以下に述べる本発明の第1の実施例では、被検体に対する超音波送受信によって得られるドプラ信号に基づいてカラードプラ画像データを生成する際に、位相情報を有したドプラ信号の複素信号(以下、IQ信号と呼ぶ。)に対してデータ圧縮、データ保存、及びデータ伸長を行なう。そして、データ伸長によって復元された前記IQ信号に対して所望のデータ処理を行なってカラードプラ画像データを生成する。
(装置の構成)
以下では、第1の実施例における超音波診断装置の構成につき図1及び図2を用いて説明する。尚、図1は、本実施例における超音波診断装置の全体構成を示すブロック図であり、図2は、この超音波診断装置を構成する送受信・信号処理部のブロック図である。
図1に示す超音波診断装置100は、被検体に対して超音波の送受信を行なう超音波プローブ201と、超音波プローブ201に対して駆動信号の送信と反射信号の受信を行ない、更に、得られた受信信号を信号処理してRAWデータ、あるいは第1の画像データを生成する送受信・信号処理部200と、送受信・信号処理部200において生成されたRAWデータに対してデータ圧縮及びデータ伸長を行ない、更に、データ伸長によって復元されたRAWデータをデータ処理して第2の画像データを生成するデータ圧縮・演算部230を備えている。
更に、超音波診断装置100は、送受信・信号処理部200において生成された第1の画像データ、あるいはデータ圧縮・演算部230において生成された第2の画像データを保存する画像データ記憶部207と、これらの画像データを表示する表示部208と、患者情報や各種のコマンド信号を入力する操作部209と、これら各ユニットを統括して制御するシステム制御部210を備えている。
尚、上述の第1の画像データは、被検体から得られた受信信号に基づいてリアルタイム表示されるBモード画像データあるいはカラードプラ画像データであり、第2の画像データは、本実施例では、データ圧縮、データ保存、及びデータ伸長されたRAWデータに基づいて生成されるカラードプラ画像データである。
超音波プローブ201は、被検体の表面に対してその前面を接触させ超音波の送受信を行なうものであり、1次元に配列された複数個(N個)の圧電振動子をその先端部分に有している。この圧電振動子は電気音響変換素子であり、送信時には電気パルス(駆動信号)を超音波パルス(送信超音波)に変換し、また受信時には超音波反射波(受信超音波)を電気信号(受信信号)に変換する機能を有している。そして、超音波画像の解像度や感度に大きな影響を与える超音波パルスの中心周波数は、この圧電振動子の厚みによってほぼ決定される。この超音波プローブ201は小型、軽量に構成されており、Nチャンネルのケーブルを介して送受信・信号処理部200に接続されている。超音波プローブ201は、セクタ走査対応、リニア走査対応、コンベックス走査対応等があり、これらの超音波プローブの中から診断部位に応じて任意に選択されるが、以下ではセクタ走査対応の超音波プローブ201を用いた場合について述べる。
図2に示した送受信・信号処理部200は、超音波プローブ201から送信超音波を発生するための駆動信号を生成する超音波送信部202と、この超音波プローブ201の圧電振動子から得られる複数チャンネルの受信信号に対して整相加算を行なう超音波受信部203と、整相加算した受信信号に対してBモード画像データの生成のための信号処理を行なうBモード画像データ生成部204と、上記受信超音波信号に対してドプラ信号のIQ信号を検出するドプラ信号検出部205と、検出されたIQ信号に対してカラードプラ画像データの生成のための信号処理を行なうカラードプラ画像データ生成部206を備えている。
そして、超音波送信部202は、レートパルス発生器211と、送信遅延回路212と、パルサ213を備えている。レートパルス発生器211は、被検体に放射する超音波パルスの繰り返し周期(Tr)を決定するレートパルスを送信遅延回路212に供給する。一方、送信遅延回路212は、超音波プローブ201において送信に使用される圧電振動子と同数(Nチャンネル)の独立な遅延回路から構成されており、送信において細いビーム幅を得るために所定の深さに超音波を収束するための集束用遅延時間と、所定の方向に超音波を送信するための偏向用遅延時間を前記レートパルスに与え、このレートパルスをパルサ213に供給する。
パルサ213は、送信に使用される圧電振動子と同数(Nチャンネル)の独立な駆動回路を有しており、超音波プローブ201に内蔵されたN個の圧電振動子を駆動し、被検体に対して送信超音波を放射するための駆動パルスを生成する。
一方、超音波受信部203は、Nチャンネルのプリアンプ214と、受信遅延回路215と、加算器216を備えている。プリアンプ214は、圧電振動子によって電気信号に変換された微小な受信信号を増幅し十分なS/Nを確保する。又、受信遅延回路215は、所定の深さからの受信超音波を集束して細い受信ビーム幅を得るための収束用遅延時間と、所定の方向に超音波ビームの受信指向性を設定するための偏向用遅延時間をプリアンプ214の出力に与えた後、加算器216に送り、加算器216において圧電振動子からのNチャンネルの受信信号は加算されて1つに纏められる。
次に、Bモード画像データ生成部204は、対数変換器217と、包絡線検波器218と、A/D変換器219を備えている。Bモード画像データ生成部204の入力信号は、対数変換器217で受信信号の振幅を対数変換し、弱い信号を相対的に強調する働きをしている。又、包絡線検波器218は、対数変換された受信信号に対して包絡線検波を行ない、超音波周波数成分を除去して振幅のみを検出する。そして、A/D変換器219は、この包絡線検波器218の出力信号をA/D変換しBモード画像データを生成する。
