しかしながら、上述の遮光技術には以下の問題点がある。即ち、前記遮光膜については、TFTアレイ基板上の積層構造の多層化、複雑化に伴い、平坦に成膜することが困難となっている。その結果、遮光膜表面の凸凹において入射光が乱反射し、或いは更に多重反射して、TFTの半導体層ないしその一部であるチャネル領域に入射するおそれがある。更に、Al系配線等の高反射率の配線が存在すると、その上方に遮光膜を配置することで該配線の上面を遮光しても、なお乱反射や多重反射を十分に防止できないという問題点がある。
加えて、画素の非開口領域に入射する光が、配線表面で乱反射等したり、配線のコンタクトホールを介して漏れたりすることで、開口領域内に侵入し、コントラスト比の低下を招きかねないという問題点もある。
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、光リーク電流の発生を抑制し、高品位な表示を可能とする電気光学装置、及び、そのような電気光学装置を具備してなる電子機器を提供することを課題とする。
本発明の第1電気光学装置は上記課題を解決するために、基板上に、表示領域を画定する表示用電極と、該表示用電極を駆動するために設けられた導電層と、該導電層の少なくとも一部に電気的に接続されており、上面が遮光性絶縁膜により覆われた電子素子とを備えている。
本発明の第1電気光学装置によれば、表示用電極の駆動用に設けられた電子素子の上面が、遮光性絶縁膜に覆われている。即ち、遮光性絶縁膜は、電子素子上面と周囲との絶縁性を担保する層間絶縁膜(又はその一部)としての機能と、電子素子の上面を遮光する遮光膜としての機能とを兼ね備えている。ここでいう「電子素子」は、遮光の必要がある電子素子、例えば光が照射されると特性が変動する半導体素子等を指している。一般には、画素選択用のTFTがこれに該当する。但し、この電子素子は、必ずしもTFTである必要はなく、これ以外に、例えば薄膜ダイオード素子等の他の素子形態をとってもよく、また画素選択以外の目的で設けられた素子であってもよい。
通常用いられる遮光膜は導電性であり、走査線やデータ線等の配線が利用されることも多い。そうした場合、遮光膜は電子素子との間に層間絶縁膜を介して設ける必要があり、どうしても電子素子から離間してしまう。そして、わずかなりとも生じた間隙に入った光は、電子素子の表面に照射される。こうした電子素子への光の入射経路を予測することも考えられるが、装置内部で反射した光の進行方向は複雑であり、反射光が当たることが予期される部位に遮光膜を設けることは至難である。
これに対し、本発明に係る遮光性絶縁膜によれば、絶縁性を有することから、電子素子そのものを被覆することが可能である。そのため、電子素子の上面にどの方向から進入してくる光も確実に遮断することができる。通常、装置に対する照射光は電子素子の上面側より照射されるので、このように遮光性絶縁膜が電子素子を直接覆う構成をとれば、上述した電子素子に対する光の入射経路を途中で遮断する方法よりは、はるかに簡単で確実に光リーク電流の発生を防止できる。
また、本発明に係る遮光性絶縁膜は、他の絶縁膜を介して電子素子を覆うようにしてもよい。この場合には、遮光性絶縁膜は電子素子に近接して配置されることが可能であり、例えば電子素子の上面を、層間絶縁膜を介さずに覆うこともできる。よって、やはり通常の遮光膜と比べて優れた遮光性能を実現できる。
このように電子素子の上面が遮光性絶縁膜により覆われる構成とすると、照射光やその反射光の電子素子への入射を、効率よく遮断することができる。従って、電子素子における光リーク電流の発生が阻止或いは抑制され、これが原因となって生じる画質の不均一やコントラスト比の低下、フリッカ特性の劣化等を防止することが可能となる。
尚、本発明に係る「遮光性絶縁膜」は、理想的には“光を完全反射或いは完全吸収する絶縁膜”であるが、それ以外にも、何らの対策も講じない場合に比べて電子素子への照射光量をわずかでも低減させることが可能なものも含む。例えば、遮光性絶縁膜の光透過率がある程度低い場合には、良好な遮光性能を発揮することから、通常用いられるような遮光膜を不要とすることができ、構造設計上、及び製造上、非常に有利となる。一方、光透過率がある程度高い場合には、通常用いられるような遮光膜を適宜に併用するとよい。
また、本発明に係る遮光性絶縁膜の絶縁性は十分な程度にあればよく、その電気抵抗は、所謂絶縁体ほど高くなくともよい。例えば、電子素子又は電子素子より上層の導電膜と遮光性絶縁膜との絶縁性を確保するには、それらの接触界面に通常の絶縁膜を介在させるとよい。
若しくは、本発明に係る遮光性絶縁膜は、絶縁膜と遮光膜との多層膜であってもよい。例えば、通常遮光膜として用いられる導電性の遮光材料からなる膜の上面側と下面側に、絶縁膜を積層させた3層構造とするとよい。このような構成をとることで、十分な遮光性と絶縁性とを併せ持つことが可能となる。
また、本発明において「上面が覆われている」とは、上面が完全に覆われていることの他、上述の如く上面に対する光の照射防止という効果が奏せられる限りにおいて、上面の概ね全域や大部分或いは特定の一部分(例えば、TFTにおけるチャネル領域)が覆われていることをも意味する。言い換えれば「電子素子の上面」とは、電子素子の上面の全てである必要はなく、例えば、光リーク電流が発生し得る電子素子の一例たる半導体素子における、半導体層或いは活性層の上面のみを覆うのでもよい。更に、該半導体層或いは活性層の上面を全て覆うのが好ましいものの、その一部を覆うだけでも、相応の効果が得られる。
また更に、「遮光性絶縁膜により覆われている」とは、遮光性絶縁膜に直に覆われていることの他、前記効果が奏せられる限りにおいて、他の絶縁膜を介して(例えば、絶縁性の高い絶縁膜を下地として)遮光性絶縁膜に覆われていることをも意味する。また、遮光性絶縁膜の上層には、層間絶縁膜を介して導電膜が形成されてもよいし、遮光性絶縁膜自体が層間絶縁膜となる構成をとることも可能である。何れの場合にも、何らの対策を講じられない場合に光が照射され得る上面が遮光性絶縁膜で覆われるのに応じて該照射が防止或いは低減される。
例えば、近年の液晶装置においては、高精細化に伴い、低抵抗のアルミニウム(Al)が配線材料として用いられるようになっている。しかしながら、Alの反射率が高いので、Al系配線は入射光を乱反射させ、上記のコントラスト比低下や光リーク電流の発生といった問題を発生させている。よって、本発明の如く、電子素子の上面を遮光性絶縁膜で覆うのは、非常に有効である。
本発明の第1電気光学装置の一態様では、前記電子素子の下面は、前記遮光性絶縁膜と同一又は異なる遮光性絶縁膜により覆われている。
