JP4490027B2 - プレス機 - Google Patents
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Description
【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は金属板などの成形に用いるプレス機、特に支持台に取り付けられている固定金型に対して可動金型を取り付けているスライド板の位置を正確に測定することができるようにしたプレス機に関するものである。
【０００２】
【従来の技術】
打ち抜きプレス、絞り成形、型鍛造、射出成形などにもプレス機は用いられる。プレス機では一方の金型を固定として、他方の金型を可動としたものが一般であり、縦型プレス機においては、下部支持台と、下部支持台で支持された複数の支柱と、支柱によって保持されている上部支持板と、下部支持台と上部支持板の間で支柱に沿って往復動することができ下部支持台との間に成形空間を持つスライド板を持っている。成形空間で、下部支持台上に固定金型が、またスライド板の下面に可動金型が設けられていて、固定金型と可動金型の間でワークが成形される。スライド板は通常平面状になっていて、駆動機構によって上下に動かされる。固定金型に対して可動金型を所望の位置関係を保ちながら、例えば可動金型を水平に保ちながら動かして成形することが望ましい。
【０００３】
プレス成形されるワークの形状によっては金型に偏荷重が生じて、固定金型と可動金型あるいはスライド板との位置関係が水平でなくなることがある。スライド板を駆動する複数の駆動源を持っている場合には、複数の駆動源間の同期を維持するように駆動源を制御してスライド板の水平を保つことが提案されている。
【０００４】
ところが、プレス成形で作られるワークは三次元形状などの複雑形状をしているために、成形時スライド板に掛かる力の大きさが成形の進行とともに変化するだけでなく、力の掛かる位置が成形とともに動く。
【０００５】
例えば、自動車用のオイルパンを絞り成形する場合のスライド板に掛かる反力の様子を模式的に図７の（Ａ）、（Ｂ）および（Ｃ）に示している。これらの図でスライド板４０をｘｙ座標として示している。例えば成形が開始されると、まず上型がオイルパンのドレイン部に達して、ドレイン部を成形するのでその部分で発生した力がｘｙ座標の第４象限に掛かる。成形が進んでいくとオイル皿部を成形するようになるので、座標の第２象限と第３象限からの大きな力ｗ2とｗ3を受ける。そのときには当初からあったｗ1の力は小さくなり、第１象限の大きな力ｗ4も加わるので、これらの合成力Ｗが第３象限に掛かることになる。更に成形が進んでいくとｗ2〜ｗ4の力は小さくなりｗ5の力が加わって、合成力はほぼｘ軸上にあってｙ軸よりも右に働く。
【０００６】
ここで説明した力及び合成力の掛かり方、大きさ、その変化はワークの形状や金型の進む速さによって変わってくるが、スライド板に働く合成力の位置とその大きさはプレスの進行とともに変わってくるということは一般にいえることである。
【０００７】
そこで、プレス成形の間を通して、スライド板が下部支持台に対して好ましい位置関係を保つようにしたプレス機を、本発明者等は提案している。そのプレス機では、複数の駆動源によってスライド板を駆動加圧し、各駆動源がスライド板と係合している部分の近くにスライド板の変位を測定するための変位測定手段が設けられている。プレス成形の各段階毎に変位測定手段で変位を測定して、スライド板の下部支持台に対する好ましい位置関係が保たれるように各駆動源に駆動信号を供給する。
【０００８】
そのプレス機は図５に正面図で、図６にその平面図で示すものである。図６において上部支持板を一部取り除いて示している。プレス機は下部支持台１０が床面上に固定されていて、下部支持台に立てられた支柱２０によって上部支持板３０が保持されている。下部支持台１０と上部支持板３０の間に支柱２０に沿って往復動することができるスライド板４０が設けられており、スライド板と下部支持台との間に成形空間がある。この成形空間では、下部支持台上にプレス用の固定金型（下型）、スライド板の下面に固定金型に対応する可動金型（上型）が取り付けられており、これら両金型の間に例えば被成形板を入れて成形する。
【０００９】