一方、ドプラ信号検出部205は、基準信号発生器220、π/2移相器221、ミキサ222−1及び222−2、LPF(ローパスフィルタ)223−1及び223−2を備え、更に、A/D変換器224−1及び224−2、ドプラ信号記憶回路225を備えている。そして、超音波の受信信号に対して直交位相検波を行なってドプラ成分のIQ信号を検出する。
即ち、超音波受信部203から供給されるドプラ信号検出部205の入力信号は、ミキサ222−1及び222−2の第1の入力端子に入力される。一方、この入力信号の中心周波数とほぼ等しい周波数を有し、レートパルス発生器211のレートパルスと同期した基準信号発生器220の連続波出力は、ミキサ222−1の第2の入力端子に直接供給されると共に、π/2移相器221に供給され、π/2移相器221において位相が90度シフトされてミキサ222−2の第2の入力端子に送られる。そして、ミキサ222−1及び222−2の出力は、ローパスフィルタ223−1及び223−2に供給され、ドプラ信号検出部205の入力信号周波数と基準信号発生器220の出力信号周波数との和の成分が除去され、差の成分のみが検出される。
次いで、A/D変換器224−1及び224−2は、LPF223−1及び223−2の出力信号、即ち、直交位相検波されたアナログ信号をサンプリング周期Tsでサンプリングした後デジタル信号に変換し、ドプラ信号記憶回路225に保存する。
この場合、ドプラ信号検出部205は、所定の走査方向に対して行なわれる連続した複数回(L回)の超音波送受信において得られる受信信号に対して直交位相検波を行なう。そして、この直交位相検波によって得られたI成分(ドプラ信号の実数成分)及びQ成分(ドプラ信号の虚数成分)を順次ドプラ信号記憶回路225に保存する。尚、上述のI成分及びQ成分から構成されるドプラ信号は通常IQ信号と呼ばれ、本発明における超音波RAWデータの1つである。
次に、カラードプラ画像データ生成部206は、MTIフィルタ226と、自己相関器227と、演算器228を備えている。そして、ドプラ信号検出部205のドプラ信号記憶回路225に保存されている同一走査方向におけるL個のIQ信号を用いて周波数解析を行ない、更に、この解析結果に基づいてカラードプラ画像データを生成する。
前記カラードプラ画像データ生成部206のMTIフィルタ226は、高域通過用のデジタルフィルタであり、ドプラ信号記憶回路225に一旦保存されたIQ信号に対して臓器の呼吸性移動や拍動性移動などに起因するドプラ信号成分(組織ドプラ成分)の除去を行なう。
また、自己相関器227は、MTIフィルタ226によって血流情報のみが抽出されたドプラ信号に対して自己相関処理を行ない、演算器228は、この自己相関処理結果に基づいて血流の平均流速値や分散値などを2次元的に算出して第1のカラードプラ画像データを生成する。
次に、図1に戻って、データ圧縮・演算部230は、データ圧縮部231と、RAWデータ記憶・再生部232と、データ伸長部233と、演算部234を備えている。そして、データ圧縮部231は、図示しない減算器とバッファメモリを有し、ドプラ信号検出部205のドプラ信号記憶回路225に既に保存されている同一走査方向における連続したL個のIQ信号を読み出し、時間方向に隣接したIQ信号間の差分をとることによってデータ圧縮を行なう。
そして、RAWデータ記憶・再生部232は、図示しない記憶回路と記憶媒体駆動部を備え、データ圧縮部231において圧縮されたIQ信号(以下、圧縮IQ信号)を記憶回路に保存する。また、記憶媒体駆動部は、前記圧縮IQ信号に対し着脱自在な記憶媒体への書き込み及び読み出しを行なう。
一方、データ伸長部233は、RAWデータ記憶・再生部232の記憶回路、あるいは記憶媒体に保存された圧縮IQ信号の中から所望の圧縮IQ信号を読み出し、データ伸長のためのデータ処理を行なって圧縮前のIQ信号(以下、伸長IQ信号)に復元する。
次に、演算部234は、図示しないCPUと記憶回路を備えており、データ伸長部233から供給された伸長IQ信号に対して所定のデータ処理を行ない画像データを生成する。例えば、本実施例のように、伸長IQ信号を用いてカラードプラ画像データを生成する場合には、演算部234のCPUは、図2に示した送受信・信号処理部200のカラードプラ画像データ生成部206におけるMTIフィルタ226、自己相関器227、及び演算器228と同様な機能を備えている。
一方、画像データ記憶部207は、Bモード画像データ生成部204から供給されるBモード画像データやカラードプラ画像データ生成部206から供給される第1のカラードプラ画像データ、更には、データ圧縮・演算部230の演算部234から供給される第2のカラードプラ画像データの保存を行なう。
次に、表示部208は、図示しない表示用画像データ記憶回路と、変換回路と、カラーモニタを備えている。画像データ記憶部207に保存されたBモード画像データや第1のカラードプラ画像データ、更には伸長IQ信号から生成された第2のカラードプラ画像データは、上記表示用画像データ記憶回路において、操作部209から入力された各種の文字や数字などの付帯データと合成される。そして、付帯データと合成された画像データは、変換回路においてD/A変換とテレビフォーマット変換によって映像信号に変換された後、CRTあるいは液晶などのカラーモニタに表示される。
