JP4471443B2 - 圧電共振子 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、携帯電話、無線LAN等に用いられる圧電共振子に関するものであり、特に、圧電体の厚み縦振動の共振を利用した圧電共振子に関するものである。
【0002】
【従来技術】
近年、無線通信や電気回路に用いられる周波数の高周波数化がますます進んでおり、これに伴って、これらの電気信号に対して用いられるフィルタも高周波数に対応したものが要求され、開発が行われている。
【0003】
最近は、特に、バルク・アコースティック・ウェーブ・レゾネーター(BAWR)と呼ばれる共振子とそれを用いたフィルタの開発が進められている。これは、入力される高周波電気信号に対して、圧電薄膜が振動を起こし、その振動が、薄膜の厚さ方向に共振を起こすことを用いた共振子であり、GHz領域の高い共振周波数を持つレゾネーターなどへの応用が期待されるとともに、この共振子を複数並べることにより、GHz領域の高い共振周波数に対応したフィルタが期待されている。
【0004】
BAWRの基本的な構造は、図3に示すように、基体21と、該基体21表面上に形成された支持膜22と、該支持膜22上に形成された中間層23と、該中間層23上に形成された第1電極24と、該第1電極24上に形成された圧電体25と、該圧電体25上に形成された2つの第2電極26とからなるもので、例えば特開平10−209793号公報に開示されており、基体21はSi、支持膜22はSiO2、中間層23はTi、第1電極24はPt、圧電体25はPZT、第2電極26はAlが用いられている。
【0005】
支持膜22は、基体21に形成された振動空間Aを被覆するように、基体21上面に支持膜22を形成することにより、支持膜22の空間Aに接する部分が振動することになる。したがって、空間Aに接する支持膜22と、その表面に形成された中間層23、第1電極24、圧電体25、および第2電極26が一体となって振動するので、これらの層を支える支持膜22は強度が要求される。
【0006】
しかし、GHzの高周波領域での使用を考えると、支持膜が薄く、音速の大きな材料が望まれ、支持膜に窒化珪素を形成した圧電共振子が特開昭60−68711号公報に提案されている。
【0007】
その構造は、図4に示すように、基体31と、該基体31表面上に形成された支持膜32と、該支持膜32上に形成された第1電極34と、該第1電極34上に形成された圧電体35と、該圧電体35上に形成された2つの第2電極36と、該第2電極36上に形成された保護膜37で構成されている。
【0008】
なお、支持膜32は、基体31に形成された振動空間Aを被覆するように、基体31上面に支持膜32を形成することにより、支持膜32の空間Aに接する部分が振動することになる。また、基体31はSi、支持膜32はSi3N4、第1電極34および第2電極36はCr−AuまたはTi−Au、圧電体35はZnO、AlNまたはCdSが用いられている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、圧電体35としてZnO、AlNまたはCdSなどの強誘電体以外の圧電体を用いて共振子を構成すると、圧電性が小さいため、大面積となって小型の共振子を実現できないという問題があった。
【0010】
また、圧電性の大きいペロブスカイト構造を持つ強誘電体の酸化物であるPbZrTiO3系セラミックスまたはPbTiO3系セラミックスなどを圧電体35として用いた場合、圧電体35の形成時に、金属膜からなる第1電極34と金属酸化物からなる圧電体35との界面でPbを主体とする反応層が形成され、この反応層を介して第1電極34と圧電体35との密着性が良好となる。
【0011】
しかし、第1電極34がなく、圧電体35と支持膜32とが当接してなる部位においては、酸化物である圧電体と窒化物である支持膜との界面で原子レベルの結合を形成しにくいため、密着性が悪く、剥離、膨れおよびボイド形成といった現象が発生し、製品不良率が高くなり、たとえ良品となっても内部応力が高く、信頼性が低いという問題があった。
