JP4470451B2 - 電気化学調光装置の製造方法及び高分子電解質の製造方法 - Google Patents

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本発明は、電気化学的な酸化還元反応によって画像情報の表示を行う電気化学表示装置等として好適な電気化学調光装置及び高分子電解質に関するものである。
近年、ネットワークの普及につれ、これまで印刷物の形状で配布されていた文書類が、いわゆる電子書類として配信されるようになってきた。さらに、書籍や雑誌なども、いわゆる電子出版の形で提供される場合が多くなりつつある。
これらの情報を閲覧するために一般に行われているのは、コンピュータのCRT(Cathode Ray Tube)又は液晶ディスプレイの画像に表示させて読むことである。しかし、これらの発光性ディスプレイを見る作業は、人間工学的理由から、生理的に読む人に疲労を生じさせ易く、長時間の読書には適さないことが指摘されている。また、利用できる場所がコンピュータの設置場所に限られるという難点もある。
最近、小型コンピュータの普及に伴って携帯型のディスプレイが開発されている。これを用いれば、利用場所の問題は多少緩和されるが、内蔵電池の容量と消費電力との関係で、数時間以上継続して利用することはできない。また、ディスプレイが発光型であると、長時間の作業に適さないことに変わりはない。
また、近年、反射型の液晶ディスプレイも開発されている。これを用いれば、発光型ディスプレイに起因する上記の難点が生じることはなく、しかも、低消費電力で長時間駆動が可能になると予想される。しかし、無表示(白色表示)状態における反射率は30%に過ぎないので、紙上に印刷された物に比べて著しく視認性が悪い。このため、利用者に疲労を生じさせ易く、長時間の利用に適さない。
これらの問題を解決するために、最近、いわゆるペーパーライクディスプレイ、或いは電子ペーパーと呼ばれるものが開発されつつある。これらは、例えば、電気泳動法により着色粒子を電極間で移動させるか、或いは二色性を有する粒子を電場で回転させることなどで発色させている。しかしこれらの方法では、粒子間の隙間が光を吸収してコントラストが悪くなること、また駆動する電圧を100V以上にしなければ、実用上の書き込み速度(1秒以内)が得られないこと等の難点がある。
これらに対して、電気化学的な作用による変色で情報を表示する電気化学表示装置(ECD:Electric Chromic Display、又はEDD:Electro-Deposition Display)は、コントラストの高さという点で電気泳動方式などに比べて優れており、既に調光ガラスや時計用ディスプレイに実用化されている。しかし、調光ガラスや時計用ディスプレイに用いられる電気化学表示装置にはマトリクス駆動の機能がなく、そのままでは電子ペーパーのディスプレイ等の用途には適用できない。また、一般的に黒色の品位が悪く、反射率が低いものにとどまっている。特公平4−73767号公報には、マトリクス駆動装置が開示されているが、電気化学表示装置についての具体的な記述はない。
また、調光ガラスや時計用ディスプレイに実用化されているような電気化学表示装置では、黒色の部分を形成するために、有機材料が使用されている。有機材料は耐光性に乏しいため、電子ペーパーのディスプレイのように、太陽光や室内光などの光に晒され続ける用途に用いると、長時間使用した場合には退色して黒色濃度が低下するという問題点が生じる。
本出願人は、上記したような技術的な問題点を解決するものとして、電気化学的な酸化還元反応によって色の変化を行う色可変材料として銀イオン等の金属イオンを含むヨウ化銀等を用い、これを溶解する材料として白く着色され、またヨウ化リチウム等の支持電解質が含有されてなる高分子電解質を用い、マトリクス駆動が可能であり、コントラスト及び黒色濃度を高くすることができる電気化学表示素子及び電気化学表示装置を提案した(後述の特許文献1参照。)。
特許文献1の電気化学表示素子によれば、高分子電解質中に二酸化チタン等の着色材料が分散されており、この着色材料によって高分子電解質が白く着色されている。そして、二酸化チタン等の着色材料を用いて高分子電解質を白色化することにより、高いコントラスト及び黒色濃度を得ることができる。
特開2002−258327号公報(第7〜12頁、図3、4及び8〜12)
しかしながら、上記の特許文献1の電気化学表示素子は、電極上に析出した銀等の色可変材料を溶解させる時、即ち色可変材料の酸化反応時に、高分子電解質中のアニオン種であるヨウ素の酸化反応が起きることがある。例えば、色可変材料としてヨウ化銀、支持電解質としてヨウ化リチウムを用い、高分子電解質中にヨウ素イオンが含有される場合、色可変材料の溶解反応後、過消去状態になると
2I-→I2+2e-
で示される反応によってヨウ素が生成される。
上記したような反応によってヨウ素が発生した場合、同電極で銀の析出反応(還元反応)を起こそうとしても、電流の一部がヨウ素の還元反応(I2+2e-→2I-)に消費されてしまい、所期量の銀が析出されず、表示特性的には書き込み濃度が薄くなる。
また、析出した銀の周囲に酸化性の強いヨウ素が存在した場合、析出した銀がヨウ素によって酸化され、下記の反応式
2Ag+I2→2Ag++2I-
によって銀が溶出してしまう。即ち、この現象はメモリー性の劣化を意味する。
ここで、銀電位に対して、約+0.8V以下で駆動させることによって、問題となるヨウ素が発生しないようにすることはできる。しかしながら、その場合は応答時間が約2秒近くにまで遅くなってしまう。従って、応答時間を例えば0.2秒以内にする場合、銀電位に対して+2.0V以上にする必要があり、ヨウ素の発生をゼロにすることはできない。
本発明は、上述したような問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、例えば、表示させるための入力操作を一度行えば、次に別の表示状態にするための入力操作を行うまで、その表示状態を維持することができる表示メモリー性に優れた、即ちデバイスとしての低消費電力化を図ることができる電気化学調光装置、及びこの電気化学調光装置に好適に用いられる高分子電解質を提供することにある。
