JP4503940B2 - グラウンドアンカー - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は高強度繊維複合材ケーブルをアンカー体とするグラウンドアンカーに関する。
【0002】
【従来の技術】
斜面の土留めや橋梁の基礎を得るためにグラウンドアンカー工法が用いられている。このグラウンドアンカー工法は、土中に掘られた孔内にアンカー体を挿入し、孔内にグラウトを注入し、定着長部にてグラウトを硬化させ、引張り材に張力をかけて定着する工法である。
アンカー体の引張り材として、従来では、一般にPC鋼線、PC鋼撚り線が用いられていたが、高耐食、軽量などの特性から高強度繊維複合材ケーブルの採用が増えてきている。
【0003】
かかる高強度繊維複合材ケーブルからなるアンカー体の頭部は、引張り材と筒状のグリップをセメントあるいは樹脂で固着し、張力のかかる自由長部では、引張材の周囲にシースを被せてグラウトが進入しないよう止水し、シース内部には、通常、充填材が注入される。土中を削孔する際には孔内の壁面が崩れるのを防止するため通常の場合鋼管が埋め込まれ、アンカー体挿入後に引抜かれる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従来のアンカー体においては、引張り材として、それぞれが独立した複数本のストランド状の単位引張り材を平行状に引き揃えたものが用いられていたので、次のような問題があった。
1)軸方向の引張にはPC鋼撚り線と同等以上の強度を発揮するが、軸方向への圧縮(挫屈)に弱く、曲げにも弱く型崩れを起しやすい。また、それぞれが独立している単位引張り材を平行状に揃えられているだけなので、捻れに非常に弱く、単位引張り材の撚り方向と逆方向に捻られた場合、素線が開いて破損してしまう。
このため、アンカー体を搬送する際あるいは孔内へ挿入する際に束ねられた引張り材の局部的な曲げや挫屈荷重により引張り材が損傷したり、鋼管の引抜き時に一般に鋼管を周方向へ回しながら引抜くと、捻られて損傷することもあり、円滑で安定した作業を行い難かった。
【0005】
2)張力が導入される場合、単位引張り材を平行状に揃えられているだけであるため、各単位引張り材の長さが揃っていない場合、張力が均等に伝わらず、荷重が不ぞろいになり、設計張力を達成できない可能性がある。
【0006】
3)各単位引張り材が平行状に揃えられているだけであり、単位引張り材間に隙間があるので、引張り材の外径が実質的には太くなる。この結果、グリップの外径が太くなり、重いため、アンカー体の輸送や施工時の取り扱いが困難であった。また、孔内鋼管の内径は鋼管を引抜く際にグリップ径より大きい必要があり、グリップが大型であることで削孔径が大きくなり施工費用がかさんでいた。
4)止水部において複数本ある引張材の隙間からのグラウトの進入を防止する処理が困難であった。
【0007】
本発明は前記のような問題点を解消するためになされたもので、その目的とするところは、引張り材の外径を小さく、頭部グリップをコンパクトにして搬送時および施工時の取り扱い性を向上できるとともに、施工の際の削孔径を小さくして施工費用の削減を図ることができ、また、引張り材の形状が安定した構造で、搬送時や施工時の取り扱いで局部的な曲げによる損傷や挿入時の挫屈による損傷を受け難く、鋼管引抜き時に捻られるのを抑制でき、さらに、現場にてアンカー体を組み立てることが可能で、リールに巻かれた引張材を長尺のまま現場へ搬入でき、削孔径をさらに小さくできるグラウンドアンカーを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため本発明は、土中に掘られた孔内に高強度繊維複合材ケーブルを引張り材に用いたアンカー体を挿入し、孔内にグラウトを注入し、定着長部にてグラウトを硬化させ、引張り材に張力をかけて定着する工法に用いられるアンカーにおいて、引張り材が、高強度繊維複合材を片撚りしたケーブルを心ストランドとして配し、その周りに複数本の片撚りケーブルを側ストランドとして配するとともに、それら心ストランド及び側ストランドを撚り角度2〜12°で心ストランド及び側ストランドの撚り方向と逆方向に撚り合せて構成されている1体の複撚り構造からなることを特徴としている。
【0009】
前記ストランド間に介在層を配置していることが好ましい。