【0012】
本発明は、製品の不良が少なく、信頼性が高く、高周波に対応した小型の圧電共振子を提供することを目的としている。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明の圧電共振子は、振動空間を有する基体と、該基体表面に形成され、前記振動空間を被覆してなる支持膜と、該支持膜上に形成された中間層と、該中間層上に形成され、かつ一対の電極で挟持された圧電体からなる振動体とを具備するとともに、前記振動体の前記圧電体が、前記振動体の前記支持膜側に形成された前記電極のまわりの前記中間層上にも形成されており、前記支持膜が窒化珪素、前記中間層が酸化チタン、前記圧電体がPbZrTiO3系セラミックス(以下、単にPZTと記すことがある)またはPbTiO3系セラミックス(以下、単にPTと記すことがある)であることを特徴とするものである。
【0014】
この構成により、窒化珪素からなる支持膜、PZTまたはPTからなる圧電体との間に酸化チタンからなる中間層を形成することにより、中間層と支持膜の界面および中間層と圧電体の界面で、Tiの関与する原子結合が形成され、支持膜と圧電体との密着性が向上し、その結果、製品の不良が減少し、信頼性を高めることができる。また、強度が高く、音速度の高い窒化珪素を用いるため、GHzオーダーの高周波に対応ができる。また、PZTまたはPTを用いるため、圧電性が大きく、小型化が可能となる。
【0015】
また、前記振動体の前記支持膜側に形成された前記電極が、前記支持膜上に形成されたTi層と該Ti層上に形成されたAu層との積層体であることが望ましい。すなわち、AuはPtに比べて体積抵抗値が1/5と小さいため、大きなQ値が期待できる。また、Tiを中間層として用いることで支持膜と密着性が高く信頼性の高い圧電共振子を実現できる。
【0016】
さらに、密着性を向上し、剥離、膨れを抑制するため、酸化チタンからなる中間層の厚みが10〜300nmであることが好ましい。
【0017】
さらにまた、振動体を支持するために十分の強度を有し、かつGHzオーダーのより高い周波数で共振するために、窒化珪素からなる支持膜の厚みが0.3〜3μmであることが好ましい。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明の圧電共振子は、図1に示すように、基体1上に支持膜2が形成され、この支持膜2の上面に、中間層3が形成され、この中間層3の上面に、第1電極4が形成され、さらにその上に圧電体5、第2電極7が順次設けられている。第1電極4および第2電極7が圧電体5を挟持して振動体8が形成されている。また、支持膜2の振動体8形成面の反対側には、振動空間Aが設けられている。
【0019】
支持膜2は、高強度高硬質材料である窒化珪素からなることが重要である。窒化珪素は、高強度、高硬度であるばかりでなく、残留応力を小さく抑えることが可能であり、スパッタ法やCVD法等の方法で形成できる。特に、ECRスパッタ法で作製した窒化珪素が好適である。この膜は高硬度で、しかも内部残留応力が小さく、支持膜として適している。
【0020】
さらに、支持膜2の厚みは、膜の自立に対して十分な強度を有し、かつ高周波数に対応するため、0.3〜3μmが好ましく、特に、最小値は0.4μm、さらには0.5μmが好適で、最大値は2μm、特にさらには1μmが好ましい。
【0021】
中間層3は、酸化チタンより構成される。酸化チタンは酸化物であるが、構成元素であるTiは、窒化物である窒化チタンも形成するため、窒化珪素との界面で、Ti−N−Siの結合を作り、高い密着性が得られる。
【0022】
また、酸化チタンは、容易に結晶質となるため、酸化珪素などに見られるような非晶質に特徴的な大きな超音波の吸収によるエネルギーの散逸が小さく、また、音速が大きいため、高周波用途に適している。そして、本発明の共振子に用いられる圧電体5は強誘電体であり、Ti−O結合を含むTi含有の酸化物を骨格とするため、酸化チタンが強誘電体形成時の核となる。したがって、圧電体5との結合が強く、大きな密着性を示す。