即ち、本発明は、電気化学的な還元又は酸化及びこれに伴う析出又は溶解によって変色又は消色する色可変材料と、電解質と、高分子化合物とを含有する高分子電解質層が、第1極と第2極との間に挟持されている電気化学調光装置において、前記色可変材料の少なくとも一部と前記電解質の少なくとも一部とが、互いに異なるハロゲンをアニオン種としていることを特徴とする、電気化学調光装置に係るものである。
また、電気化学的な還元又は酸化及びこれに伴う析出又は溶解によって変色又は消色する色可変材料と、電解質と、高分子化合物とを含有し、前記色可変材料の少なくとも一部と前記電解質の少なくとも一部とが、互いに異なるハロゲンをアニオン種としている、高分子電解質に係るものである。
ここで、本発明における上記の「高分子電解質」とは、前記電解質並びに溶剤を含む高分子材料のことを意味する。
本発明によれば、前記色可変材料の少なくとも一部と前記電解質の少なくとも一部とが、互いに異なるハロゲンをアニオン種としているので、上記した従来例のように、アニオン種としてヨウ素のみを用いた場合に比べて、色可変材料の溶解反応後、過消去状態におけるヨウ素の発生量を大幅に低減することができる。
これにより、前記色可変材料を析出させる際に、従来例のように電流の一部がヨウ素の還元反応に消費されるのを低減することができるので、所期量の色可変材料を容易に析出させることができ、デバイスとしての表示特性の向上を図ることができる。また、析出した色可変材料がヨウ素によって酸化されて溶出するのを低減することができるので、デバイスのメモリー特性の向上を図ることができる。さらに、互いに異なるハロゲンをアニオン種とすることにより、特に低温下での応答特性の向上を図ることが可能となる。
本発明において、前記色可変材料が銀イオンを含有し、前記電解質がリチウムイオンを含有することが好ましい。銀が好適である理由は、可逆的な反応を容易に進めることができ、かつ析出時の変色度が高いためである。また、リチウムは前記高分子電解質層に高い導電性を付与することができる。
また、前記互いに異なるハロゲンとしては特に限定されるものではないが、前記互いに異なるハロゲンの一方がヨウ素であることが望ましく、更には、前記互いに異なるハロゲンの一方がヨウ素、他方が臭素からなることが好ましい。ヨウ素が好適である理由は、他のハロゲンよりも銀イオンと強く結合し、安定な錯体を形成するため、即ち、耐光性が良好なためである。応答時間を短くするためには、過酸化状態によるヨウ素の発生が避けられない。そこで、ヨウ素よりも酸化電位が貴な電位にある臭素をイオン種として含ませることにより、ヨウ素の発生量を効果的に抑制することができる。例えば、前記色可変材料としてAgBrを用い、かつ前記電解質としてLiBrを用いたような臭素イオン種からなるような系では、反応の可逆性が悪く、使用に耐えない。
具体的には、前記色可変材料がAgIであり、かつ前記電解質がLiBrであることが好ましい。或いは、前記色可変材料がAgBrであり、かつ前記電解質がLiIであることが好ましい。さらに、前記色可変材料がAgI及びAgBrからなり、前記電解質がLiI及びLiBrからなっていてもよい。
前記銀イオンの濃度は0.5M以上、2.0M以下であることが好ましく、これによってメモリー特性及び応答特性(特に低温化)をより向上することができる。上記の範囲のうち、より好ましくは0.75M以上、1.0M以下であり、これによってメモリー特性及び応答特性(特に低温化)を一層効果的に向上することができる。
また、前記リチウムイオンの濃度が前記銀イオンの濃度の1.3倍〜1.5倍(モル比)であることが好ましい。
本発明に基づく電気化学調光装置は、従来例によるデバイスと比べて銀イオン濃度が高い。一般的なめっきなどの技術手法では、より緻密にめっきさせるためには、(1)めっき浴の温度を上げる、(2)塩の濃度を上げる、(3)適した添加剤(光沢剤、応力防止剤等)を加える、(4)浴中のイオン分布が均一になるように拡散しながら行う、(5)低電流密度でゆっくりとめっきする、といった手法がとられる。本発明の電気化学調光装置も可逆的なめっき反応を用いていることに他ならず、上記の(1)〜(5)の手法が適用できるはずである。しかしながら、調光装置として適用可能なのは(2)又は(3)である。そこで、本発明者が鋭意検討したところ、上記の(2)の手法によって、即ち塩の高濃度化によって特に添加剤を用いなくても、可逆的なめっき反応をより効果的に行うことができることを見出した。また、塩の高濃度化によって、銀の析出溶解反応の不可逆性によるデンドライト発生を抑制できると考えられ、これによればデバイスの長寿命化も可能となる。
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態である電気化学表示装置について詳細に説明する。この電気化学表示装置は、エレクトロデポジション表示素子を複数個、面状に配列してなる構造を有する。
第1の実施の形態
図1は、電気化学表示装置として構成された本発明に基づく電気化学調光装置の一例の概略斜視図であり、図2は、その概略断面図である。
図1に示すように、この電気化学表示装置では、一方の基板である透明電極支持体6の上に、共通透明電極5が形成されている。また、他方の基板である支持体3の上に第2電極1がマトリクス状に分割されて形成され、分離された各第2電極1が1画素を構成するようになっている。薄膜トランジスタ(TFT)2は、各画素を独立して駆動できるように各第2電極1毎に設けられる。
透明電極支持体6としては、石英ガラス基板、白板ガラス基板などの透明ガラス基板を用いることが可能であるが、これに限定されず、透明な樹脂基板を用いることもできる。例えば、ポリエチレンナフタラートやポリエチレンテレフタラートなどのポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、酢酸セルロースなどのセルロースエステル、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン−コヘキサフルオロプロピレンなどのフッ素系ポリマー、ポリオキシメチレンなどのポリエーテル、ポリアセタール、ポリエチレンやポリプロピレンやメチルペンテンポリマーやポリスチレンなどのポリオレフィン、及びポリイミド−アミドやポリエーテルイミドなどのポリイミド等である。これら合成樹脂を透明電極支持体6として用いる場合には、容易に曲がらない剛性基板状にすることも可能であるが、可撓性を持ったフィルム状の構造体とすることも可能である。
