JP4397499B2 - 液晶偏光板粘着層保護用離型フィルム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は離型フィルムに関するものであり、詳しくは液晶ディスプレイ(以下、LCDと略記する場合がある)に用いられる偏光板の粘着剤層保護用離型フィルムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、ポリエステルフィルムを基材とする離型フィルムが液晶偏光板の粘着剤層保護用に使用されているが、高温下、離型層表面に析出するオリゴマーが各種不具合を生じさせている。
【0003】
離型層表面に析出するオリゴマーは、貼り合わせている相手方粘着剤層表面へ転着し、オリゴマーの付着した粘着剤層付きの偏光板をガラス基板と貼り合わせてLCDを製造した場合、得られるLCDの輝度が低下する等の不具合を生じる場合がある。
【0004】
近年、LCDの視認性向上を目的として表示画面の輝度をより高くする傾向にあり、上記不具合が深刻な問題となってきている。また、製造コストを低減するために製造工程において高速化されるのに伴って、特に乾燥工程における乾燥温度をより高く設定する傾向にあり、上述のオリゴマーがより析出しやすい状況になってきている。
【0005】
一方、液晶偏光板の表示能力、色相、コントラスト、異物混入などの光学的評価を伴う検査工程においては、目視あるいは拡大鏡使用による欠陥品の流出防止対策が講じられている。しかしながら、離型フィルムを構成するポリエステルフィルムの光学的異方性起因により、異物混入を見落としやすくなる等の不具合があるため、検査時に離型フィルムを一旦剥離し、検査終了後に再度貼付するというようなことも行われている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであって、その解決課題は、液晶偏光板粘着剤層保護用として用いた際の取り扱い性に優れ、オリゴマー析出量が極力少なく、透明性良好であり、光学的評価を伴う検査が容易な離型フィルムを提供することにある。
【0007】
【発明を解決するための手段】
本発明者は、上記実状に鑑み鋭意検討した結果、特定の構成からなる離型フィルムを用いれば、上述の課題を容易に解決できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明の要旨は、厚みが9〜50μmの二軸延伸ポリエステルフィルムの片面に塗布層、残留接着率が80%以上の離型層が順次設けられてなる離型フィルムであって、前記塗布層または離型層の少なくとも一方はアミノ基を有する化合物とポリビニルアルコールとを含有し、下記式(1)〜(4)を同時に満足することを特徴とする液晶偏光板粘着剤層保護用離型フィルムに存する。
【0009】
OL≦3.0 …(1)
N×Wf≧0.5 …(2)
30≦Re≦10000 …(3)
80≦TL …(4)
(上記式中、OLは180℃、10分間熱処理後の離型フィルムの離型層表面からジメチルホルムアミドにより抽出されるオリゴマー量(mg/m2)、Nは離型フィルムからケルダール分解を経てインドフェノール青吸光度法により検出される窒素含有量(ppm)、Wfは離型フィルムの単位面積当たりの重量(mg/m2)、Reは二軸延伸ポリエステルフィルムのレターデーション値(nm)、TLは離型フィルムの全光線透過率(%)を表す)
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
【0011】
本発明においてポリエステルフィルムに使用するポリエステルはホモポリエステルであっても共重合ポリエステルであってもよい。用いるポリエステルがホモポリエステルである場合、当該ポリエステルは、芳香族ジカルボン酸と脂肪族グリコールとを重縮合させて得られる。芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などが挙げられ、脂肪族グリコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノ−ル等が挙げられる。代表的なポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート(PEN)等が例示される。
【0012】
一方、用いるポリエステルが共重合ポリエステルの場合は、30モル%以下の第三成分を含有した共重合体が好ましい。共重合ポリエステルのジカルボン酸成分としては、イソフタル酸、フタル酸テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸セバシン酸、および、オキシカルボン酸(例えば、P−オキシ安息香酸など)の一種または、二種以上が挙げられ、グリコール成分として、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオ−ル、1,4−シクロヘキサンジメタノ−ル、ネオペンチルグリコール等の一種または二種以上が挙げられる。