【0023】
また、中間層3に酸化チタンを用いることによって、圧電体5からのPb拡散を抑制することができ、膨れの発生を防止するバリア層として効果もある。
【0024】
したがって、密着性を高め、窒化珪素上にPbTiO3膜、PbZrTiO3膜、(Pb、La)TiO3膜などのPT系またはPZT系セラミックスからなる圧電体を膨れなしに形成するため、中間層3の厚みは10〜300nm、特に100nm〜200nmが望ましい。
【0025】
この中間層3は、Ti膜を形成後、熱酸化により形成するか、またはDCスパッタ法等において酸素を導入するなどの方法により形成される。
【0026】
第1電極4は、Au層とTi層の積層体で構成され、Tiは酸化チタン上に形成され、AuはTi上に形成されている事が望ましい。すなわち、Auは体積抵抗値が小さいため、大きな共振子Q値を期待できる。また、Tiは、中間層である酸化チタンとAu層との密着性を高める効果がある。
【0027】
第1電極4は、RFマグネトロンスパッタ法、DCスパッタ法、真空蒸着法等気相成長法により形成される。
【0028】
また、第1電極4を構成するAu層の厚みは、共振子Q値および共振周波数を向上するため、100〜300nm、特に100nm〜200nmが望ましい。Au電極膜の厚みが100nm未満であると電極膜の持つ抵抗値が大きくなり、共振子のQ値が低下する傾向がある。また、膜厚が300nmより大きくなると、Auの比重が大きいため、質量負荷効果が大きく、共振周波数が低下する傾向がある。
【0029】
また、第1電極4を構成するTi層の厚みは、密着性と電気抵抗の大きさから、3〜20nm、特に5〜15nmが望ましい。3nm未満では、島状に分布し、Tiが酸化チタンを被覆する被覆面積が小さくなり、Ti層として十分に機能しにくくなる。またTi層の厚みが20nmより大きいと、アンカー効果が十分に及ばなくなり、Ti層による密着性向上の効果が低下する傾向がある。
【0030】
圧電体5は、圧電性の大きい強誘電体からなる。強誘電体としては、PZT、PTなどのペロブスカイト構造を持つ酸化物、KSr2Nb5O15等のタングステンブロンズ構造を持つ酸化物があるが、本発明では圧電性の大きさ、絶縁性および製造上の容易さからPZT系、PT系セラミックスを用いることが重要である。
【0031】
また、圧電体5は、高周波マグネトロンスパッタ法等の気相成膜法やゾルゲル法等の溶液法で形成できる。その厚みは、2μm以下、特に1μm以下が望ましい。これは、厚み縦振動を用いるBAWRにおいては、使用周波数である共振周波数が厚みに逆比例し、1GHz以上の周波数で使用するためである。
【0032】
また、共振周波数を大きくするためには圧電体5の厚みを小さくすれば良いが、小さすぎると共振子のQ値が小さくなる傾向があるため、圧電体5は、第1電極4の厚み以上であることが好ましい。
【0033】
上述のように、支持膜に窒化珪素を、中間層に酸化チタンを、圧電体にPZTまたはPT系またはPZT系セラミックスを用いた組合せとすることにより、小型で、高周波に対応した圧電共振子を実現できる。また、支持膜と中間層、中間層と圧電体との密着性を高めると共に、上記の組合せにより圧電共振子全体の内部応力を低下できるため、信頼性が高く、製造工程における歩留まりも向上できる。
【0034】
基体1は、シリコンやサファイアなどであり、基体1表面に形成する圧電体5の表面が平滑になるために、十分な平坦度と表面粗さ、例えば5μm以下の平坦度とRa0.1μm以下の表面粗さを保有していれば、特に材料を限定するものではない。
【0035】
また、基体1は、KOH等を用いた化学的エッチング法や、反応性イオンエッチング法等を用いたエッチングにより、振動空間Aが形成されている。基体1の振動空間Aとは、振動体8の振動を基体1に伝達しないための空間を言い、基体1に貫通孔を形成したり、基体1の支持膜2を形成する部分に凹状の窪みを形成したりすることにより作製される。
