JP4502104B2 - 複合プリズム光学系を有する撮像装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、監視・計測用撮像装置又は画像読取装置など撮像装置に係り、撮像光学系の光路中にプリズムを用いて可視光像と非可視光像を分離して撮像できる複合プリズム光学系を有する撮像装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
非可視光として赤外光を利用しているフィルムスキャナの画像読取装置においては、フィルム等被写体に照明光を照射することにより、被写体の画像情報を含む光を撮像光学系を介して光電変換素子の受光面に投影・結像し、前記光電変換素子により光電変換することにより、被写体からの画像情報を電気信号に変換して画像データとして読み取っている。
また、このような装置では、照明光学系及び撮像光学系に付着したゴミ、フィルム上のゴミ、傷、指紋等は読み取った画像データ上に黒点等となって現れ、結果的にフィルムスキャナで再現する画像の欠陥となり画質の劣化をもたらしていた。
【0003】
これに対して、赤外光を利用してこのような画像の欠陥を自動的に見えなくし、或いは十分に軽減するように補正する方法が各種提案されている。これは、フィルムの赤外光に対する透過率特性に着目して、上述の画質劣化の原因となるゴミ、傷、指紋等のみを赤外光により検知し、検知したゴミや傷等の欠陥データにより可視光で読み取った被写体の画像データを修正するという方法である。
【0004】
しかし、レンズ等撮像光学系では可視光と赤外光の波長の違いによる光路長のずれが生じ、赤外光による結像面は、可視光による結像面よりも一般的に遠方に存在する。
【0005】
したがって、「特公平6−78992号公報」(従来例1)では、赤、緑、青の各色分解フィルタと、IR(赤外線)フィルタを装着したフィルタホルダを回転して3原色画像とIR画像を1個の光電変換素子で順次読み取っているが、IRフィルタによるIR画像データ読取時には、駆動機構によってセンサ(光電変換素子)を光軸方向に微少量変化させて結像位置を制御している。
【0006】
「特開2000−324303号公報」(従来例2)では、可視光と赤外光の波長の違いによる結像位置の違いを可視光用フィルタと赤外光用フィルタの厚みを変えることにより補正している。実際には可視光による結像面よりも、赤外光による結像面は遠方に存在するので、この結像位置の違いを補正すべく可視光読取の際には赤外光読取の場合よりも厚いフィルタを挿入して結像面の位置補正を行っている。このことにより、可視光読取と赤外光読取の場合で各々適切な光路長に制御して1個の光電変換素子により画像を読み取ることが可能となる。さらにレンズ移動手段により結像レンズを光軸に沿って移動することによって結像位置を制御することもできる。
【0007】
「特開2001−211295号公報」(従来例3)では、光学フィルタとしての赤外光カットフィルタと可視光カットフィルタをフィルタ用モータで切り替えると同時に、一体的に保持枠に保持され光軸間距離が予め調整されている結像レンズとラインセンサ(撮像素子)がフォーカスモータによって可視光像及び赤外光像それぞれがベストピント(最良合焦)状態になるようフォーカス調整することによってそれぞれの光路長を補正している。
【0008】
一方、近年、電子・通信技術のデジタル化に伴い240サイズで透明な磁気層が形成された写真フィルム(いわゆる「APSフィルム」)の登場もあり、従来の135サイズの写真フィルム、110,120及び220サイズ(ブローニサイズ)等も含めて、画像読取装置は多様なサイズの写真フィルムに対応する必要が生じてきた。そこで画像読取装置には自由に画枠設定が可能なズームレンズを対物レンズとして使用するようになってきた。
【0009】
そのほかに、非可視光として紫外光領域を利用している従来例として、近年ますます微細化されつつある半導体集積回路のパターンを高分解能で精度良く検査することのできる紫外線顕微鏡装置として、「特開平5−127096号公報」(従来例4)では、可視光域から近紫外域の波長を有する光源(水銀ランプ)からの光は、照明レンズ系、対物レンズ系を通じてステージに保持された被検体としての半導体デバイスへ照射される。半導体デバイスで反射した光は前記対物レンズを再度通過し、ダイクロイックミラーにより紫外線の光路と可視光の光路とに分離される。分離された光は、2つに分離された鏡筒のそれぞれの鏡筒内を通過し変倍レンズ系を介して、紫外線は紫外線用CCD(モノクローム)カメラへ、可視光はカラーCCDカメラへ導かれる。
