JP4497515B2 - ベアリングリテーナ用合成樹脂組成物及びそれを成型したベアリングリテーナ - Google Patents
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Description
本発明は、摩擦特性、摩耗特性、及び潤滑油保持特性を改善し、しかも生産効率を損なうことのないベアリングリテーナ用合成樹脂組成物及びそれを成形したベアリングリテーナを提供することを課題とする。さらに繊維または炭素クラスターを配合することで機械的性質を同時に向上させたベアリングリテーナ用合成樹脂組成物及びそれを成形したベアリングリテーナを提供することを課題とする。
本発明者は、扱いなれた合成樹脂組成物とりわけポリアミド系組成物に、RBC(RBセラミックス)微粉末又はCRBC(CRBセラミックス)微粉末を配合したときの特性に注目し、鋭意研究した結果、有望なベアリングリテーナ用合成樹脂組成物に到達することができた。
本発明の第一発明者である堀切川 一男は、以下に説明するように、米ぬかから得られる脱脂ぬかを利用して新しい炭素材料であるRBセラミックス(以下RBCという。)及びCRBセラミックス(以下CRBCという。)を開発した。
日本において90万トン/年、世界中で3300万トン/年も排出されている米ぬかを利用して、多孔質炭素材料を得ようとすることは、堀切川 一男の研究により知られている。(非特許文献1参照)
ここには、米ぬかから得られる脱脂ぬかと、熱硬化性樹脂を混合して混錬し、加圧成型した成型体を乾燥させた後、乾燥成型体を不活性ガス雰囲気中で焼成した炭素材料であるRBC及びその製造方法が示されている。熱硬化性樹脂は、熱硬化しさえすればどのようなものでも良く、代表的にはフェノール系樹脂、ジアリールフタレート系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリイミド系樹脂、トリアジン系樹脂が挙げられる。とくにフェノール系樹脂が好適に用いられる。 脱脂ぬかと熱硬化性樹脂の混合割合は、質量比で、50〜90:50〜10であるが、好適には75:25 が用いられる。
焼成温度は、700℃〜1000℃であり、通常はロータリーキルンが用いられ、焼成時間は約40分から140分である。
RBCをさらに改良した炭素材料であるCRBCは、米ぬかから得られる脱脂ぬかと、熱硬化性樹脂とから得られるRBセラミックスの改良材であって、米ぬかから得られる脱脂ぬかと、熱硬化性樹脂を混合して混錬し、不活性ガス中700℃〜1000℃で一次焼成した後、100メッシュ程度以下に粉砕して炭化粉末とし、該炭化粉末と熱硬化性樹脂を混合して混錬し、圧力20MPa〜30MPaで加圧成型した後、成型体を不活性ガス雰囲気中で再び300℃〜1100℃で熱処理して得られる黒色樹脂ないし多孔質セラミックスである。
・硬度が高い。
・膨張係数が非常に小さい。
・組織構造がポーラスである。
・電気伝導性を有する。
・比重が小さく軽い。
・摩擦係数が非常に小さい。
・耐摩耗性に優れる。
・材料が米ぬかで地球環境への悪影響が少なく、省資源に繋がる。
本発明においては、RBC及びCRBCを平均粒径300μm以下、好ましくは1〜150μmに微粉末化して用い、合成樹脂と混合することにより得られる合成樹脂組成物又はこの合成樹脂組成物にさらに繊維または炭素クラスターを混練することにより得られる合成樹脂組成物が、ベアリングリテーナとして優れた特性を有することを見出し、これをベアリングリテーナに利用する技術に関する。
すなわち、合成樹脂にRBC微粉末又はCRBC微粉末を組成物全体の10〜70質量%配合することにより、摩擦特性、摩耗特性、及び潤滑油保持特性が改善されたベアリングリテーナ用合成樹脂組成物を得る。又、このベアリングリテーナ用合成樹脂組成物を射出成形することにより、摩擦特性、摩耗特性、及び潤滑油保持特性が改善されたベアリングリテーナを得る。
