JP3830361B2 - Tftアレイ基板、電気光学装置及び投射型表示装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、アクティブマトリクス駆動方式の電気光学装置の技術分野に属し、特に画素スイッチング用の薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor:以下適宜、TFTと称す)を、基板上の積層構造中に備えた形式の電気光学装置の技術分野に属する。
【0002】
【従来の技術】
TFTアクティブマトリクス駆動形式の電気光学装置では、各画素に設けられた画素スイッチング用TFTのチャネル領域に入射光が照射されると光による励起で電流が発生してTFTの特性が変化する。特に、プロジェクタのライトバルブ用の電気光学装置の場合には、入射光の強度が高いため、TFTのチャネル領域やその周辺領域に対する入射光の遮光を行うことは重要となる。そこで従来は、対向基板に設けられた各画素の開口領域を規定する遮光膜により、或いはTFTの上を通過すると共にAl等の金属膜からなるデータ線により、係るチャネル領域やその周辺領域を遮光するように構成されている。また特開平9−33944号公報には、屈折率が大きいa−Si(アモルファスシリコン)から形成された遮光膜で、チャネル領域に入射する光を減少させる技術が開示されている。更に、TFTアレイ基板上において画素スイッチング用TFTに対向する位置(即ち、TFTの下側)にも、例えば高融点金属からなる遮光膜を設けることがある。このようにTFTの下側にも遮光膜を設ければ、TFTアレイ基板側からの裏面反射や、複数の電気光学装置をプリズム等を介して組み合わせて一つの光学系を構成する場合に他の電気光学装置からプリズム等を突き抜けてくる投射光が、当該電気光学装置のTFTに入射するのを未然に防ぐことができる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した各種遮光技術によれば、以下の問題点がある。
【0004】
即ち、先ず対向基板上やTFTアレイ基板上に遮光膜を形成する技術によれば、遮光膜とチャネル領域との間は、3次元的に見て例えば液晶層、電極、層間絶縁膜等を介してかなり離間しており、両者間へ斜めに入射する光に対する遮光が十分ではない。特にプロジェクタのライトバルブとして用いられる小型の電気光学装置においては、入射光は光源からの光をレンズで絞った光束であり、斜めに入射する成分を無視し得ない程に含んでいるので、このような斜めの入射光に対する遮光が十分でないことは実践上問題となる。
【0005】
加えて、遮光膜のない領域から電気光学装置内に侵入した光が、遮光膜やデータ線の内面(即ち、チャネル領域に面する側の面)で反射された後に、係る反射光或いはこれが更に遮光膜やデータ線の内面で反射された多重反射光が最終的にTFTのチャネル領域に到達してしまう場合もある。またデータ線で遮光する技術によれば、データ線は平面的に見て走査線に直交して伸びるストライプ状に形成されており且つデータ線とチャネル領域との容量カップリングの悪影響が無視できる程度に両者間に厚い層間絶縁膜を配置する必要があるため、十分に遮光することは、基本的に困難である。
【0006】
また特開平9−33944号公報に記載の技術によれば、ゲート線上にa−Si膜を形成するため、ゲート電極とa−Si膜との容量カップリングの悪影響を低減するために両者間に比較的厚い層間絶縁膜を積むことが必要となる。この結果、追加的に形成されるa−Si膜や層間絶縁膜等により積層構造が複雑肥大化すると共にやはり斜めの入射光や内面反射光に対して十分な遮光を行うことは困難である。特に近年の表示画像の高品位化という一般的要請に沿うべく電気光学装置の高精細化或いは画素ピッチの微細化を図るに連れて、上述した従来の各種遮光技術によれば、十分な遮光を施すのがより困難となり、TFTのトランジスタ特性の変化により、フリッカ等が生じて、表示画像の品位が低下してしまうという問題点がある。
【0007】
尚、このような耐光性を高めるためには、遮光膜の形成領域を広げればよいようにも考えられるが、遮光膜の形成領域を広げてしまったのでは、表示画像の明るさを向上させるべく各画素の開口率を高めることが根本的に困難になるという問題点が生じる。
【0008】
本発明は上述の問題点に鑑みなされたものであり、耐光性に優れていると共に各画素の開口率が比較的高く、高品位の画像表示が可能な電気光学装置を提供することを課題とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の電気光学装置は上記課題を解決するために、一対の基板と、前記一対の基板で挟持された電気光学物質と、前記一対の基板の一方の基板に、マトリクス状に配置された複数の画素電極と、前記画素電極に電気的に接続された薄膜トランジスタと、前記一方の基板に、前記薄膜トランジスタの上方に十字状に配置された上側遮光膜と、前記一方の基板に、前記薄膜トランジスタの下方に十字状に配置され、前記上側遮光膜の形成領域より内側に形成された下側遮光膜と、前記薄膜トランジスタの上方において第1方向に延伸し、前記薄膜トランジスタに重なる箇所において前記第1方向と交差する突出部を有することにより、十字状の前記上側遮光膜を形成する容量線と、前記上側遮光膜の十字の部分の交差領域と前記下側遮光膜の十字の部分の交差領域とが重なる領域内に形成された前記薄膜トランジスタのチャネル領域とソース領域及びドレイン領域の接合部とを備えることを特徴とする。
【0010】
本発明の電気光学装置によれば、薄膜トランジスタの上側に十字状に配置された上側遮光膜により非開口領域が規定される。従って、上側遮光膜により、光抜けが生じてコントラスト比が低下するのを効果的に防止できる。ここで、薄膜トランジスタの上側には、十字状に配置された上側遮光膜が存在し、薄膜トランジスタの下側には、十字状に配置された下側遮光膜が存在し、画像表示領域において平面的に見て、下側遮光膜の形成領域は、上側遮光膜の形成領域内に位置する。そして、薄膜トランジスタの少なくともチャネル領域の接合部(チャネル領域と、N-領域、N+領域、P-領域、P+領域等からなるソース領域及びドレイン領域との接合部)は下側遮光膜の十字の部分の交差領域内に位置する。
【0011】
従って、プロジェクタ用途の如く強力な入射光が入射した場合に、該入射光のうち基板に垂直な成分のみならず、基板に対して斜めの成分からも、薄膜トランジスタを上側遮光膜で遮光できる。更に、裏面反射光や複板式のプロジェクタ用途のように複数の電気光学装置をライトバルブとして組み合わせて用いる際に他のライトバルブから合成光学系を突き抜けてくる光などの戻り光を、下側遮光膜で遮光できる。特に、上側遮光膜の脇から入射した入射光が下側遮光膜の上側遮光膜に面する側の表面で反射することで、内面反射光や多重反射光が発生する事態も、このように上側から見て下側遮光膜が上側遮光膜の陰に隠れる構成により、効果的に阻止できる。
【0012】
