JP4424841B2 - 干渉信号除去装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、広帯域の希望信号と狭帯域の干渉信号とを含んだ入力信号から当該干渉信号を除去する干渉信号除去装置に関し、特に、希望信号までも除去してしまうことを抑制するための工夫をした干渉信号除去装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば受信機により受信する受信信号には、受信を希望する信号(希望信号)と共に、当該希望信号に干渉してしまう信号(干渉信号)が含まれる場合がある。
まず、IEEE802.11の無線LANを例として、広帯域の希望信号と狭帯域の干渉信号に関して説明する。
【0003】
なお、「広帯域」や「狭帯域」という語は相対的な意味で用いられており、具体的には、狭帯域干渉信号の占有帯域幅と比較して十分にその占有帯域幅が広い信号のことを広帯域信号と言い、例えば狭帯域干渉信号の占有帯域幅の10倍以上の占有帯域幅を有する信号のことを広帯域信号と言う。一例として、ここで説明する無線LANでは、広帯域信号の占有帯域幅が例えば26MHz(1波当たりの周波数)であり、狭帯域信号の占有帯域幅が例えば2MHz(1波当たりの周波数)である。
【0004】
IEEE802.11の無線LANでは、大別すると、直接拡散(DSSS:Direct Sequence Spread Spectrum)方式と周波数ホッピング(FHSS:Frequency Hopping Spread Spectrum)方式とが用いられており、これらの変調波の違いから、DSSS方式による信号を広帯域信号とみなす一方、FHSS方式による信号を狭帯域信号とみなすことができる。そして、両方式では同じ周波数帯域を使用して無線通信を行っており、システム的に互いの干渉を許しているので、当然のことながら両方式による信号同士で干渉が発生する。
【0005】
ここで、DSSS方式は、狭帯域の信号を周波数拡散により広帯域の信号として通信(送信)を行い、受信側では復調過程で当該信号を元の狭帯域の信号に戻す通信方式である。このため、DSSS方式では、受信信号に含まれる狭帯域干渉信号が復調過程で広帯域信号に拡散されることにより、当該干渉信号を抑圧することができる。このような拡散の前後の比率を拡散率と言い、例えば拡散率が128である場合には約21dB(正確には、10LOG128)の利得が得られることになる。
【0006】
一方、FHSS方式は、狭帯域の信号を、特定時間毎にその送信周波数を変化させることにより広帯域を利用して、通信する方式である。このため、FHSS方式では、特定の時間を固定して見た場合の占有帯域幅は例えば2MHzと狭くなり、DSSS方式の当該帯域当たりの電力が相対的に低くなることから、FHSS方式を採用した受信機の受信フィルタにより干渉の影響を抑えることができる。
【0007】
また、FHSS方式では、例えば別の通信機が異なるホッピングパターンのFHSS方式により信号の通信を行っている場合においても、同一の周波数を同一の時刻に使用してしまう確率は低いため、これらの間での干渉はほとんど問題とはならない。更に、FHSS方式では、DSSS方式と比べて広い帯域を利用して周波数ホッピングを行うことができるため、DSSS方式から強い干渉が発生した場合においても、干渉を受けていない周波数帯域で信号受信を行うことが可能である。
【0008】
しかしながら、上記したDSSS方式では、信号伝送速度を高速にするために拡散率を下げる場合がある。具体例として、拡散率が11に下げられた場合には利得が約10dB(正確には、10LOG11)に下がってしまい、また、それ以下の拡散率では更に利得が低下してしまい、干渉信号の抑圧効果が得られなくなってしまうことがある。
また、例えばFHSS方式を利用したBluetooth(ショートレンジモバイルサービス)等の規格が携帯機器間の無線インタフェースとして広く使われ始めていることから、DSSS方式による信号が干渉を受けてしまう確率が高まっている。
【0009】
また、他の例として、W−CDMA(Wideband-Code Division Multiple Access)方式の通信信号とPHS(Personal Handyphone System)方式の通信信号との間で隣接周波数帯域における干渉が発生してしまうことや、2.4GHz帯の無線LAN(IEEE802.11)の広帯域信号とBluetoothの狭帯域信号との間で干渉が発生してしまうことや、CDMA方式の通信信号とTDMA(Time Division Multiple Access)方式やFDMA(Frequency Division Multiple Access)方式の通信信号との間で周波数帯域の共用による干渉が発生してしまうことや、予期せぬ外来波との干渉が発生してしまうこと等が考えられる。
【0010】
なお、上記のような干渉を除去する技術として、従来より、適応アルゴリズムを用いた干渉信号の除去方法や、ノッチフィルタを用いた干渉信号の除去方法などが検討等されている。一例として、「周波数帯域を共用するDS−CDMA/TDMA信号一括受信機への複素マルチレートフィルタバンクの応用(電子情報通信学会論文誌B−II Vol.J80−BII No12 1997年12月)」には、マルチレートフィルタバンクを用いたノッチフィルタにより、広帯域信号に干渉した狭帯域信号を除去する技術が記載されている。しかしながら、この技術では、狭帯域信号を除去する際に希望波である広帯域信号の成分もフィルタにより除去してしまうため、干渉波除去後のビット誤り率が劣化してしまうといった問題がある。
【0011】
次に、従来例に係る干渉信号除去装置の一例を示す。なお、干渉信号除去装置は例えば無線通信を行う受信機に設けられ、当該受信機により受信される信号に含まれる干渉信号を除去する。
図8には、干渉信号除去装置の一例を示してあり、この装置には、干渉信号抽出部51と、合成器52と、干渉信号推定部53とが備えられている。なお、ここで、tは時刻を示す。
【0012】
干渉信号推定部53は、広帯域の希望信号と複数の狭帯域の干渉信号とが合成された受信信号r(t)及び干渉除去後の受信信号e(t)を入力して、一般的な適応アルゴリズムを用いて当該受信信号r(t)に含まれる干渉信号を推定し、当該推定結果に基づく干渉信号推定係数h(t+1)を干渉信号抽出部51へ出力する。
干渉信号抽出部51は、受信信号r(t)を入力して、干渉信号推定部53から入力される干渉信号推定係数h(t+1)に基づいて当該受信信号r(t)から干渉信号(とみなされるもの)V(t)を抽出し、当該干渉信号V(t)を合成器52へ出力する。
【0013】
合成器52は、受信信号r(t)と干渉信号抽出部51からの干渉信号V(t)とを逆位相で(つまり、干渉信号V(t)が受信信号r(t)から除去されるように)合成して、干渉信号V(t)が除去された後の受信信号e(t)を出力する。なお、合成器52から出力される干渉除去後の受信信号e(t)の一部は上記した干渉信号推定部53に入力されて、干渉信号の推定に用いられる。
【0014】
次に、CDMA方式や、CDMA方式における干渉信号除去装置の例を示す。
例えばDS−CDMA方式を用いた移動通信システムでは、各移動局装置に異なる拡散符号を割り当てることで複数の移動局装置と基地局装置との多重通信を実現している。具体的には、各移動局装置では送信対象となる信号を自己に割り当てられた拡散符号により拡散変調して送信する一方、基地局装置では各移動局装置に割り当てられた拡散符号を用いて受信信号を逆拡散することで希望の移動局装置からの信号を復調する。また、同様に、移動局装置では基地局装置からの受信信号を自己に割り当てられた拡散符号により逆拡散することで自己宛の信号を復調する。
【0015】
図9には、例えばPN(疑似雑音信号)系列から構成された拡散符号系列の一例を示してある。
同図に示されるように、1単位(1シンボル分)の拡散符号は複数のチップデータ(例えば”1”値と”−1”値の並び)から構成されており、このチップデータの並びのパターンを異ならせることにより複数の異なる拡散符号を生成することができる。ここで、拡散符号は、例えば或る拡散符号を1チップ時間以上ずらすと当該拡散符号との相関がなくなるといった特性を有している。
【0016】
また、同図には、1つのチップデータの時間幅(チップ区間Tc)と1シンボル分の拡散符号の時間幅(ビット区間T)とを示してある。ここで、1シンボル分の拡散符号の時間幅は、送信機(例えば移動局装置や基地局装置)から受信機(例えば基地局装置や移動局装置)へ送信する送信データ(例えば”1”値と”0”値)の時間幅と対応している。すなわち、拡散符号を構成するチップデータの変化速度は、当該拡散符号により拡散変調される送信データの切換速度(シンボル切換速度)に比べて非常に速い速度となっている。
【0017】
上述のように、このような無線通信では、周波数の利用を許可されて通信に用いている広帯域の周波数帯域内に、意図に反して他の(すなわち、CDMA方式以外の)狭帯域信号等が入り混じって干渉を生じさせてしまう場合がある。このような干渉信号が例えばシステム設計時に想定していた雑音等による妨害の程度より大きい場合には、ビット誤りが増大して、受信機での受信品質が著しく劣化してしまうことが生じる。
【0018】
また、上述のように、例えば周波数帯域の有効利用を目的として、CDMA方式のように比較的広い周波数帯域を用いて通信する方式とFM(周波数変調)方式等のように狭帯域を用いて通信する方式とにより多重通信を実現することも考えられる。具体的には、例えばCDMA方式による拡散信号の周波数帯域にFM方式等のアナログ通信方式による信号を多重して周波数帯域の有効利用を図ることが原理的には可能である。しかしながら、もしもCDMA受信機が受信信号からFM方式等による信号を除去できないとすると、当該信号と拡散信号とが互いに干渉してしまうため、ビット誤りが増加し、受信品質の劣化を招いてしまう。
【0019】
なお、図10には、CDMA方式による拡散信号(CDMA信号)とFM方式による信号(FM干渉波)とを含む受信信号のスペクトルの一例を示してあり、横軸は周波数を示し、縦軸はスペクトル強度を示している。
【0020】
以下で、図11〜図15を参照して、例えば特願平11−197296号公報に記載された干渉信号除去装置(干渉除去回路)の例を示す。なお、この文献に記載された干渉信号除去装置は、例えばCDMA方式を採用する基地局装置や移動局装置や中継局装置等に設けられ、CDMA方式により拡散変調された広帯域の拡散信号と狭帯域の干渉信号とを含む受信信号や受信信号のI成分及びQ成分から当該干渉信号を除去するものであり、特に、拡散信号の特性を利用して干渉信号を除去するものである。
【0021】
図11には、CDMA信号(希望信号)とFM信号(干渉信号)とを含む受信信号を入力して、当該入力信号r(t)から当該FM信号を除去する干渉信号除去装置の一例を示してある。この干渉信号除去装置では、CDMA方式により拡散変調された拡散信号と干渉信号とを含む受信信号から当該干渉信号を除去するに際して、時間差手段61が受信信号を分配して得られる2つの信号間に拡散符号の1チップ分以上の時間差を与え、抽出手段62、64が時間差を与えた2つの信号間で相関のある信号成分を干渉信号成分として抽出し、除去手段63が抽出した干渉信号成分を受信信号から除去する。
【0022】
具体的には、同図に示した干渉除去装置には、受信信号を遅延させる遅延素子61と、後述するフィルタタップ係数演算制御部64からのタップ係数制御信号に従って遅延した受信信号から干渉信号成分を抽出する適応フィルタ62と、受信信号から当該干渉信号成分を除去する減算器63と、減算器63からの出力信号と遅延した受信信号とに基づくタップ係数制御信号を適応フィルタ62へ出力するフィルタタップ係数演算制御部64とが備えられている。
【0023】
同図に示した回路の構成例及び動作例を説明する。
この回路には受信機により受信した信号r(t)が入力され、この入力信号r(t)には、例えばCDMA方式により拡散変調された拡散信号と狭帯域を用いた通信方式による干渉信号(例えばFM変調信号)が含まれている。ここで、tは時刻を示しており、本例では1サンプル時間を最小単位とする整数の離散値であるとする。
【0024】
上記した入力信号r(t)は、まず2つの信号に分配されて、一方の信号が遅延素子61に入力される一方、他方の信号が減算器63に入力される。
遅延素子61は入力した信号を拡散符号の1チップ分の時間幅以上遅延させて出力する機能を有している。なお、この時間差としては、例えば当該2つの信号間で拡散信号の相関成分をなくすことができ、且つ、除去しようとする干渉信号の相関成分を残すことができる程度の値に予め設定されている。
【0025】
具体的には、遅延素子61から出力される信号はr(t−τ)と表され、ここで、τは遅延素子61により与えられる遅延時間である。
遅延素子61から出力される信号r(t−τ)は適応フィルタ62及びフィルタタップ係数演算制御部64に入力される。
【0026】
ここで、図12には、適応フィルタ62の構成例を示してある。
同図に示した適応フィルタ62には、例えば直列に並べられた(n−1)個の記憶素子S1〜Sn-1から構成されるシフトレジスタと、n個の乗算器J1〜Jnと、(n−1)個の加算器K1〜Kn-1とが備えられている。なお、nはフィルタタップ数である。
【0027】
シフトレジスタには遅延素子61から出力される信号r(t−τ)が入力され、この信号が複数の記憶素子S1〜Sn-1に時系列的に格納される。また、各記憶素子S1〜Sn-1に格納される信号は順次後続する記憶素子へシフトされていく。
具体的に、例えばシフトレジスタに入力される信号r(t−τ)の当該シフトレジスタ内における系列u(t)は式1で示される。ここで、u(t)はベクトルである。
なお、本明細書では、信号等を表すものとして用いる記号がベクトルである旨や行列である旨を示さない場合には、当該記号はスカラーであるとする。
【0028】
【数1】
【0029】
ここで、信号r1は或る時刻にシフトレジスタに入力される信号であり、いずれの記憶素子S1〜Sn-1も通過せずに乗算器J1へ出力される信号である。また、信号r2〜rnはそれぞれ当該時刻に各記憶素子S1〜Sn-1から出力される信号であり、それぞれ各乗算器J2〜Jnへ出力される信号である。
【0030】
各乗算器J1〜Jnにはそれぞれ上記した各信号r1〜rnが入力されるとともに、後述するフィルタタップ係数演算制御部64からの各タップ係数制御信号h1〜hnが入力され、各乗算器J1〜Jnでは入力した2つの信号を乗算して(すなわち、各信号r1〜rnを各タップ係数制御信号h1〜hnで重み付けして)当該乗算結果を加算器K1〜Kn-1へ出力する。