共通透明電極5は透明導電性膜からなる。透明導電性膜としては、酸化インジウム(In23)と酸化スズ(SnO2)との混合物、いわゆるITO(Indium Tin Oxide)膜や酸化スズ(SnO2)又は酸化インジウム(In23)をコーティングした膜を用いることが好ましい。これらITO膜や酸化スズ(SnO2)又は酸化インジウム(In23)をコーティングした膜にスズ(Sn)やアンチモン(Sb)をドーピングしたものでもよく、酸化マグネシウム(MgO)や酸化亜鉛(ZnO)などを用いることも可能である。
図1に示すように、共通透明電極5と対向する側には、支持体3の上に金属膜などの電気の良導体からなる膜がマトリクス状に成膜され、第2電極1が設けられる。この第2電極1は、電気化学的に安定な金属であれば何でもよいが、好ましいのは白金、クロム、アルミニウム、コバルト、及びパラジウムなどである。更に主反応に用いる金属を予め或いは随時十分に補うことができれば、カーボンを第2電極1として使用可能である。カーボンを電極上に担持させる方法として、樹脂を用いてインク化し、支持体3の上に印刷する方法がある。カーボンを使用することで、電極の低価格化を図ることができる。
支持体3としては、透明である必要はなく、第2電極1や高分子電解質層4を確実に保持できる基板やフィルムなどを用いることができ、材料として、石英ガラス板、白板ガラス板などのガラス基板、ガラスエポキシ基板、セラミック基板、紙基板、及び木材基板を用いることが可能である。また、これらに限定されず、使用可能な合成樹脂基板として、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート等のエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、酢酸セルロースなどのセルロースエステル、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン−コヘキサフルオロプロピレンなどのフッ素系ポリマー、ポリオキシメチレンなどのポリエーテル、ポリアセタール、ポリエチレンやポリプロピレンやメチルペンテンポリマーやポリスチレンなどのポリオレフィン、及びポリイミド−アミドやポリエーテルイミドなどのポリイミドを例として挙げることができる。これら合成樹脂を支持体3として用いる場合には、可撓性を持ったフィルム状の構造体とすることも可能であるが、容易に曲がらないような剛性基板状にすることも可能である。
各画素に形成されたTFT2は、(ここでは図示しないが)支持体3の上に設けられた配線によって選択され、対応する第2電極1を制御する。TFT2は画素間のクロストークを防止するのに極めて有効である。TFT2は例えば第2電極1の一角を占めるように形成されているが、第2電極1がTFT2と積層方向で重なる構造であってもよく、この場合は面積をより有効に使うことが可能となる。また、TFT2を共通透明電極5側に設けてもよい。
後述するように、配線は、各行のTFT2を選択する各ゲート線と、各列のTFT2にデータ信号を送り込む各データ線とで構成されている。各TFT2のゲート電極はゲート線に接続され、ソース又はドレイン電極の一方はデータ線に接続され、残る他方は第2電極1に接続される。第2電極1は、対向する共通透明電極5との間にキャパシタを形成していて、共通透明電極5が実質的な接地電位を形成する。ゲート線への信号の印加によって1つの行からTFT2が選択されONになると、ONになったTFT2を通じて各データ線から各画素に対応するキャパシタを充放電する電流が流れ、データの書き込みと消去が行われる。なお、TFT2以外の駆動素子は、平面ディスプレイに一般的に用いられているマトリクス駆動回路であり、支持体3上に形成できるものであれば何でもよく、特に限定されるものはない。
図1に示すように、高分子電解質層4は、共通透明電極5と第2電極1に挟持されて保持される。高分子電解質層4は、高分子材料を母体として、少なくとも、金属イオンを含む色可変材料、溶剤、支持電解質、及びこの層を着色させる着色材料を含有する。また、前記色可変材料の少なくとも一部と前記支持電解質の少なくとも一部とが、互いに異なるハロゲンをアニオン種としている。
この電気化学表示装置では、表示情報の書き込みは、色可変材料の構成成分である金属イオンが共通透明電極5の上で還元され、金属の微粒子が共通透明電極5の上に析出することで行われる。この場合、素子は支持体6側から観察でき、その開口率も十分となる。逆に、表示情報の消去は、析出していた金属が酸化され、共通透明電極5の上から溶出することによって行われる。即ち、電気化学的な析出、いわゆる電解めっきとその逆反応である溶出が可逆的に行われて、表示情報の書き込みと消去が行われる。
このような電気化学的な還元又は酸化とこれに伴う析出又は溶解とによって変色又は消色を行うことのできる前記金属イオンとしては特に限定されるものではないが、銀イオンを含むことが好ましい。銀が好適である理由は、可逆的な反応を容易に進めることができ、かつ析出時の変色度が高いためである。
例えば、書き込み時には、銀イオンは、次の反応式
Ag++e-→Ag
で還元され、図2に示すように、共通透明電極5上に銀(Ag)の微粒子からなる黒色の析出物8を形成する。消色時には、析出した銀8が逆反応で酸化され、無色の銀イオン(Ag+)に変化して再び溶解する。
高分子電解質層4に含まれる前記支持電解質としては、リチウムイオンを含有することが好ましい。リチウムは高分子電解質層4に高い導電性を付与することができる。