加えて、本願発明者による研究によれば、薄膜トランジスタのうちチャネル領域の接合部に光が入射した場合が、もっとも敏感に光リークが生じることが判明している。従って本発明の如く、画像表示領域において縦や横に斜めに入射する入射光に対する遮光性が総合的に最も優れている(即ち、最も入射光が当たり難い)十字状の遮光膜の交差領域内に、薄膜トランジスタのチャネル領域の接合部を位置させることにより、光の入射に対して光リークが発生し難い構成が得られる。しかも、このような薄膜トランジスタに対する上下からの遮光を、例えば伝統的な対向基板に設けられた遮光膜により行う場合と比較して、薄膜トランジスタに比較的近接して行うことが可能となり、これにより不必要に遮光膜の形成領域を広げることを避けつつ(即ち、各画素の非開口領域を不必要に狭めることなく)、遮光性能を向上させることができる。
【0013】
以上の結果、各画素の開口率が高く、且つ高い耐光性により薄膜トランジスタの光リークによる特性劣化が低減されており、しかもコントラスト比が高く高品位の画像表示が可能な電気光学装置が実現される。
【0014】
本発明の電気光学装置の一態様では、前記上側遮光膜は画素の非開口領域を規定するように格子状に配置され、前記下側遮光膜は格子状に配置されることを特徴とする。
【0015】
この態様によれば、各画素電極に対応する各画素の非開口領域は、薄膜トランジスタの上側に十字状に配置された上側遮光膜により規定される。そして、下側遮光膜の方が上側遮光膜よりも、縦横に格子を形作る各ストライプ部分が幅狭に(一回り小さく)形成されている。よって、より高い遮光性能を向上することができる。
【0016】
さらに上記態様では、前記上側遮光膜は、前記容量線と、前記第1方向と交差する方向に延伸し前記薄膜トランジスタに電気的に接続されたデータ線から構成されていることを特徴とする。
【0017】
この態様によれば、保持容量を構成する一方の容量電極と、データ線を上側遮光膜として兼用できるので、積層構造を単純化する上で有利である。
【0018】
また、上側遮光膜は、相交差するデータ線と容量線とから格子状に構成され、その交差領域内に、薄膜トランジスタの少なくともチャネル領域の接合部が位置する。従って、画像表示領域において縦や横に斜めに入射する光に対する遮光性が総合的に最も優れているデータ線と容量線とが交差する領域内に、薄膜トランジスタのチャネル領域の接合部を位置させることにより、当該薄膜トランジスタで光リークが発生し難い構成が得られる。
【0019】
さらに上記態様では、前記データ線の領域と前記下側遮光膜の領域が重なる領域内に、前記薄膜トランジスタの半導体層が形成されることを特徴とする。
【0020】
この態様によれば、薄膜トランジスタの半導体層全体を遮光することができるので、薄膜トランジスタの光リークの発生をより低減することができる。
【0025】
本発明の電気光学装置の他の態様では、前記上側遮光膜と前記下側遮光膜の少なくとも一方は、前記薄膜トランジスタの領域に十字状に配置された複数の遮光部からなることを特徴とする。
【0026】
薄膜トランジスタの光リークを発生するのを低減するには、少なくとも薄膜トランジスタのチャネル領域の接合部が遮光されればよく、薄膜トランジスタ毎に十字状の遮光部を形成してもよい。
【0027】
また、上記態様では、前記下側遮光膜の領域内に、前記第1方向に延伸し前記薄膜トランジスタに電気的に接続される走査線が形成されることを特徴とする。
【0028】
この際、走査線はポリシリコンやアモルファスシリコン、単結晶シリコン膜等のシリコン膜や、ポリサイド、シリサイドを用いてもよい。
【0029】
このように構成すれば、入射光や戻り光が、例えば、ポリシリコンやアモルファスシリコン、単結晶シリコン膜等のシリコン膜や、ポリサイド、シリサイドからなる走査線によって、光ファイバの如くに導光されることにより薄膜トランジスタのチャネル領域に至る事態を効果的に未然防止できる。
【0030】
さらに上記態様では、前記走査線は、前記上側遮光膜の形成領域の内側に形成されることを特徴とする。
【0031】
この態様によれば、走査線は、上側遮光膜内に沿って形成できるので、開口率を向上することができる。
【0032】
本発明の電気光学装置の他の態様では、前記薄膜トランジスタの半導体層は、チャネルと高濃度に不純物がドープされた高濃度領域と、前記チャネルと前記高濃度領域との間に低濃度に不純物がドープされた低濃度領域とを備え、前記低濃度領域は、前記容量線の前記走査線方向へ延伸する部分と前記突出部との交差領域と、前記下側遮光膜の十字の部分の交差領域とが重なる領域内で形成されることを特徴とする。
【0033】
この態様によれば、LDD構造の薄膜トランジスタにおいても、薄膜トランジスタの光リークを発生するのを低減することができる。
【0034】
本発明の電気光学装置の他の態様では、前記一方の基板に垂直な断面における前記下側遮光膜の縁は、前記縁に対向する前記上側遮光膜の縁よりも10度以上内側に後退していることを特徴とする。
【0035】
この態様によれば、基板に垂直な断面における下側遮光膜の縁は該縁に対向する上側遮光膜の縁よりも10度以上内側に後退しているので、基板に垂直な方向を基準として斜めに入射する入射光の角度が10度以下であれば、上側遮光膜の脇を通過した入射光が、下側遮光膜の上側遮光膜に面する側の表面で反射することにより内面反射光や多重反射光が発生するのを効果的に阻止しえる。特に、一般的なプロジェクタ用途の電気光学装置の場合には、10度を超えた斜め光は殆ど存在しないため、このように10度以下にすることは有効である。
【0036】
他方このように下側遮光膜が後退する角度が10度を極端に超えないようにすることで、下側遮光膜の脇を通過した戻り光のうち、上側遮光膜の下側遮光膜に面する表面で反射して内面反射光や多重反射光となる部分の光量を適度に抑えられる。
【0037】
本発明の電気光学装置の他の態様では、前記一方に基板に対向する他方の基板に、前記上側遮光膜の形成領域の内側に位置する対向側遮光膜を備えたことを特徴とする。
【0038】
この態様によれば、薄膜トランジスタ等が形成された基板と対向基板との間に、液晶等の電気光学物質が挟持された構成中で、対向基板側にも他の遮光膜が設けられている。この他の遮光膜は、平面的に見て上側遮光膜の形成領域内に位置するので、この他の遮光膜は各画素の開口領域が規定する機能を持たないが、不要な入射光を対向基板側で遮光することにより、電気光学装置の温度上昇を防ぐことができる。更に不要な入射光を対向基板側である程度遮光することにより、その後内面反射や多重反射光となる成分を含む入射光部分を低減できるので、最終的に薄膜トランジスタの特性劣化をより確実に低減できる。
また、本発明のTFTアレイ基板は、基板上に設けられた、互いに交差する複数の走査線と複数のデータ線と、前記複数の走査線とデータ線の交差に対応してマトリクス状に配置された複数の画素電極と、前記画素電極に電気的に接続された薄膜トランジスタと、前記薄膜トランジスタの上方に十字状に配置された上側遮光膜と、前記薄膜トランジスタの下方に十字状に配置され、前記上側遮光膜の形成領域より内側に形成された下側遮光膜と、前記薄膜トランジスタの上方において前記走査線方向に延伸し、前記薄膜トランジスタに重なる箇所において前記データ線方向への突出部を有することにより、十字状の前記上側遮光膜を形成する容量線と、前記上側遮光膜の十字の部分の交差領域と前記下側遮光膜の十字の部分の交差領域とが重なる領域内に設けられた前記薄膜トランジスタのチャネル領域とソース領域及びドレイン領域の接合部とを備える、ことを特徴とする。