この態様では、電子素子の上面と下面とが遮光性絶縁膜により覆われることから、電子素子の概ね全面が遮光され、電子素子に入射しようとする光は、概ねどの角度から入射しても内部の電子素子への照射が防止される。電子素子の下面からは、より下層における反射光や、戻り光が照射されるが、こうした光も遮光性絶縁膜によって遮られる。ここに「戻り光」とは、基板の裏面反射の他に、例えば、当該電気光学装置をライトバルブとして複数組み合わせて複板式のプロジェクタを構成した場合における、他のライトバルブからプリズム等の合成光学系を突き抜けてくる光を含む。電子素子へ向けて基板側(即ち、下側)から侵入しようとする光全般をいう。加えて、電子素子の「側面」についても覆うようにすれば、電子素子の全面が遮光され、どの角度から光が入射しても内部の電子素子への照射が防止される。
従って、光リーク電流の発生を、根本的に阻止することができる。特に、所定部分のどの部位においても反射が防止されることから、入射光の装置内部での乱反射に対して非常に有効である。このように電子素子を遮光性絶縁膜内部に閉じ込める構成をとることは、いわば究極的な遮光方法であり、通常採られているように電子素子への光の入射経路を中断させる方法よりは、はるかに簡単で確実に光リーク電流の発生を防止できる。
尚、下面を覆う遮光性絶縁膜は、上面を覆う遮光性絶縁膜と同一膜又は異なる膜であり、後者の場合、異なる材料で構成してもよいし、異なる層構造をとるようにしてもよい。
本発明の第1電気光学装置の他の態様では、前記電子素子の下面は、前記同一又は異なる遮光性絶縁膜よりも絶縁性の高い絶縁膜を介して前記同一又は異なる遮光性絶縁膜に覆われている。
この態様では、電子素子の下面が絶縁膜を介して遮光性絶縁膜に覆われている。この絶縁膜は、一般的に用いられる絶縁膜であってよく、下面側の遮光性絶縁膜よりも高い絶縁性を有している。そのため、電子素子の下面を確実に絶縁することが可能となる。
例えば、液晶装置等におけるTFTはトップゲート型であることが多く、下面側に配置される半導体層は、完全に層間絶縁される必要がある。そこで、前記絶縁膜によって半導体層と外部との絶縁を行ったうえで遮光性絶縁膜を設けることで、半導体層を確実に絶縁し、TFTの素子特性の変化を防止し、良好な状態で動作させることができる。
本発明の第2電気光学装置は上記課題を解決するために、基板上に、画像表示領域に設けられた表示用電極と、該表示用電極を駆動するために設けられた導電層と、該導電層の少なくとも一部に電気的に接続されており、遮光性絶縁膜を下地として形成された電子素子とを備える。
本発明の第2電気光学装置によれば、電子素子が遮光性絶縁膜を下地として形成されているので、電子素子の下面は自ずと、遮光性絶縁膜により直接的に遮光されると共に絶縁される。即ち、本発明に係る遮光性絶縁膜は、電子素子下面に対し、その下層との絶縁性を担保する層間絶縁膜(又はその一部)としての機能と、電子素子の下面を遮光する遮光膜としての機能とを兼ね備えている。
電子素子の下面には、基板面等の下層側からの反射光や、戻り光が照射されようとするが、このように遮光性絶縁膜を設けることで、電子素子への入射光を効率よく遮断することができる。よって、本発明の第2電気光学装置は、遮光性絶縁膜に覆われるのが上面であるか下面であるかを除けば、本発明の第1電気光学装置と同様の作用及び効果を奏する。
そのため、本発明の第2電気光学装置は、液晶装置等に設けられるTFTのように下面側からも光が照射される可能性がある場合に特に好適であり、そのような場合であっても、遮光性絶縁膜が電子素子下面を覆い、遮光しつつ絶縁することから、電子素子を良好に動作させることが可能である。尚、この場合の電子素子は、遮光性絶縁膜上に直接形成されてもよいが、遮光性絶縁膜上に形成した絶縁膜(但し、層間絶縁膜ではない)の上に形成するようにしてもよい。
本発明の第1及び第2の電気光学装置の一態様によれば、前記電子素子及び前記遮光性絶縁膜は、前記表示領域のうち、各画素の開口領域の周囲に設けられた非開口領域内に配置されている。
この態様では、電子素子と遮光性絶縁膜とが各画素の非開口領域内に配置されている。ここに非開口領域は、変調光を透過させる各画素の開口領域の周囲に設けられ、相隣接する表示領域を区分するために光を透過させない領域、例えばブラックマトリクス等の遮光膜に規定された領域である。尚、各画素の開口領域とは、各画素において、実際に表示に寄与する光が透過又は反射により出射される領域をいう。
装置に対する照射光は、各画素の開口領域には直接入射するものの、非開口領域には直接入射しない。非開口領域には、わずかに内部反射等により回り込んだ成分のみが入射される。そのため、一般には、非透明部材や遮光する必要のある部材は、非開口領域に配置される。このような非開口領域に本発明に係る電子素子を配置すると、電子素子に対する遮光効果を高めることが可能となる。例えば遮光性絶縁膜にわずかでも光透過性があれば、電子素子に光が照射されてしまう。このように、遮光性絶縁膜のみでは、電子素子に完全な遮光が施すことができない場合には、特に有効である。
更に、遮光性絶縁膜は光を反射又は吸収する材料を含むため、仮に各画素の開口領域に設ければ、この部分のみ光が透過しない又は透過し難くなっており、表示像に影響するおそれがある。そこで、遮光性絶縁膜は、電子素子を覆う部分からそれ以外の部分まで含めた全体が非開口領域内に配置されることが好ましい。
本発明の第1及び第2の電気光学装置の一態様によれば、前記電子素子は、前記遮光性絶縁膜を貫通するコンタクトホール内に設けられた遮光性導電膜によって前記配線と電気的に接続されている。
この態様では、電子素子は、遮光性絶縁膜を貫通して引き出される電極配線により配線と接続されている。その際、電極配線を引き出すために遮光性絶縁膜にコンタクトホールが設けられるが、このコンタクトホールから光が漏れ、電子素子に当たるおそれがある。そこで、電極配線を遮光性導電膜とし、この電極配線でコンタクトホール内面を覆うことで遮光性導電膜内の光漏れを防止するようにしている。よって、遮光性絶縁膜の電子素子に対する遮光性能を維持しつつ、電子素子を、遮光性絶縁膜外の配線に接続させることが可能である。
本発明の第1及び第2の電気光学装置の他の態様によれば、この電子素子と配線とが遮光性絶縁膜を貫通するコンタクトホールによって電気的に接続された態様では、前記遮光性導電膜は、プラグとして形成されている。
この場合は、電極配線がプラグとして、遮光性絶縁膜に開口されたコンタクトホール内に形成されているので、コンタクトホールないは、遮光性材料で完全に埋め込まれることになる。よって、遮光性能をより確実に維持することが可能である。
本発明の第1及び第2の電気光学装置の他の態様によれば、前記遮光性絶縁膜は、多層膜として構成されている。
この態様では、遮光性絶縁膜は、例えば、アモルファスシリコン、酸化シリコン或いは窒化シリコン等の絶縁膜を多層化することによって構成されている。このように構成することで、遮光性絶縁膜としての反射率又は吸収率を高めることが可能である。尚、絶縁性を保つことが可能な場合には、層間に導電層が挿入されていてもよい。
