JP4476423B2 - 離型フィルム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は離型フィルムに関するものであり、詳しくは液晶ディスプレイ(以下、LCDと略記する場合がある)に用いられる偏光板の粘着剤層保護用離型フィルムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、ポリエステルフィルムを基材とする離型フィルムが液晶偏光板の粘着剤層保護用に使用されているが、使用上の問題点として、高温下、離型層表面に析出するオリゴマーが製造工程内において各種不具合を生じることがある。
【0003】
液晶偏光板の製造工程には、粘着剤層を介して離型フィルムと偏光板が貼り合わされてロール状に巻き取られる工程等があり、オリゴマーは粘着剤塗布後の乾燥工程を経て析出するものと考えられる。
【0004】
離型層表面に析出するオリゴマーは、貼り合わせている相手方粘着剤層表面へ転着し、オリゴマーの付着した粘着剤層付きの偏光板をガラス基板と貼り合わせてLCDを製造した場合、得られるLCDの輝度が低下する等の不具合を生じる場合がある。
【0005】
近年、LCDの視認性向上を目的として表示画面の輝度をより高くする傾向にあり、上記不具合が深刻な問題となってきている。
【0006】
さらに、生産性向上に伴う製造コストの低減を図ることを目的として、製造工程において高速化が図られており、特に乾燥工程における乾燥温度をより高く設定する傾向にあり、上述のオリゴマーがより析出しやすい状況になっている。
【0007】
一方、液晶偏光板の表示能力、色相、コントラスト、異物混入などの光学的評価を伴う検査工程においては、目視あるいは拡大鏡使用による欠陥品の流出防止対策が講じられているが、離型フィルムを構成するポリエステルフィルムの光学的異方性起因により、異物混入を見落としやすくなる等の不具合を生じる場合があるため、検査時に離型フィルムを一旦剥離し、検査終了後に再度貼付しなければならないという問題を抱えている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記実情に鑑みなされたものであって、その解決課題は、液晶偏光板粘着剤層保護用として用いた際にオリゴマー析出量が極力少なく、透明性良好であり、光学的評価を伴う検査が容易な離型フィルムを提供することにある。
【0009】
【発明を解決するための手段】
本発明者は、上記実状に鑑み、鋭意検討した結果、特定の構成からなる離型フィルムを用いれば、上記課題を容易に解決できることを知見し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明の要旨は、フィルム面内の主配向軸のMD方向に対する角度(θ 3 )が70度以上であるポリエチレンテレフタレートフィルムの片面に、ポリビニルアルコールを含有する塗布層と、四官能性のシロキサン構造単位(SiO 4/2 )を有するシリコーン系化合物および硬化型シリコーン樹脂を含む、残留接着率が80%以上の離型層とが順次設けられた離型フィルムであり、下記式(1)〜(3)を同時に満足することを特徴とする液晶偏光板粘着剤層保護用離型フィルムに存する。
【0011】
OL≦0.6 …(1)
TL≧80 …(2)
TL(H)≦8 …(3)
(上記式中、OLは180℃、10分間熱処理後の離型フィルムの離型層表面からジメチルホルムアミドにより抽出されるオリゴマー量(mg/m2)、TLは離型フィルムの全光線透過率(%)、TL(H)は直交させた偏光板の間に離型フィルムを挟んだときの全光線透過率(%)を表す)
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
【0013】
本発明においてポリエステルフィルムに使用するポリエステルは、ホモポリエステルであっても共重合ポリエステルであってもよい。
【0014】
ホモポリエステルを用いる場合、芳香族ジカルボン酸と脂肪族グリコールとを重縮合させて得られるものが好ましい。芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などが挙げられ、脂肪族グリコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。代表的なポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート(PEN)等が例示される。
【0015】