【0039】
本発明の投射型表示装置は上記課題を解決するために、光源と、本発明の第1の電気光学装置でなるライトバルブと、前記光源から発生した光を前記ライトバルブに導光する導光部材と、前記ライトバルブで変調された光を投射する投射光学部材とを備えることを特徴とする。
【0040】
この態様によれば、電気光学装置内の薄膜トランジスタの光リークの発生を防止できるので、高品位の画像を投射することができる。
【0041】
尚、本発明に係る薄膜トランジスタとしては、走査線の一部からなるゲート電極がチャネル領域の上側に位置する所謂トップゲート型でもよいし、走査線の一部からなるゲート電極がチャネル領域の下側に位置する所謂ボトムゲート型でもよい。また、画素電極の層間位置も、基板上で走査線の上方でも下方でもよい。
【0042】
本発明のこのような作用及び他の利得は次に説明する実施の形態から明らかにされる。
【0043】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。以下の実施形態は、本発明の電気光学装置を液晶装置に適用したものである。
【0044】
(第1実施形態)
先ず本発明の実施形態における電気光学装置の構成について、図1から図3を参照して説明する。図1は、電気光学装置の画像表示領域を構成するマトリクス状に形成された複数の画素における各種素子、配線等の等価回路である。図2は、データ線、走査線、画素電極等が形成されたTFTアレイ基板の相隣接する複数の画素群の平面図である。図3は、図2のA−A’断面図である。尚、図3においては、各層や各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各層や各部材毎に縮尺を異ならしめてある。
【0045】
図1において、本実施形態における電気光学装置の画像表示領域を構成するマトリクス状に形成された複数の画素は、画素電極9aと当該画素電極9aをスイッチング制御するためのTFT30とが形成されており、画像信号が供給されるデータ線6aが当該TFT30のソースに電気的に接続されている。データ線6aに書き込む画像信号S1、S2、…、Snは、この順に線順次に供給しても構わないし、相隣接する複数のデータ線6a同士に対して、グループ毎に供給するようにしても良い。また、TFT30のゲートに走査線3aが電気的に接続されており、所定のタイミングで、走査線3aにパルス的に走査信号G1、G2、…、Gmを、この順に線順次で印加するように構成されている。画素電極9aは、TFT30のドレインに電気的に接続されており、スイッチング素子であるTFT30を一定期間だけそのスイッチを閉じることにより、データ線6aから供給される画像信号S1、S2、…、Snを所定のタイミングで書き込む。画素電極9aを介して電気光学物質の一例としての液晶に書き込まれた所定レベルの画像信号S1、S2、…、Snは、対向基板(後述する)に形成された対向電極(後述する)との間で一定期間保持される。液晶は、印加される電圧レベルにより分子集合の配向や秩序が変化することにより、光を変調し、階調表示を可能にする。ノーマリーホワイトモードであれば、各画素の単位で印加された電圧に応じて入射光に対する透過率が減少し、ノーマリーブラックモードであれば、各画素の単位で印加された電圧に応じて入射光に対する透過率が増加され、全体として電気光学装置からは画像信号に応じたコントラストを持つ光が出射する。ここで、保持された画像信号がリークするのを防ぐために、画素電極9aと対向電極との間に形成される液晶容量と並列に蓄積容量70を付加する。
【0046】
図2において、電気光学装置のTFTアレイ基板上には、マトリクス状に複数の透明な画素電極9a(点線部9a’により輪郭が示されている)が設けられており、画素電極9aの縦横の境界に各々沿ってデータ線6a及び走査線3aが設けられている。
【0047】
また、半導体層1aのうち図中右上がりの斜線領域で示したチャネル領域1a’に対向するように走査線3aが配置されており、走査線3aはゲート電極として機能する(特に、本実施形態では、走査線3aは、当該ゲート電極となる部分において幅広に形成されている)。このように、走査線3aとデータ線6aとの交差する個所には夫々、チャネル領域1a’に走査線3aがゲート電極として対向配置された画素スイッチング用のTFT30が設けられている。
【0048】
図2及び図3に示すように、本実施形態では特に、蓄積容量70は、TFT30の高濃度ドレイン領域1e(及び画素電極9a)に接続された画素電位側容量電極としての中継層71aと、固定電位側容量電極としての容量線300の一部とが、誘電体膜75を介して対向配置されることにより形成されている。容量線300は、導電性のポリシリコン膜等からなる第1膜72と、高融点金属を含む金属シリサイド膜等からなる第2膜73とが積層形成された多層膜からなる。
【0049】
容量線300は平面的に見て、走査線3aに沿ってストライプ状に伸びており、TFT30に重なる個所が図2中上下に突出している。そして、図2中縦方向に夫々伸びるデータ線6aと図2中横方向に夫々伸びる容量線300とが相交差して形成されることにより、TFTアレイ基板10上におけるTFT30の上側に、平面的に見て格子状の上側遮光膜の一例が構成されている。
【0050】
他方、TFTアレイ基板10上におけるTFT30の下側には、下側遮光膜11aが格子状に設けられている。
【0051】
本実施形態では特に、格子状の上側遮光膜(容量線300及びデータ線6a)は、画素の非開口領域を規定する。また、格子状の下側遮光膜11aの形成領域は、同じく格子状の上側遮光膜の形成領域内に位置する(即ち、一回り小さく形成され、下側遮光膜11aの幅は、容量線300及びデータ線6aの幅より狭く形成されている)。そして、TFT30のチャネル領域1aは、その低濃度ソース領域1b及び低濃度ドレイン領域1c(即ち、LDD領域)との接合部を含めて、このような格子状の下側遮光膜11aの交差領域内に(従って、格子状の上側遮光膜の交差領域内に)位置する。
【0052】
これらの上側遮光膜の一部をなす第2膜73及び下側遮光膜11aは夫々、例えば、Ti、Cr、W、Ta、Mo、Pb、Al等の金属のうちの少なくとも一つを含む、金属単体、合金、金属シリサイド、ポリシリサイド、これらを積層したもの等からなる。本実施形態では、特に容量線300は、多層構造を有し、その第1膜72が導電性のポリシリコン膜であるため、第2膜73については、導電性材料から形成する必要はないが、第1膜72だけでなく第2膜73をも導電膜から形成すれば、容量線300をより低抵抗化できる。尚、いずれにせよ、容量線300を構成する第1膜72及び第2膜73のうち少なくとも一方は、上側遮光膜を構成すべく遮光膜からなる。
