JP4414563B2 - 成形性並びに穴拡げ性に優れた高強度鋼板およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車のメンバーやブラケット類のように穴拡げ性が必要な部材に適用できる鋼板とその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、自動車のメンバー類に代表されるように、部材の軽量化の要望が高まっており、それに対応するために高強度鋼板が用いられる場合が増えているが、これら鋼板には、高い成形性と穴拡げ性が要求される。
従来から、穴拡げ性が必要な高強度鋼板としては、フェライト(F)+マルテンサイト(M)、または、フェライト(F)+ベイナイト(B)の複合組織による組織強化型の鋼板が多く用いられている。しかし、F+Mの複合組織鋼(DP〔=Dual Phase〕鋼板)では、高い強度と比較的良好な成形性は得られるものの、著しく強度の異なる両相の界面からボイドが発生しやすく、穴拡げ性が劣るという問題がある。
【0003】
また、F+BのDP鋼では、特開昭57−101649号公報に示されているように、穴拡げ性は優れているものの、穴拡げ性を確保したままで、700MPa 以上の強度を得ることは困難であり、また、自動車における更なる軽量化指向の中では、成形性が劣るという問題がある。同様に、特開平6−172924号公報には、ベイネテックフェライトによる組織強化鋼が示されている。この鋼は、フェライト中のTiC析出による強化を主とするものであるが、この強化方法でも、該方法が析出強化法であるため、高い成形性を確保することが困難である。
【0004】
また、特許第2844136号公報、特開平5−331591号公報などには、Cuを添加しフェライト中に微細なCuを析出させることにより、穴拡げ性に優れた高強度鋼板を製造する方法が示されている。しかしながら、この方法でも、該方法が析出強化法であるため、高い成形性を確保することが困難である。
一方、成形性を得るために、組織をフェライト(F)+ベイナイト(B)+残留オーステナイト(γ)としたTRIP〔Transformation Induced Plasticity 〕鋼板が、特公平7−74378号公報等に開示されている。この鋼板は、変態誘起塑性(TRIP効果)に起因し、従来鋼板の中で最も優れた加工性が得られるものであるが、この鋼板も、残留オーステナイトが変態誘起組成したマルテンサイトとフェライトとの強度が著しく異なることに起因し、穴拡げ性が劣るという問題点を抱えている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来技術の問題点に着目してなされたのであって、その目的は、優れた穴拡げ性と成形性が両立する高強度鋼板およびその製造方法を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、従来材に見られる前記課題を解決すべく、鋭意研究を行った結果、フェライトの強度を高くすることにより、異相間の強度差に起因する穴拡げ性の劣化を防止することができると共に、鋼組織中に、所要量の残留オーステナイトを存在させることにより、優れた成形性と穴拡げ性を両立せしめることができるという知見を得た。本発明は、上記知見に基づいてなされたものであり、その要旨とするところは、以下のとおりである。
【0007】
(1)質量%で、C:0.05%以上、0.2%以下、Si:0.5%以上、2.5%以下、Al:0.01%以上、2.5%以下、S:0.01%以下、P:0.03%未満、Cu:0.5%以上、2.5%以下、Mn:0.5%以上、3.0%以下を含有し、残部Fe及び不可避不純物からなり、0.1μm以下の大きさのCu析出量が0.2質量%以上であり、フェライト相の硬度がHvで150以上、240以下であるとともに、鋼組織中の残留オーステナイトの体積率が2〜20%であることを特徴とする成形性並びに穴拡げ性に優れた高強度熱延鋼板。
【0008】
(2)更に、質量%で、Ni:2.0%未満、Mo:0.2%未満、Cr:1.0%未満、V:0.3%未満、B:0.01%未満、Ti:0.06%未満、Nb:0.06%未満、Ca:0.05%未満、および、Mg:0.05%未満のうち少なくとも1種以上を含有することを特徴とする前記(1)に記載の成形性並びに穴拡げ性に優れた高強度鋼板。
(3)質量%で、C:0.05%以上、0.2%以下、Si:0.5%以上、2.5%以下、Al:0.01%以上、2.5%以下、S:0.01%以下、P:0.03%未満、Cu:0.5%以上、2.5%以下、Mn:0.5%以上、3.0%以下を含有し、残部Fe及び不可避不純物からなり、0.1μm以下の大きさのCu析出量が0.2質量%以上であり、フェライト相の硬度がHvで150以上、240以下であるとともに、鋼組織中の残留オーステナイトの体積率が2〜20%であることを特徴とする成形性並びに穴拡げ性に優れた高強度冷延鋼板。
【0009】
