JP4479089B2

JP4479089B2 - 圧電磁器組成物およびそれを用いた圧電セラミック素子

Info

Publication number: JP4479089B2
Application number: JP2000326638A
Authority: JP
Inventors: 拓也澤田; 雅彦木村; 陽安藤; 宏一林
Original assignee: Murata Manufacturing Co Ltd
Current assignee: Murata Manufacturing Co Ltd
Priority date: 2000-10-26
Filing date: 2000-10-26
Publication date: 2010-06-09
Anticipated expiration: 2019-10-29
Also published as: JP2001172078A

Description

【０００１】
【発明の属する技術分野】
この発明は圧電磁器組成物およびそれを用いた圧電セラミック素子に関し、特にたとえば、圧電セラミックフィルタ、圧電セラミック発振子および圧電セラミック振動子などの圧電セラミック素子などの材料として有用な圧電磁器組成物およびそれを用いた圧電セラミック素子に関する。
【０００２】
【従来の技術】
圧電セラミックフィルタ、圧電セラミック発振子および圧電セラミック振動子などの圧電セラミック素子に用いられる圧電磁器組成物として、従来、チタン酸ジルコン酸鉛（Ｐｂ（Ｔｉ_xＺｒ_1-x）Ｏ₃）またはチタン酸鉛（ＰｂＴｉＯ₃）を主成分とする圧電磁器組成物が広く用いられている。しかしながら、チタン酸ジルコン酸鉛またはチタン酸鉛を主成分とする圧電磁器組成物では、その組成中に鉛を多量に含有するため、製造過程において鉛酸化物の蒸発のため製品の均一性が低下するという問題があった。製造過程における鉛酸化物の蒸発による製品の均一性の低下を防止するためには、組成中に鉛をまったく含まないまたは少量のみ含む圧電磁器組成物が好ましい。
これ対して、ＳｒＢｉ₄Ｔｉ₄Ｏ₁₅などのビスマス層状化合物を主成分とする圧電磁器組成物では、その組成中に鉛酸化物を含有しないため、上記のような問題は生じない。
【０００３】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、ＳｒＢｉ₄Ｔｉ₄Ｏ₁₅などを主成分とする圧電磁器組成物では、従来から圧電セラミックフィルタ、圧電セラミック発振子および圧電セラミック振動子などの圧電セラミック素子に用いられているチタン酸ジルコン酸鉛またはチタン酸鉛を主成分とする圧電磁器組成物に比べて、電気機械結合係数ｋｔが小さくかつ以下に示す−２０℃から８０℃の共振周波数の温度変化率ｆｒＴＣが大きいため、広く実用に供されるに至っていない。
ｆｒＴＣ＝（ｆｒ（max ）−ｆｒ（min ））／（ｆｒ（20℃）・１００）
ｆｒ（max ）：−２０℃から８０℃の温度範囲において最高の共振周波数
ｆｒ（min ）：−２０℃から８０℃の温度範囲において最低の共振周波数
ｆｒ（20℃）：２０℃での共振周波数
【０００４】
それゆえに、この発明の主たる目的は、ＳｒＢｉ₄Ｔｉ₄Ｏ₁₅を主成分とする圧電磁器組成物の電気機械結合係数ｋｔおよび−２０℃から８０℃の共振周波数の温度変化率ｆｒＴＣを改善し、実用に供しうる程度の電気機械結合係数ｋｔ（２０％以上）および共振周波数の温度変化率ｆｒＴＣ（４５以下）を示す圧電セラミックフィルタ、圧電セラミック発振子および圧電セラミック振動子などの圧電セラミック素子などの材料として有用な圧電磁器組成物およびそれを用いた圧電セラミック素子を提供することである。
【０００５】
【課題を解決するための手段】