また、前記互いに異なるハロゲンとしては特に限定されるものではないが、前記互いに異なるハロゲンの一方がヨウ素であることが望ましく、更には、前記互いに異なるハロゲンの一方がヨウ素、他方が臭素からなることが好ましい。ヨウ素が好適である理由は、他のハロゲンよりも銀イオンと強く結合し、安定な錯体を形成するため、即ち、耐光性が良好なためである。応答時間を短くするためには、過酸化状態によるヨウ素の発生が避けられない。そこで、ヨウ素よりも酸化電位が貴な電位にある臭素をイオン種として含ませることにより、ヨウ素の発生量を効果的に抑制することができる。例えば、前記色可変材料としてAgBrを用い、かつ前記電解質としてLiBrを用いた臭素イオン種からなるような系では、反応の可逆性が悪く、使用に耐えない。
具体的には、前記色可変材料がAgIであり、かつ前記電解質がLiBrであることが好ましい。或いは、前記色可変材料がAgBrであり、かつ前記電解質がLiIであることが好ましい。さらに、前記色可変材料がAgI及びAgBrからなり、前記電解質がLiI及びLiBrからなっていてもよい。
また、前記色可変材料が銀イオン以外の金属イオン、具体的には、ビスマス、銅、鉄、クロム、ニッケル及びカドミウムからなる群から選ばれた少なくとも1種の金属イオンを含んでいてもよい。
さらに、前記支持電解質としては、その他に、リチウム塩、例えばLiCl、LiBr、LiI、LiBF4、LiClO4、LiPF6、LiCF3SO3等、カリウム塩、例えばKCl、KI、KBr等、ナトリウム塩、例えばNaCl、NaI、NaBr、或いはテトラアルキルアンモニウム、ほうフッ化テトラブチルアンモニウム、過塩素酸テトラブチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウムハライド等を含んでいても構わない。上述の4級アンモニウム塩のアルキル鎖長は不揃いでもよい。
前記銀イオンの濃度は0.5M以上、2.0M以下であることが好ましく、これによってメモリー特性及び応答特性(特に低温化)をより向上することができる。上記の範囲のうち、より好ましくは0.75M以上、1.0M以下であり、これによってメモリー特性及び応答特性(特に低温化)を一層効果的に向上することができる。
また、前記リチウムイオンの濃度が前記銀イオンの濃度の1.3倍〜1.5倍(モル比)であることが好ましい。
本発明に基づく電気化学調光装置は、従来例によるデバイスと比べて銀イオン濃度が高い。一般的なめっきなどの技術手法では、より緻密にめっきさせるためには、(1)めっき浴の温度を上げる、(2)塩の濃度を上げる、(3)適した添加剤(光沢剤、応力防止剤等)を加える、(4)浴中のイオン分布が均一になるように拡散しながら行う、(5)低電流密度でゆっくりとめっきする、といった手法がとられる。本発明の電気化学調光装置も可逆的なめっき反応を用いていることに他ならず、上記の(1)〜(5)の手法が適用できるはずである。しかしながら、調光装置として適用可能なのは(2)又は(3)である。そこで、本発明者が鋭意検討したところ、上記の(2)の手法によって、即ち塩の高濃度化によって特に添加剤を用いなくても、可逆的なめっき反応をより効果的に行うことができることを見出した。また、塩の高濃度化によって、銀の析出溶解反応の不可逆性によるデンドライト発生を抑制できると考えられ、これによればデバイスの長寿命化も可能となる。
金属イオンを含む高分子電解質層4を構成する高分子電解質に用いるマトリクス(母材)高分子材料としては、骨格ユニットがそれぞれ−(C−C−O)n−、−(C−C−N)n−、若しくは−(C−C−S)n−で表されるポリエチレンオキサイド、ポリエチレンイミン、ポリエチレンスルフィドが挙げられる。これらを主鎖構造として、枝分があってもよい。また、ポリメチルメタクリレート、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデンクロライト、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリビニルブチラール等も好ましい。
前記高分子材料は、開始剤との組合せで架橋されていてもよく、架橋方法は光架橋でも熱架橋でもよい。また、前記開始剤とモノマーを含有させたものを光又は熱で重合することで前記マトリクス(母材)高分子材料とすることもできる。
高分子電解質層4を形成する際には、前記マトリクス高分子材料に所要の溶剤を加えるのが好ましい。好ましい前記溶剤としては、マトリクスポリマーが親水性の場合には、水、エチルアルコール、イソプロピルアルコール及びこれらの混合物等が好ましく、疎水性の場合には、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、アセトニトリル、スルフォラン、ジメトキシエタン、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ジメチルフォルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、n−メチルピロリドン、ニトロメタン、ピリジン、ジピリジル及びこれらの混合物が好ましい。
また、高分子電解質層4にはコントラストを向上させるために着色剤が含有される。上述のように金属イオンの発色が黒色の場合には、背景色としては白色の隠蔽性の高い材料が導入される。このような材料として、例えば、着色用の白色粒子が用いられ、着色用の白色粒子としては二酸化チタン、炭酸カルシウム、シリカ、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム等を使用することができる。また、着色のための色素を用いることもできる。
この着色剤を混ぜる割合としては、無機粒子による場合、約1〜20重量%が好ましく、より好ましくは約1〜10重量%であり、さらに好ましくは約5〜10重量%である。また、色素系の着色剤を混ぜる場合は10重量%でもよい。これは色素の発色効率は無機粒子に比べて遥かに高いためである。従って、電気化学的に安定した色素であれば、少ない量でもコントラストを出すことができる。通常は、色素として油溶性染料が好ましい。
また、高分子電解質層4は必要に応じて単独又は複数の添加剤を使用してもよい。前記添加剤は、前記金属イオンの析出を制御するものであり、前記添加剤の種類は目的を達成するものであればいずれも使用することができる。
さらに、高分子電解質層4がゲル化されていてもよい。前記ゲル化の方法としては、UV照射や加熱によって高分子電解質層4中の前記樹脂を硬化させる方法、物理的に流動性を低下させる方法等、一般的に用いられている手法のいずれも適用可能である。
