JP4422823B2 - ポリエステルブロック共重合体組成物及び感熱体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属およびポリ塩化ビニル(PVC)との接触下において、耐熱性に優れたポリエステルブロック共重合体組成物、及びポリエステルブロック共重合体系樹脂を使用したヒーター線用の感熱体に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年では、電線をはじめとするあらゆる分野で、合成樹脂と金属およびPVCとの複合材料が使用されている。これらの複合材料は、押出成形法あるいは融着法により成形され、各種の用途に用いられている。
【0003】
この様な材料の用途の一つに、耐熱性が要求される電気毛布や電気カーペットのヒーター線などがある。
ヒーター線の構造は、一般的に図1に示す通り、芯線1、ショート線2、発熱線3、感熱体4と外皮5から成る。この感熱体4はヒユーズ機能を持つ。
これは異常昇温時に、感熱体4が狭い温度範囲で融解し、ヒーター回路を遮断させるためであり、これまでナイロン12及びナイロン11が主に用いられている。また、芯線1には耐熱性ポリエステル、外皮5にはPVC、ショート線2及び発熱線3には銅及び銅合金が用いられている。
【0004】
これらの複合素材から成るヒーター線は、その機能上熱履歴が多く、感熱体4の耐熱性が悪いと、発熱線3からの発熱が正常範囲であっても、ヒーター回路が遮断したり、逆に異常昇温時にもヒューズ機能が作動せず、火災を招いたりする。
従来、この感熱体4としては主に、ナイロン12及びナイロン11のような樹脂が使用されている。
これらの樹脂としては、耐熱性に優れており、添加剤を含まない樹脂、あるいはヒンダードフェノール系耐熱安定剤を配合し、熱劣化を防止した樹脂組成物が用いられている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記ヒーター線のように熱履歴が多く、昇温時には100℃前後まで温度が上昇する中で、ナイロン12及びナイロン11のような感熱体は、ショート線あるいは発熱線としての銅あるいは銅合金と接触し、さらにショート線の巻かれた隙間においてPVC外皮と接触しているため、析出する銅イオン、または接触するPVCから脱離した塩酸が、複合的に作用し、熱劣化が促進され、耐熱性が不十分となる問題がある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、従来技術が有するかかる問題点を解決する為に鋭意研究した結果、ポリエステルブロック共重合体に、特定のエポキシ化合物及び金属錯化剤を配合し、加熱、混練して、ポリエステルブロック共重合体にエポキシ化合物が反応して得られたポリエステルブロック共重合体組成物が、高温下において銅及び銅合金などの金属およびPVCと接触した環境化においても、複合的な熱劣化を受けにくく、耐熱性に優れていることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち本発明の第1は、分子末端に水酸基を有する結晶性芳香族ポリエステル(A)とラクトン類(B)を反応させて得られたポリエステルブロック共重合体(A’)100重量部に対し、一官能以上のエポキシ化合物(C)を0.5重量部〜5.0重量部、金属錯化剤(D)を0.01〜3.0重量部配合し、加熱、混練してなるポリエステルブロック共重合体組成物を提供する。
本発明の第2は、結晶性芳香族ポリエステル(A)が、酸成分(a)として芳香族ジカルボン酸を必須成分として、必要に応じて添加させる脂肪族ジカルボン酸及び/又は脂環式ジカルボン酸と、ジオール成分(b)として脂肪族ジオール、芳香族ジオール及び/又は脂環式ジオールとのポリエステルであることを特徴とする本発明の第1記載のポリエステルブロック共重合体組成物を提供する。
本発明の第3は、結晶性芳香族ポリエステル(A)が、ブチレンテレフタレートおよびエチレンテレフタレート単位を合計で60モル%以上含むことを特徴とする本発明の第1記載のポリエステルブロック共重合体組成物を提供する。
本発明の第4は、結晶性芳香族ポリエステル(A)とラクトン類(B)との共重合割合が、重量比(A/B)で97/3〜50/50であることを特徴とする本発明の第1記載のポリエステルブロック共重合体組成物を提供する。
本発明の第5は、エポキシ化合物(C)が、グリシジルエステルタイプのエポキシ化合物、下記一般式(I)〜(V)で示される化合物、又はこれらの混合物であることを特徴とする本発明の第1記載のポリエステルブロック共重合体組成物を提供する。
【0008】
【化2】
【0009】
(式中、R1、R2およびR3は、アルキル基で、少なくとも一つはメチル基であり、これらの炭素数の合計は8個である。またnは0〜5である。)