【0053】
これらの容量電極としての中継層71aと容量線300との間に配置される誘電体膜75は、例えば膜厚5〜200nm程度の比較的薄いHTO膜、LTO膜等の酸化シリコン膜、あるいは窒化シリコン膜、窒化酸化膜等や、それらの積層膜から構成される。蓄積容量70を増大させる観点からは、膜の信頼性が十分に得られる限りにおいて、誘電体膜75は薄い程良い。
【0054】
容量線300を構成する第1膜72は、例えば膜厚50nm程度のポリシリコン膜又は非晶質、単結晶からなるシリコン膜からなり、第2膜73は、例えば膜厚150nm程度のタングステンシリサイド膜からなる。このように誘電体膜75に接する側に配置される第1膜72をシリコン膜から構成し、誘電体膜75に接する中継層71aをポリシリコン膜又は非晶質、単結晶からなるシリコン膜から構成することにより、誘電体膜75の劣化を阻止できる。例えば、仮に金属シリサイド膜を誘電体膜75に接触させる構成を採ると、誘電体膜75に重金属等の金属が入り込んで、誘電体膜75の性能を劣化させてしまう。更に、このような容量線300を誘電体膜75上に形成する際に、誘電体膜75の形成後にフォトレジスト工程を入れることなく、容量線300を形成すれば、誘電体膜75の品質を高められるので、当該誘電体膜75を薄く成膜することが可能となり、最終的に蓄積容量70を増大できる。
【0055】
図2及び図3に示すように、データ線6aは、コンタクトホール81を介して中継接続用の中継層71bに接続されており、更に中継層71bは、コンタクトホール82を介して、例えばポリシリコン膜からなる半導体層1aのうち高濃度ソース領域1dに電気的に接続されている。尚、中継層71bは、中継層71aと同一膜から同時形成される。
【0056】
また容量線300は、画素電極9aが配置された画像表示領域からその周囲に延設され、定電位源と電気的に接続されて、固定電位とされる。定電位源としては、TFT30を駆動するための走査信号を走査線3aに供給するための走査線駆動回路(後述する)や画像信号をデータ線6aに供給するサンプリング回路を制御するデータ線駆動回路(後述する)に供給される正電源や負電源の定電位源でもよいし、対向基板の対向電極に供給される定電位でも構わない。
【0057】
尚、TFT30の下側に設けられる下側遮光膜11aについても、その電位変動がTFT30に対して悪影響を及ぼすことを避けるために、容量線300と同様に、画像表示領域からその周囲に延設して定電位源に接続するとよい。
【0058】
更に図2及び図3に示すように、画素電極9aは、中継層71aを中継することにより、コンタクトホール83及び85を介して半導体層1aのうち高濃度ドレイン領域1eに電気的に接続されている。即ち、本実施形態では、中継層71aは、蓄積容量70の画素電位側容量電極としての機能と、画素電極9aをTFT30へ中継接続する機能との両者を果たす。更に、中継層71aと中継層71bとは、同一の導電性膜(例えば、ポリシリコン、非晶質シリコン、単結晶シリコンからなるシリコン膜)からなる。このように中継層71a及び71bを中継層として利用すれば、層間距離が例えば1000nm〜2000nm程度に長くても、両者間を一つのコンタクトホールで接続する技術的困難性を回避しつつ比較的小径の二つ以上の直列なコンタクトホールで両者間を良好に接続でき、画素開口率を高めること可能となり、コンタクトホール開孔時におけるエッチングの突き抜け防止にも役立つ。
【0059】
図2及び3に示すように、電気光学装置は、透明なTFTアレイ基板10と、これに対向配置される透明な対向基板20とを備えている。TFTアレイ基板10は、例えば石英基板、ガラス基板、シリコン基板からなり、対向基板20は、例えばガラス基板や石英基板からなる。
【0060】
TFTアレイ基板10には、平面的に見て格子状の溝10cvが掘られている(図2中右下がりの斜線領域で示されている)。走査線3a、データ線6a、TFT30等の配線や素子等は、この溝10cv内に埋め込まれている。これにより、配線、素子等が存在する領域と存在しない領域との間における段差が緩和されており、最終的には段差に起因した液晶の配向不良等の画像不良を低減できる。
【0061】
図3に示すように、TFTアレイ基板10には、画素電極9aが設けられており、その上側には、ラビング処理等の所定の配向処理が施された配向膜16が設けられている。画素電極9aは例えば、ITO(Indium Tin Oxide)膜などの透明導電性薄膜からなる。また配向膜16は例えば、ポリイミド薄膜などの有機薄膜からなる。
【0062】
他方、対向基板20には、その全面に渡って対向電極21が設けられており、その下側には、ラビング処理等の所定の配向処理が施された配向膜22が設けられている。対向電極21は例えば、ITO膜などの透明導電性薄膜からなる。また配向膜22は、ポリイミド薄膜などの有機薄膜からなる。
【0063】
対向基板20には、格子状又はストライプ状の遮光膜を設けるようにしてもよい。このような構成を採ることで、前述の如く上側遮光膜を構成する容量線300及びデータ線6aと共に、対向基板20側から入射光がチャネル領域1a’や低濃度ソース領域1b及び低濃度ドレイン領域1cに侵入するのを、より確実に阻止できる。更に、このような対向基板20側の遮光膜は、少なくとも入射光が照射される面を高反射な膜で形成することにより、電気光学装置の温度上昇を防ぐ働きをする。尚、このように対向基板20側の遮光膜は好ましくは、平面的に見て容量線300とデータ線6aとからなる上側遮光膜の内側に位置するように形成する。これにより、対向基板20側の遮光膜により、各画素の開口率を低めることなく、このような遮光及び温度上昇防止の効果が得られる。
【0064】
このように構成された、画素電極9aと対向電極21とが対面するように配置されたTFTアレイ基板10と対向基板20との間には、後述のシール材により囲まれた空間に電気光学物質の一例である液晶が封入され、液晶層50が形成される。液晶層50は、画素電極9aからの電界が印加されていない状態で配向膜16及び22により所定の配向状態をとる。液晶層50は、例えば一種又は数種類のネマティック液晶を混合した液晶からなる。シール材は、TFTアレイ基板10及び対向基板20をそれらの周辺で貼り合わせるための、例えば光硬化性樹脂や熱硬化性樹脂からなる接着剤であり、両基板間の距離を所定値とするためのグラスファイバー或いはガラスビーズ等のギャップ材が混入されている。
【0065】
更に、画素スイッチング用のTFT30下には、下地絶縁膜12が設けられている。下地絶縁膜12は、下側遮光膜11aからTFT30を層間絶縁する機能の他、TFTアレイ基板10の全面に形成されることにより、TFTアレイ基板10の表面の研磨時における荒れや、洗浄後に残る汚れ等で画素スイッチング用TFT30の特性の劣化を防止する機能を有する。
【0066】
図3において、画素スイッチング用のTFT30は、LDD(Lightly Doped Drain)構造を有しており、走査線3a、当該走査線3aからの電界によりチャネルが形成される半導体層1aのチャネル領域1a’、走査線3aと半導体層1aとを絶縁するゲート絶縁膜を含む絶縁薄膜2、半導体層1aの低濃度ソース領域1b及び低濃度ドレイン領域1c、半導体層1aの高濃度ソース領域1d並びに高濃度ドレイン領域1eを備えている。
