JP4452432B2 - 液体噴射装置及び液体噴射装置のフラッシング方法 - Google Patents

液体噴射装置及び液体噴射装置のフラッシング方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、液体噴射装置および液体噴射装置のフラッシング方法に関し、特に、メニスカス近傍における増粘した液体をノズル開口から吐出させてノズルの液体吐出能力を回復させることができる液体噴射装置および液体噴射装置のフラッシング方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット式プリンタやプロッタ等のインクジェット式記録装置(液体噴射装置)では、記録ヘッドを主走査方向に沿って移動させると共に記録紙(印刷記録媒体の一種)を副走査方向に沿って移動させて、この移動に連動して記録ヘッドのノズル開口からインク滴(液体滴)を吐出させることにより、記録紙上に画像(文字)を印刷する。このインク滴の吐出は、例えば、ノズル開口に連通した圧力発生室を膨張・収縮させることで行われる。
【0003】
このような記録ヘッドのノズル開口部分では、メニスカス近傍のインクが空気に曝されているので、インク溶媒(例えば、水)が徐々に蒸発する。このインク溶媒の蒸発により、メニスカス近傍のインクの粘度が上昇して、記録紙への記録画像の画質は悪化する。即ち、メニスカス近傍のインクの粘度が上昇して増粘すると、吐出されたインク滴が増粘したインクに引きずられて正規の方向からずれた方向へ飛翔したり、ノズルの目詰まりを生じさせたりすることがある。このため、記録紙上に画像(文字等)を印刷する際には、メニスカス近傍のインクの増粘を解消することが非常に大切である。なお、「メニスカス」とは、ノズル開口において露出したインクの自由表面のことである。
【0004】
インクの増粘に起因する種々の不都合を解消するために、「フラッシング」や「クリーニング」といった動作を実行させることにより、増粘したインクをノズルから排出して、ノズルのインク滴吐出能力を回復させることが広く行われている。
【0005】
「フラッシング」は、例えば圧電振動子に印刷データと無関係の駆動信号を印加して、ノズル開口周辺の増粘したインクを印刷前に予め吐出させることにより、ノズルのインク吐出能力を回復させるものである。また、「クリーニング」は、上記「フラッシング」ではノズルのインク吐出能力を十分に回復させることができない場合に行われるもので、ノズルに対して吸引ポンプで負圧を与えることにより、ノズル内や圧力発生室内等における増粘したインクを、予め強制的に吸引するものである。
【0006】
クリーニングは、吸引ポンプで強制的にインクを吸引するものであることから、フラッシングに比べて、消費するインク量が多くなる。従って、印刷に使用できる有効インク量を増やすとともに廃液容積を少なく抑えるという観点からは、フラッシングによってインク滴吐出能力を回復させることが好ましく、フラッシングを可能な限り効果的に行うことが望まれている。
【0007】
このような事情を鑑みて、例えば特開2000−117993では、通常のフラッシングの事前にノズル開口近傍における増粘したインクを微振動させて、フラッシングを効果的に実行することができるインクジェット式記録装置が提案されている。このインクジェット式記録装置によれば、フラッシングのみでインク吐出能力を回復させることが可能なインクの増粘範囲を広げることができ、従来ではクリーニングでなければ対処することができなかったインクの増粘に対しても、フラッシングにより対処することが可能となった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、メニスカス近傍のインクは、時間の経過とともに徐々に増粘が進行するが、とりわけ、インク溶媒の蒸発が始まってから短期間におけるインクの増粘は、通常、図8(a)、(b)、(c)に示すようにして進行する。図8(a)、(b)、(c)は、ノズル開口の拡大図であって、ノズル開口におけるメニスカス近傍のインクの増粘の進行を示す概念図である。
【0009】
ノズル開口51におけるメニスカス近傍のインクは、インク溶媒が蒸発する前は増粘していないインク50aのみによって構成されているが(図8(a)参照)、時間の経過とともに、ノズル開口の縁近傍からノズル開口の中心部へ向かって徐々に増粘が進行する(図8(b)参照)。そして、最終的には、メニスカス全体が所定の粘度にまで増粘したインク50bによって構成されることとなる(図8(c)参照)。
【0010】
その後、ノズル開口からノズルの奥に向かって、インクの増粘が更に進行することとなる。
【0011】
上述のように、インク溶媒の蒸発が始まってから短期間(一例として、0℃〜40℃の低湿度環境下においては1秒〜15分程度)におけるインクの増粘進行過程には、メニスカス近傍のインクが不均一な粘度を有するインクによって構成されている状態(増粘初期におけるメニスカス近傍のインクの不均一な増粘状態)(図8(b)参照)と、メニスカス全体が略均一な粘度を有するインクによって構成されている状態(図8(a)(c)参照)と、が存在する。
【0012】
メニスカス近傍のインクに不均一な増粘が生じている状態でフラッシングを行うと、インクの粘度差によって、例えばメニスカスが斜めに深く入り込んだりする等して、メニスカスの挙動が不安定となる場合があり好ましくない。また、フラッシング時にノズル開口から吐出させるインクが、増粘したインク50bに引きずられてしまい、ノズル開口から適切な方向へインクが吐出されなかったり、ノズル開口内に気泡が取り込まれてしまったりする場合がある。
【0013】
一方、上述の不均一増粘状態からインクの増粘が更に進行して、メニスカス近傍のインク全体の粘度が略均一化されると、フラッシング時におけるメニスカスの挙動は比較的安定したものとなり、ノズル開口から適切な方向へインクを吐出させることができるようになる。従って、この場合には、フラッシングのみによって、ノズルのインク吐出能力を適切に回復させることができるようになる。
【0014】
そして、インクの増粘が更に進行すると、フラッシングでは十分に対応することができなくなり、ノズルのインク吐出能力を回復させるためにはクリーニングが必要となる。
【0015】
このように、インクの増粘により悪化したノズルのインク吐出能力をフラッシングにより回復させるためには、インク溶媒の蒸発が進行してメニスカス近傍のインクの全体が増粘した場合に加えて、メニスカス近傍のインクの一部が増粘して不均一な増粘状態となっている場合に対しても、適切なフラッシングを行うことが必要である。
【0016】
本発明は、上述した事情を考慮してなされたものであり、メニスカス近傍の液体が不均一な増粘状態となっている場合であっても、効果的なフラッシングを行って、ノズルの液体吐出能力を回復させることができる液体噴射装置および液体噴射装置のフラッシング方法を提供することを目的とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明は、ノズル開口に連通する圧力発生室に対応して設けられた圧力発生素子により、前記圧力発生室内の液体に圧力変動を生じさせて前記ノズル開口から液体を吐出させる液体噴射ヘッドと、前記圧力発生室に供給される液体を貯留する液体貯留部と、前記圧力発生素子を動作させることにより、前記ノズル開口から液体を吐出させてフラッシングを行う制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記ノズル開口におけるメニスカス近傍の液体の増粘の程度を判定する増粘度判定機能と、前記増粘度判定機能が判定したメニスカス近傍の液体の増粘の程度に基づいて、メニスカス近傍の液体に不均一な増粘が生じているか否かを判断する増粘状態判断機能と、前記増粘状態判断機能によってメニスカス近傍の液体に不均一な増粘が生じていると判断された場合に、前記圧力発生素子を動作させて、前記圧力発生室内の液体に微少な圧力変動を生じさせてメニスカス近傍の液体を微振動させる微振動機能と、前記微振動機能によってメニスカス近傍の液体を微振動させた後に、前記圧力発生素子を動作させて、フラッシングを行う不均一増粘対策フラッシング機能と、を有することを特徴とする液体噴射装置である。
【0018】
ここで、メニスカス近傍の液体に「不均一な増粘」が生じている状態とは、メニスカス近傍の液体のうち、一部分のみが他の部分よりも増粘しており、メニスカス近傍の液体全体が不均一な粘度を有する状態を意味する。
【0019】