ここで、フィルタタップ係数演算制御部64から出力されるフィルタタップ係数系列h(t)は式2で示される。なお、h(t)はベクトルである。
【0031】
【数2】
【0032】
また、各乗算器J1〜Jnから出力される乗算結果は加算器K1〜Kn-1により総和され、当該総和結果が適応フィルタ62から出力される。ここで、後述するように本例のフィルタタップ係数系列h(t)は、当該総和結果が受信信号中に含まれる干渉信号成分と同じ信号となるように、フィルタタップ係数演算制御部64により逐次更新される。
具体的に、適応フィルタ62から出力される信号(すなわち、上記した総和結果)FM(t)は式3で示される。ここで、式3中のΣは和を表している。
【0033】
【数3】
【0034】
なお、本明細書で用いる記号“*”は、当該記号の前後に配置される記号同士の乗算を示し、特に、ベクトル同士の乗算は、2つのベクトルの内積値を算出する演算を表している。
【0035】
上記のようにして適応フィルタ62では、フィルタタップ係数演算制御部64からのタップ係数制御信号に応じて、入力した遅延信号r(t−τ)から上記した干渉信号成分を抽出し、干渉波抽出信号FM(t)として減算器63へ出力する。
【0036】
減算器63は遅延していない入力信号r(t)と適応フィルタ62からの出力信号FM(t)とを入力し、当該入力信号r(t)から当該出力信号FM(t)を減算して当該減算結果e(t)を出力する機能を有している。
ここで、上記した減算結果e(t)は本例の干渉信号除去装置から出力される信号であり、式4で示される。
【0037】
【数4】
【0038】
本例では、後述するフィルタタップ係数演算制御部64からのタップ係数制御信号が逐次更新されることで、上記した干渉波抽出信号FM(t)が受信信号中の干渉信号と同じ信号となるため、上記した減算結果e(t)は受信信号から当該干渉信号を除去した信号、すなわちCDMA方式による拡散信号(理想的には、当該拡散信号のみ)となる。
【0039】
フィルタタップ係数演算制御部64には遅延素子61から出力される信号r(t−τ)と減算器63から出力される信号e(t)とが入力され、フィルタタップ係数演算制御部64はこれらの信号を用いて、適応フィルタ62から出力される信号FM(t)が干渉信号成分と同じ信号になるようなタップ係数制御信号を演算し、演算したタップ係数制御信号を適応フィルタ62へ出力する機能を有している。
【0040】
本例のフィルタタップ係数演算制御部64では例えばLMS(Least Mean Square)やRLS(Recursive Least Square)等のアルゴリズムを用いて上記したタップ係数制御信号を演算することができ、本例では一例として、LMSアルゴリズムを用いた場合を説明し、また、RLSアルゴリズムを用いた場合についても後述する。
まず、LMSの一般式を説明する。
LMSの更新式は一般に式5で示される。
【0041】
【数5】
【0042】
ここで、h(t)は時刻tにおけるフィルタタップ係数系列であり、μは収束の時間や精度に関係する係数であるステップサイズパラメータであり、e(t)は時刻tにおけるエラー信号であり、u(t)は時刻tにおける入力信号系列である。
また、上記したエラー信号e(t)は一般には式6で示される。
【0043】
【数6】
【0044】
ここで、d(t)は通常ユニークワードやトレーニング信号と呼ばれるものであり、送信側と受信側とで予め定められた既知の信号が用いられる。上記式5や式6を用いた演算アルゴリズムでは、フィルタタップ係数系列を逐次更新することで、エラー信号e(t)を0に収束させることができる。
【0045】
次に、上記のLMSアルゴリズムを本例に当てはめた場合を説明する。
上記した式5を本例の場合に当てはめると、h(t)はフィルタタップ係数演算制御部64から適応フィルタ62へ出力されるフィルタタップ係数系列であり、u(t)は遅延素子61からフィルタタップ係数演算制御部64へ出力される信号系列(上記式1に示したもの)である。
また、本例では、上記したエラー信号e(t)として減算器63から出力される信号(上記式4に示したもの)を用いており、これが本例の干渉除去回路における特徴点となっており、通常のLMSアルゴリズムとは異なる処理となっている。
【0046】
まず、仮に、遅延素子61が備えられていない場合を考えると、上記した演算アルゴリズムはエラー信号e(t)を0に近づけるため、減算器63から出力される信号e(t)は0に収束し、受信信号中の干渉信号ばかりでなくCDMA方式による拡散信号までをも除去するフィルタタップ係数系列h(t)が生成されてしまう。
【0047】
一方、本例では上記した遅延素子61が備えられているため、遅延素子61からフィルタタップ係数演算制御部64に入力される信号r(t−τ)と減算器63を介してフィルタタップ係数演算制御部64に入力される信号e(t)との間には遅延時間τの時間差がある。
【0048】
ここで、例えばCDMA方式による拡散信号r(t)と当該信号に比べて1チップ時間以上遅延した拡散信号r(t−τ)とは無相関の信号となるため、上記した演算アルゴリズムではエラー信号e(t)を0に収束させようとする場合に、u(t)の拡散信号成分はr(t)と無相関になっていることから誤差e(t)となって残る。つまり、上記式4において、入力信号系列u(t)を加え続けると拡散信号成分の影響は理論的に0となるため、当該拡散信号成分が除去されずに誤差e(t)となって残ることになる。一方、チップデータに比べて時間的に緩やかに変動する干渉信号成分は例えば数チップ時間程度の遅延があっても相関を有するため、当該干渉信号成分のみを受信信号から除去することができるフィルタタップ係数系列h(t)が生成される。
【0049】
すなわち、本例に適用した上記の演算アルゴリズムでは、u(t)とe(t)とで相関のある成分(すなわち、干渉信号成分)を適応フィルタ62からの出力信号中に残す一方、相関のない成分(すなわち、拡散信号成分)については適応フィルタ62からの出力信号中に残さないようなフィルタタップ係数系列h(t)を生成することができる。
このような演算アルゴリズムにより、本例の適応フィルタ62では受信信号中の干渉信号成分のみを抽出して減算器63へ出力することができ、減算器63では受信信号から干渉信号成分のみを除去した信号(すなわち、CDMA方式による拡散信号)を出力することができる。
【0050】
以上のように、上記図11に示した干渉信号除去装置では、拡散信号の特性を利用することで、CDMA方式により拡散変調された広帯域の拡散信号と狭帯域の干渉信号とを含む受信信号から当該干渉信号を適応的に除去することができ、これにより、受信品質の劣化を防ぎ、受信品質を向上させることができる。
【0051】
なお、上記図11では、減算器63から出力される信号を遅延させない構成を示したが、例えば図13に示すように減算器73に入力される受信信号を遅延素子71により遅延させる一方、適応フィルタ72やフィルタタップ係数演算制御部74に入力される受信信号を遅延させないような構成によっても上記と同様な効果を得ることができる。ここで、図13に示した構成は、遅延素子71が減算器73側に備えられているといった点を除いては、上記図11に示した構成とほぼ同様である。
【0052】
また、上記したLMSアルゴリズム以外のアルゴリズムを用いて上記と同様な干渉除去の効果を得ることもでき、一例として、上記図11に示した構成においてRLSアルゴリズムを用いた場合の更新式の具体例を示しておく。なお、以下では、説明の便宜上から、上記したu(t)やh(t)やe(t)やd(t)やr(t)に相当するものについては同じ符号を用いて示す。
【0053】
例えば、上記式1で示したu(t)と同様な成分から成るn行1列のベクトルを入力系列u(t)とし、上記式2で示したh(t)と同様にn個のフィルタタップ係数から成るn行1列のベクトルをフィルタタップ係数系列h(t)とする。
また、上記式6に示したエラー信号e(t)に相当するものとして、RLSにおけるエラー信号e(t)は式7で示される。なお、uT(t)はu(t)を転置したものを示す。
【0054】
【数7】
【0055】
ここで、本例では、d(t)としては例えば減算器63に入力される受信信号r(t)が用いられ、また、上記式7中のuT(t)*h(t)が適応フィルタ62から出力される干渉波抽出信号に相当する。すなわち、上記したLMSアルゴリズムを用いた場合と同様に、上記式7に示したエラー信号e(t)としては減算器63から出力される信号が用いられ、これが本例の特徴点となっている。なお、上記したLMSアルゴリズムを用いた場合と同様に、遅延素子61が備えられていない場合にはエラー信号e(t)は0に収束する。
【0056】
また、例えばn行n列の行列である係数誤差相関行列P(t)及びn行1列のベクトルであるゲインベクトルk(t)を用いて、RLSの更新式は式8〜式10で示される。
【0057】
【数8】
【0058】
【数9】
【0059】
【数10】
【0060】
また、上記したフィルタタップ係数系列h(t)の初期値h(0)としては例えば式11に示すようにゼロベクトルが用いられ、上記した係数誤差相関行列P(t)の初期値P(0)としては例えば式12に示すように行数と列数とが一致する対角要素が全て正の実数cであってそれ以外の要素が0である行列が用いられる。なお、hT(0)はh(0)を転置したものを示す。また、式12中のIは行数と列数とが一致する対角要素が全て1であってそれ以外の要素が0であるn行n列の行列を示す。
【0061】
【数11】
【0062】
【数12】
【0063】
以上に示したRLSの更新式に従ってフィルタタップ係数演算制御部24がフィルタタップ係数系列h(t)を順次更新することで、例えば上記したLMSアルゴリズムを用いた場合と同様に、適応フィルタ62から出力される信号を次第に実際の干渉信号成分に近づけることができ、これにより、CDMA方式により拡散変調された広帯域の拡散信号と狭帯域の干渉信号とを含む受信信号から当該干渉信号を除去することができる。
【0064】
次に、図14には、CDMA信号(希望信号)とFM信号(干渉信号)とを含む受信信号のI成分及びQ成分を入力して、当該I成分rI(t)及び当該Q成分rQ(t)から当該FM信号を除去する干渉信号除去装置の一例を示してある。この干渉信号除去装置では、CDMA方式により拡散変調された拡散信号と干渉信号とを含む受信信号のI成分及びQ成分から当該干渉信号を除去するに際して、時間差手段81a、81bがI成分を分配して得られる2つの信号間及びQ成分を分配して得られる2つの信号間に拡散符号の1チップ分以上の時間差を与え、抽出手段82a、82b、83a、83bが時間差を与えた一方のI成分及びQ成分から成る受信信号と他方のI成分及びQ成分から成る受信信号との間で相関のある信号成分を干渉信号成分として当該干渉信号成分のI成分及びQ成分を抽出し、除去手段84a、84b、85a、85bが抽出した干渉信号成分のI成分を受信信号のI成分から除去するとともに抽出した干渉信号成分のQ成分を受信信号のQ成分から除去する。
【0065】
具体的には、同図に示した干渉信号除去装置には、受信信号から直交検波されたI相の信号(I成分)を遅延させる遅延素子81aと、受信信号から直交検波されたQ相の信号(Q成分)を遅延させる遅延素子81bと、後述するフィルタタップ係数演算制御部86からのタップ係数制御信号に従って遅延したI成分やQ成分から干渉信号成分を抽出する4つの適応フィルタ82a、82b、83a、83bと、干渉信号成分のI成分を加算する加算器84aと、干渉信号成分のQ成分を加算する加算器84bと、受信信号のI成分から干渉信号成分のI成分を除去する減算器85aと、受信信号のQ成分から干渉信号成分のQ成分を除去する減算器85bと、減算器85a、85bからの出力信号と遅延した受信信号のI成分及びQ成分とに基づくタップ係数制御信号を適応フィルタ82a、82b、83a、83bへ出力するフィルタタップ係数演算制御部86とが備えられている。
【0066】
同図に示した回路の構成例及び動作例を説明する。
この回路には受信機により受信信号から直交検波されたI成分rI(t)及びQ成分rQ(t)が入力され、この入力信号rI(t)、rQ(t)には、例えばCDMA方式により拡散変調された広帯域の拡散信号と狭帯域を用いた通信方式による干渉信号(例えばFM変調信号)が含まれている。ここで、上記図11を用いて説明した場合と同様に、tは時刻を示しており、本例では1サンプル時間を最小単位とする整数の離散値であるとする。
【0067】
上記したI成分rI(t)は、まず2つの信号に分配されて、一方の信号が遅延素子81aに入力される一方、他方の信号が減算器85aに入力される。同様に、上記したQ成分rQ(t)は、まず2つの信号に分配されて、一方の信号が遅延素子81bに入力される一方、他方の信号が減算器85bに入力される。
【0068】
各遅延素子81a、81bは、例えば上記図11に示した遅延素子61と同様に、入力した信号を拡散符号の1チップ分の時間幅以上遅延させて出力する機能を有している。なお、2つの遅延素子81a、81bでは同じ遅延時間を与えている。また、上記図11を用いて説明した場合と同様に、具体的には、遅延素子81aから出力されるI成分の信号はrI(t−τ)と表され、遅延素子81bから出力されるQ成分の信号はrQ(t−τ)と表される。ここで、τは遅延素子81a、81bにより与えられる遅延時間である。
【0069】
遅延素子81aから出力される信号rI(t−τ)は2つの適応フィルタ82a、83a及びフィルタタップ係数演算制御部86に入力され、遅延素子81bから出力される信号rQ(t−τ)は2つの適応フィルタ82b、83b及びフィルタタップ係数演算制御部86に入力される。
【0070】
各適応フィルタ82a、82b、83a、83bの構成は、例えば上記図12に示したものと同様である。ここで、本例で4つの適応フィルタ82a、82b、83a、83bを備えているのはI相及びQ相の複素演算を行うためであり、具体的には、受信信号のI成分及びQ成分のそれぞれの中に干渉信号成分のI成分とQ成分との両方が含まれるためである。また、本例では、I相とQ相との2種類のフィルタタップ係数系列hI(t)、hQ(t)が用いられる。なお、hI(t)及びhQ(t)はベクトルである。
【0071】
具体的に、本例では、適応フィルタ82aが入力した受信信号のI成分rI(t−τ)から干渉信号成分のI成分を抽出し、適応フィルタ83aが入力した受信信号のI成分rI(t−τ)から干渉信号成分のQ成分を抽出し、適応フィルタ82bが入力した受信信号のQ成分rQ(t−τ)から干渉信号成分のQ成分を抽出し、適応フィルタ83bが入力した受信信号のQ成分rQ(t−τ)から干渉信号成分のI成分を抽出することができるようなフィルタタップ係数系列hI(t)、hQ(t)が後述するフィルタタップ係数演算制御部86により生成される。
