前記一般式(1)において、MはSi、Ti、Ge、ZrまたはSnを表す。
また、R1〜R6は各々水素原子または一価の基を表し、R1〜R6で表される基の少なくとも1つは、フッ素原子を有する有機基であり、例えば、フッ素原子を有するアルキル基、アルケニル基またはアリール基を含有する有機基が好ましく、フッ素原子を有するアルキル基としては、例えば、トリフルオロメチル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基、パーフルオロブチル基、4,4,3,3,2,2,1,1−オクタフルオロブチル基等の基が、フッ素原子を有するアルケニル基としては、例えば、3,3,3−トリフルオロ−1−プロペニル基等の基が、また、フッ素原子を有するアリール基としては、例えば、ペンタフルオロフェニル基等の基が挙げられる。また、これらフッ素原子を有するアルキル基、アルケニル基、またアリール基から形成されるアルコキシ基、アルケニルオキシ基、アリールオキシ基等なども用いることができる。
【0045】
また、フッ素原子は、前記アルキル基、アルケニル基、アリール基等においては、骨格中の炭素原子のどの位置に任意の数結合していてもよいが、少なくとも1個以上結合していることが好ましい。また、アルキル基、アルケニル基骨格中の炭素原子は、例えば、酸素、窒素、硫黄等他の原子、また、酸素、窒素、硫黄等を含む2価の基、例えば、カルボニル基、チオカルボニル基等の基で置換されていてもよい。
【0046】
1〜R6で表される基のうち、前記フッ素原子を有する有機基以外は、水素原子または1価の基を表し、1価の基としては、例えば、ヒドロキシ基、アミノ基、イソシアネート基、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、アリールオキシ基等の基が挙げられるが、これに限定されない。jは0〜150の整数を表し、好ましくは0〜50、更に好ましいのはjが0〜20の範囲である。
【0047】
前記1価の基のうち、ハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が好ましい。また、前記1価の基である前記アルキル基、アルケニル基、アリール基、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、アリールオキシ基のうち、好ましいのは、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、アリールオキシ基である。
【0048】
また、Mで表される金属原子のうち、好ましいのは、Si、Tiである。
前記1価の基は、更にその他の基で置換されていてもよく、特に限定されないが、好ましい置換基としては、アミノ基、ヒドロキシル基、イソシアネート基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、フェニル基等のアリール基、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、アルカンアミド基、アリールアミド基、アルキルカルバモイル基、アリールカルバモイル基、シリル基、アルキルシリル基、アルコキシシリル基等の基が挙げられる。
【0049】
また、前記フッ素原子を有する有機基、またはそれ以外のこれらR1〜R6で表される基は、R123M−(Mは、前記金属原子を表し、R1、R2、R3はそれぞれ1価の基を表し、1価の基としては前記フッ素原子を有する有機基またはR1〜R6として挙げられた前記フッ素原子を有する有機基以外の基を表す。)で表される基によって更に置換された複数の金属原子を有する構造であっても良い。これらの金属原子としては、Si、Tiなどが挙げられ、例えば、シリル基、アルキルシリル基、アルコキシシリル基等が挙げられる。
【0050】
前記R〜Rにおいて挙げられたフッ素原子を有する基であるアルキル基、アルケニル基、またこれらから形成されるアルコキシ基、アルケニルオキシ基におけるアルキル基、アルケニル基としては、下記一般式(F)で表される基が挙げられる
【0051】
一般式(F)
Rf−X−(CH2k
ここにおいてRfは、水素の少なくとも1つがフッ素原子により置換されたアルキル基、アルケニル基を表し、例えば、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、パーフルオロオクチル基、ヘプタフルオロプロピル基のようなパーフルオロアルキル基等の基、また、3,3,3−トリフルオロプロピル基、4,4,3,3,2,2,1,1−オクタフルオロブチル基等の基、また、1,1,1−トリフルオロ−2−クロルプロペニル基等のようなフッ素原子により置換されたアルケニル基が好ましく、中でも、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、パーフルオロオクチル基、ヘプタフルオロプロピル基等の基、また、3,3,3−トリフルオロプロピル基、4,4,3,3,2,2,1,1−オクタフルオロブチル基等の少なくとも2つ以上のフッ素原子有するアルキル基が好ましい。
【0052】
また、Xは単なる結合手または2価の基である、2価の基としては−O−、−S−、−NR−(Rは水素原子またはアルキル基を表す)等の基、−CO−、−CO−O−、−CONH−、−SO2NH−、−SO2−O−、−OCONH−、
【0053】
【化4】
Figure 0004506112
【0054】
等の基を表す。
kは0〜50、好ましくは0〜30の整数を表す。
【0055】
Rf中にはフッ素原子のほか、他の置換基が置換されていてもよく、置換可能な基としては、前記R1〜R6において置換基として挙げられた基と同様の基が挙げられる。また、Rf中の骨格炭素原子が他の原子、例えば、−O−、−S−、−NR0−(R0は水素原子または置換もしくは非置換のアルキル基を表し、また前記一般式(F)で表される基であってもよい)、カルボニル基、−NHCO−、−CO−O−、−SO2NH−等の基によって一部置換されていてもよい。
【0056】
前記一般式(1)で表される化合物としては、更に下記一般式(2)で表される化合物が挙げられる
【0057】
一般式(2)
[Rf−X−(CH2kq−M(R10r(OR11t
一般式(2)において、Mは前記一般式(1)と同様の金属原子を表し、Rf、Xは前記一般式(F)におけるRf、Xと同様の基を表し、kについても同じ整数を表す。R10はアルキル基、アルケニル基を、またR11はアルキル基、アルケニル基、アリール基を表し、それぞれ、前記一般式(1)のR1〜R6の置換基として挙げた基と同様の基により置換されていてもよいが、好ましくは、非置換のアルキル基、アルケニル基を表す。また、q+r+t=4であり、q≧1、またt≧1である。また、r≧2の時2つのR10は連結して環を形成してもよい。
【0058】
本発明の薄膜形成方法においては、フッ素原子を有する有機基を有する有機金属化合物として前記一般式(3)で表される化合物を用いることを特徴とする
【0059】
一般式(3)
Rf−X−(CH2k−M(OR123
ここにおいて、Rf、Xまたkは、前記一般式(2)におけるものと同義である。また、R12も、前記一般式(2)におけるR11と同義である。また、Mも前記一般式(2)におけるMと同様であるが、特に、Si、Tiが好ましく、最も好ましいのはSiである。
【0060】
その他のフッ素原子を有する有機金属化合物の例としては、前記一般式(4)で表される化合物が挙げられる。
【0061】
前記一般式(4)において、R1〜R6は、前記一般式(1)におけるR1〜R6と同義である。ここにおいても、R1〜R6の少なくとも1つは、前記フッ素原子を有する有機基であり、前記一般式(F)で表される基が好ましい。R7は水素原子、または置換もしくは非置換のアルキル基を表す。また、jは0〜150の整数を表し、好ましくは0〜50、最も好ましいのはjが0〜20の範囲である。
【0062】
その他のフッ素原子を有する化合物として、前記一般式(5)で表されるフッ素原子を有する有機金属化合物が挙げられる
【0063】
一般式(5)
[Rf−X−(CH2k−Y]m−M(R8n(OR9p
一般式(5)において、MはIn、Al、Sb、YまたはLaを表す。Rf、Xは前記一般式(F)におけるRf、Xと同様の基を表し、Yは単なる結合手または酸素を表す。kについても同じく0〜50の整数を表し、好ましくは30以下の整数である。R9はアルキル基またはアルケニル基を、またR8はアルキル基、アルケニル基またはアリール基を表し、それぞれ、前記一般式(1)のR1〜R6の置換基として挙げた基と同様の基により置換されていてもよい。また、一般式(5)において、m+n+p=3であり、mは少なくとも1であり、nは0〜2を、またpも0〜2の整数を表す。m+p=3、即ちn=0であることが好ましい。