したがって、半導体デバイスのパターンは、高解像力、高倍率の紫外線画像と、半導体デバイスのパターンの色を視認できるカラー画像とを同時に表示したり、画像処理装置を通じて紫外線画像とカラー画像とを重畳させて表示することにより、紫外線画像を疑似カラー画像として表示可能となる。
ここで、前記変倍レンズ系は、近紫外域と可視光域の光に対してそれぞれ像位置の色収差及び倍率の色収差が補正されている。また、紫外線顕微鏡の総合倍率を可変とするように、変倍レンズ系と対物レンズ系との組み合わせが選択可能となっている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記従来例1〜3のように赤外光を利用している画像読取装置においては、R,G,Bフィルタ及びIRフィルタや、赤外カットフィルタ、可視光カットフィルタ等をフィルタ切替用モータで切り替え、さらにその都度レンズフォーカスを制御したり又は一体的に保持枠に保持され光軸間距離が予め調整されている結像レンズとラインセンサをフォーカスモータで制御する方式では、フィルタを順次切替ながら画像を読み込むため処理速度が自ずから制限され、また、フィルタ切替制御とそのための機構が装置を大型化、複雑化する傾向にあった。
【0011】
さらに、レンズは、使用するガラスの屈折率が光の波長によって異なるために軸上色収差・倍率色収差を生じ、特にズームレンズではズーミングとともに軸上色収差が変動し、この変動量が問題となる。軸上色収差は一般的に望遠端で最も大きくなると言われている。この軸上色収差が大きく残っていると、トラッキング(R,G,Bチャンネルのフォーカス合わせ)を広角端で正確に合わせても望遠端でB,Rチャンネルのトラッキングエラーが生じ、色のにじみとなって現れる。
近年では、レンズ光学系の設計がコンピュータの活用により容易になり、精密に、かつ高速で行え、さらに、通常の光学ガラスとは分散の異なる蛍石という結晶や、異常分散ガラス等ガラス材料の開発もあり、可視光領域での軸上色収差も殆ど問題にならない程度に改良が進んでいる。
【0012】
しかし、通常の写真撮影用のズームレンズにおいては、可視光領域に対し近赤外光・赤外光など長波長領域では軸上色収差は改善が困難で、そのため、多様なサイズの写真フィルムに対応するためズームレンズを画像読取装置に使用する場合、ズーミングによる長波長領域での広角端から望遠端までの軸上色収差の変移は画像読取装置の光学系で補正する必要があった。
【0013】
また、前記従来例4の紫外線顕微鏡装置においては、2つに分離された鏡筒にそれぞれ専用のカメラを搭載するなど、装置が複雑で、大型化しやすい傾向にあった。
【0014】
以上説明した現状に鑑み、赤外光を使用した画像読取装置などにおけるR,G,Bフィルタ及びIRフィルタや、赤外カットフィルタ、可視光カットフィルタ等を装着したフィルタディスクを使用せず、さらに、広角端から望遠端までズームレンズのズーム倍率が変化しても軸上色収差を自動補正できる非可視光焦点位置補正が可能であり、また、紫外線顕微鏡装置においては、一つの鏡筒と1台のカメラ装置にできる複合プリズム光学系を有する撮像装置を提供する。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明者は,上記に鑑み鋭意研究の結果、次の手段によりこの課題を解決した。
【0016】
(1)結像倍率が可変なズームレンズと、同ズームレンズによって結像される被写体の光学像を光電変換する可視光用撮像デバイス及び非可視光用撮像デバイスと、前記ズームレンズと前記両撮像デバイスとの間の光路中に配設された、非可視光領域の波長を透過し、可視光領域の波長を反射する被膜を備えた反射面を有しプリズム固定台に固定された第1のプリズムと、該第1のプリズムの前記反射面と一定空隙を介して対向する面を有する第2のプリズムとで構成された複合プリズムと、前記第2のプリズムを第1のプリズムの前記反射面に沿って移動制御し、前記結像倍率変更による可視光と非可視光との波長の違いによる結像面の位置ずれを補正するプリズム駆動手段と、予め設定された前記ズームレンズの結像倍率データがメモリされた結像倍率データメモリとを備え、
前記第1のプリズムで反射された可視光の光学像を光電変換するために可視光用撮像デバイスが可視光の光学像の結像位置に配設され、前記第1のプリズムを透過し、さらに第2のプリズムを透過した非可視光の光学像を光電変換するための非可視光用撮像デバイスが非可視光の光学像の結像位置に配設されてなることを特徴とする複合プリズム光学系を有する撮像装置。