【0013】
いずれにしても本発明でいうポリエステルとは、通常80モル%以上、好ましくは90モル%以上がエチレンテレフタレート単位であるポリエチレンテレフタレート、エチレン−2,6−ナフタレート単位であるポリエチレン−2,6−ナフタレート等であるポリエステルを指す。
【0014】
本発明の離型フィルムを構成するポリエステルフィルム層中には、易滑性付与を主たる目的として粒子が通常配合される。配合する粒子の種類は、易滑性付与可能な粒子であれば特に限定されるものではなく、具体例としては、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム酸化珪素、カオリン、酸化アルミニウム、酸化チタン等の粒子が挙げられる。
【0015】
また、特公昭59−5216号公報、特開昭59−217755号公報等に記載されている耐熱性有機粒子を用いてもよい。この他の耐熱性有機粒子の例として、熱硬化性尿素樹脂、熱硬化性フェノール樹脂、熱硬化性エポキシ樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等が挙げられる。さらにポリエステル製造工程中、触媒等の金属化合物の一部を沈殿、微分散させた析出粒子を用いることもできる。
【0016】
一方、使用する粒子の形状に関しても特に限定されるものではなく、球状、塊状、棒状、扁平状等のいずれを用いてもよい。また、その硬度、比重、色等についても特に制限はない。これら一連の粒子は必要に応じて2種類以上を併用してもよい。
【0017】
また、用いる粒子の平均粒径は、通常0.01〜3μm、好ましくは0.01〜1μmの範囲である。平均粒径が0.01μm未満の場合には、粒子が凝集しやすく、分散性が不十分な場合があり、一方、3μmを超える場合には、フィルムの表面粗度が粗くなりすぎて、後工程において離型層を設ける場合等に不具合が生じる場合がある。
【0018】
さらにポリエステルフィルム層中の粒子含有量は、通常0.1〜5重量%、好ましくは0.1〜3重量%の範囲である。粒子含有量が0.1重量%未満の場合には、フィルムの易滑性が不十分な場合があり、一方、5重量%を超えて添加する場合には、ポリエステルフィルムの透明性が不十分な場合がある。
【0019】
ポリエステルフィルム層中に粒子を添加する方法としては、特に限定されるものではなく、従来公知の方法を採用しうる。例えば、ポリエステルを製造する任意の段階において添加することができるが、好ましくはエステル化の段階、もしくはエステル交換反応終了後、重縮合反応を進めてもよい。
【0020】
またベント付き混練押出機を用いエチレングリコールまたは水などに分散させた粒子のスラリーとポリエステル原料とをブレンドする方法、または、混練押出機を用い、乾燥させた粒子とポリエステル原料とをブレンドする方法などによって行われる。
【0021】
なお、本発明におけるポリエステルフィルム中には、上述の粒子以外に必要に応じて従来公知の酸化防止剤、熱安定剤、潤滑剤、染料、顔料等を添加することができる。
【0022】
本発明における離型フィルムを構成する二軸延伸ポリエステルフィルムの厚みは、フィルム取り扱い性の点で9〜50μmである必要があり、好ましくは12〜40μmの範囲である。フィルムの厚みが9μm未満の場合、フィルム取り扱い性が低下するようになり、一方、50μmを超える場合には、レターデーション値の上昇等、液晶偏光板の表示能力、色相、コントラスト、異物混入などの光学的評価を伴う検査を行う際に不具合を生じるようになる。
【0023】
本発明の離型フィルムを構成する二軸延伸ポリエステルフィルムは、上述のフィルム厚みを満足した上で、さらにレターデーション(Retardation)値(Re)が30〜10000の範囲である必要がある。Re値は、好ましくは50〜5000nm、さらに好ましくは100〜2000nmがよい。Re値が30nm未満の場合には、フィルムの耐薬品性が低下するようになり、一方、10000nmを超える場合には、フィルムの配向軸の角度(θ3)によっては、偏光板と離型フィルムとの間でクロスニコル状態(消光状態)になるため、光学的な検査を行う際には異物混入を見落としやすくなる等の不具合を生じるようになる。
【0024】
次に、本発明における二軸延伸ポリエステルフィルムの製造例について具体的に説明するが、以下の製造例に何ら限定されるものではない。
【0025】
すなわち、先に述べたポリエステル原料を使用し、ダイから押し出された溶融シートを冷却ロールで冷却固化して未延伸シートを得る方法が好ましい。
【0026】
この場合、シートの平面性を向上させるためシートと回転冷却ドラムとの密着性を高めることが好ましく、静電印加密着法および/または液体塗布密着法が好ましく採用される。
【0027】
次に得られた未延伸シートは二軸方向に延伸される。まず、前記の未延伸シートを一方向にロールまたはテンター方式の延伸機により延伸する。延伸温度は、通常130〜170℃であり、延伸倍率は、通常2.5〜7倍、好ましくは3.0〜6倍である。次いで、一段目の延伸方向と直交する方向に延伸を行う。延伸温度は、通常130〜170℃であり、延伸倍率は、通常3.0〜7倍、好ましくは3.5〜6倍である。そして、引き続き、180〜270℃の温度で緊張下または30%以内の弛緩下で熱処理を行い、二軸配向フィルムを得る。該延伸工程中にフィルム表面を処理する、いわゆる塗布延伸法(インラインコーティング)を施すことができる。それは以下に限定するものではないが、特に1段目の延伸が終了して、2段目の延伸前にコーティング処理を施すことができる。
【0028】
上記の延伸においては、一方向の延伸を2段階以上で行う方法を用いることもできる。その場合、最終的に二方向の延伸倍率がそれぞれ上記範囲となるように行うのが好ましい。また、前記の未延伸シートを面積倍率が10〜40倍になるように同時二軸延伸を行うことも可能である。さらに、必要に応じて熱処理を行う前または後に再度縦および/または横方向に延伸してもよい。
【0029】
上述の塗布延伸法にてポリエステルフィルム上に塗布層が塗設される場合には、延伸と同時に塗布が可能になると共に塗布層の厚みを延伸倍率に応じて薄くすることができ、二軸延伸ポリエステルフィルムとして好適なフィルムを製造できる。
【0030】
本発明の離型フィルムは、180℃、10分間熱処理後の離型層表面からジメチルホルムアミドにより抽出されるオリゴマー量を3.0mg/m2以下に抑える必要があるため、塗布層または離型層の少なくとも一方にアミノ基を有する化合物を含有する必要がある。
【0031】
アミノ基を有する化合物の具体例としては、N−β(アミノエチル)γ−アミノトリプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0032】
それらの中でも、特に下記一般式(A)で表されるシラン化合物を用いるとオリゴマー析出防止効果がより一層良好となるので好ましい。
【0033】
Y−(CH2)3−Si−(X)3 (A)
(上記式中、Yは−NH2基または−NHCH2CH2NH2基、Xは−OCH3基または−OCH2CH3基を表す)
また、塗布層は、好ましくは上述の塗布延伸法(インラインコーティング法)によりポリエステルフィルム上に塗設するのが好ましい。
【0034】
本発明の離型フィルムを構成する塗布層には、上述のアミノ基を有する化合物以外に本発明の要旨を損なわない範囲において、バインダーポリマーを併用してもよい。
【0035】
併用するバインダーポリマーの具体例としては、ポリアクリルアミド、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレンイミン、メチルセルロース、ヒドロキシセルロース、でんぷん類、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアクリレート、塩素系ポリマー(ポリ塩化ビニル、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体等)、ポリオレフィン等が挙げられる。それらの中でも、塗布層を塗布延伸法により塗設する場合には、ノニオン系、カチオン系、両性系の水溶液または水分散体として使用可能な有機ポリマーが挙げられ、また、それらの中でもポリウレタン、ポリエステル、ポリアクリレートを使用した場合には、上塗り剤層に対する接着性が良好となる。これらのポリマーはそのモノマーの一成分としてノニオン、カチオン、または両性系の親水性成分を共重合することにより、親水性を付与し、水に分散させることが可能となる。
【0036】
また、塗布層には架橋剤を併用してもよく、具体例としては、メチロール化またはアルキロール化した尿素系、メラミン系、グアナミン系、アクリルアミド系、ポリアミド系化合物、エポキシ化合物、アジリジン化合物、ブロックポリイソシアネート、チタンカップリング剤、ジルコーアルミネートカップリング剤等が挙げられる。これらの架橋成分は、バインダーポリマーと予め結合していてもよい。
【0037】