一方、共重合ポリエステルを用いる場合は、30モル%以下の第三成分を含有した共重合体であることが好ましい。共重合ポリエステルのジカルボン酸成分としては、イソフタル酸、フタル酸テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸セバシン酸、オキシカルボン酸(例えば、P−オキシ安息香酸など)等の一種または二種以上が挙げられ、グリコール成分として、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール等の一種または二種以上が挙げられる。
【0016】
いずれにしても本発明でいうポリエステルとは、通常80モル%以上、好ましくは90モル%以上がエチレンテレフタレート単位であるポリエチレンテレフタレート、エチレン−2,6−ナフタレート単位であるポリエチレン−2,6−ナフタレート等であるポリエステルを指す。
【0017】
本発明におけるポリエステル層中には、易滑性付与を主たる目的として粒子を配合することが好ましい。配合する粒子の種類は、易滑性付与可能な粒子であれば特に限定されるものではなく、具体例としては、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム酸化珪素、カオリン、酸化アルミニウム、酸化チタン等の粒子が挙げられる。また、特公昭59−5216号公報、特開昭59−217755号公報等に記載されている耐熱性有機粒子を用いてもよい。この他の耐熱性有機粒子の例として、熱硬化性尿素樹脂、熱硬化性フェノール樹脂、熱硬化性エポキシ樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等が挙げられる。さらに、ポリエステル製造工程中、触媒等の金属化合物の一部を沈殿、微分散させた析出粒子を用いることもできる。
【0018】
一方、使用する粒子の形状に関しても特に限定されるものではなく、球状、塊状、棒状、扁平状等のいずれを用いてもよい。また、その硬度、比重、色等についても特に制限はない。これら一連の粒子は、必要に応じて2種類以上を併用してもよい。
【0019】
また、用いる粒子の平均粒径は、通常0.01〜3μm、好ましくは0.01〜1μmの範囲である。平均粒径が0.01μm未満の場合には、粒子が凝集しやすく、分散性が不十分な場合があり、一方、3μmを超える場合には、フィルムの表面粗度が粗くなりすぎて、後工程において離型層を塗設させる場合等に不具合が生じる場合がある。
【0020】
さらに、ポリエステル中の粒子含有量は、通常0.1〜5重量%、好ましくは0.1〜3重量%の範囲である。粒子含有量が0.1重量%未満の場合には、フィルムの易滑性が不十分な場合があり、一方、5重量%を超えて添加する場合には、フィルムの透明性が不十分な場合がある。
【0021】
ポリエステル中に粒子を添加する方法としては、特に限定されるものではなく、従来公知の方法を採用しうる。例えば、ポリエステルを製造する任意の段階において添加することができるが、好ましくはエステル化の段階、もしくはエステル交換反応終了後、重縮合反応を進めてもよい。
【0022】
また、ベント付き混練押出機を用い、エチレングリコールまたは水などに分散させた粒子のスラリーとポリエステル原料とをブレンドする方法、または、混練押出機を用い、乾燥させた粒子とポリエステル原料とをブレンドする方法などによって行われる。
【0023】
なお、本発明におけるポリエステルフィルム中には、上述の粒子以外に従来公知の酸化防止剤、熱安定剤、潤滑剤、染料、顔料等を必要に応じて添加することができる。
【0024】
本発明の離型フィルムを構成するポリエステルフィルムの厚みは、フィルムとして製膜可能な範囲であれば特に限定されるものではないが、通常9〜150μm、好ましくは12〜100μm、さらに好ましくは18〜75μmの範囲である。
【0025】
次に、本発明におけるポリエステルフィルムの製造例について具体的に説明するが、以下の製造例に何ら限定されるものではない。
【0026】
すなわち、先に述べたポリエステル原料を使用し、ダイから押し出された溶融シートを冷却ロールで冷却固化して未延伸シートを得る方法が好ましい。
【0027】
この場合、シートの平面性を向上させるためシートと回転冷却ドラムとの密着性を高める必要があり、静電印加密着法及び/または液体塗布密着法が好ましく採用される。
【0028】
本発明の離型フィルムを構成するポリエステルフィルム面内の主配向軸のMD方向に対する角度(θ3)は70度以上であることが好ましく、ポリエステルフィルムの延伸配向方法については特に限定されるものではないが、逐次二軸延伸法、同時二軸延伸法等が例示される。
【0029】