前記増粘度判定機能は、印刷が停止している時間を計測する停止時間計測機能を有し、前記増粘状態判断機能は、前記停止時間計測機能によって計測された印刷の停止時間が所定の不均一増粘発生印刷停止時間に該当する場合には、メニスカス近傍の液体に不均一な増粘が生じていると判断することが好ましい。
【0020】
前記記録ヘッドのノズル形成面を封止するキャッピング手段を更に備え、前記増粘状態判断機能は、前記ノズル形成面が前記キャッピング手段により封止されているキャッピング時間を計測するキャッピング時間計測機能を有し、前記増粘状態判断機能は、前記キャッピング時間計測機能によって計測されたキャッピング時間が所定の不均一増粘状態時間に該当する場合には、メニスカス近傍の液体に不均一な増粘が生じていると判断することが好ましい。
【0021】
前記制御手段は、前記増粘状態判断機能によってメニスカス近傍の液体が不均一な増粘を生じていないと判断した場合に、前記圧力発生素子を動作させて、フラッシングを行う略均一増粘対策フラッシング機能を、更に有することが好ましい。
【0022】
メニスカス近傍の液体に「略均一な増粘」が生じている状態とは、メニスカス近傍の液体全体が増粘しており、メニスカス近傍の液体全体が略均一な粘度を有する状態であって、ノズル内の増粘した液体を除去するためにフラッシングで十分に対応することができる状態を意味する。
【0023】
前記制御手段は、メニスカス近傍の液体の種類を判断する液体種判断機能を更に有し、前記増粘状態判断機能は、前記液体種判断機能によって判断された液体の種類を考慮して、メニスカス近傍の液体に不均一な増粘が生じているか否かを判断することが好ましい。
【0024】
前記圧力発生素子は圧電振動子であって、この圧電振動子の圧電振動により前記圧力発生室内に圧力変動を生じさせることが好ましい。
【0025】
前記微振動機能によりメニスカス近傍の液体を微振動させる際に、前記圧電振動子に印加される駆動電圧の波形は、前記圧電振動子に駆動電圧を印加する際に前記圧電振動子が保有する電圧から始まる波形であることが好ましい。
【0026】
前記制御手段の有する前記各機能は、液体噴射装置の電源投入時もしくは印刷開始時に実行されることが好ましい。
【0027】
前記ノズル開口から吐出される液体は顔料を含んでいることが好ましい。
【0028】
本発明は、ノズル開口に連通する圧力発生室に対応して設けられた圧力発生素子により、前記圧力発生室内の液体に圧力変動を生じさせて前記ノズル開口から液体を吐出させる液体噴射ヘッドと、前記圧力発生室に供給される液体を貯留する液体貯留部と、を備えた液体噴射装置のフラッシング方法において、前記ノズル開口におけるメニスカス近傍の液体の増粘の程度を判定する増粘度判定工程と、前記増粘度判定工程において判定されたメニスカス近傍の液体の増粘の程度に基づいて、メニスカス近傍の液体に不均一な増粘が生じているか否かを判断する増粘状態判断工程と、前記増粘判断工程においてメニスカス近傍の液体に不均一な増粘が生じていると判断された場合に、前記圧力発生素子を動作させて、前記圧力発生室内の液体に微少な圧力変動を生じさせてメニスカス近傍の液体を微振動させる微振動工程と、前記微振動工程においてメニスカス近傍の液体を微振動させた後に、前記圧力発生素子を動作させて、フラッシングを行う不均一増粘対策フラッシング工程と、を備えたことを特徴とする液体噴射装置のフラッシング方法である。
【0029】
前記増粘度判定工程は、印刷が停止している時間を計測する停止時間計測工程を有し、前記増粘状態判断工程は、前記停止時間計測工程によって計測された印刷の停止時間が所定の不均一増粘発生印刷停止時間に該当する場合には、メニスカス近傍の液体に不均一な増粘が生じていると判断することが好ましい。
【0030】
前記液体噴射装置は、前記記録ヘッドのノズル形成面を封止するキャッピング手段を更に備え、前記増粘状態判断工程は、前記ノズル形成面が前記キャッピング手段により封止されているキャッピング時間を計測するキャッピング時間計測工程を有し、前記増粘状態判断工程は、前記キャッピング時間計測工程によって計測されたキャッピング時間が所定の不均一増粘状態時間に該当する場合には、メニスカス近傍の液体に不均一な増粘が生じていると判断することが好ましい。
【0031】
前記増粘状態判断工程においてメニスカス近傍の液体が不均一な増粘を生じていないと判断した場合に、前記圧力発生素子を動作させて、フラッシングを行う略均一増粘対策フラッシング工程を、更に有することが好ましい。
【0032】
メニスカス近傍の液体の種類を判断する液体種判断工程を更に有し、前記増粘状態判断工程は、前記液体種判断工程によって判断された液体の種類を考慮して、メニスカス近傍の液体に不均一な増粘が生じているか否かを判断することが好ましい。
【0033】
前記圧力発生素子は圧電振動子であって、この圧電振動子の圧電振動により前記圧力発生室内に圧力変動を生じさせることが好ましい。
【0034】
前記微振動工程においてメニスカス近傍の液体を微振動させる際に、前記圧電振動子に印加される駆動電圧の波形は、前記圧電振動子に駆動電圧を印加する際に前記圧電振動子が保有する電圧から始まる波形であることが好ましい。
【0035】
前記制御手段の有する前記各工程は、液体噴射装置の電源投入時もしくは印刷開始時に実行されることが好ましい。
【0036】
前記ノズル開口から吐出される液体は顔料を含んでいることが好ましい。
【0037】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0038】
図1は、本発明の一実施の形態によるインクジェット式記録装置の構成を説明する概略ブロック図である。図2は、インクジェット式記録装置の斜視図であり、(a)は装置全体の概略構成を示す図であり、(b)はリニアエンコーダおよびスリット検出器を上方から見た図であり、(c)はリニアエンコーダおよびスリット検出器を側方から見た図である。図3は、縦振動モードの圧電振動子を用いた記録ヘッドを示す図であり、(a)は全体の概略構成を示す図であり、(b)はノズル開口部分の拡大図である。図4は、記録ヘッドにおける電気的構成を説明するブロック図である。図5は、制御部の有する各機能を示す概略図である。図6は、印刷動作に至るまでの一連の動作を示すフローチャートである。図7は、メニスカス近傍のインクを微振動させる場合に圧電振動子に対して印加される微振動用の駆動電圧の一例を示す図である。
【0039】
本実施の形態の液体噴射装置は、インクジェット式記録装置(インクジェット式プリンタ)であって、図1に示すように、プリンタコントローラ1と、プリントエンジン2と、を備えている。
【0040】
プリンタコントローラ1は、図1に示すように、外部インターフェース3(外部I/F)と、各種データを一時的に記憶するRAM4と、制御プログラム等を記憶したROM5と、CPU等を含んで構成された制御部(制御手段)6と、クロック信号を発生する発振回路7と、インクジェット式記録ヘッド(液体噴射ヘッド)8に供給する駆動信号を発生する駆動信号発生部9と、駆動信号や、印刷データに基づいて展開されたドットパターンデータ(ビットマップデータ)等をプリントエンジン2に送信する内部インターフェース10(内部I/F)と、を備えている。
【0041】
更に、プリンタコントローラ1は、着脱可能に保持された記録媒体の一種であるメモリカード11と、記録媒体保持部として機能するカードスロット12と、メモリカード11に記録された情報を制御部6に送信するカードインターフェース13(カードI/F)と、を備えている。上記のメモリカード11には、駆動信号の波形に関するデータが記録されている。なお、メモリカード11以外の記録媒体としては、例えば、フロッピーディスク、ハードディスク、光磁気ディスク等も使用することができる。
【0042】
外部I/F3は、例えば、キャラクタコード、グラフィック関数、イメージデータ等によって構成される印刷データを、図示しないホストコンピュータ等から受信するようになっている。また、ビシー信号(BUSY)やアクノレッジ信号(ACK)が、外部I/F3を通じて、ホストコンピュータ等に対して出力されるようになっている。
【0043】
RAM4は、受信バッファ4A、中間バッファ4B、出力バッファ4C及びワークメモリと(図示せず)を有している。受信バッファ4Aは、外部I/F3を介して受信された印刷データを一時的に記憶し、中間バッファ4Bは、制御部6により変換された中間コードデータを記憶し、出力バッファ4Cは、ドットパターンデータを記憶するようになっている。ここで、ドットパターンデータとは、中間コードデータ(例えば、階調データ)をデコード(翻訳)することにより得られる印字データである。