本発明の第6は、金属錯化剤(D)がシュウ酸誘導体、サリチル酸誘導体及びヒドラジド誘導体の群から選ばれた一種以上のものであることを特徴とする本発明の第1記載のポリエステルブロック共重合体組成物を提供する。
本発明の第7は、本発明の第1〜6のいずれかに記載のポリエステルブロック共重合体組成物からなるヒーター線用の感熱体を提供する。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明を詳しく説明する。
初めに、本発明に係るポリエステルブロック共重合体(A’)の製造に使用する原料について説明する。
結晶性芳香族ポリエステル(A)
本発明に用いられる結晶性芳香族ポリエステル(A)は、酸成分(a)として芳香族ジカルボン酸を必須成分として、必要に応じて添加させる脂肪族ジカルボン酸及び/又は脂環式ジカルボン酸と、ジオール成分(b)として脂肪族ジオール、芳香族ジオール及び/又は脂環式ジオールとのポリエステルであり、主としてエステル結合をもつポリマーであって、分子末端に水酸基を有するものである。
上記結晶性芳香族ポリエステル(A)は、高重合度の、融点が160℃以上、数平均分子量5,000以上のものが好ましい。
【0011】
酸成分(a)
結晶性芳香族ポリエステル(A)を構成する具体的な酸成分(a)を挙げると、芳香族ジカルボン酸として、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナルタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸等である。
また脂肪族ジカルボン酸としては、炭素数2〜20のジカルボン酸が適当であり、例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼラン酸、セバシン酸、ドデカンジ酸、ダイマー酸等が挙げられる。
更に、脂環式ジカルボン酸としては、例えば、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等が挙げられる。
これらのジカルボン酸は、原料として使用する場合には、エステルや酸塩化物や酸無水物であっても構わない。
【0012】
ジオール成分(b)
次に、結晶性芳香族ポリエステル(A)の具体的なジオール成分(b)を挙げると、脂肪族ジオールとして、例えば、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ポリメチレングリコール等が挙げられる。
また芳香族ジオールとしては、例えば、ハイドロキノン、レゾルシノール、ナフタレンジオール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビスフェノールAとエチレンオキサイドやプロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドとの付加物、例えば、2,2−ビス(4−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシトリエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシポリエトキシフェニル)プロパン等が挙げられる。
更に、脂環族ジオールとしては、例えば、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2,2−ビス(4−ヒドロキシエトキシシクロヘキシル)プロパンや、水素化ビスフェノールAとエチレンオキサイドやプロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドとの付加物等が挙げられる。
【0013】
以上に例示した、結晶性芳香族ポリエステル(A)の構成成分の内、結晶性、耐熱性あるいは原料コスト面を考慮した場合、ブチレンテレフタレートおよびエチレンテレフタレート単位が合計で60モル%以上含まれることが望ましい。
【0014】
ラクトン類(B)
分子末端に水酸基を有する結晶性芳香族ポリエステル(A)をラクトン変性するのに使用されるラクトン類(B)としては、ε−カプロラクトン、2−メチルおよび4−メチル、4,4’−ジメチル等のメチル化ε−カプロラクトン、δ−バレロラクトン、メチル化δ−バレロラクトン、β−プロピオラクトン等が挙げられるが、コスト面を考慮した場合、ε−カプロラクトンが最も好ましい。
更に、上記記載のラクトン成分(B)の1種又は2種以上からなるポリマー(A’)を本発明に用いるポリエステルブロック共重合体の構成成分として用いることも出来る。
【0015】
次に、本発明に係るポリエステルブロック共重合体(A’)について説明する。
ポリエステルブロック共重合体(A’)