【0067】
走査線3a上には、高濃度ソース領域1dへ通じるコンタクトホール82及び高濃度ドレイン領域1eへ通じるコンタクトホール83が各々開孔された第1層間絶縁膜41が形成されている。
【0068】
第1層間絶縁膜41上には中継層71a及び71b、誘電体膜75、容量線300が形成されており、これらの上には、中継層71a及び71bへ夫々通じるコンタクトホール81及びコンタクトホール85が各々開孔された第2層間絶縁膜42が形成されている。
【0069】
尚、本実施形態では、第1層間絶縁膜41に対しては、1000℃の焼成を行うことにより、半導体層1aや走査線3aを構成するポリシリコン膜(又は非晶質シリコン、単結晶シリコンからなるシリコン層)に注入したイオンの活性化を図ってもよい。他方、第2層間絶縁膜42に対しては、このような焼成を行わないことにより、容量線300の界面付近に生じるストレスの緩和を図るようにしてもよい。
【0070】
第2層間絶縁膜42上にはデータ線6aが形成されており、これらの上には、中継層71aへ通じるコンタクトホール85が形成された第3層間絶縁膜43が形成されている。画素電極9aは、このように構成された第3層間絶縁膜43の上面に設けられている。そして、配向膜16は画素電極9a上に設けられている。
【0071】
以上のように構成された本実施形態によれば、対向基板20側からTFT30のチャネル領域1a’及びその付近に入射光が入射しようとすると、データ線6a及び容量線300(特に、その第2膜73)からなる格子状の上側遮光膜で遮光を行う。他方、TFTアレイ基板10側から、TFT30のチャネル領域1a’及びその付近に戻り光が入射しようとすると、下側遮光膜11aで遮光を行う(特に、複板式のカラー表示用のプロジェクタ等で複数の電気光学装置をプリズム等を介して組み合わせて一つの光学系を構成する場合には、他の電気光学装置からプリズム等を突き抜けて来る投射光部分からなる戻り光は強力であるので、有効である。)。
【0072】
例えば対向基板20上の遮光膜のように、斜めの入射光、内面反射光、多重反射光などのTFT30から層間距離を隔てて遮光するのでは、遮光効果は低い。これに比べて本実施形態では、半導体層1aに対する層間距離が比較的小さくなるように配置可能な容量線300及びデータ線6a並びに下側遮光膜11aにより遮光するので、TFT30の特性が光リークにより劣化することは殆ど無くなり、当該電気光学装置では、非常に高い耐光性が得られる。
【0073】
次に、図4から図15を参照して、本実施形態における遮光について更に説明を加える。ここに、図4は、画像表示領域における上側遮光膜及び下側遮光膜を抽出し且つ拡大して示す図式的な平面図であり、図5は、TFT30のチャネル領域付近を拡大して示す図式的な平面図である。図6から図9は、TFTにおけるチャネル幅Wを変化させた場合のゲート電圧とドレイン電流との関係を示す特性図であり、図10は、チャネル幅Wとドレイン電流との関係を示す特性図である。更に、図11から図13は夫々、TFTにおけるチャネル幅Wを固定すると共に、チャネル長L1或いはLDD長L2を変化させた場合のゲート電圧とドレイン電流との関係を示す特性図である。また、図14及び図15は、図4のB−B’断面における、上側遮光膜及び下側遮光膜による遮光の様子を示す図式的な断面図である。
【0074】
図4に示すように、本実施形態では特に各画素の非開口領域は、主に容量線300と、(コンタクトホール81及び82の形成用に容量線300が途切れている個所における)データ線6aとからなる上側遮光膜により規定される。従って上側遮光膜により、光抜けが生じてコントラス比が低下するのを効果的に防止できる。ここでTFT30の上側には、上側遮光膜が存在し、TFT30の下側には、格子状に配置された下側遮光膜11aが存在し、下側遮光膜11aの形成領域は、上側遮光膜の形成領域内に位置している。
【0075】
更に図5に示すようにTFT30のチャネル領域の接合部JCは、図4に示す下側遮光膜11aの交差領域CR内に位置する。
【0076】
従って本実施形態によれば、プロジェクタ用途の如く強力な入射光が入射した場合に、該入射光のうちTFTアレイ基板10に垂直な成分のみならず斜めの成分からも、TFT30(特に、その接合部JC)を上側遮光膜で遮光できる。他方、戻り光については、下側遮光膜11aで確実に遮光できる。
【0077】
加えて、本願発明者による研究によれば、TFT30のうちチャネル領域1a’の接合部JCに光が入射した場合が、もっとも敏感に光リークが生じることが判明している。この点について図6から図13を参照して説明する。
【0078】
即ち、LDD構造を持つ(但し、図5に示したチャネル長L1を5μmとし、LDD長L2を1.5μmとする)TFT30を用意し、このTFT30に対して、(1)ドレイン電圧を10Vに設定し光を照射しない状態、(2)ドレイン電圧を4Vに設定し光を照射しない状態、(3)ドレイン電圧を10Vに設定し光を照射する状態、及び(4)ドレイン電圧を4Vに設定し光を照射する状態の合計4つの状態について夫々、ゲート電圧とドレイン電流との関係を、ここでは調べる。そして、チャネル幅Wを5μmとした結果は、図6に示した通りであり(図6中、上記4つの状態に対応する特性曲線が、C1、C2、C3及びC4で示されており)、チャネル幅Wを20μmとした結果は、図7に示した通りであり(図7中、上記4つの状態に対応する特性曲線が、C1、C2、C3及びC4で示されており)、チャネル幅Wを50μmとした結果は、図8に示した通りであり(図8中、上記4つの状態に対応する特性曲線が、C1、C2、C3及びC4で示されており)、チャネル幅Wを100μmとした結果は、図9に示した通りである(図9中、上記4つの状態に対応する特性曲線が、C1、C2、C3及びC4で示されている)。更に、これらの結果を、上記4つの状態のうち光を照射する2つの状態について、チャネル幅Wと電流との関係は、図10の通りである(図10中、ドレイン電圧を10Vに設定した場合の特性曲線がL10で示されており、ドレイン電圧を4Vに設定した場合の特性曲線がL04で示されている)。また、図10には、ドレイン電圧が−8から−5Vの間の光照射時の電流値(ここではこれを光リーク電流とする)が示されている。
【0079】
図11から図13は、チャネル幅W=15μmとしたTFT30のゲート電圧とドレイン電流との関係を示しており、図11では、チャネル長L1=4μm且つLDD長L2=1.5μmであり、図12では、チャネル長L1=2μm且つLDD長L2=1.5μmであり、図13では、チャネル長L1=2μm且つLDD長L2=1.0μmである。また、図11から図13中には夫々、上記4つの状態に対応する特性曲線が、C1、C2、C3及びC4で示されている。図6から図9と比較して、図11から図13に示したゲート電圧5〜15Vにおけるドレイン電流が異なるのは、ソース電極に用いている金属材料が異なるため、即ちソース電極と高濃度ソース領域とのコンタクト抵抗が高くなっているためである。これは、本願の主旨となる光リーク電流とは無関係である。