【0064】
その他のフッ素原子を有する化合物として、下記一般式(6)で表されるフッ素原子を有する有機金属化合物がある。
【0065】
一般式(6)
f1(OC36m1−O−(CF2n1−(CH2p1−Z−(CH2q1−Si−(R23
一般式(6)において、Rf1は炭素数1〜16の直鎖状又は分岐状のパーフルオロアルキル基、R2は加水分解基、Zは−OCONH−又は−O−を表し、m1は1〜50の整数、n1は0〜3の整数、p1は0〜3の整数、q1は1〜6の整数を表し、6≧n1+p1>0である。
【0066】
f1に導入しうる直鎖状又は分岐状のパーフルオロアルキル基の炭素数は、1〜16がより好ましく、1〜3が最も好ましい。従って、Rf1としては、−CF3、−C25、−C37等が好ましい。
【0067】
2に導入しうる加水分解基としては、−Cl、−Br、−I、−OR11、−OCOR11、−CO(R11)C=C(R122、−ON=C(R112、−ON=CR13、−N(R122、−R12NOCR11などが好ましい。R11はアルキル基などの炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基を、またはフェニル基などの炭素数6〜20の芳香族炭化水素基を表し、R12は水素原子またはアルキル基などの炭素数1〜5の脂肪族炭化水素を表し、R13はアルキリデン基などの炭素数3〜6の二価の脂肪族炭化水素基を表す。これらの加水分解基の中でも、−OCH3、−OC25、−OC37、−OCOCH3及び−NH2が好ましい。
【0068】
上記一般式(6)におけるm1は1〜30あることがより好ましく、5〜20であることが更に好ましい。n1は1または2であることがより好ましく、p1は1または2であることがより好ましい。また、q1は1〜3であることがより好ましい。
【0069】
その他のフッ素原子を有する化合物として、下記一般式(7)で表されるフッ素原子を有する有機金属化合物がある。
【0070】
前記一般式(7)において、Rfは炭素数1〜16の直鎖状または分岐状パーフルオロアルキル基、Xはヨウ素原子または水素原子、Yは水素原子または低級アルキル基、Zはフッ素原子またはトリフルオロメチル基、R21は加水分解可能な基、R22は水素原子または不活性な一価の有機基を表し、a、b、c、dはそれぞれ0〜200の整数、eは0または1、mおよびnは0〜2の整数、pは1〜10の整数を表す。
【0071】
前記一般式(7)において、Rfは、通常、炭素数1〜16の直鎖状または分岐状パーフルオロアルキル基であり、好ましくは、CF3基、C25基、C37基である。Yにおける低級アルキル基としては、通常、炭素数1〜5のものが挙げられる。
【0072】
21の加水分解可能な基としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子、R23O基、R23COO基、(R242C=C(R23)CO基、(R232C=NO基、R25C=NO基、(R242N基、及びR23CONR24基が好ましい。ここで、R23はアルキル基等の通常は炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基またはフェニル基等の通常は炭素数6〜20の芳香族炭化水素基、R24は水素原子またはアルキル基等の通常は炭素数1〜5の低級脂肪族炭化水素基、R25はアルキリデン基等の通常は炭素数3〜6の二価の脂肪族炭化水素基である。さらに好ましくは、塩素原子、CH3O基、C25O基、C37O基である。
【0073】
22は水素原子または不活性な一価の有機基であり、好ましくは、アルキル基等の通常は炭素数1〜4の一価の炭化水素基である。a、b、c、dは0〜200の整数であり、好ましくは1〜50である。mおよびnは、0〜2の整数であり、好ましくは0である。pは1または2以上の整数であり、好ましくは1〜10の整数であり、さらに好ましくは1〜5の整数である。また、数平均分子量は5×102〜1×105であり、好ましくは1×103〜1×104である。
【0074】
また、前記一般式(7)で表されるシラン化合物の好ましい構造のものとして、RfがC37基であり、aが1〜50の整数であり、b、c及びdが0であり、eが1であり、Zがフッ素原子であり、nが0である化合物である。
【0075】
本発明において、本発明に係る前記一般式(3)で表されるフッ素を有する有機基を有する有機金属化合物、及び前記一般式(1)、(2)、(4)〜(7)で表される参照のフッ素を有する化合物の代表的化合物を以下に挙げるが、本発明ではこれらの化合物に限定されるものではない。
【0076】
1:(CF3CH2CH24Si
2:(CF3CH2CH22(CH32Si
3:(C817CH2CH2)Si(OC253
4:CH2=CH2Si(CF33
5:(CH2=CH2COO)Si(CF33
6:(CF3CH2CH22SiCl(CH3
7:C817CH2CH2Si(Cl)3
8:(C817CH2CH22Si(OC252
9:CF3CH2CH2Si(OCH33
10:CF3CH2CH2SiCl3
11:CF3(CF23CH2CH2SiCl3
12:CF3(CF25CH2CH2SiCl3
13:CF3(CF25CH2CH2Si(OCH33
14:CF3(CF27CH2CH2SiCl3
15:CF3(CF27CH2CH2Si(OCH33
16:CF3(CF28CH2Si(OC253
17:CF3(CH22Si(OC253
18:CF3(CH22Si(OC373
19:CF3(CH22Si(OC493
20:CF3(CF25(CH22Si(OC253
21:CF3(CF25(CH22Si(OC373
22:CF3(CF27(CH22Si(OC253
23:CF3(CF27(CH22Si(OC373
24:CF3(CF27(CH22Si(OCH3)(OC372
25:CF3(CF27(CH22Si(OCH32OC37
26:CF3(CF27(CH22SiCH3(OCH32
27:CF3(CF27(CH22SiCH3(OC252
28:CF3(CF27(CH22SiCH3(OC372
29:(CF32CF(CF28(CH22Si(OCH33
30:C715CONH(CH23Si(OC253
31:C817SO2NH(CH23Si(OC253
32:C817(CH22OCONH(CH23Si(OCH33
33:CF3(CF27(CH22Si(CH3)(OCH32
34:CF3(CF27(CH22Si(CH3)(OC252
35:CF3(CF27(CH22Si(CH3)(OC372
36:CF3(CF27(CH22Si(C25)(OCH32
37:CF3(CF27(CH22Si(C25)(OC372
38:CF3(CH22Si(CH3)(OCH32
39:CF3(CH22Si(CH3)(OC252
40:CF3(CH22Si(CH3)(OC372
41:CF3(CF25(CH22Si(CH3)(OCH32
42:CF3(CF25(CH22Si(CH3)(OC372
43:CF3(CF22O(CF23(CH22Si(OC373
44:C715CH2O(CH23Si(OC253
45:C817SO2O(CH23Si(OC253
46:C817(CH22OCHO(CH23Si(OCH33
47:CF3(CF25CH(C49)CH2Si(OCH33
48:CF3(CF23CH(C49)CH2Si(OCH33
49:(CF32(p−CH3−C65)COCH2CH2CH2Si(OCH33
50:CF3CO−O−CH2CH2CH2Si(OCH33
51:CF3(CF23CH2CH2Si(CH3)Cl
52:CF3CH2CH2(CH3)Si(OCH32
53:CF3CO−O−Si(CH33
54:CF3CH2CH2Si(CH3)Cl2
55:(CF32(p−CH3−C65)COCH2CH2Si(OCH33
56:(CF32(p−CH3−C65)COCH2CH2Si(OC653
57:(CF324)(CH32Si−O−Si(CH33
58:(CF324)(CH32Si−O−Si(CF324)(CH32
59:CF3(OC3624−O−(CF22−CH2−O−CH2Si(OCH33
60:CF3O(CF(CF3)CF2O)mCF2CONHC36Si(OC253 (m=11〜30)、
61:(C25O)3SiC36NHCOCF2O(CF2O)n(CF2CF2O)pCF2CONHC36Si(OC253 (n/p=約0.5、数平均分子量=約3000)
62:C37−(OCF2CF2CF2)q−O−(CF22−[CH2CH{Si−(OCH33}]9−H (q=約10)