又、操作部209は、操作パネル上にキーボード、トラックボール、マウス等の入力デバイスと表示パネルを備え、患者情報、画像データ収集モード、データ圧縮・伸長パラメータ、伸長IQ信号に対するデータ処理の処理パラメータ、更には各種コマンド信号が入力される。そして、システム制御部210は、操作部209からの指示信号に基づいて、送受信・信号処理部200、データ圧縮・演算部230、更には表示部208などの各ユニットの制御やシステム全体の制御を統括して行なう。
(画像データの生成手順)
次に、本実施例における超音波診断装置100の基本動作と、この超音波診断装置100によるBモード画像データ及びカラードプラ画像データの生成手順につき図1乃至図5を用いて説明する。尚、図3は、圧縮及び伸長されたIQ信号に基づいて生成される前記第2のカラードプラ画像データの生成手順を示すフローチャートである。
被検体に対する超音波検査に先だって、操作者は、操作部209の入力デバイスを用いて患者IDなどの患者情報、画像データ収集モード、データ圧縮・伸長方法、伸長IQ信号に対する演算パラメータ等の入力を行なう。この場合、画像データ収集モードとしてBモード画像データとカラードプラ画像データの収集モードが選択され、更に、データ圧縮の対象としてカラードプラ画像データの収集モードが選択される。又、データ圧縮・伸長法として差分法が選択される。更に、カラードプラ画像データ生成部206のMTIフィルタ226におけるフィルタ定数をはじめとする種々のデータ処理に対する演算パラメータが予め設定される(図3のステップS1)。
これらの初期設定が完了したならば、システム制御部210は、図2に示した超音波送信部202のレートパルス発生器211に対して送信制御信号を供給し、レートパルス発生器211は、システム制御部210からの制御信号に同期して被検体に放射する超音波パルスの繰り返し周期(Tr)を決定するレートパルスを送信遅延回路212に供給する。
次いで、送信遅延回路212は、所定の深さに超音波を集束するための集束用遅延時間と、第1の走査方向(θ1)に超音波を送信するための偏向用遅延時間をレートパルスに与え、このレートパルスをパルサ213に供給する。そして、パルサ213は、レートパルスの駆動によって生成される駆動信号を、ケーブルを介して超音波プローブ201におけるN個の圧電振動子に供給し、被検体のθ1方向に超音波パルスを放射する。
被検体に放射された超音波パルスの一部は、音響インピーダンスの異なる臓器間の境界面あるいは組織にて反射する。又、この超音波が心臓壁や血球などの動きのある反射体で反射する場合、その超音波周波数はドプラ偏移を受ける。
被検体の組織や血球にて反射した超音波反射波(受信超音波)は、超音波プローブ201の圧電振動子によって受信されて電気信号(受信信号)に変換され、この受信信号は、超音波受信部203におけるNチャンネルの独立なプリアンプ214にて増幅されてNチャンネルの受信遅延回路215に送られる。
受信遅延回路215は、所定の深さからの超音波を収束するための集束用遅延時間と、前記第1の走査方向に強い受信指向性をもたせて受信するための偏向用遅延時間を前記受信信号に与えた後、加算器216に送る。そして、加算器216は、受信遅延回路215から出力されるNチャンネルの受信信号(RF信号)を加算合成し、1つの受信信号(RF信号)に纏めた後、Bモード画像データ生成部204とドプラ信号検出部205に供給する。
そして、Bモード画像データ生成部204に供給された加算器216の出力信号は、対数変換、包絡線検波、A/D変換がなされた後、図1の画像データ記憶部207おけるBモード画像データ記憶領域に保存される。
一方、カラードプラ画像データの生成においては、受信信号のドプラ偏移を求めるために上述と同様な手順によって、前記第1の走査方向に連続して複数回(L回)の超音波送受信を行ない、このとき得られる受信信号に対して周波数解析を行なう。
即ち、ドプラ信号検出部205に供給された前記加算器216の出力信号は、ミキサ222−1、222−2及びLPF223−1、223−2によって直交位相検波されて2チャンネルのIQ信号に変換される。そして、このIQ信号のI成分、及びQ成分の各々はA/D変換器224−1,224−2にてデジタル信号に変換された後、ドプラ信号記憶回路225に保存される。前記第1の走査方向に対するL回の超音波送受波によって得られた受信信号について同様な処理を行なってIQ信号を収集し、ドプラ信号記憶回路225に保存する。(図3のステップS2)。
図4は、ドプラ信号記憶回路225に保存された第1の走査方向のIQ信号を模式的に示したものであり、図4(a)には、前記第1の走査方向に対してL回の超音波送受信によって得られたIQ信号のI成分A−1乃至A−Lが、又、図4(b)には前記IQ信号のQ成分B−1乃至B−Lが示されている。尚、この図4における縦軸(Z軸)は超音波送受信方向に対応し、横軸(X軸)は前記第1の走査方向に対する送受信番号1乃至Lに対応している。そして、各IQ信号のX方向におけるサンプリング間隔はレートパルス周期(Tr)、又、Z方向のサンプリング間隔はドプラ信号検出部205のA/D変換器224におけるサンプリング周期(Ts)に対応している。
即ち、前記第1の走査方向に対する最初の超音波送受信によって得られたIQ信号のI成分A−1及びQ成分B−1は、サンプリング間隔Tsのa11乃至a1nx及びb11乃至b1nxの一連のデータから構成され、同様にして、前記第1の走査方向に対する第L番目の超音波送受信によって得られたIQ信号のI成分A−L及びQ成分B−Lは、サンプリング間隔TsのaL1乃至aLnx及びbL1乃至bLnxから構成されている。そして、これらのI成分及びQ成分が送受信番号に対応して1対になってドプラ信号記憶回路225に保存される。