【0072】
加算器84aは2つの適応フィルタ82a、83bから出力される信号を加算して減算器85aへ出力する機能を有しており、減算器85aへ出力される当該加算結果は受信信号のI成分中の干渉信号成分(すなわち、干渉信号成分のI成分)FMI(t)となる。なお、本例では、加算器84aが一方の適応フィルタ83bから出力される信号の正負を反転させて上記した加算を行うこととしたが、このような正負の反転が例えば上記した適応フィルタ83bや後述するフィルタタップ係数演算制御部86により行われる場合には、加算器82aでは上記のような正負の反転は行われなくてよい。
【0073】
加算器84bは2つの適応フィルタ82b、83aから出力される信号を加算して減算器85bへ出力する機能を有しており、減算器85bへ出力される当該加算結果は受信信号のQ成分中の干渉信号成分(すなわち、干渉信号成分のQ成分)FMQ(t)となる。
【0074】
ここで、上記した加算器84aから出力される干渉信号成分のI成分FMI(t)は式13で示され、上記した加算器84bから出力される干渉信号成分のQ成分FMQ(t)は式14で示される。なお、式13及び式14中のuI(t)及びuQ(t)はベクトルであり、これらuI(t)及びuQ(t)は例えば上記図11を用いた説明中において式1で示したu(t)のI成分及びQ成分に相当している。
【0075】
【数13】
【0076】
【数14】
【0077】
減算器85aは遅延していないI成分の入力信号rI(t)と加算器85aからの出力信号FMI(t)とを入力し、当該入力信号rI(t)から当該出力信号FMI(t)を減算して当該減算結果eI(t)を出力する機能を有している。
同様に、減算器85bは遅延していないQ成分の入力信号rQ(t)と加算器84bからの出力信号FMQ(t)とを入力し、当該入力信号rQ(t)から当該出力信号FMQ(t)を減算して当該減算結果eQ(t)を出力する機能を有している。
ここで、上記した減算結果eI(t)、eQ(t)は本例の干渉信号除去装置から出力される信号である。
【0078】
本例では、後述するフィルタタップ係数演算制御部86からのタップ係数制御信号が逐次更新されることで、上記したI成分及びQ成分の干渉波抽出信号FMI(t)、FMQ(t)がそれぞれ受信信号のI成分及びQ成分中の干渉信号と同じ信号となるため、上記した減算結果eI(t)、eQ(t)はそれぞれ受信信号のI成分及びQ成分から当該干渉信号を除去した信号、すなわちCDMA方式による拡散信号(理想的には、当該拡散信号のみ)となる。
【0079】
フィルタタップ係数演算制御部86には2つの遅延素子81a、81bから出力される信号rI(t−τ)、rQ(t−τ)と2つの減算器85a、85bから出力される信号eI(t)、eQ(t)とが入力され、フィルタタップ係数演算制御部86はこれらの信号を用いて、各適応フィルタ82a、82b、83a、83bから出力される信号が上記したような干渉信号成分となるようなタップ係数制御信号を演算してそれぞれの適応フィルタ82a、82b、83a、83bへ出力する機能を有している。なお、本例では、例えば2つの適応フィルタ82a、82bへ同じタップ係数制御信号が出力される一方、残りの2つの適応フィルタ83a、83bへ同じタップ係数制御信号が出力されることで、上記式13や上記式14で示した干渉信号成分FMI(t)、FMQ(t)が生成されるように設定してある。
【0080】
本例のフィルタタップ係数演算制御部86では、例えば上記図11を用いた説明において示したLMSの複素演算用のアルゴリズムを用いてタップ係数制御信号を演算している。なお、このアルゴリズムにおけるLMSの更新式は式15及び式16で示される。
【0081】
【数15】
【0082】
【数16】
【0083】
ここで、hI(t)やhQ(t)は時刻tにおけるフィルタタップ係数系列であり、μは収束の時間や精度に関係する係数であるステップサイズパラメータであり、uI(t)やuQ(t)は上記のようにそれぞれ適応フィルタ82a、83aのシフトレジスタ内や適応フィルタ82b、83bのシフトレジスタ内における入力信号系列である。また、上記図11を用いて説明した場合と同様に、eI(t)やeQ(t)としては、それぞれ減算器85aや減算器85bから出力される信号を用いている。なお、uI(t)及びuQ(t)は上記したようにベクトルである。
【0084】
本例では、上記図11を用いて説明した場合と同様に、上記のような演算アルゴリズムによりフィルタタップ係数系列hI(t)、hQ(t)を順次更新していくことで、拡散信号成分についてはその無相関性により除去されず、且つ、比較的相関性のある干渉信号成分を除去することができるフィルタタップ係数系列hI(t)、hQ(t)を生成することができる。
また、本例では、フィルタタップ係数系列hI(t)、hQ(t)を演算するに際してI成分及びQ成分の両方を考慮しているため、干渉除去の精度を更に向上させることができる。
【0085】
以上のように、上記図9に示した干渉信号除去装置では、拡散信号の特性を利用することで、CDMA方式により拡散変調された拡散信号と干渉信号とを含む受信信号のI成分及びQ成分から当該干渉信号を除去することができ、これにより、受信品質の劣化を防ぎ、受信品質を向上させることができる。
【0086】
なお、上記図14では、上記図11を用いて説明した場合と同様に、減算器85a、85bから出力される信号を遅延させない構成を示したが、例えば図15に示すように減算器95a、95bに入力される受信信号を遅延素子91a、91bにより遅延させる一方、適応フィルタ92a、92b、93a、93bやフィルタタップ係数演算制御部96に入力される受信信号を遅延させないような構成によっても上記と同様な効果を得ることができる。ここで、図15に示した構成は、遅延素子91a、91bが減算器95a、95b側に備えられているといった点を除いては、上記図14に示した構成とほぼ同様であり、以上に示した構成部分と共に加算器94a、94bも備えられている。
【0087】
また、例えば上記図11を用いて説明した場合と同様に、上記した複素演算用のLMSアルゴリズム以外のアルゴリズムを用いて上記と同様な干渉除去の効果を得ることもでき、一例として、上記図9に示した構成において複素演算用のRLSアルゴリズムを用いた場合について示しておく。なお、以下では、説明の便宜上から、上記したuI(t)及びuQ(t)やhI(t)及びhQ(t)やeI(t)及びeQ(t)やrI(t)及びrQ(t)に相当するものについては同じ符号を用いて示す。
【0088】
複素演算用のRLSアルゴリズムでは、例えば上記式7〜上記式10で示したu(t)やh(t)やe(t)やk(t)やP(t)等の全てのパラメータが複素数の要素から構成される。ここで、γ及びωを実数として、虚数部を表す記号としてjを用いると、任意の複素数要素は(γ+jω)と表される。
そして、複素演算用のRLSアルゴリズムでは、例えば上記した各パラメータの実数部と虚数部とを分離してそれぞれI成分のパラメータ及びQ成分のパラメータとして用いることで、上記図11を用いた説明において示したような逐次更新処理を複素演算において実現する。
【0089】
なお、具体的に本例の場合には、例えばu(t)の実数部をuI(t)とするとともに虚数部をuQ(t)とし、h(t)の実数部をhI(t)とするとともに虚数部をhQ(t)とし、e(t)の実数部をeI(t)とするとともに虚数部をeQ(t)とする等して、受信信号のI成分rI(t)及びQ成分rQ(t)から干渉信号成分を除去する処理が行われる。
【0090】
以上に示したように、例えば複素演算用のRLSアルゴリズムを用いた場合においても、上記した複素演算用のLMSアルゴリズムを用いた場合と同様に、CDMA方式により拡散変調された拡散信号と干渉信号とを含む受信信号のI成分及びQ成分から当該干渉信号を除去することができる。
【0091】
【発明が解決しようとする課題】
ここで、上記従来例で示したような干渉信号除去装置により干渉除去を行った場合の様子を具体的に示す。
図16には、干渉信号が除去される前における受信信号のスペクトルの一例を示してあり、この受信信号としてはCDMA信号に2波のFM信号が干渉したものを示してある。なお、同図中や後述する図17中や後述する図18中のグラフの横軸は周波数(MHz)を示しており、縦軸は信号のスペクトル強度を示している。
【0092】
また、図17には、上記図16に示した受信信号を例えば上記図11に示したような干渉信号除去装置に入力して、当該干渉信号除去装置により当該受信信号に含まれる干渉信号(ここでは、2波のFM信号)を除去した直後(干渉信号除去処理の操作の開始直後)における(当該干渉信号除去装置からの)出力信号のスペクトルの一例を示してある。図17に示されるように、干渉信号除去処理の開始直後において干渉信号除去装置から出力される信号では、干渉信号の周波数の近傍に位置するCDMA信号の周波数成分も同時に除去されていることがわかる。ここで、このような不具合が生じる理由としては、受信信号から適応フィルタが干渉信号を抽出する際に同時にCDMA信号も抽出し、干渉信号の除去と同時にCDMA信号成分も除去することによる。これは、受信信号から干渉信号成分を抽出し除去を行う適応フィルタ方式においては干渉信号電力の大小に関わらず必ず起こる現象であり、この結果として干渉除去後の受信信号のビット誤り率が劣化してしまうという問題が起こっていた。
【0093】
さらに、上記従来例で示したような干渉信号除去装置では、干渉信号除去処理を開始した後にそのまま当該処理を続けていくと、次第に受信信号中のCDMA信号成分までも減衰させてしまい、このような減衰が時間の経過と共に進行していってしまうといった不具合があった。
【0094】
具体的に、図18には、上記図17に示した状態から干渉信号除去処理をしばらくの時間継続した場合における(干渉信号除去装置からの)出力信号のスペクトルの一例を示してある。図18に示されるように、干渉信号除去処理を開始してからしばらくの時間が経過すると、前記出力信号中に残されるべきCDMA信号成分が大きく減衰させられ、スペクトルが乱れ帯域が広がっている。
このように、従来の干渉信号除去装置では、狭帯域干渉信号を適応的に除去する能力を有してはいるものの、希望波であるCDMA信号も時間の経過と共に徐々に除去していってしまうといった不具合があった。
【0095】
ここで、このような不具合が生じる理由としては、干渉信号を推定する際に同時にCDMA信号も抽出されていることが考えられる。つまり、1チップ分以上の時間差を与えることにより本来無相関になり推定されるはずのないCDMA信号成分が、帯域制限フィルタの影響による符号間干渉などの要因により一部で相関を持ち、干渉信号として推定されてしまうためである。このためスペクトルが乱れ、帯域が広がることで、結果として干渉除去後の受信信号のビット誤り率が劣化してしまうという問題が起こっていた。この現象は、干渉信号の有無に関わらず干渉信号除去装置を長時間稼動させると必ず発生し、またCDMA信号成分の電力が強いほど発生しやすい特徴を持つことから、干渉信号が存在しない環境下でAGC制御によりCDMA電力が相対的に増すことで顕著に発生する。
【0096】
また、図19には、上記従来例で示したような干渉信号除去装置を用いて干渉除去を行った場合における干渉信号除去の特性の一例を示してある。なお、同図では、干渉信号除去特性として受信信号のビット誤り率(BER:Bit Error Ratio)が変化する様子を示してあり、干渉信号除去装置により干渉除去を行わない場合(キャンセルなしの場合)における特性例を(a)で示す一方、干渉信号除去装置により干渉除去を行った場合(キャンセル有りの場合)における特性例を(b)で示してある。
【0097】
また、同図では、広帯域の希望信号としてCDMA信号を用いる一方、狭帯域の干渉信号としてFSK(Frequency Shift Keying)信号を用いた場合を示してあり、干渉信号が1波である場合の例を示してある。また、同図中のグラフの横軸は干渉信号当たりのD/U((希望の入力信号の電力)/(狭帯域干渉信号の電力))[dB]を示しており、縦軸は受信機におけるビット誤り率を示している。
【0098】
同図に示されるように、D/Uが比較的小さい場合(つまり、狭帯域干渉信号の電力が広帯域希望信号の電力と比べて十分に大きい場合)には、干渉信号除去装置により干渉除去を行うことで、ビット誤り率の特性を向上させることができる。一方、D/Uが比較的大きい場合(つまり、狭帯域干渉信号の電力が広帯域希望信号の電力と比べて同程度である場合、或いは、広帯域希望信号の電力と比べて小さい場合)には、干渉信号除去装置により干渉除去を行うことによって、却ってビット誤り率の特性を劣化させてしまうことが生じる。
【0099】
ここで、このような劣化が生じる理由としては、上記と同様な理由が考えられ、すなわち、受信信号から狭帯域干渉信号の周波数成分を抽出して、当該抽出結果を受信信号から除去する処理において、干渉信号除去装置が干渉信号と同時に広帯域希望信号の周波数成分までも抽出して除去してしまうためであると考えられる。
【0100】
また、図20(a)及び同図(b)には、上記従来例で示したような干渉信号除去装置を用いて、広帯域信号と狭帯域干渉信号とを含む受信信号から当該干渉信号を除去する場合の様子の一例を示してある。
具体的に、同図(a)には、広帯域信号の電力と比べて或る狭帯域干渉信号の電力が十分に大きい場合(例えば図中の▲1▼や▲3▼の干渉信号)の例を示してあり、この場合には、上述のように、干渉除去を行うことで受信品質を改善することができる。
【0101】
なお、同図(a)には、広帯域信号に干渉する3つの信号▲1▼、▲2▼、▲3▼を示してあり、また、干渉除去前の受信信号の様子を左側のグラフに示す一方、干渉除去後の受信信号の様子を右側のグラフに示してある。また、これらのグラフの横軸は周波数を示しており、縦軸はスペクトル強度を示している。
【0102】
一方、同図(b)には、広帯域信号の電力と比べて各狭帯域干渉信号の電力が(ほぼ)等しい場合(或いは、小さい場合についても同様)の例を示してあり、この場合には、上述のように、狭帯域干渉信号と共に広帯域信号の周波数成分までもが抽出されて除去されてしまうことから、干渉信号除去装置から出力される信号が(当該干渉信号除去装置の)後段の回路で復調処理される際において、受信品質の劣化が無視できないくらいに大きくなってしまう。
【0103】
このため、同図(b)に示したような場合には、例えば干渉信号除去装置により干渉除去を行わない方が、CDMA信号の特質でもある干渉信号の抑圧効果によって、受信品質がよくなるとも言える。
なお、同図(b)には、広帯域信号に干渉する3つの信号▲4▼、▲5▼、▲6▼を示してあり、また、干渉除去前の受信信号の様子を左側のグラフに示す一方、干渉除去後の受信信号の様子を右側のグラフに示してある。また、これらのグラフの横軸は周波数を示しており、縦軸はスペクトル強度を示している。