63:F(CF(CF3)CF2O)15CF(CF3)CONHCH2CH2CH2Si(OC253
64:F(CF24[CH2CH(Si(OCH33)]2.02OCH3
65:(C25O)3SiC36NHCO−[CF2(OC2410(OCF26OCF2]−CONHC36Si(OC253
66:C37(OC3624O(CF22CH2OCH2Si(OCH33
67:CF3(CF23(C64)C24Si(OCH33
68:(CF32CF(CF26CH2CH2SiCH3(OCH32
69:CF3(CF23(C64)C24SiCH3(OCH32
70:CF3(CF25(C64)C24Si(OC253
71:CF3(CF2324Si(NCO)3
72:CF3(CF2524Si(NCO)3
73:C919CONH(CH23Si(OC253
74:C919CONH(CH23SiCl3
75:C919CONH(CH23Si(OC253
76:C37O(CF(CF3)CF2O)2−CF(CF3)−CONH(CH2)Si(OC253
77:CF3O(CF(CF3)CF2O)6CF2CONH(CH23SiOSi(OC252(CH23NHCOCF2(OCF2CF(CF3))6OCF3
78:C37COOCH2Si(CH32OSi(CH32CH2OCOC37
79:CF3(CF27CH2CH2O(CH23Si(CH32OSi(CH32(CH23OCH2CH2(CF27CF3
80:CF3(CF25CH2CH2O(CH22Si(CH32OSi(CH32(OC25
81:CF3(CF25CH2CH2O(CH22Si(CH32OSi(CH3)(OC252
82:CF3(CF25CH2CH2O(CH22Si(CH32OSi(CH32OSi(CH3)2(OC25
上記例示した化合物の他には、フッ素置換アルコキシシランとして、
83:(パーフルオロプロピルオキシ)ジメチルシラン
84:トリス(パーフルオロプロピルオキシ)メチルシラン
85:ジメチルビス(ノナフルオロブトキシ)シラン
86:メチルトリス(ノナフルオロブトキシ)シラン
87:ビス(パーフルオロプロピルオキシ)ジフェニルシラン
88:ビス(パーフルオロプロピルオキシ)メチルビニルシラン
89:ビス(1,1,1,3,3,4,4,4−オクタフルオロブトキシ)ジメチルシラン
90:ビス(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロポキシ)ジメチルシラン
91:トリス(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロポキシ)メチルシラン
92:テトラキス(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロポキシ)シラン
93:ジメチルビス(ノナフルオロ−t−ブトキシ)シラン
94:ビス(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロポキシ)ジフェニルシラン
95:テトラキス(1,1,3,3−テトラフルオロイソプロポキシ)シラン
96:ビス〔1,1−ビス(トリフルオロメチル)エトキシ〕ジメチルシラン
97:ビス(1,1,1,3,3,4,4,4−オクタフルオロ−2−ブトキシ)ジメチルシラン
98:メチルトリス〔2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1,1−ビス(トリフルオロメチル)プロポキシ〕シラン
99:ジフェニルビス〔2,2,2−トリフルオロ−1−(トリフルオロメチル)−1−トリルエトキシ〕シラン
等の化合物や、以下の化合物、
100:(CF3CH23Si(CH2−NH2
101:(CF3CH23Si−N(CH32
【0077】
【化5】
Figure 0004506112
【0078】
更に、
【0079】
【化6】
Figure 0004506112
【0080】
等のシラザン類や、
106:CF3CH2−CH2TiCl3
107:CF3(CF23CH2CH2TiCl3
108:CF3(CF25CH2CH2Ti(OCH33
109:CF3(CF27CH2CH2TiCl3
110:Ti(OC374
111:(CF3CH2−CH2O)3TiCl3
112:(CF324)(CH32Ti−O−Ti(CH33
等のフッ素を有する有機チタン化合物、また、以下のようなフッ素含有有機金属化合物を例として挙げることができる。
【0081】
113:CF3(CF23CH2CH2O(CH23GeCl
114:CF3(CF23CH2CH2OCH2Ge(OCH33
115:(C37O)2Ge(OCH32
116:[(CF32CHO]4Ge
117:[(CF32CHO]4Zr
118:(C37CH2CH22Sn(OC252
119:(C37CH2CH2)Sn(OC253
120:Sn(OC374
121:CF3CH2CH2In(OCH32
122:In(OCH2CH2OC373
123:Al(OCH2CH2OC373
124:Al(OC373
125:Sb(OC373
126:Fe(OC373
127:Cu(OCH2CH2OC372
128:C37(OC3624O(CF22CH2OCH2Si(OCH33
【0082】
【化7】
Figure 0004506112
【0083】
これら具体例で挙げられた各化合物は、東レ・ダウコーニングシリコーン(株)、信越化学(株)、ダイキン化学(株)(例えば、オプツールDSX)また、Gelest Inc.等により上市されており、容易に入手することができる他、例えば、J.Fluorine Chem.,79(1).87(1996)、材料技術,16(5),209(1998)、Collect.Czech.Chem.Commun.,44巻,750〜755頁、J.Amer.Chem.Soc.1990年,112巻,2341〜2348頁、Inorg.Chem.,10巻,889〜892頁,1971年、米国特許第3,668,233号明細書等、また、特開昭58−122979号、特開平7−242675号、特開平9−61605号、同11−29585号、特開2000ー64348号、同2000−144097号公報等に記載の合成方法、あるいはこれに準じた合成方法により製造することができる。
【0084】
本発明の薄膜形成方法は、上記一般式(3)で表されるフッ素原子を有する有機基を有する有機金属化合物を含有する薄膜形成ガスを被処理体に供給しながら、大気圧もしくは大気圧近傍の圧力下で、少なくとも窒素ガスと水素ガスを含有する放電ガスを放電空間に導入して励起した励起放電ガスを、該被処理体に供給して防汚膜を形成するものである。
【0085】
更に好ましくは、励起放電ガスの放出口及び電極対を備えた固体誘電体容器内に放電ガスを流通させた状態で、電極と、該電極と対向して対をなす他の電極との間に電界を印加することにより、大気圧もしくは大気圧近傍の圧力下で、該放電ガスを放電空間に導入して励起放電ガスを発生させ、該励起放電ガスの供給方向と交差する方向から、被処理体に向けて薄膜形成ガスを供給する薄膜形成方法である。
【0086】
本発明において、放電空間とは、所定の距離を有して対向配置された電極対により挟まれ、かつ前記電極対間へ放電ガスを導入して電界を印加することにより放電を起こす空間である。放電空間の形態は、特に制限はなく、例えば、対向する平板電極対により形成されるスリット状であっても、あるいは2つの円筒電極間に円周状に形成された空間であっても良い。
【0087】
また、上記被処理体に励起した放電ガスあるいは薄膜形成ガス(両者を併せて処理ガスともいう)を供給する方法としては、特に限定されず、公知のガス供給方法により行うことができる。被処理体の近傍に励起した放電ガス放出口を設け、放電プラズマの放電方向と交差する方向から当該被処理体に向けて放電ガスを供給することにより、少量の処理ガスで効率よく処理を行うことができる。
【0088】
本発明でいう大気圧又は大気圧近傍の圧力下とは、20kPa〜200kPaの圧力下である。本発明において、電界を印加する電極間のさらに好ましい圧力は、70kPa〜140kPaである。
【0089】
次いで、本発明の薄膜形成方法に用いる大気圧プラズマ放電処理装置、大気圧プラズマ放電処理方法及び大気圧プラズマ放電処理装置用の電極システムについて、以下にその実施の形態を図を用いて説明するが、本発明はこれに限定されない。また、以下の説明には、用語等に対し断定的な表現が含まれている場合があるが、本発明の好ましい例を示すものであって、本発明の用語の意義や技術的な範囲を限定するものではない。
【0090】
図1は、本発明に有用な大気圧プラズマ放電処理装置の一例を示す断面図である。
【0091】