【0036】
第2電極7は、最後に形成することができるため、材料および製造方法に特に制限をするものではないが、低抵抗の点でAlまたはAuが望ましい。特に、重量を考慮するとAlが最も好適である。
【0037】
第2電極7は、高周波マグネトロンスパッタ法等の気相成膜法などにより形成できる。また、その厚みは周波数への影響を小さくし、導電性を確保するために、20〜300nmの範囲とすることが望ましい。特に、電気抵抗と質量負荷効果を考慮すると、50〜200nmが望ましい。
【0038】
なお、圧電体5との密着性を向上するために、5〜50nm、特に10〜30nmの厚みで、Tiなどの薄膜を圧電体5と第2電極7との間に形成しても差し支えない。
【0039】
以上のように構成された本発明の圧電共振子では、中間層として酸化チタンを用いることにより、剥離や膨れの問題を生じること無く共振子やフィルタを形成できる。これにより、強度、音響特性に優れた窒化珪素膜を支持体とし、圧電性の大きなPb系ペロブスカイト材料を用いてQ値を高くできる。したがって、製品の不良が少なく、信頼性が高く、高周波に対応した小型の圧電共振子の実現が可能となる。
【0040】
図2は本発明の他の例を示すものであり、基体11上に支持膜12が形成され、この支持膜12の上面に、中間層13が形成され、この中間層13の上面に、第1電極14、第1圧電体15a、圧電体の分極用に中間電極16、第2圧電体15bおよび第2電極17が順次設けられている。
【0041】
また、第1電極14および第2電極17が圧電体15aおよび15bを挟持して振動体18が形成されている。また、支持膜12の振動体18形成面の反対側には、振動空間Aが設けられている。
【0042】
さらに、圧電体15aおよび15bは、強誘電体であることが重要である。したがって、圧電体が強誘電体の場合、分極軸の向きは分極用電極を用いて容易に逆向きにできるため、分極方向の異なる圧電体を積層させることにより、各圧電体に半波長の定在波を固定させることができる。例えば、圧電体15aおよび15bは、図2に示した矢印のように、互いに逆向きの分極方向を有しており、これにより、圧電体が同じ厚みでも、分極して逆向きにすることによって、さらに高い周波数を実現できる。
【0043】
なお、中間電極16は、付着強度の点でAl、PtまたはAuが望ましい。特に、圧電体膜形成の容易さの点で、PtまたはAuが好ましい。また、中間電極16の厚みは、共振周波数への影響を小さくするとともに、導電性を確保するために、10〜300nmの範囲とすることが望ましい。また、電気抵抗と質量負荷効果を考慮すると、特に50〜150nmが望ましい。
【0044】
なお、電極材料と圧電体材料との密着性を向上するために、5〜50nm、特に5〜30nmの厚みで、Tiなどの中間層を電極材料と圧電材料との間に形成しても差し支えない。
【0045】
【実施例】
実施例1
図1に示す圧電共振子を作製した。まず、減圧CVD法により厚み100μmの窒化珪素膜(以後SN膜という)を両面に形成したSi基板の一方の表面に、ECRスパッタ法によりSN膜またはRFスパッタ法により酸化珪素を作製し、支持膜とした。支持膜2の厚みを表1に示した。
【0046】
次に、DCスパッタ法により、支持膜上に中間層3としてTi層を150℃で形成した。700℃に加熱した炉中に投入し、10分間大気中酸化処理を施し、180nmの厚みの酸化チタン層を形成した。酸化チタン層の厚みは、Ti層の厚みにより制御した。酸化チタン層の厚みは、Ti層厚みの約2倍であった。
【0047】
また、一部の試料では、酸化チタンの代わりに酸化珪素(SiO2)を形成した。すなわち、RFマグネトロンスパッタ法により、SiO2ターゲットを用いて作製した。作製条件は、5%の酸素を含有したArガスをスパッタガスとして導入し、RFパワー300W、100℃で成膜した。中間層3の厚みを表1に示した。
【0048】