第1の走査方向(θ1)に対するL回の超音波送受信によって得られたIQ信号のドプラ信号記憶回路225への保存が終了したならば、システム制御部210は、ドプラ信号記憶回路225に保存されているIQ信号の中から所定位置Pに対応したI成分及びQ成分(図4におけるa1n乃至aLn及びb1n乃至bLn)を順次読み出し、カラードプラ画像データ生成部206のMTIフィルタ226に供給する。そして、MTIフィルタ226は、供給された前記I成分及びQ成分に対して送受信番号方向でフィルタ処理を行ない、例えば心筋などの組織の運動によって生ずる組織ドプラ成分(クラッタ成分)を排除し、血流の流れによって生ずる血流ドプラ成分のみを抽出する。
血流情報が抽出されたIQ信号の供給を受けた自己相関器227は、このIQ信号を用いて自己相関処理を行ない、演算器228は、自己相関処理結果に基づいて血流の平均速度値や分散値、あるいはパワー値などを算出する。このような演算を、位置P以外の反射体からのIQ信号に対しても行ない、算出された第1の走査方向における、血流の平均速度値、分散値あるいはパワー値などをリアルタイム表示用のカラードプラ画像データ(以下、第1のカラードプラ画像データ)として図1の画像データ記憶部207に保存する。
次いで、システム制御部210は、第2の走査方向乃至第Mの走査方向に対しても同様な超音波送受信を行なう。そして、このとき得られたBモード画像データ及び第1のカラードプラ画像データは、画像データ記憶部207におけるBモード画像データ領域、及びカラードプラ画像データ領域に順次保存される。即ち、画像データ記憶部207において、第1の走査方向乃至第Mの走査方向において生成された1画像分のBモード画像データと第1のカラードプラ画像データが保存される。
尚、前記MTIフィルタ226において組織ドプラ成分を排除する場合、この組織ドプラ成分の周波数帯域と血流ドプラ成分の周波数帯域は接近しているため、MTIフィルタ226に対して最適なフィルタ定数を設定する必要がある。
以上述べた手順によって生成されたBモード画像データ、及び第1のカラードプラ画像データは、独立あるいは合成されて表示部208に表示される。このとき、システム制御部210は、画像データ記憶部207に保存されているBモード画像データやカラードプラ画像データを読み出す。そして、これらの画像データに対して付帯情報である数字や文字などを重畳して表示部208の図示しない表示用画像データ記憶回路に一旦保存した後変換回路に供給し、カラー処理、D/A変換、TVフォーマット変換を行なってカラーモニタに表示する。
一方、ドプラ信号検出部205のドプラ信号記憶部225に保存された所定走査方向のIQ信号は、カラードプラ画像データ生成部206に供給されるとともに、データ圧縮・演算部230にも供給される。このデータ圧縮・演算部230において、前記IQ信号に対するデータ圧縮と保存、データ伸長によるIQ信号の復元、更には復元されたIQ信号を用いたカラードプラ画像データ(以下、第2のカラードプラ画像データ)の生成が行なわれる。
(データ圧縮)
次に、図5を用いて上述のデータ圧縮について述べる。但し、ここでは図4の第1の走査方向に対するIQ信号の中から、所定位置Pに対応したIQ信号のI成分a1n乃至aLnを抽出し、これらのI成分に対してデータ圧縮を行なう(図3のステップS3)。
図5(a)は、データ圧縮前における所定位置PのI成分a1n乃至aLnと、これらのI成分のデータ容量の大きさを示している。但し、この場合のI成分a1n乃至aLnのデータ容量は模式的に全てC0としている。
一方、図5(b)は、データ圧縮後のI成分(a1n、Δa2n、Δa3n、・・・・・)と、これらのI成分のデータ容量の大きさを示している。このデータ圧縮では、データ圧縮前のI成分a1n乃至aLnの中からキーデータを所定間隔(ここでは4データ間隔)に設定し、キーデータに設定されなかったI成分については、隣接したI成分との差分をとることによってデータ圧縮を行なう。
このデータ圧縮につき図5を用いて更に詳しく述べる。この図5では、上述のキーデータとして送受信番号1、5、9、・・・・において得られたI成分a1n、a5n、a9n・・・が設定される。そして、送受信番号2乃至4、走査番号6乃至8、走査番号10乃至12・・・はデータ圧縮処理によりデータ容量C1の差分データΔa2n乃至Δa4n、Δa6n乃至Δa8n、Δa10n乃至Δa12n、・・・に変換される。
但し、差分データΔa2n乃至Δa4nは、Δa2n=a2n−a1n、Δa3n=a3n−a2n、Δa4n=a4n−a3nによって算出され、差分データΔa6n=a6n−a5n、Δa7n=a7n−a6n、Δa8n=a8n−a7nによって算出される。そして、差分データΔa10n、Δa11n、Δa12n・・・についても同様にして算出される。
この場合、データ圧縮前の隣接I成分(例えば、a1nとa2n、a2nとa3n・・・)のデータ取得間隔は、例えば200μ秒のレートパルス周期(Tr)となる。従って各I成分間の時間的変化も小さいため、上述の差分処理によって得られた差分データΔa2n乃至Δa4n、Δa6n乃至Δa8n、Δa10n乃至Δa12n・・・のデータ容量C1は、差分前のa2n乃至a4n、a6n乃至a8n、a10n乃至a12n・・・のデータ容量C0より大幅に低減し、所謂データ圧縮が可能となる。そして、データ圧縮された前記IQ信号のI成分は、データ圧縮・演算部230のRAWデータ記憶・再生部232において保存される(図3のステップS4)。