【0017】
(2)前記結像倍率データが、前記ズームレンズのそれぞれの焦点距離における可視光画像の結像倍率に対応する非可視光画像の結像倍率データであることを特徴とする(1)項に記載の複合プリズム光学系を有する撮像装置。
【0018】
(3)前記第2のプリズムが、前記ズームレンズの結像倍率が変化すると、当該結像倍率に対応した前記結像倍率データメモリの結像倍率データに基づいて前記プリズム駆動手段により第1のプリズムの前記反射面に沿って移動するように駆動されてなることを特徴とする(1)又は(2)項に記載の複合プリズム光学系を有する撮像装置。
【0019】
(4)前記撮像装置が、さらに前記被写体としてのネガ又はポジフィルムに付着したゴミ、傷、又は指紋により生ずる画像の欠陥を補正するフィルム欠陥補正手段を備え、かつ同撮像装置が、フィルムスキャナに画像読取装置として装着されてなることを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1項に記載の複合プリズム光学系を有する撮像装置。
【0020】
(5)前記撮像装置が、さらに被写体を可視光及び非可視光領域の波長を含む波長で照明する照明手段又は非可視光領域の波長のみで照明する照明手段と、同照明手段を制御する照明制御手段とを備えてなることを特徴とする(1)〜(4)項のいずれか1項に記載の複合プリズム光学系を有する撮像装置。
【0021】
【発明の実施の形態】
本願発明の実施の形態について、実施例の図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本願発明実施例1の非可視光焦点位置補正が可能な複合プリズム光学系を有する撮像装置をフィルムスキャナの画像読取装置として使用した場合のブロック図であり、図2は、同発明実施例のプリズム駆動機構説明図であり、図3は、同発明実施例の四角形状に形成された複合プリズムの非可視光焦点位置補正の説明図であり、図4は、同発明実施例2の複合プリズム光学系を有する撮像装置を監視用テレビカメラとして使用した場合のブロック図であり、図5は、同発明実施例3の非可視光焦点位置補正が可能な複合プリズム光学系を有する撮像装置を紫外線顕微鏡装置用撮像装置として使用した場合の模式図であり、図6は、同発明実施例3の非可視光焦点位置補正が可能な複合プリズム光学系を有する撮像装置を紫外線顕微鏡装置用撮像装置として使用した場合のブロック図であり、図7は、同発明実施例の四角形状以外の複合プリズムの非可視光焦点位置補正の説明図である。
【0022】
【実施例1】
図1において、集光光学系を含む照明光源として赤外光領域と可視光領域の波長を合わせ持つ光源Lによって照射された光は、フィルム駆動装置1によって一定方向・一定速度で走行するネガフィルム2を透過し、ズームレンズ3により複合プリズム4を介してラインセンサ型撮像デバイス5,6の光電変換素子面に結像する。
【0023】
前記複合プリズム4は、前記ズームレンズ3と前記撮像デバイス5,6間の光路中に配設され赤外光領域の波長を透過し、可視光領域の波長を反射する干渉膜が蒸着された被膜面4cを有し、プリズム固定台102a(図2)に固定された二等辺直角三角形形状の第1のプリズム4aと、該第1のプリズム4aの前記被膜面4cと一定空隙を介して相対し、かつプリズム駆動手段16により移動可能な二等辺直角三角形形状の第2のプリズム4bとで正四角形状に形成されている。
第2のプリズム4bは、プリズム駆動手段16によって第1のプリズム4aの被膜面4cに沿って⇔印(図3)で示す方向に移動できる。
前記複合プリズム4において、可視光領域の波長又は赤外光領域の波長のみを取り出すために2つのプリズム4a,4bのそれぞれの射出面に、余分な波長領域等をカットする光学フィルタとしてそれぞれ赤外光カット用トリミングフィルタ及び可視光カット用トリミングフィルタ又は赤外光特定波長(例えば800nm〜850nm)のバンドパスフィルタ等を貼着することが好ましい。
【0024】
前記第1のプリズム4aの被膜面4cで反射された可視光の光学像を光電変換するために可視光用撮像デバイス5が配設され、前記第1のプリズム4aを透過し、さらに第2のプリズム4bを透過した赤外光の光学像を光電変換するための赤外光用撮像デバイス6が配設されている。
上記撮像デバイスの一例としては、可視光領域とともに赤外光領域にも感度を有する固体撮像デバイス(CCD)がある。またこの撮像デバイスは、画像のカラー読取が可能な赤・緑・青(R,G,B)光の感度を兼ね備えている。