上部支持板３０には駆動源７０としてサーボモータと減速機構を組み合わせたものが５個取り付けられている。各駆動源から下方向に延びている駆動軸７１は基準プレート９０′に開けられた通孔９２′を通ってスライド板４０の上面で各係合部７２と係合している。駆動軸のところに例えばボールねじが付けられていて、回転を上下動に変換するようになっており、サーボモータの回転によってスライド板を上下動する。
【００１０】
各係合部７２の近くには各変位測定手段８０が設けられている。変位測定手段８０の磁気スケール８１は基準プレート９０′に取り付けられていて、変位測定手段の磁気センサー８２は各係合部７２に取り付けられた支柱で支持されている。ここで基準プレート９０′はスライド板４０の位置に関係なく同じ位置に保持されている。スライド板４０が駆動源７０の働きによって駆動させられたときに、変位測定手段８０によって各係合部の変位を測定することができる。
【００１１】
成形の進行とともに、前に説明した図７のようにスライド板に働く力が変化する。その変化に伴って駆動源７０に対する負荷が変わってくる。各駆動源に対応する可動金型の各部位と固定金型との位置関係が均一でなくなる。そのうちのあるものはスライド板４０を早く押し下げるようになり、またあるものはスライド板４０を押し下げる下降が遅くなる。その進みと遅れを変位測定手段８０で測定して、それらを制御手段へ送って、変位測定手段８０の変位が所望の値になるように、すなわち係合部の部位におけるスライド板が例えば水平となるように駆動源７０への駆動パルス信号を調整する。
【００１２】
ここで説明したプレス機によってスライド板を下部支持台に対して好ましい位置関係を保ちながら下降させることができるので、成形部から反力が掛かる位置が成形途中で変化するような場合であっても均等な成形が可能となる。
【００１３】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、図５に一点破線で示すように、スライド板の変形は場所によって違っている。駆動源の駆動軸がスライド板と係合している部分から変位測定手段の取り付けられている位置が離れていると、本来は駆動軸の場所で測定すべきスライド板の変位が、駆動軸の場所から離れた変位測定手段が取り付けられた位置で測定されることになる。そのために変位測定手段で測定したスライド板の変位が、駆動軸の係合しているスライド板部分の変位を正しく表していないことがあった。
【００１４】
そこで、本発明の目的とするところは、駆動源の駆動軸が係合しているスライド板部分の変位を正しく測定することのできる変位測定手段を備えたプレス機を提供するものである。
【００１５】
【課題を解決するための手段】
本発明のプレス機は、
下部支持台と、
下部支持台で支持された複数の支柱で保持されている上部支持板と、
下部支持台と上部支持板との間で往復動をすることができ、下部支持台との間に成形空間を持つスライド板と、
前記スライド板の中央部を含むスライド板上でスライド板と係合してスライド板を変位させる駆動軸をそれぞれ持つとともに、上部支持板に保持されている複数の駆動源と、
スライド板の変位を測定するための変位測定手段とを、
有するものにおいて、
前記スライド板上でそれぞれの駆動軸が係合しているスライド板部分にとって共通な変位基準となる基準プレートが下部支持台に支えられて上部支持板の上部に設けられていて、
前記駆動軸はその軸芯に通孔を持っており、
前記変位測定手段は、スライド板の、駆動軸に開けられた通孔に対応する部分の前記基準プレートに対する変位を測定するものである
ことを特徴とする。
【００１６】
本発明の前記プレス機では、
前記変位測定手段は、駆動軸に開けられた通孔内に駆動軸とは独立して動くことができるように通されている変位検出用軸と、前記基準プレートに取り付けられたリニアスケールとからなり、
その変位検出用軸の一方の端が、スライド板の、駆動軸に開けられた前記通孔に対応する部分に固定されているとともに、変位検出用軸の他方の端が基準プレート上まで延びてリニアスケールと対向していることが好ましい。
【００１７】
本発明の前記プレス機では、
前記変位測定手段は光学的変位測定手段であり、
基準プレートの、前記駆動軸に開けられた通孔に向いた部分にその光学的変位測定手段が設けられていて、スライド板の、駆動軸に開けられた通孔に向いた部分の変位を測定するものとすることができる。
【００１８】
【発明の実施の形態】
以下図面を参照しながら本発明のプレス機の実施例を説明する。図１はプレス機の正面図で、図２はその平面図、図３は図１の一部を拡大するとともに、変位測定手段を断面にて示すものであり、図４は他の実施例による変位測定手段を断面にて示す。これらの図面において、図５，図６と同様な部分は同じ参照符号を用いて示した。