さらに、酸化チタンまたは酸化珪素上にRFマグネトロンスパッタ法により300℃で第1電極としてTi層を形成し、続いてその上にAu層を成膜した。それぞれ、RFパワーは300Wと100Wであった。各層の厚みを表1に示した。
【0049】
次に、フォトリソグラフ法と化学的エッチング法により、Au層との電極のパターン加工を行った。Au層のエッチングはシアン化カリウム溶液を用いた。エッチングは室温で行った。エッチング時間は約25秒である。なお、Ti層は、その上に形成する圧電体形成時に酸化され、絶縁体となるため、エッチング加工は行わない。
【0050】
そして、Auをパターン加工した基板上にZnO膜またはPb系ペロブスカイト膜からなる圧電体5を形成した。まず、ZnO膜は、ZnO焼結体をターゲットとし、RFスパッタ法により作製した。また、Pb系ペロブスカイト膜をゾルゲル法により成膜した。
【0051】
Pb系ペロブスカイトとしてPZTと(Pb,La)TiO3(PLT)を作製した。まず、1M濃度の前駆体溶液を作製した。組成比は、PZTではPb:Zr:Ti=1.10:0.53:0.47、PLTではPb:La:Ti=0.90:0.10:1.0である。
【0052】
アルコール溶媒にアルコキシド原料及び2−メトキシエタノール(CH3OC2H5OH)を用いた。スピンコート法(3000rpm、30秒)により室温、大気中で前駆体溶液を基板に塗布し、360℃(PZT膜)もしくは300℃(PLT)に加熱したホットプレートを用いて熱処理しゲル膜を作製した。溶液塗布乾燥・熱処理を6回繰返した後、炉により680℃(PZT)もしくは550℃(PLT)で10分間焼成した。この圧電体5の厚みを表1に示した。
【0053】
さらに、フォトリソグラフ法と化学的エッチング法により、PZT膜のパターン加工を行った。レジスト加工後、ふっ硝酸を用いて室温でエッチングした。
【0054】
次に、リフトオフ法によりAl上部電極パターンを形成した。まず、ネガレジストパターンを形成した。次に、RFスパッタ法によりAl膜を基板温度20℃で成膜した。RFパワー、成膜時間は300Wで4分間である。次に、アセトン中に浸漬し、レジスト溶解により、Alパターンを形成した。
【0055】
最後に、パターン形成面と反対の面に減圧CVDで形成した窒化珪素膜をフォトレジスト法とRIEを用いてパターニングし、マスクパターンを形成した。その後、専用治具に試料をセットし、43重量%濃度のKOH溶液に投入し、KOH溶液によりSi基板をエッチング除去し、基体に振動空間を形成した。条件は、68℃の溶液を用いて17時間エッチングである。
【0056】
以上の工程により、裏面のSiを除去し振動空間を設けたパターニングされた振動体からなる図1の共振子を作製した。
【0057】
作製した共振子は2つの共振子が直列接続した構造と等価である。フィルタ構成を踏まえて、配線による電気的接続構造の共振子とした。
【0058】
得られた共振子は、まず、強誘電体薄膜評価装置(Radient Technologies Inc.製RT6000S)により分極電界履歴曲線を測定し、電気的絶縁性とショートの評価を行った。そして、Al上部電極とAu下部電極間に10Vの直流電圧を10秒間印加し、圧電体の分極処理を行った。
【0059】
圧電共振特性は、共振子構造についてSパラメータS11の測定により行った。RFネットワークアナライザHP8719C(ヒューレットパッカード社製)と、RFマイクロプローブを用い、S11の周波数特性を測定する事により、共振周波数と***振周波数を評価した。また、共振周波数と***振周波数との差を、周波数幅とした。
【0060】
不良率は3インチ基板に200個のパターンを形成し、その内から任意の20個を選び出し、パターンの絶縁不良率を測定した。また、共振周波数は絶縁性が確保できた共振子の中で任意の5個について測定し、平均値を算出した。表1に結果を示す。
【0061】
【表1】
【0062】
本発明の試料No.1〜23は、不良率が35%以下、共振周波数1.46GHz以上、周波数幅が55MHz以上であった。