【0044】
ROM5には、各種データ処理を行わせるための制御プログラム(制御ルーチン)の他に、フォントデータ、グラフィック関数等が記憶されている。
【0045】
制御部6は、ROM5に記憶された制御プログラムに従って各種の制御を行うようになっている。例えば、受信バッファ4A内の印刷データを読み出すと共にこの印刷データを変換して中間コードデータとし、当該中間コードデータを中間バッファ4Bに記憶させるようになっている。また、制御部6は、中間バッファ4Bから読み出した中間コードデータを解析し、ROM5に記憶されているフォントデータ及びグラフィック関数等を参照して、ドットパターンデータに展開(デコード)するようになっている。そして、制御部6は、必要な装飾処理を施した後に、このドットパターンデータを出力バッファ4Cに記憶させるようになっている。
【0046】
インクジェット式記録ヘッド8の1回の主走査により記録可能な1行分のドットパターンデータが得られた場合、当該1行分のドットパターンデータが、出力バッファ4Cから内部I/F10を通じて順次インクジェット式記録ヘッド8に出力されるようになっている。出力バッファ4Cから1行分のドットパターンデータが出力されると、展開済みの中間コードデータが中間バッファ4Bから消去され、次の中間コードデータについての展開処理が行われるようになっている。
【0047】
更に、制御部6は、図5に示すように、インク種判断機能(液体種判断機能)40、増粘度判定機能41、増粘状態判断機能42、微振動機能43、不均一増粘対策フラッシング機能44、略均一増粘対策フラッシング機能45、およびクリーニング機能46を有している。後述するように、制御部6のこれらの各機能が実行されることによって、フラッシングやクリーニングが効果的に行われ、各ノズル開口51では印刷に適したメニスカスが形成されるようになっている。
【0048】
駆動信号発生部9は、印刷時やフラッシング時にノズル開口51からインクを吐出させるための吐出用の駆動信号(吐出駆動信号)と、メニスカス近傍のインクを微振動させてノズル開口51付近のインクを撹拌するための微振動用の駆動信号(微振動駆動信号)と、を発生させることができる。そして、駆動信号発生部9は、吐出駆動信号および微振動駆動信号のうち選択された所定の駆動信号を、内部I/Fに出力することができるようになっている。
【0049】
なお、この駆動信号発生部9は、ロジック回路によって構成することもできるし、CPU,ROM5,RAM4等によって構成した制御回路によって構成することもできる。
【0050】
一方、プリントエンジン2は、キャリッジ機構16と、紙送り機構17と、インクジェット式記録ヘッド8と、を含んで構成されている。
【0051】
キャリッジ機構16は、図2(a)乃至図2(c)に示すように、ガイド部材20に対して移動自在に取り付けられるとともにインクジェット式記録ヘッド8及びインクカートリッジ19を搭載可能なキャリッジ21と、駆動プーリ22と従動プーリ23との間に架け渡されると共にキャリッジ21に接続されたタイミングベルト24と、駆動プーリ22を回転させるパルスモータ25と、記録紙18の幅方向(主走査方向)に平行な状態でプリンタ筐体26に架設されたリニアエンコーダ27と、キャリッジ21に取り付けられリニアエンコーダ27の複数のスリット28を検出可能なスリット検出器29と、を備えている。
【0052】
本実施の形態のリニアエンコーダ27は、透明な薄板状部材であり、図2(b)に示すように、スリット28が360dpiのピッチで形成されている。スリット検出器29は、例えば、フォトインタラプタによって構成され得る。
【0053】
このようなキャリッジ機構16によれば、パルスモータ25の作動により、記録紙18の幅方向(主走査方向)に沿ってキャリッジ21が往復移動し、これに伴って、キャリッジ21に搭載されたインクジェット式記録ヘッド8も、主走査方向に沿って移動するようになっている。このキャリッジ21の移動は、ホームポジション側の基準位置を起点にして行われるようになっている。
【0054】
ここでホームポジションとは、電源が投入されていない場合等のように印刷が行われていない状態が長時間に亘る場合等に、キャリッジ21を待機させる位置である。本実施の形態では、図2(a)における右端部にホームポジションが設けられている。なお、このホームポジションには、インクジェット式記録ヘッド8に形成されたノズル形成面52を封止することができるキャッピング機構30が設けられている。
【0055】
一方、基準位置は、ホームポジションから少し左側の位置に設定されている。具体的には、記録紙18の右側縁とキャッピング機構30との間に、基準位置が設定されている。
【0056】
また、キャリッジ21が移動すると、キャリッジ21と共にスリット検出器29も移動するようになっている。この移動に伴って、スリット検出器29は、リニアエンコーダ27の複数のスリット28を順次検出し、スリット28のピッチに応じたパルス状の検出信号を出力するようになっている。このスリット検出器29からの検出信号に基づいて、制御部6はインクジェット式記録ヘッド8の位置を認識するようになっている。
【0057】
具体的には、制御部6は、キャリッジ21が基準位置に配置された状態で位置カウンタのカウント値をリセットし、キャリッジ21の移動に伴って出力されるスリット検出器29からの立ち上がりパルス(検出信号)を受信し、パルスの受信毎に位置カウンタをカウントアップする。これにより、位置カウンタのカウント値が、キャリッジ21の位置、即ち、インクジェット式記録ヘッド8の走査位置を示すヘッド位置情報となる。ここで、位置カウンタは、例えば、RAM4のワークメモリ(図示せず)に設けられ得るが、カウンタを別個に設けても良い。
【0058】
従って、リニアエンコーダ27及びスリット検出器29は、走査位置情報出力手段として機能する。すなわち、キャリッジ21(インクジェット式記録ヘッド8)の主走査に伴ってインクジェット式記録ヘッド8の位置に関する情報(検出信号)が、リニアエンコーダ27及びスリット検出器29によって出力されるようになっている。また、制御部6及び位置カウンタ(RAM4)は、走査位置保持手段として機能する。すなわち、スリット検出器29からの検出信号に基づいて位置カウンタのカウント値(ヘッド位置情報)を更新した後の当該更新されたカウント値が、制御部6及び位置カウンタ(RAM4)によって保持されるようになっている。
【0059】
ホームポジションに設けられたキャッピング機構30は、キャリッジ21に搭載されたインクジェット式記録ヘッド8がホームポジションに移動した時に、インクジェット式記録ヘッド8のノズル形成面52を封止して、ノズル形成面52との間に密閉空間を形成するように構成されている。このように、ノズル形成面52をキャッピング機構30によって封止することにより、ノズル開口51におけるメニスカスからのインク溶媒の蒸発を効果的に防ぐことができる。
【0060】
キャッピング機構30の下方にはポンプユニット31が設けられている。ポンプユニット31は、インク排出管(図示せず)を介してキャッピング機構30に取り付けられており、ノズル形成面52とキャッピング機構30とにより形成された密閉空間に負圧を与えることができるようになっている。
【0061】
キャッピング機構30の記録領域側近傍にはワイピング手段32が設けられている。ワイピング手段32は、例えばインクジェット式記録ヘッド8の移動軌跡に対して水平方向へ進退できるように配置されており、ゴム等の弾性板を具備している。そして、このワイピング手段32は、キャリッジ21がキャッピング機構30側に往復移動するに際して、必要に応じてインクジェット式記録ヘッド8のノズル形成面52を払拭することができるように構成されている。
【0062】
紙送り機構17は、紙送りモータと紙送りローラ等を含んで構成されており、インクジェット式記録ヘッド8の記録動作に連動させて、記録紙18を順次送り出すことができるようになっている。即ち、この紙送り機構17は、記録紙18を副走査方向である記録紙18の送り方向へ移動させることができるようになっている。
【0063】
インクジェット式記録ヘッド8は、図3(a)(b)に示すように、縦振動モードの圧電振動子73を具備している。
【0064】