【００１９】
プレス機は下部支持台１０が床面上に固定されていて、下部支持台に立てられた支柱２０によって上部支持板３０が保持されている。下部支持台１０と上部支持板３０の間に支柱２０に沿って往復動することができるスライド板４０が設けられており、スライド板と下部支持台との間に成形空間がある。この成形空間では、下部支持台上にプレス用の固定金型（下型）、スライド板の下面に固定金型に対応する可動金型（上型）が取り付けられており、これら両金型の間に例えば被成形板を入れて成形する
上部支持板３０には駆動源５０としてサーボモータと減速機構を組み合わせたものが５個取り付けられている。各駆動源から減速機構を内部に有しているギアボックス５１を介して駆動軸５２は上部支持板３０に開けられた通孔を通ってスライド板４０の上面で各係合部５３と係合している。各係合部内面と駆動軸とは例えばボールねじによって、駆動軸の回転を上下動に変換するようになっており、サーボモータの回転によってスライド板を上下動する。サーボモータの回転軸と駆動軸とは減速ギアのような減速機構で係合されているので、これらの軸芯がずれた位置にあって、サーボモータが駆動軸の軸芯からはずれて位置している。
【００２０】
このように複数の駆動源が用いられている場合は、それら複数の駆動源によるスライド板への押し圧力が、スライド板上に均等に分布するように駆動源が配置されていることが好ましい。また、これらの駆動源は互いに同じ大きさの押し圧力を生じる、すなわち出力が同じであることが好ましい。
【００２１】
基準プレート９０は例えばＨ字形のチタン製枠体で構成されており、下部支持台１０に固定された支柱１００とその支柱で支えられている接続バー１０２によって支持されている。基準プレート９０は下部支持台１０に保持されている以外、プレス機のどの部分にも接触したりプレス機から干渉されることがないので、プレス機の成形時におけるプレス機各部の変形から独立している。図２（Ｂ）に基準プレート９０を図２（Ａ）の矢視２Ｂ−２Ｂで示しているが、この図にあるように支柱１００で支えられた接続バー１０２の上に防振プレート１０１を介して基準プレート９０が取り付けられているのがよい。また支柱１００と接続バー１０２には熱影響の少ないアンバーなどの材質を用いるのがよい。
【００２２】
各駆動軸５２の軸芯に通孔５４が開けられていて、通孔に対応するスライド板部分に変位測定手段６０の変位検出用軸６１が固定されている。変位検出用軸６１は駆動軸５２に対して自由に通孔内を動くことができる。スライド板４０が上下するとそれに取り付けられている変位検出用軸６１もスライド板４０とともに上下する。変位検出用軸６１の他端が駆動軸５２に開けられた通孔５４から駆動軸５２の上部に突出していて、基準プレート９０に設けられた通孔を有するブッシュ９１から基準プレート上に出ていて、ブッシュ９１によって摺動自在に保持されている。変位検出用軸６１は変位測定手段の上部においてもブッシュで摺動自在に保持されていることが好ましい。変位検出用軸６１の上部が基準プレート９０に固定したリニアスケール６２と対向している。リニアスケール６２として例えば磁気スケールを用い、変位検出用軸の上部に例えば磁気センサー６３を取り付けていると、スライド板の、駆動軸に開けた通孔に対応する部分の変位に応じて、磁気センサーがリニアスケールに対して動くので、スライド板の変位を測定できることになる。変位検出用軸は駆動軸の軸芯で、スライド板の変位を測定するので、駆動軸によるスライド板の変位を検出したことになる。
【００２３】
図４は変位測定手段の他の実施例を断面図で示すものである。ここでも駆動軸５２の軸芯に通孔５４が開けられているが、基準プレート９０の駆動軸に開けられた通孔に向いた部分に光学的変位測定手段６５が設けられている。光学的変位測定手段６５から出た光線６６を、スライド板４０の、駆動軸に開けられた通孔を向いた部分に反射させてそこまでの距離を測定する。
【００２４】
図１から図４に示す本発明の実施例においては、駆動源５０と駆動軸５２との軸芯をずらしてその間に変速機構を設けているが、駆動源５０のサーボモータの回転子軸と駆動軸とを一体にして、その軸芯にサーボモータ上部まで通った通孔を設けることができる。この通孔内にサーボモータ上部まで延びた変位検出用軸を設け、サーボモータ上部に基準プレートを設け、そこに変位測定手段を設けることができる。