また、塗布層の固着性、滑り性改良を目的として、無機系粒子を塗布層に配合してもよく、具体例としてはシリカ、アルミナ、カオリン、炭酸カルシウム、酸化チタン、バリウム塩等が挙げられる。さらに必要に応じて消泡剤、塗布性改良剤、増粘剤、有機系潤滑剤、有機系高分子粒子、酸化防止剤、紫外線吸収剤、発泡剤、染料等を配合してもよい。
【0038】
本発明において、塗布層の塗布量は、0.01〜1g/m2、さらには0.03〜0.5g/m2の範囲が好ましい。塗布量が0.01g/m2未満の場合には、塗布厚みの均一性が不十分な場合があり、一方、1g/m2を超えて塗布する場合には、滑り性低下による不具合が生じる場合がある。
【0039】
本発明において、ポリエステルフィルムに塗布層を設ける方法は、後述する離型層を塗設させる場合と同様に、バーコート方式、グラビアコート方式等、従来公知の塗工方式を用いることができる。
【0040】
本発明の離型フィルムを構成する離型層は、離型性を有する材料を含有していれば、特に限定されるものではないが、硬化型シリコーン樹脂を含有しているものを用いれば離型性が良好となるので好ましい。硬化型シリコーン樹脂を主成分とするタイプでもよいし、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂等の有機樹脂とのグラフト重合等による変性シリコーンタイプ等を使用してもよい。
【0041】
硬化型シリコーン樹脂の種類としては、付加型・縮合型・紫外線硬化型・電子線硬化型・無溶剤型等何れの硬化反応タイプでも用いることができる。
【0042】
具体例を挙げると、信越化学工業(株)製KS−774、KS−775、KS−778、KS−779H、KS−847H、KS−856、X−62−2422、X−62−2461、X−62−5039、X−62−5040、ダウ・コーニング・アジア(株)製DKQ3−202、DKQ3−203、DKQ3−204、DKQ3−205、DKQ3−210、東芝シリコーン(株)製YSR−3022、TPR−6700、TPR−6720、TPR−6721、東レ・ダウ・コーニング(株)製SD7220、SD7226、SD7229等が挙げられる。さらに離型層の剥離性等を調整するために剥離コントロール剤を併用してもよい。また、上述のとおり、離型層中にはアミノ基を有するシラン化合物を添加してもよい。
【0043】
本発明において、二軸延伸ポリエステルフィルムに離型層を塗設する方法として、リバースロールコート、グラビアコート、バーコート、ドクターブレードコート等、従来公知の塗工方式を用いることができる。
【0044】
離型層の塗工量は塗工性の面から0.01〜1g/m2、さらには0.03〜0.5g/m2の範囲が好ましい。離型層の塗工量が0.01g/m2未満になると、塗工性の面より安定性に欠け、均一な塗膜を得るのが困難になる場合がある。一方、1g/m2を超えて厚塗りにすると、離型層自体の塗膜密着性、硬化性等が低下する場合がある。
【0045】
本発明の離型フィルムにおいて、離型層が設けられていない面には必要に応じてオリゴマー析出防止層、接着層、帯電防止層等の塗布層を設けてもよく、また、二軸延伸ポリエステルフィルムには、コロナ処理、プラズマ処理等の表面処理を施してもよい。
【0046】
本発明の離型フィルムは、180℃、10分間熱処理後の離型層表面からジメチルホルムアミドにより抽出されるオリゴマー量(OL)が3.0mg/m2以下である必要がある。OLが3.0mg/m2を超える場合には、離型フィルムの離型層表面のオリゴマー量が多くなり、液晶偏光板粘着剤層保護用途においては、貼り合わせる相手方粘着剤層の透明性が低下する、あるいは粘着剤層の粘着力が低下する等の不具合を生じるようになる。
【0047】
また、本発明における離型フィルム中の単位面積当たりの窒素含有量(N×Wf)は0.5mg/m2以上である必要があり、好ましくは2.0mg/m2以上、さらに好ましくは4.0mg/m2以上である。N×Wfが0.5mg/m2未満の場合には得られる離型フィルムがオリゴマー析出防止効果に乏しくなる。
【0048】
なお、上記のNは、離型フィルムからケルダール分解を経てインドフェノール青吸光度法により検出される窒素含有量(ppm)、Wfは離型フィルムの単位面積当たりの重量(mg/m2)を表す。
【0049】
本発明の離型フィルムの全光線透過率(TL)は、用途上、80%以上である必要がある。TLが80%未満の場合には透明性が不十分となり、光学的評価を伴う検査工程において、異物の混入を見落としやすくなる等の不具合を生じるようになる。
【0050】
本発明の離型フィルムの残留接着率は、貼り合わせる相手方粘着剤層表面または製造工程における搬送用ロール表面へのシリコーン移行または転着を抑制することから、80%以上であることが必要であり、好ましくは90%以上がよい。