本発明に係るポリエステルブロック共重合体(A’)は、上記結晶性芳香族ポリエステル(A)の末端水酸基にラクトン類(B)を開環付加反応させて得られる。
上記結晶性芳香族ポリエステル(A)とラクトン類(B)との共重合比率(A/B)は、重量比で97/3〜50/50、特に90/10〜55/45が好適である。
ラクトン類(B)の比率が上記範囲より少なすぎるとポリエステルブロック共重合体の柔軟性が発現できず感熱体としては不適当となり、上記範囲より多すぎるとポリエステルブロック共重合体の耐熱性が低下する。
更に上記結晶性芳香族ポリエステル(A)とラクトン類(B)とは、必要に応じて触媒を加え、加熱、混練することによって反応させることができる。
芳香族ポリエステル(A)とラクトン類(B)とを反応させる方法は、例えば、特公昭48−4115号公報、特公昭52−49037号公報、米国特許第2623031号、特公昭60−4518号公報、特公平3−77826号公報、特公昭63−31491号公報などに詳しく報告されている。
【0016】
次に、ポリエステルブロック共重合体(A’)と反応させるエポキシ化合物(C)について説明する。
エポキシ化合物(C)
本発明に使用されるエポキシ化合物(C)とは、同一分子内に1個以上のエポキシ基を有するものであれば、その構造は特に制限されない。
しかしながら、配合時、あるいは本組成物の成形加工時の熱履歴を考慮すると、グリシジルエーテルタイプのエポキシ化合物よりも、脂環式エポキシあるいはグリシジルエステルタイプのエポキシ化合物が好適である。
具体的には、前記一般式(I)〜(V)で示される化合物を例示することができるが、これらの化合物に限定されるものではない。
【0017】
上記式(II)および(III)〜(V)以外のグリシジルエステルタイプとしては、フタル酸のモノおよびジグリシジルエステル、メチルテトラヒドロフタル酸のモノおよびジグリシジルエステル、テレフタル酸のモノおよびジグリシジルエステル、トリメリット酸のモノ、ジ、及びトリグリシジルエステル、ダイマー酸モノおよびジグリシジルエステル等が挙げられる。
また、脂環式エポキシタイプとしては、上記式(I)以外に、ダイセル化学工業(株)社製のセロキサイド2081、セロキサイド2083、セロキサイド2085、エポリードGT300、エポリードGT400(何れも商品名)、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジぺート等が挙げられる。
グリシジルエーテルタイプとしては、メチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールモノフェニルモノグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル等である。
本発明では、上記のエポキシ化合物を一種又は二種以上使用することができる。
【0018】
金属錯化剤(D)
本発明において、ポリエステルブロック共重合体組成物に配合される金属錯化剤(D)としては、シュウ酸誘導体、サリチル酸誘導体、ヒドラジド誘導体、又はこれらの混合物が使用される。
金属錯化剤(D)は、該ポリエステルブロック共重合体組成物に接触している銅及び銅合金等の金属から析出する金属イオンと金属錯化合物を形成し、酸化劣化作用を防止する構造のものであれば特に制限はない。
上記シュウ酸誘導体としては、シュウ酸ビスベンジリデンヒドラジド、N,N’−ビス{2−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシル]エチル}オキサミドなどが挙げられ、サリチル酸誘導体としては、3−(N−サリチロイル)アミノ−1,2,4−トリアゾール、デカンジカルボン酸ジサリチロイルヒドラジドなどが挙げられ、ヒドラジド誘導体としては、N,N’−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン、イソフタル酸ビス(2−フェノキシプロピオニル)ヒドラジドなどが挙げられる。
【0019】
ポリエステルブロック共重合体組成物
本発明に係るポリエステルブロック共重合体組成物では、エポキシ化合物(C)の配合量は、該ポリエステルブロック共重合体(A’)100重量部に対して0.5〜5.0重量部であることが必要であり、好ましくは1.0〜4.0重量部である。
配合量が0.5重量部より少ないと、得られたポリエステルブロック共重合体組成物の一般的な耐熱性や耐水性の効果が小さくなるばかりか、PVCと接触しているポリエステルブロック共重合体組成物がPVCから脱離した塩酸により、耐熱老化性が著しく低下する。また、配合量が5.0重量部を越えると、未反応エポキシ化合物の影響によりポリエステルブロック共重合体組成物の成形加工性が悪くなったり、出来上がった成形品の表面状態が粗雑になる傾向がある。