【００２５】
【発明の効果】
以上詳しく説明したように、本発明のプレス機においては、プレス機のスライド板を駆動する駆動軸の中央でスライド板の変位を測定することができる。そのためにスライド板の変位に従って駆動源を制御した場合、加圧点におけるスライド板の変位を測定しているので、その制御を正確なものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明によるプレス機の一部断面で示す、正面図である。
【図２】（Ａ）は本発明によるプレス機の平面図であり、（Ｂ）は（Ａ）の矢視２Ｂ−２Ｂである。
【図３】図１に示した変位測定手段の断面を拡大した図である。
【図４】本発明に用いている変位測定手段の他の実施例の断面拡大図である。
【図５】本発明者等が前に提案しているプレス機の正面図である。
【図６】図５のプレス機の平面図である。
【図７】プレス進行に伴う荷重の変動を説明するための図である。
【符号の説明】
１０ 下部支持台
２０ 支柱
３０ 上部支持板
４０ スライド板
５０，７０ 駆動源
５１ ギアボックス
５２，７１ 駆動軸
５３，７２ 係合部
５４ 通孔
６０，８０ 変位測定手段
６１ 変位検出用軸
６２ リニアスケール
６３，８２ 磁気センサー
６５ 光学的変位測定手段
６６ 光線
８１ 磁気スケール
９０，９０′ 基準プレート
９１ ブッシュ
９２′ 通孔
１００ 支柱
１０１ 防振プレート
１０２ 接続バー
【発明の属する技術分野】
本発明は金属板などの成形に用いるプレス機、特に支持台に取り付けられている固定金型に対して可動金型を取り付けているスライド板の位置を正確に測定することができるようにしたプレス機に関するものである。
【０００２】
【従来の技術】
打ち抜きプレス、絞り成形、型鍛造、射出成形などにもプレス機は用いられる。プレス機では一方の金型を固定として、他方の金型を可動としたものが一般であり、縦型プレス機においては、下部支持台と、下部支持台で支持された複数の支柱と、支柱によって保持されている上部支持板と、下部支持台と上部支持板の間で支柱に沿って往復動することができ下部支持台との間に成形空間を持つスライド板を持っている。成形空間で、下部支持台上に固定金型が、またスライド板の下面に可動金型が設けられていて、固定金型と可動金型の間でワークが成形される。スライド板は通常平面状になっていて、駆動機構によって上下に動かされる。固定金型に対して可動金型を所望の位置関係を保ちながら、例えば可動金型を水平に保ちながら動かして成形することが望ましい。
【０００３】
プレス成形されるワークの形状によっては金型に偏荷重が生じて、固定金型と可動金型あるいはスライド板との位置関係が水平でなくなることがある。スライド板を駆動する複数の駆動源を持っている場合には、複数の駆動源間の同期を維持するように駆動源を制御してスライド板の水平を保つことが提案されている。
【０００４】
ところが、プレス成形で作られるワークは三次元形状などの複雑形状をしているために、成形時スライド板に掛かる力の大きさが成形の進行とともに変化するだけでなく、力の掛かる位置が成形とともに動く。
【０００５】
例えば、自動車用のオイルパンを絞り成形する場合のスライド板に掛かる反力の様子を模式的に図７の（Ａ）、（Ｂ）および（Ｃ）に示している。これらの図でスライド板４０をｘｙ座標として示している。例えば成形が開始されると、まず上型がオイルパンのドレイン部に達して、ドレイン部を成形するのでその部分で発生した力がｘｙ座標の第４象限に掛かる。成形が進んでいくとオイル皿部を成形するようになるので、座標の第２象限と第３象限からの大きな力ｗ2とｗ3を受ける。そのときには当初からあったｗ1の力は小さくなり、第１象限の大きな力ｗ4も加わるので、これらの合成力Ｗが第３象限に掛かることになる。更に成形が進んでいくとｗ2〜ｗ4の力は小さくなりｗ5の力が加わって、合成力はほぼｘ軸上にあってｙ軸よりも右に働く。
【０００６】
ここで説明した力及び合成力の掛かり方、大きさ、その変化はワークの形状や金型の進む速さによって変わってくるが、スライド板に働く合成力の位置とその大きさはプレスの進行とともに変わってくるということは一般にいえることである。
【０００７】