【0080】
図11と図12とを比較すると、光リーク電流に殆ど差はない。即ち、チャネル長L1(図5参照)を変化させても、光リーク電流に変化は殆どないと考察される。更に、図16と図17とを比較すると、光リーク電流に殆ど差はなく、LDD長L2(図5参照)を変化させても、光リーク電流に殆ど変化はないと考察される。
【0081】
図6乃至図13から、照射する光量、チャネル長さL1、LDD長さL2等の諸条件を固定しても、チャネル幅Wを変化させると、光リーク量が顕著に変化することが分かる。そして、光電流は、図5に示したチャネル領域1a’の接合部JCで生じていると判断できる。即ち、接合部JCに照射される光を低減すれば、光リーク電流を効果的に低減できると判断される。
【0082】
そこで本実施形態では、画像表示領域において最も入射光が当たり難い格子状の下側遮光膜11aの交差領域CR(図4参照)内に、TFT30のチャネル領域1a’の接合部JC(図5参照)を位置させている。従って、入射光に対して光リークが発生し難い構成が効率良く得られる。しかも、このようなTFT30に対する上下からの遮光を、TFT30に近接して行うことにより、不必要に遮光膜の形成領域を広げることを避けつつ(即ち、各画素の非開口領域を不必要に狭めることなく)、遮光性能を向上させることができる。
【0083】
更に本実施形態では、図4に示したように下側遮光膜11aの形成領域は、上側遮光膜すなわち容量線300及びデータ線6aの形成領域内に位置しているので、上側遮光膜の脇から入射した入射光が下側遮光膜11aの上面で反射することで、内面反射光や多重反射光が発生する事態も効果的に防止されている。この点について図14及び図15を参照して更なる説明を加える。
【0084】
図14に示すように、本実施形態では好ましくは、図4のB−B’断面における下側遮光膜11aの縁は、上側遮光膜をなす容量線300の縁よりも、10度以上内側に後退している。即ち、本実施形態では好ましくは図14及び図15に示す下側遮光膜11aの後退角度Δθが10度以上となるように、その積層構造が設計されている。
【0085】
従って、図14において、TFTアレイ基板10に斜めに入射する入射光LT1の角度が10度以下であれば、容量線300の脇を通過した入射光LT1が、下側遮光膜11aの上面で反射することにより内面反射光や多重反射光が発生するのを効果的に阻止しえる。特に、一般的なプロジェクタ用途の電気光学装置の場合には、10度を超えて斜めに入射する入射光LT1は殆ど存在しないため、このように後退角度Δθを10度以上にすることは有効である。但し、装置の仕様・設計上、15度程度までの斜めの入射光LT1が無視し得ない程に存在している場合には、これに応じて後退角度Δθが15度以上となるように下側遮光膜11aを構成してもよい。
【0086】
他方、図15に示すように、下側遮光膜11aの後退角度Δθが10度を極端に超えないようにすることで、下側遮光膜11aの脇を通過した戻り光LT2のうち、容量線300の下面で反射して内面反射光LT3や多重反射光LT4となる部分の光量を適度に抑えられる。本実施形態の如く下側遮光膜11aを上側遮光膜よりも一回り小さく形成することにより、このように下側遮光膜11aの脇を通過した戻り光LT2が上側遮光膜の内面で反射することになるが、入射光LT1と比べて戻り光LT2の光強度は遥かに低いので、当該戻り光LT2に起因する内面反射光LT3や多重反射光LT4による悪影響は入射光LT1に起因するそれらと比較すると遥かに小さくて済む。従って、戻り光LT2による内面反射光LT3や多重反射光LT4は若干発生するものの、入射光LT1による内面反射光や多重反射光の発生を極力抑える本実施形態の構成は、光リークを低減する上で実践上大変有利である。
【0087】
加えて以上説明した本実施形態では、導光性のあるポリシリコン膜からなる走査線3aは、下側遮光膜11aのうち走査線3aに沿った部分の形成領域内に位置している。このため、入射光や戻り光が、ポリシリコン膜(又は少なくともシリコンを含む膜)からなる走査線3aの内部に入射して、走査線3a内を通って(光ファイバの如くに導光されることにより)TFT30のチャネル領域1a’やその付近に至る事態を防止できる。
【0088】
以上の結果、本実施形態により、各画素の開口率を高めつつ耐光性を高めることにより画素スイッチング用TFT30の光リークによる特性劣化を低減でき、最終的にコントラスト比が高く且つ明るく高品位の画像表示が可能となる。
【0089】
尚、以上説明した実施形態では、図3に示したように多数の導電層を積層することにより、画素電極9aの下地面(即ち、第3層間絶縁膜43の表面)におけるデータ線6aや走査線3aに沿った領域に段差が生じるのを、TFTアレイ基板10に溝10cvを掘ることで緩和しているが、これに変えて又は加えて、下地絶縁膜12、第1層間絶縁膜41、第2層間絶縁膜42、第3層間絶縁膜43に溝を掘って、データ線6a等の配線やTFT30等を埋め込むことにより平坦化処理を行ってもよいし、第3層間絶縁膜43や第2層間絶縁膜42の上面の段差をCMP(Chemical Mechanical Polishing)処理等で研磨することにより、或いは有機SOGを用いて平らに形成することにより、当該平坦化処理を行ってもよい。
【0090】
更に以上説明した実施形態では、画素スイッチング用TFT30は、好ましくは図3に示したようにLDD構造を持つが、低濃度ソース領域1b及び低濃度ドレイン領域1cに不純物の打ち込みを行わないオフセット構造を持ってよいし、走査線3aの一部からなるゲート電極をマスクとして高濃度で不純物を打ち込み、自己整合的に高濃度ソース及びドレイン領域を形成するセルフアライン型のTFTであってもよい。また本実施形態では、画素スイッチング用TFT30のゲート電極を高濃度ソース領域1d及び高濃度ドレイン領域1e間に1個のみ配置したシングルゲート構造としたが、これらの間に2個以上のゲート電極を配置してもよい。このようにデュアルゲート或いはトリプルゲート以上でTFTを構成すれば、チャネルとソース及びドレイン領域との接合部のリーク電流を防止でき、オフ時の電流を低減することができる。
【0091】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について、図16を参照して説明する。図16は、上側遮光膜あるいは下側遮光膜の平面図である。
【0092】
第1実施形態では、上側遮光膜は、データ線6aと容量線300で構成したが、この第2実施形態では、蓄積容量70と薄膜トランジスタ30の間に独立した上側遮光膜100を形成している。この上側遮光膜100は、十字状の島状に形成されている。各上側遮光膜100との間には、高濃度ソース領域1dと中継層71bとのコンタクトホール82と、中継層71bとデータ線6aとのコンタクトホール81、高濃度ドレイン領域1eと中継層71aとコンタクトホール83が形成される。
【0093】