また、本発明は、前記引張り材を固着材で固着したグリップを含む頭部と、引張り材を囲み下端が止水材で閉止されたシースを含む自由長部と、引張り材がストランドごとに離間された定着長部とを備え、前記シースがグリップを囲む保護管とつながる蛇腹状の管から構成されていることを特徴としている。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下添付図面を参照して本発明の実施例を説明する。
図1は本発明によるグラウンドアンカーの使用状態を示しており、Aは施工対象地盤、1は施工対象地盤Aに開けられ削孔aに挿入されたアンカー体であり、引張り材2として高強度繊維複合材ケーブルを用い、これを必須の部材として含む頭部1aと、これから下方の自由長部1bおよび定着長部1cとを備えている。
【0011】
前記頭部1aは、引張り材2を内挿し合成樹脂やセメントなどの固着材15で固着した筒状のグリップ3を有し、該グリップ3は、施工地盤Aの表面に配された受圧板4を貫通し、外周の雄ねじをナット5と螺合することで引張り力が付与されるようになっている。
自由長部1bでは、引張り材2はグリップ3の下端から軸線方向に延び、その引張り材2の周囲には、シース6が囲繞している。シース6は、本発明では合成樹脂製あるいは金属製の蛇腹管からなっており、該シース6の下端部は引張り材2の外周と密接した止水材7を有している。止水材7はゴム系などの粘土や発泡樹脂などが用いられる。
【0012】
そして、グリップ3の外周には保護管8が密接しており、保護管8の末端部分は、熱収縮ゴムなどの継手筒9を介して前記シース6と接続されている。シース6内には止水材7を底として充填材10が入れられる。
定着長部1cでは、引張り材2は露出しており、定着力を得るため後述する複数のストランドに分離されるとともにスペーサ11で間隔が保持されており、先端は固定部材12により収束されている。自由長部1bと定着長部1cにはグラウト13が充填されている。
【0013】
前記引張り材2は、高強度繊維複合材ケーブルからなっているが、従来のように高強度繊維と樹脂を複合した素線を撚り合わせた複数のストランドを、相互に適度な間隔を保持しながら平行に束ねて構成したケーブル、あるいは高強度繊維と樹脂を複合した素線を複数の層に重ね撚合せた多層構造のケーブルとは異なり、図2ないし図5のように、片撚りケーブルからなるストランド2aを複数本(図面では7本)を長い撚りピッチ、すなわち2〜12°の撚り角度αで撚り合わせて1体の複撚りケーブルとしており、撚り方向はストランド2aの撚り方向と逆方向になっている。
好適には、ストランド同士の間の隙間に介在層14を配置している。
【0014】
詳述すると、複撚りケーブルのストランド2aは高強度低伸度繊維と熱硬化性樹脂を複合した片撚り構造からなる。この例では、中心に1本の片撚りケーブル2aを心ストランドとして配置し、その周りに6本のストランド2aを側ストランドとして配置している。
【0015】
ストランド2aは、炭素繊維、アラミド繊維、炭化珪素繊維などから選択される高強度低伸度繊維にエポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂などから選択される熱硬化性樹脂を含浸させた多数の複合素線20からなっている。複合素線20は、図2(b)のように、高強度低伸度繊維のプリプレグ200の多数本を収束し、あるいは長い撚りピッチで撚り合わせ、外周に高強度低伸度繊維あるいはポリエステル繊維などの合成繊維糸202をラッピングの形態で被覆している。
【0016】
前記ストランド2aの撚り方向と引張り材であるケーブル2の撚り方向は逆方向になっている。すなわち、前記ストランド2aの撚り方向がたとえばS方向であれば、引張り材2の撚り方向はZ方向とされる。これは、自転性を小さくし、捻れにくく型崩れしにくくするためである。
【0017】
前記ストランド2aを引張り材2に撚り合わせるときの撚り角度αを限定したのは、後述するように、損傷や型崩れを起させずに目標とする引張り強度を達成させるため、また、既存の撚線機で容易に撚り合わせ工程を実施できるようにし、さらに、熱硬化性樹脂の硬化工程が最終工程に限定されない利点があるからである。より好ましい撚り角度αは、2〜8°である。
【0018】
撚り角度の下限を2°としたのは、これ未満では、引張り強度は高いものの、平行に近づくため、先に述べた従来のケーブルの欠点、すなわち、リールヘ巻くと型崩れを起し、取り扱いが困難となる点、ケーブルの内側と外側の径の差により曲げ応力が働き、ケーブルが損傷する可能性がある点や、捻れに弱く、特にケーブルの撚り方向とは逆方向に捻られた揚合、素線が開き、破損してしまう点を解消できなくなるからである。
【0019】