そこで、プレス成形の間を通して、スライド板が下部支持台に対して好ましい位置関係を保つようにしたプレス機を、本発明者等は提案している。そのプレス機では、複数の駆動源によってスライド板を駆動加圧し、各駆動源がスライド板と係合している部分の近くにスライド板の変位を測定するための変位測定手段が設けられている。プレス成形の各段階毎に変位測定手段で変位を測定して、スライド板の下部支持台に対する好ましい位置関係が保たれるように各駆動源に駆動信号を供給する。
【０００８】
そのプレス機は図５に正面図で、図６にその平面図で示すものである。図６において上部支持板を一部取り除いて示している。プレス機は下部支持台１０が床面上に固定されていて、下部支持台に立てられた支柱２０によって上部支持板３０が保持されている。下部支持台１０と上部支持板３０の間に支柱２０に沿って往復動することができるスライド板４０が設けられており、スライド板と下部支持台との間に成形空間がある。この成形空間では、下部支持台上にプレス用の固定金型（下型）、スライド板の下面に固定金型に対応する可動金型（上型）が取り付けられており、これら両金型の間に例えば被成形板を入れて成形する。
【０００９】
上部支持板３０には駆動源７０としてサーボモータと減速機構を組み合わせたものが５個取り付けられている。各駆動源から下方向に延びている駆動軸７１は基準プレート９０′に開けられた通孔９２′を通ってスライド板４０の上面で各係合部７２と係合している。駆動軸のところに例えばボールねじが付けられていて、回転を上下動に変換するようになっており、サーボモータの回転によってスライド板を上下動する。
【００１０】
各係合部７２の近くには各変位測定手段８０が設けられている。変位測定手段８０の磁気スケール８１は基準プレート９０′に取り付けられていて、変位測定手段の磁気センサー８２は各係合部７２に取り付けられた支柱で支持されている。ここで基準プレート９０′はスライド板４０の位置に関係なく同じ位置に保持されている。スライド板４０が駆動源７０の働きによって駆動させられたときに、変位測定手段８０によって各係合部の変位を測定することができる。
【００１１】
成形の進行とともに、前に説明した図７のようにスライド板に働く力が変化する。その変化に伴って駆動源７０に対する負荷が変わってくる。各駆動源に対応する可動金型の各部位と固定金型との位置関係が均一でなくなる。そのうちのあるものはスライド板４０を早く押し下げるようになり、またあるものはスライド板４０を押し下げる下降が遅くなる。その進みと遅れを変位測定手段８０で測定して、それらを制御手段へ送って、変位測定手段８０の変位が所望の値になるように、すなわち係合部の部位におけるスライド板が例えば水平となるように駆動源７０への駆動パルス信号を調整する。
【００１２】
ここで説明したプレス機によってスライド板を下部支持台に対して好ましい位置関係を保ちながら下降させることができるので、成形部から反力が掛かる位置が成形途中で変化するような場合であっても均等な成形が可能となる。
【００１３】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、図５に一点破線で示すように、スライド板の変形は場所によって違っている。駆動源の駆動軸がスライド板と係合している部分から変位測定手段の取り付けられている位置が離れていると、本来は駆動軸の場所で測定すべきスライド板の変位が、駆動軸の場所から離れた変位測定手段が取り付けられた位置で測定されることになる。そのために変位測定手段で測定したスライド板の変位が、駆動軸の係合しているスライド板部分の変位を正しく表していないことがあった。
【００１４】
そこで、本発明の目的とするところは、駆動源の駆動軸が係合しているスライド板部分の変位を正しく測定することのできる変位測定手段を備えたプレス機を提供するものである。
【００１５】
【課題を解決するための手段】
本発明のプレス機は、
下部支持台と、
下部支持台で支持された複数の支柱で保持されている上部支持板と、
下部支持台と上部支持板との間で往復動をすることができ、下部支持台との間に成形空間を持つスライド板と、
前記スライド板の中央部を含むスライド板上でスライド板と係合してスライド板を変位させる駆動軸をそれぞれ持つとともに、上部支持板に保持されている複数の駆動源と、
スライド板の変位を測定するための変位測定手段とを、
有するものにおいて、
前記スライド板上でそれぞれの駆動軸が係合しているスライド板部分にとって共通な変位基準となる基準プレートが下部支持台に支えられて上部支持板の上部に設けられていて、
前記駆動軸はその軸芯に通孔を持っており、