上述のような隣接データ間の差分処理によるデータ圧縮を全ての位置におけるI成分及びQ成分に対して行ない、更に、第2の走査方向(θ2)乃至第Mの走査方向(θM)の超音波送受信によって得られたIQ信号に対しても行なう。そして、この圧縮IQ信号はRAWデータ記憶・再生部232において保存される。
(データ伸長)
次に、RAWデータ記憶・再生部232に保存された圧縮IQ信号を圧縮前のIQ信号に復元するために、データ圧縮・演算部230のデータ伸長部233が行なうデータ伸長について述べる。
本実施例におけるデータ伸長は、既に述べたIQ信号のキーデータを基準に行なう。例えば、図5(a)に示したデータ圧縮前のI成分a2n、a3n、a4nに対応するデータ伸長後のI成分a2n’、a3n’、a4n’は、図5(b)に示したデータ圧縮後のI成分Δa2n乃至Δa4nを用い、a2n’=a1n+Δa2n=a1n+(a2n−a1n)=a2n、a3n’=a1n+Δ2n+Δ3n=a3n、a4n’=a1n+Δ2n+Δ3n+Δ4n=a4nによって復元される。同様にして、データ伸長後のI成分a6n’、a7n’、a8n’は夫々a6n’=a5n+Δa6n=a5n+(a6n−a5n)=a6n、a7n’=a5n+Δ6n+Δ7n=a7n、a8n’=a5n+Δ6n+Δ7n+Δ8n=a8nとなる。多くの連続した差分データから圧縮前のIQ信号を復元する場合、個々のデータがもつ微小な誤差が蓄積されて大きな誤差を生む場合があるが、上述のように、所定間隔でキーデータを設定することによって、上述の誤差を低減することが可能となる。
データ伸長部233は、上述のデータ伸長を、RAWデータ記憶・再生部232に保存された画像1枚分のIQ信号に対して行ない、得られた伸長IQ信号を図示しない記憶回路に一旦保存する(図3のステップS5)。次いで、データ圧縮・演算部230の演算部234は、前記記憶回路に保存された伸長IQ信号を読み出し、この伸長IQ信号を用いてカラードプラ画像データの生成を行なう(図3のステップS6)。
ところで、本実施例における演算部234は、送受信・信号処理部200のカラードプラ画像データ生成部206におけるMTIフィルタ226、自己相関器227、及び演算器228と同様な機能を有した図示しないCPUと記憶回路を備えている。
そして、演算部234のCPUは、データ伸長部233の図示しない記憶回路に保存されている所定走査方向の所定位置における伸長IQ信号(例えば、位置PにおけるIQ信号a1n’乃至aLn’及びb1n’乃至bLn’)を順次読み出し、フィルタ処理を行なって組織ドプラ成分を排除し、血流ドプラ成分のみを抽出する。
次いで、血流ドプラ成分の伸長IQ信号に対して自己相関処理を行ない、更に、この相関処理結果に基づいて血流の平均速度値や分散値、あるいはパワー値などを算出する。
同様にして、他の走査方向あるいは他の位置からのIQ信号に対しても同様のデータ処理を行なって血流の平均速度値、分散値あるいはパワー値などを算出し、これらの算出結果に基づいて生成された第2のカラードプラ画像データを記憶部207の所定の記憶領域に保存する。
次いで、システム制御部210は、画像データ記憶部207に保存された第2のカラードプラ画像データを読み出し、この画像データに対する付帯情報を重畳して表示部208のカラーモニタに表示する。
尚、上述の本実施例では、データ圧縮・演算部230は、データ圧縮に引き続いてデータ伸長を行なう場合について述べたが、実際の場合には、被検体に対して得られたドプラ信号のIQ信号は、データ圧縮部231において圧縮IQ信号に変換された後、RAWデータ記憶・再生部232に保存される。
次いで、RAWデータ記憶・再生部232に保存された前記圧縮IQ信号は、後日、操作者、あるいはユーザが操作部209より入力するコマンド信号に従って読み出され、データ伸長部233において伸長IQ信号に変換される。そして、演算部234は、既に述べた手順により前記伸長IQ信号を用いて第2のカラードプラ画像データを生成し、表示部208において表示する。
以上述べた本実施例によれば、カラードプラ画像データの生成において、位相情報を有したIQ信号をデータ圧縮することによってデータ容量が低減でき、通常の記憶容量を有する記憶装置あるいは記憶媒体への保存が可能となる。一方、操作者は、記憶された圧縮IQ信号を所望な時に伸長してカラードプラ画像データの生成を行なうことができるため、時間的制約を受けずに画像データの観察が可能となり、更に、伸長IQ信号に対してMTIフィルタ定数などの各種データ処理条件の最適化を容易に行なうことができる。
又、前記データ処理条件の最適化を被験者に対する検査途中で行なう必要がなくなるため、検査時間が短縮され、被検者に与える負担が軽減される。更に、本実施例におけるIQ信号のデータ圧縮及びデータ伸長では、キーデータを基準にして行なわれるため、伸長IQ信号における誤差を低く抑えることが可能となる。
次に、本発明の第2の実施例につき図6及び図7を用いて説明する。この第2の実施例では、被検体から得られる受信信号を用いて各種超音波物理量を計測する際に、位相情報を有した超音波RF信号に対してデータ圧縮、データ保存及びデータ伸長を行ない、更に、データ伸長によって復元された前記RF信号に基づいて所定の超音波物理量の計測と表示を行なう。尚、以下では、超音波減衰係数の計測を例に説明するが、超音波非線形特性など他の超音波物理量の計測であってもよい。