本発明の第3電気光学装置は上記課題を解決するために、基板上に、画像表示領域に設けられた表示用電極と、該表示用電極を駆動するために設けられた導電層と、該導電層の少なくとも一部に電気的に接続されており、上面が反射性絶縁膜により覆われた電子素子とを備える。
本発明の第3電気光学装置によれば、表示用電極の駆動用に設けられた電子素子の上面が、反射性絶縁膜に覆われている。この反射性絶縁膜は、電子素子上面と周囲との絶縁性を担保する層間絶縁膜(又はその一部)としての機能と、電子素子の上面に入射しようとする光を反射して電子素子に光を入射させない機能とを兼ね備えている。即ち、本発明に係る反射性絶縁膜によれば、絶縁性を有することから、電子素子そのものを被覆することが可能であることから、電子素子の上面にどの方向から進入してくる光も確実に遮断することができる。
従って、電子素子の上面が反射性絶縁膜により覆われる構成とすると、照射光やその反射光の電子素子への入射を、効率よく遮断することができる。その結果、電子素子における光リーク電流の発生が阻止或いは抑制され、これが原因となって生じる画質の不均一やコントラスト比の低下、フリッカ特性の劣化等を防止することが可能となる。
尚、本発明に係る「反射性絶縁膜」は、何らの対策も講じない場合に比べて電子素子への照射光量をわずかでも低減させることが可能なものも含む。また、本発明に係る反射性絶縁膜の絶縁性は十分な程度にあればよく、その電気抵抗は、所謂絶縁体ほど高くなくともよい。例えば、電子素子又は電子素子より上層の導電膜と反射性絶縁膜との絶縁性を確保するには、それらの接触界面に通常の絶縁膜を介在させるとよい。若しくは、本発明に係る反射性絶縁膜は、絶縁層と高反射率層との多層膜であってもよい。
また更に、「反射性絶縁膜により覆われている」とは、反射性絶縁膜に直に覆われていることの他、前記効果が奏せられる限りにおいて、他の絶縁膜を介して(例えば、絶縁性の高い絶縁膜を下地として)反射性絶縁膜に覆われていることをも意味する。また、反射性絶縁膜の上層には、層間絶縁膜を介して導電膜が形成されてもよいし、反射性絶縁膜自体が層間絶縁膜となる構成をとることも可能である。何れの場合にも、何らの対策を講じられない場合に光が照射され得る上面が反射性絶縁膜で覆われるのに応じて該照射が防止或いは低減される。
本発明の第3電気光学装置の一態様によれば、前記反射性絶縁膜は、屈折率が相異なる複数の層が、前記電子素子側ほど屈折率が低くなるように積層されてなる積層膜である。
この態様によれば、反射性絶縁膜は、あたかも光ファイバのように複数の層の屈折率差を利用して、屈折率の異なる層の界面で光を全反射させる構造となっている。即ち、光ファイバのコアに対するクラッドの役割を、電子素子に近い側に設けられる低屈折率層が担う。これにより、光ファイバにおいてクラッドから光が外部に漏れないのと同様に、電子素子側に光が漏れるのが防止される。
このような構成は、例えば、電子素子側にSiO2等からなる低屈折率層を配し、反対側にSiN又はSiON等からなる高屈折率層を配することで実現できる。
本発明の第3電気光学装置の他の態様によれば、前記電子素子の上側又は下側の少なくとも一方に、前記電子素子に接するように前記反射性絶縁膜が設けられている。
通常、装置に対する照射光は電子素子の上面側より照射されるので、このように反射性絶縁膜が電子素子を直接覆う構成をとれば、上述した電子素子に対する光の入射経路を途中で遮断する方法よりは、はるかに簡単で確実に光リーク電流の発生を防止できる。
本発明の第3電気光学装置の他の態様によれば、前記電子素子の上側又は下側の少なくとも一方に、層間絶縁膜を介して前記反射性絶縁膜が設けられている。
本発明に係る反射性絶縁膜は、このように他の絶縁膜を介して電子素子を覆うようにしてもよい。この場合には、反射性絶縁膜は電子素子に近接して配置されることが可能であり、例えば電子素子の上面を、層間絶縁膜を介さずに覆うこともできる。よって、やはり通常の遮光膜と比べて優れた遮光性能を実現できる。
本発明の電子機器は上記課題を解決するために、上述した本発明の電気光学装置(但し、その各種態様を含む)を具備してなる。
本発明の電子機器によれば、上述した本発明の電気光学装置を具備してなるので、高品位の表示が可能な各種電子機器を実現できる。
本発明のこのような作用及び他の利得は、次に説明する実施形態から明らかにされる。
以下では、本発明の実施形態について図を参照しつつ説明する。尚、以下の実施形態は、本発明の電気光学装置を液晶装置に適用したものである。
<1:第1実施形態>
まず、本発明の電気光学装置に係る第1実施形態について、図1から図8を参照して説明する。
<1−1:電気光学装置の全体構成>
最初に、本実施形態に係る液晶装置の全体構成を、図1及び図2を参照して説明する。図1は、TFTアレイ基板をその上に形成された各構成要素と共に対向基板の側から見た液晶装置の平面図であり、図2は、図1のH−H'断面図である。ここでは、一例として、液晶装置を駆動回路内蔵型のTFTアクティブマトリクス駆動方式としている。
図1及び図2における液晶装置は、対向配置されたTFTアレイ基板10及び対向基板20により構成されている。TFTアレイ基板10と対向基板20とは、互いに画像表示領域10aの周囲の周辺領域に配設されたシール材52によって接着されており、その間には液晶層50が封入されている。
シール材52は、両基板を貼り合わせるための、例えば紫外線硬化樹脂、熱硬化樹脂等からなり、製造プロセスにおいてTFTアレイ基板10上に塗布された後、紫外線照射、加熱等により硬化させられたものである。また、シール材52中には、TFTアレイ基板10と対向基板20との間隔(基板間ギャップ)を所定値とするためのグラスファイバ或いはガラスビーズ等のギャップ材が散布されている。また、対向基板20におけるシール材52の内側に対応する領域に、画像表示領域10aの額縁領域を規定する遮光性の額縁遮光膜53が設けられている。尚、このような額縁遮光膜53の一部又は全部は、TFTアレイ基板10側に内蔵遮光膜として設けられてもよい。
更に、周辺領域のうち、シール材52が配置された領域の外側には、データ線駆動回路101及び外部回路接続端子102がTFTアレイ基板10の一辺に沿って設けられている。また、走査線駆動回路104が、この一辺に隣接する2辺に沿い、且つ、額縁遮光膜53に覆われるようにして設けられている。このように画像表示領域10aの両側に設けられた二つの走査線駆動回路104は、TFTアレイ基板10の残る一辺に沿い、且つ、額縁遮光膜53に覆われるように設けられた複数の配線105により、相互に接続されている。
また、対向基板20の4つのコーナー部には、両基板間の上下導通端子として機能する上下導通材106が配置されている。他方、TFTアレイ基板10にはこれらのコーナー部に対向する領域において上下導通端子が設けられている。これらにより、TFTアレイ基板10と対向基板20との間で電気的な導通をとることができる。