前記変位測定手段は、スライド板の、駆動軸に開けられた通孔に対応する部分の前記基準プレートに対する変位を測定するものである
ことを特徴とする。
【００１６】
本発明の前記プレス機では、
前記変位測定手段は、駆動軸に開けられた通孔内に駆動軸とは独立して動くことができるように通されている変位検出用軸と、前記基準プレートに取り付けられたリニアスケールとからなり、
その変位検出用軸の一方の端が、スライド板の、駆動軸に開けられた前記通孔に対応する部分に固定されているとともに、変位検出用軸の他方の端が基準プレート上まで延びてリニアスケールと対向していることが好ましい。
【００１７】
本発明の前記プレス機では、
前記変位測定手段は光学的変位測定手段であり、
基準プレートの、前記駆動軸に開けられた通孔に向いた部分にその光学的変位測定手段が設けられていて、スライド板の、駆動軸に開けられた通孔に向いた部分の変位を測定するものとすることができる。
【００１８】
【発明の実施の形態】
以下図面を参照しながら本発明のプレス機の実施例を説明する。図１はプレス機の正面図で、図２はその平面図、図３は図１の一部を拡大するとともに、変位測定手段を断面にて示すものであり、図４は他の実施例による変位測定手段を断面にて示す。これらの図面において、図５，図６と同様な部分は同じ参照符号を用いて示した。
【００１９】
プレス機は下部支持台１０が床面上に固定されていて、下部支持台に立てられた支柱２０によって上部支持板３０が保持されている。下部支持台１０と上部支持板３０の間に支柱２０に沿って往復動することができるスライド板４０が設けられており、スライド板と下部支持台との間に成形空間がある。この成形空間では、下部支持台上にプレス用の固定金型（下型）、スライド板の下面に固定金型に対応する可動金型（上型）が取り付けられており、これら両金型の間に例えば被成形板を入れて成形する
上部支持板３０には駆動源５０としてサーボモータと減速機構を組み合わせたものが５個取り付けられている。各駆動源から減速機構を内部に有しているギアボックス５１を介して駆動軸５２は上部支持板３０に開けられた通孔を通ってスライド板４０の上面で各係合部５３と係合している。各係合部内面と駆動軸とは例えばボールねじによって、駆動軸の回転を上下動に変換するようになっており、サーボモータの回転によってスライド板を上下動する。サーボモータの回転軸と駆動軸とは減速ギアのような減速機構で係合されているので、これらの軸芯がずれた位置にあって、サーボモータが駆動軸の軸芯からはずれて位置している。
【００２０】
このように複数の駆動源が用いられている場合は、それら複数の駆動源によるスライド板への押し圧力が、スライド板上に均等に分布するように駆動源が配置されていることが好ましい。また、これらの駆動源は互いに同じ大きさの押し圧力を生じる、すなわち出力が同じであることが好ましい。
【００２１】
基準プレート９０は例えばＨ字形のチタン製枠体で構成されており、下部支持台１０に固定された支柱１００とその支柱で支えられている接続バー１０２によって支持されている。基準プレート９０は下部支持台１０に保持されている以外、プレス機のどの部分にも接触したりプレス機から干渉されることがないので、プレス機の成形時におけるプレス機各部の変形から独立している。図２（Ｂ）に基準プレート９０を図２（Ａ）の矢視２Ｂ−２Ｂで示しているが、この図にあるように支柱１００で支えられた接続バー１０２の上に防振プレート１０１を介して基準プレート９０が取り付けられているのがよい。また支柱１００と接続バー１０２には熱影響の少ないアンバーなどの材質を用いるのがよい。
【００２２】
各駆動軸５２の軸芯に通孔５４が開けられていて、通孔に対応するスライド板部分に変位測定手段６０の変位検出用軸６１が固定されている。変位検出用軸６１は駆動軸５２に対して自由に通孔内を動くことができる。スライド板４０が上下するとそれに取り付けられている変位検出用軸６１もスライド板４０とともに上下する。変位検出用軸６１の他端が駆動軸５２に開けられた通孔５４から駆動軸５２の上部に突出していて、基準プレート９０に設けられた通孔を有するブッシュ９１から基準プレート上に出ていて、ブッシュ９１によって摺動自在に保持されている。変位検出用軸６１は変位測定手段の上部においてもブッシュで摺動自在に保持されていることが好ましい。変位検出用軸６１の上部が基準プレート９０に固定したリニアスケール６２と対向している。リニアスケール６２として例えば磁気スケールを用い、変位検出用軸の上部に例えば磁気センサー６３を取り付けていると、スライド板の、駆動軸に開けた通孔に対応する部分の変位に応じて、磁気センサーがリニアスケールに対して動くので、スライド板の変位を測定できることになる。変位検出用軸は駆動軸の軸芯で、スライド板の変位を測定するので、駆動軸によるスライド板の変位を検出したことになる。