逐次二軸延伸法としては、前記の未延伸シートを一方向にロールまたはテンター方式の延伸機により延伸する。延伸温度は、通常70〜120℃、好ましくは80〜110℃であり、延伸倍率は、通常2.5〜7倍、好ましくは3.0〜6倍である。次いで、一段目の延伸方向と直交する方向に延伸を行う。延伸温度は、通常70〜120℃、好ましくは80〜115℃であり、延伸倍率は、通常3.0〜7倍、好ましくは3.5〜6倍である。そして、引き続き、170〜250℃の温度で緊張下または30%以内の弛緩下で熱処理を行い、延伸配向フィルムを得る。
【0030】
上記の延伸においては、一方向の延伸を2段階以上で行う方法を採用することもできる。その場合、最終的に二方向の延伸倍率がそれぞれ上記範囲となるように行うのが好ましい。また、必要に応じて熱処理を行う前または後に再度縦および/または横方向に延伸してもよい。
【0031】
同時二軸延伸法としては、前記の未延伸シートを通常70〜120℃、好ましくは80〜110℃で温度コントロールされた状態で機械方向および幅方向に同時に延伸し配向させる方法で、延伸倍率としては、面積倍率で4〜50倍、好ましくは7〜35倍、さらに好ましくは10〜20倍である。そして、引き続き、170〜250℃の温度で緊張下または30%以内の弛緩下で熱処理を行い、延伸配向フィルムを得る。
【0032】
上述のポリエステルフィルムの延伸工程中にフィルム表面を処理する、いわゆる塗布延伸法(インラインコーティング)を施すことができる。それは以下に限定するものではないが、例えば、逐次二軸延伸においては特に1段目の延伸が終了して、2段目の延伸前にコーティング処理を施すことができる。
【0033】
上述の塗布延伸法にてポリエステルフィルム上に塗布層が設けられる場合には、延伸と同時に塗布が可能になると共に塗布層の厚みを延伸倍率に応じて薄くすることができ、ポリエステルフィルムとして好適なフィルムを製造できる。
【0034】
本発明における離型フィルムを構成するポリエステルフィルム上に設けられる塗布層に関して、塗布層を構成するバインダーポリマ−は特に限定されるものではなく、具体例としては、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレンイミン、メチルセルロース、ヒドロキシセルロース、でんぷん類、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアクリレート、塩素系ポリマー(ポリ塩化ビニル、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体等)、ポリオレフィン等が挙げられる。
【0035】
それらの中でも、塗布層を塗布延伸法により塗設する場合には、ノニオン系、カチオン系、両性系の水溶液または水分散体として使用可能な有機ポリマーが挙げられ、また、その中でもポリウレタン、ポリエステル、ポリアクリレートを使用した場合に、上塗り剤層に対する接着性が特に良好となるので好ましい。これらのポリマーはそのモノマーの一成分としてノニオン、カチオン、または両性系の親水性成分を共重合することにより、親水性を付与し、水に分散させることが可能となる。
【0036】
本発明の離型フィルムは、熱処理(180℃、10分間)後の離型フィルムの離型層表面からジメチルホルムアミドにより抽出されるオリゴマー量を0.6mg/m2以下に抑える必要があり、離型フィルムを構成する塗布層中にポリビニルアルコールを配合することが好ましい。
【0037】
塗布層中に含有されるポリビニルアルコール(以下、PVAと略記する場合がある)の含有量は特に限定される訳ではないが、好ましくは10〜100重量%、さらに好ましくは20〜90重量%、最も好ましくは30〜80重量%の範囲がよい。PVAの含有量が10重量%未満では、オリゴマー析出防止効果が不十分となる場合がある。
【0038】
また、PVAの重合度は特に限定されるわけではないが、通常100以上、好ましくは300〜40000のものが用途上好適に用いられる。
【0039】
一方、PVAのけん化度は特に限定されるわけではないが、70モル%以上、好ましくは80モル%以上、99.9モル%以下のものが好適に用いられ、具体例としては酢酸ビニルけん化物等が挙げられる。
【0040】
さらに、塗布層には架橋剤を併用してもよく、具体例としてはメチロール化またはアルキロール化した尿素系、メラミン系、グアナミン系、アクリルアミド系、ポリアミド系化合物、エポキシ化合物、アジリジン化合物、ブロックポリイソシアネート、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、ジルコ−アルミネートカップリング剤等が挙げられる。これらの架橋成分は、バインダーポリマーと予め結合していてもよい。