【0104】
また、例えば上記図11に示したような干渉信号除去装置では、上記式5に示したような適応アルゴリズムを用いてフィルタタップ係数系列h(t)を更新することから、上記式5に示した次回のフィルタタップ係数系列h(t+1)の演算の度毎に常に前回までの演算結果(h(t))が蓄積される。このため、このような干渉信号除去装置では、例えば帯域制限フィルタによる符号間干渉の影響等により、広帯域信号の信号成分までも抽出されて当該広帯域信号の一部も除去されてしまう可能性があり、このような場合においても、上述したのと同様に、受信機での復調処理において受信品質の劣化が無視できないくらいに大きくなってしまうことが生じ得る。
【0105】
以上のように、上記従来例で示したような干渉信号除去装置では、例えば上記図19に示されるような干渉信号除去特性を示し、つまり、広帯域信号の電力と比べて狭帯域信号の電力が小さくなる場合には干渉除去を行わない場合より受信品質の特性が劣化してしまうことがあるといった不具合があった。
【0106】
具体的に、現状考えられている通信方式では、例えばCDMA方式とTDMA方式とを共用するような状況やCDMA方式とFDMA方式とを共用するような状況などにおいて、上記従来例で示したような干渉信号除去装置を組み込んだ受信機を用いた場合に、受信信号に干渉信号が存在しないようなときには、却って受信品質が低下してしまうことが生じ、また、例えば干渉信号の除去を行わない場合と比べて、基地局装置により収容可能な移動局装置の数(ユーザ数)が減少してしまうことや通話エリアが小さくなってしまうことが生じるといった問題が予想される。
【0107】
本発明は、このような従来の課題を解決するために為されたもので、広帯域の希望信号と狭帯域の干渉信号とを含んだ入力信号から当該干渉信号を除去するに際して、希望信号までも除去してしまうことを抑制するための工夫をした干渉信号除去装置を提供することを目的とする。
【0108】
【課題を解決するための手段】
まず、本発明の全体に共通する技術的思想を説明する。
すなわち、本発明に係る干渉信号除去装置では、広帯域の希望信号と狭帯域の干渉信号とを含んだ入力信号から当該干渉信号を除去するに際して、入力信号に基づいて当該入力信号に含まれる干渉信号をその抽出量を抑制(つまり、例えば従来例で示した場合と比べて小さく)して抽出し、抽出した干渉信号を当該入力信号から除去する。
【0109】
従って、入力信号に基づいて当該入力信号から抽出される干渉信号の抽出量が抑制されるため、広帯域の希望信号と狭帯域の干渉信号とを含んだ入力信号から希望信号(例えば干渉信号の周波数帯域内にある希望信号成分や、干渉信号の周波数帯域に隣接する帯域にある希望信号成分)までも除去してしまうことを抑制することができる。
【0110】
一例として、広帯域の希望信号としてCDMA信号が用いられた場合には、受信機により受信した信号(CDMA信号と狭帯域干渉信号とを含んだ信号)から干渉信号を除去するに際して、当該干渉除去の能力を制御することにより、CDMA信号成分までも除去してしまうことを抑制することができ、これにより、例えば従来と比べて、干渉除去後における受信信号のビット誤り率の特性を向上させることができる。
【0111】
つまり、本来、CDMA方式のようなスペクトル拡散方式による(拡散された)信号は拡散利得による耐干渉能力が高いため、狭帯域干渉信号を必要以上に除去しなくとも、拡散された希望波(CDMA信号等)の信号電力と同程度のレベルまで狭帯域干渉信号の電力を減衰させることができればよい。このため、CDMA信号等の成分が除去されない程度まで干渉除去能力を抑圧することにより、例えば干渉信号成分が受信信号中に多少残留しても、CDMA信号等の成分の除去が抑制されることから、総じて、干渉除去後のビット誤り率を改善することができる。
【0112】
なお、例えば受信系の伝送路で複数の狭帯域干渉信号が広帯域希望信号に重畳されて受信機により受信されるような場合には、受信信号を複数の帯域に分割して、これら各帯域がそれぞれ1つ(或いは複数)の干渉信号を含むようにし、当該各帯域毎にその帯域に含まれる干渉信号に適した干渉除去を行うことにより、それぞれの干渉信号に応じた干渉除去を行うことを実現することができる。
【0113】
ここで、広帯域の希望信号としては、種々な信号が用いられてもよく、例えばCDMA方式により拡散された信号等を用いることができる。
また、狭帯域の干渉信号としては、種々な信号が用いられてもよく、例えばFM信号やFSK信号等を用いることができる。
【0114】
また、入力信号に基づいて干渉信号の抽出量を抑制する仕方としては、種々な仕方が用いられてもよく、例えば、入力信号に含まれる希望信号や干渉信号の状況に応じて、干渉信号の抽出量を抑制するか否かを制御したり、抑制する場合にはその抑制の程度を制御したりするのが好ましい。
【0115】
また、本発明に係る干渉信号除去装置では、一実施態様として、次のような構成により、広帯域の希望信号と狭帯域の干渉信号とを含んだ入力信号から当該干渉信号を除去する。
すなわち、抽出手段が入力信号から干渉信号を抽出し、除去手段が抽出される干渉信号を入力信号から除去し、抽出制御手段が除去手段の除去結果に基づいて抽出手段による干渉信号の抽出を制御し、抽出量抑制手段が入力信号に基づいて抽出手段による干渉信号の抽出量を抑制する。
【0116】
ここで、除去手段の除去結果に基づいて抽出手段による干渉信号の抽出を制御する仕方としては、例えば、除去手段により干渉除去が行われた後の入力信号に含まれる干渉信号の成分が最小(理想的には、ゼロ)となるように制御する仕方が用いられる。そして、本発明では、抽出量抑制手段が、このような制御の仕方に対して、干渉信号の抽出量を抑制する。
【0117】
なお、例えば上記図11に示したような干渉信号除去装置を例とすると、適応フィルタから本発明に言う抽出手段が構成され、減算器から本発明に言う除去手段が構成され、フィルタタップ係数演算制御部から本発明に言う抽出制御手段が構成される。そして、本発明では、更に、干渉信号の抽出量を抑制する抽出量抑制手段を設ける。
【0118】
次に、本発明に係る干渉信号除去装置を更に詳しく説明する。なお、本発明では、後述する入力ベクトルと後述する制御ベクトルとの内積を干渉信号として抽出する構成において、上記のような干渉信号の抽出量の抑制を実現するための好ましい構成を提供する。
【0119】
上記目的を達成するため、本発明に係る干渉信号除去装置では、一態様として、次のようにして、入力信号から干渉信号を抽出して除去するに際して、当該干渉信号の抽出量を抑制する。
すなわち、抽出制御手段は干渉信号の抽出を制御するための複数のデジタル制御値から成る制御ベクトルを演算して抽出手段へ出力し、抽出手段は複数の入力信号値(入力信号の値)から成る入力ベクトルと抽出制御手段からの制御ベクトルとの内積を干渉信号として抽出し、抽出量抑制手段は抽出制御手段から出力される制御ベクトルを構成するデジタル制御値の有効語長を制限して抽出手段による干渉信号の抽出量を抑制する。
【0120】
従って、抽出対象となる干渉信号を生成するための制御ベクトルを構成するデジタル制御値の有効語長を制限することにより、抽出される干渉信号を小さくすることができ、これにより、抽出手段による干渉信号の抽出量を抑制することができる。
【0121】
ここで、制御ベクトルを構成する複数の(デジタル)制御値の数としては、種々な数であってもよい。
また、入力ベクトルを構成する複数の入力信号値の数としては、例えば制御ベクトルを構成する制御値の数と同数が用いられる。
【0122】
また、デジタル制御値の有効語長を制限することは、当該制限の程度に応じて当該デジタル制御値を小さくすることに相当する。
また、抽出制御手段から出力される制御ベクトルに対して有効語長制限を行う仕方としては、例えば当該出力前に有効語長制限を行う仕方が用いられてもよく、また、例えば当該出力後に有効語長制限を行う仕方が用いられてもよい。
【0123】
なお、例えば上記図11に示したような干渉信号除去装置を例とすると、(受信)入力信号値r(t)が本発明に言う入力信号値に相当し、入力信号系列u(t)が本発明に言う入力ベクトルに相当し、フィルタタップ係数制御信号hiが本発明に言う(デジタル)制御値に相当し、フィルタタップ係数系列h(t)が本発明に言う制御ベクトルに相当する。
【0124】
また、本発明に係る干渉信号除去装置では、一態様として、次のようにして、入力信号から干渉信号を抽出して除去するに際して、当該干渉信号の抽出量を抑制する。
すなわち、抽出制御手段は干渉信号の抽出を制御するための複数の制御値から成る制御ベクトルをデジタル演算子により演算して抽出手段へ出力し、抽出手段は複数の入力信号値から成る入力ベクトルと抽出制御手段からの制御ベクトルとの内積を干渉信号として抽出し、抽出量抑制手段は抽出制御手段により用いられるデジタル演算子の有効語長を制限して抽出手段による干渉信号の抽出量を抑制する。
【0125】
従って、制御ベクトルを演算するためのデジタル演算子の有効語長を制限することにより、当該演算結果である制御ベクトルを小さくして、抽出される干渉信号を小さくすることができ、これにより、抽出手段による干渉信号の抽出量を抑制することができる。
ここで、デジタル演算子の有効語長を制限することは、当該制限の程度に応じて当該デジタル演算子の値を小さくすることに相当する。
【0126】
また、本発明に係る干渉信号除去装置では、一態様として、次のようにして、入力信号から干渉信号を抽出して除去するに際して、当該干渉信号の抽出量を抑制する。
すなわち、抽出制御手段は干渉信号の抽出を制御するための複数の制御値から成る制御ベクトルを演算して抽出手段へ出力し、抽出手段は複数の入力信号値から成る入力ベクトルと抽出制御手段からの制御ベクトルとの内積を干渉信号として抽出し、抽出量抑制手段は抽出制御手段から出力される制御ベクトルに1未満の制御係数を乗算して抽出手段による干渉信号の抽出量を抑制する。
【0127】
従って、抽出制御手段から出力される制御ベクトルに1未満の制御係数を乗算することにより、当該制御ベクトルを小さくして、抽出される干渉信号を小さくすることができ、これにより、抽出手段による干渉信号の抽出量を抑制することができる。
【0128】
ここで、1未満の制御係数の値としては、種々な値が用いられてもよく、例えば入力信号に含まれる希望信号の電力レベルや干渉信号の電力レベルに基づいて決定される。
また、抽出制御手段から出力される制御ベクトルに1未満の制御係数を乗算する仕方としては、例えば当該出力前に当該乗算を行う仕方が用いられてもよく、また、例えば当該出力後に当該乗算を行う仕方が用いられてもよい。
【0129】
また、本発明に係る干渉信号除去装置では、一態様として、次のようにして、入力信号から干渉信号を抽出して除去するに際して、当該干渉信号の抽出量を抑制する。
すなわち、抽出制御手段は干渉信号の抽出を制御するための複数の制御値から成る制御ベクトルを前回の制御ベクトルを用いて更新して当該更新結果を抽出手段へ出力し、抽出手段は複数の入力信号値から成る入力ベクトルと抽出制御手段からの制御ベクトルとの内積を干渉信号として抽出し、抽出量抑制手段は抽出制御手段による制御ベクトルの更新に用いられる前回の制御ベクトルに1未満の制御係数を乗算して干渉信号の抽出量を抑制する。
【0130】
従って、制御ベクトルの更新に用いられる前回の制御ベクトルに1未満の制御係数を乗算することにより、当該更新後の制御ベクトルを小さくして、抽出される干渉信号を小さくすることができ、これにより、抽出手段による干渉信号の抽出量を抑制することができる。
【0131】
ここで、1未満の制御係数の値としては、種々な値が用いられてもよく、例えば入力信号に含まれる希望信号の電力レベルや干渉信号の電力レベルに基づいて決定される。
なお、例えば上記図11に示したような干渉信号除去装置を例とすると、更新後のフィルタタップ係数系列h(t+1)を演算するために用いられる前回のフィルタタップ係数系列h(t)が本発明に言う前回の制御ベクトルに相当する。
【0132】
また、上記のような制御係数を用いた本発明に係る干渉信号除去装置では、一実施態様として、抽出量抑制手段は、入力信号に基づいて制御係数の値を制御し(例えば当該値を変化させ)、制御ベクトル(抽出制御手段から出力される制御ベクトル、又は、抽出制御手段による制御ベクトルの更新に用いられる前回の制御ベクトル)と制御係数との乗算を所定の時間間隔で行って抽出手段による干渉信号の抽出量を抑制する。
【0133】
ここで、所定の時間間隔としては、種々な時間間隔が用いられてもよく、例えば抽出手段による干渉信号の抽出量が実用上で有効に抑制される程度の時間間隔が設定されるのがよい。このような時間間隔を設けることにより、制御ベクトルと制御係数との乗算回数を少なくすることができ、これにより、演算処理量を低減させることができる。
【0134】
また、上記のような制御係数を用いた本発明に係る干渉信号除去装置では、一実施態様として、抽出量抑制手段は、制御係数を一定値として、制御ベクトル(抽出制御手段から出力される制御ベクトル、又は、抽出制御手段による制御ベクトルの更新に用いられる前回の制御ベクトル)と制御係数との乗算を所定の周期で行って抽出手段による干渉信号の抽出量を抑制する。
【0135】
ここで、前記一定値(制御係数の値)としては、種々な値が用いられてもよい。
また、所定の周期としては、種々な周期が用いられてもよく、例えば抽出手段による干渉信号の抽出量が実用上で有効に抑制される程度の周期が設定されるのがよい。このような周期を設けることにより、制御ベクトルと制御係数との乗算回数を少なくすることができ、これにより、演算処理量を低減させることができる。
【0136】
また、本発明に係る干渉信号除去装置では、例えば入力信号に含まれる干渉信号の時間的な変化が比較的緩やかであるような場合には、抽出制御手段は制御ベクトルの演算又は更新を所定の時間間隔で行う。
ここで、所定の時間間隔としては、種々な時間間隔が用いられてもよく、例えば干渉信号の時間的な変化に追従することができる程度の時間間隔が用いられるのがよい。このような時間間隔を設けることにより、制御ベクトルの演算又は更新の回数を少なくすることができ、これにより、演算処理量を低減させることができる。
【0137】
また、本発明に係る干渉信号除去装置では、一実施態様として、抽出量抑制手段は、入力信号に基づいて予め設定された態様で、抽出手段による干渉信号の抽出量を抑制する。
具体的には、例えば入力信号に希望信号や干渉信号以外に必要な信号(例えば映像信号等のマルチメディア信号)が含まれているような場合に、予め当該必要な信号が除去されないような設定を行っておくことにより、当該必要な信号が除去されてしまうことを防止することができる。