撚り角度の上限を12°としたのは、引張り強度が低下するからである。すなわち、高強度繊維複合材は、曲げ、せん断、ねじれに弱く、完全脆性材料であるため大きな撚り角度で撚り合わせると、引張り方向と繊維方向の角度差が大きくなり、せん断により強度低下をきたすからである。
なお、通常の場合、ストランド2aを得る場合の撚りピッチP1よりも、引張り材2に撚り合わせるときの撚りピッチPの方を大きくする。
【0020】
介在層14を配するのは、主として2つの理由からであり、第1の理由は、各ストランドが接触すると引張り材に張力がかかった場合や、曲げられた場合に、互いの素線同士の擦れや側圧で素線が損傷し、十分な強度が発揮できなくなるが、介在層14が存在することにより、ストランド間の接触を緩和でき、また、側ストランド相互間の接触も緩和され、内部摩耗による引張り強度の低下(撚減り)を低減できるからである。
【0021】
第2の理由は、介在層14は、引張り材2を図1のようにシース6を貫通させ、シース6内に油や水などの充填材10を注入した時に、引張り材2の内部(ストランド同士の隙間)から定着長部1cへと充填材10が流出させないようにするとともに、定着長部1cに入れたグラウト13を引張り材2の内部(ストランド同士の隙間)からシース6内に侵入するのを防止するためである。
【0022】
介在層14は、ポリエチレンなどの熱可塑性樹脂の溶融樹脂を押し出すなどして、あらかじめ心のストランド2aの外周に樹脂被覆の形態で施してもよい。これに代え、図2や図4のように線状体140をストランド2aの各外周谷間に配してもよい。この方式は、心のストランドがない場合でも適用でき、また、ストランド2aを引張り材に撚り合わせるときに実施できる利点がある。
線状体140は合成樹脂が通常用いられるが、ステンレス、めっきワイヤなどの金属素線あるいはこれを数本撚り合せたストランドでもよい。こうした金属製の線状体140を用いた場合、定着長部1cにおいてグラウト13を充填した時に、該部分の引張り材2の浮き上がりを抑制できる利点もある。
【0023】
本発明は、図示する例に限定されるものではない。
1)引張材は設計に必要な引張力に応じてストランドを形成する素線の数あるいはストランドの数を変更可能である。
ストランド2aを構成する素線20の本数は、3本以上であればよく、図2,3のように7本である場合に限定されない。図6(b)、(c)のように19本などであってもよい。
2)引張り材2は、心ストランドを有している場合に限定されない。図6(a)、(b)のように3本のストランド2aを用いた構造であってもよい。この例では、3×7構造、3×19構造を採用している。このような芯ストランドがない場合、介在層14はストランド2a,2a間に介在される。心ストランドを有している場合、図6(c)で例示するように、7×19構造も採用できる。
【0024】
本発明によるアンカー体1は、工場で全体を製作してもよい。図7はこの例を示しており、引張り材2の端部にグリップ3を被せてセメント、樹脂などの固着材15を充填して一体化させ、それより下に所要の位置までシース6を外嵌し、シース6の下端内側と引張り材2外周間に止水材7を介在させる。そして、定着力を得るために撚りをほどいてストランド2a,2aを離間させ、内部にスペーサー11を入れ端部を集束させる一方、グリップ3に保護管8を被せ、これの端部とシース6の口部とを継手9で接続し、アンカー体1を形成する。
【0025】
このとき、引張り材2は複数のストランド2aをタイトに撚り合せていることと撚りピッチが長いことによって外径が小さく、しかも、多層撚りでないため図3や図6のように外周の凹凸が大きく、付着表面積が大きいこと、各単位引張り材が平行状に揃えられた引張り材と異なり、ストランド2aのらせんが引き抜き抵抗となりえるので、グリップ3の径をコンパクトで小さなものにすることができる。
【0026】
アンカー体1は、定着長部1cにグラウトを注入後、鋼管16を引き抜き、グラウトを養生した後、グリップ3にナット5を螺合して引張り力を導入する。このとき、シース6が蛇腹管からなっており、これを接続している保護管はグリップ3とフリーな関係にある。このため、引張り材2の自由長部1bが軸方向へ引張られて移動してもシース6は動かずそのままの位置にある。したがって、外周のグラウト13と相対的なずれが生じず、シース6の破損や破壊を防止できる。
【0027】
本発明は、上記のようにアンカー体1を工場であらかじめ加工しておくことで施工時の省力化を図ることができるが、削孔径や鋼管径をさらに小さくする場合や、引張り材2の長さを現場合わせで決める場合など、必要に応じて現揚での組立ても可能である。