【0041】
また、塗布層の固着性、滑り性改良を目的として、無機系粒子を含有してもよく、具体例としてはシリカ、アルミナ、カオリン、炭酸カルシウム、酸化チタン、バリウム塩等が挙げられる。さらに、必要に応じて消泡剤、塗布性改良剤、増粘剤、有機系潤滑剤、有機系高分子粒子、酸化防止剤、紫外線吸収剤発泡剤、染料等が含有されてもよい。
【0042】
本発明のフィルムにおいて、塗布層の塗布量(乾燥後)は、通常0.01〜1g/m2 、好ましくは0.03〜0.5g/m2 の範囲である。塗布量が0.01g/m2未満の場合には、塗布厚みの均一性が不十分な場合があり、一方、1g/m2を超えて塗布する場合には、滑り性低下等の不具合を生じる場合がある。
【0043】
本発明において、塗布層を設ける方法は、後述する離型層を塗設させる場合と同様にバーコート方式、グラビアコート方式等、従来公知の塗工方式を用いることができる。
【0044】
本発明の離型フィルムを構成する離型層中に、硬化型シリコーン樹脂を含有させると離型性が良好となるので好ましい。硬化型シリコーン樹脂を主成分とするタイプでもよいし、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂等の有機樹脂とのグラフト重合等による変性シリコーンタイプ等を使用してもよい。
【0045】
硬化型シリコーン樹脂の種類としては付加型・縮合型・紫外線硬化型・電子線硬化型・無溶剤型等、いずれの硬化反応タイプでも用いることができる。
【0046】
具体例としては、信越化学工業(株)製KS−774、KS−775、KS−778、KS−779H、KS−856、X−62−2422、X−62−2461、ダウ・コーニング・アジア(株)製DKQ3−202、DKQ3−203、DKQ3−204、DKQ3−205、DKQ3−210、東芝シリコーン(株)製YSR−3022、TPR−6700、TPR−6720、TPR−6721、東レ・ダウ・コーニング(株)製SD7220、SD7226、SD7229等が挙げられる。さらに離型層の剥離性等を調整するために、剥離コントロール剤を併用してもよい。
【0047】
また、本発明の離型フィルムを構成する離型層に、硬化型シリコーン樹脂を含有した上で、さらに四官能性のシロキサン構造単位を有することにより、オリゴマー析出防止効果が一層向上するので好ましい。
【0048】
通常、シロキサン構造は、下記一般式(A)に示すように四通りのシロキサン構造単位に分類される。
【0049】
[Rm SiO(4-m)/2 ] ・・・(A)
(上記式中、Rは珪素原子に直接結合した、炭素原子を有する非置換または置換炭化水素基であり、かつラジカル重合性のない炭化水素基、mは0〜3の整数を表す)
上記(A)式において、mが1以上の場合(一官能性:M単位;二官能性:D単位;三官能性:T単位)、得られる離型フィルムの離型層自体がオリゴマー析出防止効果に乏しく、例えば、粘着剤塗布後の乾燥工程において、より高温で離型フィルムを熱処理した場合には離型層表面からのオリゴマー析出量がさらに増加する場合がある。
【0050】
m=0であるシロキサン構造単位、すなわち、四官能性のシロキサン構造単位(以下、Q単位と略記する場合がある)を有する離型層を設けた離型フィルムを用いれば、離型層がより緻密な塗膜を形成するため、オリゴマー析出防止効果が一層向上するようになるので好ましい。
【0051】
離型層がQ単位のシロキサン構造単位を有する具体例として、例えば、硬化型シリコーン樹脂にQ単位のシロキサン構造を有するシリコーン系化合物を添加する方法等が挙げられ、かかるシリコーン系化合物としては、反応性を有するレジンタイプのものが例示される。
【0052】
本発明における離型フィルムを構成する離型層に関して、離型層中のQ単位を有するシリコーン系化合物の含有量が10重量%以上、さらには20重量%以上であるとき、オリゴマー析出防止効果がさらに良好となるので好ましい。Q単位を有する化合物の含有量が10重量%未満の場合、得られる離型層のオリゴマー析出防止効果が不十分となる場合がある。
【0053】
本発明において、ポリエステルフィルムに離型層を設ける方法として、リバースロールコート、グラビアコート、バーコート、ドクターブレードコート等、従来公知の塗工方式を用いることができる。
【0054】
離型層の塗工量は塗工性の面から、通常0.01〜1g/m2、好ましくは0.03〜0.5g/m2の範囲である。塗工量が0.01g/m2未満の場合、塗工性の面より安定性に欠け、均一な塗膜を得るのが困難になる場合がある。一方、1g/m2を超えて厚塗りにすると、離型層自体の塗膜密着性、硬化性等が低下する場合がある。