【0051】
残留接着率が80%未満の場合、製造工程において搬送用ロールのロール表面にシリコーン移行成分が転着したり、離型面と接する粘着剤層の粘着力が低下する等の不具合を生じるようになる。
【0052】
【実施例】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例および比較例中「部」とあるのは「重量部」を示す。また、本発明で用いた測定法は次のとおりである。
(1)ポリエステルの固有粘度の測定
ポリエステルに非相溶な他のポリマー成分および顔料を除去したポリエステル1gを精秤し、フェノール/テトラクロロエタン=50/50(重量比)の混合溶媒100mlを加えて溶解させ、30℃で測定した。
(2)平均粒径(d50:μm)の測定
遠心沈降式粒度分布測定装置(株式会社島津製作所社製SA−CP3型)を使用して測定した等価球形分布における積算(重量基準)50%の値を平均粒径とした。
(3)二軸延伸ポリエステルフィルムの厚み測定
シチズン時計社製ミューメトロン「4M−100P TYPE V−2」を使用してフィルムの厚さを測定した。
(4)二軸延伸ポリエステルフィルムのレターデーション値(Re)の測定
アタゴ光学社製アッベ式屈折計を使用し、離型層面側を測定面として、離型フィルムを構成するベースフィルムについて、フィルム面内の屈折率の最大値nγおよびそれと直交する方向の屈折率nβを測定し、その差(nγ−nβ)を計算した。その差(nγ−nβ)に当該屈折率を測定したフィルムの厚みを乗じてレターデーション値とした。
(5)離型フィルムの離型層表面からジメチルホルムアミドにより抽出される オリゴマー量(OL)の測定
熱処理後(180℃、10分間)の離型フィルムを、上部が開放され、底辺の面積が250cm2となるように折り、四角の箱を作成する。塗布層を設けている場合は、塗布層面が内側となるようにする。
【0053】
次いで、上記の方法で作成した箱の中に、DMF(ジメチルホルムアミド)10mlを入れ3分間放置した後、DMFを回収する。回収したDMFを液体クロマトグラフィー(島津LC−7A)に供給してDMF中のオリゴマー量を求め、この値をDMFが接触したフィルム面積で割って、フィルム表面オリゴマー量(mg/m2)とする。
【0054】
DMF中のオリゴマー量は、標準試料ピーク面積と測定試料ピーク面積のピーク面積比より求めた(絶対検量線法)。
【0055】
標準試料の作成は、予め分取したオリゴマー(環状三量体)を正確に秤量し、正確に秤量したDMFに溶解し作成した。標準試料の濃度は、0.001〜0.01mg/mlの範囲が好ましい。なお、液体クロマトグラフの条件は下記のとおりとした。
【0056】
移動相A:アセトニトリル
移動相B:2%酢酸水溶液
カラム:三菱化学(株)製 MCI GEL ODS 1HU
カラム温度:40℃
流速:1ml/分
検出波長:254nm
(6)離型フィルム単位面積当たりの窒素含有量(N×Wf)の算出方法
*離型フィルム中の窒素含有量(N)の測定方法
試料サンプル500mgを正確に秤量し、濃硫酸2g、硫酸銅20ml、硫酸カリウム5gを加えて加熱分解(ケルダール分解)する。すなわち、ガスバーナーで強熱し、液が緑色透明になってからさらに30分加熱する。溶解後放冷し、純水300mlを加え、NaOHを加えてアルカリ性になるまで発生するNH3を蒸留する。次に250ml定容として分取した後、インドフェノ−ル青吸光度法(測定波長:640nm)により、試料サンプル中の窒素含有量を測定した。
【0057】
また、上記手順にて5回測定した際の平均値から、離型層および塗布層がないポリエステルフィルムが存在する状態で検出された窒素含有量を差し引いた値をもって離型フィルム中の窒素含有量(N:ppm)とした。
*離型フィルム単位面積当たりの重量(Wf)の算出方法
離型フィルムの10cm平方サイズのフィルム重量を測定し、単位面積当たりの重量(Wf:mg/m2)を算出した。
【0058】
上述の各々の方法により得られたN値およびWf値を用いて(N×Wf)値を算出した。
(7)離型フィルムの全光線透過率(TL)の測定
JIS−K−7105に準じて日本電色工業社製積分球式濁度計「NDH−300A」により、離型フィルムの全光線透過率(%)を測定した。
(8)離型フィルムの残留接着率の測定
残留接着力:
試料フィルムのシリコーン面に日東電工(製)No.31B粘着テープを2kgゴムローラーにて1往復圧着し、100℃×1時間加熱処理する。次いで、圧着したサンプルから試料フィルムを剥がし、No.31B粘着テープをJIS−C−2107(ステンレス板に対する粘着力、180°引き剥がし法)の方法に準じて接着力を測定する。これを残留接着力とする。