この上側遮光膜100は、半導体層1aのチャネル領域1aと、低濃度ソース領域1b、低濃度ドレイン領域1c、高濃度ソース領域1dの一部、高濃度ドレイン領域1eの一部に重なるように形成されている。
【0094】
そして、上側遮光膜100は、第1実施形態の容量線300のように、2層に形成されていて、上側を遮光層、薄膜トランジスタ30に面する側である下側を光吸収層で構成されている。この場合は、蓄積容量70は第1実施形態と同様に構成してもよいし、光透過性材料でもよい。また、蓄積容量70の容量線300を遮光層にして、上側遮光膜100は、光吸収層のみにしてもよい。
【0095】
また、この十字状の島状の遮光膜は、下側遮光膜11aとして形成してもよい。その構成は第1実施形態と同様である。
【0096】
(電気光学装置の全体構成)
以上のように構成された各実施形態における電気光学装置の全体構成を図17及び図18を参照して説明する。尚、図17は、TFTアレイ基板10をその上に形成された各構成要素と共に対向基板20の側から見た平面図であり、図18は、図17のH−H’断面図である。
【0097】
図18において、TFTアレイ基板10の上には、シール材52がその縁に沿って設けられており、その内側に並行して、画像表示領域10aの周辺を規定する額縁としての遮光膜53が設けられている。シール材52の外側の領域には、データ線6aに画像信号を所定タイミングで供給することによりデータ線6aを駆動するデータ線駆動回路101及び外部回路接続端子102がTFTアレイ基板10の一辺に沿って設けられており、走査線3aに走査信号を所定タイミングで供給することにより走査線3aを駆動する走査線駆動回路104が、この一辺に隣接する2辺に沿って設けられている。走査線3aに供給される走査信号遅延が問題にならないのならば、走査線駆動回路104は片側だけでも良いことは言うまでもない。また、データ線駆動回路101を画像表示領域10aの辺に沿って両側に配列してもよい。更にTFTアレイ基板10の残る一辺には、画像表示領域10aの両側に設けられた走査線駆動回路104間をつなぐための複数の配線105が設けられている。また、対向基板20のコーナー部の少なくとも1箇所においては、TFTアレイ基板10と対向基板20との間で電気的に導通をとるための導通材106が設けられている。そして、図18に示すように、図17に示したシール材52とほぼ同じ輪郭を持つ対向基板20が当該シール材52によりTFTアレイ基板10に固着されている。
【0098】
尚、TFTアレイ基板10上には、これらのデータ線駆動回路101、走査線駆動回路104等に加えて、複数のデータ線6aに画像信号を所定のタイミングで印加するサンプリング回路、複数のデータ線6aに所定電圧レベルのプリチャージ信号を画像信号に先行して各々供給するプリチャージ回路、製造途中や出荷時の当該電気光学装置の品質、欠陥等を検査するための検査回路等を形成してもよい。
【0099】
以上図1から図18を参照して説明した各実施形態では、データ線駆動回路101及び走査線駆動回路104をTFTアレイ基板10の上に設ける代わりに、例えばTAB(Tape Automated bonding)基板上に実装された駆動用LSIに、TFTアレイ基板10の周辺部に設けられた異方性導電フィルムを介して電気的及び機械的に接続するようにしてもよい。また、対向基板20の投射光が入射する側及びTFTアレイ基板10の出射光が出射する側には各々、例えば、TNモード、VA(Vertically Aligned)モード、PDLC(Polymer Dispersed Liquid Crystal)モード等の動作モードや、ノーマリーホワイトモード/ノーマリーブラックモードの別に応じて、偏光フィルム、位相差フィルム、偏光板などが所定の方向で配置される。
【0100】
(電気光学装置の応用例)
以上説明した各実施形態における電気光学装置は、プロジェクタに適用できる。上述した電気光学装置をライトバルブとして用いたプロジェクタについて説明する。図19は、このプロジェクタの構成を示す平面図である。この図に示されるように、プロジェクタ1100内部には、ハロゲンランプ等の白色光源からなるランプユニット1102が設けられている。このランプユニット1102から射出された投射光は、内部に配置された3枚のミラー1106および2枚のダイクロイックミラー1108によってRGBの3原色に分離されて、各原色に対応するライトバルブ100R、100Gおよび100Bにそれぞれ導かれる。ここで、ライトバルブ100R、100Gおよび100Bの構成は、上述した実施形態に係る電気光学装置と同様であり、画像信号を入力する処理回路(図示省略)から供給されるR、G、Bの原色信号でそれぞれ駆動されるものである。また、B色の光は、他のR色やG色と比較すると、光路が長いので、その損失を防ぐために、入射レンズ1122、リレーレンズ1123および出射レンズ1124からなるリレーレンズ系1121を介して導かれる。
【0101】
さて、ライトバルブ100R、100G、100Bによってそれぞれ変調された光は、ダイクロイックプリズム1112に3方向から入射する。そして、このダイクロイックプリズム1112において、R色およびB色の光は90度に屈折する一方、G色の光は直進する。したがって、各色の画像が合成された後、スクリーン1120には、投射レンズ1114によってカラー画像が投射されることとなる。
【0102】
なお、ライトバルブ100R、100Gおよび100Bには、ダイクロイックミラー1108によって、R、G、Bの各原色に対応する光が入射するので、上述したようにカラーフィルタを設ける必要はない。また、ライトバルブ100R、100Bの透過像はダイクロイックミラー1112により反射した後に投射されるのに対し、ライトバルブ100Gの透過像はそのまま投射されるので、ライトバルブ100R、100Bによる表示像を、ライトバルブ100Gによる表示像に対して左右反転させる構成となっている。
【0103】
尚、各実施形態では、対向基板20に、カラーフィルタは設けられていない。しかしながら、画素電極9aに対向する所定領域にRGBのカラーフィルタをその保護膜と共に、対向基板20上に形成してもよい。このようにすれば、プロジェクタ以外の直視型や反射型のカラー電気光学装置について、各実施形態における電気光学装置を適用できる。また、対向基板20上に1画素1個対応するようにマイクロレンズを形成してもよい。あるいは、TFTアレイ基板10上のRGBに対向する画素電極9a下にカラーレジスト等でカラーフィルタ層を形成することも可能である。このようにすれば、入射光の集光効率を向上することで、明るい電気光学装置が実現できる。更にまた、対向基板20上に、何層もの屈折率の相違する干渉層を堆積することで、光の干渉を利用して、RGB色を作り出すダイクロイックフィルタを形成してもよい。このダイクロイックフィルタ付き対向基板によれば、より明るいカラー電気光学装置が実現できる。
【0104】