すなわち、インクジェット式記録ヘッド8は、図3(a)に示すように、例えばプラスチックからなる箱体状のケース71の収納室72内に、櫛歯状の圧電振動子73が一方の開口から挿入されて、櫛歯状先端部73aが他方の開口に臨んでいる。その他方の開口側のケース71の表面(下面)には流路ユニット74が接合され、各櫛歯状先端部73aは、それぞれ流路ユニット74の所定部位に当接固定されている。
【0065】
圧電振動子73は、圧電体73bを挟んで共通内部電極73cと個別内部電極73dとを交互に積層した板状の振動子板を、ドット形成密度に対応させて櫛歯状に切断した状態で構成されている。そして、共通内部電極73cと個別内部電極73dとの間に電位差を与えることにより、各圧電振動子73は、積層方向と直交する振動子長手方向へ伸縮するようになっている。
【0066】
流路ユニット74は、流路形成板75を間に挟んでノズルプレート76と弾性板77を両側に積層することにより構成されている。
【0067】
流路形成板75は、ノズルプレート76に複数開設されたノズル開口51とそれぞれ連通して圧力発生室81隔壁を隔てて列設された複数の圧力発生室81と、各圧力発生室81の少なくとも一端に連通する複数のインク供給部82と、全インク供給部82が連通する細長い共通インク室83と、が形成された板材である。
【0068】
例えば、シリコンウエハーをエッチング加工することにより、細長い共通インク室83が形成され、共通インク室83の長手方向に沿って圧力発生室81がノズル開口51のピッチに合わせて形成され、各圧力発生室81と共通インク室83との間に溝状のインク供給部82が形成され得る。なお、この場合、圧力発生室81の一端にインク供給部82が接続し、このインク供給部82とは反対側の端部近傍でノズル開口51が位置するように配置されている。また、共通インク室83は、インクカートリッジ19(液体貯留部)に貯留されているインクを圧力発生室81に供給するための室であり、その長手方向のほぼ中央にインク供給管84が連通している。なお、インクカートリッジ19には、ブラックインクの他に、イエロー、シアン、マゼンタ等のカラーインクが貯留されており、各インクは、対応する圧力発生室81に供給されるようになっている。
【0069】
弾性板77は、ノズルプレート76とは反対側の流路形成板75の面に積層されており、ステンレス板87の下面側にPPS等の高分子体フィルムを弾性体膜88としてラミネート加工した二重構造を有している。そして、圧力発生室81に対応する部分のステンレス板87をエッチング加工して、圧電振動子73を当接固定するためのアイランド部89が形成されている。
【0070】
上述のように縦振動モードの圧電振動子73を具備するインクジェット式記録ヘッド8では、例えば、圧電振動子73を放電して振動子長手方向へ伸長させることにより、アイランド部89がノズルプレート76側に押圧され、アイランド部89周辺の弾性体膜88が変形して圧力発生室81が収縮するようになっている。また、圧力発生室81の収縮状態から圧電振動子73を充電して長手方向へ収縮させると、弾性体膜88の弾性により圧力発生室81が膨張するようになっている。そして、圧力発生室81を一旦膨張させてから収縮させることにより、圧力発生室81内のインク圧力が高まって、ノズル開口51からインク滴50cが吐出されるようになっている(図3(b)参照)。このように、圧力発生室81を一旦膨張させてから収縮させることにより、ノズル開口51からインクを吐出させる際に圧電振動子73に印加する駆動電圧の大きさを特に高くする必要がない。このため、インク吐出時に、インクがノズル内に急激に引き込まれてメニスカスを悪化させたり、ノズル内に気泡を取り込んだり、等の不都合を防止することができる。
【0071】
従って、このような構成を有するインクジェット式記録ヘッド8は、ノズル開口51に連通する圧力発生室81に対応して設けられた圧電振動子73の圧電振動により、圧力発生室81内のインクに圧力変動を生じさせて、ノズル開口51からインクを吐出させることができるようになっている。また、圧電振動子73に印加する駆動電圧の大きさや波形を適宜選択して、圧電振動子73の圧電振動を調節することにより、ノズル開口51からインクを吐出させない状態でメニスカス近傍のインクを微振動させることも可能である。
【0072】
このようなインクジェット式記録ヘッド8の電気的構成は図1および図4に示すように構成されている。
【0073】
すなわち、図1に示すように、インクジェット式記録ヘッド8は、電気的に順次接続されたシフトレジスタ55、ラッチ回路56、レベルシフタ57、スイッチ58及び圧電振動子73を備えている。さらに、図4に示すように、これらのシフトレジスタ55、ラッチ回路56、レベルシフタ57、スイッチ58及び圧電振動子73は、それぞれ、記録ヘッド8の各ノズル開口51毎に設けられたシフトレジスタ素子55A〜55N、ラッチ素子56A〜56N、レベルシフタ素子57A〜57N、スイッチ素子58A〜58N及び圧電振動子73A〜73Nから構成されている。
【0074】
そして、これらのシフトレジスタ55、ラッチ回路56、レベルシフタ57、スイッチ58及び制御部6は、駆動電圧供給手段として機能する。すなわち、駆動信号発生部9における所定の駆動信号から駆動電圧を生成し、記録ヘッド8の圧電振動子73に供給するようになっている。
【0075】
次に、図5を用いて、制御部6の有するインク種判断機能40、増粘度判定機能41、増粘状態判断機能42、微振動機能43、不均一増粘対策フラッシング機能44、略均一増粘対策フラッシング機能45、およびクリーニング機能46の各機能について説明する。
【0076】
インク種判断機能40は、ノズル開口51におけるメニスカス近傍のインクの種類を判断するようになっている。
【0077】
一般に、各ノズルに供給されるインクの種類は、予め決められていることが多い。従って、インク種判断機能40は、各圧電振動子73と各圧電振動子73に対応する各ノズルとを識別し、識別した各圧電振動子73および各ノズルから各ノズル開口51におけるメニスカス近傍のインクの種類を判断するようになっている。インク種判断機能40は、このようなインク種判断方法の他に、他のインク種判断方法によっても各ノズル開口51におけるメニスカス近傍のインクの種類を判断することが可能である。例えば、インク種判断機能40は、キャリッジ21に搭載されたインクカートリッジ19から送られてくる信号に基づいて、各ノズルにおけるインクの種類を判断することも可能であり、また、メニスカス近傍のインクの種類を検知するインク検知装置を別途設置して、このインク検知装置の検知結果に基づいて、各ノズルにおけるインクの種類を判断することも可能である。
【0078】
増粘度判定機能41は、前記ノズル開口51におけるメニスカス近傍のインクの増粘の程度を判定するために、印刷が停止している時間を計測する停止時間計測タイマー47(停止時間計測機能)を有している。
【0079】
一般に、インク溶媒は、印刷が停止している時間に応じて徐々にメニスカスから蒸発するので、印刷が停止している時間に基づいて、メニスカス近傍のインクの増粘の程度を判定することができる。増粘度判定機能41は、停止時間計測タイマー47の計測している印刷停止時間を検知することにより、メニスカス近傍のインクの増粘の程度を判定するようになっている。
【0080】
増粘状態判断機能42は、インク種判断機能40が判断したインクの種類と、増粘度判定機能41の検知した印刷停止時間と、に基づいて、メニスカス近傍のインクに不均一な増粘が生じているか否かを判断するようになっている。
【0081】
すなわち、増粘状態判断機能42は、停止時間計測タイマー47によって計測された印刷停止時間に基づいて、各ノズルのインク吐出能力を回復させるためにフラッシングおよびクリーニングのうちいずれが必要なのかを判断するようになっている。
【0082】
増粘状態判断機能42は、クリーニングが必要であると判断した場合には、フラッシングでは正常な吐出能力を回復させることができない過度の増粘が、メニスカス近傍のインクに生じていると判断する。そして、後述のクリーニング機能46によって各ノズルのクリーニングが行われるようになっている。
【0083】
フラッシングが必要であると判断された場合であって、停止時間計測タイマー47によって計測された印刷停止時間が「所定の不均一増粘発生印刷停止時間」に該当する場合には、メニスカス近傍のインクに不均一な増粘が生じていると判断するようになっている。また、増粘状態判断機能42は、印刷停止時間が「所定の不均一増粘発生印刷停止時間」に該当しない場合には、メニスカス近傍のインクに略均一な増粘が生じていると判断するようになっている。