図2において、TFTアレイ基板10上には、画素選択用のTFTや走査線、データ線等の配線が形成された後の画素電極9a上に、配向膜が形成されている。他方、対向基板20上には、対向電極21の他、格子状又はストライプ状の遮光膜23、最上層の配向膜が形成されている。液晶層50は、例えば一種又は数種類のネマティック液晶を混合した液晶からなり、これら一対の配向膜間において所定の配向状態をとる。
尚、このような液晶装置においては、光が入射する対向基板20側及び透過光が射出されるTFTアレイ基板10側の夫々に、例えばTN(Twisted Nematic)モード、STN(Super Twisted Nematic)モード、VA(Vertically Aligned)モード、PDLC(Polymer Dispersed Liquid Crystal)モード等の動作モードや、ノーマリーホワイトモード/ノーマリーブラックモードの別に応じて、偏光フィルム、位相差フィルム、偏光板などを配置してもよい。また、TFTアレイ基板10上には、これらのデータ線駆動回路101、走査線駆動回路104等に加えて、画像信号線上の画像信号をサンプリングしてデータ線に供給するサンプリング回路、複数のデータ線に所定電圧レベルのプリチャージ信号を画像信号に先行して各々供給するプリチャージ回路、製造途中や出荷時の当該電気光学装置の品質、欠陥等を検査するための検査回路等を形成してもよい。
<1−2:電気光学装置の主要部の構成>
次に、本実施形態に係る電気光学装置の主要部の構成について、図3から図6を参照して説明する。
図3は、本実施形態に係る電気光学装置のうち、画素部の等価回路を表している。図4及び図5は、TFTアレイ基板上の画素部に係る部分構成を表す平面図である。尚、図4及び図5は、それぞれ、後述する積層構造のうち下層部分(図4)と上層部分(図5)に相当する。図6は、図4及び図5を重ね合わせた場合のA−A´線における断面図である。尚、図6においては、各層・各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、該各層・各部材の縮尺比率を適宜に変えてある。
<1−2−1:画素部の原理的構成>
図3に示したように、画像表示領域10aにおいては、複数の走査線11a及び複数のデータ線6aが相交差して配列しており、その線間に、走査線11a,データ線6aの各一により選択される画素部が設けられている。各画素部は、TFT30、画素電極9a及び蓄積容量70を含んで構成されている。TFT30は、データ線6aから供給される画像信号S1、S2、…、Snを選択画素に印加するために設けられ、ゲートが走査線11aに接続され、ソースがデータ線6aに接続され、ドレインが画素電極9aに接続されている。画素電極9aは、後述の対向電極21との間で液晶容量を形成し、入力される画像信号S1、S2、…、Snを一定期間保持するようになっている。即ち、画素電極9aにより開口領域がほぼ画定される。蓄積容量70の一方の電極は、画素電極9aと並列してTFT30のドレインに接続され、他方の電極は、定電位となるように、電位固定の容量配線400に接続されている。
この電気光学装置は、例えばTFTアクティブマトリクス駆動方式を採り、走査線駆動回路104(図1参照)から各走査線11aに走査信号G1、G2、…、Gmを線順次に印加すると共に、それによってTFT30がオン状態となる水平方向の選択画素部の列に対し、データ線駆動回路101(図1参照)からの画像信号S1、S2、…、Snを、データ線6aを通じて印加するようになっている。これにより、画像信号が選択画素に対応する画素電極9aに供給される。TFTアレイ基板10は、液晶層50を介して対向基板20と対向配置されているので(図2参照)、以上のようにして区画配列された画素部毎に液晶層50に電界を印加することにより、両基板間の透過光量が画素毎に制御され、画像が階調表示される。また、このとき各画素部に保持された画像信号は、蓄積容量70によりリークが防止される。
このように、アクティブマトリクス方式では、画素部毎に電荷を保持することで画質を維持しているため、画素部における電荷の流出(即ち、リーク電流)はできるだけ低く抑える必要がある。ところが、TFT30は一般的なポリシリコンTFTとして構成されており、光吸収等に起因するリーク電流を、わずかながら発生させる可能性がある。本実施形態では、このようなTFT30を本発明に係る「電子素子」の一例としている。
<1−2−2:画素部の具体的構成>
次に、上述の動作を実現する画素部の具体的構成について、図4から図6を参照して説明する。
図4から図6では、上述した画素部の各回路要素が、パターン化され、積層された導電膜としてTFTアレイ基板10上に構築されている。本実施形態のTFTアレイ基板10は、石英基板からなり、ガラス基板や石英基板等からなる対向基板20と対向配置されている。また、各回路要素は、下から順に、走査線11aを含む第1層、ゲート電極3aを含む第2層、蓄積容量70の固定電位側容量電極を含む第3層、データ線6a等を含む第4層、容量配線400等を含む第5層、画素電極9a等を含む第6層からなる。また、第1層−第2層間には下地絶縁膜12、第2層−第3層間には第1層間絶縁膜41、第3層−第4層間には第2層間絶縁膜42、第4層−第5層間には第3層間絶縁膜43、第5層−第6層間には第4層間絶縁膜44がそれぞれ設けられ、前述の各要素間が短絡することを防止している。尚、このうち、第1層から第3層が下層部分として図4に示され、第4層から第6層が上層部分として図5に示されている。
(第1層の構成―走査線等―)
第1層は、走査線11aで構成される。走査線11aは、図4のX方向に沿って延びる本線部と、データ線6a或いは容量配線400が延在する図4のY方向に延びる突出部とからなる形状にパターニングされている。このような走査線11aは、例えば導電性ポリシリコンからなり、その他にもチタン(Ti)、クロム(Cr)、タングステン(W)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)等の高融点金属のうちの少なくとも一つを含む金属単体、合金、金属シリサイド、ポリシリサイド又はこれらの積層体等により形成することができる。
即ち、本実施形態における走査線11aは、できるだけ画素領域の間の領域を覆うことで、TFT30を下側から遮光する遮光膜としても機能する。尚、画素領域の周囲の領域は、TFTアレイ基板10と対向基板20との間に設けられた遮光膜によって遮光領域に規定されている。遮光領域では、液晶装置における入射光(図6参照)のうち直進成分が遮られる。
(第2層の構成―TFT等―)