本実施例では、可視光用撮像デバイス5として、受光部がある一定の間隔をおいて平行に配置されている3ライン(R,G,B)を持つ3ラインセンサを用いている。また、赤外光用撮像デバイス6としては、赤外光領域の波長に感度の優れた1ラインの撮像デバイスを用いてもよい。
【0025】
一定方向・一定速度で走行するフィルム2に同期してライン・バイ・ラインで画像を読み取る2つの撮像デバイス5,6の光電変換された電気信号(以降、画像信号と記述)は、A/D変換、自動利得調整、シェーディング補正、ガンマ補正等公知の画像処理回路を有する増幅回路7,8でそれぞれ増幅され、フィルム欠陥補正手段9に入力される。
なお、フィルム欠陥補正前の各増幅回路7,8の出力画像は端子18,19に、フィルム欠陥補正後の出力画像は端子20にビデオモニタを接続することにより監視できる。
【0026】
フィルム欠陥補正手段9では、前述したように、照明光学系及び撮像光学系に付着したゴミ、フィルム上のゴミ、傷、指紋等が読み取った画像データ上に黒点等(ポジフィルムの場合は白点等)となって現れ、結果的に画像読取装置で再現する画像の欠陥となり画質の劣化をもたらしてしまうので、このようなの画像の欠陥を自動的に見えなくし、或いは十分に軽減するように補正する公知の技術を使用している。
すなわちフィルムの赤外光に対する透過率特性に着目して、上記の画質劣化の原因となるゴミ、傷、指紋等のみを赤外光により検知し、検知したゴミや傷等の画像データにより可視光で読み取った画像データを修正するという方法である。
フィルム欠陥補正手段9の信号出力は出力端子20を介して図示しない画像メモリ、画像処理回路等を備えた公知の写真プリント装置へ供給される。
【0027】
このように、可視光用撮像デバイス5及び赤外光用撮像デバイス6から光電変換された画像信号に基づいてフィルムの欠陥補正を行うが、自由に画枠設定が可能なズームレンズ3によってサイズの異なる多種類のフィルムに対応し、かつフィルムサイズによってズーム倍率を変更してもそれぞれの撮像デバイスの受光面に適正な光学像を結像するために、可視光と赤外光との波長の違いによる結像面の位置ずれを補正できるように、本願発明では複合プリズム4を利用して赤外光の光路長を変更可能としている。
【0028】
図1において、ズームレンズ3には、レンズ駆動手段10としてアイリス、フォーカス、ズームの各機構に図示しない小型モータによる駆動手段を取り付け、フィルムサイズの自動又は手動切替、ネガ・ポジフィルムの選択切替等の機能を有する制御パネル17からの指令に基づいて、それぞれ手動又は自動制御機能を備えたアイリス制御手段11、フォーカス制御手段12、ズーム制御手段13を介してレンズ駆動手段10を駆動している。
さらに、ズームレンズ3の広角端から望遠端までの可視光領域における各焦点距離値に対し、赤外光領域の波長によって生ずる焦点距離のずれ量を予め計測し、これで得たズーム倍率データを結像倍率データメモリ15にメモリしておく。
なお、可視光領域におけるズームレンズ3の各焦点距離は緑チャンネルの中心波長を基準とすることが好ましい。
また、赤外光領域の波長の中心値は、赤外光でゴミ、傷等を効率よく検知できる波長領域と、赤外光用撮像デバイス6の感度の比較的高い波長領域とを勘案して設定することが好ましい。
【0029】
フィルム駆動装置1に装填されたフィルム2のサイズに対応して制御パネル17で選択されたフィルムサイズ制御信号により、ズーム制御手段13、レンズ駆動手段10を介して、ズームレンズ3のズーム倍率値(焦点距離)を可視光用撮像デバイス5の受光面に適正な大きさの光学像が結像されるように所定の値に制御すると同時に、制御パネル17で選択されたフィルムサイズ制御信号により、結像倍率データメモリ15に入力されている前記所定のズーム倍率値に対応した前記赤外光によるズーム倍率データを読み出してプリズム駆動手段16に加えることにより第2のプリズム4bを駆動して、赤外光用撮像デバイス6の受光面にゴミ、傷等の欠陥画像を結像するようにプリズム4の光路長を補正する。
【0030】
ズームレンズ3と撮像デバイス5,6との光路中に配設される複合プリズム4に、二等辺直角三角形形状のプリズムを使用した場合、図2に示すように、第1のプリズム4aは、その被膜面4cを光軸42(図3参照)に対して、例えば、45度の傾斜となるようにプリズム固定台102aに取り付けられ、かつプリズム固定台102aはプリズム取付板101に固定されている。
また第2のプリズム4bは、第1のプリズム4aの被膜面4cと十数ミクロンの一定空隙を介して相対するようにプリズム固定台102bに取り付けられ、かつ被膜面4cに沿って⇔印(図3)で示す方向に移動できるようにプリズム取付板101に取り付けられている。