【0055】
本発明における離型フィルムに関して、離型層が設けられていない面には接着層、帯電防止層、オリゴマー析出防止層等の塗布層を設けてもよく、ポリエステルフィルムにはコロナ処理、プラズマ処理等の表面処理を施してもよい。
【0056】
本発明の離型フィルムを熱処理(180℃、10分間)した後、離型層表面からジメチルホルムアミドにより抽出されるオリゴマー量(OL)は、0.6mg/m2以下であり、好ましくは0.4mg/m2以下である。OLが0.6mg/m2を超える場合には、粘着剤塗布後の乾燥工程において、乾燥温度をより高く設定した場合に、離型フィルムの離型層表面に析出するオリゴマー量が多くなり、液晶偏光板粘着剤層保護用途においては、粘着剤の透明性が低下する、あるいは粘着剤層の粘着力が低下する等の不具合が生じるようになる。
【0057】
本発明の離型フィルムの全光線透過率(TL)は80%であることが用途上、必要である。TLが80%未満の場合、透明性が不十分となり、光学的評価を伴う検査工程においては異物の混入を見落とし易くなる等の不具合を生じるようになる。
【0058】
本発明の離型フィルムを、直交させた偏光板の間に挟んで積層状態としたときの全光線透過率(TL(H))は、8%以下であり、好ましくは5%以下、さらに好ましくは2%以下である。TL(H)が8%を超える場合、液晶偏光板の検査工程において、離型フィルムを構成するポリエステルフィルムの光学的異方性起因により、偏光ムラ等の不具合を生じるようになる。
【0059】
本発明の離型フィルムは、用途上、ポリエステルフィルム面内の主配向軸のMD方向に対する角度(θ3)が70度以上を満足するのが好ましい。θ3は好ましくは80度以上である。θ3が70度未満の場合、光学的評価を伴う検査工程においては異物の混入を見落としやすくなり、検査時に離型フィルムを一旦剥離し、検査終了後に再度貼付しなければならない等の不具合を生じる場合がある。
【0060】
また、本発明における離型フィルムの残留接着率は貼り合わせる相手方粘着剤層表面または製造工程における搬送用ロール表面へのシリコーン移行または転着を抑制することから、80%以上であることが必要であり、好ましくは90%以上がよい。残留接着率が80%未満の場合、製造工程において搬送用ロールのロール表面にシリコーン移行成分が転着したり、離型面と接する粘着剤層の粘着力が低下する等の不具合を生じる。
【0061】
【実施例】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。また、本発明で用いた 測定法は次のとおりである。
(1)ポリエステルの固有粘度の測定
ポリエステル1gを精秤し、フェノール/テトラクロロエタン=50/50(重量比)の混合溶媒100mlを加えて溶解させ、30℃で測定した。
(2)平均粒径(d50:μm)の測定
遠心沈降式粒度分布測定装置(株式会社島津製作所社製SA−CP3型)を使用して測定した等価球形分布における積算(重量基準)50%の値を平均粒径とした。
(3)離型フィルムの離型層表面から抽出されるオリゴマー量(OL)の測定
熱処理後(180℃、10分間)の離型フィルムを、上部が開放され、底辺の面積が250cm2 となるように折り、四角の箱を作成する。塗布層を設けている場合は塗布層面が内側となるようにする。
【0062】
次いで、上記の方法で作成した箱の中にDMF(ジメチルホルムアミド)10mlを入れて3分間放置した後、DMFを回収する。回収したDMFを液体クロマトグラフィー(島津製作所製:LC−7A)に供給してDMF中のオリゴマー量を求め、この値をDMFに接触させたフィルム面積で割って、フィルム表面オリゴマー量(mg/m2 )とする。
【0063】
DMF中のオリゴマー量は、標準試料ピーク面積と測定試料ピーク面積のピーク面積比より求めた(絶対検量線法)。
【0064】
標準試料の作成は、予め分取したオリゴマー(環状三量体)を正確に秤量し、正確に秤量したDMFに溶解し作成した。標準試料の濃度は、0.001〜0.01mg/mlの範囲が好ましい。
【0065】
なお、液体クロマトグラフの条件は下記のとおりとした。
【0066】
移動相A:アセトニトリル
移動相B:2%酢酸水溶液
カラム:三菱化学(株)製 MCI GEL ODS 1HU
カラム温度:40℃
流速:1ml/分
検出波長:254nm
(4)離型フィルムの全光線透過率(TL)の測定
JIS−K−7105に準じて日本電色工業社製積分球式濁度計「NDH−300A」により、離型フィルムの全光線透過率(%)を測定した。
(5)離型フィルムにおける、フィルム面内の主配向軸のMD方向に対する角度(θ3)の測定