この発明にかかる圧電磁器組成物は、一般式ＳｒＢｉ₄Ｔｉ₄Ｏ₁₅で表される主成分からなる圧電磁器組成物において、ＳｃおよびＹのうちの少なくとも１種をその一般式で表される主成分中のＢｉ、１ｍｏｌに対して０．１ｍｏｌ以下（０を含まない）含有することを特徴とする、圧電磁器組成物である。
この発明にかかる圧電磁器組成物では、ＭｎがＭｎＣＯ₃に換算して１．５重量％以下（０を含まない）含有されてもよい。
この発明にかかる圧電セラミック素子は、この発明にかかる圧電磁器組成物からなる圧電磁器と、圧電磁器に形成される電極とを含む、圧電セラミック素子である。
なお、この発明にかかる圧電磁器組成物における主成分は一般式ＳｒＢｉ₄Ｔｉ₄Ｏ₁₅で表されるが、それぞれの元素のモル比は多少のずれがあってもかまわない。
【０００６】
この発明にかかる圧電磁器組成物において、ＳｃおよびＹの含有量をＢｉ、１ｍｏｌに対して０．１ｍｏｌ以下（０を含まない）としたのは、これより多い場合には、電気機械結合係数ｋｔの低下がみられ、実用的な電気機械結合係数ｋｔが得られない、または、分極可能な磁器が得られないためである。
また、高橋らは、特願昭４８−８５２９２号において、ＳｒＢｉ₄Ｔｉ₄Ｏ₁₅を主成分とする圧電磁器組成物にＭｎをＭｎＯに換算して０．００５〜０．７重量％含有することにより、電気機械結合係数ｋｔが向上することを明らかにしているが、このような圧電磁器組成物すなわち主成分となる圧電磁器組成物にＭｎを適量含有した圧電磁器組成物においても、本願発明の効果は有効であり、電気機械結合係数ｋｔがさらに大きくかつ共振周波数の温度変化率ｆｒＴＣが小さい有用な圧電磁器組成物が得られる。
請求項２にかかる発明において、Ｍｎの含有量をＭｎＣＯ₃に換算して１．５重量％以下（０を含まない）としたのは、これより多い場合には分極可能な磁器が得られないためである。
また、ＳｃおよびＹの含有元素のうちＹを選択した場合には、電気機械結合係数ｋｔの向上に加え、共振周波数の温度変化率ｆｒＴＣが特に小さくなるため、特にたとえば、圧電セラミックフィルタ、圧電セラミック発振子および圧電セラミック振動子などの圧電セラミック素子などの材料としてさらに有用な圧電磁器組成物が得られる。
【０００７】
この発明の上述の目的、その他の目的、特徴および利点は、図面を参照して行う以下の発明の実施の形態の詳細な説明から一層明らかとなろう。
【０００８】
【発明の実施の形態】
（実施例）
まず、出発原料として、ＳｒＣＯ₃、Ｂｉ₂Ｏ₃、ＴｉＯ₂、Ｓｃ₂Ｏ₃、Ｙ₂Ｏ₃およびＭｎＣＯ₃を用意し、これらを組成（Ｓｒ_1-xＭ_x）Ｂｉ₄Ｔｉ₄Ｏ₁₅＋ｙ重量％ＭｎＣＯ₃（Ｍは、ＳｃおよびＹのいずれか。０≦ｘ≦０．４５、０≦ｙ≦１．６。）となるように秤取して、ボールミルを用いて約４時間湿式混合して、混合物を得た。得られた混合物を乾燥した後、７００〜９００℃で仮焼して、仮焼物を得た。それから、この仮焼物を粗粉砕した後、有機バインダを適量加えてボールミルを用いて４時間湿式粉砕し、４０メッシュのふるいを通して粒度調整を行った。次に、これを１０００ｋｇ／ｃｍ²の圧力で直径１２．５ｍｍ、厚さ２ｍｍの円板に成型し、これを大気中で１１５０〜１２５０℃で焼成することによって、円板状の磁器を得た。この磁器の表面（両主面）に、通常の方法により銀ペーストを塗布し焼付けて銀電極を形成した後、１５０〜２００℃の絶縁オイル中で５〜１０ｋＶ／ｍｍの直流電圧を１０〜３０分間印加して分極処理を施し、圧電磁器（試料）を得た。
そして、得られた試料について、電気機械結合係数ｋｔおよび共振周波数の温度変化率ｆｒＴＣを測定した。その結果を表１に示す。なお、表１には、各試料の組成におけるＭの元素記号と、ｘおよびｙの数値とも示す。表１において、上記の組成式中のｘの１／４すなわちｘ／４がＢｉ、１ｍｏｌに対してのＭの含有量（ｍｏｌ）に相当することに注意されたい。
【０００９】
【表１】