以下、本発明でいう大気圧プラズマ放電処理装置とは、大気圧もしくは大気圧近傍の圧力下で、フッ素原子を有する有機基を有する有機金属化合物を含有する薄膜形成ガスを被処理体に供給しながら、大気圧もしくは大気圧近傍の圧力下で、放電ガスを放電空間に導入して励起した励起放電ガスを、該被処理体に供給して薄膜を形成する装置をいう。
【0092】
図1において、大気圧プラズマ放電処理装置は、一方の第1電極2が外面に配設され、第1電極2と対応する位置の他の第2電極3が外面に配置され、第1電極2と第2電極3は、少なくとも対向する面に誘電体4が設けられ、かつ、放電ガス導入口5と励起放電ガス放出口6を備えた固体誘電体容器1、電界印加手段10である対向電極間に高周波電界を印加する高周波電源11、及び薄膜形成ガス供給部7からなる放電プラズマ処理装置であって、固体誘電体容器1に放電ガスを流通させた状態で対をなす電極の間に電界を印加することにより放電プラズマを発生させるものであり、かつ、励起放電ガスの供給方向と、薄膜形成ガスの供給方向が交差するように配置して、被処理体S上に薄膜形成を行う。
【0093】
また、固体誘電体容器1と薄膜形成ガス供給部7とは、保持継ぎ手14を介して可動治具13により、各々が任意の交差角度となるように固定されている。また、図1においては図示していないが、上記構成の他に、放電ガスを固体誘電体容器1に、また薄膜形成ガスを薄膜形成ガス供給部7に導入するガス供給手段、前記電極温度を制御する電極温度調整手段等から構成されている。
【0094】
本発明でいう励起放電ガスの供給方向と、薄膜形成ガスの供給方向が交差するとは、励起放電ガスの供給方向、すなわち固体誘電体容器1と、薄膜形成ガスの供給方向、すなわち薄膜形成ガス供給部7とのなす角度が、0度(平行)を超え、360度未満の範囲であることを意味し、両ガスの混合効率等を考慮すると0度(平行)を超え、180度以下であることが好ましく、より好ましくは15〜150度である。
【0095】
また、本発明の薄膜形成装置においては、少量の処理ガスで効率よく処理を行うためには、前記励起放電ガスの放出方向と薄膜形成ガスの放出方向が交差する領域が、励起放電ガスの放出口近傍にあるようになされており、当該交差する領域に被処理体を位置させることが好ましい。さらに、薄膜形成ガスの放出口も、上記交差する領域の近傍であることが好ましい。
【0096】
また、前記被処理体Sと前記励起放電ガス放出口6との間の距離は、前記励起放電ガス放出口6から放出される放電プラズマの流速により適宜決められるが、空気と接触する確率が高くなり、大流速が必要となるので、好ましくは0.01〜10cmである。
【0097】
本発明の薄膜形成装置においては、固体誘電体容器と、前記薄膜形成ガス供給部とが可動治具により連結されており、該固体誘電体容器と該薄膜形成ガス供給部とが、略一定の相対位置を保ちながら移動可能であることが好ましい。
【0098】
第1電極2と第2電極3とで挟まれ、かつ誘電体4を有する領域が放電空間である。この放電空間に、放電ガスGを放電ガス導入口5より導入して励起させる。また、フッ素原子を有する有機基を有する有機金属化合物を含有する薄膜形成ガスMは、薄膜形成ガス導入口8より、薄膜形成ガス供給部7に導入する。次いで、固体誘電体容器1の励起放電ガス放出口6より励起した放電ガスG′を、また薄膜形成ガス供給部7の薄膜形成ガス放出部9より薄膜形成ガスMを、それぞれ交差する条件で、被処理体S表面に晒して薄膜を形成する。なお、被処理体Sは、支持体のようなシート状の被処理体のみでなく、様々な大きさ、形状のものを処理することが可能となる。例えば、レンズ形状、球状などの厚みを有するような形状の被処理体へも薄膜形成することができる。
【0099】
本発明の薄膜形成方法においては、薄膜形成原料として、フッ素原子を有する有機基を有する有機金属化合物を用い、かつ励起した放電ガスと、薄膜形成ガスとを交差する関係にて接触させることにより、優れた撥水性、撥油性、皮脂やインクふき取り性及びその繰り返し耐久性を有し、かつ耐擦性が良好な薄膜を得ることができるものである。
【0100】
一対の対向電極(第1電極2と第2電極3)は、金属母材と誘電体4で構成され、該金属母材をライニングすることにより無機質的性質の誘電体を被覆する組み合わせにより、また、金属母材に対しセラミックス溶射した後、無機質的性質の物質により封孔処理した誘電体を被覆する組み合わせにより構成されていてもよい。金属母材としては、銀、白金、ステンレススティール、アルミニウム、鉄、チタン、銅、金等の金属を使うことができる。また、誘電体のライニング材としては、ケイ酸塩系ガラス、ホウ酸塩系ガラス、リン酸塩系ガラス、ゲルマン酸塩系ガラス、亜テルル酸塩ガラス、アルミン酸塩ガラス、バナジン酸塩ガラス等を用いることができ、この中でもホウ酸塩系ガラスが加工し易く好ましい。また、誘電体の溶射に用いるセラミックスとしては、アルミナが良く、酸化珪素等で封孔処理することが好ましい。封孔処理としては、アルコキシラン系封孔材をゾルゲル反応させて無機化させることができる。
【0101】
また、図1では、対向電極は、第1電極2と第2電極3のように平板電極を用いてあるが、一方もしくは双方の電極を中空の円柱型電極あるいは角柱型電極としてもよい。この対向電極のうち一方の電極(第2電極3)に高周波電源11が接続され、他方の電極(第1電極2)は、アース12により接地され、対向電極間に電界を印加出来るように構成されている。また、図1に示した構成に対し、電界印加を第1電極2とし、他方の第2電極3をアースした構成でも良い。
【0102】
電界印加手段10は高周波電源11より、それぞれの電極対に電界を印加する。本発明に用いる高周波電源としては、特に限定はない。高周波電源としては、神鋼電機製高周波電源(3kHz)、神鋼電機製高周波電源(5kHz)、神鋼電機製高周波電源(15kHz)、神鋼電機製高周波電源(50kHz)、ハイデン研究所製高周波電源(連続モード使用、100kHz)、パール工業製高周波電源(200kHz)、パール工業製高周波電源(800kHz)、パール工業製高周波電源(2MHz)、日本電子製高周波電源(13.56MHz)、パール工業製高周波電源(27MHz)、パール工業製高周波電源(150MHz)等を使用できる。また、433MHz、800MHz、1.3GHz、1.5GHz、1.9GHz、2.45GHz、5.2GHz、10GHzを発振する電源を用いてもよい。
【0103】
本発明に係る防汚膜を形成するする場合の対向電極間に印加する高周波電界の周波数としては、特に限定はないが、高周波電源として0.5kHz以上、2.45GHz以下が好ましい。また、対向電極間に供給する電力は、好ましくは0.1W/cm2以上、50W/cm2以下である。尚、対向電極における電界の印加面積(cm2)は、放電が起こる範囲の面積のことを指す。
【0104】
対向電極間に印加する高周波電界は、断続的なパルス波であっても、連続したサイン波であっても構わない。パルス化された電界を印加する場合には、パルス電界波形の例としては、インパルス型、パルス型、変調型の波形が挙げられる。本発明におけるパルス電界波形は、ここで挙げた波形に限定されないが、パルスの立ち上がり時間が短いほどプラズマ発生の際のガスの電離が効率よく行われる。好ましくは、立ち上がり時間が100μs以下である。更に、パルス波形、立ち上がり時間、周波数の異なるパルスを用いて変調を行ってもよい。このような変調は高速連続表面を行う上で有効である。
【0105】
本発明において、対向電極間の距離は、電極の金属母材上の誘電体の厚さ、印加電界の大きさ、プラズマを利用する目的等を考慮して決定される。上記電極の一方に誘電体を設置した場合の誘電体と電極の最短距離、上記電極の双方に誘電体を設置した場合の誘電体同士の距離を電極間の距離として、いずれの場合も均一な放電を行う観点から0.1mm〜20mmが好ましい。
【0106】
本発明に係る薄膜形成前、被処理体を別途設けた放電空間に晒して表面処理を施しても良い。また、薄膜形成前に、予め被処理体表面の除電処理を行い、更にゴミ除去を行っても良い。除電手段及び除電処理後のゴミ除去手段としては、通常のブロアー式や接触式以外に、複数の正負のイオン生成用除電電極と被処理体を挟むようにイオン吸引電極を対向させた除電装置とその後に正負の直流式除電装置を設けた高密度除電システム(特開平7−263173号)を用いてもよい。また、除電処理後のゴミ除去手段としては、非接触式のジェット風式減圧型ゴミ除去装置(特開平7−60211号)等を挙げることが出来好ましく用いることも出来るが、これらに限定されない。
【0107】
また、本発明の薄膜形成装置においては、被処理体移動装置を有し、該被処理体移動装置上に設置した被処理体が、前記励起放電ガスの供給部近傍に移動して、励起放電ガスに晒されることが好ましい。図1に記載の15が、本発明に係る被処理体移動装置で、その上に被処理体Sを保持した状態で、任意の方向に移動する。