【0020】
金属錯化剤(D)の配合量は、該ポリエステルブロック共重合体(A’)100重量部に対して、0.01重量部〜3.0重量部であることが必要であり、好ましくは0.1重量部〜1.5重量部である。
配合量が0.01重量部未満では、金属と接触しているポリエステルブロック共重合体組成物は、満足する耐熱性が得られない。また、配合量が3.0重量部を超えると、金属と接触している該ポリエステルブロック共重合体組成物は、経済的でなく、また該ポリエステルブロック共重合体の配合時に分散不良を起こす可能性があり、かえって耐熱性が低下するので好ましくない。
【0021】
ポリエステルブロック共重合体組成物は、配合物を加熱、混練して得られる。
上記の加熱、混練による反応は、通常、樹脂の溶融混練によって行われるが、この際、無触媒でも差支えないが、触媒を使用してもよい。
【0022】
触媒としては、一般にエポキシ化合物の反応に使用されるものはすべて使用することができ、例えば、アミン類、リン化合物、炭素原子数10以上のモノカルボン酸又はジカルボン酸の元素周期律表のIa又はIIa族金属塩類等の化合物が、単独で、もしくは2種類以上併用して使用することができる。
また、加熱、混練温度は、該ポリエステルブロック共重合体の結晶融点よりも5℃高い温度から280℃までが望ましい。
混練時間は30秒〜60分程度であり、混練方式や温度により適宜選択される。
【0023】
本発明に使用するポリエステルブロック共重合体組成物に、ヒンダードフェノール系、イオウ系、亜リン酸エステル系あるいは有機複合亜リン酸塩などの安定剤を添加することも可能である。
これらの安定剤は、ポリエステルブロック共重合体組成物の酸化防止あるいは熱安定性への効果があるため、通常、原料として使用する結晶性芳香族ポリエステル樹脂に添加されているのが一般的である。
更に、使用される用途に応じ、適宜、顔料や耐候安定剤等の添加剤(E)を添加しても差し支えない。
【0024】
本発明において配合される金属錯化剤(D)あるいは上述の安定剤、添加剤(E)の混合は、エポキシ化合物(C)の混合と同時に行ってもよいし、別々に行ってもよい。
【0025】
本発明において該ポリエステルブロック共重合体組成物に接触する金属は、析出する金属イオンが、シュウ酸誘導体、サリチル酸誘導体、あるいはヒドラジド誘導体等の金属錯化剤(D)と金属錯化合物を形成し、酸化劣化作用を防止する構造のものであれば特に制限はなく、例えば、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、スズ、鉛、またはこれらを主体とした合金が挙げられるが、特に銅及び銅合金の場合に効果が顕著である。
【0026】
本発明のポリエステルブロック共重合体組成物は、金属およびPVCとの接触下において優れた耐熱性を有する。従って電気毛布や電気カーペットのヒーター線中の、銅あるいは銅合金からなるショート線あるいは発熱線と保護被覆層のPVCに対して直接接触する層状の感熱体として好適である。
【0027】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。また実施例中、単に部とあるのは重量部を示す。
各ポリマーの融点は、JIS K7121法により測定し、DSC曲線から求めた。また、流れ特性(MFR)は、JIS K7210法により測定した。
【0028】
[参考例1] ポリエステルブロック共重合体(A1’)の調製
結晶性芳香族ポリエステルとして、酸成分としてテレフタル酸及びイソフタル酸と、グリコール成分として1,4−ブタンジオールからなる融点205℃の市販のポリブチレンフタレート(A1)を用いた。
攪拌機、温度計、コンデンサー、溜出用ラインを具備した反応容器に、上記ポリブチレンフタレート(A1)80部、ε−カプロラクトン(B1)20部を投入し、反応温度235℃で1時間混合、反応を実施した。
次いでこの温度を保ったまま1時間かけて、常圧から1torr以下まで減圧し、この減圧状態で更に1時間の間、系内にある残存ε−カプロラクトンを除去した。
得られたポリエステルブロック共重合体(A1’)の融点は185℃、MFRは11g/10min(230℃,2.16kgf)であった。
【0029】
[参考例2] ポリエステルブロック共重合体(A2’)の調製
結晶性芳香族ポリエステルとして、酸成分としてテレフタル酸及びイソフタル酸と、グリコール成分として1,4−ブタンジオールからなる融点185℃の市販のポリブチレンフタレート(A2)を用いた。
攪拌機、温度計、コンデンサー、溜出用ラインを具備した反応容器に、上記ポリブチレンフタレート(A2)85部、ε−カプロラクトン(B1)15部を投入し、反応温度235℃で1時間混合、反応を実施した。
次いでこの温度を保ったまま1時間かけて、常圧から1torr以下まで減圧し、この減圧状態で更に1時間の間、系内にある残存ε−カプロラクトンを除去した。