第2層は、TFT30及び中継電極719で構成されている。本発明の「電子素子」の一例たるTFT30は、例えばLDD(Lightly Doped Drain)構造とされ、ゲート電極3a、半導体層1a、ゲート電極3aと半導体層1aを絶縁するゲート絶縁膜2を備えている。ゲート絶縁膜2は、例えば、HTO(High Temperature Oxide)等の熱酸化されたシリコン酸化膜からなる。ゲート電極3aは、例えば導電性ポリシリコンで形成される。半導体層1aは、例えばポリシリコンからなり、チャネル領域1a’、低濃度ソース領域1b及び低濃度ドレイン領域1c、並びに高濃度ソース領域1d及び高濃度ドレイン領域1eからなる。
TFT30は、半導体層1a、特にチャネル領域1a’に光が照射されると、光励起によりリーク電流が生じる。そこで、本実施形態では、TFT30を遮光するために、その下面を遮光性絶縁膜35で覆い、その上面を遮光性絶縁膜36で覆う構成としている(図6参照)。
尚、TFT30は、LDD構造を有することが好ましいが、低濃度ソース領域1b、低濃度ドレイン領域1cに不純物打ち込みを行わないオフセット構造であってもよいし、ゲート電極3aをマスクとして不純物を高濃度に打ち込んで高濃度ソース領域及び高濃度ドレイン領域を形成する自己整合型であってもよい。また、中継電極719は、例えばゲート電極3aと同一膜として形成される。
TFT30のゲート電極3aは、下地絶縁膜12に形成されたコンタクトホール12cvを介して走査線11aに電気的に接続されている。下地絶縁膜12は、例えば、HTO等のシリコン酸化膜、或いはNSG(ノンシリケートガラス)膜からなり、第1層と第2層との層間を絶縁する他、TFTアレイ基板10の全面に形成されることで、基板表面の研磨による荒れや汚れ等が惹き起こすTFT30の素子特性の変化を防止する機能を有している。
(第3層の構成―蓄積容量等―)
第3層は、蓄積容量70で構成されている。蓄積容量70は、容量電極300と下部電極71とが誘電体膜75を介して対向配置された構成となっている。このうち、容量電極300は、容量配線400に電気的に接続されている。下部電極71は、TFT30の高濃度ドレイン領域1e及び画素電極9aの夫々に電気的に接続されている。
下部電極71と高濃度ドレイン領域1eとは、第1層間絶縁膜41に開孔されたコンタクトホール83を介して接続されている。また、下部電極71と画素電極9aとは、コンタクトホール881、882、804、及び中継電極719、第2中継電極6a2、第3中継電極402により各層を中継し、コンタクトホール89において電気的に接続されている。
このような容量電極300には、例えば、Ti、Cr、W、Ta、Mo等の高融点金属のうちの少なくとも一つを含む金属単体、合金、金属シリサイド、ポリシリサイド、これらを積層したもの、或いは好ましくはタングステンシリサイドからなる。これにより、容量電極は、TFT30に上側から入射しようとする光を遮る機能を有している。また、下部電極71には、例えば導電性のポリシリコンが用いられる。誘電体膜75は、例えば、膜厚5〜200nm程度の比較的薄いHTO膜、LTO(Low Temperature Oxide)膜等の酸化シリコン膜、或いは窒化シリコン膜等からなる。
また、第1層間絶縁膜41は、例えば、NSGによって形成されている。その他、第1層間絶縁膜41には、PSG(リンシリケートガラス)、BSG(ボロンシリケートガラス)、BPSG(ボロンリンシリケートガラス)等のシリケートガラス、窒化シリコンや酸化シリコン等を用いることができる。
尚、この場合の蓄積容量70は、図4の平面図からわかるように、遮光領域内に収まるように形成され、TFT30を上面側から遮光する機能をも有している。
(第4層の構成―データ線等―)
第4層は、データ線6aで構成されている。データ線6aは、下から順にアルミニウム層41A、窒化チタン層41TN、及び窒化シリコン層401の3層膜として形成されている。窒化シリコン層401は、下層のアルミニウム層41Aと窒化チタン層41TNを覆うように少し大きなサイズにパターニングされている。また、第4層には、データ線6aと同一膜として、容量配線用中継層6a1及び第2中継電極6a2が形成されている。これらは、図5に示したように、夫々が分断されるように形成されている。
このうち、データ線6aは、第1層間絶縁膜41及び第2層間絶縁膜42を貫通するコンタクトホール81を介して、TFT30の高濃度ソース領域1dと電気的に接続されている。
また、容量配線用中継層6a1は、第2層間絶縁膜42に開孔されたコンタクトホール801を介して容量電極300と電気的に接続され、容量電極300と容量配線400との間を中継している。容量配線用中継層6a2は、前述したように、第1層間絶縁膜41及び第2層間絶縁膜42を貫通するコンタクトホール882を介して中継電極719に電気的に接続されている。このような第2層間絶縁膜42は、例えばNSGからなり、その他、PSG、BSG、BPSG等のシリケートガラス、窒化シリコンや酸化シリコン等によって形成することができる。
(第5層の構成―容量配線等―)
第5層は、容量配線400及び第3中継電極402により構成されている。容量配線400は、画像表示領域10aの周囲にまで延設され、定電位源と電気的に接続されることで、固定電位とされている。また、容量配線400は、第3層間絶縁膜43に開孔されたコンタクトホール803を介して、容量配線用中継層6a1と電気的に接続されている。このような容量配線400は、例えばアルミニウム、窒化チタンを積層した二層構造となっている。
容量配線400は、図5に示すように、X方向、Y方向に延在する格子状に形成され、X方向に延在する部分には、第3中継電極402の形成領域を確保するために切り欠きが設けられている。更に、容量配線400は、遮光膜としても機能し、下層のデータ線6a、走査線11a、TFT30等を覆うように、これらの回路要素よりも幅広に形成されており、遮光領域を最終に規定する形状となっている。
また、第5層には、容量配線400と同一膜として、第3中継電極402が形成されている。第3中継電極402は、前述のように、コンタクトホール804及びコンタクトホール89を介して、第2中継電極6a2−画素電極9a間を中継している。
こうした第5層の下には、全面に第3層間絶縁膜43が形成されている。第3層層間絶縁膜43は、例えばNSG、PSG、BSG、BPSG等のシリケートガラス、窒化シリコンや酸化シリコン等によって形成することができる。
(第6層の構成―画素電極等―)
第5層の全面には第4層間絶縁膜44が形成され、更にその上に、第6層として画素電極9aが形成されている。第4層間絶縁膜44には、画素電極9a−第3中継電極402間を電気的に接続するためのコンタクトホール89が開孔されている。このような第4層間絶縁膜44は、例えばNSG、PSG、BSG、BPSG等のシリケートガラス、窒化シリコンや酸化シリコン等によって形成することができる。