高分子電解質層4の膜厚は、5μm〜200μmであることが好ましく、より好ましくは5μm〜150μmであり、更に好ましくは10μm〜150μmである。膜厚が薄いほうが電極間の抵抗が小さくなるので変色、消色時間の短縮や消費電力の低下につながり好ましい。しかしながら、5μm未満になると、機械的強度が低下して、ピンホールや亀裂が生じ易いので好ましくない。
この電気化学表示装置には、第2電極1及びTFT2を有する支持体3と、高分子電解質層4と、共通透明電極5を有する透明電極支持体6とを保持するために、図2に示すように、封着部材7が周囲に取り付けられる。この封着部材7によって、両支持体3及び6、そしてこれらの間に配設された第2電極1、TFT2、高分子電解質層4、及び共通透明電極5が確実に保持される。
上述の構造によれば、本実施の形態の電気化学表示装置においては、TFT2を用いてマトリクス駆動が可能であり、高分子電解質層4に含有された金属イオンから生じる黒色の金属析出物及び背景を形成する白色の無機顔料によって、黒色濃度及びコントラストの高い表示を実現することができる。
また、前記色可変材料の少なくとも一部と前記支持電解質の少なくとも一部とが、互いに異なるハロゲンをアニオン種としているので、上記した従来例のように、アニオン種としてヨウ素のみを用いた場合に比べて、色可変材料の溶解反応後の過消去状態におけるヨウ素の発生量を大幅に低減することができる。
これにより、前記色可変材料を析出させる際に、従来例のように電流の一部がヨウ素の還元反応に消費されるのを低減することができるので、所期量の色可変材料を容易に析出させることができ、デバイスとしての表示特性の向上を図ることができる。また、析出した色可変材料がヨウ素によって酸化されて溶出するのを低減することができるので、デバイスのメモリー特性の向上を図ることができる。さらに、互いに異なるハロゲンをアニオン種とすることにより、特に低温下での応答特性の向上を図ることが可能となる。
第2の実施の形態
本実施の形態は、上記した第1の実施の形態の電気化学表示装置の製造方法に関する。
図3及び図4は、電気化学表示装置としての本発明に基づく電気化学調光装置を製造する方法の一例を工程順に示す概略断面図である。
まず、図3(a)に示すように、ポリエチレンテレフタラートフィルム等からなる支持体3上に、所望の厚さをもつパラジウム膜等からなる第2電極1及びTFT(薄膜トランジスタ)2を画素毎にパターン形成し、マトリクス状に分割されたパラジウム膜等の各第2電極1が1画素を構成するようにする。TFT2は公知の半導体製造技術を用いて形成することができ、各画素を独立して駆動できるように画素毎に形成する。
次に、図3(b)に示すように、高分子電解質層4を形成する。予め、ジメチルスルホキシド等の溶剤に前記色可変材料と前記支持電解質を溶解させ、これにポリエチレンオキシド等の高分子材料、白色の無機微粒子として二酸化チタン等の前記着色剤、及び架橋剤を加えて、均一に分散させる。この混合物を、第2電極1とTFT2を形成した支持体3の上に塗布し、高分子電解質層4を形成する。前記塗布方法としては、ドクターブレード、バーコーター、スクリーン印刷、その他の公知の方法を用いることができる。
一方、これと並行して、図3(c)に示すように、ガラス基板等の透明電極支持体6上に、ITO膜などの共通透明電極5を形成する。ITO膜は蒸着又はスパッタリングなどの方法によって形成する。共通透明電極5形成後、ただちに透明電極支持体6は、共通透明電極5が未硬化の高分子電解質層4に密着するように支持体3に圧着され、図4(d)に示すように貼り合わされる。
この貼り合わせ後、透明電極支持体6の側から紫外光を照射するか、加熱するかにより、高分子電解質層4で高分子材料間に架橋を形成させ、高分子電解質層4をゲル化する。架橋を行わない場合には、減圧乾燥させてゲル化した高分子電解質層4を支持体3と透明電極支持体6の間に形成する。
そして、貼り合わせの端部に、図4(e)に示すように、封着部材7が取り付けられ、電気化学表示装置としての本発明に基づく電気化学調光装置が完成する。
本実施の形態においては、図示省略したが高分子電解質層4の調製段階で、電解質と共に金属イオンが導入される。従って、比較的に簡単な工程で、高分子電解質層4と前記色可変材料が組み合わされることになり、容易に製造することができる。
また、高分子電解質層4の作製方法として真空貼り合わせ法による例を説明したが、例えば減圧注入により作製することもできる。
第3の実施の形態
本実施の形態による電気化学調光装置は、第3の電極として、前記共通透明電極及び前記第2電極とは独立した電位検知電極が形成される例である。これら電位検知電極はそれぞれ、前記透明電極支持体上の前記共通透明電極及び前記支持体上の前記第2電極と同一の面内に、これらの電極と電気的に絶縁された部材として配設されてなり、前記共通透明電極及び前記第2電極の電位を検知するのに用いられる。
図5は、第2電極1側の平面図である。支持体3上には、画素毎に第2電極1と駆動素子としてのTFT2が形成されており、各画素はマトリクス状に配されている。第2電極1の電位を検知するための電位検知電極11は、各画素の間のスペースに略十字状のパターンで形成されており、その端部(図中黒丸で示す。)は厚さ約1000nmの銀又はアルミニウム電極12となっている。端部をつなぐ線の部分は幅約1μm程度の銀又はアルミニウム線状配線部13とされる。この電位検知電極11は第2電極1と同一の面内に電気的に絶縁された部材として形成されることから、第2電極1の電位を正確にモニターすることができる。したがって、第2電極1で生じている反応を検知できる。電位検知電極11の材質としては、高分子電解質層4中への自然溶出がない安定した金属材料を選ぶことが好ましく、第2電極1と同様な銀、白金、クロム、アルミニウム、コバルト、パラジウム等を選ぶことができる。また、電位検知電極11は第2電極1と同一の面内に同一の材料で形成できるため、電位検知電極11と第2電極1とはパターニングして一緒に形成すればよい。