【0059】
基礎接着力:
残留接着力の場合と同じテープ(No.31B)を用いてJIS−C−2107に準じてステンレス板に粘着テープを圧着して、同様の要領にて測定を行う。この時の値を基礎接着力とする。これらの測定値を用いて、下記式に基づいて残留接着率を求める。
【0060】
残留接着率(%)=残留接着力÷基礎接着力×100
なお、測定は20±2℃、65±5%RHにて行う。
(9)離型フィルムの剥離力(F)の測定
測定試料の離型層に両面粘着テープ(日東電工製「No.502」)の片面を貼り付けた後、50mm×300mmのサイズにカットした後、1時間放置後の剥離力を測定する。剥離力は、引張試験機((株)インテスコ製「インテスコモデル2001型」)を使用し、引張速度300mm/分の条件下180°剥離を行った。
(10)離型フィルムの取り扱い性評価
粘着剤層付きの偏光板への離型フィルム貼り付け時の取り扱い性を下記判定基準により評価した。
《判定基準》
良好・・・実用上問題ないレベル
不良・・・実用上問題あるレベル
(11)離型フィルムの消光状態評価
異物を付着させた粘着剤層を介して離型フィルムと偏光板が貼り合わされた積層体において、離型フィルムの側から光を通して見た際の消光状態の有無を観察した。
(12)離型フィルムの検査容易性評価
異物を付着させた粘着剤層を介して離型フィルムと偏光板が貼り合わされた積層体において、離型フィルムの側から光を通して見た際の異物の見えやすさを下記判定基準により評価した。
《判定基準》
良好 …検査可能(実用上問題ないレベル)
やや不良 …検査困難な場合がある(実用上問題あるレベル)
不良 …検査不可能(実用上問題あるレベル)
実施例および比較例で用いたポリエステルの製造条件は、それぞれ下記のとおりである。
〈ポリエステルの製造〉
製造例1(ポリエチレンテレフタレートA1)
ジメチルテレフタレート100部、エチレングリコール60部および酢酸マグネシウム・4水塩0.09部を反応器にとり、加熱昇温すると共にメタノールを留去し、エステル交換反応を行い、反応開始から4時間を要して230℃に昇温し、実質的にエステル交換反応を終了した。次いでエチレングリコールスラリーエチルアシッドフォスフェート0.04部、三酸化アンチモン0.03部、平均粒径0.1.54μmのシリカ粒子を0.1部添加した後、100分で温度を280℃、圧力を15mmHgに達せしめ、以後も徐々に圧力を減じ、最終的に0.3mmHgとした。4時間後、系内を常圧に戻し、固有粘度0.61のポリエチレンテレフタレートA1を得た。
【0061】
製造例2(ポリエチレンテレフタレートA2)
製造例1において平均粒径1.54μmのシリカ粒子を0.1部添加する代わりに平均粒径0.27μmの酸化チタン粒子を1部添加する以外は製造例1と同様にしてポリエチレンテレフタレートA2を得た。
〈二軸延伸ポリエステルフィルムの製造〉
製造例3(PETフィルムF1)
製造例1で製造したポリエチレンテレフタレートA1を180℃で4時間不活性ガス雰囲気中で乾燥し、溶融押出機により290℃で溶融し、口金から押出し、静電印加密着法を用いて表面温度を40℃に設定した冷却ロール上で冷却固化して未延伸シートを得た。得られたシートを85℃で3.5倍縦方向に延伸した。次いで、下記組成からなる塗布剤を塗布した後、フィルムをテンターに導き100℃で3.7倍横方向に延伸した後、230℃にて熱固定を行い、乾燥後の塗布層の厚みが0.03μmの厚さ38μmの塗布層が塗設されたPETフィルムF1を得た。
【0062】
塗布層を構成する化合物例は以下のとおりである。
(塗布層組成)
N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン 90重量%
PVA樹脂 10重量%
塗布液の固形分濃度は2重量%とした。
塗布層を構成する化合物例は以下のとおりである。
▲1▼N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン
H2NC2H4NHC3H6Si(OCH3)3
塗布液調整において、濃度調整の希釈液として純水を用いた。
▲2▼N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシラン
H2NC2H4NHC3H6Si(OC2H5)3
塗布液調整において、濃度調整の希釈液として純水を用いた。
▲3▼γ−アミノプロピルトリメトキシシラン
H2NC3H6Si(OC2H6)3
塗布液調整において、濃度調整の希釈液として純水を用いた。
▲4▼N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン
H2NC2H4NHC3H6Si(OCH3)2CH3