さらにRBC微粉末又はCRBC微粉末とともに繊維または炭素クラスターをそれぞれ組成物全体の0.1〜50質量%、0.1〜5質量%配合することにより、摩擦特性、摩耗特性、及び潤滑油保持特性だけでなく機械的強度特性も改善されたベアリングリテーナ用合成樹脂組成物を得る。又、このベアリングリテーナ用合成樹脂組成物を射出成形することにより、摩擦特性、摩耗特性、及び潤滑油保持特性だけでなく機械的性質も改善されたベアリングリテーナが得られる。
1.摩擦係数を低下させることが出来る。
2.低すべり速度域と高すべり速度域での摩擦係数の差を小さくすることが出来る。
3.摩耗しにくくさせることが出来る。
4.潤滑油保持特性を向上させることが出来る。
5.RBC微粉末またはCRBC微粉末とともに繊維または炭素クラスターを配合することで、前記1〜4に加えて機械的性質も同時に向上させることが出来る。
6.従来のベアリングリテーナと同様の条件で成形できるので、生産効率を損なうことがない。
またさらに、平均粒径1〜10μmのRBC微粉末又はCRBC微粉末を配合することにより、1.ないし4.で述べた特性を格段に向上させるとともに、従来のベアリングリテーナが所望していた1.ないし4.で述べた特性を所与するものである。
RBC微粉末又はCRBC微粉末の添加割合は、RBC微粉末又はCRBC微粉末の含有量が組成物全体の10〜70質量%であることが必要である。とくに40〜70質量%の範囲が好ましい。
RBC微粉末又はCRBCの微粉末の添加割合が70質量%を超えると樹脂組成物の機械的特性が低下し、また10質量%以下では、潤滑油保持性能が低下する。
また、金型の温度をやや低めに設定すると良いことが解っている。基本的には合成樹脂のガラス転移点ないし融点の範囲の温度が良い。さらに、金型は、急冷するよりも徐冷する方が、良い表面状態の成型物が得られることが判明している。
本発明のベアリングリテーナ用合成樹脂組成物には、必要に応じて老化防止剤、酸化防止剤や安定剤を加えることができる。
これらは合成樹脂の種類により適宜選択することができる。
本発明で用いられる老化防止剤としては、ポリアミドの場合はアミン系の老化防止剤などが選ばれる。例えば、アミン系老化防止剤としては、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミンなどのジアリール−p−フェニレンジアミン系老化防止剤、N−フェニル−N’−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N’−(1,3−ジメチル)−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N’−シクロヘキシル−p−フェニレンジアミンなどのアリールアルキル−p−フェニレンジアミン系老化防止剤、アルキレーティッドジフェニルアミド、4,4’−ジ−オクチルジフェニルアミンなどのジフェニルアミン系老化防止剤などが挙げられる。
安定剤としては、リン酸エステル、亜リン酸エステルに代表されるような熱安定剤あるいは光安定剤としては、ヒンダードアミン系光安定剤、フェニルベンゾエート系光安定剤、ニッケル錯塩などがある。
このヒンダードアミン系またはフェニルベンゾエート系光安定剤の具体例として、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セパケート、コハク酸とN−(2−ヒドロキシプロピル)−2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシピペリジンとの縮合物、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ヘキサメチレンジアミンと1,2−ジブロモエタンとの重縮合物、ビス(2,2,6,6−テトラメチルピペリジル)アジペート、ビス(2,2,6,6−テトラメチルピペリジル)フマレート、ポリ〔〔6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)イミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル〕〔(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ〕ヘキサメチレン〔(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ〕〕、2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、4−オクチルフェニル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、n−ヘキサデシル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエートなどが挙げられる。
さらに、本発明のベアリングリテーナ用合成樹脂組成物中に、硝子繊維、ロックウール、炭素繊維等の無機質繊維、ポリエステル、レーヨン、ポリビニルアルコール、ポリアミド、ポリオレフイン、アクリル、アラミド等の合成繊維又は木材パルプ、マニラ麻等の天然パルプ繊維を添加して、成型物の強度を高めることが出来る。
また、繊維は市販のもので、長繊維でも短繊維でも同様に用いることができる。
これらの繊維の配合量は、組成物全体の0.1〜50質量%配合することができるが、強度及び潤滑特性から1〜30質量%とくに10〜25質量%であることが好ましい。
実施例に先立って、比較のための試験片Aを作製した。
(試験片Aの作製)
ナイロン66ペレット100gを原料樹脂とし射出成型して、直径50mm厚さ3mmの試験片Aを作製した。
実施例1
(RBC微粉末の作製)
米ぬかから得られる脱脂ぬか75kgと液体状のフェノール樹脂(レゾール)25kgを、50℃〜60℃に加熱しながら、混合して混錬した。可塑性を有する均質な混合物が得られた。
混合物を、ロータリーキルンを使って窒素雰囲気中で950℃で120分焼き上げた。得られた炭化焼成物を、170メッシュの篩にかけて平均粒径が140μm〜160μmのRBC微粉末を得た。
(試験片Bの成型)
平均粒径が150μmRBC微粉末30gとナイロン66ペレット70gを溶融混合して得られた樹脂組成物を原料樹脂とし射出成型して、直径50mm厚さ3mmの試験片Bを作製した。
実施例1で製造したRBC微粉末を用いた。
(試験片Cの作製)
平均粒径が150μmRBC微粉末50gとナイロン66ペレット50gを溶融混合して得られた樹脂組成物を原料樹脂とし射出成型して、直径50mm厚さ3mmの試験片Cを作製した。
米ぬかから得られる脱脂ぬか75kgと液体状のフェノール樹脂(レゾール)25kgを、50℃〜60℃に加熱しながら、混合して混錬した。可塑性を有する均質な混合物が得られた。
混合物を、ロータリーキルンを使って窒素雰囲気中1000℃で120分焼き上げた。得られた炭化焼成物を、100メッシュの篩にかけて、平均粒径が240μm〜260μmのRBC微粉末を得た。
得られたRBC微粉末65Kgと固体状のフェノール樹脂(レゾール)35Kgを100℃〜150℃に加熱しながら、混合して混錬した。可塑性を有する均質な混合物が得られた。
次いで、可塑物を圧力22MPaで直径約2cmの球形に加圧成型した。金型の温度は150℃であった。
金型から成型体を取り出し、窒素雰囲気中で500℃までは3℃/分の昇温速度で温度を上げ、500℃で30分間保持し、1000℃で約120分焼成した。
次いで500℃までは2〜3℃/分の冷却速度で、温度を下げ、500℃以下になると自然放冷した。
得られた直径約2cmの球形のCRBC成型物を、粉砕機を用いて粉砕し、800メッシュの篩にかけて、平均粒径が30μmであるCRBC微粉末を得た。
(試験片Dの成型)