得られたポリエステルブロック共重合体(A2’)の融点は174℃、MFRは12g/10min(230℃,2.16kgf)であった。
【0030】
[実施例1〜24]
ポリエステルブロック共重合体組成物は、参考例1及び2で調製したポリエステルブロック共重合体(A1’またはA2’)に、一官能以上のエポキシ化合物(C1及びC2)、シュウ酸誘導体(D1)、サリチル酸誘導体(D2及びD3)、ヒドラジド誘導体(D4)及び各種安定剤(E1及びE2)を配合し、2軸押出機で加熱、混練して、コンパウンド化したものである。これらの配合量を表1に示す。
【0031】
上記ポリエステルブロック共重合体組成物を使用して、プレス成形により1mmシートを作成し、これを打ち抜き加工してJIS 2号の厚さ1mmの引張試験片を作成した。
この試験片の標線間に、幅5mmの銅箔を5mm間隔のピッチで螺旋状に巻いた。次いで、30mm(縦)×30mm(横)×1mm(厚み)のPVCシートでこの銅箔を巻いた試験片を挟み、更にSUS304製の35mm(縦)×35mm(横)×3mm(厚み)の金属板で試験片を挟み込んだPVCシートを挟んだ。この複合層に5kgfの重りを乗せ、140℃の温度に設定したオーブン中に放置した。
【0032】
このオーブン中に放置した試験片について、経時的にサンプリングし、25℃、50RH%の空調室に24時間放置後、試験片の引張破断伸度を測定した。
その結果を表3に示す。引張破断伸度の経時的変化率が高いほど劣化が進んでいることを示す。
【0033】
[比較例1〜7]
実施例1〜24と同様、ポリエステルブロック共重合体組成物は、参考例1及び2で調製したポリエステルブロック共重合体(A1’又はA2’)に各種添加剤を配合し、2軸押出機で加熱、混練してコンパウンド化したものである。これらの配合量を表1に示す。
これらのポリエステルブロック共重合体組成物について、実施例1に準じた試験を行った。測定結果を表3に示す。
【0034】
[比較例8〜13]
ダイセル・ヒュルス社のナイロン12の重合時に、ドデカン二酸を添加して相対粘度1.80、融点178℃に調節したポリアミド樹脂を得た。尚、ポリアミド樹脂の相対粘度は、DIN 53727による0.5%メタクレゾール溶液を用いた溶液粘度を測定することにより求めた。
このポリアミド樹脂に表2に示すように各種添加剤を配合し、2軸押出機でコンパウンドすることによりポリアミド樹脂組成物を調製した。
これらのポリアミド樹脂組成物について、実施例1に準じた試験を行った。測定結果を表3に示す。
【0035】
【表1】
【0036】
【表2】
【0037】
【表3】
【0038】
【発明の効果】
本発明のポリエステルブロック共重合体組成物は、金属およびPVCとの接触下において優れた耐熱性を有し、電気毛布や電気カーペットのヒーター線に用いられる感熱体として好適であり、金属製ショート線あるいは発熱線と外皮のPVCに対して直接接触しても感熱体として長期間使用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1図は、一例のヒーター線の構造を示す概略図である。
【符号の説明】
1 芯線
2 ショート線
3 発熱線
4 感熱体
5 外皮
Claims (6)
- 分子末端に水酸基を有する結晶性芳香族ポリエステル(A)とラクトン類(B)を反応させて得られたポリエステルブロック共重合体(A’)100重量部に対し、一官能以上のエポキシ化合物(C)を0.5重量部〜5.0重量部、シュウ酸誘導体、サリチル酸誘導体及びヒドラジド誘導体の群から選ばれた一種以上の金属錯化剤(D)を0.01〜3.0重量部配合し、加熱、混練してなるポリエステルブロック共重合体組成物。
- 結晶性芳香族ポリエステル(A)が、酸成分(a)として芳香族ジカルボン酸を必須成分として、必要に応じて添加させる脂肪族ジカルボン酸及び/又は脂環式ジカルボン酸と、ジオール成分(b)として脂肪族ジオール、芳香族ジオール及び/又は脂環式ジオールとのポリエステルであることを特徴とする請求項1記載のポリエステルブロック共重合体組成物。
- 結晶性芳香族ポリエステル(A)が、ブチレンテレフタレートおよびエチレンテレフタレート単位を合計で60モル%以上含むことを特徴とする請求項1記載のポリエステルブロック共重合体組成物。
- 結晶性芳香族ポリエステル(A)とラクトン類(B)との共重合割合が、重量比(A/B)で97/3〜50/50であることを特徴とする請求項1記載のポリエステルブロック共重合体組成物。
- 請求項1〜5のいずれかに記載のポリエステルブロック共重合体組成物からなるヒーター線用の感熱体。
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