【0084】
なお、フラッシングおよびクリーニングのうちいずれが必要なのかについての判断、および、「所定の不均一増粘発生印刷停止時間」は、インク種判断機能40により判断されたインクの種類に応じて決定されるようになっている。
【0085】
微振動機能43は、増粘状態判断機能42によってメニスカス近傍のインクが不均一な増粘状態となっていると判断された場合に、圧電振動子73を動作させて、前記圧力発生室81内のインクに微少な圧力変動を生じさせてメニスカス近傍のインクを微振動させるようになっている。
【0086】
すなわち、微振動機能43は、駆動信号発生部9からの駆動信号に基づく微振動用の駆動電圧を、シフトレジスタ55、ラッチ回路56、レベルシフタ57、およびスイッチ58を介して圧電振動子73に供給するようになっている。このように、微振動用の駆動電圧を圧電振動子73に供給することにより、圧電振動子73に微振動用の圧電振動を生じさせて、メニスカス近傍のインクを微振動させることができるようになっている。
【0087】
不均一増粘対策フラッシング機能44は、微振動機能43によってメニスカス近傍のインクを微振動させた後に、圧電振動子73を動作させて、フラッシングを行うようになっている。
【0088】
すなわち、不均一増粘対策フラッシング機能44は、駆動信号発生部9からの駆動信号に基づく不均一増粘対策フラッシング用の駆動電圧を、シフトレジスタ55、ラッチ回路56、レベルシフタ57、およびスイッチ58を介して圧電振動子73に供給するようになっている。このように、不均一増粘対策フラッシング用の駆動電圧を圧電振動子73に供給することにより、圧電振動子73に不均一増粘対策フラッシング用の圧電振動を生じさせて、フラッシングを実行させることができるようになっている。
【0089】
略均一増粘対策フラッシング機能45は、メニスカス近傍のインクに略均一な増粘が生じていると増粘状態判断機能42によって判断された場合に、圧電振動子73を動作させて、略均一増粘対策フラッシングを行うようになっている。
【0090】
すなわち、略均一増粘対策フラッシング機能45は、駆動信号発生部9からの駆動信号に基づく略均一増粘対策フラッシング用の駆動電圧を、シフトレジスタ55、ラッチ回路56、レベルシフタ57、およびスイッチ58を介して圧電振動子73に供給するようになっている。このように、略均一増粘対策フラッシング用の駆動電圧を圧電振動子73に供給することにより、圧電振動子73に略均一増粘対策フラッシング用の圧電振動を生じさせて、フラッシングを実行させることができるようになっている。
【0091】
クリーニング機能46は、フラッシングでは正常な吐出能力を回復させることができない過度の増粘がメニスカス近傍のインクに生じていると増粘状態判断機能42によって判断された場合に、インクジェット式記録ヘッド8のノズル形成面52をキャッピング機構30により封止して、ノズル形成面52とキャッピング機構30との間に密閉空間を形成するようになっている。そして、ポンプユニット31によってこの密閉空間に負圧を与えて、ノズル内や圧力発生室81内等における増粘したインクを、ノズルから強制的に吸引するようになっている。
【0092】
なお、メニスカス近傍のインクに「不均一な増粘」が生じている状態とは、メニスカス近傍のインクのうち、一部分のみが他の部分よりも増粘しており、メニスカス近傍のインク全体が不均一な粘度を有する状態を意味する。また、メニスカス近傍のインクに「略均一な増粘」が生じている状態とは、メニスカス近傍のインク全体が増粘しており、メニスカス近傍のインク全体が略均一な粘度を有する状態であって、ノズル内の増粘したインクを除去するためにフラッシングで十分に対応することができる状態を意味する。また、メニスカス近傍のインクに「過度の増粘」が生じている状態とは、メニスカス近傍のインク全体が増粘しており、メニスカス近傍のインクが略均一な粘度を有する状態であって、ノズル内の増粘したインクを除去するためにフラッシングでは十分に対応することができずクリーニングによって対応する必要がある状態を意味する。
【0093】
次に、このような構成を有する本実施の形態のインクジェット式記録装置の作用について説明する。
【0094】
まず、上述したインクジェット式記録装置における記録紙18への具体的な印刷動作について説明する。
【0095】
シフトレジスタ55、ラッチ回路56、レベルシフタ57、スイッチ58及び制御部6が駆動電圧供給手段として機能し、駆動信号発生部9において発生させた駆動信号に基づいて駆動電圧が生成され、この駆動電圧が圧電振動子73に供給される。
【0096】
圧電振動子73は、供給された駆動電圧に応じて充電或いは放電がなされ、振動子長手方向へ伸長あるいは収縮して圧電振動する。この圧電振動子73の圧電振動に応じて、圧力発生室81内では圧力変動が生じ、ノズル開口51からインクが吐出される。
【0097】
例えば、圧電振動子73が、供給された駆動電圧によって充電されて長手方向へ収縮すると、圧力発生室81は膨張して室内の圧力が低下する。これにより、ノズル開口51におけるメニスカスは、圧力発生室81側に若干引き寄せられ、また、インクカートリッジ19に貯留されている所定のインクが、圧力発生室81内に新たに供給される。
【0098】
そして、圧電振動子73が、供給された駆動電圧によって放電されて長手方向へ伸長すると、圧力発生室81は収縮して室内の圧力は上昇する。これにより、圧力発生室81内のインクは圧縮され、これに応じてノズル開口51からインクが吐出される。
【0099】
このように、圧電振動子73に供給する駆動電圧の大きさや波形等を適宜調整することにより、ノズル開口51からのインク滴の吐出量や吐出タイミング等を制御することができる。このため、圧電振動子73に適切な駆動電圧を適切なタイミングで供給することにより、ノズル開口51から所望のインクを吐出させて、文字等の画像を記録紙18に印刷することができる。
【0100】
次に、上述した印刷動作が比較的長時間行われていなかった状態で新たに印刷動作を行う場合に、新たな印刷動作が行われるまでの一連の動作について、図6のフローチャートを用いて説明する。
【0101】
例えば電源投入時や印刷開始時のように、印刷動作が比較的長時間行われていなかった状態で新たな印刷動作を行う場合、新たな印刷動作で使用される各ノズルに対して、制御部6の有する各機能に基づいてフラッシングあるいはクリーニングを行った後に、具体的な印刷動作が行われる。
【0102】
すなわち、印刷動作が比較的長時間行われていなかった状態で新たに印刷動作を行う場合、制御部6に所定の印刷指令が入力されると(STEP1)、増粘度判定機能41によって、停止時間計測タイマー47により計測されている各ノズルにおける印刷停止時間が検知される(増粘度判定工程)(STEP2)。
【0103】
また、インク種判断機能40により、各ノズル開口51におけるメニスカス近傍のインクの種類が判断される(インク種判断工程)(STEP3)。すなわち、インク種判断機能40は、上述のインク種判断方法によって各ノズルにおけるインクを識別して、各ノズル開口51におけるメニスカス近傍のインクの種類を判断する。
【0104】
そして、増粘状態判断機能42は、インク種判断機能40により判断されたインクの種類と、増粘度判定機能41により計測された印刷停止時間と、に基づいて、各ノズル開口51におけるメニスカス近傍のインクに不均一な増粘が生じているか否かを判断する(増粘状態判断工程)(STEP4)。
【0105】
この時、増粘状態判断機能42は、停止時間計測タイマー47によって計測された印刷停止時間に基づいて、各ノズルのインク吐出能力を回復させるためにフラッシングおよびクリーニングのうちいずれが必要なのかを判断する(STEP5)。
【0106】
増粘状態判断機能42は、クリーニングが必要であると判断した場合には、メニスカス近傍のインクに過度の増粘が生じていると判断する。
【0107】
また、増粘状態判断機能42は、フラッシングが必要であると判断した場合であって、停止時間計測タイマー47によって計測された印刷停止時間が「所定の不均一増粘発生印刷停止時間」に該当する場合には、メニスカス近傍のインクに不均一な増粘が生じていると判断し、印刷停止時間が「所定の不均一増粘発生印刷停止時間」に該当しない場合には、メニスカス近傍のインクに略均一な増粘が生じていると判断する(STEP6)。
【0108】