画素電極9a(図5中、破線9a’で輪郭が示されている)は、縦横に区画配列された画素領域の各々に配置されている。画素電極9aの形成領域は、画素領域に略対応しており、その周囲の遮光領域にデータ線6a及び走査線11aが格子状に配列するように形成されている(図4及び図5参照)。このような画素電極9aは、例えばITO(Indium Tin Oxide)等の透明導電膜からなる。更に、画素電極9a上には配向膜16が形成されている。以上が、TFTアレイ基板10側の画素部の構成である。
他方、対向基板20には、その対向面の全面に対向電極21が設けられており、更にその上(図6では対向電極21の下側)に配向膜22が設けられている。対向電極21は、画素電極9aと同様、例えばITO膜等の透明導電性膜からなる。尚、対向基板20と対向電極21の間には、TFT30における光リーク電流の発生等を防止するため、少なくともTFT30と正対する領域を覆うように遮光膜23が設けられている。
以上のように構成されたTFTアレイ基板10と対向基板20の間には、液晶層50が設けられている。液晶層50は、基板10及び20の周縁部をシール材により封止して形成した空間に液晶を封入して形成される。液晶層50は、画素電極9aと対向電極21との間に電界が印加されていない状態において、ラビング処理等の配向処理が施された配向膜16及び配向膜22によって、所定の配向状態をとるようになっている。
<1−3:TFTの具体的構成>
次に、TFT30の構成について、図7及び図8を参照してより詳細に説明する。
図7のうち(A)はTFT30の平面図、(B)は(A)のB−B’線における断面図である。図8は、TFT30の斜視図である。図7及び図8に示したように、本実施形態に係るTFT30は、遮光性絶縁膜35及び36に上下から挟み込まれるようにして全体を覆われており、半導体層1aが周囲から空間的に隔絶される構成となっている。
遮光性絶縁膜35及び36は、TFT30上面と周囲との絶縁性を担保する絶縁機能とTFT30を遮光する機能とを有しており、ここでは、夫々がTFT30の上下面と直に接するように設けられている。遮光性絶縁膜35及び36の平面形状は共に、TFT30より一回り大きく、且つ遮光領域内に収まる形状となっている。このような遮光性絶縁膜35及び36は絶縁性と遮光性とを兼ね備えように、例えば、アモルファスシリコン、酸化シリコン或いは窒化シリコン等の絶縁膜を多層化して反射率又は吸収率を高めた構成の多層膜や、黒色樹脂等により構成される。その場合、遮光性絶縁膜35及び36は、完全に光を透過しないことが望ましいが、多少なりとも光の透過を遮ることができればよい。
ここでは、後者の場合を想定して、走査線11a、容量電極300及び容量配線400に遮光機能を持たせており、これらの存在領域(即ち、遮光領域)に配置されることで、TFT30の遮光を確実なものとしている。
尚、遮光性絶縁膜35は、半導体層1aを直に覆うことから、十分に高い絶縁性が要求される。一方の遮光性絶縁膜36は、ゲート絶縁膜2及びデート電極3aの上から半導体層1aを覆うことから、ゲート絶縁膜2と接する部分についてはそれほど絶縁性能が高くなくともよく、ゲート電極3aの絶縁のみ考慮すればよい。そのため、遮光性絶縁膜36は、ゲート絶縁膜2の上層となる部分とゲート電極3aの上層となる部分とで材料を変えて構成してもよい。また、遮光性絶縁膜35と遮光性絶縁膜36は、同一構成としてもよいし、材料や層構造が異なっていてもよい。
この液晶装置では、TFT30の上面側から、遮光されていない画素領域に光が入射される(図6参照)が、データ線6aのようにAl系材料が用いられた配線において入射光は乱反射し、遮光領域に配置されたTFT30に対して照射される可能性がある。また、TFT30の下面側からは、TFTアレイ基板10の基板面を界面とした反射や戻り光が照射される可能性がある。しかしながら、本実施形態では、遮光性絶縁膜35及び36がTFT30そのものを被覆しているので、TFT30にどの方向から光が向かってきても遮ることができる。
また、TFT30からは、ソース、ゲート及びドレインの各電極に対応して電極配線が導出されている。このうち、ゲート電極3aは、コンタクトホール12cvを介して走査線11aに接続されることから、コンタクトホール12cvは、遮光性絶縁膜35を貫通するように形成されている(図8参照)。その場合、コンタクトホール12cvを通じて遮光性絶縁膜35内の半導体層1aに光が照射されるのを防ぐために、ゲート電極3aに遮光性導電材料、例えばTi、Cr、W、Ta、Mo等の金属単体、合金、金属シリサイド、ポリシリサイド等を用いて、コンタクトホール12cv内を埋め込むとよい。
一方、高濃度ソース領域1dは、コンタクトホール81を介してデータ線6aに接続され、高濃度ドレイン領域1eは、コンタクトホール83を介して蓄積容量70の下部電極71に接続されている。そのため、コンタクトホール81及び83は、ゲート絶縁膜2と共に遮光性絶縁膜36を貫通している(図7(B)参照)。
コンタクトホール81の内部にはデータ線6aの一部が形成されており、その内壁面及び底面(即ち、高濃度ソース領域1dに接する面)がAlに覆われているので、コンタクトホール81を通じて遮光性絶縁膜36内の半導体層1aに光が照射されることが防止される。同様に、コンタクトホール83の内部には下部電極71及び誘電体膜75の一部が形成されていることから、コンタクトホール83を通じて遮光性絶縁膜36内の半導体層1aに光が照射されることが防止される。
このように構成されたTFT30は、例えば次のようにして形成される。
先ず、下地絶縁膜12上の基板全面に遮光性絶縁膜35となる第1前駆膜を成膜する。そして、この第1前駆膜を下地として、半導体層1a、ゲート絶縁膜2を形成する。次に、第1前駆膜及び下地絶縁膜12を貫通するようにコンタクトホール12cvを開口し、ゲート電極3aを形成する。
次に、こうして形成されたTFT30上の基板全面に、遮光性絶縁膜36となる第2前駆膜を成膜する。次に、第1及び第2前駆膜に一括エッチングを施し、同一形状の遮光性絶縁膜35及び36を完成させる。更に、遮光性絶縁膜36上の基板全面に、層間絶縁膜41を成膜する。即ち、TFT30は、遮光性絶縁膜35を下地とし、遮光性絶縁膜36により上面全体が覆われるように形成される。その後のコンタクトホール81及び83の形成は通常と同様に行えばよい。
このように構成された液晶装置では、TFT30は周囲を3次元的に取り囲む遮光性絶縁膜35及び36によって全方向を遮光されているため、光が半導体層1aに照射されることが防止される。TFT30に向かって進入する光には、例えば、駆動中に画素領域に入射した光の配線や基板面等における反射光が、層間やコンタクトホール内を通って遮光領域内に進入する成分や、戻り光等がある。前者の光成分は、乱反射や多重反射の結果としてTFT30に進入してくるため、通常、入射経路は予測し難い。しかしながら、遮光性絶縁膜35及び36により、TFT30に対してどの方向から進入する光であっても、TFT30への照射は阻止される。即ち、遮光性絶縁膜35及び36は、確実にTFT30に進入する光を捉え、遮ることができる。よって、TFT30における光リーク電流の発生が抑制又は防止され、フリッカ等のない高品質な画像を表示することが可能となる。