【0108】
次に、放電空間に供給する放電ガスについて説明する。
放電ガスとは、放電を起こすことの出来るガスである。放電ガスとしては、一般には、窒素、希ガス、空気、水素、酸素などがあるが、本発明の薄膜形成方法においては、少なくとも窒素ガスと水素ガスを用いることを特徴の1つとし、放電ガス中の窒素ガスの含有量が50体積%以上であることが好ましく、更に好ましくは全放電ガス量に対し50〜99体積%である。放電ガスの量は、放電空間に供給する全ガス量に対し、70〜100体積%含有することが好ましい。
【0109】
また、本発明に係る薄膜形成ガスとは、本発明に係る前述の一般式(3)で表されるフッ素原子を有する有機基を有する有機金属化合物を含有し、被処理体上に化学的に堆積して薄膜を形成するガスのことである。本発明においては、薄膜形成ガスに対する本発明に係る前述のフッ素原子を有する有機基を有する有機金属化合物の含有量としては、0.001〜30.0体積%の範囲であることが好ましい。
【0110】
本発明に係る薄膜形成ガスは、上述の放電ガスとして説明した窒素や希ガス等を含有することができる。なお、本発明に係る薄膜形成ガスは、水素ガス、酸素ガス、窒素ガス、空気等の補助ガスを0.001体積%〜30体積%混合させて使用してもよい。
【0111】
本発明の薄膜形成方法で処理される被処理体の材質は、特に限定はなく、酸化金属、プラスチック、金属、陶器、紙、木材、不織布、ガラス板、セラミック、建築材料等を挙げることができ、特に、被処理体表面が、無機化合物を含む表面、あるいは有機化合物を含む表面で構成されていることが、本発明の目的効果を発揮する観点から好ましいが、その中でも、更に好ましくはシリカ、チタニア等の酸化金属を主成分とする表面の被処理体である。また、被処理体の形態は、シート状でも成型品でもよく、ガラスとしては板ガラスやレンズ等、プラスチックとしては、プラスチックレンズ、プラスチックフィルム、プラスチックシート、あるいはプラスチック成型品等が挙げられる。被処理体が、このようなプラスチックを支持体とする場合には、その表面に酸化金属膜を形成したものが好ましい。
【0112】
本発明の薄膜形成方法により得られる薄膜形成体において、被処理体上に形成された薄膜表面の表面比抵抗値が、23℃、55%RH条件下で1×1012Ω/□以下であることが好ましい。
【0113】
次いで、本発明に有用な大気圧プラズマ放電処理装置の他の例を以下に説明する。
【0114】
図2は、図1で示した本発明に有用な大気圧プラズマ放電処理装置の一例を示す斜視図である。
【0115】
図2に示す大気圧プラズマ放電処理装置は、薄膜形成する被処理体のほぼ幅手全域にわたり、励起放電ガス放出口及び薄膜形成ガス放出口を有し、固体誘電体容器及び薄膜形成ガス供給部を固定した状態で、連続して薄膜を形成することが可能な装置である。
【0116】
図2において、固体誘電体容器1には、各々長方形で同じ大きさである平板電極21、22が設けられており、平板電極21と平板電極22はそれぞれ対向電極を構成している。この一対の対向電極は平行に配置されている。また、各平板電極は四隅をそろえて配置されている。平板電極21と22のそれぞれの対向面には、図1で説明したのと同様の誘電体(不図示)が被覆されている。なお、本発明においては、平板電極21、22の少なくとも一方の電極の対向する面が誘電体で被覆されていればよい。
【0117】
対向する平板電極21、22間で形成される放電空間の幅手方向の端面(図中、手前面及び奥側面)は、蓋体23、23′によって塞がれている。蓋体は、放電空間と放電空間外との間で気体等が移動できないようにする。
【0118】
24は、平板電極21、22間に放電ガスGを導入するための放電ガス導入口であり、平板電極21、22の隙間のうち、蓋体23、23′で塞がれていない方向の一方の端部(図中上部)を、放電ガス導入口24として用いている。
【0119】
図2の大気圧プラズマ処理装置においては、放電ガス導入口24は、電極21、22の隙間の一部をそのまま放電ガス導入口24として用いているが、該隙間にさらに部材を設けることで、放電ガス導入口24を平板電極21、22間に放電ガスを効率よくかつ容易に導入することができる形状にしてもよい。
【0120】
25は、電極21、22間で励起した放電ガスを平板電極21、22間の外に放出するための励起放電ガス放出口であり、平板電極21、22の隙間のうち、放電ガス導入口24と向かい合う端部(図中下部)を励起放電ガス放出口25として用いる。よって、放電ガス導入口24と励起放電ガス放出口25は同じ端部を用いることになる。
【0121】
薄膜形成ガス供給部7は、基本的には上記固体誘電体容器1が有する構造と同様のものが挙げられ、例えば、長方状の形態で、その内部にスリット状の薄膜形成ガスMの導入路を有している。26は、薄膜形成ガスMを導入するための薄膜形成ガス導入口であり、導入された薄膜形成ガスMは、薄膜形成ガス放出口27より、前記励起放電ガスと交差する状態て、被処理体S表面に供給され、被処理体上に目的とする防汚膜を形成することができる。
【0122】
薄膜形成ガス放出口27は、薄膜形成ガス導入口26と向かい合う端部(図中下端部)を薄膜形成ガス放出口として用いている。また、励起放電ガス放出口と薄膜形成ガス放出口という構成を複数個並べた構造にしても良い。
【0123】
11は平板電極21、22間に高周波電界を印加するための高周波電源である。12はアースであり、平板電極22はアース12で接地されている。
【0124】
平板電極間21、22間に存在させる放電ガスは、大気圧又は大気圧近傍の圧力下で存在させ、高周波電源11によって、平板電極間21、22間に電界を印加することで放電ガスを励起させ、励起放電ガスを発生させる。
【0125】
図2の大気圧プラズマ放電処理装置に用いられる電極システムは、平板電極21、22で構成され、平板電極21、22間に電界が印加され放電するようになっているのであるが、この電極システムを複数設け、さらに各電極システムに放電ガス導入口、薄膜形成ガス導入口、励起放電ガス放出口、薄膜形成ガス放出口を設けることで、被処理体への薄膜形成を複数回行うこともできる。これにより、被処理体S上に、同一成分、あるいは異なる成分の複数製膜を施したりすることができる。
【0126】
次に、図2に示した大気圧プラズマ放電処理装置を用いた薄膜形成方法を説明する。
【0127】
放電ガス導入口24から平板電極21、22間に放電ガスGを導入し、平板電極21、22間に大気圧又は大気圧近傍の圧力下で、放電ガスGを存在させる。平板電極21、22間に高周波電源11によって高周波電界が印加され、平板電極21、22間に存在する放電ガスGを励起させ励起放電ガスG′を発生させる。平板電極21、22間で発生した励起放電ガスG′は、新たに放電ガス導入口24から導入されてくる放電ガスGに押され、また、蓋体23、23′によって電極の側面方向の隙間は塞がれていることから、放電ガス放出口25より平板電極21、22間の外へと放出される。
【0128】
一方、薄膜形成ガスMは、薄膜形成ガス導入口26からが導入される。スリット間に導入された薄膜形成ガスMは、新たに薄膜形成ガス導入口26から導入されてくる薄膜形成ガスMに押され、薄膜形成ガス放出口27から外へと放出される。
【0129】
薄膜形成ガス放出口27から放出される薄膜形成ガスMは、励起放電ガス放出口25から放出される励起放電ガスG′と、交差する形態で混合され、被処理体8上に薄膜が形成される。
【0130】
なお、図2には記載されていないが、図1と同様に、固体誘電体容器1と薄膜形成ガス供給部7とは、保持継ぎ手を介して可動治具により、各々が任意の交差角度となるように固定されている。
【0131】
図3は、本発明で用いることのできる他の大気圧プラズマ放電処理装置の一例を示す斜視図である。
【0132】
33は内側電極であり、32は外側電極であり、一対の対向電極を構成している。外側電極32は、中空の円筒状電極であり、外側電極32の筒管内に、円筒状の内側電極33を同心配置している。
【0133】
本発明では、内側電極33、外側電極32の対向する面を共に誘電体で被覆しても良く、また内側電極33、外側電極32のうちどちらかの電極の対向する面に誘電体が被覆されていてもよい。そして、この対向面間で放電が発生する。
【0134】
内側電極33、外側電極32には、先ほど図1で説明した電極1、2に用いることができる電極、誘電体を用いることができる。
【0135】
35は内側電極33と外側電極32の間に放電ガスGを導入するための放電ガス導入口である。内側電極33と外側電極32の間とで放電空間が形成される。また、放電ガス導入口35は内側電極33と外側電極32の間の端部の一方を用いる。