平均粒径が30μmのCRBC微粉末50gとナイロン66ペレット50gを溶融混合して得られた樹脂組成物を原料樹脂とし、射出成型して、直径50mm厚さ3mmの試験片Dを作製した。
実施例1で製造したRBC微粉末を用いた。
(試験片Eの作製)
平均粒径が150μmのRBC微粉末70gとナイロン66ペレット30gを溶融混合して得られた樹脂組成物を原料樹脂とし射出成型して、直径50mm厚さ3mmの試験片Eを作製した。
実施例1で製造したRBC微粉末を用いた。
(試験片Fの作製)
平均粒径が150μmのRBC微粉末10gとナイロン66ペレット90gを溶融混合して得られた樹脂組成物を原料樹脂とし射出成形して、直径50mm厚さ3mmの試験片Fを作製した。
実施例1で製造したRBC微粉末を用いた。
(試験片Gの作製)
平均粒径が150μmのRBC微粉末20gとナイロン66ペレット80gを溶融混合して得た樹脂組成物を原料樹脂とし射出成形して、直径50mm厚さ3mmの試験片Gを作製した。
市販の硝子繊維23g及びナイロン66ペレット77gを均一に溶融混合して得た樹脂組成物を原料樹脂とし射出成形して、直径50mm厚さ3mmの比較のための試験片Hを作製した。
実施例1で製造したRBC微粉末を用いた。
(試験片Iの作製)
平均粒径が150μmのRBC微粉末10gと実施例7の硝子繊維入りナイロン66組成物90gを溶融混合して樹脂組成物を得た。この樹脂組成物を原料樹脂とし射出成形して、直径50mm厚さ3mmの試験片Iを作製した。
実施例1で製造したRBC微粉末をさらに粉砕機を用いて粉砕し、800メッシュの篩にかけて、平均粒径が30μmであるRBC微粉末を得た。
(試験片Jの作製)
平均粒径が30μmのRBC微粉末30gとナイロン66ペレット70gを溶融混合して得た樹脂組成物を原料樹脂とし射出成形して、直径50mm厚さ3mmの試験片Jを作製した。
実施例9で製造したRBC微粉末を用いた。
(試験片Kの作製)
平均粒径が30μmのRBC微粉末70gとナイロン66ペレット30gを溶融混合して得た樹脂組成物を原料樹脂とし射出成形して、直径50mm厚さ3mmの試験片Kを作製した。
実施例9で製造したRBC微粉末をさらに粉砕機を用いて微粉砕し、平均粒径が3μm(正規分布σ1.632)であるRBC微粉末を得た。
(試験片Lの作製)
平均粒径が3μmのRBC微粉末5gとナイロン66ペレット95gを溶融混合して得た樹脂組成物を原料樹脂とし射出成形して、直径50mm厚さ3mmの試験片Lを作製した。
実施例11で製造したRBC微粉末を用いた。
(試験片Mの作製)
平均粒径が3μmのRBC微粉末10gとナイロン66ペレット90gを溶融混合して得た樹脂組成物を原料樹脂とし射出成形して、直径50mm厚さ3mmの試験片Mを作製した。
実施例11で製造したRBC微粉末を用いた。
(試験片Nの作製)
平均粒径が3μmのRBC微粉末20gとナイロン66ペレット80gを溶融混合して得た樹脂組成物を原料樹脂とし射出成形して、直径50mm厚さ3mmの試験片Nを作製した。
実施例11で製造したRBC微粉末を用いた。
(試験片Oの作製)
平均粒径が3μmのRBC微粉末30gとナイロン66ペレット70gを溶融混合して得た樹脂組成物を原料樹脂とし射出成形して、直径50mm厚さ3mmの試験片Oを作製した。
実施例11で製造したRBC微粉末を用いた。
(試験片Pの作製)
平均粒径が3μmのRBC微粉末50gとナイロン66ペレット50gを溶融混合して得た樹脂組成物を原料樹脂とし射出成形して、直径50mm厚さ3mmの試験片Pを作製した。
実施例11で製造したRBC微粉末を用いた。
(試験片Qの作製)
平均粒径が3μmのRBC微粉末30gとナイロン66ペレット69.9gさらにフラーレン(フロンティアカーボン株式会社の「ミックスフラーレン」(製品名))0.1gを溶融混合して得た樹脂組成物を原料樹脂とし射出成形して、直径50mm厚さ3mmの試験片Qを作製した。