(4)更に、質量%で、Ni:2.0%未満、Mo:0.2%未満、Cr:1.0%未満、V:0.3%未満、B:0.01%未満、Ti:0.06%未満、Nb:0.06%未満、Ca:0.05%未満、および、Mg:0.05%未満のうち少なくとも1種以上を含有することを特徴とする前記(3)に記載の成形性並びに穴拡げ性に優れた高強度冷延鋼板。
【0010】
(5)前記(3)または(4)に記載の冷延鋼板の表面に、溶融亜鉛めっきが施されていることを特徴とする成形性並びに穴拡げ性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
(6)前記(3)または(4)に記載の冷延鋼板の表面に、合金化溶融亜鉛めっきが施されていることを特徴とする成形性並びに穴拡げ性に優れた高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板。
(7)前記(1)または(2)に記載の鋼組成を満足する鋼を、800℃以上の温度で熱間圧延を終了した後、460〜600℃で巻き取ることを特徴とする成形性並びに穴拡げ性に優れた高強度熱延鋼板の製造方法。
【0011】
(8)前記(3)または(4)に記載の鋼組成を満足する冷延鋼板を、650〜850℃の二相共存温度域で10秒以上、10分以下焼鈍した後、4〜200℃/sの冷却速度で460〜600℃まで冷却し、次いで、この温度域で10秒以上、10分以下保持した後、5℃/s以上の冷却速度で250℃以下に冷却することを特徴とする前記(3)または(4)に記載の成形性並びに穴拡げ性に優れた高強度冷延鋼板の製造方法。
【0012】
(9)前記(3)または(4)に記載の鋼組成を満足する冷延鋼板を、650〜850℃の二相共存温度域で10秒以上、10分以下焼鈍した後、4〜200℃/sの冷却速度で460〜600℃まで冷却し、次いで、この温度域で10秒以上、10分以下保持した後、溶融亜鉛めっきを施し、その後、5℃/s以上の冷却速度で250℃以下に冷却することにより、鋼板表面に、Al:1%以下および不可避不純物よりなるZnめっき層を形成することを特徴とする前記(5)に記載の成形性並びに穴拡げ性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
【0013】
(10)前記(3)または(4)に記載の鋼組成を満足する冷延鋼板を、650〜850℃の二相共存温度域で10秒以上、10分以下焼鈍した後、4〜200℃/sの冷却速度で350〜500℃まで冷却し、その後、溶融亜鉛めっきを施し、450〜600℃の範囲の温度域で5秒以上、2分以下保持してから、5℃/s以上の冷却速度で250℃以下に冷却することにより、鋼板表面に、Fe:8〜15%、Al:1%以下および不可避不純物よりなるZn合金めっき層を形成することを特徴とする前記(6)に記載の成形性並びに穴拡げ性に優れた高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
【0014】
(11)前記溶融亜鉛めっきを行う前に、350〜500℃の温度域で10分以下保持することを特徴とする前記(10)に記載の成形性並びに穴拡げ性に優れた高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明は、鋼板において、C、Si、Mn、Cuの含有量、フェライト中の硬度、オーステナイト体積率、熱延条件などを限定することにより、優れた穴拡げ性と成形性を両立せしめた高強度鋼板を提供するものであり、以下にその限定理由について述べる。
【0016】
Cは、オーステナイト安定化元素であり、二相共存温度域およびベイナイト変態温度域で、フェライト中から移動しオーステナイト中に濃化する。その結果、化学的に安定化されたオーステナイトが、室温までの冷却後も2〜20%残留し、変態誘起塑性により成形性を良好にする。Cが0.05%未満であると、2%以上の残留オーステナイトを確保するのが困難であり、目的を達せられない。また、Cが0.2%を超すと、溶接性が悪化するので避けなければならない。
【0017】
Siは、セメンタイトに固溶せず、その析出を抑制することにより、350〜600℃におけるオーステナイトからの変態を遅らせる。この間に、オーステナイト中へのC濃化が促進されるので、オーステナイトの化学的安定性が高まり、変態誘起塑性を起こし、成形性を良好にするのに貢献する残留オーステナイトの確保を可能とする。Siが0.5%未満であると、その効果が得られない。一方、Si濃度を高くすると溶接性が悪化するので、上限を2.5%にする必要がある。
【0018】
Mnは、オーステナイト形成元素であり、また、二相共存温度域での焼鈍後350〜600℃に冷却する途上で、オーステナイトがパーライトへ分解するのを防ぐので、室温まで冷却した後の金属組織にオーステナイトが残留するのに寄与する。0.5%未満の添加では、パーライトへの分解を抑えるのに工業的な制御ができない程に冷却速度を大きくする必要があり、添加量として適切ではない。一方、3.0%を超すとバンド組織が顕著になり特性を劣化させるし、スポット溶接部がナゲット内で破断しやすくなり、好ましくない。それ故、Mnは0.5%以上、3.0%以下とする。
【0019】