塗布液調整において、濃度調整の希釈液として純水を用いた。
▲5▼N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン
C6H5NHC3H6Si(OCH3)3
塗布液調整において、濃度調整の希釈液として純水を用いた。
▲6▼γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン
【0063】
【化1】
【0064】
▲7▼PVA樹脂
けん化度が88モル%、重合度が500であるポリビニルアルコール
製造例4(PETフィルムF2)〜製造例8(PETフィルムF6)
製造例3において、塗布剤組成を下記表1に示す塗布剤組成に変更する以外は製造例3と同様にしてPETフィルムF2〜PETフィルムF6を得た。
【0065】
これらのPETフィルムの特性は、下記表1に示すとおりである。
【0066】
製造例9(PETフィルムF7)
製造例3において、塗布層を塗設しない以外は製造例3と同様にして、PETフィルムF7を得た。得られたフィルムの特性を表1に示す。
【0067】
製造例10(PETフィルムF8)
製造例3と同様にして、塗布層が塗設された、厚み25μmのPETフィルムF8を得た。得られたフィルムの特性を表1に示す。
【0068】
製造例11(PETフィルムF9)
製造例3と同様にして、塗布層が塗設された、厚み6μmのPETフィルムF9を得た。得られたフィルムの特性を表1に示す。
【0069】
製造例12(PETフィルムF10)
製造例3において、ポリエチレンテレフタレートA1の代わりにポリエチレンテレフタレートA2を用いる以外は製造例3と同様にしてPETフィルムF10を得た。得られたフィルムの特性を表1に示す。
【0070】
製造例13(PETフィルムF11)
製造例3と同様にして、塗布層が塗設された、厚み75μmのPETフィルムF11を得た。得られたフィルムの特性を表1に示す。
【0071】
製造例14(PETフィルムF12)
製造例1で製造したポリエチレンテレフタレートA1を180℃で4時間不活性ガス雰囲気中で乾燥し、溶融押出機により290℃で溶融し、口金から押出し静電印加密着法を用いて表面温度を40℃に設定した冷却ロール上で冷却固化して未延伸シートを得た。
【0072】
次に得られた未延伸シート上に製造例3と同様の組成からなる塗布剤を塗布した後、フィルムをテンターに導き80℃で乾燥させ、乾燥後の塗布層の厚みが0.03μmである、厚さ50μmのPETフィルムF12を得た。 得られたフィルムの特性を表1に示す。
【0073】
製造例15(PETフィルムF13)
製造例3において、縦方向の延伸倍率を5.0倍とし、横方向には延伸しないこと以外は製造例3と同様にして製造し、乾燥後の塗布層の厚みが0.03μmである、厚さ50μmのPETフィルムF13を得た。得られたフィルムの特性を表1に示す。
【0074】
製造例16(PETフィルムF14)
製造例3において、塗布層組成を下記組成に変更する以外は製造例3と同様にして、塗布層が塗設された、厚み38μmのPETフィルムF14を得た。得られたフィルムの特性を表1に示す。
(塗布層組成)
γ−アミノプロピルトリメトキシシラン 45重量%
PVA樹脂 55重量%
塗布液の固形分濃度は2重量%とした。
【0075】
【表1】
【0076】
上記表1中の製造例12のReが「−」とあるのは、測定不可を意味する。
【0077】
実施例1
製造例3で得られたPETフィルムF1の塗布層の上にさらに下記組成からなる離型層を塗布量が0.1g/m2(乾燥後)になるように塗設し、離型フィルムを得た。
《離型剤組成》
硬化型シリコーン樹脂 (KS−847H:信越化学製) 100部
硬化剤 (PL−50T:信越化学製) 1部
MEK/トルエン混合溶媒 1500部
実施例2
実施例1において、PETフィルムF1の代わりにPETフィルムF2を用いる以外は実施例1と同様にして製造し、離型フィルムを得た。
【0078】
実施例3
実施例1において、PETフィルムF1の代わりにPETフィルムF3を用いる以外は実施例1と同様にして製造し、離型フィルムを得た。
【0079】
実施例4
実施例1において、PETフィルムF1の代わりにPETフィルムF4を用いる以外は実施例1と同様にして製造し、離型フィルムを得た。
【0080】
実施例5
実施例1において、PETフィルムF1の代わりにPETフィルムF4を用い、離型剤の組成を下記離型剤に変更する以外は実施例1と同様にして製造し、離型フィルムを得た。
《離型剤組成》
硬化型シリコーン樹脂 (KS−723A:信越化学製) 100部
硬化型シリコーン樹脂 (KS−723B:信越化学製) 25部