プリズム固定台102bは、動力源としてモータ103を備えたプリズム駆動機構104によって駆動される。
モーター103は、結像倍率データメモリ15から制御ケーブル105を介して送出された駆動信号によって制御・駆動される。
【0031】
ここで図3に基づいて、光路長の補正手段について説明する。
例えば、水面下にあるコインは浮き上がって見える。これは、屈折率の高い媒質中では見かけの長さが短くなることを示している。
コインの深さをd、水の屈折率をnとすると、見かけのコインの深さは
見かけの深さ=d/n
となる。
ガラスブロックの場合も同様で、厚さd、屈折率nのガラスブロックは、空気中に換算すると、d/nの厚さとなる。
したがって、光路中に厚みdのガラスブロックを挿入すると、光路長は(1−1/n)×dだけ伸びることになる。すなわちガラスブロックの厚さdを変化すれば光路長を制御できることになる。
【0032】
図3において、赤外光領域の波長を透過し、可視光領域の波長を反射する被膜面4cで反射し屈折した可視光は、可視光用撮像デバイス5の受光面に結像する。
一方、赤外光領域の波長の光は、第1のプリズム4aの被膜面4cを透過し、さらに第2のプリズム4bを透過して赤外光用撮像デバイスの受光面6bに結像する。
ここで、ズームレンズ3のズーム倍率(焦点距離)位置が一定と仮定すると、第2のプリズム4bが被膜面4cに沿って⇔印で示す方向に移動し一点鎖線で示した4bxの位置に到達すると、複合プリズム4の光軸42方向のガラス厚みは薄くなり、結像点は一点鎖線で示した6xに移動する。
また、第2のプリズム4bが被膜面4cに沿って⇔印で示す方向に移動し点線で示した4byの位置に到達すると、複合プリズム4の光軸42方向のガラス厚みは厚くなり、結像点は点線で示した6yに移動する。
【0033】
前記説明は、原理を理解しやすいようにズームレンズ3のズーム倍率が一定値の場合で行ったが、実際には前述の通りズーミングによる長波長領域(赤外光領域)での広角端から望遠端までの軸上色収差が変化し結像点が移動するので、結像点の移動に追従して自動補正できるように、本願発明では複合プリズム4を利用して赤外光の光路長を制御可能としている。
【0034】
なお、実施例としてラインセンサ型撮像デバイスを使用したが、フィルム2を撮像位置で静止し、エリアセンサ型撮像デバイスを用いて撮像する方式でもよい。
また、赤外光用撮像デバイス6は光学像の結像位置に配設するように記述したが、公知のフィルム欠陥補正方法によっては、光学像の結像位置から若干ぼけるような位置に予め配設してもよい。
【0035】
本実施例1の複合プリズム4は、プリズム加工上の容易さ等から二等辺直角三角形状としたが、撮像装置14の複合プリズム4及び撮像デバイス5,6の配置上の制約などから、異なる形状の2つのプリズムの組み合わせで図7に示すように複合プリズム4’を構成しても良い。
特に第1のプリズム4’aを、例えば、テレビジョンカメラ用R,G,B3板式プリズム光学系の青チャンネル用のプリズムと同様なくさび状の形状とし、該第1のプリズム4’aの被膜面4’cで反射された可視光の光学像を入射面側で全反射させてから可視光用撮像デバイス5に光学像を結像させる。
第2のプリズム4’bの光軸中心のガラス厚みは、前記第1のプリズム4’aの被膜面4’cから射出面までの光路長とほぼ同一とすればよい。
このような構成にすることによって、複合プリズム4’の形状が複雑になるが第1のプリズム4’aによる画像の左右(又は上下)の反転を防止することができる。その他の構成及び作用については図3の説明と同様である。
【0036】
【実施例2】
図4は、四角形状に形成された複合プリズム光学系を有する撮像装置を監視用テレビカメラとして使用した場合のブロック図であって、例えば、エリアセンサ型撮像デバイスを使用して夜間は赤外光照明を使用する昼夜兼用監視カメラ、又は赤外光の放射を伴う被写体の監視用カメラ等に適用する場合に好適である。
【0037】
図4において、増幅回路7,8の出力信号を手動又は自動切替のできる画像処理手段21と、赤外光照明ランプIRLをオン・オフ制御できる照明制御手段23は、図示しない被写体の明るさを検知するセンサ出力か、又はビデオレベルを検知して、画像処理手段21の画像切替と、赤外光照明ランプIRLの点滅を自動制御するか又は手動で制御することもできる。出力端子18,19,22に監視用ビデオモニタを接続すればそれぞれの画像を監視することができる。