なお、フラッシングおよびクリーニングのうちいずれが適切なのかについての判断、および、「所定の不均一増粘発生印刷停止時間」は、インク種判断機能40により判断されたインクの種類に応じて、増粘状態判断機能42により決定されている。従って、カラー印刷のように様々なインクを用いる場合であっても、増粘状態判断機能42は、各ノズルにおけるインクの種類に応じて、メニスカス近傍のインクに不均一な増粘が生じる増粘初期における、各ノズルにおけるインクの吐出が不安定な状態となる可能性や、インクの吐出が不安定な状態となる時間帯、等を考慮して、メニスカス近傍のインクに不均一な増粘が生じているか否かを判断するようになっている。これにより、増粘状態判断機能42は、各ノズルにおけるインクの種類に応じて、不均一増粘、略均一増粘、あるいは過度の増粘の発生の有無を正確に判断することができる。
【0109】
メニスカス近傍のインクが不均一な増粘を生じていると増粘状態判断機能42によって判断されたノズルに対しては、微振動機能43により微振動動作が行われる(微振動工程)(STEP7)。
【0110】
すなわち、微振動用の駆動電圧を圧電振動子73に印可して、圧電振動子73に圧電振動を生じさせて、圧力発生室81内のインクに微少な圧力変動を生じさせる。この時、ノズル開口51からインクを吐出させない状態でメニスカス近傍のインクを微振動させるような駆動電圧が、圧電振動子73に印可される。このような微振動用の駆動電圧の一例を図7に示す。図7において、実線は、微振動用の駆動電圧の波形を示し、破線は、ノズル開口51からインクを吐出させる場合に圧電振動子73に印可される駆動電圧の波形の一例を示している。なお、図7に示すように、微振動用の駆動電圧は、ノズル開口51からインクを吐出させる場合に圧電振動子73に印可される駆動電圧よりも電位が低い。
【0111】
圧電振動子73に印可される微振動用の駆動電圧の波形は、圧電振動子73に駆動電圧を印加する際に圧電振動子73が保有する電圧から始まる波形であることが好ましい。このような波形を有する駆動電圧を圧電振動子73に印加することにより、圧電振動子73に印可される電圧の急激な変化を防いで、圧電振動子73の急激な伸長、収縮を防止して、圧力発生室81内における急激な圧力変動を防止することができる。これにより、メニスカスの挙動を安定な状態に保ち、ノズル開口51からインクを吐出させない状態で、メニスカス近傍のインクを微振動させることができる。
【0112】
このように、微振動機能43によってメニスカス近傍のインクが微振動させられると、これらのインクは撹拌され、メニスカス近傍のインクの粘度が均一化される。
【0113】
そして、微振動機能43によってメニスカス近傍のインクが微振動させられたノズルでは、不均一増粘対策フラッシング機能44によりフラッシングが行われる(不均一増粘対策フラッシング工程)(STEP8)。
【0114】
すなわち、メニスカス近傍のインクを微振動させて粘度を均一化した後に、不均一増粘対策フラッシング用の駆動電圧を圧電振動子73に印可して、圧電振動子73に圧電振動を生じさせることにより、増粘したインクをノズル開口51から吐出させてフラッシングを行う(不均一増粘対策フラッシング)。このフラッシングは、メニスカス近傍のインクの粘度が微振動により略均一化された状態で行われるので、インクの粘度差に起因するフラッシング時の不都合を防止することができる。また、フラッシングが効果的に行われ、印刷に適したメニスカスを効率良く形成することができる。
【0115】
一方、増粘状態判断機能42において、メニスカス近傍のインクに不均一な増粘は生じていないが略均一な増粘は生じていると判断されたノズルに対しては、略均一増粘対策フラッシング機能45によりフラッシングが行われる(略均一増粘対策フラッシング工程)(STEP9)。
【0116】
すなわち、メニスカス近傍のインクを微振動させることなく、略均一増粘対策フラッシング用の駆動電圧を圧電振動子73に印可して、圧電振動子73に圧電振動を生じさせることにより、ノズル開口51から増粘したインクを吐出させてフラッシングを行う(略均一増粘対策フラッシング)。メニスカス近傍のインクが略均一な増粘を生じている場合には、メニスカス近傍のインクの粘度は略均一な状態となっている。このため、メニスカス近傍のインクを微振動させなくても、メニスカス近傍のインクの粘度が略均一な状態でフラッシングが行われるので、インクの粘度差に起因するフラッシング時の不都合を防止することができる。また、フラッシングにより、増粘したインクを排除して、所望の粘度を有するフレッシュなインクによって印刷を行うことが可能となる。
【0117】
一方、増粘状態判断機能42において、メニスカス近傍のインクに、不均一な増粘は生じていないが過度の増粘が生じていると判断されたノズルに対しては、クリーニング機能46によりクリーニングが行われる(クリーニング工程)(STEP10)。
【0118】
すなわち、クリーニング機能46によって、インクジェット式記録ヘッド8のノズル形成面52をキャッピング機構30により封止して、ノズル形成面52とキャッピング機構30との間に密閉空間を形成する。そして、ポンプユニット31により密閉空間に負圧を与えて、ノズル内や圧力発生室81内等における増粘したインクを、強制的にノズルから吸引する。これにより、当該ノズルでは、増粘したインクが除去され、印刷に適したメニスカスが形成される。このように、ノズル内のインクの増粘が過度に進行した場合であっても、増粘したインクがクリーニングによってノズルから除去され、このノズルにおけるインク吐出能力は回復される。
【0119】
このように、印刷動作が比較的長時間行われていなかった状態で新たに印刷動作を行う場合には、上述のようにして不均一増粘対策フラッシング、略均一増粘対策フラッシング、或いはクリーニングが行われ、各ノズルでは、増粘したインクが取り除かれて、印刷に適したメニスカスが形成される。そして、このようなフラッシング動作あるいはクリーニング動作に引き続いて、上述した印刷動作が行われ、記録紙18に文字等の画像が印刷される(STEP11)。
【0120】
以上説明したように本実施の形態によれば、フラッシング時にメニスカスが不均一増粘状態となっている場合には、制御部6の各機能に基づき、具体的なフラッシング動作に先立って、メニスカス近傍のインクが微振動させられる。これにより、メニスカス近傍のインク全体の粘度が略均一化された状態で、具体的なフラッシング動作が行われ、フラッシングを効果的に行うことができる。
【0121】
このように、フラッシングを効果的に行うことにより、フラッシング時に吐出させるインク滴の数(フラッシングショット数)を減らすことができ、ノズルのインク吐出能力を回復させるために必要な時間を短縮化することができるとともに、フラッシング時に吐出させるインク量を減少させることができる。また、インクの粘度差に起因する不都合を防止することができ、例えば、フラッシング時に吐出されるインクが正規の方向からずれた方向へ飛翔したり、フラッシングの際に気泡がノズル内に取り込まれてしまったり、というような不都合を防止することができ、安定した状態で適切なフラッシングを行うことができる。
【0122】
また、印刷停止時間が比較的長時間となって、フラッシング時にメニスカスが略均一増粘状態となっている場合には、メニスカス近傍のインク全体の粘度が略均一となっているので、制御部6の各機能に基づき、メニスカス近傍のインクを微振動させることなく、具体的なフラッシング動作を行うことができる。このように、メニスカス近傍のインク全体の粘度を略均一にした状態でフラッシングを行うので、安定な状態でフラッシングを行うことができる。また、メニスカス近傍のインクを微振動させずに具体的なフラッシング動作が行われるので、インク吐出能力を回復させるための一連の動作に要する時間が不必要に長期化することを防ぐことができる。
【0123】
ところで、インク吐出動作やメニスカス近傍のインクの微振動動作は、圧電振動子73に印加される駆動電圧の大きさや波形によって変動する。このため、圧電振動子73に印加する駆動電圧の大きさや波形を調整することにより、インクの吐出挙動やメニスカスの挙動を容易に制御することができる。
【0124】
また、上述のようなインクジェット式記録装置では、各種のカラーインクの他に、顔料インクや染料インク等といった様々なタイプのインクを、ノズル開口51から吐出させることができる。特に、顔料インクは、印刷動作が比較的長時間行われなかった場合に、メニスカス近傍で増粘し易く、ノズル開口51部において固体状で付着して、インクの吐出を阻害することがある。しかしながら、メニスカス近傍の顔料インクに不均一な増粘が生じている場合であっても、上述した制御部6の各機能に基づき、フラッシング動作の前に顔料インクを微振動させることにより、メニスカス近傍のインクの不均一な増粘は解消され、フラッシングを効果的に行うことができる。