尚、このような遮光性絶縁膜35及び36の遮光性能が良好であれば、遮光膜を減らす或いは無くすことが可能である。即ち、走査線11a等の配線や蓄積容量70は、遮光膜として機能する必要がなくなることで、その位置形状及び材料等の設計自由度が生じる。例えば、TFT30より上層の配線には、画素ピッチの微細化のために良導体であるAlが用いられる。ところが、Alの反射率は高く、通常の構成であれば上記のような反射光の発生が助長されてTFTへの照射光が増えるという問題が生じる。しかし、本実施形態に係る構成においては、遮光性絶縁膜35及び36の遮光性能が高ければ、そうした問題は軽減或いは未然防止されることから、Alを多用することが可能となる。
このように本実施形態では、TFT30の下面及び上面が遮光性絶縁膜35及び36に覆われるようにしたので、TFT30のチャネル領域1a’及びその周辺に対する光の入射が確実に抑制され、光リーク電流の発生が低減又は防止される。従って、この液晶装置によれば、画質むらやコントラスト比の低下、フリッカ等のない高品質な画像を表示することが可能となる。
また、本実施形態では、コンタクトホール12cv、コンタクトホール81及び83の内面全体が光透過率の低い膜により被覆されているので、これらのコンタクトホールを通じて半導体層1aに光が照射されることが防止され、光リーク電流の発生をより効果的に防止することができる。
<2:変形例>
次に、第1実施形態に係る変形例について説明する。尚、変形例に係る断面図は、いずれも第1実施形態における図7(B)に対応している。
<2−1:第1変形例>
図9は、第1変形例に係る液晶装置の構成を表す断面図である。本変形例では、コンタクトホール81に代わってプラグ31が高濃度ソース領域1dとデータ線6aとを接続する構成となっている。同様に、コンタクトホール83の代わりにプラグ33が設けられている。
プラグ31及び33は、例えば、外側よりTi、TiNが順次形成され、その内側にWの芯が形成された構造とすることができるが、これらTi/TiN/Wの3層のうち一つの材料を用いて形成しても構わない。プラグ31及び33は、こうした材料の埋め込みにより形成され、上層の一部が形成されたコンタクトホール内部と比べると、カバレッジが良好となる。また、一般にプラグは、コンタクトホールと比べて小さな穴径とすることが可能なことから、プラグ31及び33によれば、遮光性絶縁膜36の開口径を小さく抑えることができる。
よって、プラグ31及び33によれば、遮光性絶縁膜36に形成された電極引き出し用の開口部をより効果的に遮光することが可能である。
尚、プラグ31及び33の形成は、先ず、コンタクトホール81、83の形成と同様に、遮光性絶縁膜36及び層間絶縁膜を貫通する開口部を形成し、次に、それらの内部に、例えば上記材料をスパッタ法又はCVD法等により埋め込み、最後に、開口部よりも上層にはみ出した材料をエッチバックにより取り除くことにより行われる。その際、良好なカバレッジを得るためには、プラグ31及び33の穴径を小さくしておくことが望ましい。
以上は、遮光性絶縁膜36側の開口部についてのみ説明したが、遮光性絶縁膜35側も同様の変形が可能である。遮光性絶縁膜35側に開口されるコンタクトホール12cvの内部は、ゲート電極3aが埋め込まれるために、プラグのような状態となっているが、例えばゲート電極3aの走査線11aとの接触抵抗やコンタクトホール12cv内におけるカバレッジを考慮し、場合によってはコンタクトホール12cvをプラグに代えてもよい。
<2−2:第2変形例>
図10は、第2変形例に係る液晶装置の構成を表す断面図である。この変形例では、遮光性絶縁膜35が、絶縁膜39を介して半導体層1aを覆っている。但し、TFT30は、相変わらず遮光性絶縁膜35及び36によって全面を3次元的に遮蔽されている。
前述のように、TFT30の動作特性に直接影響することから、半導体層1aは十分に絶縁される必要がある。そこで、ここでは、半導体層1aの直下に絶縁膜39を設けることで、TFT30の特性を保障するようにしている。そのため、遮光性絶縁膜35に電気抵抗はそれほど高くないが遮光性を備えた絶縁膜を用いる場合にも、TFT30を適正に動作させることが可能となる。
絶縁膜39の材料には、通常絶縁膜として用いられる窒化シリコンや酸化シリコン等の材料を用いることができる。また、絶縁膜39は遮光性が殆どないものであってもよいので、HTO等の透光性の絶縁材料を用いることも可能である。
尚、絶縁膜39は、平面的に見て半導体層1aの形成領域に対応する形状とされているが、遮光性絶縁膜35及び36の形成領域と同等又はその外側の領域に形成されていてもよい。そのような場合も、TFT30を層間絶縁しつつ、TFT30に対する遮光効果を上げることができる。
こうした変形も含め、第2変形例を多層化された遮光性絶縁膜の具体例と捉えることもできる。即ち、絶縁膜39及び遮光性絶縁膜35が、一つの遮光性絶縁膜としての多層膜を構成しているとみなすことが可能である。
以上は、半導体層1aの絶縁という観点から、特にTFT30の下面側に絶縁膜39を設ける場合について説明したが、上述のように、主に遮光機能を有する層と主に絶縁機能を有する層を積層することで一つの遮光性絶縁膜を実現するという意味では、同様の変形を上面側に施すようにしてもよい。
<2−3:第3変形例>
図11は、第3変形例に係る液晶装置の構成を表す断面図である。この変形例では、TFT30は、遮光性絶縁膜35及び36に代えて、反射性絶縁膜45及び46に上下面を覆われている。ここで、反射性絶縁膜45及び46は、屈折率が相異なる層が積層されて構成されている。例えば、反射性絶縁膜45は、下層がSiN又はSiON等の高屈折率層45Aからなり、TFT30側にあたる上層がSiO2等の低屈折率層45Bからなる積層膜として構成されている。一方、反射性絶縁膜46は、TFT30側にあたる下層がSiO2等の低屈折率層46Bからなり、上層がSiN又はSiON等の高屈折率層46Aからなる積層膜として構成されている。
即ち、反射性絶縁膜45及び46は、光ファイバのように複数の層の屈折率差を利用して、屈折率の異なる層の界面で光を全反射させる構造となっている。つまり、光ファイバのコアに対するクラッドの役割を、TFT30側に設けられる低屈折率層45B及び46Bが担う。従って、光ファイバにおいてクラッドから光が外部に漏れないように、TFT30側に光が漏れるのが防止される。ちなみに、この第3変形例の反射性絶縁膜45及び46を、多層化された遮光性絶縁膜の一具体例と捉えることもできる。
<3:第2実施形態>
次に、本発明の電気光学装置に係る第2実施形態について、図12及び図13を参照して説明する。