カールツァイス社製偏光顕微鏡を用いて、離型フィルムの配向を観察し、ポリエステルフィルム面内の主配向軸の方向がポリエステルフィルムのMD方向に対して何度傾いているかをフィルム幅方向に均等に10点測定し、それらの測定値の最大値をθ3とした。
【0067】
なお、測定上、主配向軸が90度を超えた場合にはその補角を主配向軸のMD方向に対する角度とした。
(6)直交偏光板間に離型フィルムを挟んだときの全光線透過率(TL(H))の測定
JIS−K−7105に準じて日本電色工業社製積分球式濁度計「NDH−300A」により、直交させた偏光板(日東電工製:偏光率99.99%)の間に離型フィルムを挟み、積層体の状態での全光線透過率(%)を測定した。
【0068】
TL(H)値が小さいほど、偏光ムラ等が生じにくく、偏光板の検査が容易に行えるようになる。
(7)離型フィルムの残留接着率の評価
▲1▼残留接着力
試料フィルムのシリコーン面に日東電工(製)No.31B粘着テープを2kgゴムローラーにて1往復圧着し、100℃で1時間加熱処理する。次いで、圧着したサンプルから試料フィルムを剥がし、No.31B粘着テープをJIS−C−2107(ステンレス板に対する粘着力、180°引き剥がし法)の方法に準じて接着力を測定する。これを残留接着力とする。
▲2▼基礎接着力
残留接着力の場合と同じテープ(No.31B)を用いてJIS−C−2107に準じてステンレス板に粘着テープを圧着して、同様の要領にて測定を行う。この時の値を基礎接着力とする。これらの測定値を用いて、下記式に基づいて残留接着率を求める。
【0069】
残留接着率(%)=残留接着力÷基礎接着力×100
なお、測定は20±2℃、65±5%RHにて行う。
(8)離型フィルムの剥離力(F)の評価
測定試料の離型層に両面粘着テープ(日東電工製「No.502」)の片面を貼り付けた後、50mm×300mmのサイズにカットした後、室温にて1時間放置後の剥離力を測定する。剥離力は、引張試験機((株)インテスコ製「インテスコモデル2001型」)を使用し、引張速度300mm/分の条件下、180°剥離を行った。
(9)離型フィルムの消光状態評価
異物を付着させた粘着剤層を介して離型フィルムと偏光板が貼り合わされた積層体において、離型フィルムの側から光を通して見た際の消光状態の有無を観察した。
(10)離型フィルムの検査容易性評価
異物を付着させた粘着剤層を介して離型フィルムと偏光板が貼り合わされた積層体において、離型フィルムの側から光を通して見た際の異物の見えやすさを下記判定基準により評価した。
《判定基準》
良好:検査可能(実用上問題ないレベル)
やや不良:検査困難な場合がある(実用上問題あるレベル)
不良:検査不可能(実用上問題あるレベル)
実施例および比較例において用いた原料ポリエステルおよびフィルムの製造方法は、以下のとおりである。
〈ポリエステルの製造〉
製造例1(ポリエチレンテレフタレートA1)
ジメチルテレフタレート100部、エチレングリコール60部および酢酸マグネシウム・4水塩0.09部を反応器にとり、加熱昇温すると共にメタノールを留去し、エステル交換反応を行い、反応開始から4時間を要して230℃に昇温し、実質的にエステル交換反応を終了した。次いで、エチレングリコールスラリーエチルアシッドフォスフェート0.04部、三酸化アンチモン0.03部、平均粒径0.25μmのシリカ粒子を0.3部添加した後、100分で温度を280℃、圧力を15mmHgに達せしめ、以後も徐々に圧力を減じ、最終的に0.3mmHgとした。4時間後、系内を常圧に戻し、固有粘度0.61のポリエチレンテレフタレートA1を得た。
【0070】
製造例2(ポリエチレンテレフタレートA2)
製造例1において平均粒径1.54μmのシリカ粒子を0.1部添加する代わりに平均粒径0.27μmの酸化チタン粒子を1部添加する以外は製造例1と同様にしてポリエチレンテレフタレートA2を得た。
〈ポリエステルフィルムの製造〉
製造例3(ポリエステルフィルムF1)
製造例1で製造したポリエチレンテレフタレートA1を180℃で4時間不活性ガス雰囲気中で乾燥し、溶融押出機により290℃で溶融し、口金から押出し静電印加密着法を用いて表面温度を40℃に設定した冷却ロール上で冷却固化して未延伸シートを得た。得られたシートを85℃で3.5倍縦方向に延伸した。
【0071】
次いで、下記組成からなる塗布剤を塗布した後、フィルムをテンターに導き、100℃で3.7倍横方向に延伸した後、230℃にて熱固定を行い、中央部分1000mm幅のみを採取し、塗工量が0.05g/m2(乾燥後)の塗布層が設けられた、厚さ25μmのPETフィルムF1を得た。