【0136】
図3の大気圧プラズマ処理装置においては、放電ガス導入口35は、内側電極33と外側電極32の隙間の上端部をそのまま放電ガス導入口35として用いているが、該隙間にさらに部材を設けることで、放電ガス導入口35を内側電極33と外側電極32の間に放電ガスを効率よく容易に導入することができる形状にしてもよい。
【0137】
36は、内側電極33と外側電極32の間で発生した励起放電ガスG′を内側電極33と外側電極32の間の外に放出するための励起放電ガス放出口であり、内側電極33と外側電極32の隙間において、放電ガス導入口35として用いていないほうの下端部を用いる。
【0138】
図3の大気圧プラズマ処理装置に用いられる電極システムは、内側電極33と外側電極32で構成され、内側電極33と外側電極32の間に高周波電源11で電界を印加されるようになっているのであるが、この電極システムを複数設け、さらに各電極システムに放電ガス導入口、励起放電ガス放出口、薄膜形成ガス導入口、薄膜形成ガス放出口を設けることで、被処理体へ薄膜形成を複数回行うこともできる。これにより、被処理体Sに、同一成分、あるいは異なる成分の複数製膜を施すことができる。
【0139】
次に、図3に示した大気圧プラズマ処理装置を用いた薄膜形成方法を説明する。
【0140】
放電ガス導入口35から内側電極33と外側電極32の間に放電ガスGを導入し、内側電極33と外側電極32の間に大気圧又は大気圧近傍の圧力下で放電ガスを存在させる。内側電極33と外側電極32の間に高周波電源11によって高周波電界が印加され、内側電極33と外側電極32の間に存在する放電ガスGを励起して励起放電ガスG′を発生させる。内側電極33と外側電極32の間で発生した励起放電ガスG′は、新たに放電ガス導入口35から導入されてくる放電ガスGに押し出されるようにして、励起放電ガス放出口36より内側電極33と外側電極32の間から外部へと放出される。
【0141】
一方、薄膜形成ガス供給部7は、中空の円筒状構造を有し、上部に設けた薄膜形成ガス導入口38から薄膜形成ガスMを導入し、薄膜形成ガス放出口39から薄膜形成ガスMを放出する。薄膜形成ガス放出口39から放出された薄膜形成ガスMは、励起放電ガス放出口36から放出された励起放電ガスG′と、被処理体S状で、交差する状態で混合され、被処理体S上に薄膜を形成する。
【0142】
本発明の薄膜形成方法においては、被処理体を放電空間、または励起放電ガスに晒して前処理を行った後、前記励起放電ガスと薄膜形成ガスとに被処理体を晒すこともできる。
【0143】
以下に、本発明に係る薄膜形成前、被処理体を放電空間に晒して薄膜形成する前処理に用いる大気圧プラズマ放電装置について説明する。
【0144】
図4は、本発明に係る前処理に用いる大気圧プラズマ放電装置の一例を示す概略図である。図4はプラズマ放電処理装置130、ガス供給手段150、電界印加手段140、及び電極温度調節手段160から構成されている。ロール回転電極135と角筒型固定電極群136として、被処理体Fをプラズマ放電処理するものである。ロール回転電極135はアース電極で、角筒型固定電極群136は高周波電源141に接続されている印加電極である。被処理体Fは、ガイドロール164を経てニップロール165で被処理体に同伴して来る空気等を遮断し、ロール回転電極135に接触したまま巻き回されながら角筒型固定電極群136との間を移送され、ニップロール166、ガイドロール167を経て、次工程である本発明に係る薄膜形成工程に移送する。前処理用ガスはガス供給手段150で、ガス発生装置151で発生させた前処理用のガスGを、流量制御して給気口152より対向電極間(ここが放電空間になる)132のプラズマ放電処理容器131内に入れ、該プラズマ放電処理容器131内を前処理用のガスGで充填し、放電処理が行われた処理排ガスG′を排気口153より排出するようにする。次に電界印加手段140で、高周波電源141により角筒型固定電極群136に電界を印加し、アース電極のロール回転電極135との電極間で放電プラズマを発生させる。ロール回転電極135及び角筒型固定電極群136を電極温度調節手段160を用いて媒体を加熱または冷却し電極に送液する。電極温度調節手段160で温度を調節した媒体を送液ポンプPで配管161を経てロール回転電極135及び角筒型固定電極群136内側から温度を調節する。プラズマ放電処理の際、被処理体の温度によって得られる薄膜の物性や組成は変化することがあり、これに対して適宜制御することが好ましい。媒体としては、蒸留水、油等の絶縁性材料が好ましく用いられる。プラズマ放電処理の際、幅手方向あるいは長手方向での被処理体の温度ムラを出来るだけ生じさせないようにロール回転電極135の内部の温度を制御することが望ましい。なお、168及び169はプラズマ放電処理容器131と外界を仕切る仕切板である。
【0145】
また、本発明の薄膜形成方法においては、薄膜を形成する被処理体表面が、無機化合物を含むこと、あるいは被処理体表面の主成分が、酸化金属であることが好ましい。
【0146】
本発明において、被処理体表面に上記構成物を含む層を設ける方法の1つとして、大気圧プラズマ放電装置を用いることができる。
【0147】
大気圧プラズマ放電装置としては、例えば、放電ガスがヘリウムまたはアルゴンを主成分とする場合は、前述の図4で説明した大気圧プラズマ放電装置と同様の装置を用いることができるが、放電ガスが窒素を主成分とする場合は、図5に示す大気圧プラズマ放電装置を用いることがより好ましい。
【0148】
図5は、本発明に係る被処理体の表面処理に用いる大気圧プラズマ放電装置の一例を示す概略図である。
【0149】
装置の概略は、図4に示した構成とほぼ同様であるが、ロール回転電極(第1電極)135と角筒型固定電極群(第2電極)136との間の放電空間(対向電極間)132に、ロール回転電極(第1電極)135には第1電源141から周波数ω1であって高周波電界V1を、また角筒型固定電極群(第2電極)136には第2電源142から周波数ω2であって高周波電界V2をかけるようになっている。
【0150】
ロール回転電極(第1電極)135と第1電源141との間には、第1電源141からの電流がロール回転電極(第1電極)135に向かって流れるように第1フィルター143が設置されている。該第1フィルターは第1電源141からの電流をアース側へと通過しにくくし、第2電源142からの電流をアース側へと通過し易くするように設計されている。また、角筒型固定電極群(第2電極)136と第2電源142との間には、第2電源からの電流が第2電極に向かって流れるように第2フィルター144が設置されている。第2フィルター144は、第2電源142からの電流をアース側へと通過しにくくし、第1電源141からの電流をアース側へと通過し易くするように設計されている。
【0151】
なお、ロール回転電極135を第2電極、また角筒型固定電極群136を第1電極としてもよい。何れにしろ第1電極には第1電源が、また第2電極には第2電源が接続される。第1電源は第2電源より大きな高周波電界(V1>V2)を印加出来る能力を有しており、また、周波数はω1<ω2となる能力を有している。
【0152】
【実施例】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0153】
《薄膜(防汚膜)形成体の作製》
〔被処理体1の作製〕
下記の手順に従って、セルローストリアセテートフィルム上に、帯電防止層、ハードコート層、反射防止層、また裏面にバックコート層を設けた被処理体1を作製した。
【0154】
(帯電防止層の形成)
厚さ80μmのセルローストリアセテートフィルム(コニカ社製、商品名:コニカタックKC80UVSF)の一方の面に、下記組成の帯電防止層1の塗布組成物を乾燥膜厚で0.2μmとなるようにダイコートし、80℃、5分間乾燥して、帯電防止層を設けた。
【0155】
〈帯電防止層の塗布組成物〉
ダイヤナール(BR−88 三菱レーヨン社製) 0.5質量部
プロピレングリコールモノメチルエーテル 60質量部
メチルエチルケトン 15質量部
乳酸エチル 6質量部
メタノール 8質量部
導電性ポリマー樹脂
IP−16(特開平9−203810号公報記載) 0.5質量部
(ハードコート層の形成)
上記帯電防止層を形成したフィルムに、下記ハードコート層組成物を、乾燥膜厚が3.5μmとなるように塗布し、80℃にて5分間乾燥した。次に80W/cm高圧水銀灯を12cmの距離から4秒間照射して硬化させ、ハードコート層を有するハードコートフィルムを作製した。ハードコート層の屈折率は1.50であった。
【0156】
〈ハードコート層組成物〉
Figure 0004506112