【0028】
なお、本発明の引張り材2は、撚り角度αが2〜12°好ましくは2〜8°の範囲内にあるので、引張り破断荷重の低下が少なく、また、撚り長さP/リール胴径Dが0.73以下であれば、リールに巻いても型崩れが発生せず、重ね巻きによって正常に巻取り可能であることが確認された。
【0029】
したがって、引張り材2を比較的小さなリールに巻収して現場に搬入でき、アンカー組立ての手順としては、引張り材2を所定の長さに切断し、自由長部1bと定着長部1cの組立てを行う。この状態で、削孔内へ挿入し、鋼管16を引抜いた後、グリップ3の取付けを行う。
グリップ3の取付けは、図8のように、グリップ内部に注入する固着材15が漏れないようにグリップ口元の引張り材2とグリップ3との隙間をエポキシ粘土などのシール材19で埋め、それから固着材15を注入すればよく、引張り材2のストランド間に介在層14を設けて引張材内部の隙間を無くしているので、シール材部位で固着材15が封止され、引張り材2の内部を通して自由長部1bに流出しないので、頭部グリップ加工が現場で簡単、確実に実施可能である。
【0030】
本発明の具体例を述べると次のとおりである。
炭素繊維にエポキシ樹脂を含浸させた径が7ミクロンの繊維を12000本束ねたプリプレグを15本、撚り方向Z、ピッチ90mmで撚り合わせ、次いでラッピングを施して外径4.2mmの素線を得た。
この素線を7本撚り方向S,ピッチ160mmで撚り合わせて1×7構造のストランドを得た。該ストランドを熱処理炉で130度×90分加熱して樹脂を硬化させた。
【0031】
このストランド7本のうち、1本を心ストランドとし、残る6本を側ストランドとし、心ストランドの外周に材質がポリエチレンで径が5mmの線条体をちょうど側ストランド間に位置するように配し、撚り方向Z,撚り角度αを2〜12°の範囲にとって撚り合わせ、7×7構造からなる複撚りケーブル型の引張り材を得た。ちなみに、撚り角度α:2°の撚りピッチは2200mm、撚り角度α:4.1°の撚りピッチは1100mm、撚り角度α:5°の撚りピッチは900mmである。
【0032】
得られた引張り材について、9水準の引張試験を行った結果を図9に示す。この結果から、撚り角度を2〜12°の範囲、特に2〜8°にすると、破断荷重の低下はほとんど見られないことがわかる。
比較のため、撚り角度α=4°とし、心ストランドの周りに線条体を配置せずにα=4°で前記7×7構造の複撚りケーブルからなる引張り材を製作し、引張り試験を行った。その結果、破断荷重は1100kNであり、撚り角度α=4°とした前記引張り材の破断荷重は1250kNであったので、線条体を配置したほうが強度の面でもすぐれていた。
また、ストランド状の単位引張り材を7本、適度な隙間を持たせて平行状に束ねた従来の引張り材について破断荷重の比較を行った結果、破断荷重は1070kNで、本発明よりも劣っていた。
【0033】
上記本発明の引張り材を15mの長さで切断し、上部に鋼管製のグリップを外装しセメントで固着一体化させてアンカー体とした。定着長部は約3.5mとし,撚り合わせているストランドをばらし、内部にスペーサを入れ、端部を収束して構成した。自由長部は11mとし、外側に外径が54mmのポリエチレン製蛇腹管を被せ、引張り材外周とシースの隙間をゴム系の粘土で埋めた。
【0034】
得られたアンカー体を、同じ引張り荷重の従来のアンカー体(ストランド状の単位引張り材を7本適度な隙間を持たせて平行状に束ねたもの)と比較したところ、引張り材そのものの外径を約15%、グリップの外径を約20%小さくできることが確認された。
【0035】
上記アンカー体を法面に施工した。本アンカー体は軽量でコンパクトなため、持ち運びや挿入作業を人力で容易に行うことができた。また、グリップの細径化により従来110φ以上の削孔径が必要なところ、90φで施工可能であった。止水部においては、ストランド間の線条体からなる介在層がストランド相互間の隙間を無くしているため、シース内部へのグラウトの侵入が完全に防止できた。
さらに、引張り材2の剛性が数倍に増しているため、挿入時の曲がりによる引っ掛かりや、図10のように鋼管16を回しながら引抜く際の引張り材2の捻れも発生しなかった。あわせて、芯ストランドの外周にポリエチレンで厚さ1.5mmの被覆を施すほか前記仕様にした引張り材も作成したが、同じ結果が得られた。
【0036】
【発明の効果】
以上説明した本発明の請求項1によるときには、次のようなすぐれた効果が得られる。