【0138】
また、本発明に係る干渉信号除去装置では、好ましい態様として、抽出量抑制手段は、入力信号に含まれる希望信号と干渉信号との電力差に基づいて抽出手段による干渉信号の抽出量を抑制する。つまり、例えば、CDMA信号と狭帯域干渉信号とを含む信号を受信する場合には、CDMA信号の受信電力と狭帯域干渉信号の受信電力との差に応じて干渉信号の抽出量を抑制する。
なお、入力信号に含まれる希望信号の電力レベルや干渉信号の電力レベルは、例えば当該入力信号のスペクトル分析を行うこと等により検出することが可能である。
【0139】
ここで、広帯域信号(希望信号)と狭帯域干渉信号との電力差に基づいて干渉信号の抽出量を抑制する仕方の具体的な一例を以下の(1)〜(4)に示す。
(1)広帯域信号の電力が狭帯域干渉信号の電力よりも5dB分以上大きい場合には、干渉除去が行われないように、干渉信号の抽出量を(ゼロに)抑制する。
(2)広帯域信号の電力と狭帯域干渉信号の電力との差が±5dB以内である場合には、干渉信号の帯域内にある広帯域信号がそれほど除去されないことを実現すべく、弱い干渉除去が行われるように、干渉信号の抽出量を比較的大きく抑制する。
【0140】
(3)広帯域信号の電力よりも狭帯域干渉信号の電力の方が5dB〜35dB分大きい場合には、これらの信号の電力に応じて、上記(2)の場合よりも干渉除去能力を強めて、干渉信号の抽出量を抑制する。
(4)広帯域信号の電力よりも狭帯域干渉信号の電力の方が35dB分以上大きい場合(例えば干渉信号除去能力の限界値近傍であるような場合)には、干渉除去能力の制御が行われずに最大限の干渉除去が行われるように、干渉信号の抽出量を抑制しない。
【0141】
このように、例えば入力信号に含まれる干渉信号に応じて、所定の大きさ以上の電力の干渉信号に関して(のみ)その抽出量を抑制しないようにし、また、それぞれの干渉信号に応じて抽出量を抑制した干渉信号除去処理を行うようにすることにより、干渉信号の除去が行われない方が入力信号の特性がよいような場合には当該干渉信号の除去が行われないようにすることや、干渉信号の抽出量を或る程度抑制した方が干渉除去後における入力信号の特性がよいような場合には当該干渉信号の抽出量を適度に抑制すること等が実現される。このため、例えば従来において干渉信号を除去する際に本来的に(受信)処理を行いたい希望信号までも含まれて除去されてしまうことで生じていた入力信号の(受信)品質の劣化を防止することができ、これにより、干渉除去後における入力信号のビット誤り率の特性を向上させることができる。
【0142】
また、本発明に係る干渉信号除去装置では、他の態様として、抽出量抑制手段は、入力信号に含まれる希望信号の電力に基づいて抽出手段による干渉信号の抽出量を抑制する。つまり、例えば、CDMA信号と狭帯域干渉信号とを含む信号を受信する場合には、CDMA信号の受信電力に応じて干渉信号の抽出量を抑制する。
【0143】
ここで、図7(a)及び同図(b)には、上記したような本発明に係る干渉信号除去装置を用いて、広帯域信号と狭帯域干渉信号とを含む受信信号から当該干渉信号を除去する場合の様子の一例を示してある。
【0144】
具体的に、同図(a)には、広帯域信号の電力と比べて或る狭帯域干渉信号の電力が十分に大きい場合の例を示してあり、この場合には、それぞれの干渉信号毎に適した干渉除去を行うようにし、つまり、広帯域信号と同程度の受信レベルの狭帯域干渉信号(例えば図中の▲2▼の干渉信号)については干渉除去処理を行わずにその干渉信号成分を残し、受信レベルの強い狭帯域干渉信号(例えば図中の▲1▼の干渉信号)についてはその抽出量を抑制せずに干渉除去を行い、比較的受信レベルの弱い狭帯域干渉信号(例えば図中の▲3▼の干渉信号)についてはその抽出量を抑制した干渉除去を行うことにより、干渉除去処理後の広帯域信号の品質を例えば従来と比べて改善することができる。
【0145】
なお、同図(a)には、広帯域信号に干渉する3つの信号▲1▼、▲2▼、▲3▼を示してあり、また、干渉除去前の受信信号の様子を左側のグラフに示す一方、干渉除去後の受信信号の様子を右側のグラフに示してある。また、これらのグラフの横軸は周波数を示しており、縦軸はスペクトル強度を示している。
【0146】
一方、同図(b)には、広帯域信号の電力と比べて各狭帯域干渉信号の電力が(ほぼ)等しい場合(或いは、小さい場合についても同様)の例を示してあり、この場合には、広帯域信号と非常に近い受信レベルの狭帯域干渉信号(例えば図中の▲5▼及び▲6▼の干渉信号)については干渉除去処理を行わずにその干渉信号成分を残し、比較的受信レベルの弱い狭帯域干渉信号(例えば図中の▲4▼の干渉信号)についてはその抽出量を抑制した干渉除去を行うことにより、干渉除去処理後の広帯域信号の品質を例えば従来(入力された受信信号に対して、全ての狭帯域干渉信号を除去した場合)と比べて改善することができる。
【0147】
なお、同図(b)には、広帯域信号に干渉する3つの信号▲4▼、▲5▼、▲6▼を示してあり、また、干渉除去前の受信信号の様子を左側のグラフに示す一方、干渉除去後の受信信号の様子を右側のグラフに示してある。また、これらのグラフの横軸は周波数を示しており、縦軸はスペクトル強度を示している。
また、上記図7(a)及び同図(b)中で、干渉除去後における広帯域信号の周波数スペクトルの落ち込みは、当該干渉除去に際して広帯域信号成分が除去された部分を表している。
【0148】
このように、本発明に係る干渉信号除去装置では、入力信号に含まれる希望信号や干渉信号に応じた干渉除去を行うことにより、例えば狭帯域干渉信号の電力が広帯域希望信号の電力よりも小さいような場合において入力信号の特性を改善することができ、また、例えば入力信号に複数の狭帯域干渉信号が含まれるような場合においても各干渉信号毎に柔軟に干渉除去を行うことが可能である。
【0149】
【発明の実施の形態】
本発明の実施例に係る干渉信号除去装置を図面を参照して説明する。
なお、本実施例では、干渉信号除去装置は例えば無線通信を行う受信機に設けられており、当該受信機により受信される信号(広帯域の希望信号と狭帯域の干渉信号とを含んだ信号)に含まれる干渉信号を除去する。
【0150】
まず、本発明の全てに共通する技術的思想に係る構成例を説明する。
図1には、本発明に係る干渉信号除去装置の一例を示してあり、この装置には、干渉信号抽出部1と、合成器2と、干渉信号推定部3と、抽出量抑制部4とが備えられている。なお、tは時刻を示す。
【0151】
干渉信号推定部3は、例えば広帯域の希望信号と複数の狭帯域の干渉信号とが合成された受信信号r(t)及び干渉除去後の受信信号e(t)を入力して、当該干渉除去後の受信信号e(t)に含まれる干渉信号を推定し、当該推定結果を干渉信号抽出部1に通知する。
干渉信号抽出部1は、受信信号r(t)を入力して、干渉信号推定部3から通知される推定結果に基づいて当該受信信号r(t)から干渉信号(とみなされるもの)V(t)を抽出し、当該干渉信号V(t)を合成器2へ出力する。
【0152】
合成器2は、受信信号r(t)と干渉信号抽出部1からの干渉信号V(t)とを逆位相で(つまり、干渉信号V(t)が受信信号r(t)から除去されるように)合成して、干渉信号V(t)が除去された後の受信信号e(t)を出力する。なお、合成器2から出力される干渉除去後の受信信号e(t)の一部は上記した干渉信号推定部3に入力されて、干渉信号の推定に用いられる。
【0153】
抽出量抑制部4は、受信信号r(t)を入力し、当該受信信号r(t)に含まれる希望信号の電力や干渉信号の電力に基づいて、例えば当該干渉信号の電力が比較的小さいような場合には、干渉信号抽出部1で抽出される干渉信号V(t)の量が抑制されるように(つまり、前記推定結果に基づく干渉信号の抽出量より小さくなるように)、干渉信号推定部3を制御する。
【0154】
以上のように、本例の干渉信号除去装置では、入力信号に基づいて干渉信号除去処理における干渉信号の抽出量を抑制することが行われ、これにより、例えば広帯域希望信号の電力と比べて狭帯域干渉信号の電力が同程度である場合や或いは小さいような場合に、広帯域信号までもが除去されてしまうことを抑制することができる。このため、本例の干渉信号除去装置では、例えば従来と比べて、干渉除去後の入力信号(広帯域信号)の受信品質を改善することができ、これにより、干渉除去後における入力信号(広帯域信号)のビット誤り率の特性を向上させることができる。
【0155】
一例として、広帯域希望信号としてCDMA信号が用いられ、狭帯域干渉信号としてFM信号等が用いられた場合には、本例のような干渉信号除去装置を受信機に設けることにより、受信機では、例えば干渉信号の残留をCDMA信号と同程度のレベルまで許容することにより、受信帯域全体として、干渉除去後の受信信号のビット誤り率の特性を向上させることができる。
【0156】
ここで、本例では、干渉信号抽出部1から本発明に言う抽出手段が構成され、合成器2から本発明に言う除去手段が構成され、干渉信号推定部3から本発明に言う抽出制御手段が構成され、抽出量抑制部4から本発明に言う抽出量抑制手段が構成されている。
【0157】
以下で、本発明に係る種々な実施例を説明する。
まず、本発明の第1実施例に係る干渉信号除去装置を説明する。
図2には、干渉信号除去装置の一例を示してあり、この装置には、干渉信号抽出部11と、合成器12と、干渉信号推定部13と、推定精度制御部14とが備えられている。なお、tは時刻を示す。
【0158】
干渉信号推定部13は、広帯域の希望信号と複数の狭帯域の干渉信号とが合成された受信信号r(t)及び干渉除去後の受信信号e(t)を入力して、一般的な適応アルゴリズムを用いて当該受信信号r(t)に含まれる干渉信号を推定し、当該推定結果に基づく干渉信号推定係数h(t+1)を算出する。そして、本例の干渉信号推定部13は、後述する推定精度制御部14からの制御に従って、算出した干渉信号推定係数h(t+1)の有効語長を制限し、これにより得られる有効語長制限後の干渉信号推定係数h’(t+1)を干渉信号抽出部11へ出力する。
【0159】
干渉信号抽出部11は、受信信号r(t)を入力して、干渉信号推定部13から入力される干渉信号推定係数h’(t+1)に基づいて当該受信信号r(t)から干渉信号(とみなされるもの)V(t)を抽出し、当該干渉信号V(t)を合成器12へ出力する。
【0160】
合成器12は、受信信号r(t)と干渉信号抽出部11からの干渉信号V(t)とを逆位相で(つまり、干渉信号V(t)が受信信号r(t)から除去されるように)合成して、干渉信号V(t)が除去された後の受信信号e(t)を出力する。なお、合成器12から出力される干渉除去後の受信信号e(t)の一部は上記した干渉信号推定部13に入力されて、干渉信号の推定に用いられる。
【0161】
推定精度制御部14は、受信信号r(t)を入力し、当該受信信号r(t)に含まれる希望信号の電力や干渉信号の電力に基づいて、例えば当該干渉信号の電力が比較的小さいような場合には、干渉信号抽出部11で抽出される干渉信号V(t)の量が抑制されるように、干渉信号推定部13により行われる前記有効語長制限を制御する。
【0162】
また、図3には、干渉信号推定係数h(t+1)の有効語長制限を行う構成をCDMA受信機に適用した場合における干渉信号除去装置の構成例を示してあり、この装置には、遅延素子21と、適応フィルタ22と、減算器23と、フィルタタップ係数演算制御部24と、有効語長制御部25と、抽出量制御部26とが備えられている。
【0163】
ここで、遅延素子21や適応フィルタ22や減算器23やフィルタタップ係数演算制御部24の構成や動作としては、例えば上記図13に示したもの71〜74と同様である。
【0164】
有効語長制御部25は、フィルタタップ係数演算制御部24から出力されるフィルタタップ係数系列h(t+1)を入力し、後述する抽出量制御部26からの制御に従って当該フィルタタップ係数系列h(t+1)の有効語長を制限し、これにより得られる有効語長制限後のフィルタタップ係数系列h’(t+1)を適応フィルタ22へ出力する。
【0165】
抽出量制御部26は、受信信号r(t)を入力し、当該受信信号r(t)に含まれる希望信号の電力や干渉信号の電力に基づいて、例えば当該干渉信号の電力が比較的小さいような場合には、適応フィルタ22で抽出される干渉信号V(t)の量が抑制されるように、有効語長制御部25により行われる前記有効語長制限を制御する。
【0166】
ここで、(入力)受信信号r(t)に基づいてフィルタタップ係数系列(干渉信号推定係数)h(t+1)の有効語長を制限する仕方の一例を示す。
なお、本例では、受信信号r(t)の(デジタル)入力ビット数が16ビットであり、適応フィルタ22(干渉信号抽出部11)に本来入力されるフィルタタップ係数系列(干渉信号推定係数)h(t+1)のビット数が16ビットであり、当該フィルタタップ係数系列(干渉信号推定係数)h(t+1)を演算するのに用いられる算術演算素子のビット数が32ビットであるとする。また、本例では、例えば上記式5で示したようなステップサイズパラメータ(重み付け係数)μの値として、μ=0.001が設定されているとする。
【0167】
本例の抽出量制御部26(推定精度制御部14)は、入力される受信信号r(t)をスペクトル分析等することで、当該受信信号r(t)に含まれる広帯域希望信号と狭帯域干渉信号との電力差を検出し、検出した電力差に基づいて(例えば当該電力差に応じて比例するように)、適応フィルタ22(干渉信号抽出部11)に入力されるフィルタタップ係数系列(干渉信号推定係数)h(t+1)のデータの語長を、以下の(1)〜(6)に示すように制御する。
【0168】
(1)広帯域信号/狭帯域干渉信号の電力差が5dB以上である場合には、データの語長を0ビットとする(つまり、干渉信号除去処理が行われないようにする)。
(2)広帯域信号/狭帯域干渉信号の電力差が±5dB以内である場合には、データの語長を8ビットとする。
(3)広帯域信号/狭帯域干渉信号の電力差が−5dB〜−15dBである場合には、データの語長を10ビットとする。
【0169】
(4)広帯域信号/狭帯域干渉信号の電力差が−15dB〜−25dBである場合には、データの語長を12ビットとする。
(5)広帯域信号/狭帯域干渉信号の電力差が−25dB〜−35dBである場合には、データの語長を14ビットとする。
(6)広帯域信号/狭帯域干渉信号の電力差が−35dB以上である場合には、データの語長を16ビットとする(つまり、有効語長制限を行わない)。
【0170】
このような語長制限を行うことで、例えば比較的電力の小さい信号成分については、データの語長が小さくなって、あまり抽出されないように制御することができる。
【0171】