図6は、共通透明電極5側の平面図である。電位検知電極15は、共通透明電極5が形成されている透明電極支持体6上に、逆π字状のパターンで形成される。この電位検知電極15は、共通透明電極5と同一の面内に電気的に絶縁された部材として形成されることから、共通透明電極5の電位を正確にモニターすることができる。従って、共通透明電極5で生じている反応を検知できる。電位検知電極15の材質としては、高分子電解質層4中への自然溶出がない安定した金属材料を選ぶことが好ましく、第2電極1と同様な銀、白金、クロム、アルミニウム、コバルト、パラジウム等を選ぶことができる。
図7は電位検知電極11を備えた電気化学調光装置の駆動回路を示す構成図である。TFT2と第2電極1からなる画素がマトリクス状に配されており、支持体上には各行の画素を選択するための各ゲート線28と、各列の画素にデータ信号を送り込むための各データ線29及び29aが設けられている。各TFT2のゲート電極はゲート線28に接続され、ソース又はドレイン電極の一方はデータ線29、29aに接続され、残る他方は第2電極1に接続されている。第2電極1は、対向する共通透明電極5との間にキャパシタ9を形成していて、共通透明電極5が実質的な接地電位を形成する。
ゲート線28及びデータ線29と29aに対応して、それぞれ、ゲート線駆動回路24及びデータ線駆動回路23と23aが設けられており、信号制御部22からの信号によって所定のゲート線28及びデータ線29と29aが選択される。即ち、ゲート線28への信号の印加によって1つの行のTFT2が選択されONになると、ONになったTFT2を通じて各データ線29、29aから各画素のキャパシタ9を充放電する電流が流れ、データの書き込みと消去が行われる。信号制御部22には、電位検知電極11が接続されていて、電位検知電極11からの信号によって画素部分の電位をモニターすることができる。電位検知電極11を用いたモニター信号に基づいて、十分な析出や電気化学反応が行われたところでそれ以上の反応を停止させることができる。
以下、実施例に基づいて本発明を具体的に説明する。
実施例1
(表示電極の作製)
厚さ1.5mm、10cm×10cmのガラス基板上に、150μmピッチで平面的に配列されたITO膜を公知の方法により作製した。この基板から公知の方法により駆動回路につながるリード部を形成し、次いで全体を電析槽内に設置した。
(第2電極)
厚さ0.5mmで10cm×10cmの大きさのポリエチレンテレフタレートフィルム上に、スパッタリングによって厚さ3000Åの銀(Ag)膜を150μmピッチで平面的に配列して形成し、またTFTを公知の方法により作製した。
(空セルの作製)
上記のようにして作製したTFT電極上に、中心粒径50μmのガラスビーズを1平方ミリあたり約10個になるように噴霧した後、共通透明電極外周の封止部にUV硬化樹脂をディスペンサーで塗布設置した。このとき、封止部の一部は、後の工程で高分子電解液を注入するための注入口として開口した。そして、共通透明電極と第2電極を位置合わせして貼り合わせ、減圧下でUV照射することで50μmのギャップを均一に保ったまま2つの電極を固定化させた空セルを形成した。
(高分子電解質の調製と注入)
前記色可変材料としてのヨウ化銀(AgI)0.5Mと前記支持電解質としての臭化リチウム(LiI)0.67Mとを(下記表1を参照。)、前記溶剤としてのジメチルスルホキシド/γ−ブチロラクトンの混合溶液(体積比6/4)に溶解した(リチウムイオンの濃度が銀イオンの濃度の約1.3倍(モル比))。また、添加剤としてトリエタノールアミン:クマリン:マルカプトベンゾイミダゾールを2:1:1(g/l)となるように添加した。
次いで、上記に作製した電解液と、高分子材料である分子量20万のポリエチレンオキシドと、白の着色剤である二酸化チタン(TiO2)とを、重量比で電解液/高分子材料/着色剤=5/1/6となるように添加し、これを均一に分散させた。その後、ポリエチレンオキシドに対し2〜5重量%の割合で架橋剤としての過酸化物を添加した。次いで、上記に作製した空セルの中に減圧注入し、注入口を封止した。これを70〜100℃で数分〜10分間加熱架橋させ、高分子電解質をゲル化し、図8に示すようなアクティブマトリックス構造を有する評価用セルを作製した。ここで、可能なら、架橋剤を加えずに重合させてもよい。なお、図9は、上述した電位検知電極としての第3電極35を更に形成してなるアクティブマトリックス構造を有する電気化学調光装置の一例の概略断面図である。
実施例2〜実施例17及び比較例
下記表1に示すように、前記色可変材料及びその濃度と、前記支持電解質及びその濃度を変化させた以外は、実施例1と同様にして各評価用セルを作製した。
Figure 0004470451
応答時間評価(印加電圧並びに温度依存特性)
表示素子を駆動して着色させる際、最低書き込み濃度は光学濃度(OD)=1とした。但し、下記の式(1)により反射率としては10%である。
光学濃度=−log(反射率/100)…式(1)
応答時間は未着色状態から、光学濃度(OD)=1に達するまでの時間と定義した。また、必要電荷量は、OD=1までに要する電荷量(電流値の時間積分量)とした。この必要電荷量は、消費電力のパラメータの一つであり、より小さい値の方がデバイスとしては有利であると考えられる。
図10(a)は比較例の評価用セルについて、温度を変化させた時の印加電圧と応答時間との関係を測定した結果を示すグラフである。図10(b)は比較例の評価用セルについて、温度を変化させた時の印加電圧と必要電荷量との関係を測定した結果を示すグラフである。
また、図11〜13の(a)は実施例2〜5の評価用セルについて、25℃、10℃、−10℃の時の印加電圧と応答時間との関係をそれぞれ示すグラフである。図11〜13の(b)は実施例2〜5の評価用セルについて、25℃、10℃、−10℃の時の印加電圧と必要電荷量との関係をそれぞれ示すグラフである。
図11〜図13より明らかなように、電気化学表示装置としての本発明に基づく電気化学調光装置は、前記色可変材料の少なくとも一部と前記電解質の少なくとも一部とが、互いに異なるハロゲンをアニオン種としているので、図10に示す比較例に比べ、必要電荷量は若干増大したが、特に低温化における応答時間が速くなった。但し、低温にするほど、塩の濃度が濃くなるに伴って応答時間が遅くなる割合が増した。