《塗布層を構成する化合物》
▲1▼PVA系樹脂:A
けん化度=88モル%、重合度=500のポリビニルアルコール
▲2▼水系ポリエステル樹脂:B
イソフタール酸、エチレングリコール、ジエチレングリコールを主とするポリエステルにネオペンチルグリコール、脂肪族ジカルボン酸無水物を有するジカルボン酸誘導体を共重合させたポリエステルをアミン化合物で中和し水系化して得られた水系ポリエステル
▲3▼架橋性化合物:C
ヘキサメトキシメチルメラミン
▲4▼粒子:D
平均粒径65nmのシリカゾル
《塗布剤組成》
PVA系樹脂(A) 70重量%
水系ポリエステル樹脂(B) 15重量%
架橋性化合物(C) 10重量%
粒子(D) 5重量%
上記塗布液の濃度は2重量%とした。
【0072】
製造例4(PETフィルムF2)〜製造例7(PETフィルムF5)
製造例3において、塗布剤組成を下記表1に示す塗布剤組成に変更する以外は製造例3と同様にしてPETフィルムF2〜PETフィルムF5を得た。
【0073】
これらのPETフィルムの特性は、下記表1に示すとおりである。
【0074】
製造例8(PETフィルムF6)
製造例3において、塗布剤組成を表1に示す塗布剤組成に変更し、かつ塗布層の塗工量を0.7g/m2(乾燥後)にする以外は製造例3と同様にして製造し、PETフィルムF6を得た。このPETフィルムの特性を表1に示す。
【0075】
製造例9(PETフィルムF7)
製造例3において塗布剤組成を表1に示す塗布剤組成に変更する以外は製造例3と同様にして製造し、PETフィルムF7を得た。このPETフィルムの特性を表1に示す。
【0076】
製造例10(PETフィルムF8)
製造例3においてポリエチレンテレフタレートA1をポリエチレンテレフタレートA2に変更する以外は製造例3と同様にして製造し、PETフィルムF8を得た。このPETフィルムの特性を表1に示す。
【0077】
製造例11(PETフィルムF9)
製造例3において得られた未延伸シートに製造例3と同様の塗布剤を塗布した後、T.M.Long社製ロング延伸機を用いて95℃で延伸倍率をMD方向に3.0倍、TD方向に4.0倍の同時二軸延伸を行った。その後、230℃にて熱固定し、塗工量が0.05g/m2(乾燥後)の塗布層が設けられた、厚さ25μmのPETフィルムF9を得た。このPETフィルムの特性を表1に示す。
【0078】
製造例12(PETフィルムF10)
製造例3において、端部1000mm幅のフィルムを採取する以外は製造例3と同様にしてPETフィルムF10を得た。このPETフィルムの特性を表1に示す。
【0079】
製造例13(PETフィルムF11)
製造例3において採取した中央部と、製造例12において採取した端部との間の部分において1000mm幅のフィルムを採取する以外は製造例3と同様にしてPETフィルムF10を得た。このPETフィルムの特性を表1に示す
【0080】
【表1】
【0081】
実施例1
製造例3で得られたPETフィルムF1に下記組成からなる離型層を塗布量が0.1g/m2(乾燥後)となるように設け、離型フィルムを得た。この離型フィルムの特性を下記表2に示す。
《離型剤組成》
ジメチルポリシロキサン構造を有する硬化型シリコーン樹脂(KS−847H:信越化学製 固形分濃度30%) 60重量%
硬化剤(PL−50T:信越化学製 固形分濃度 1%) 1重量%
Q単位のシロキサン構造を有するシリコーン系化合物(反応性シリコーンレジン:固形分濃度30%) 39重量%
上記離型剤をMEK/トルエン混合溶媒(混合比率は1:1)で希釈し、濃度1.5重量%の塗布液を作成した。
【0082】
実施例2
実施例1において離型剤組成を下記組成に変更する以外は実施例1と同様にして製造し、離型フィルムを得た。この離型フィルムの特性を表2に示す。
《離型剤組成》
ジメチルポリシロキサン構造を有する硬化型シリコーン樹脂(KS−847H:信越化学製 固形分濃度30%) 89重量%
硬化剤(PL−50T:信越化学製 固形分濃度 1%) 1重量%
Q単位のシロキサン構造を有するシリコーン系化合物(反応性シリコーンレジン:固形分濃度30%) 10重量%
上記離型剤をMEK/トルエン混合溶媒(混合比率は1:1)で希釈し、濃度1.5重量%の塗布液を作成した。
【0083】
実施例3
実施例1において、離型剤組成を下記組成に変更する以外は実施例1と同様にして製造し、離型フィルムを得た。この離型フィルムの特性を表2に示す。
《離型剤組成》
フェニル基を含有するポリシロキサン構造を有する硬化型シリコーン樹脂(KS−774:信越化学製 固形分濃度30%) 60重量%
硬化剤(PL−3:信越化学製 固形分濃度30%) 1重量%