1)引張り材が、高強度繊維複合材を片撚りしたケーブルを心ストランドとして配し、その周りに複数本の片撚りケーブルを側ストランドとして配するとともに、心ストランド及び側ストランドの撚り方向と逆方向に撚り合せて構成されている1体の複撚り構造からなっているため、自転性が小さく、捻れにくく、鋼管の引抜き時に引張材が捻られるのを抑制できる。
2)また、引張り材2は、撚り角度が2〜12°の範囲内であるため、引張り破断荷重の低下が少なく、また撚り長さP/リール胴径Dが0.73以下であれば、リールに巻いても型崩れが発生せず、重ね巻きによって正常に巻取り可能である。
このため、ケーブルが曲げられた場合でも各ストランドにかかる軸力は均等となり、また、形状が安定した構造であるため、ケーブルをリールへ巻く時や展開する時に型崩れが起こりにくく、重ねて巻取ることができる。
したがって、現場にてアンカー体を組み立てることが可能となり、リールに巻かれた引張り材を長尺のまま現場へ搬入でき運搬費用が大輻に削減でき、削孔径をさらに小さくできるため施工費用の大幅な削減も可能である。
3)引張り材が単一であるため、アンカー体製作において、ケーブルの計尺・切断、頭部グリップ加工が容易になり、大幅なコストダウンを図ることができる。
4)複本数の単位引張材を束ねたものと比べ引張り材の外径を小さくすることができ、頭部グリップがコンパクトになる。このため搬送時および施工時の取り扱い性が向上し、さらに施工の際の削孔径を小さくできるため、施工費用の削減を図ることができる。
5)複本数の単位引張り材を束ねたアンカー体と比べて引張り材の形状が安定した構造であるため、アンカー体搬送時や施工時の取り扱いで局部的な曲げによる損傷や挿入時の挫屈による損傷が受け難い。
【0037】
請求項2によれば、介在層14により、各ストランド同士の接触を緩和でき、内部磨耗が防止されるので、引張強度の低下を低減できる上に、引張り材の内部隙間がなくなるので、止水部におけるケーブル内部からの充填材の流出や、グラウトの進入が防止されるというすぐれた効果が得られる。
請求項3によれば、シース6がグリップを囲む保護管とつながる蛇腹状の管から構成されているので、つぶれにくく、また容易に曲がるので搬送等が容易であり、かつ、引張り材が引張られた時にシース6が一緒に移動せず、グラウトとの接着が破壊されないというすぐれた効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明によるグラウンドアンカーの使用状態を示す断面図である。
【図2】 (a)は本発明における引張り材の部分的斜視図、(b)は引張り材を構成する素線の部分的拡大斜視図である。
【図3】 (a)は図1のX−X線に沿う断面図、(b)は図1のY−Y線に沿う断面図である。
【図4】 引張り材の部分的な側面図である。
【図5】 (a)は引張り材の撚り角度を示す説明図、(b)は撚り長さを示す説明図である。
【図6】 (a)(b)(c)はそれぞれ引張り材の他の例を示す断面図である。
【図7】 本発明のアンカー体の縦断側面図である。
【図8】 現場施工時にブリップを固着する状態を示す説明図である。
【図9】 本発明の引張り材の撚り角度と破断荷重の関係を示す線図である。
【図10】 アンカー施工時の鋼管引き抜き状態を示す断面図である。
【符号の説明】
1 アンカー体
1a 頭部
1b 自由長部
1c 定着長部
2 引張り材
2a ストランド
3 グリップ
6 シース
7 止水材
8 保護管
10 充填材
13 グラウト
Claims (3)
- 土中に掘られた孔内に高強度繊維複合材ケーブルを引張り材に用いたアンカー体を挿入し、孔内にグラウトを注入し、定着長部にてグラウトを硬化させ、引張り材に張力をかけて定着する工法に用いられるアンカーにおいて、引張り材が、高強度繊維複合材を片撚りしたケーブルを心ストランドとして配し、その周りに複数本の片撚りケーブルを側ストランドとして配するとともに、それら心ストランド及び側ストランドを撚り角度2〜12°で心ストランド及び側ストランドの撚り方向と逆方向に撚り合せて構成されている1体の複撚り構造からなることを特徴とするグラウンドアンカー。
- 引張り材が、ストランド間に介在層を配置している請求項1に記載のグラウンドアンカー。
- 前記引張り材を固着材で固着したグリップを含む頭部と、引張り材を囲み下端が止水材で閉止されたシースを含む自由長部と、引張り材がストランドごとに離間された定着長部とを備え、前記シースがグリップを囲む保護管とつながる蛇腹状の管から構成されている請求項1に記載のグラウンドアンカー。
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