実施例2〜5の組成について、塩の濃度が濃くなるほど、同一印加電圧での応答時間が遅くなり、また必要電荷量も増大した。
また、印加電圧が2〜4Vの領域では印加電圧が高くなるほど、応答時間が速くなった。ここで、比較例でも見られるように、ある一定の電圧以上になると応答時間が急に遅くなってしまう可能性が大きいが、本発明によれば、その境界の電圧値が比較例に比べて高いことが分かる。但し、印加電圧が高いほど、繰り返しサイクル特性が悪くなり易いため、実質的にはあまり高い電圧をかけるのは不利と考えられる。
次に、実施例2〜5、実施例9〜12、実施例14〜19の各評価用セルについて、印加電圧を3Vとした時の温度と応答時間との関係を測定した。結果を図14〜15に示す。
図14〜15より明らかなように、実施例9〜12及び実施例14〜17の評価用セルはそれぞれ、実施例2〜5のうち塩濃度がほぼ同様の組成であるものとほぼ同じ応答時間の値を示した。これは、図示省略したが必要電荷量についても同様の傾向が見られた。また、実施例3と実施例18及び19とは、仕込み時の塩材料の組成が異なるものであるが、最終的に構成物として含まれる銀イオン、リチウムイオン、ヨウ素イオン、臭素イオンの濃度はいずれも同じであり、この場合の特性はほぼ同じ結果となった。
次に、実施例3の評価用セルに対して、添加剤(トリエタノールアミン/クマリン/メルカプトベンゾイミダゾール)の量を変化させた場合について、温度を変えて(25℃、10℃、−10℃)、印加電圧による応答時間(a)及び必要電荷量(b)の変化を測定した。
具体的には、実施例3は添加剤の量が2:1:1(g/l)(トリエタノールアミン:クマリン:メルカプトベンゾイミダゾール)であったのに対し、実施例20では6:3:3(g/l)とし、実施例21では10:5:5(g/l)とした。結果を図16(25℃)、図17(10℃)、図18(−10℃)にそれぞれ示す。
図16〜18より明らかなように、添加剤の量が多くなるほど、必要電荷量が少なくなる傾向が見られた。但し、温度が高いほど、また印加電圧が高いほどその違いが小さくなった。また、添加剤が多くなるほど、特に温度が高いほどかつ印加電圧が低いほど、僅かではあるが応答時間が遅くなる傾向が見られた。なお、実施例21による10:5:5(g/l)の組成では、長期にわたって電解液を保存したり、或いは−20℃以下の低温保存により、白色の沈殿物が生じ、組成が変化することがあった。以上より、添加剤の濃度を最適な組成に適宜選択することによって、消費電力を低減することができることが分かった。
メモリー特性の評価
表示するに当り、黒表示状態の反射率が8%程度になるよう、150ms幅のDCパルスを印加して書き込みを行った。書き込み波形印加後は、回路を遮断し、開回路状態として、その書き込み濃度が時間と共に薄くなる現象、即ちメモリー性の低下挙動を評価した。なお、書き込み波形を入力した直後の時点での反射率をR1とすると、R1から5%増大するまでの時間を表示メモリー時間と定義した(これは、人間の目として、反射率が10%前後であった状態から徐々に薄くなった場合、薄くなったと感じるのは反射率が5%増加するあたりであることが、視感実験により分かっているためである。)。
光学濃度測定(反射率測定)は、赤色レーザーを表示素子面に対して直角に入力し、そこから20°ずれたところで反射光を検出し、反射率を求めた(拡散反射試験)。
図19(a)は、比較例の評価用セルに対するメモリー性の低下挙動の測定結果である。図19(b)は、実施例1の評価用セルに対するメモリー性の低下挙動の測定結果である。
図19(a)及び(b)より明らかなように、比較例の評価用セルは明らかにサイクル変動が激しく、徐々にメモリー時間が短くなった。これに対し、実施例1の評価用セルは、前記色可変材料の少なくとも一部と前記支持電解質の少なくとも一部とが、互いに異なるハロゲンをアニオン種としているので、比較例に比べて顕著にサイクル変動が小さくなり、またメモリー特性の向上を図ることができた。
次に、実施例2〜4の評価用セルについても上記と同様にしてメモリー性の低下挙動の測定を行った。結果を図20(a)、(b)、(c)にそれぞれ示す。
図20より明らかなように、実施例2〜4の評価用セルは実施例1に比べて塩濃度が高いため、サイクル変動がより安定しているだけではなく、メモリー特性が一層向上した。特に、図20(b)の実施例3は、メモリー時間が10000秒以上(図示しないが減衰曲線から見積もると約15000秒)になり、メモリー時間並びにサイクル安定性において、実施例3が最も優れていると考えられる。
さらに、実施例1〜4、実施例8〜11、実施例13〜16の評価用セルについて、10サイクル目のメモリー時間を図21に示す。なお、実施例1〜4のAgI/LiBrの濃度比は3/4、実施例8〜11のAgI/LiBrの濃度比は3/4、実施例13〜16のAgI/LiBrの濃度比は2/3である。
図21より明らかなように、全体として銀イオンが同濃度である場合は、多少リチウムイオン、ヨウ素イオン、臭素イオンの濃度が異なっていても殆どメモリー時間は変化しないことが分かった。また、実施例1〜4、実施例8〜11、実施例13〜16のうち、仕込み濃度として、銀イオン濃度[Ag+]が特に0.75M以上、1.0M以下のとき、最もメモリー時間が長いことが分かった。
繰り返しサイクル寿命について
上記の各評価結果に基づき、応答速度及びその温度依存性、メモリー時間などを相互的に考え、最も優れた組成である実施例3について、繰り返しサイクル特性を評価した。
図22は、繰り返し波形の概要を示すグラフである。また、図23(a)はサイクル毎の表示特性を示すグラフである。図23(b)は、図23(a)で示した結果の白表示時及び黒表示時のそれぞれの反射率を示すグラフである。
図23より明らかなように、電気化学表示装置としての本発明に基づく電気化学調光装置は、200,000サイクル程度、極めて安定に動作することができた。
以上より明らかなように、電気化学表示装置としての本発明に基づく電気化学調光装置は、前記色可変材料の少なくとも一部と前記電解質の少なくとも一部とが、互いに異なるハロゲンをアニオン種としているので、例えばアニオン種としてヨウ素のみを用いた場合に比べて、色可変材料の溶解反応後、過消去状態におけるヨウ素の発生量を大幅に低減することができた。