なお、データを語長制限する仕方としては、例えば16ビットのデータにFFF0(H:16進数)等をAND(論理積)演算するといった簡易な構成による仕方を用いることができる。具体例として、16ビットのデータにFFF0をAND演算すると、当該データの上位12ビットの値(“1”値或いは“0”値)をそのまま残して、下位4ビットの値を全て“0”値にすることができ、結果として、当該データを12ビットに語長制限することができる。
【0172】
また、有効語長制限の影響が抽出後の干渉信号に出ることも考えられるが、例えば干渉信号を抽出するのに通常用いられる有限長インパルスレスポンス(FIR:Finite Impulse Response)フィルタを代表とするトランスバーサルフィルタでは複数の遅延要素からの出力の畳み込み和が用いられるため、その平均化の効果によってほとんど影響は出ない。
【0173】
以上のように、本例の干渉信号除去装置では、入力信号に含まれる狭帯域干渉信号を推定して抽出するに際して、当該推定結果である干渉信号推定係数(フィルタタップ係数系列)h(t+1)を有効語長制限して干渉信号の抽出量を制御することが行われるため、例えば、それぞれの干渉信号に応じた干渉除去を行って、干渉除去後の入力信号(広帯域信号)の品質を向上させることができる。
【0174】
ここで、本例では、干渉信号抽出部11(或いは、適応フィルタ22)から本発明に言う抽出手段が構成され、合成器12(或いは、減算器23)から本発明に言う除去手段が構成され、干渉信号推定部13(或いは、フィルタタップ係数演算制御部24)から本発明に言う抽出制御手段が構成され、推定精度制御部14(或いは、抽出量制御部26や有効語長制御部25)から本発明に言う抽出量抑制手段が構成されている。
【0175】
また、本例では、(受信)入力信号値r(t)が本発明に言う入力信号値に相当し、上記式1で示したような入力信号系列u(t)が本発明に言う入力ベクトルに相当し、上記式2で示したような干渉信号推定信号(フィルタタップ係数制御信号)hiが本発明に言うデジタル制御値に相当し、干渉信号推定係数(フィルタタップ係数系列)h(t)が本発明に言う制御ベクトルに相当する。
【0176】
次に、本発明の第2実施例に係る干渉信号除去装置を説明する。
なお、本例の干渉信号除去装置は例えば上記図2に示した装置と同様な構成であるため、説明の便宜上から、本例では、同図を用いて説明を行う。
同図に示されるように、本例の干渉信号除去装置には、干渉信号抽出部11と、合成器12と、干渉信号推定部13と、推定精度制御部14とが備えられている。なお、tは時刻を示す。
【0177】
ここで、干渉信号抽出部11や合成器12の構成や動作は、例えば上記第1実施例の場合に示した構成や動作と同様である。
本例の干渉信号推定部13は、例えば上記第1実施例の場合と同様にして干渉信号の推定結果に基づく干渉信号推定係数h(t+1)を算出するに際して、後述する推定精度制御部14からの制御に従って、当該算出に用いられる算術演算素子の有効語長を制限し、当該有効語長制限後の算術演算素子を用いて算出した干渉信号推定係数h’(t+1)を干渉信号抽出部11へ出力する。
【0178】
推定精度制御部14は、受信信号r(t)を入力し、当該受信信号r(t)に含まれる希望信号の電力や干渉信号の電力に基づいて、例えば当該干渉信号の電力が比較的小さいような場合には、干渉信号抽出部11で抽出される干渉信号V(t)の量が抑制されるように、干渉信号推定部13により行われる前記有効語長制限を制御する。
【0179】
ここで、(入力)受信信号r(t)に基づいて算術演算素子の有効語長を制限する仕方の一例を示す。
なお、本例では、受信信号r(t)の(デジタル)入力ビット数が16ビットであり、干渉信号抽出部11に入力される干渉信号推定係数h’(t+1)のビット数が16ビットであり、当該干渉信号推定係数h’(t+1)を演算するのに用いられる本来の算術演算素子のビット数が32ビットであるとする。また、本例では、例えば上記式5で示したようなステップサイズパラメータ(重み付け係数)μの値として、μ=0.001が設定されているとする。
【0180】
本例の推定精度制御部14は、入力される受信信号r(t)をスペクトル分析等することで、当該受信信号r(t)に含まれる広帯域希望信号と狭帯域干渉信号との電力差を検出し、検出した電力差に基づいて(例えば当該電力差に応じて比例するように)、干渉信号推定部13で用いられる算術演算素子の語長(例えばLMSやRLSに係る演算子の演算語長)を、以下の(1)〜(6)に示すように制御する。
【0181】
(1)広帯域信号/狭帯域干渉信号の電力差が5dB以上である場合には、演算子の語長を0ビットとする(つまり、干渉信号除去処理が行われないようにする)。
(2)広帯域信号/狭帯域干渉信号の電力差が±5dB以内である場合には、演算子の語長を24ビットとする。
(3)広帯域信号/狭帯域干渉信号の電力差が−5dB〜−15dBである場合には、演算子の語長を26ビットとする。
【0182】
(4)広帯域信号/狭帯域干渉信号の電力差が−15dB〜−25dBである場合には、演算子の語長を28ビットとする。
(5)広帯域信号/狭帯域干渉信号の電力差が−25dB〜−35dBである場合には、演算子の語長を30ビットとする。
(6)広帯域信号/狭帯域干渉信号の電力差が−35dB以上である場合には、演算子の語長を32ビットとする(つまり、有効語長制限を行わない)。
【0183】
このような語長制限を行うことで、例えば比較的電力の小さい信号成分については、演算子の語長が小さくなって、あまり抽出されないように制御することができる。
なお、例えば干渉信号推定部13に入力されて干渉信号推定係数h’(t+1)の演算に用いられる受信信号r(t)や干渉除去後の受信信号e(t)等の有効語長を制御することにより、上記と同様な効果を得ることも可能である。
【0184】
また、演算子を語長制限する仕方としては、例えば32ビットの演算子にFFFFFFF0(H:16進数)等をAND(論理積)演算するといった簡易な構成による仕方を用いることができる。具体例として、32ビットの演算子にFFFFFFF0をAND演算すると、当該データの上位28ビットの値(“1”値或いは“0”値)をそのまま残して、下位4ビットの値を全て“0”値にすることができ、結果として、当該データを28ビットに語長制限することができる。
【0185】
以上のように、本例の干渉信号除去装置では、入力信号に含まれる狭帯域干渉信号を推定して抽出するに際して、当該推定を行うのに用いられる算術演算素子を有効語長制限して干渉信号の抽出量を制御することが行われるため、例えば、それぞれの干渉信号に応じた干渉除去を行って、干渉除去後の入力信号(広帯域信号)の品質を向上させることができる。
【0186】
ここで、本例では、干渉信号抽出部11から本発明に言う抽出手段が構成され、合成器12から本発明に言う除去手段が構成され、干渉信号推定部13から本発明に言う抽出制御手段が構成され、推定精度制御部14から本発明に言う抽出量抑制手段が構成されている。
【0187】
また、本例では、(受信)入力信号値r(t)が本発明に言う入力信号値に相当し、上記式1で示したような入力信号系列u(t)が本発明に言う入力ベクトルに相当し、上記式2で示したような干渉信号推定信号hiが本発明に言う制御値に相当し、干渉信号推定係数h(t)が本発明に言う制御ベクトルに相当する。
また、本例では、上記した算術演算素子で実現される演算子が本発明に言うデジタル演算子に相当する。
【0188】
次に、本発明の第3実施例に係る干渉信号除去装置を説明する。
なお、本例の干渉信号除去装置は例えば上記図2に示した装置と同様な構成であるため、説明の便宜上から、本例では、同図を用いて説明を行う。
同図に示されるように、本例の干渉信号除去装置には、干渉信号抽出部11と、合成器12と、干渉信号推定部13と、推定精度制御部14とが備えられている。なお、tは時刻を示す。
【0189】
ここで、干渉信号抽出部11や合成器12の構成や動作は、例えば上記第1実施例の場合に示した構成や動作と同様である。
本例の干渉信号推定部13は、例えば上記第1実施例の場合と同様にして干渉信号の推定結果に基づく干渉信号推定係数h(t+1)を算出する場合に、後述する推定精度制御部14からの制御に従って、当該算出される干渉信号推定係数h(t+1)に制御係数α(本例では、1以下の正数値)を乗算し、当該乗算結果h’(t+1)=α*h(t+1)を干渉信号抽出部11へ出力する。
【0190】
なお、本例では、このような制御係数αの乗算が行われることから、例えば干渉信号推定係数h(t+1)の有効語長制限や算術演算素子の有効語長制限は行われずに、これらの語長は一定に固定されている。
【0191】
推定精度制御部14は、受信信号r(t)を入力し、当該受信信号r(t)に含まれる希望信号の電力や干渉信号の電力に基づいて、例えば当該干渉信号の電力が比較的小さいような場合には、干渉信号抽出部11で抽出される干渉信号V(t)の量が抑制されるように、干渉信号推定部13で用いられる制御係数αの値を制御する。
【0192】
また、図4には、干渉信号推定係数h(t+1)に制御係数αを乗算する構成をCDMA受信機に適用した場合における干渉信号除去装置の構成例を示してあり、この装置には、遅延素子31と、適応フィルタ32と、減算器33と、フィルタタップ係数演算制御部34と、第1の乗算器35と、抽出量制御部36と、第2の乗算器37とが備えられている。
【0193】
ここで、遅延素子31や適応フィルタ32や減算器33やフィルタタップ係数演算制御部34の構成や動作としては、例えば上記図13に示したもの71〜74と同様である。
【0194】
第1の乗算器35は、フィルタタップ係数演算制御部34から出力されるフィルタタップ係数系列h(t+1)を入力し、後述する抽出量制御部36からの制御に従って設定される制御係数αを当該フィルタタップ係数系列h(t+1)に乗算し、これにより得られる当該乗算後のフィルタタップ係数系列h’(t+1)を適応フィルタ32へ出力する。
【0195】
抽出量制御部36は、受信信号r(t)を入力し、当該受信信号r(t)に含まれる希望信号の電力や干渉信号の電力に基づいて、例えば当該干渉信号の電力が比較的小さいような場合には、適応フィルタ32で抽出される干渉信号V(t)の量が抑制されるように、第1の乗算器35で用いられる制御係数αの値を制御する。
【0196】
また、本例では、上述のように第2の乗算器37が備えられており、この第2の乗算器37は、適応フィルタ37から出力される干渉信号V(t)に所定の値βを乗算して、当該乗算結果(β*V(t))を、受信信号r(t)から減算する対象として、減算器33へ出力する。
【0197】
つまり、本例では、上記のようにフィルタタップ係数系列h(t+1)に1以下の制御係数αが乗算されることから適応フィルタ32により抽出される干渉信号V(t)もα倍されるところ、本例の構成では、上記のように第2の乗算器37により当該干渉信号V(t)を所定値β倍して当該干渉信号V(t)のレベルを制御することで、そのレベルの劣化を抑えることも可能である。一例として、所定値β=(1/α)と設定すると、抽出される干渉信号V(t)のレベルが第2の乗算器37により元々(フィルタタップ係数系列h(t+1)に制御係数αが乗算されない場合)と同じレベルに補正される。
【0198】
ここで、(入力)受信信号r(t)に基づいてフィルタタップ係数系列(干渉信号推定係数)h(t+1)に制御係数αを乗算する仕方の一例を示す。
なお、本例では、受信信号r(t)の(デジタル)入力ビット数が16ビットであり、適応フィルタ32(干渉信号抽出部11)に入力されるフィルタタップ係数系列(干渉信号推定係数)h’(t+1)のビット数が16ビットであり、フィルタタップ係数系列(干渉信号推定係数)h(t+1)を演算するのに用いられる算術演算素子のビット数が32ビットであるとする。また、本例では、例えば上記式5で示したようなステップサイズパラメータ(重み付け係数)μの値として、μ=0.001が設定されているとする。
【0199】
本例の抽出量制御部36(推定精度制御部14)は、入力される受信信号r(t)をスペクトル分析等することで、当該受信信号r(t)に含まれる広帯域希望信号と狭帯域干渉信号との電力差を検出し、検出した電力差に基づいて(例えば当該電力差に応じて比例するように)、第1の乗算器35で用いられる制御係数αの値を、以下の(1)〜(6)に示すように制御する。
【0200】
(1)広帯域信号/狭帯域干渉信号の電力差が5dB以上である場合には、制御係数αの値を0(α=0)とする(つまり、干渉信号除去処理が行われないようにする)。
(2)広帯域信号/狭帯域干渉信号の電力差が±5dB以内である場合には、制御係数αの値を0.0625(α=0.0625)とする。
(3)広帯域信号/狭帯域干渉信号の電力差が−5dB〜−15dBである場合には、制御係数αの値を0.125(α=0.125)とする。
【0201】
(4)広帯域信号/狭帯域干渉信号の電力差が−15dB〜−25dBである場合には、制御係数αの値を0.25(α=0.25)とする。
(5)広帯域信号/狭帯域干渉信号の電力差が−25dB〜−35dBである場合には、制御係数αの値を0.5(α=0.5)とする。
(6)広帯域信号/狭帯域干渉信号の電力差が−35dB以上である場合には、制御係数αの値を1(α=1)とする(つまり、干渉信号の抽出量を制御しない)。
【0202】
このような制御係数αの値の制御を行うことで、例えば比較的電力の大きい信号成分については干渉信号成分として抽出されて除去される一方、例えば比較的電力の小さい信号成分については、干渉信号として推定されないようにすることや、或いは、推定されてもその抽出量が小さくなることが実現される。
【0203】
具体的には、例えば上記のような制御係数αの乗算によって与えられる減衰量に比例して、適応フィルタ32(干渉信号抽出部11)で抽出される相関関数(干渉信号)V(t)の電力レベルが抑制される。そして、例えば干渉信号除去処理が或る程度の時間継続されて、エラー信号e(t)が小さくなると、フィルタタップ係数演算制御部34(干渉信号推定部13)で更新されて適応フィルタ32(干渉信号抽出部11)に与えられるフィルタタップ係数系列(干渉信号推定係数)h’(t+1)の増加量は制御係数αの効果によりほぼゼロとなり、或る程度のところで当該フィルタタップ係数系列(干渉信号推定係数)h’(t+1)の値は平衡状態となる。
【0204】
従って、例えば狭帯域干渉信号の電力が広帯域信号の電力と同程度のレベルまで減衰した時点でフィルタタップ係数系列(干渉信号推定係数)h’(t+1)の値が一定に保たれるように、つまり、フィルタタップ係数系列(干渉信号推定係数)h(t+1)の更新による増加量と制御係数αによる減衰量とが等しくなるように、制御係数αの値を最適化することで、干渉信号と共に広帯域信号が大きく除去されてしまうことを抑制することができる。このため、例えば干渉信号除去処理が開始されてからしばらくの時間が経過した場合においても、干渉除去能力を大きく低下させることなく、干渉除去後における入力信号(広帯域信号)のビット誤り率を改善することができる。