実施例11で製造したRBC微粉末を用いた。
(試験片Rの作製)
平均粒径が3μmのRBC微粉末30gとナイロン66ペレット69.5gさらにフラーレン(フロンティアカーボン株式会社の「ミックスフラーレン」(製品名))0.5gを溶融混合して得た樹脂組成物を原料樹脂とし射出成形して、直径50mm厚さ3mmの試験片Rを作製した。
実施例11で製造したRBC微粉末を用いた。
(試験片Sの作製)
平均粒径が3μmのRBC微粉末30gとナイロン66ペレット69gさらにフラーレン(フロンティアカーボン株式会社の「ミックスフラーレン」(製品名))1gを溶融混合して得た樹脂組成物を原料樹脂とし射出成形して、直径50mm厚さ3mmの試験片Sを作製した。
実施例11で製造したRBC微粉末を用いた。
(試験片Tの作製)
平均粒径が3μmのRBC微粉末30gとナイロン66ペレット68gさらにフラーレン(フロンティアカーボン株式会社の「ミックスフラーレン」(製品名))2gを溶融混合して得た樹脂組成物を原料樹脂とし射出成形して、直径50mm厚さ3mmの試験片Tを作製した。
試験片A〜Tとその特性を表1及び表2に示す。
<摩擦係数の測定>
荷重0.49N、ストローク5mm(0.001−1.0m/sについて)、無潤滑下または標準のエステル系潤滑油潤滑下の表4に示す条件下で、ボールSUJ2φ1mm、弾性率206GPa、ポアソン比0.3の表3に示したボールを用いて、摩擦係数を計測した。
図5は硝子繊維を含む試験片の大気中無潤滑下における摩擦係数とすべり速度の関係を示し、RBC微粉末粒子がナイロン66の摩擦係数を低下させ、低速域と高速域での摩擦係数の差を小さくする効果を有することが解った。
図6は平均粒径が3μmのRBC微粉末とPA66ペレットさらにフラーレンから成る試験片の大気中無潤滑下における摩擦係数とすべり速度の関係を示し、フラーレンが摩擦係数に悪影響を及ぼさないことが解った。
図7,図8,図9はそれぞれ平均粒径が150μm,30μm,3μmのRBC微粉末またはCRBC微粉末を用いた試験片のエステル油潤滑下における摩擦係数とすべり速度の関係を示し、この結果から、RBC微粉末、CRBC微粉末粒子がナイロン66の摩擦係数を大幅に低下させるとともに、低速域と高速域での摩擦係数の差を小さく効果を有することが解った。
図10は硝子繊維を含む試験片のエステル油潤滑下における摩擦係数とすべり速度の関係を示し、この結果から、RBC微粉末、CRBC微粉末粒子がナイロン66の摩擦係数を低下させるとともに、低速域と高速域での摩擦係数の差を小さく効果を有することが解った。
図11は平均粒径が3μmのRBC微粉末とPA66ペレットさらにフラーレンから成る試験片試験片のエステル油潤滑下における摩擦係数とすべり速度の関係を示し、フラーレンが摩擦係数に悪影響を及ぼさないことが解った。
大気中無潤滑下でもエステル油潤滑下でも、ナイロン66にRBC微粉末、CRBC微粉末粒子を配合することにより、摩擦係数のすべり速度に対する安定性が改善されることが解った。
<比摩耗量の測定>
荷重0.49N、ストローク5mm(0.001−1.0m/sについて)、無潤滑下またはエステル油薄膜潤滑下の表4に示す条件下で、ボールSUJ2φ1mm、弾性率206GPa、ポアソン比0.3の表3に示したボールを用いて、比摩耗量を計測した。
その結果を表7にまとめ、図12及び図13に示す。
図13はエステル油薄膜潤滑下における比摩耗量とRBC微粉末、CRBC微粉末粒子配合量の関係を示したものである。
エステル油薄膜は、摩擦試験片を0.005質量%に溶媒希釈したエステル油中に3分間浸漬した後、デシケータ中にて2分間の脱気乾燥を施すことにより作製された。