本実施例では、監視用として対物レンズ3’に固定焦点レンズを使用した場合を示しているため、前記複合プリズム4は、第1のプリズム4aと第2のプリズム4bを貼着して固定し、それぞれの撮像デバイス5,6は予め想定される結像位置に固着されている。
このため実施例1で示した結像倍率データメモリ15、プリズム駆動手段16等も使用せず装置全体の簡略化が図られている。もちろん、対物レンズ3’にズームレンズを使用し、非可視光焦点位置補正が可能な複合プリズム4光学系、結像倍率データメモリ15、プリズム駆動手段16等を装着して実施例1と同様の作用・効果を期待しても良い。
その他の構成及び作用は、実施例1と同様である。
【0038】
【実施例3】
本実施例は、非可視光焦点位置補正が可能な複合プリズム光学系を有する撮像装置14を紫外線顕微鏡装置用カメラとして使用した場合を示す。
図5において、紫外線顕微鏡装置39は鏡脚24にアーム25を介して鏡筒26を支持し、鏡筒26上部にはターレット40を介してズームレンズ等対物レンズを含まない撮像装置14が装着されている。
また、高倍率観察時にも、例えば被写体である半導体デバイス36をスムーズに移動可能な機械的ステージ38がアーム25に装着され、該機械的ステージ38は、Zステージ38Zと、Zステージ38Zに取り付けられたXステージ38X及び図示しないYステージ38Yで構成され、Zステージ38Zは焦点合わせのために半導体デバイス36と対物レンズ系29との相対位置を変えられるように、調節ねじ37Zを操作することにより対物レンズ系29の光軸(Z軸)に沿って微少移動ができる。
さらに、Xステージ38X及びYステージ38Yは、調節ねじ37X及び図示しない調節ねじ37Yを操作することによりそれぞれZステージ38Zに垂直方向に微少移動可能である。
そして、床から伝わる振動を機械的に防止するため、鏡脚24下部に防振台41が設置されていることが好ましい。
【0039】
可視〜近紫外の波長の光を発する、例えば水銀ランプ、キセノンランプ、水銀・キセノンランプ等の光源27からの光は、照明レンズ系28により適宜に収束されてハーフミラー32で反射され、レボルバ30に取り付けられた複数のレンズからなる対物レンズ系29によって合焦されて被写体、例えば半導体デバイス36へ入射する。
半導体デバイス36からの反射した光は再度対物レンズ系29、ハーフミラー32、結像レンズ系31、ハーフミラー33を透過し、ターレット40に収容された複数のレンズで構成される拡大レンズ系34によって本願発明の非可視光焦点位置補正が可能な複合プリズム光学系を有する撮像装置14のエリアセンサ型撮像デバイス上に結像する。
一方、ハーフミラー33で反射した光はアイピース系35レンズにより目視観測できる。
【0040】
ここで、例えば、対物レンズ系29に倍率10,50,100のレンズをレボルバ30に装着し、ターレット40に拡大レンズ系34として倍率1,2,4のレンズを装着して組み合わせることにより、10,20,40,50,100,200,400倍の7種類の総合結像倍率が得られ、半導体デバイス36のパターン等を低倍率から高倍率まで切り替えて観察することができる。
しかし、これらの総合結像倍率の変更に伴い、先に説明したズームレンズのズーム倍率を変化させた場合と同様に可視光領域に対し非可視光の波長領域での軸上色収差が発生するため、これを補正する必要がある。
【0041】
そのため、対物レンズ系29と拡大レンズ系34の組み合わせによって発生する軸上色収差の補正について図6に基づいて説明する。
紫外線顕微鏡装置39は、対物レンズ系29が装着されたレボルバ(30)及び拡大レンズ系34が装着されたターレット(40)をそれぞれ駆動できるレンズ駆動手段51と、該レンズ駆動手段51を介してそれぞれのレンズを選択・組み合わせ制御できる制御パネル52と、制御パネル52によって選択された前記対物レンズ系29と拡大レンズ系34の組み合わせによる総合結像倍率値に基づいて結像倍率データを結像倍率データメモリ53から読み出し、複合プリズム4の第2のプリズム4bを駆動するプリズム駆動手段16を備えている。
前記結像倍率データは、対物レンズ系29と拡大レンズ系34の組み合わせによる前記総合結像倍率毎に、可視光領域における各総合結像倍率値(焦点距離)に対し、紫外光領域の波長によって生ずる結像倍率のずれ量を予め計測し、これで得た結像倍率データが結像倍率データメモリ53にメモリされている。
【0042】