【0205】
なお、本例では、広帯域信号と狭帯域干渉信号との電力差に基づいて制御係数αの値を制御する構成を示したが、例えば広帯域信号の電力に応じて比例するように制御係数αの値を制御することにより、上記と同様な効果を得ることも可能である。
【0206】
以上のように、本例の干渉信号除去装置では、入力信号に含まれる狭帯域干渉信号を推定して抽出するに際して、当該推定結果である干渉信号推定係数(フィルタタップ係数系列)h(t+1)に制御係数αを乗算して干渉信号の抽出量を制御することが行われるため、例えば、それぞれの干渉信号に応じた干渉除去を行って、干渉除去後の入力信号(広帯域信号)の品質を向上させることができる。
【0207】
ここで、本例では、干渉信号抽出部11(或いは、適応フィルタ32)から本発明に言う抽出手段が構成され、合成器12(或いは、減算器33)から本発明に言う除去手段が構成され、干渉信号推定部13(或いは、フィルタタップ係数演算制御部34)から本発明に言う抽出制御手段が構成され、推定精度制御部14(或いは、抽出量制御部36や第1の乗算器35)から本発明に言う抽出量抑制手段が構成されている。
【0208】
また、本例では、(受信)入力信号値r(t)が本発明に言う入力信号値に相当し、上記式1で示したような入力信号系列u(t)が本発明に言う入力ベクトルに相当し、上記式2で示したような干渉信号推定信号(フィルタタップ係数制御信号)hiが本発明に言う制御値に相当し、干渉信号推定係数(フィルタタップ係数系列)h(t)が本発明に言う制御ベクトルに相当する。
また、本例では、上記した制御係数αが本発明に言う(制御ベクトルに乗算される)制御係数に相当する。
【0209】
次に、本発明の第4実施例に係る干渉信号除去装置を説明する。
なお、本例の干渉信号除去装置は例えば上記図2に示した装置と同様な構成であるため、説明の便宜上から、本例では、同図を用いて説明を行う。
同図に示されるように、本例の干渉信号除去装置には、干渉信号抽出部11と、合成器12と、干渉信号推定部13と、推定精度制御部14とが備えられている。なお、tは時刻を示す。
【0210】
ここで、干渉信号抽出部11や合成器12の構成や動作は、例えば上記第1実施例の場合に示した構成や動作と同様である。
本例の干渉信号推定部13は、例えば上記第1実施例の場合と同様にして干渉信号の推定結果に基づく干渉信号推定係数h’(t+1)を算出する場合に、後述する推定精度制御部14からの制御に従って、次回の(更新後の)干渉信号推定係数h’(t+1)を算出するに際して、前回の干渉信号推定係数h’(t)に制御係数α(本例では、1以下の正数値)を乗算した結果h’’(t)=α*h’(t)を用いる。そして、本例の干渉信号推定部13は、このようにして更新した干渉信号推定係数h’(t+1)=α*h’(t)+μ*e(t)*u(t)を干渉信号抽出部11へ出力する。
【0211】
なお、本例では、このような制御係数αの乗算が行われることから、例えば干渉信号推定係数h’(t+1)の有効語長制限や算術演算素子の有効語長制限は行われずに、これらの語長は一定に固定されている。
【0212】
推定精度制御部14は、受信信号r(t)を入力し、当該受信信号r(t)に含まれる希望信号の電力や干渉信号の電力に基づいて、例えば当該干渉信号の電力が比較的小さいような場合には、干渉信号抽出部11で抽出される干渉信号V(t)の量が抑制されるように、干渉信号推定部13で用いられる制御係数αの値を制御する。
【0213】
また、図5には、前回の干渉信号推定係数h’(t)に制御係数αを乗算して次回の干渉信号推定係数h’(t+1)を算出する構成をCDMA受信機に適用した場合における干渉信号除去装置の構成例を示してあり、この装置には、遅延素子41と、適応フィルタ42と、減算器43と、フィルタタップ係数演算制御部44と、乗算器45と、抽出量制御部46とが備えられている。
【0214】
ここで、遅延素子41や適応フィルタ42や減算器43の構成や動作としては、例えば上記図13に示したもの71〜74と同様である。
本例のフィルタタップ係数演算制御部44は、次回のフィルタタップ係数系列h’(t+1)を算出するに際して、前回のフィルタタップ係数系列h’(t)を後述する乗算器45へ出力し、これに応じて当該乗算器45から入力される値α*h’(t)を当該次回のフィルタタップ係数系列h’(t+1)の算出に用いる。
【0215】
乗算器45は、フィルタタップ係数演算制御部44から出力されるフィルタタップ係数系列h’(t)を入力し、後述する抽出量制御部46からの制御に従って設定される制御係数αを当該フィルタタップ係数系列h’(t)に乗算し、これにより得られる当該乗算後のフィルタタップ係数系列α*h’(t)をフィルタタップ係数演算制御部44へ出力する。なお、このような乗算処理等は、フィルタタップ係数演算制御部44で次回のフィルタタップ係数系列h’(t+1)の更新処理が行われる前までに完了させられる。
【0216】
抽出量制御部46は、受信信号r(t)を入力し、当該受信信号r(t)に含まれる希望信号の電力や干渉信号の電力に基づいて、例えば当該干渉信号の電力が比較的小さいような場合には、適応フィルタ42で抽出される干渉信号V(t)の量が抑制されるように、乗算器45で用いられる制御係数αの値を制御する。
【0217】
ここで、(入力)受信信号r(t)に基づいて前回のフィルタタップ係数系列(干渉信号推定係数)h’(t)に制御係数αを乗算する仕方の一例を示す。
なお、本例では、受信信号r(t)の(デジタル)入力ビット数が16ビットであり、適応フィルタ42(干渉信号抽出部11)に入力されるフィルタタップ係数系列(干渉信号推定係数)h’(t+1)のビット数が16ビットであり、当該フィルタタップ係数系列(干渉信号推定係数)h’(t+1)を演算するのに用いられる算術演算素子のビット数が32ビットであるとする。また、本例では、例えば上記式5で示したようなステップサイズパラメータ(重み付け係数)μの値として、μ=0.001が設定されているとする。
【0218】
本例の抽出量制御部46(推定精度制御部14)は、入力される受信信号r(t)をスペクトル分析等することで、当該受信信号r(t)に含まれる広帯域希望信号と狭帯域干渉信号との電力差を検出し、検出した電力差に基づいて(例えば当該電力差に応じて比例するように)、乗算器45で用いられる制御係数αの値を、以下の(1)〜(6)に示すように制御する。
【0219】
(1)広帯域信号/狭帯域干渉信号の電力差が5dB以上である場合には、制御係数αの値を0(α=0)とする(つまり、干渉信号除去処理が行われないようにする)。
(2)広帯域信号/狭帯域干渉信号の電力差が±5dB以内である場合には、制御係数αの値を0.96(α=0.96)とする。
(3)広帯域信号/狭帯域干渉信号の電力差が−5dB〜−15dBである場合には、制御係数αの値を0.97(α=0.97)とする。
【0220】
(4)広帯域信号/狭帯域干渉信号の電力差が−15dB〜−25dBである場合には、制御係数αの値を0.98(α=0.98)とする。
(5)広帯域信号/狭帯域干渉信号の電力差が−25dB〜−35dBである場合には、制御係数αの値を0.99(α=0.99)とする。
(6)広帯域信号/狭帯域干渉信号の電力差が−35dB以上である場合には、制御係数αの値を1(α=1)とする(つまり、干渉信号の抽出量を制御しない)。
【0221】
このような制御係数αの値の制御を行うことで、例えば比較的電力の大きい信号成分については干渉信号成分として抽出されて除去される一方、例えば比較的電力の小さい信号成分については、干渉信号として推定されないようにすることや、或いは、推定されてもその抽出量が小さくなることが実現される。
【0222】
具体的には、例えば上述のようにフィルタタップ係数系列(干渉信号推定係数)h’(t+1)の更新演算は1サンプル時間前のフィルタタップ係数系列(干渉信号推定係数)h’(t)を用いて行われるため、現在の係数系列h’(t+1)は過去の係数系列を累積的に加算したようなものとみなすことができる。そして、従来において広帯域信号の減衰が時間と共に大きくなってしまうのは(つまり、本発明の課題は)、このような累積加算によって、過去に抽出された信号成分が蓄積されてしまうためであると考えられる。そこで、本例のように前回のフィルタタップ係数系列(干渉信号推定係数)h’(t)に制御係数αを乗算して、過去に抽出された信号成分の情報を抑制することにより、広帯域信号の減衰を防止することができる。
【0223】
なお、図6には、上記図5に示した本例の干渉信号除去装置により上記図16に示したような信号に対して干渉除去処理を行った場合に(当該干渉信号除去装置から)出力される干渉除去後の信号のスペクトルの一例を示してあり、例えば干渉信号除去処理を開始してから、上記図18に示した場合と同一の時間が経過した場合において干渉信号除去装置から出力される信号のスペクトルの一例を示してある。
【0224】
上記図6に示されるように、本例の干渉信号除去装置では、干渉信号を除去する際に、広帯域信号までも除去してしまうことを抑制している。
なお、同図中のグラフの横軸は周波数(MHz)を示しており、縦軸は信号のスペクトル強度を示している。
【0225】
また、例えば実際の演算では、電力の小さい信号成分が蓄積されて適応フィルタ42(干渉信号抽出部11)へデータとして出力されるまでにはかなりの時間が必要とされるため、制御係数αを乗算する処理をフィルタタップ係数系列(干渉信号推定係数)h’(t+1)の更新の度毎に毎回行わなくとも、干渉信号の抽出量の抑制に関して十分な効果を得ることは可能である。このため、例えば干渉信号の推定演算の更新の度毎に制御係数αの乗算処理を行わずに、所定の回数の更新毎に制御係数αの乗算処理を行うような構成とすることもでき、このような構成では、例えばハードウエアの規模や消費電力を低減させることが可能である。
【0226】
また、例えば制御係数αの値を一定値として、当該制御係数αの乗算処理を行う周期を変化させることで、干渉信号の抽出量を制御することも可能であり、このような制御の仕方の一例を示す。
なお、本例では、受信信号r(t)の(デジタル)入力ビット数が16ビットであり、適応フィルタ42(干渉信号抽出部11)に入力されるフィルタタップ係数系列(干渉信号推定係数)h’(t+1)のビット数が16ビットであり、当該フィルタタップ係数系列(干渉信号推定係数)h’(t+1)を演算するのに用いられる算術演算素子のビット数が32ビットであるとする。また、本例では、例えば上記式5で示したようなステップサイズパラメータ(重み付け係数)μの値として、μ=0.001が設定されているとする。
【0227】
本例の抽出量制御部46(推定精度制御部14)は、入力される受信信号r(t)をスペクトル分析等することで、当該受信信号r(t)に含まれる広帯域希望信号と狭帯域干渉信号との電力差を検出し、検出した電力差に基づいて、乗算器45で行われる制御係数αの乗算処理の周期を、以下の(1)〜(6)に示すように制御する。
【0228】
(1)広帯域信号/狭帯域干渉信号の電力差が5dB以上である場合には、干渉信号除去処理が行われないようにする(例えば、制御係数α=0とする)。
(2)広帯域信号/狭帯域干渉信号の電力差が±5dB以内である場合には、制御係数αの乗算処理が毎回行われるようにする。
(3)広帯域信号/狭帯域干渉信号の電力差が−5dB〜−15dBである場合には、制御係数αの乗算処理が10回の更新に1回行われるようにする。
【0229】
(4)広帯域信号/狭帯域干渉信号の電力差が−15dB〜−25dBである場合には、制御係数αの乗算処理が100回の更新に1回行われるようにする。
(5)広帯域信号/狭帯域干渉信号の電力差が−25dB〜−35dBである場合には、制御係数αの乗算処理が1000回の更新に1回行われるようにする。
(6)広帯域信号/狭帯域干渉信号の電力差が−35dB以上である場合には、干渉信号の抽出量を制御しない(抑制しない)ようにする。
【0230】
このような制御係数αの乗算処理の周期の制御を行うことで、例えば比較的電力の大きい信号成分については干渉信号成分として抽出されて除去される一方、例えば比較的電力の小さい信号成分については、干渉信号として推定されないようにすることや、或いは、推定されてもその抽出量が小さくなることが実現される。
【0231】
また、例えば狭帯域干渉信号が、FHSS方式やTDMA方式による信号のようなものではなく、つまり、急激に周波数や電力が変化するようなものではない場合には、干渉信号の変化に高速に追従して干渉除去を行う必要がないことから、例えば干渉信号の推定演算の更新処理(フィルタタップ係数系列(干渉信号推定係数)h’(t+1)の更新処理)を毎回行わずに、当該更新処理を256サンプル毎に1回行うというような構成としても、連続した狭帯域干渉信号を十分に除去することが可能である。
【0232】
ここで、このような構成では、例えば干渉信号の除去能力が多少劣化することもあるが、劣化量はせいぜい5dB分程度である。このため、このような構成では、例えば干渉信号の除去能力をほとんど劣化させずに、更新処理に係る演算処理量を大幅に削減することができ、これにより、ハードウエアの規模や消費電力を低減させることができるという大きな効果を得ることが可能である。
【0233】
また、例えば干渉信号の性質に応じて、FDMA方式やFM方式やAM方式による信号のように狭帯域干渉信号が連続する信号(周波数や電力の変化が緩やかな信号)であるような場合には干渉信号の推定演算の周期を遅くする一方、FHSS方式やTDMA方式による信号のように狭帯域干渉信号が急激に周波数や電力の変化する信号であるような場合には当該周期を速くすることにより、適応的な干渉除去を行うことも可能である。
【0234】
また、例えばフィルタタップ係数演算制御部44(干渉信号推定部13)に入力されてフィルタタップ係数系列(干渉信号推定係数)h’(t+1)の演算に用いられる受信信号r(t)や干渉除去後の受信信号e(t)等に制御係数αを乗算することにより、上記と同様な効果を得ることも可能である。
【0235】
以上のように、本例の干渉信号除去装置では、入力信号に含まれる狭帯域干渉信号を推定して抽出するに際して、当該推定に用いられる前回の干渉信号推定係数(フィルタタップ係数系列)h’(t)に制御係数αを乗算して干渉信号の抽出量を制御することが行われるため、例えば、それぞれの干渉信号に応じた干渉除去を行って、干渉除去後の入力信号(広帯域信号)の品質を向上させることができる。
【0236】