図12は、第2実施形態に係る液晶装置における要部構成を表す平面図、図13は、図12のC−C’線における断面図である。各図は、第1実施形態における図4及び図6に夫々対応している。尚、以下の説明では、第1実施形態と同様の構成要素については同一の符号を付し、その説明を適宜に省略する。
本実施形態に係る液晶装置では、TFT30の下面が遮光性絶縁膜37によって覆われ、上面が遮光性絶縁膜38によって覆われている。図12に示したように、遮光性絶縁膜37及び38は共に、遮光領域内ではあるが、それと略同等の大きさで格子状に形成されている。第1実施形態では、遮光性絶縁膜35及び36をTFT30毎に配置するようにしたが、狭ピッチ化によってTFT30の間隔が狭くなると、このようにTFT30を列毎又は行毎に覆う方が確実にTFT30を覆うことができる。
また、図13に示したように、遮光性絶縁膜37及び38は、夫々単層でTFT30の層間を構成している。即ち、遮光性絶縁膜37は、遮光領域における層間絶縁膜として、下地絶縁膜12に代わって走査線11aとTFT30の下面との間を層間絶縁するように配置されている。一方、遮光性絶縁膜38は、遮光領域における層間絶縁膜として、層間絶縁膜41に代わってTFT30の上面と蓄積容量70の下部電極71との間を層間絶縁するように配置されている。
この場合、遮光性絶縁膜37及び38は、ある程度の厚みをもって形成することができるので、その平面形状と合わせてTFT30の確実な遮蔽が可能であると共に、多層化の実現にも有利である。尚、本実施形態のその他の作用及び効果は、第1実施形態と同様である。また、本実施形態についても、先に例示した第1実施形態に係る変形と同様の変形が可能である。
上記実施形態及び変形例では、TFT30を本発明に係る「電子素子」の一例としたが、TFT30は、例えば図14のような変形が可能である。
図14(A)に示した変形例たるTFT30Aには、ゲート電極3aに代えて、ゲート電極3aaが設けられている。ゲート電極3aaは、半導体層1aを挟んだ両側における幅が、チャネル領域1a’の長さよりも長く形成されており、同様にチャネル領域1a’の側縁に沿って延びるコンタクトホール121cvと併せてチャネル領域1a’の周囲を囲う構造となっている。このようなTFT30Aによれば、チャネル領域1a’がゲート電極3aa及びコンタクトホール121cvによって遮光される。従って、遮光性絶縁膜と併せて、一層効果的にチャネル領域1a’に対する光の入射、延いては光リーク電流の発生を防止することができる。
また、図14(B)に示したTFT30Bでは、ゲート電極3aaに対してコンタクトホール122cvが設けられている。この場合のコンタクトホール122cvはチャネル領域1a’の長さよりも短いが、このような形状のゲート電極3aaで覆うことでTFT30Bに対する光の入射を防止することができる。
尚、上記実施形態及び変形例では、本発明に係る「電子素子」の一例たるTFT30をポリシリコンTFTとして説明したが、本発明の電子素子はアモルファスシリコンTFT等の他のTFTであってもよく、更にTFTに限定されず、電気光学装置に具備された素子のうち光の照射によって不具合が生じる素子全般に広く適用が可能である。即ち、本発明に係る電子素子は、例えばダイオード等の2端子素子であってもよいし、各種の電気光学装置に含まれるスイッチング素子以外の電子素子であってよい。
<4:電子機器>
以上に説明した液晶装置は、例えばプロジェクタに適用される。ここでは、上記実施形態の液晶装置をライトバルブとして用いたプロジェクタについて説明する。図15は、プロジェクタの構成例を示す平面図である。この図に示されるように、プロジェクタ1100内部には、ハロゲンランプ等の白色光源からなるランプユニット1102が設けられている。このランプユニット1102から射出された投射光は、ライトガイド内に配置された4枚のミラー1106及び2枚のダイクロイックミラー1108によってRGBの3原色に分離され、各原色に対応するライトバルブとしての液晶装置100R、100B及び100Gに入射される。液晶装置100R、100B及び100Gの構成は上述した液晶装置と同等であり、それぞれにおいて画像信号処理回路から供給されるR、G、Bの原色信号が変調される。これらの液晶装置によって変調された光は、ダイクロイックプリズム1112に3方向から入射される。ダイクロイックプリズム1112では、R及びBの光が90度に屈折する一方、Gの光が直進する。これにより各色の画像が合成され、投射レンズ1114を介して、スクリーン1120等にカラー画像が投写される。
尚、上記実施形態の液晶装置は、プロジェクタ以外の直視型や反射型のカラー表示装置に適用することもできる。その場合、対向基板20上における画素電極9aに対向する領域に、RGBのカラーフィルタをその保護膜と共に形成すればよい。或いは、TFTアレイ基板10上のRGBに対向する画素電極9a下にカラーレジスト等でカラーフィルタ層を形成することも可能である。更に、以上の各場合において、対向基板20上に画素と1対1に対応するマイクロレンズを設けるようにすれば、入射光の集光効率が向上し、表示輝度を向上させることができる。更にまた、対向基板20上に、何層もの屈折率の相違する干渉層を堆積することで、光の干渉を利用してRGB色を作り出すダイクロイックフィルタを形成してもよい。このダイクロイックフィルタ付き対向基板によれば、より明るい表示が可能となる。
以上では、液晶装置及び液晶プロジェクタを例に挙げて本発明について説明したが、本発明の電気光学装置は、液晶装置の他にも、例えば、電子ペーパなどの電気泳動装置や、電子放出素子を用いた表示装置(Field Emission Display及びSurface-Conduction Electron-Emitter Display)等として実現することができる。また、本発明の電子機器は、このような本発明の電気光学装置を備えることで実現され、上述したプロジェクタの他に、テレビジョン受像機や、ビューファインダ型或いはモニタ直視型のビデオテープレコーダ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳、電卓、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、タッチパネルを備えた装置等の各種の電子機器として実現可能である。
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う電気光学装置及びこれを備えた電子機器もまた本発明の技術的範囲に含まれる。
10…TFTアレイ基板、1a…半導体層、1a’…チャネル領域、3a…ゲート電極、6a…データ線、9a…画素電極、11a…走査線、20…対向基板、30…TFT、35、36…遮光性絶縁膜、41〜44…層間絶縁膜、50…液晶層、70…蓄積容量、71…下部電極、81、83、12cv…コンタクトホール、300…容量電極、400…容量配線。