前記制御パネル52で対物レンズ系29と拡大レンズ系34の任意の組み合わせを選択すると、レンズ駆動手段51によってレボルバ30とターレット40を駆動し指定の対物レンズ系29と拡大レンズ系34を選択し、同時に結像倍率データメモリ53から所定の結像倍率データを読み出してプリズム駆動手段16を介して第2のプリズム4bを駆動し、プリズム4の光路長を補正する。
【0043】
軸上色収差が補正された被写体像は、可視光用撮像デバイス5に結像し光電変換された半導体デバイス(36)の色を確認できるカラー画像として出力端子19に出力し、非可視光用撮像デバイス6に結像し光電変換された半導体デバイス(36)の高解像力、高倍率の紫外画像として出力端子18に出力される。
また、画像処理手段21によって紫外画像とカラー画像とを重畳させて表示することにより紫外画像を疑似カラー画像として出力端子22から出力し図示しないビデオモニタに表示することもできる。
【0044】
以上の説明において、「・・・レンズ系」とは、単数又は複数の光学レンズを含む系を意味する。また、「アイピース系」とは、肉眼で観察するためのアイレンズ、視野レンズ等を含む系を意味する。
ここで、ハーフミラー33は全反射ミラーとし、半導体デバイス36からの全反射光を撮像装置14に効率よく供給するため上下端のいずれかに回転ひんじを備えて、アイピース系35で観察する場合は図5で示す位置にして半導体デバイス36からの全反射光をアイピース系35へ供給し、撮像装置14で観察する場合はひんじを利用して全反射ミラーを光路中からはずれるようにしても良い。
また、紫外線に弱い被写体を観察・計測する場合には、照明レンズ系28の光路中のいずれかに図示しない機械的シャッタを配設し、光源27をオン・オフすることなく、被写体に対する紫外線の照射を防ぎ、被写体の損傷を最小限にするようにしても良い。
その他の構成及び作用は、実施例1と同様である。
【0045】
【発明の効果】
本願発明によれば、次のような効果が発揮される。
1.対物レンズによって結像される被写体の光学像を光電変換する可視光用撮像デバイス及び非可視光用撮像デバイスと、前記対物レンズと前記両撮像デバイスとの間の光路中に配設され非可視光領域の波長を透過し、可視光領域の波長を反射する被膜を備えた反射面を有する第1のプリズムと、該第1のプリズムの前記反射面と対向する面を有する第2のプリズムとで構成された複合プリズムを備えているので、1台の撮像装置によって可視光像と非可視光像の両方を同時撮像することが可能で、装置の小型化、低廉化を図ることができる。
【0046】
2.結像倍率が可変なズームレンズと、同ズームレンズによって結像される被写体の光学像を光電変換する可視光用撮像デバイス及び非可視光用撮像デバイスと、前記ズームレンズと前記両撮像デバイスとの間の光路中に配設された、非可視光領域の波長を透過し、可視光領域の波長を反射する被膜を備えた反射面を有しプリズム固定台に固定された第1のプリズムと、該第1のプリズムの前記反射面と一定空隙を介して対向する面を有する第2のプリズムとで構成された複合プリズムと、前記第2のプリズムを第1のプリズムの前記反射面に沿って移動制御可能なプリズム駆動手段と、予め設定された前記ズームレンズの結像倍率データがメモリされた結像倍率データメモリとを備えているので、
ズームレンズの結像倍率を変えることによって生ずる非可視光領域の軸上色収差を、2つのプリズムを組み合わせた複合プリズムの光軸方向のガラス厚みを制御することによって、連続的に、かつ自動的に補正でき、可視光領域と非可視光領域の適正な光学像をそれぞれの撮像デバイスの受光面に結像することができると同時に、撮像装置の小型化、低廉化を図ることができる。
【0047】
3.R,G,Bフィルタ及びIRフィルタや、赤外カットフィルタ、可視光カットフィルタ等を使用せず、複合プリズムにより可視光領域と非可視光領域の波長を分離して、可視光用撮像デバイスと非可視光用撮像デバイスによりそれぞれの波長領域の画像を同時に得ているので、例えばフィルムスキャナ等の画像読取装置として使用すれば、処理速度が高速で、かつ装置の小型化、簡易化、低価格化を容易に図ることができる。
【0048】
4.ズームレンズと撮像デバイス間の光路中にプリズムを配設しているので、プリズムの小型化及び装置の小型化を図ることが可能である。
【0049】
【図面の簡単な説明】
【図1】本願発明実施例1の非可視光焦点位置補正が可能な複合プリズム光学系を有する撮像装置をフィルムスキャナの画像読取装置として使用した場合のブロック図。
【図2】同発明実施例のプリズム駆動機構説明図。
【図3】同発明実施例の四角形状に形成された複合プリズムの非可視光焦点位置補正の説明図。
【図4】同発明実施例2の複合プリズム光学系を有する撮像装置を監視用テレビカメラとして使用した場合のブロック図。