【0125】
なお、フラッシング或いはクリーニングは、印刷動作が比較的長時間行われていなかった場合に、ノズルのインク吐出能力を回復させるために行われるのものである。従って、例えば電源投入時あるいは印刷開始時に、制御部6のインク種判断機能40、増粘度判定機能41、増粘状態判断機能42、微振動機能43、不均一増粘対策フラッシング機能44、略均一増粘対策フラッシング機能45、クリーニング機能46といった各機能を実施することができるようにすることが好ましい。電源投入時や印刷開始時の直前は印刷が行われていないので、電源投入時や印刷開始時には、ノズル開口51からインクが吐出されていない状態が比較的長時間継続している可能性が高い。このため、電源投入時あるいは印刷開始時にフラッシング或いはクリーニングを行うことは非常に効果的である。
【0126】
また、メニスカス近傍のインクの粘度を可能な限り均一化させる観点からは、できるだけ短い周期で、メニスカス近傍のインクを微振動させることが好ましいため、圧電振動子73に印加する電圧の周波数は高い周波数とすることが望ましい。しかしながら、その一方で、圧電振動子73に印加する電圧の周波数を過度に高周波数にすると、メニスカスの挙動が不安定となり、微振動動作後のフラッシング動作や印刷動作に悪影響を及ぼすことがある。従って、圧電振動子73に印加する電圧の周波数は、メニスカスの挙動を安定に保つことができる程度の高周波数とすることが好ましい。
【0127】
次に、上述した本実施の形態の一変形例について説明する。
【0128】
制御部6の増粘度判定機能41は、停止時間計測タイマー47(停止時間計測機能)の代わりに、インクジェット式記録ヘッド8のノズル形成面52がキャッピング機構30により封止されているキャッピング時間を計測するキャッピング時間計測タイマー(キャッピング時間計測機能)48を有していてもよい。
【0129】
この場合、制御部6の増粘度判定機能41は、停止時間計測タイマー47により計測されている各ノズルにおけるキャッピング時間を検知することにより、メニスカス近傍のインクの増粘の程度を判定するようになっている。
【0130】
そして、制御部6の増粘状態判断機能42は、インク種判断機能40において判断されたインクの種類と、増粘度判定機能41により検知されたキャッピング時間と、に基づいて、各ノズル開口51におけるメニスカス近傍のインクに不均一な増粘が生じているか否かを判断するようになっている。
【0131】
他の構成は上述した本実施の形態と略同一である。上述した本実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0132】
本変形例では、インクジェット式記録ヘッド8のノズル形成面52がキャッピング機構30により比較的長時間封止されている状態で新たに印刷動作を行う場合に、上述した増粘度判定工程、インク種判断工程、増粘状態判断工程、微振動工程、不均一増粘対策フラッシング工程、略均一増粘対策フラッシング工程、およびクリーニング工程といった各工程が行われるようになっている。
【0133】
すなわち、インクジェット式記録ヘッド8のノズル形成面52がキャッピング機構30により比較的長時間封止されている状態で新たな印刷動作を行う場合、制御部6に所定の印刷指令が入力されると、増粘度判定機能41によって、キャッピング時間計測タイマー48により計測されている各ノズルにおけるキャッピング時間が検知される(増粘度判定工程)。
【0134】
また、インク種判断機能40により、各ノズル開口51におけるメニスカス近傍のインクの種類が判断される(インク種判断工程)。
【0135】
そして、増粘状態判断機能42は、インク種判断機能40により判断されたインクの種類と、増粘度判定機能41により計測されたキャッピング時間と、に基づいて、各ノズル開口51におけるメニスカス近傍のインクに不均一な増粘が生じているか否かを判断する(増粘状態判断工程)。
【0136】
この時、増粘状態判断機能42は、キャッピング時間計測タイマー48によって計測されたキャッピング時間に基づいて、各ノズルのインク吐出能力を回復させるためにフラッシングおよびクリーニングのうちいずれが必要なのかを判断する。
【0137】
増粘状態判断機能42は、クリーニングが必要であると判断した場合には、メニスカス近傍のインクに過度の増粘が生じていると判断する。
【0138】
また、増粘状態判断機能42は、フラッシングが必要であると判断した場合であって、キャッピング時間計測タイマー48によって計測されたキャッピング時間が「所定の不均一増粘状態時間」に該当する場合には、メニスカス近傍のインクに不均一な増粘が生じていると判断し、キャッピング時間が「所定の不均一増粘状態時間」に該当しない場合には、メニスカス近傍のインクに略均一な増粘が生じていると判断する。
【0139】
なお、フラッシングおよびクリーニングのうちいずれが適切なのかについての判断、および、「所定の不均一増粘状態時間」は、インク種判断機能40により判断されたインクの種類に応じて、増粘状態判断機能42により決定されている。従って、カラー印刷のように様々なインクを用いる場合であっても、増粘状態判断機能42は、各ノズルにおけるインクの種類に応じて、不均一増粘、略均一増粘、あるいは過度の増粘の発生の有無を確実に判断することができる。
【0140】
メニスカス近傍のインクが不均一な増粘を生じていると増粘状態判断機能42によって判断されたノズルに対しては、微振動機能43により微振動動作が行われる(微振動工程)。
【0141】
そして、微振動機能43によってメニスカス近傍のインクが微振動させられたノズルでは、不均一増粘対策フラッシング機能44によりフラッシングが行われる(不均一増粘対策フラッシング工程)。
【0142】
一方、増粘状態判断機能42において、メニスカス近傍のインクに不均一な増粘は生じていないが略均一な増粘は生じていると判断されたノズルに対しては、略均一増粘対策フラッシング機能45によりフラッシングが行われる(略均一増粘対策フラッシング工程)。
【0143】
一方、増粘状態判断機能42において、メニスカス近傍のインクに、不均一な増粘は生じていないが過度の増粘が生じていると判断されたノズルに対しては、クリーニング機能46によりクリーニングが行われる(クリーニング工程)。
【0144】
このように、インクジェット式記録ヘッド8のノズル形成面52がキャッピング機構30により比較的長時間封止されている状態で新たに印刷動作を行う場合には、上述のようにして不均一増粘対策フラッシング、略均一増粘対策フラッシング、或いはクリーニングが行われ、各ノズルでは、増粘したインクが取り除かれて、印刷に適したメニスカスが形成される。そして、このようなフラッシング動作あるいはクリーニング動作に引き続いて、上述した印刷動作が行われ、記録紙18に文字等の画像が印刷される。
【0145】
以上説明したように本変形例においても、上記の本実施の形態と同様に、フラッシング時にメニスカスが不均一増粘状態となっている場合には、制御部6の各機能に基づき、具体的なフラッシング動作に先立って、メニスカス近傍のインクが微振動させられる。これにより、メニスカス近傍のインク全体が略均一な粘度となって具体的なフラッシング動作が行われるので、フラッシングを効果的に行うことができる。
【0146】
また、キャッピング時間が比較的長時間となって、フラッシング時にメニスカス近傍のインクが略均一な増粘を生じている場合には、メニスカス近傍のインク全体の粘度が略均一となっているので、制御部6の各機能に基づき、メニスカス近傍のインクを微振動させることなく具体的なフラッシング動作が行われる。このため、安定な状態でフラッシングを行うことができ、また、インク吐出能力を回復させるための一連の動作に要する時間が不必要に長期化することを防ぐことができる。
【0147】
なお、上記の本実施の形態及びその変形例では、縦振動モードの圧電振動子73を圧力発生素子として使用した記録ヘッド8を例示したが、他の圧力発生素子を用いることも可能であり、例えば、たわみ振動モードの圧電振動子を用いることもできる。
【0148】
たわみ振動モードの圧電振動子とは、圧力発生室の外壁に取り付けられた圧電振動子のたわみを利用して圧力発生室内の圧力を変動させる圧電振動子であって、例えば特開2001−260369において開示されているようなタイプのたわみ振動モードの圧電振動子が考えられる。