(装置の構成)
図6は、第2の実施例における超音波診断装置の全体構成を示すブロック図であり、図1に示した第1の実施例のブロック図との差異は、送受信・信号処理部200のドプラ信号検出器205の出力信号(IQ信号)に代わって、超音波受信部203の出力信号(RF信号)がデータ圧縮・演算部230のデータ圧縮部231に供給されることである。
データ圧縮・演算部230のデータ圧縮部231は、図示しない演算器と、A/D変換器と、記憶回路を備えている。そして、超音波受信部203から供給される所定方向のRF信号を受信し、隣接した走査方向の夫々において得られたRF信号間の差分をとることによってデータ圧縮を行なう。
又、RAWデータ記憶・再生部232は、図示しない記憶回路と記憶媒体駆動部を備え、データ圧縮部231において圧縮されたRF信号(以下、圧縮RF信号)は記憶回路において保存される。また、記憶媒体駆動部は、着脱自在な記憶媒体に対する圧縮RF信号の書き込みと読み出しを行なう。
一方、データ伸長部233は、RAWデータ記憶・再生部232の記憶回路、あるいは記憶媒体に保存された圧縮RF信号を読み出し、データ伸長のためのデータ処理を行なって圧縮前のRF信号(以下、伸長RF信号)に復元する。
次に、演算部234は、図示しないCPUと記憶回路を備えており、データ伸長部233から供給された伸長RF信号の中から所望の走査方向における伸長RF信号を選択し、この伸長RF信号の中から所定距離Δdだけ異なる2つの位置の伸長RF信号を選択する。そして、選択された2つの伸長RF信号をFFT分析して得られた2つの周波数スペクトラムに基づいて超音波減衰係数を算出する。
一方、上述のデータ圧縮・演算部230以外の各ユニットは第1の実施例と同様であるため、その構成とBモード画像データ及びカラードプラ画像データの生成手順については説明を省略する。
(データ圧縮及びデータ伸長)
次に、図7を用いて本実施例におけるデータ圧縮及びデータ伸長について述べる。但し、図7(a)は、第1の走査方向(θ1)乃至第Mの走査方向(θM)によって得られたデータ圧縮前のRF信号D−1乃至D−Mにおけるデータ値、又、図7(b)は圧縮RF信号E−1乃至E−Mのデータ値を模式的に示している。尚、これらのデータは、超音波受信部203の出力信号がデータ圧縮部231においてサンプリング周期TsのサンプリングとA/D変換によって収集される。
データ圧縮部231の演算器は、第1の実施例と同様にしてキーデータを所定間隔(ここでは第1の走査方向において得られたデータ圧縮前のRF信号D−1のe11乃至e1nx)に設定し、キーデータに設定されなかったRF信号については、隣接したRF信号との差分をとることによってデータ圧縮を行なう。
即ち、図7(b)に示した第2の走査方向の圧縮RF信号E−2における差分データΔe21乃至Δe2nx及び第3の走査方向の圧縮RF信号E−3における差分データΔe31乃至Δe3nxは、Δe21=e21−e11、Δe22=e22−e21、Δe23=e23−e22・・・・Δe31=e31−e21、Δe32=e32−e22、Δe33=e33−e23・・・・によって算出される。
尚、この場合の各走査方向(X軸方向)のデータ取得間隔は、レートパルス周期(Tr)であり、隣接した走査によって得られるRF信号間には相関がある。従って、上述の差分処理によって得られた圧縮RF信号のデータ容量は、圧縮前のRF信号のデータ容量と比較して十分小さな値となる。このようにしてデータ圧縮された圧縮RF信号は、データ圧縮・演算部230のRAWデータ記憶・再生部232において保存される。
次に、データ圧縮・演算部230のデータ伸長部233は、RAWデータ記憶・再生部232に保存された圧縮RF信号を圧縮前のRF信号に復元するためにデータ伸長の処理を行なう。例えば、第2の走査方向の伸長RF信号e21’乃至e2nx’、及び第3の走査方向の伸長RF信号e32’乃至得e3nx’はe21’=e11+Δe21=e11+(e21−e11)=e21、e22’=e12+Δe22=e22・・・・e31’=e31+Δe31=e31、e32’=e32+Δe32=e32・・・・によって復元される。
データ伸長部233は、上述のデータ伸長を、RAWデータ記憶・再生部232に保存された画像1枚分の圧縮RF信号に対して行ない、得られた伸長RF信号を図示しない記憶回路に一旦保存する。次いで、データ圧縮・演算部230の演算部234は、前記記憶回路に保存された伸長RF信号を読み出し、この伸長RF信号を用いて超音波減衰係数の計測を行なう。
(超音波減衰係数の計測)
次に、超音波減衰係数の計測方法につき図8を用いて説明する。図8(a)の所定の走査方向(θx)において、距離Δdで隣接して設定された領域A及び領域Bから得られる伸長RF信号の波形を夫々A1(t)及びB1(t)とすれば、超音波周波数fにおける上記RF波形A1(t)及びRF波形B1(t)には近似的に下記の関係が成立する。
B1(t)∝A1(t)exp(−2αofΔd) ・・・(1)
但し、αoは超音波減衰係数、fは超音波周波数である。式(1)の関係を有する上記受信波形A1(t)及び受信波形B1(t)をフーリエ変換して得られるパワースペクトラムSA1(f)、SB1(f)を更に対数変換すると
lnSB1(f)=lnSA1(f)−4αofΔd+C ・・・(2)
となる。但し、Cは定数を示す。従って上記領域A及び領域Bにおける超音波減衰係数αoは、
αo=(1/4Δd)∂(lnSA1(f)−lnSB1(f))/∂f・・(3)