平均粒径150μmまたは30μmのRBC微粉末を用いたもののうち試験片Cと試験片D,および平均粒径3μmのRBC微粉末を用いたすべての試験片について、無潤滑下と比べて1/200〜1/300以下小さい比摩耗量の値を示した。この結果、特に平均粒径が150μmまたは30μmのRBC微粉末、CRBC微粉末粒子を用いた場合、50質量%付近において特に優れた潤滑油保持性が発揮されたと考えられる。また平均粒径が3μmのRBC微粉末粒子を用いた場合、30〜50質量%付近において特に優れた潤滑油保持性が発揮され、好適なRBC微粉末配合率の範囲が広い。またエステル油薄膜潤滑下においてもフラーレンが比摩耗量に対して悪影響を及ぼさないことが解る。
荷重0.49N、ストローク5mm、すべり速度0.01m/sについてエステル油薄膜潤滑下で、ボールSUJ2φ1mm、弾性率206GPa、ポアソン比0.3の表3に示したボールを用いて、エステル油薄膜が潤滑性を示さなくなるまで往復滑り摩擦を行った。摩擦係数が0.2を超える摩擦繰り返し数を臨界摩擦繰り返し数として、この値が大きいほどエステル油薄膜の潤滑性が長く維持されることを意味し、潤滑油保持特性が良いといえる。
その結果を表8および図14に示す。
図14はエステル油薄膜潤滑下における臨界摩擦繰り返し数とRBC微粉末、CRBC微粉末粒子配合量の関係を示したものである。
エステル油薄膜は、摩擦試験片を0.005質量%に溶媒希釈したエステル油中に3分間浸漬した後、デシケータ中にて2分間の脱気乾燥を施すことにより作製された。
RBC微粉末またはCRBC微粉末を配合していない試験片Aと比較してRBC微粉末またはCRBC微粉末を配合した試験片はいずれも臨界摩擦繰り返し数が大きくなっており、潤滑油膜保持特性が改善されたことが解る。特に平均粒径3μmのRBC微粉末を用いた試験片は潤滑油保持特性に優れており、30wt%のRBC微粉末を配合することで、平均粒径150μmまたは30μmのRBC微粉末を50wt%配合した場合よりも、優れた潤滑油保持特性を得ることができ、従来のベアリングリテーナの課題を格段の特性向上によって解決することができる。またフラーレンが潤滑油保持特性に対して悪影響を及ぼさないことも判った。
Claims (10)
- ナイロン66、ナイロン6、ナイロン11、ナイロン12、ポリフタルアミドから選ばれる樹脂の1種又は2種以上である合成樹脂と均一に分散させたRBセラミックス微粉末又はCRBセラミックスの微粉末を含み、RBセラミックス微粉末又はCRBセラミックスの微粉末の含有量が組成物全体の10〜70質量%であるベアリングリテーナ用合成樹脂組成物。
- RBセラミックス微粉末又はCRBセラミックスの微粉末の平均粒径が、300μm以下である請求項1に記載したベアリングリテーナ用合成樹脂組成物。
- RBセラミックス微粉末又はCRBセラミックスの微粉末の平均粒径が、1〜10μmである請求項1又は請求項2に記載したベアリングリテーナ用合成樹脂組成物。
- 合成樹脂が、ナイロン66である請求項2又は請求項3に記載したベアリングリテーナ用合成樹脂組成物。
- さらに、無機繊維及び/又は有機繊維を配合した請求項1ないし請求項4のいずれかひとつに記載したベアリングリテーナ用合成樹脂組成物。
- 無機繊維及び/又は有機繊維が、短繊維であり、配合量が組成物全体の0.1〜50質量%である請求項5に記載したベアリングリテーナ用合成樹脂組成物。
- 無機繊維が硝子繊維である請求項5又は請求項6に記載したベアリングリテーナ用合成樹脂組成物。
- さらに、フラーレンを配合した請求項1ないし請求項4のいずれかひとつに記載したベアリングリテーナ用合成樹脂組成物。
- フラーレンの配合量が組成物全体の0.1〜5質量%であり、かつ、RBセラミックス微粉末又はCRBセラミックスの微粉末の平均粒径が10μm以下である請求項8に記載したベアリングリテーナ用合成樹脂組成物。
- 請求項1ないし請求項9のベアリングリテーナ用合成樹脂組成物を用いて成型したベアリングリテーナ。
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