【0149】
たわみ振動モードの圧電振動子を使用した記録ヘッドは、所定の駆動電圧を当該圧電振動子に印可して充電、放電を行い、当該圧電振動子をたわませる。このように圧電振動子をたわませることにより、圧力発生室の外壁は当該圧電振動子によって押圧され、圧力発生室内の圧力は変動させられる。
【0150】
そして、このたわみ振動モードの記録ヘッドを用いた場合でも、上記の本実施の形態およびその変形例における場合と同様の効果を得ることができる。
【0151】
なお、上記の本実施の形態及びその変形例では、プリンタコントローラ1はコンピュータシステムによって構成されている。
【0152】
また、制御部6の有する前記各機能をコンピュータシステムにより実現させるためのプログラムや、このプログラムを記録したコンピュータ読取り可能な記録媒体を利用することも可能である。
【0153】
更に、制御部6の有する前記各機能が、コンピュータシステム上で動作するOS等のプログラムによって実現される場合、当該OS等のプログラムを制御する各種命令を含むプログラムや、このプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を利用することも可能である。
【0154】
なお、上記の本実施の形態及びその変形例では、インクジェット式記録装置に本発明を適用した例を説明したが、これに限定されるものではない。本発明は、例えば、液晶ディスプレー等のカラーフィルタの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレー、FED等の電極形成に用いられる電極材噴射ヘッド、バイオチップの製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド、等の液体噴射ヘッドを備えた液体噴射装置にも適用することができる。
【0155】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、メニスカス近傍の液体に不均一な増粘が生じているか否かが判断され、メニスカス近傍の液体に不均一な増粘が生じていると判断された場合には、フラッシングが行われる前に、メニスカス近傍の液体が微振動させられる。
【0156】
これにより、不均一な増粘を生じてメニスカス近傍の液体全体が不均一な粘度を有する場合であっても、当該微振動によってメニスカス近傍の液体の粘度が均一化され、不均一な増粘を解消した状態でフラッシングが行われる。このため、メニスカス近傍の液体に不均一な増粘が生じている場合であっても、フラッシングを効果的に行うことができ、ノズルの液体吐出能力を回復させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態によるインクジェット式記録装置の構成を説明する概略ブロック図である。
【図2】インクジェット式記録装置の斜視図であり、(a)は装置全体の概略構成を示す図であり、(b)はリニアエンコーダおよびスリット検出器を上方から見た図であり、(c)はリニアエンコーダおよびスリット検出器を側方から見た図である。
【図3】縦振動モードの圧電振動子を用いた記録ヘッドを示す図であり、(a)は全体の概略構成を示す図であり、(b)はノズル開口部分の拡大図である。
【図4】記録ヘッドにおける電気的構成を説明するブロック図である。
【図5】制御部の有する各機能を示す概略図である。
【図6】インクジェット式記録装置において印刷動作に至るまでの一連の動作を示すフローチャートである。
【図7】メニスカス近傍のインクを微振動させる場合に圧電振動子に印加する微振動用の駆動電圧の一例を示す図である。
【図8】ノズル開口におけるメニスカスを形成するインクの増粘状態を示す図である。
【符号の説明】
1 プリンタコントローラ
2 プリントエンジン
6 制御部
8 記録ヘッド
16 キャリッジ機構
17 紙送り機構
18 記録紙
19 インクカートリッジ
20 ガイド部材
21 キャリッジ
30 キャッピング機構
31 ポンプユニット
40 インク種判断機能
41 増粘度判定機能
42 増粘状態判断機能
43 微振動機能
44 不均一増粘対策フラッシング機能
45 略均一増粘対策フラッシング機能
46 クリーニング機能
47 停止時間計測タイマー
48 キャッピング時間計測タイマー
50a、50b、50c インク
51 ノズル開口
52 ノズル形成面
73 圧電振動子

Claims (4)

  1. ノズル開口に連通する圧力発生室に対応して設けられた圧力発生素子により、前記圧力発生室内の液体に圧力変動を生じさせて前記ノズル開口から液体を吐出させる液体噴射ヘッドと、
    前記圧力発生室に供給される液体を貯留する液体貯留部と、
    前記圧力発生素子を動作させることにより、前記ノズル開口から液体を吐出させてフラッシングを行う制御手段と、を備え、
    前記制御手段は、
    前記ノズル開口におけるメニスカス近傍の液体の増粘の程度を判定する増粘度判定機能と、
    前記増粘度判定機能が判定したメニスカス近傍の液体の増粘の程度に基づいて、メニスカス近傍の液体に不均一な増粘が生じているか否かを判断する増粘状態判断機能と、
    前記増粘状態判断機能によってメニスカス近傍の液体に不均一な増粘が生じている第1の状態と判断された場合に、前記圧力発生素子を動作させて、前記圧力発生室内の液体に微少な圧力変動を生じさせてメニスカス近傍の液体を微振動させる微振動機能と、
    前記微振動機能によってメニスカス近傍の液体を微振動させた後に、前記圧力発生素子を動作させて、フラッシングを行う不均一増粘対策フラッシング機能と、
    メニスカス近傍の液体が不均一な増粘を生じておらず、前記第1の状態よりも増粘した状態である第2の状態と前記増粘状態判断機能によって判断された場合に、微振動を行わせずに、前記圧力発生素子を動作させて、フラッシングを行う略均一増粘対策フラッシング機能と、
    を有することを特徴とする液体噴射装置。
  2. 前記増粘度判定機能は、印刷が停止している時間を計測する停止時間計測機能を有し、
    前記増粘状態判断機能は、前記停止時間計測機能によって計測された印刷の停止時間が所定の不均一増粘発生印刷停止時間に該当する場合には、メニスカス近傍の液体に不均一な増粘が生じていると判断することを特徴とする請求項1に記載の液体噴射装置。
  3. 前記記録ヘッドのノズル形成面を封止するキャッピング手段を更に備え、
    前記増粘状態判断機能は、前記ノズル形成面が前記キャッピング手段により封止されているキャッピング時間を計測するキャッピング時間計測機能を有し、
    前記増粘状態判断機能は、前記キャッピング時間計測機能によって計測されたキャッピング時間が所定の不均一増粘状態時間に該当する場合には、メニスカス近傍の液体に不均一な増粘が生じていると判断することを特徴とする請求項1に記載の液体噴射装置。
  4. ノズル開口に連通する圧力発生室に対応して設けられた圧力発生素子により、前記圧力発生室内の液体に圧力変動を生じさせて前記ノズル開口から液体を吐出させる液体噴射ヘッドと、前記圧力発生室に供給される液体を貯留する液体貯留部と、を備えた液体噴射装置のフラッシング方法において、
    前記ノズル開口におけるメニスカス近傍の液体の増粘の程度を判定する増粘度判定工程と、
    前記増粘度判定工程において判定されたメニスカス近傍の液体の増粘の程度に基づいて、メニスカス近傍の液体に不均一な増粘が生じているか否かを判断する増粘状態判断工程と、
    前記増粘判断工程においてメニスカス近傍の液体に不均一な増粘が生じている第1の状態であると判断された場合に、前記圧力発生素子を動作させて、前記圧力発生室内の液体に微少な圧力変動を生じさせてメニスカス近傍の液体を微振動させる微振動工程と、
    前記微振動工程においてメニスカス近傍の液体を微振動させた後に、前記圧力発生素子を動作させて、フラッシングを行う不均一増粘対策フラッシング工程と、
    メニスカス近傍の液体が不均一な増粘を生じておらず、前記第1の状態よりも増粘した状態である、第2の状態であると前記増粘状態判断工程において判断した場合に、前記圧力発生素子を動作させて、フラッシングを行う略均一増粘対策フラッシング工程と、
    を備えたことを特徴とする液体噴射装置のフラッシング方法。
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