上記組成物を撹拌しながら溶解した。
【0157】
(バックコート層の塗設)
前記ハードコート層を塗設した面の反対面に、下記のバックコート層塗布組成物を、ウェット膜厚14μmとなるようにグラビアコーターで塗布し、乾燥温度85℃にて乾燥させてバックコート層を塗設した。
【0158】
〈バックコート層塗布組成物〉
アセトン 30質量部
酢酸エチル 45質量部
イソプロピルアルコール 10質量部
セルロースジアセテート 0.5質量部
アエロジル200V 0.1質量部
(反射防止層の形成)
図5に示した大気圧プラズマ放電処理装置を4基接続し、それぞれの装置の2個の電極の電極間隙を1mmとし、各装置の放電空間に下記ガスをそれぞれ供給し、上記作製したハードコート層上に、順次薄膜を形成した。各装置の第1電極に第1の高周波電源として、神鋼電機社製(50kHz)の高周波電源を使用し、高周波電界10kV/mm及び出力密度1W/cm2で、また、第2電極に第2の高周波電源として、パール工業社製(13.56MHz)の高周波電源を使用し、高周波電界0.8kV/mm及び出力密度5.0W/cm2で印加し、プラズマ放電を行って酸化チタンを主成分とする薄膜及び酸化珪素を主成分とする反射防止層を形成した。このときの各装置の放電空間における窒素ガスの放電開始電界は3.7kV/mmであった。なお、下記薄膜形成ガスは窒素ガス中で気化器によって蒸気とし、加温しながら放電空間に供給した。また、ロール電極はドライブを用いてセルロースエステルフィルムの搬送を同期して回転させた。両電極を80℃になるように調節保温して行った。
【0159】
〈酸化チタン層形成用ガス組成〉
放電ガス:窒素 97.9体積%
薄膜形成ガス:テトライソプロポキシチタン 0.1体積%
添加ガス:水素 2.0体積%
〈酸化珪素層形成用ガス組成〉
放電ガス:窒素 98.9体積%
薄膜形成ガス:テトラエトキシシラン 0.1体積%
添加ガス:酸素 1.0体積%
前記ハードコート層の上に、順に酸化チタン層、酸化珪素層、酸化チタン層、酸化珪素層を設け、帯電防止層、ハードコート層及び反射防止層を有する被処理体1(表1には、これをTACと記す)を作製した。なお、反射防止層を構成するそれぞれの層は、順に屈折率2.1(膜厚15nm)、屈折率1.46(膜厚33nm)、屈折率2.1(膜厚120nm)、屈折率1.46(膜厚76nm)であった。
【0160】
〔試料1の作製〕
(大気圧プラズマ放電処理装置)
上記作製したセルローストリアセテートフィルム上にハードコート層及び反射防止層を有する被処理体1に、図2に示す大気圧プラズマ放電処理装置を用いて、防汚膜の形成を行った。放電ガス導入口24より導入される放電ガスとして下記ガス種A、薄膜形成ガス導入口26より導入される薄膜形成ガスとしてガス種Bを用いた。
【0161】
〈ガス種A:放電ガス〉
アルゴンガス 98.5体積%
水素ガス 1.5体積%
〈ガス種B:薄膜形成ガス〉
アルゴンガス 99.8体積%
有機金属化合物(例示化合物15) 0.2体積%
(エステック社製気化器により、アルゴンガス中に例示化合物15を気化)
〈電極〉
電極21、22は、電極体にステンレスSUS316を用い、更に、電極の放電空間を構成する表面にアルミナセラミックを1mmになるまで溶射被覆させた後、アルコキシシランモノマーを有機溶媒に溶解させた塗布液をアルミナセラミック被膜に塗布し、乾燥させた後に、150℃で加熱し封孔処理を行って誘電体を形成した。電極の誘電体を被覆していない部分に、高周波電源11の接続やアース12による接地を行った。なお、励起放電ガス放出口25と被処理体との間隙は10mmとした。
【0162】
高周波電源11には、パール工業製高周波電源(周波数:13.56MHz)で、5W/cm2の放電電力を印加した。なお、波形はサイン波である。
【0163】
〈薄膜形成〉
供給された薄膜形成ガス(ガス種B)と放電ガス(ガス種A)は、各ガス放出口を出た後、被処理体1上で角度90度で交差、混合する様にして、被処理体表面へ薄膜を形成して試料1を得た。この時、被処理体は、薄膜形成ガス放出角度に対して45度の角度で、水平に配置した。また、薄膜形成装置は、水平に配置した被処理体に対し、図1中の左右方向及びそれに交差する方向(被処理体の移動方向)にそれぞれスキャンして行った。また、ガス種Bとガス種Aとの使用量は、体積として1:1の比で用いた。
【0164】
〔試料2〜11の作製〕
上記試料1の作製において、ガス種Bの原料として用いた例示化合物15に代えて、表1に記載の各有機金属化合物を用いた以外は同様にして、試料2〜11を作製した。
【0165】
〔試料12の作製〕
前記試料1の作製において、高周波電源11より、パルス電界6.4kV、周波数6.1kHz、パルス幅180μmの放電電力をパルス波で印加した以外は同様にして、試料12を作製した。
【0166】
〔試料13の作製〕
前記試料1の作製において、薄膜形成ガス(ガス種B)及び放電ガス(ガス種A)で用いたアルゴンガスを、それぞれ窒素ガスに代え、更に、使用する高周波電源を、ハイデン研究所製高周波電源(周波数:40kHz)で、6W/cm2の放電電力で放電した以外は同様にして、試料13を作製した。
【0167】
〔試料14の作製〕
前記試料1の作製において、被処理体を間接励起放電ガスに晒す前に、被処理体に下記前処理Aを施した以外は同様にして、試料14を作製した。
【0168】
前処理A:被処理体を間接励起放電ガスに晒す前に、図1に記載の第1電極2と第2電極3とが対向する様に配置されている構成からなる放電空間に、放電ガスとしてアルゴンガス/酸素ガス=99:1(体積比)を流入し、被処理体1をその励起放電ガスに晒した。なお、高周波電源として、パール工業製高周波電源(周波数:13.56MHZ)、放電出力は10w/cm2に設定して行った。
【0169】
〔試料15の作製〕
前記試料1の作製において、被処理体を間接励起放電ガスに晒す前に、被処理体に下記前処理Bを施した以外は同様にして、試料11を作製した。
【0170】
前処理B:被処理体を間接励起放電ガスに晒す前に、図4に示す1対のロール電極からなる放電装置を用いて、ロール電極対のギャップ間隙を1mm、放電ガスとして、アルゴンガス/酸素ガス=99/1(体積比)で、供給した放電空間に晒した。なお、高周波電源として、パール工業社製(13.56MHz)の高周波電源を使用し、第2電極に出力密度5.0W/cm2で印加した。
【0171】
〔試料16の作製〕
前記試料1の作製において、被処理体として、被処理体1に代えてガラス板(製品名:日本板硝子社製 0.5tソーダガラス 片面研磨品)を用いた以外は同様にして、試料16を作製した。
【0172】
〔試料17の作製〕
前記試料1の作製において、被処理体として、被処理体1に代えて厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(表1には、PETと記す)を用いた以外は同様にして、試料17を作製した。
【0173】
〔試料18の作製〕
前記試料17の作製において、高周波電源11として、パール工業製高周波電源(周波数:13.56MHz)に代えて、神鋼電機製高周波電源(15kHz)を用いた以外は同様にして、試料18を作製した。
【0174】
〔試料19の作製〕
前記試料18の作製において、ガス種B(薄膜形成ガス)で用いた有機金属化合物(例示化合物15)に代えて、6−フッ化プロピレンを用いた以外は同様にして、比較の試料19を作製した。
【0175】
〔試料20の作製〕
前記試料19の作製において、被処理体として、厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートフィルムにかえて、被処理体1(TAC)を用いた以外は同様にして、比較の試料20を作製した。
【0176】
各試料の薄膜形成方法の主な特徴を、表1に示す。
【0177】
【表1】
Figure 0004506112
【0178】
《各試料の特性値の測定及び評価》
〔接触角の測定〕
各試料について、協和界面科学社製接触角計CA−Wを用いて、23℃、55%の環境下で、防汚膜表面の水に対する接触角とヘキサデカンに対する接触角を測定した。なお、測定はランダムに10カ所について行い、その平均値を求めた。
【0179】
〔油性インク筆記性の評価:撥油性の評価〕
油性インク(ゼブラ社製 マッキー極細黒 MO−120−MC−BK)を用いて、試料表面を3mmφ塗りつぶした後、油性インクによる表面上の筆記具合を目視観察し、下記の基準に則り油性インク筆記性の評価を行った。
【0180】
◎:油性インクを極めて良くはじき、ほとんど塗りつぶすことができず、撥油性が極めて良好である
○:一部で油性インクのはじきが発生し、全面を均一に塗りつぶすことができず、撥油性を有している