によって得られる。即ち、周波数fに依存した超音波減衰特性を有する生体組織の場合には、領域A及び領域Bにおける受信信号について夫々パワースペクトラムを算出し、次いで対数変換した前記パワースペクトラムの間の差スペクトラムにおける周波数勾配を算出することによって超音波減衰係数αoを求めることができる。
図8(b)及び図8(c)は、対数変換後のパワースペクトラムlnSA1(f)及びlnSB1(f)を示し、図8(d)は、対数変換したパワースペクトラムの間の差スペクトラム(lnSA1(f)−lnSB1(f))を示す。従って、図8(d)の差スペクトラムにおける平均勾配値を4Δdで除することによって所望の超音波減衰係数αoを求めることができる。このようにして得られた超音波減衰係数は単独あるいは画像データ記憶部207に既に保存されている同一被検者のBモード画像データやカラードプラ画像データと合成されて表示部208に表示される。
以上述べた本実施例によれば、超音波減衰係数等の超音波物理量の計測において、位相情報を有したRF信号をデータ圧縮することによってデータ容量が低減でき、通常の記憶容量を有する記憶装置あるいは記憶媒体への保存が可能となる。一方、操作者は、記憶された圧縮RF信号を所望な時に伸長して超音波物理量を計測することができる。しかも、このRF信号のデータ伸長は、キーデータを基準にして行なわれるため、伸長RF信号における誤差を低く抑えることが可能となる。
尚、超音波物理量の計測に用いられるRAWデータは、RF信号に限定されるものではなく、第1の実施例で述べたIQ信号を用いて計測することも可能である。
次に、本発明の第3の実施例につき図9及び図10を用いて説明する。この第3の実施例では、被検体に対して得られた複数枚のBモード画像データやカラードプラ画像データを用いて動画像データあるいは3次元画像データを生成する際、ラスタデータに対してデータ圧縮、データ保存及びデータ伸長を行ない、更に、データ伸長によって復元された前記ラスタデータに基づいて動画像データあるいは3次元画像データの生成を行なう。但し、以下の説明では動画像データの生成について述べる。
(装置の構成)
図9は、第3の実施例における超音波診断装置の全体構成を示すブロック図であり、図1に示した第1の実施例のブロック図との差異は、送受信・信号処理部200のドプラ信号検出器205の出力信号(IQ信号)に代わって、Bモード画像データ生成部204において生成されるBモード画像用のラスタデータ(以下、Bモードラスタデータ)、及びカラードプラ画像データ生成部206において生成されるカラードプラ画像データ用のラスタデータ(以下、カラードプララスタデータ)がデータ圧縮・演算部230のデータ圧縮部231に供給されることである。
データ圧縮・演算部230のデータ圧縮部231は、図示しない演算器と記憶回路を備えている。そして、Bモード画像データ生成部204及びカラードプラ画像データ生成部206から供給される時間方向に連続して得られた複数枚分のBモードラスタデータ及びカラードプララスタデータを受信し、時間方向に隣接した同一走査方向のラスタデータ間の差分をとることによってデータ圧縮を行なう。
又、RAWデータ記憶・再生部232は、図示しない記憶回路と記憶媒体駆動部を備え、データ圧縮部231において圧縮されたBモードラスタデータ及びカラードプララスタデータ(以下、圧縮Bモードラスタデータ及び圧縮カラードプララスタデータ)は記憶回路において保存される。また、記憶媒体駆動部は、着脱自在な記憶媒体に対する圧縮RF信号の書き込みと読み出しを行なう。
一方、データ伸長部233は、RAWデータ記憶・再生部232の記憶回路、あるいは記憶媒体に保存された圧縮Bモードラスタデータ及び圧縮カラードプララスタデータを読み出し、データ伸長のためのデータ処理を行なって圧縮前のBモードラスタデータ及びカラードプララスタデータ(以下、伸長Bモードラスタデータ及び伸長カラードプララスタデータ)に復元する。
そして、演算部234は、図示しないCPUと記憶回路を備えており、データ伸長部233から供給された伸長Bモードラスタデータ及び伸長カラードプララスタデータに対して補間処理と各種フィルタリング処理を行なう。尚、上述のデータ圧縮・演算部230以外の各ユニットは第1の実施例と同様であるため、その構成とBモード画像データ及びカラードプラ画像データの生成手順については説明を省略する。
(データ圧縮及びデータ伸長)
次に、図10を用いて本実施例におけるデータ圧縮及びデータ伸長について述べる。但し、以下では、Bモード動画像データの生成について述べるが、カラードプラ動画像データの生成も同様な手順によって行なうことができる。
図10(a)は、フレーム間隔Tfで連続して生成されたデータ圧縮前のBモードラスタデータg−1乃至g−3を示す。そして時間t=T0の第1の走査方向において得られたBモードラスタデータはBモード画像データg−1のG1(1、q)(q=1〜nx)に対応している。そして、第2の走査方向乃至第Lの走査方向において得られたBモードラスタデータはG1(p、q)(p=2乃至p=L)に対応して配置されている。
同様にして、時間t=T0+Tfに得られた第1の走査方向乃至第Lの走査方向において得られたBモードラスタデータはBモード画像データg−2のG2(p、q)(p=1〜L,q=1〜nx)に、更に、時間t=T0+2Tfに得られたBモードラスタデータはBモード画像データg−3のG3(p、q)(p=1〜L,q=1〜nx)に配置されている。