Q単位のシロキサン構造を有するシリコーン系化合物(反応性シリコーンレジン:固形分濃度30%) 39重量%
上記離型剤をMEK/トルエン混合溶媒(混合比率は1:1)で希釈し、濃度1.5重量%の塗布液を作成した。
【0084】
実施例4
実施例1において、PETフィルムF1の代わりにPETフィルムF2を用いる以外は実施例1と同様にして製造し、離型フィルムを得た。この離型フィルムの特性を表2に示す。
【0085】
実施例5
実施例1において、PETフィルムF1の代わりにPETフィルムF3を用いる以外は実施例1と同様にして製造し、離型フィルムを得た。この離型フィルムの特性を表2に示す。
【0086】
実施例6
実施例1において、PETフィルムF1の代わりにPETフィルムF4を用いる以外は実施例1と同様にして製造し、離型フィルムを得た。この離型フィルムの特性を表2に示す。
【0087】
実施例7
実施例1においてPETフィルムF1の代わりにPETフィルムF6を用いる以外は実施例1と同様にして製造し、離型フィルムを得た。この離型フィルムの特性を表2に示す。
【0088】
実施例8
実施例1においてPETフィルムF1の代わりにPETフィルムF9を用いる以外は実施例1と同様にして製造し、離型フィルムを得た。この離型フィルムの特性を表2に示す。
【0089】
実施例9
実施例1において、PETフィルムF1の代わりにPETフィルムF11を用いる以外は実施例1と同様にして製造し、離型フィルムを得た。この離型フィルムの特性を表2に示す。
【0090】
比較例1
実施例4においてQ単位のシロキサン構造を有する反応性シリコーンレジンを添加しない以外は実施例1と同様にして製造し、離型フィルムを得た。この離型フィルムの特性を表2に示す。
【0091】
比較例2
実施例1において、PETフィルムF1の代わりにPETフィルムF5を用いる以外は実施例1と同様にして離型フィルムを得た。この離型フィルムの特性を表2に示す。
【0092】
比較例3
実施例3において離型剤組成を下記組成に変更する以外は実施例3と同様にして製造し、離型フィルムを得た。この離型フィルムの特性を表2に示す。
《離型剤組成》
ジメチルポリシロキサン構造を有する硬化型シリコーン樹脂(KS−847H:信越化学製 固形分濃度30%) 60重量%
硬化剤(PL−50T:信越化学製 固形分濃度 1%) 1重量%
Q単位のシロキサン構造を有するシリコーン系化合物(反応性シリコーンレジン:固形分濃度30%) 38重量%
非反応性シリコーンオイル(X−22−819:信越化学製 比重0.99(25℃)) 1重量%
上記離型剤をMEK/トルエン混合溶媒(混合比率は1:1)で希釈し、濃度1.5重量%の塗布液を作成した。
【0093】
比較例4
実施例1において、PETフィルムF1の代わりにPETフィルムF7を用いる以外は実施例1と同様にして製造し、離型フィルムを得た。この離型フィルムの特性を表2に示す。
【0094】
比較例5
実施例1において、PETフィルムF1の代わりにPETフィルムF8を用いる以外は実施例1と同様にして製造し、離型フィルムを得た。この離型フィルムの特性を表2に示す。
【0095】
比較例6
実施例1において、PETフィルムF1の代わりにPETフィルムF10を用いる以外は実施例1と同様にして製造し、離型フィルムを得た。この離型フィルムの特性を表2に示す。
【0096】
【表2】
【0097】
【発明の効果】
本発明の離型フィルムは、液晶偏光板の粘着剤層保護用として用いた場合、オリゴマーの析出量が極力少なく、透明性が良好であり、光学的検査を伴う検査が容易であり、その工業的価値は極めて高い。
Claims (1)
- フィルム面内の主配向軸のMD方向に対する角度(θ 3 )が70度以上であるポリエチレンテレフタレートフィルムの片面に、ポリビニルアルコールを含有する塗布層と、四官能性のシロキサン構造単位(SiO 4/2 )を有するシリコーン系化合物および硬化型シリコーン樹脂を含む、残留接着率が80%以上の離型層とが順次設けられた離型フィルムであり、下記式(1)〜(3)を同時に満足することを特徴とする液晶偏光板粘着剤層保護用離型フィルム。
OL≦0.6 …(1)
TL≧80 …(2)
TL(H)≦8 …(3)
(上記式中、OLは180℃、10分間熱処理後の離型フィルムの離型層表面からジメチルホルムアミドにより抽出されるオリゴマー量(mg/m2)、TLは離型フィルムの全光線透過率(%)、TL(H)は直交させた偏光板の間に離型フィルムを挟んだときの全光線透過率(%)を表す)
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