【図5】同発明実施例3の非可視光焦点位置補正が可能な複合プリズム光学系を有する撮像装置を紫外線顕微鏡装置用撮像装置として使用した場合の模式図。
【図6】同発明実施例3の非可視光焦点位置補正が可能な複合プリズム光学系を有する撮像装置を紫外線顕微鏡装置用撮像装置として使用した場合のブロック図。
【図7】同発明実施例の四角形状以外の複合プリズムの非可視光焦点位置補正の説明図。
【符号の説明】
1:フィルム駆動装置 2:フィルム
3:ズームレンズ 3’:対物レンズ
4,4’:複合プリズム 4a,4’a:第1のプリズム
4b,4’b:第2のプリズム
4bx,4by,4’bx,4’by:第2のプリズムの移動位置
4c,4’c:被膜面 5,6:撮像デバイス
6b,6x,6y:結像点 7,8:増幅回路
9:フィルム欠陥補正手段 10:レンズ駆動手段
11:アイリス制御手段 12:フォーカス制御手段
13:ズーム制御手段 14:撮像装置
15:結像倍率データメモリ 16:プリズム駆動手段
17:制御パネル 18,19,20,22:出力端子
21:画像処理手段 23:照明制御手段
24:鏡脚 25:アーム
26:鏡筒 27:光源
28:照明レンズ系 29:対物レンズ系
30:レボルバ 31:結像レンズ系
32,33:ハーフミラー 34:拡大レンズ系
35:アイピース系 36:半導体デバイス
37X,37Z:調節ねじ 38:機械的ステージ
38X:Xステージ 38Z:Zステージ
39:紫外線顕微鏡装置 40:ターレット
41:防振台 42:光軸
51:レンズ駆動手段 52:制御パネル
53:結像倍率データメモリ
L:光源 IRL:赤外光照明ランプ
101:プリズム取付板 102a,102b:プリズム固定台
103:モータ 104:プリズム駆動機構
105:制御ケーブル
Claims (5)
- 結像倍率が可変なズームレンズと、同ズームレンズによって結像される被写体の光学像を光電変換する可視光用撮像デバイス及び非可視光用撮像デバイスと、前記ズームレンズと前記両撮像デバイスとの間の光路中に配設された、非可視光領域の波長を透過し、可視光領域の波長を反射する被膜を備えた反射面を有しプリズム固定台に固定された第1のプリズムと、該第1のプリズムの前記反射面と一定空隙を介して対向する面を有する第2のプリズムとで構成された複合プリズムと、前記第2のプリズムを第1のプリズムの前記反射面に沿って移動制御し、前記結像倍率変更による可視光と非可視光との波長の違いによる結像面の位置ずれを補正するプリズム駆動手段と、予め設定された前記ズームレンズの結像倍率データがメモリされた結像倍率データメモリとを備え、
前記第1のプリズムで反射された可視光の光学像を光電変換するために可視光用撮像デバイスが可視光の光学像の結像位置に配設され、前記第1のプリズムを透過し、さらに第2のプリズムを透過した非可視光の光学像を光電変換するための非可視光用撮像デバイスが非可視光の光学像の結像位置に配設されてなることを特徴とする複合プリズム光学系を有する撮像装置。 - 前記結像倍率データが、前記ズームレンズのそれぞれの焦点距離における可視光画像の結像倍率に対応する非可視光画像の結像倍率データであることを特徴とする請求項1に記載の複合プリズム光学系を有する撮像装置。
- 前記第2のプリズムが、前記ズームレンズの結像倍率が変化すると、当該結像倍率に対応した前記結像倍率データメモリの結像倍率データに基づいて前記プリズム駆動手段により第1のプリズムの前記反射面に沿って移動するように駆動されてなることを特徴とする請求項1又は2に記載の複合プリズム光学系を有する撮像装置。
- 前記撮像装置が、さらに前記被写体としてのネガ又はポジフィルムに付着したゴミ、傷、又は指紋により生ずる画像の欠陥を補正するフィルム欠陥補正手段を備え、かつ同撮像装置が、フィルムスキャナに画像読取装置として装着されてなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の複合プリズム光学系を有する撮像装置。
- 前記撮像装置が、さらに被写体を可視光及び非可視光領域の波長を含む波長で照明する照明手段又は非可視光領域の波長のみで照明する照明手段と、同照明手段を制御する照明制御手段とを備えてなることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の複合プリズム光学系を有する撮像装置。
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