硬化剤 (PS−3:信越化学製) 5部
MEK/トルエン混合溶媒 1500部
実施例6
実施例1において、PETフィルムF1の代わりにPETフィルムF8を用いる以外は実施例1と同様にして製造し、離型フィルムを得た。
【0081】
実施例7
実施例1において、PETフィルムF1の代わりにPETフィルムF5を用いる以外は実施例1と同様にして製造し、離型フィルムを得た。
【0082】
実施例8
実施例1において、PETフィルムF1の代わりにPETフィルムF14を用いる以外は実施例1と同様にして製造し、離型フィルムを得た。
【0083】
比較例1
実施例1において、PETフィルムF1の代わりにPETフィルムF6を用いる以外は実施例1と同様にして、離型フィルムを得た。
【0084】
比較例2
実施例1において、PETフィルムF1の代わりにPETフィルムF13を用いる以外は実施例1と同様にして、離型フィルムを得た。
【0085】
比較例3
実施例1において、PETフィルムF1の代わりにPETフィルムF7を用いる以外は実施例1と同様にして、離型フィルムを得た。
【0086】
比較例4
実施例1において、PETフィルムF1の代わりにPETフィルムF9を用いる以外は実施例1と同様にして、離型フィルムを得た。しかしながら、フィルム全体にシワが入り、実用上問題あるレベルであった。
【0087】
比較例5
実施例1において、PETフィルムF1の代わりにPETフィルムF10を用いる以外は実施例1と同様にして、離型フィルムを得た。
【0088】
比較例6
実施例1において、PETフィルムF1の代わりにPETフィルムF11を用いる以外は実施例1と同様にして、離型フィルムを得た。
【0089】
比較例7
実施例1において、PETフィルムF1の代わりにPETフィルムF12を用いる以外は実施例1と同様にして製造し、離型フィルムを得た。得られた離型フィルムは離型面の面状が悪く、実用上問題あるレベルであった。
【0090】
比較例8
実施例1において、離型剤の組成を下記離型剤に変更する以外は実施例1と同様にして製造し、離型フィルムを得た。
《離型剤組成》
硬化型シリコーン樹脂 (FSXK-2560:ダウコーニング・アジア製) 35部
硬化剤 (FSK−1638:ダウコーニング・アジア製) 2部
MEK/トルエン混合溶媒 1400部
比較例9
製造例9で得られたPETフィルムF7を用いて、離型剤の組成を下記離型剤に変更する以外は実施例1と同様にして製造し、離型フィルムを得た。
《離型剤組成》
硬化型シリコーン樹脂 (KS−847H:信越化学製) 100部
硬化剤(PL−50T:信越化学製) 1部
アミノ変性シリコーンオイル(信越化学製:KF−859) 3部
MEK/トルエン混合溶媒 1500部
上記実施例および比較例で得られた各離型フィルムの特性を下記表2および表3に示す。
【0091】
【表2】
【0092】
【表3】
【0093】
【発明の効果】
本発明の離型フィルムは、液晶偏光板粘着剤層保護用として用いた際の取り扱い性に優れ、オリゴマー析出量が極力少なく、透明性良好であり、光学的評価を伴う検査が容易であり、その工業的価値は極めて高い。
Claims (3)
- 厚みが9〜50μmの二軸延伸ポリエステルフィルムの片面に塗布層、残留接着率が80%以上の離型層が順次設けられてなる離型フィルムであって、前記塗布層または離型層の少なくとも一方はアミノ基を有する化合物とポリビニルアルコールとを含有し、下記式(1)〜(4)を同時に満足することを特徴とする液晶偏光板粘着剤層保護用離型フィルム。
OL≦3.0 …(1)
N×Wf≧0.5 …(2)
30≦Re≦10000 …(3)
80≦TL …(4)
(上記式中、OLは180℃、10分間熱処理後の離型フィルムの離型層表面からジメチルホルムアミドにより抽出されるオリゴマー量(mg/m2)、Nは離型フィルムからケルダール分解を経てインドフェノール青吸光度法により検出される窒素含有量(ppm)、Wfは離型フィルムの単位面積当たりの重量(mg/m2)、Reは二軸延伸ポリエステルフィルムのレターデーション値(nm)、TLは離型フィルムの全光線透過率(%)を表す) - アミノ基を有する化合物が下記一般式(A)で表されることを特徴とする請求項1記載の液晶偏光板粘着剤層保護用離型フィルム。
Y−(CH2)3−Si−(X)3 (A)
(上記式中、YはNH2基または−NHCH2CH2NH2基、Xは−OCH3基または−OCH2CH3基を表す) - 離型層が硬化型シリコーン樹脂を含有することを特徴とする請求項1または2記載の液晶偏光板粘着剤層保護用離型フィルム。
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