【００２３】
図４は変位測定手段の他の実施例を断面図で示すものである。ここでも駆動軸５２の軸芯に通孔５４が開けられているが、基準プレート９０の駆動軸に開けられた通孔に向いた部分に光学的変位測定手段６５が設けられている。光学的変位測定手段６５から出た光線６６を、スライド板４０の、駆動軸に開けられた通孔を向いた部分に反射させてそこまでの距離を測定する。
【００２４】
図１から図４に示す本発明の実施例においては、駆動源５０と駆動軸５２との軸芯をずらしてその間に変速機構を設けているが、駆動源５０のサーボモータの回転子軸と駆動軸とを一体にして、その軸芯にサーボモータ上部まで通った通孔を設けることができる。この通孔内にサーボモータ上部まで延びた変位検出用軸を設け、サーボモータ上部に基準プレートを設け、そこに変位測定手段を設けることができる。
【００２５】
【発明の効果】
以上詳しく説明したように、本発明のプレス機においては、プレス機のスライド板を駆動する駆動軸の中央でスライド板の変位を測定することができる。そのためにスライド板の変位に従って駆動源を制御した場合、加圧点におけるスライド板の変位を測定しているので、その制御を正確なものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明によるプレス機の一部断面で示す、正面図である。
【図２】（Ａ）は本発明によるプレス機の平面図であり、（Ｂ）は（Ａ）の矢視２Ｂ−２Ｂである。
【図３】図１に示した変位測定手段の断面を拡大した図である。
【図４】本発明に用いている変位測定手段の他の実施例の断面拡大図である。
【図５】本発明者等が前に提案しているプレス機の正面図である。
【図６】図５のプレス機の平面図である。
【図７】プレス進行に伴う荷重の変動を説明するための図である。
【符号の説明】
１０ 下部支持台
２０ 支柱
３０ 上部支持板
４０ スライド板
５０，７０ 駆動源
５１ ギアボックス
５２，７１ 駆動軸
５３，７２ 係合部
５４ 通孔
６０，８０ 変位測定手段
６１ 変位検出用軸
６２ リニアスケール
６３，８２ 磁気センサー
６５ 光学的変位測定手段
６６ 光線
８１ 磁気スケール
９０，９０′ 基準プレート
９１ ブッシュ
９２′ 通孔
１００ 支柱
１０１ 防振プレート
１０２ 接続バー
Claims (3)
- 下部支持台と、
下部支持台で支持された複数の支柱で保持されている上部支持板と、
下部支持台と上部支持板との間で往復動をすることができ、下部支持台との間に成形空間を持つスライド板と、
前記スライド板の中央部を含むスライド板上でスライド板と係合してスライド板を変位させる駆動軸をそれぞれ持つとともに、上部支持板に保持されている複数の駆動源と、
スライド板の変位を測定するための変位測定手段とを、
有するプレス機において、
前記スライド板上でそれぞれの駆動軸が係合しているスライド板部分にとって共通な変位基準となる基準プレートが下部支持台に支えられて上部支持板の上部に設けられていて、
前記駆動軸はその軸芯に通孔を持っており、
前記変位測定手段は、スライド板の、駆動軸に開けられた通孔に対応する部分の前記基準プレートに対する変位を測定するものである
ことを特徴とするプレス機。 - 前記変位測定手段は、駆動軸に開けられた通孔内に駆動軸とは独立して動くことができるように通されている変位検出用軸と、前記基準プレートに取り付けられたリニアスケールとからなり、
その変位検出用軸の一方の端が、スライド板の、駆動軸に開けられた前記通孔に対応する部分に固定されているとともに、変位検出用軸の他方の端が基準プレート上まで延びてリニアスケールと対向していることを特徴とする請求項１記載のプレス機。 - 前記変位測定手段は光学的変位測定手段であり、
基準プレートの、前記駆動軸に開けられた通孔に向いた部分にその光学的変位測定手段が設けられていて、スライド板の、駆動軸に開けられた通孔に向いた部分の変位を測定するものであることを特徴とする請求項１記載のプレス機。
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