又、これら画像1枚分のBモードラスタデータには、データID,データ処理パラメータ、更にはデータ圧縮・伸長パラメータなどがデータ識別情報として、前記Bモードラスタデータの位置情報あるいはフレーム(時間)情報などがデータ構成情報として前記Bモードラスタデータに付加されている。
一方、図10(b)は、前記Bモード画像データg−1乃至g−3におけるBモードラスタデータに対してデータ圧縮を行なって得られた圧縮Bモードラスタデータh−1乃至h−3を示している。但し、この場合t=T0に対応したBモードラスタデータg−1をキーデータに設定しているため、圧縮Bモードラスタデータh−1のH1(p、q)は、H1(p、q)=G1(p、q)である。一方、時間t=T0+Tf及びt=T0+2Tfに対応したBモードラスタデータg−2及びg−3のH2(p、q)、及びH3(p、q)は夫々H2(p、q)=G2(p、q)−G1(p,q)(p=1〜M、q=1〜nx)、H3(p、q)=G3(p、q)−G2(p,q)(p=1〜M、q=1〜nx)によってデータ圧縮が行なわれる。尚、図10には図示されていないが、前記キーデータは、時間方向にTf間隔で得られるデータ圧縮前の複数枚のBモード画像データに対して所定間隔で設定される。
この場合の各Bモード画像データの取得間隔は、フレーム周期(Tf)によって決定され、通常1/30秒乃至1/60であるが、ラスタデータのように位相情報を有しないRAWデータの場合には、被検体の動きが特に早い心臓のような場合を除いてフレーム方向に隣接したラスタデータには強い相関がある。従って上述の差分処理によって得られた圧縮Bモードラスタデータのデータ容量は、圧縮前のラスタデータのデータ容量と比較して十分小さな値となり、データ圧縮が可能となる。このようにしてデータ圧縮された圧縮Bモードラスタデータは、データ圧縮・演算部230のRAWデータ記憶・再生部232において保存される。
次に、データ圧縮・演算部230のデータ伸長部233は、RAWデータ記憶・再生部232に保存された圧縮Bモードラスタデータを圧縮前のBモードラスタデータに復元するためにデータ伸長の処理を行なう。このとき、例えば、ラスタデータh−2及びラスタデータh−3のH2(p、q)及びH3(p、q)を用い、圧縮前のラスタデータg−2及びg−3のG2(p、q)及びG3(p、q)は、G2(p、q)=H1(p、q)+H2(p、q)、G3(p、q)=H1(p、q)+H2(p、q)+H3(p、q)(p=1〜L、q=1〜nx)によって復元することができる。
データ伸長部233は、上述のデータ伸長を、少なくともキーデータ単位で行ない、得られた伸長Bモードラスタデータを図示しない記憶回路に一旦保存する。次いで、データ圧縮・演算部230の演算部234は、前記記憶回路に保存された伸長Bモードラスタデータをデータ識別情報やデータ構成情報と共に読み出し、このデータ識別情報やデータ構成情報に基づいて、例えば、図10のq方向やp方向、あるいは時間(フレーム)方向に対するデータ補間処理や各種フィルタリング処理などを行なう。そして得られたBモード動画像データを、画像データ記憶部207に一旦保存した後表示部208に表示する。
(変形例)
上述の第3の実施例では、被検体の同一部位においてフレーム周期Tfで得られる複数枚分のBモードラスタデータに対してデータ圧縮及びデータ伸長を行なったが、超音波プローブ201の機械的移動、あるいは2次元配列した圧電振動子によって得られた3次元画像データのラスタデータに対しても同様なデータ圧縮及びデータ伸長を行なうことが可能である。
以上述べた本実施例によれば、Bモード動画像データあるいは3次元画像データの生成において、ラスタデータをデータ圧縮することによってデータ容量が低減でき、通常の記憶容量を有する記憶装置あるいは記憶媒体への保存が容易となる。そして、操作者は、記憶された圧縮Bモードラスタデータを所望な時に伸長して動画像データや3次元画像データを生成することができる。
尚、本実施例及びその変形例では、Bモードラスタデータに基づいた動画像データ及び3次元画像データの生成について述べたが、カラードプララスタデータなど他のラスタデータを用いた動画像データや3次元画像データの生成であってもよい。
以上、本発明の実施例について述べたが、本発明は上述した実施例に限定されるものではなく、種々変形して実施することが可能である。例えば、データ圧縮されるRAWデータは、表示部208に表示される映像信号以外のデータ、即ち、表示部208の変換回路においてテレビフォーマット変換される以前のデータであれば既に述べたRF信号やIQ信号、更にはラスタデータに限定されるものではない。
又、上述の第1の実施例乃至第3の実施例では、データ圧縮・演算部230のRAWデータ記憶・再生部232には着脱自在な記憶媒体への圧縮RAWデータの書き込みや、この記憶媒体からの読み出しを行なうことが可能な記憶媒体駆動機能を兼ね備え、前記圧縮RAWデータを記憶媒体に保存することも可能である。従って、圧縮RAWデータが保存された記憶媒体を、例えば、ワークステーションなどに設けられた記憶媒体駆動部に装着することによって、前記圧縮RAWデータの移植が容易となり、このワークステーションにおいて種々の画像データ及び解析データの生成と表示が可能となる。
更に、RAWデータ記憶・再生部232とネットワークを接続することによって、データ容量の少ない圧縮RAWデータを、ネットワークを介してワークステーション等に供給することが可能となるため、ネットワークに与える負担を低減できる。
又、上述の差分法によって得られた圧縮RAWデータに対し、通常行われているランレングス法などの可逆圧縮法などを用いて更にデータ圧縮を行ってもよい。