試料 No.欄の＊印はその試料がこの発明の範囲外であることを示す。
【００１０】
表１に示すように、この発明の実施例にかかる各試料については、いずれも、電気機械結合係数ｋｔが２０％以上と実用レベルにありかつ共振周波数の温度変化率ｆｒＴＣが４５以下と実用レベルにあることから、特にたとえば、圧電セラミックフィルタ、圧電セラミック発振子および圧電セラミック振動子などの圧電セラミック素子などの材料として有用な圧電磁器組成物であることが明らかである。
また、表１に示すように、Ｙを含む場合、すなわち、この発明の実施例の試料 No.２、３および５においては、共振周波数の温度変化率ｆｒＴＣが特に小さい有用な圧電磁器が得られることが明らかである。
【００１１】
なお、この発明にかかる圧電磁器組成物は上記の実施例の組成に限定されるものではなく、発明の要旨の範囲内であれば有効である。
【００１２】
また、上述の実施例では電気機械結合係数ｋｔおよび共振周波数の温度変化率ｆｒＴＣは円板状の圧電セラミック振動子の厚み縦振動についての例を示したが、本願発明の効果は、円板状の圧電セラミック振動子の厚み縦振動に限定されず、厚みすべり振動や厚み縦振動の高調波など、他の圧電セラミック素子として特にたとえば圧電セラミックフィルタや圧電セラミック発振子などに利用される他の振動モードにおいても、厚み縦振動の場合と同様に有効である。
【００１３】
図１はこの発明にかかる圧電セラミック振動子の一例を示す斜視図であり、図２はその断面図解図である。図１および図２に示す圧電セラミック振動子１０は、たとえば直方体状の圧電磁器１２を含む。圧電磁器１２は、２枚の圧電磁器層１２ａおよび１２ｂを含む。これらの圧電磁器層１２ａおよび１２ｂは、上述のこの発明にかかる圧電磁器組成物からなり、積層されかつ一体的に形成される。また、これらの圧電磁器層１２ａおよび１２ｂは、図２の矢印で示すように、同じ厚み方向に分極されている。
【００１４】
圧電磁器層１２ａおよび１２ｂの間には、その中央にたとえば円形の振動電極１４ａが形成され、その振動電極１４ａから圧電磁器１２の一端面にわたってたとえばＴ字形の引出電極１６ａが形成される。また、圧電磁器層１２ａの表面には、その中央にたとえば円形の振動電極１４ｂが形成され、その振動電極１４ｂから圧電磁器１２の他端面にわたってたとえばＴ字形の引出電極１６ｂが形成される。さらに、圧電磁器層１２ｂの表面には、その中央にたとえば円形の振動電極１４ｃが形成され、その振動電極１４ｃから圧電磁器１２の他端面にわたってたとえばＴ字形の引出電極１６ｃが形成される。
【００１５】
そして、引出電極１６ａにはリード線１８ａを介して一方の外部端子２０ａが接続され、引出電極１６ｂおよび１６ｃには別のリード線１８ｂを介して他方の外部端子２０ｂが接続される。
【００１６】
なお、この発明は、上述の圧電セラミック振動子１０以外の圧電セラミック振動子、圧電セラミックフィルタおよび圧電セラミック発振子などの他の圧電セラミック素子にも適用される。
【００１７】
【発明の効果】
この発明によれば、ＳｒＢｉ₄Ｔｉ₄Ｏ₁₅を主成分とする圧電磁器組成物であって、電気機械結合係数ｋｔが２０％以上に改善されかつ共振周波数の温度変化率が４５以下に改善され、特にたとえば圧電セラミックフィルタ、圧電セラミック発振子および圧電セラミック振動子などの圧電セラミック素子などの材料として有用な圧電磁器組成物およびそれを用いた圧電セラミック素子が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図１】この発明にかかる圧電セラミック振動子の一例を示す斜視図である。
【図２】図１に示す圧電セラミック振動子の断面図解図である。
【符号の説明】
１０圧電セラミック振動子
１２圧電磁器
１２ａ、１２ｂ圧電磁器層
１４ａ、１４ｂ、１４ｃ振動電極
１６ａ、１６ｂ、１６ｃ引出電極
１８ａ、１８ｂリード線
２０ａ、２０ｂ外部端子

Claims

一般式ＳｒＢｉ ₄ Ｔｉ ₄ Ｏ ₁₅ で表される主成分からなる圧電磁器組成物において、ＳｃおよびＹのうちの少なくとも１種を前記一般式で表される主成分中のＢｉ、１ｍｏｌに対して０．１ｍｏｌ以下（０を含まない）含有することを特徴とする、圧電磁器組成物。
ＭｎをＭｎＣＯ ₃ に換算して１．５重量％以下（０を含まない）含有することを特徴とする、請求項１に記載の圧電磁器組成物。
請求項１または請求項２に記載の圧電磁器組成物からなる圧電磁器、および
前記圧電磁器に形成される電極を含む、圧電セラミック素子。