また、制御係数αの乗算処理を行うことによる効果として、例えば、入力信号r(t)に含まれる干渉信号が突然なくなったり、当該干渉信号の周波数が徐々に変化するような場合などにおいて、相関のなくなった周波数帯域に係る干渉信号推定係数(フィルタタップ係数系列)h’(t+1)の値を更新演算により徐々に小さくしていくという効果を得ることができる。このため、例えば制御係数αの乗算処理が行われない場合と比べて、残留している干渉信号推定係数(フィルタタップ係数系列)h’(t+1)により広帯域信号を除去してしまうことによる帯域の窪みの回復時間を早めることができ、これにより、広帯域信号の特性を改善することができる。
【0237】
更に、制御係数αを用いて干渉信号の抽出量を抑制することで、広帯域信号を含む電力の小さい信号成分が抽出されないようにすることができるため、例えば帯域制限フィルタによる符号間干渉の影響等によって広帯域信号の信号成分が抽出されてしまうことを抑制することができ、これにより、広帯域信号が除去されてしまうことを抑制することができる。
【0238】
ここで、本例では、干渉信号抽出部11(或いは、適応フィルタ42)から本発明に言う抽出手段が構成され、合成器12(或いは、減算器43)から本発明に言う除去手段が構成され、干渉信号推定部13(或いは、フィルタタップ係数演算制御部44)から本発明に言う抽出制御手段が構成され、推定精度制御部14(或いは、抽出量制御部46や乗算器45)から本発明に言う抽出量抑制手段が構成されている。
【0239】
また、本例では、(受信)入力信号値r(t)が本発明に言う入力信号値に相当し、上記式1で示したような入力信号系列u(t)が本発明に言う入力ベクトルに相当し、上記式2で示したような干渉信号推定信号(フィルタタップ係数制御信号)hiが本発明に言う制御値に相当し、干渉信号推定係数(フィルタタップ係数系列)h(t)が本発明に言う制御ベクトルに相当する。
また、本例では、上記した制御係数αが本発明に言う(前回の制御ベクトルに乗算される)制御係数に相当する。
【0240】
次に、本発明の第5実施例に係る干渉信号除去装置を説明する。
本例では、将来的な通信方式により行われるマルチメディア通信を考慮して、映像情報信号を伝送する場合を考える。この場合、このような映像情報信号を含む信号を受信機が受信するときには、当該受信機では、必要な映像情報信号(例えば色信号等)を除去してしまわないような態様で受信信号から干渉信号を除去することが必要となる。そこで、本例では、このような映像情報信号が受信される受信機に設けられる干渉信号除去装置に対して、当該映像情報信号が除去されないような干渉信号除去処理が行われるように予め設定を行っておく。
【0241】
なお、本例の干渉信号除去装置は例えば上記図2に示した装置と同様な構成であるため、説明の便宜上から、本例では、同図を用いて説明を行う。
同図に示されるように、本例の干渉信号除去装置には、干渉信号抽出部11と、合成器12と、干渉信号推定部13と、推定精度制御部14とが備えられている。なお、tは時刻を示す。
【0242】
ここで、干渉信号抽出部11や合成器12の構成や動作は、例えば上記第1実施例の場合に示した構成や動作と同様である。
本例の干渉信号推定部13は、後述する推定精度制御部14からの制御に従って、干渉信号の推定結果に基づく干渉信号推定係数h’(t+1)を算出し、当該干渉信号推定係数h’(t+1)を干渉信号抽出部11へ出力する。
【0243】
推定精度制御部14は、受信信号r(t)を入力し、予め設定された態様で、例えば当該受信信号r(t)に含まれる干渉信号の電力が比較的小さいような場合には、干渉信号抽出部11で抽出される干渉信号V(t)の量が抑制されるように、干渉信号推定部13により行われる処理を制御する。
【0244】
具体的に、本例の推定精度制御部14では、例えば映像情報信号が受信されている場合には、通常の(映像情報信号が受信されていない場合における)干渉信号除去処理を行うのではなく、当該映像情報信号を除去してしまわないことを見込んで受信信号r(t)に含まれる干渉信号の抽出及び除去が行われるように、制御を行う。このようなことを実現するために、本例では、例えば干渉信号を除去する合成器12には映像情報信号を見込んだデータを記憶する記憶手段(例えばメモリ)を備えておき、受信信号r(t)と干渉信号抽出部11からの干渉信号V(t)とを合成するに際して、干渉除去後の受信信号e(t)を参照して映像情報信号を検出することを行う。
【0245】
このような本例の干渉信号除去装置の構成では、例えば回路構成を複雑とせずに、必要な映像情報信号(のみ)を検出することが可能である。
従って、本例のような干渉信号除去装置により、マルチメディア時代への一受信機の方式として、良好な品質の映像情報信号を得ることが実現される。
【0246】
ここで、本発明に係る干渉信号除去装置の構成としては、必ずしも以上に示したものに限られず、種々な構成が用いられてもよい。具体的には、上記実施例で示したものも含めて、例えば上記図11や上記図13や上記図14や上記図15に示したような構成の装置に、本発明に係る干渉信号除去装置を適用することも可能である。
【0247】
また、本発明に係る干渉信号除去装置の適用分野としては、必ずしも以上に示したものに限られず、本発明は、種々な分野に適用することが可能なものである。具体的には、例えばCDMA方式を採用した受信機に限られず、本発明は、例えば種々な通信方式を採用する基地局装置や移動局装置や中継局装置等の受信機に適用することも可能なものである。
【0248】
また、本発明に係る干渉信号除去装置により行われる各種の処理としては、例えばプロセッサ(例えばCPUやMPUやDSP等)やメモリ等を備えたハードウエア資源においてプロセッサがROMに格納された制御プログラムを実行することにより制御される構成が用いられてもよく、また、例えば当該処理を実行するための各機能手段が独立したハードウエア回路として構成されてもよい。
また、本発明は上記の制御プログラムを格納したフロッピーディスクやCD−ROM等のコンピュータにより読み取り可能な記録媒体として把握することもでき、当該制御プログラムを記録媒体からコンピュータに入力してプロセッサに実行させることにより、本発明に係る処理を遂行させることができる。
【0249】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係る干渉信号除去装置によると、広帯域の希望信号と狭帯域の干渉信号とを含んだ入力信号から当該干渉信号を除去するに際して、入力信号に基づいて当該入力信号に含まれる干渉信号をその抽出量を抑制して抽出し、抽出した干渉信号を当該入力信号から除去することを、有効語長制限や制御係数を用いる等の工夫をして実現したため、例えば簡易な構成等によって、入力信号から希望信号までも除去してしまうことを抑制することができ、これにより、干渉除去後における入力信号(希望信号)の品質を例えば従来と比べて向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る干渉信号除去装置の一例を示す図である。
【図2】 本発明の実施例に係る干渉信号除去装置の構成例を示す図である。
【図3】 本発明の第1実施例に係る干渉信号除去装置の構成例を示す図である。
【図4】 本発明の第3実施例に係る干渉信号除去装置の構成例を示す図である。
【図5】 本発明の第4実施例に係る干渉信号除去装置の構成例を示す図である。
【図6】 干渉信号除去処理を開始してからしばらくの時間が経過した場合において干渉信号除去装置から出力される信号のスペクトルの一例を示す図である。
【図7】 本発明に係る干渉信号除去装置を用いて広帯域信号と狭帯域干渉信号とを含む受信信号から当該干渉信号を除去する場合の様子の一例を示す図である。
【図8】 従来例に係る干渉信号除去装置の一例を示す図である。
【図9】 拡散符号系列の一例を説明するための図である。
【図10】 CDMA方式による広帯域の拡散信号と狭帯域の干渉信号とを含む受信信号のスペクトルの一例を示す図である。
【図11】 干渉信号除去装置の一例を示す図である。
【図12】 適応フィルタの構成例を示す図である。
【図13】 干渉信号除去装置の一例を示す図である。
【図14】 干渉信号除去装置の一例を示す図である。
【図15】 干渉信号除去装置の一例を示す図である。
【図16】 CDMA信号に2波のFM信号が干渉した受信信号のスペクトルの一例を示す図である。
【図17】 干渉信号除去処理の開始直後において干渉信号除去装置から出力される信号のスペクトルの一例を示す図である。
【図18】 干渉信号除去処理を開始してからしばらくの時間が経過した場合において干渉信号除去装置から出力される信号のスペクトルの一例を示す図である。
【図19】 干渉信号除去装置による干渉信号除去特性の一例を示す図である。
【図20】 干渉信号除去装置を用いて広帯域信号と狭帯域干渉信号とを含む受信信号から当該干渉信号を除去する場合の様子の一例を示す図である。
【符号の説明】
1、11・・干渉信号抽出部、 2、12・・合成器、
3、13・・干渉信号推定部、 4、26、36、46・・抽出量抑制部、
14・・推定精度制御部、 21、31、41・・遅延素子、
22、32、42・・適応フィルタ、 23、33、43・・減算器、
24、34、44・・フィルタタップ係数演算制御部、
25・・有効語長制御部、 35、37、45・・乗算器、
Claims (10)
- 入力信号から干渉信号を抽出する抽出手段と、抽出される干渉信号を入力信号から除去する除去手段と、除去手段の除去結果に基づいて抽出手段による干渉信号の抽出を制御する抽出制御手段と、入力信号に基づいて抽出手段による干渉信号の抽出量を抑制する抽出量抑制手段とを備え、広帯域の希望信号と狭帯域の干渉信号とを含んだ入力信号から当該干渉信号を除去する干渉信号除去装置であって、
抽出制御手段は、干渉信号の抽出を制御するための複数のデジタル制御値から成る制御ベクトルを演算して抽出手段へ出力し、
抽出手段は、複数の入力信号値から成る入力ベクトルと抽出制御手段からの制御ベクトルとの内積を干渉信号として抽出し、
抽出量抑制手段は、抽出制御手段から出力される制御ベクトルを構成するデジタル制御値の有効語長を制限して抽出手段による干渉信号の抽出量を抑制することを特徴とする干渉信号除去装置。 - 入力信号から干渉信号を抽出する抽出手段と、抽出される干渉信号を入力信号から除去する除去手段と、除去手段の除去結果に基づいて抽出手段による干渉信号の抽出を制御する抽出制御手段と、入力信号に基づいて抽出手段による干渉信号の抽出量を抑制する抽出量抑制手段とを備え、広帯域の希望信号と狭帯域の干渉信号とを含んだ入力信号から当該干渉信号を除去する干渉信号除去装置であって、
抽出制御手段は、干渉信号の抽出を制御するための複数の制御値から成る制御ベクトルをデジタル演算子により演算して抽出手段へ出力し、
抽出手段は、複数の入力信号値から成る入力ベクトルと抽出制御手段からの制御ベクトルとの内積を干渉信号として抽出し、
抽出量抑制手段は、抽出制御手段により用いられるデジタル演算子の有効語長を制限して抽出手段による干渉信号の抽出量を抑制することを特徴とする干渉信号除去装置。 - 入力信号から干渉信号を抽出する抽出手段と、抽出される干渉信号を入力信号から除去する除去手段と、除去手段の除去結果に基づいて抽出手段による干渉信号の抽出を制御する抽出制御手段と、入力信号に基づいて抽出手段による干渉信号の抽出量を抑制する抽出量抑制手段とを備え、広帯域の希望信号と狭帯域の干渉信号とを含んだ入力信号から当該干渉信号を除去する干渉信号除去装置であって、
抽出制御手段は、干渉信号の抽出を制御するための複数の制御値から成る制御ベクトルを演算して抽出手段へ出力し、
抽出手段は、複数の入力信号値から成る入力ベクトルと抽出制御手段からの制御ベクトルとの内積を干渉信号として抽出し、
抽出量抑制手段は、抽出制御手段から出力される制御ベクトルに1未満の制御係数を乗算して抽出手段による干渉信号の抽出量を抑制することを特徴とする干渉信号除去装置。 - 入力信号から干渉信号を抽出する抽出手段と、抽出される干渉信号を入力信号から除去する除去手段と、除去手段の除去結果に基づいて抽出手段による干渉信号の抽出を制御する抽出制御手段と、入力信号に基づいて抽出手段による干渉信号の抽出量を抑制する抽出量抑制手段とを備え、広帯域の希望信号と狭帯域の干渉信号とを含んだ入力信号から当該干渉信号を除去する干渉信号除去装置であって、
抽出制御手段は、干渉信号の抽出を制御するための複数の制御値から成る制御ベクトルを前回の制御ベクトルを用いて更新し、当該更新結果を抽出手段へ出力し、
抽出手段は、複数の入力信号値から成る入力ベクトルと抽出制御手段からの制御ベクトルとの内積を干渉信号として抽出し、
抽出量抑制手段は、抽出制御手段による制御ベクトルの更新に用いられる前回の制御ベクトルに1未満の制御係数を乗算して干渉信号の抽出量を抑制することを特徴とする干渉信号除去装置。 - 請求項3又は請求項4に記載の干渉信号除去装置において、
抽出量抑制手段は、入力信号に基づいて制御係数の値を制御し、制御ベクトルと制御係数との乗算を所定の時間間隔で行って抽出手段による干渉信号の抽出量を抑制することを特徴とする干渉信号除去装置。 - 請求項3又は請求項4に記載の干渉信号除去装置において、
抽出量抑制手段は、制御係数を一定値として、制御ベクトルと制御係数との乗算を所定の周期で行って抽出手段による干渉信号の抽出量を抑制することを特徴とする干渉信号除去装置。 - 請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の干渉信号除去装置において、
抽出制御手段は、制御ベクトルの演算又は更新を所定の時間間隔で行うことを特徴とする干渉信号除去装置。 - 請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の干渉信号除去装置において、
抽出量抑制手段は、入力信号に基づいて予め設定された態様で、抽出手段による干渉信号の抽出量を抑制することを特徴とする干渉信号除去装置。 - 請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の干渉信号除去装置において、
抽出量抑制手段は、入力信号に含まれる希望信号と干渉信号との電力差に基づいて抽出手段による干渉信号の抽出量を抑制することを特徴とする干渉信号除去装置。 - 請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の干渉信号除去装置において、
抽出量抑制手段は、入力信号に含まれる希望信号の電力に基づいて抽出手段による干渉信号の抽出量を抑制することを特徴とする干渉信号除去装置。
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