【0063】
一方、中間層として酸化チタンを形成していない本発明の範囲外の試料No.24は、剥離が発生した。また、支持膜に窒化珪素の代わりに酸化珪素を形成した本発明の範囲外の試料No.25は、不良率が35%、共振周波数2.45GHzであったが、周波数幅が40MHzと小さかった。
【0064】
さらに、中間層として酸化珪素を設けた本発明の範囲外の試料No.26は、不良率が55%、共振周波数2.71GHz、周波数幅が30MHzであった。また、圧電体に酸化亜鉛を用いた本発明の範囲外の試料No.27は、不良率が5%、共振周波数3.62GHzであったが、周波数幅が50MHzと小さかった。
実施例2
図2に示す圧電共振子を作製した。第1圧電体15aの成膜までは実施例1と同様である。
【0065】
次に、DCスパッタ法により、10nm膜厚のTi層、続いてAu中間電極16を成膜した。基板温度250℃、DCパワーは1kWである。フォトリソグラフ法と化学的エッチング法により、Au中間電極16のパターン加工を行った。
【0066】
その上に、第2圧電体15bをゾルゲル法により形成した。形成条件は、第1圧電体15aと同様である。
【0067】
次に、第2圧電体15bのパターン加工を、実施例1と同様の条件で行った。第2圧電体15bのエッチングを行った後、第1圧電体15aのエッチングを行った。なお、中間電極と下部電極が同じAuであるため、レジストにより中間電極パターンを保護してエッチングを行った。条件は第2圧電体15bと同様である。
【0068】
次に、第2電極17の形成以降は、実施例1と同様にして行い、圧電共振子を作製した。分極処理および評価方法は、実施例1と同様に行った。結果を表2に示す。
【0069】
【表2】
【0070】
本発明の試料No.28〜39は、不良率が35%以下、共振周波数2.65GHz以上、周波数幅が65MHz以上であった。
【0071】
【発明の効果】
本発明の圧電共振子は支持膜に窒化珪素を用い、中間層に酸化チタン、圧電体にPbZrTiO3系セラミックスまたはPbTiO3系セラミックスを用いることにより、支持膜上に中間層を介して圧電体を形成しても密着性が良好となり、その結果、製品不良率が低下し、信頼性の高い、高周波に対応した圧電共振子が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の圧電共振子を示すもので、(a)は圧電共振子の一部の断面図、(b)は圧電共振子の斜視図である。
【図2】本発明の他の圧電共振子の断面図である。
【図3】従来の圧電共振子の断面図である。
【図4】従来の他の圧電共振子の断面図である。
【符号の説明】
1・・・基体
2・・・支持膜
3・・・中間層
4・・・第1電極
5・・・圧電体
7・・・第2電極
8・・・振動体
A・・・振動空間
Claims (4)
- 振動空間を有する基体と、該基体表面に形成され、前記振動空間を被覆してなる支持膜と、該支持膜上に形成された中間層と、該中間層上に形成され、かつ一対の電極で挟持された圧電体からなる振動体とを具備するとともに、前記振動体の前記圧電体が、前記振動体の前記支持膜側に形成された前記電極のまわりの前記中間層上にも形成されており、前記支持膜が窒化珪素、前記中間層が酸化チタン、前記圧電体がPbZrTiO3系セラミックスまたはPbTiO3系セラミックスからなることを特徴とする圧電共振子。
- 前記振動体の前記支持膜側に形成された前記電極が、前記支持膜上に形成されたTi層と該Ti層上に形成されたAu層との積層体であることを特徴とする請求項1に記載の圧電共振子。
- 前記中間層の厚みが10〜300nmであることを特徴とする請求項1または2に記載の圧電共振子。
- 前記支持膜の厚みが0.3〜3μmであることを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれかに記載の圧電共振子。
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