×:油性インクに対するなじみがよく、はじくことなく筆記できるため、撥油性を有していない
〔油性インク拭き取り性の評価〕
油性インク(ゼブラ社製 マッキー極細黒 MO−120−MC−BK)を用いて、試料表面を3mmφ塗りつぶした後、柔らかい布(旭化成社製 BEMCOT M−3 250mm×250mm)で油性インク画像を拭き取り、この操作を同一位置で20回繰り返して行い、1回拭き取り後と20回拭き取り後における油性インクの残り状況を目視観察し、下記の基準に則り油性インクの拭き取り性の評価を行った。
【0181】
◎:油性インクが、完全に拭き取れた
○:油性インクが、ほぼ拭き取れた
×:油性インクが、一部で拭き取られず残っている
〔耐擦過性の評価〕
各試料表面を、500gの重りを載せたボンスター#0000のスチールウールを用いて10回擦って、発生する傷を目視で数え、下記の基準に則り耐擦過性の評価を行った。
【0182】
A:傷が全く発生していない
B:発生している傷の本数が1〜5本未満
C:発生している傷の本数が5〜15本未満
D:発生している傷の本数が15本以上
〔表面比抵抗の測定〕
本発明の薄膜形成体について、下記の方法に従って表面比抵抗値を測定した結果、全て1×1012Ω/□以下であった。
【0183】
(表面比抵抗の測定方法)
試料を、23℃、55%RHの環境下で24時間調湿した後、川口電機社製のテラオームメーターモデルVE−30を用いて測定した。測定に用いた電極は、2本の電極(試料と接触する部分が1cm×5cm)を1cmの間隔で配置し、電極に試料を接触させて測定し、測定値を5倍にした値を表面比抵抗値(Ω/□)とした。
【0184】
以上により得られた表面比抵抗を除く結果を、表2に示す。
【0185】
【表2】
Figure 0004506112
【0186】
表2より明らかなように、薄膜形成ガス原料としてフッ素原子を有する有機基を有する有機金属化合物を含有し、本発明の薄膜形成方法に従って防汚膜を形成した本発明の試料は、比較例に対し、撥水性、撥油性、油性インクの拭き取り性に優れ、かつ形成された防汚膜の耐擦過性が良好であることが分かる。また、試料13と試料1を比較して明らかなように、放電ガス及び薄膜形成ガスで用いるアルゴンガスを窒素ガスに代えることで、油性インク拭き取りの繰り返し性が向上することも分かる。
【0187】
【発明の効果】
本発明により、被処理体への影響が無く、優れた撥水性、撥油性、油性インクの拭き取り性を有し、かつ耐擦過性が良好な薄膜形成方法、薄膜形成装置と薄膜形成体を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に用いることのできる大気圧プラズマ放電処理装置の一例を示す断面図である。
【図2】本発明に用いることのできる大気圧プラズマ放電処理装置の一例を示す斜視図である。
【図3】本発明に用いることのできるの他の大気圧プラズマ放電処理装置の一例を示す斜視図である。
【図4】本発明に係る前処理に用いる大気圧プラズマ放電装置の一例を示す概略図である。
【図5】本発明に係る被処理体の表面処理に用いる大気圧プラズマ放電装置の他の一例を示す概略図である。
【符号の説明】
1、31 固体誘電体容器
2 第1電極
3 第2電極
4 誘電体
5、24、35 放電ガス導入口
6、25、36 放電ガス放出口
7、37 薄膜形成ガス供給部
8、26、38 薄膜形成ガス導入口
9、27、39 薄膜形成ガス放出口
10 電界印加手段
11 高周波電源
12 アース
13 可動治具
14 保持継ぎ手
15 被処理体移動装置
21、22 平板電極
23、23′ 蓋体
32 外側電極
33 内側電極
G 放電ガス
G′励起放電ガス
M 薄膜形成ガス
S 被処理体
131 プラズマ放電処理容器
132 放電空間
135 ロール電極(第1電極)
136 角筒型電極群(第2電極)
140 電界印加手段
141 第1電源
142 第2電源
143 第1フィルター
144 第2フィルター
150 ガス供給手段
160 電極温度調節手段

Claims (14)

  1. 下記一般式(3)で表されるフッ素原子を有する有機基を有する有機金属化合物を含有する薄膜形成ガスを被処理体に供給しながら、大気圧もしくは大気圧近傍の圧力下で、少なくとも窒素ガスと水素ガスを含有する放電ガスを放電空間に導入して励起した励起放電ガスを、該被処理体に供給して防汚膜を形成することを特徴とする薄膜形成方法。
    一般式(3)
    Rf−X−(CH−M(OR12
    〔式中、MはSi、Ti、Ge、ZrまたはSnを表し、Rfは水素原子の少なくとも1つがフッ素原子により置換されたアルキル基またはアルケニル基を表し、Xは単なる結合手または2価の基を表す。R12は、アルキル基、アルケニル基、アリール基を表し、kは0〜50の整数を表す。〕
  2. 前記励起放電ガスの放出口及び電極対を備えた固体誘電体容器内に放電ガスを流通させた状態で、電極と、該電極と対向して対をなす他の電極との間に電界を印加することにより、大気圧もしくは大気圧近傍の圧力下で、前記放電ガスを放電空間に導入して励起放電ガスを発生させ、該励起放電ガスの供給方向と交差する方向から、前記被処理体に向けて前記薄膜形成ガスを供給することを特徴とする請求項1に記載の薄膜形成方法。
  3. 前記放電空間が、高周波電界により形成されたものであることを特徴とする請求項1または2に記載の薄膜形成方法。
  4. 前記放電ガスが、窒素ガスを50体積%以上含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の薄膜形成方法。
  5. 前記放電空間が、パルス化電界を印加することにより形成されたものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の薄膜形成方法。
  6. 前記被処理体を放電空間または前記励起放電ガスに晒して前処理を行った後、薄膜形成を行うことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の薄膜形成方法。
  7. 電極が外面に配設され、励起放電ガス放出口を有する固体誘電体容器、該電極と対向して対をなす他の電極、及び下記一般式(3)で表されるフッ素原子を有する有機基を有する有機金属化合物を含有する薄膜形成ガス供給部からなる被処理体上に薄膜を形成する薄膜形成装置であって、該固体誘電体容器に放電ガスを流通させた状態で、対向して対をなす電極間に電界を印加することにより、大気圧もしくは大気圧近傍の圧力下で、少なくとも窒素ガスと水素ガスを含有する放電ガスを放電空間に導入して励起放電ガスを発生させ、かつ該励起放電ガスの供給方向と、該薄膜形成ガス供給部からの薄膜形成ガスの供給方向とが、交差する位置に配置されていることを特徴とする薄膜形成装置。
    一般式(3)
    Rf−X−(CH−M(OR12
    〔式中、MはSi、Ti、Ge、ZrまたはSnを表し、Rfは水素原子の少なくとも1つがフッ素原子により置換されたアルキル基またはアルケニル基を表し、Xは単なる結合手または2価の基を表す。R12は、アルキル基、アルケニル基、アリール基を表し、kは0〜50の整数を表す。〕
  8. 前記固体誘電体容器と、前記薄膜形成ガス供給部とが可動治具により連結されており、該固体誘電体容器と該薄膜形成ガス供給部とが、略一定の相対位置を保ちながら移動可能であることを特徴とする請求項7に記載の薄膜形成装置。
  9. 被処理体移動装置を有し、該被処理体移動装置上に設置した被処理体が、前記励起放電ガスの供給部近傍に移動して、該励起放電ガスに晒されていることを特徴とする請求項7または8に記載の薄膜形成装置。
  10. 前記対向して対をなす電極間に印加する電界が、パルス化されたものであることを特徴とする請求項7〜9のいずれか1項に記載の薄膜形成装置。
  11. 前記被処理体を放電空間または前記励起放電ガスに晒して前処理を行った後、薄膜形成を行うことを特徴とする請求項7〜10のいずれか1項に記載の薄膜形成装置。
  12. 薄膜形成を行う被処理体表面が、無機化合物を含有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の薄膜形成方法
  13. 薄膜形成を行う被処理体表面の主成分が、酸化金属であることを特徴とする請求項1〜6、12のいずれか1項に記載の薄膜形成方法
  14. 被処理体上に形成された防汚膜表面の表面比抵抗値が、23℃、55%RH条件下で1×10 12 Ω/□以下であることを特徴とする請求項1〜6、12、13のいずれか1項に記載の薄膜形成方法
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