これにより、前記色可変材料を析出させる際に、電流の一部がヨウ素の還元反応に消費されるのを低減することができるので、所期量の色可変材料を容易に析出させることができ、デバイスとしての表示特性の向上を図ることができた。また、析出した色可変材料がヨウ素によって酸化されて溶出するのを低減することができるので、デバイスのメモリー特性の向上を図ることができた。さらに、互いに異なるハロゲンをアニオン種とすることにより、特に低温下での応答特性の向上を図ることが可能となった。
以上、本発明を実施の形態及び実施例について説明したが、上述の例は、本発明の技術的思想に基づき種々に変形が可能である。
例えば、各電極を含むセル構成部分の材質、形状等を種々変更してよい。色可変材料は、金属イオンに限ることなく、他の公知の材料を使用することができ、析出物や色可変材料の色も黒以外であってよい。
また、本発明に基づく電気化学調光装置は、電気化学表示装置として構成されるのは勿論のこと、反射又は透過光量の調光機能を生かして、光シャッターや光通信機器等に応用可能である。電気化学表示装置は、表示領域が単一のものでも複数の画素領域に分割されたものでもよく、表示する情報が文字や記号であっても画像であってもよい。また、表示色も、モノカラー、マルチカラー及びフルカラーのいずれでもよく、例えば、トリオ画素の各画素をセルとして分割したものであってもよい。
本発明の実施の形態における、本発明に基づく電気化学調光装置の部分斜視図である。 同、本発明に基づく電気化学調光装置の概略断面図である。 同、電気化学調光装置の製造方法の一例の概略断面図である。 同、電気化学調光装置の製造方法の一例の概略断面図である。 同、本発明に基づく電気化学調光装置の透明画素電極側の平面図である。 同、本発明に基づく電気化学調光装置の共通電極側の平面図である。 同、本発明に基づく電気化学調光装置の回路図である。 同、本発明に基づく一例の電気化学調光装置の概略断面図である。 同、本発明に基づく他の例の電気化学調光装置の概略断面図である。 本発明の実施例による、比較例(アニオン種としてヨウ素イオンのみを使用)の印加電圧と応答時間との関係及び温度依存特性を示すグラフである。 同、25℃のときの印加電圧と応答時間(a)及び必要電荷量(b)との関係を示すグラフである。 同、10℃のときの印加電圧と応答時間(a)及び必要電荷量(b)との関係を示すグラフである。 同、−10℃のときの印加電圧と応答時間(a)及び必要電荷量(b)との関係を示すグラフである。 同、温度と応答時間との関係を示すグラフである。 同、温度と応答時間との関係を示すグラフである。 同、25℃のときの印加電圧と応答時間(a)及び必要電荷量(b)との関係を示すグラフである。 同、10℃のときの印加電圧と応答時間(a)及び必要電荷量(b)との関係を示すグラフである。 同、−10℃のときの印加電圧と応答時間(a)及び必要電荷量(b)との関係を示すグラフである。 同、メモリー特性評価の結果を示すグラフである。 同、メモリー特性評価の結果を示すグラフである。 同、銀イオン濃度とメモリー時間との関係を示すグラフである。 同、繰り返し波形の概要を示すグラフである。 同、サイクル毎の表示特性、及び白表示時及び黒表示時のそれぞれの反射率を示すグラフである。
符号の説明
1…第2電極、2…TFT、3…支持体、4…高分子電解質層、5…共通透明電極、
6…透明電極支持体、7…封着部材、8…金属析出物、11、15…電位検知電極、
12…銀又はアルミニウム電極、13…銀又はアルミニウム線状配線部、
22…信号制御部、23、23a…データ線駆動回路、24…ゲート線駆動回路、
28…ゲート線、29、29a…データ線、31…透明電極、35…第3電極

Claims (10)

  1. 電気化学的な還元又は酸化及びこれに伴う析出又は溶解によって変色又は消色する色可変材料と、電解質と、高分子化合物とを含有する高分子電解質層が、第1極と第2極との間に挟持され、前記色可変材料の少なくとも一部と前記電解質の少なくとも一部とが、互いに異なるハロゲンをアニオン種としている電気化学調光装置を製造するに際し、
    前記色可変材料となるAgI及びAgBrと、前記電解質となるLiI及びLiBr と、前記高分子化合物との混合物を前記第1極と前記第2極との間に供給して、前記高 分子電解質層を形成する工程を有する、
    電気化学調光装置の製造方法
  2. 前記高分子電解質層をゲル化する、請求項1に記載した電気化学調光装置の製造方法。
  3. 前記高分子電解質層中の銀イオンの濃度0.5M以上、2.0M以下とする、請求項に記載した電気化学調光装置の製造方法
  4. 前記銀イオンの濃度0.75M以上、1.0M以下とする、請求項に記載した電気化学調光装置の製造方法
  5. 前記高分子電解質層中のリチウムイオンの濃度前記高分子電解質層中の銀イオンの濃度の1.3倍〜1.5倍(モル比)とする、請求項に記載した電気化学調光装置の製造方法
  6. 電気化学的な還元又は酸化及びこれに伴う析出又は溶解によって変色又は消色する色可変材料と、電解質と、高分子化合物とを含有し、前記色可変材料の少なくとも一部と前記電解質の少なくとも一部とが、互いに異なるハロゲンをアニオン種としている、電気化学調光装置用の高分子電解質を製造するに際し、
    前記色可変材料となるAgI及びAgBrと、前記電解質となるLiI及びLiBr と、前記高分子化合物との混合物を調製する工程を有する、
    電気化学調光装置用の高分子電解質の製造方法
  7. ゲル化工程を有する、請求項6に記載した高分子電解質の製造方法。
  8. 銀イオンの濃度0.5M以上、2.0M以下とする、請求項に記載した高分子電解質の製造方法
  9. 前記銀イオンの濃度0.75M以上、1.0M以下とする、請求項に記載した高分子電解質の製造方法
  10. リチウムイオンの濃度銀イオンの濃度の1.3倍〜1.5倍(モル比)とする、請求項に記載した高分子電解質の製造方法
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