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴なう電気光学装置及びその製造方法もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態の電気光学装置における画像表示領域を構成するマトリクス状の複数の画素に設けられた各種素子、配線等の等価回路である。
【図2】第1実施形態の電気光学装置におけるデータ線、走査線、画素電極等が形成されたTFTアレイ基板の相隣接する複数の画素群の平面図である。
【図3】図2のA−A’断面図である。
【図4】第1実施形態における上層遮光膜及び下層遮光膜を抽出して示すTFTアレイ基板の画素の平面図である。
【図5】第1実施形態におけるTFTのチャネル領域付近を拡大して示す図式的な平面図である。
【図6】TFTにおけるチャネル幅Wを変化させた場合のゲート電圧と電流との関係を示す特性図(その1)である。
【図7】TFTにおけるチャネル幅Wを変化させた場合のゲート電圧とドレイン電流との関係を示す特性図(その2)である。
【図8】TFTにおけるチャネル幅Wを変化させた場合のゲート電圧とドレイン電流との関係を示す特性図(その3)である。
【図9】TFTにおけるチャネル幅Wを変化させた場合のゲート電圧とドレイン電流との関係を示す特性図(その4)である。
【図10】チャネル幅Wと電流との関係を示す特性図である。
【図11】TFTにおけるチャネル幅Wを固定すると共に、チャネル長L1或いはLDD長L2を変化させた場合のゲート電圧とドレイン電流との関係を示す特性図(その1)である。
【図12】TFTにおけるチャネル幅Wを固定すると共に、チャネル長L1或いはLDD長L2を変化させた場合のゲート電圧とドレイン電流との関係を示す特性図(その2)である。
【図13】TFTにおけるチャネル幅Wを固定すると共に、チャネル長L1或いはLDD長L2を変化させた場合のゲート電圧とドレイン電流との関係を示す特性図(その3)である。
【図14】図4のB−B’断面における、上側遮光膜及び下側遮光膜による遮光の様子を示す図式的な断面図(その1)である。
【図15】図4のB−B’断面における、上側遮光膜及び下側遮光膜による遮光の様子を示す図式的な断面図(その2)である。
【図16】本発明の第2実施形態における、上側遮光膜あるいは下側遮光膜の平面図である。
【図17】実施形態の電気光学装置におけるTFTアレイ基板をその上に形成された各構成要素と共に対向基板の側から見た平面図である。
【図18】図17のH−H’断面図である。
【図19】プロジェクタの構成図である。
【符号の説明】
1a…半導体層
1a’…チャネル領域
1b…低濃度ソース領域
1c…低濃度ドレイン領域
1d…高濃度ソース領域
1e…高濃度ドレイン領域
2…絶縁薄膜
3a…走査線
6a…データ線
9a…画素電極
10…TFTアレイ基板
10cv…溝
11a…下層遮光膜
12…下地絶縁膜
16…配向膜
20…対向基板
21…対向電極
22…配向膜
30…TFT
50…液晶層
70…蓄積容量
71a…中継層
71b…中継層
72…容量線の第1膜
73…容量線の第2膜
75…誘電体膜
81、82、83、85…コンタクトホール
300…容量線
Claims (12)
- 一対の基板と、
前記一対の基板で挟持された電気光学物質と、
前記一対の基板の一方の基板に、マトリクス状に配置された複数の画素電極と、
前記画素電極に電気的に接続された薄膜トランジスタと、
前記一方の基板に、前記薄膜トランジスタの上方に十字状に配置された上側遮光膜と、
前記一方の基板に、前記薄膜トランジスタの下方に十字状に配置され、前記上側遮光膜の形成領域より内側に形成された下側遮光膜と、
前記薄膜トランジスタの上方において第1方向に延伸し、前記薄膜トランジスタに重なる箇所において前記第1方向と交差する突出部を有することにより、十字状の前記上側遮光膜を形成する容量線と、
前記上側遮光膜の十字の部分の交差領域と前記下側遮光膜の十字の部分の交差領域とが重なる領域内に形成された前記薄膜トランジスタのチャネル領域とソース領域及びドレイン領域の接合部とを備える
ことを特徴とする電気光学装置。 - 前記上側遮光膜は画素の非開口領域を規定するように格子状に配置され、前記下側遮光膜は格子状に配置されることを特徴とする請求項1記載の電気光学装置。
- 前記上側遮光膜は、前記容量線と、前記第1方向と交差する方向に延伸し前記薄膜トランジスタに電気的に接続されたデータ線から構成されていることを特徴とする請求項2記載の電気光学装置。
- 前記データ線の領域と前記下側遮光膜の領域が重なる領域内に、前記薄膜トランジスタの半導体層が形成されることを特徴とする請求項3記載の電気光学装置。
- 前記上側遮光膜と前記下側遮光膜の少なくとも一方は、前記薄膜トランジスタの領域に十字状に配置された複数の遮光部からなることを特徴とする請求項1記載の電気光学装置。
- 前記下側遮光膜の領域内に、前記第1方向に延伸し前記薄膜トランジスタに電気的に接続される走査線が形成されることを特徴とする請求項2記載の電気光学装置。
- 前記走査線は、前記上側遮光膜の形成領域の内側に形成されることを特徴とする請求項6記載の電気光学装置。
- 前記薄膜トランジスタの半導体層は、チャネルと高濃度に不純物がドープされた高濃度領域と、前記チャネルと前記高濃度領域との間に低濃度に不純物がドープされた低濃度領域とを備え、前記低濃度領域は、前記容量線の前記走査線方向へ延伸する部分と前記突出部との交差領域と、前記下側遮光膜の十字の部分の交差領域とが重なる領域内で形成されることを特徴とする請求項1記載の電気光学装置。
- 前記一方の基板に垂直な断面における前記下側遮光膜の縁は、前記縁に対向する前記上側遮光膜の縁よりも10度以上内側に後退していることを特徴とする請求項1記載の電気光学装置。
- 前記一方の基板に対向する他方の基板に、前記上側遮光膜の形成領域の内側に位置する対向側遮光膜を備えたことを特徴とする請求項1記載の電気光学装置。
- 基板上に設けられた、
互いに交差する複数の走査線と複数のデータ線と、前記複数の走査線とデータ線の交差に対応してマトリクス状に配置された複数の画素電極と、
前記画素電極に電気的に接続された薄膜トランジスタと、
前記薄膜トランジスタの上方に十字状に配置された上側遮光膜と、
前記薄膜トランジスタの下方に十字状に配置され、前記上側遮光膜の形成領域より内側に形成された下側遮光膜と、
前記薄膜トランジスタの上方において前記走査線方向に延伸し、前記薄膜トランジスタに重なる箇所において前記データ線方向への突出部を有することにより、十字状の前記上側遮光膜を形成する容量線と、
前記上側遮光膜の十字の部分の交差領域と前記下側遮光膜の十字の部分の交差領域とが重なる領域内に設けられた前記薄膜トランジスタのチャネル領域とソース領域及びドレイン領域の接合部とを備える、
ことを特徴とするTFTアレイ基板。 - 光源と、
請求項1乃至10のいずれかに記載の電気光学装置でなるライトバルブと、
前記光源から発生した光を前記ライトバルブに導光する導光部材と、
前記ライトバルブで変調された光を投射する投射光学部材とを備えることを特徴とする投射型表示装置。
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