Cuは、本発明で最も重要な元素である。本発明ではフェライト中にCuを析出させてフェライトの硬度を上げることにより、異相間の強度差に起因する穴拡げ性の劣化を防止する。また、Cuは、オーステナイト安定化元素であり、鋼板中の残留オーステナイトを含有させるのに有効に働く。Cuの必要量は、フェライト相の硬度との関係で決まる。
【0020】
本発明の鋼板においては、残留オーステナイトが変形時にマルテンサイトに変態することを活用して、優れた成形性を得る。マルテンサイト組織はCを濃縮しているため非常に硬く(Hv:約800)、主相(フェライト)との硬度差が非常に大きくなるが、本発明の鋼板においては、フェライト相の硬度を高くすることで、マルテンサイトとの硬度差を小さくする。そのためには、フェライト相の硬度はHvで150以上が必要であり、このフェライト相を得るために、Cuを0.5%以上添加する必要がある。
【0021】
一方、Cu量の増加と共に、フェライト層が硬くなり鋼板の強度は上昇するが、フェライト相の強度が高くなりすぎると成形性が劣化する。本発明者らは鋭意調査した結果、Hvで240以下であれば良好な成形性が得られることを見い出した。そして、そのために必要な、Cu量の上限を2.5%とした。
図1に、C:0.1%、Si:1.2%、Mn:1.5%、Cu:0.8%を含む鋼板を熱間圧延し、880℃で熱間圧延を終了した後、550℃で巻き取った熱延鋼板(厚さ2mm、強度、約600MPa )におけるフェライトの硬度Hvと穴拡げ率および全伸びElとの関係を示す。ここで、穴拡げ率は、クラックが板厚を貫通した時点での穴径(d)と初期穴径(d0 )との比d/d0 とした。
【0022】
本発明の鋼板は、以上を基本成分とするが、Siと同様な働きをするAlを加えてもよい。Alは、脱酸材としても用いられると同時に、Siと同じようにセメンタイトに固溶せず、350〜600℃での保持に際してセメンタイトの析出を抑制し、変態の進行を遅らせる。しかし、Siよりもフェライト形成能が強いため変態開始は早く、ごく短時間の保持でも、二相共存温度域での焼鈍時よりオーステナイト中にCが濃化され、オーステナイトの化学的安定性が高まる。それ故、室温まで冷却後の金属組織中に、成形性を悪化させるマルテンサイトは僅かしか存在しないことになる。このため、AlとSiが共存すると、350〜600℃での保持条件による強度や伸びの変化が小さくなり、高強度で良好なプレス成形性を得やすくなる。
【0023】
それ故、Alを添加する場合は、0.01%以上の添加が望ましい。一方、Al濃度を高くするとスポット溶接部がナゲット内で破断しやすくなると同時に、Al介在物に起因する割れが多発し、製造性が悪化するので、Alを添加する場合は2.5%以下にする必要がある。
本発明の鋼板では、Cu析出物の活用により、優れた成形性と穴拡げ性を両立せしめるが、Cuを微細析出させることで均一なフェライト強化層を得ることができ、より特性を向上させることができる。本発明者らは、詳細な調査の結果、0.1μm以下の析出物の影響が大きいことを確認した。この微細析出量が少ないと、フェライトを強化する効果が発揮されないので、Cu析出物は0.2質量%以上必要である。
【0024】
さらに、Niはオーステナイト安定化元素であり、Mo、Cr、V、B、TiおよびNbは強度を上げる元素であり、CaおよびMgは鋼中Sと結びつき介在物を減少させることで良好な穴拡げ性と成形性を確保する元素であり、Ni:2.0%未満、Mo:0.2%未満、Cr:1.0%未満、V:0.3%未満、B:0.01%未満、Ti:0.06%未満、Nb:0.06%未満、Ca:0.05%未満、および、Mg:0.05%未満のうち少なくとも1種以上を必要に応じて添加することは、本発明の趣旨を損なわない。
【0025】
これら元素の効果は、上記の各上限で飽和するので、それ以上の添加はコストを高めることになる。また、Niは、Cuとの複合添加で“Cuへげ”と呼ばれる表面欠陥を防止するので、Niを1/2Cu含有させることが望ましい。
本発明の鋼板は、以上を基本成分とするが、これらの元素およびFe以外に、その他の一般鋼に対して不可避的に混入する元素を含むものである。
【0026】
Sは、鋼板の穴拡げ性を高めるために低いほうが望ましく、0.01%を超えるとMnS介在物を生成し、穴拡げ加工時の亀裂発生点を形成するので、上限を0.01%とすることが望ましい。
Pは、Si、Alと同様にセメンタイトに溶解しない元素であるが、溶接性および粒界破壊脆性を防止する点で、0.03%未満であることが望ましい。
【0027】
最終製品としての本発明の鋼板の成形性は、製品中に含まれる残留オーステナイトの体積率に左右される。金属組織に含まれる残留オーステナイトは変形を受けていない時は安定に存在するものの、変形が加えられるとマルテンサイトに変態し、変態誘起塑性を呈するので、良好な成形性が高強度で得られる。
残留オーステナイトの体積率が2%未満であると、はっきりとした効果が認められない。
【0028】
一方、残留オーステナイトの体積率が20%を超えていると、極度に厳しい成形を施した場合、プレス成形した状態で多量のマルテンサイトが存在することとなり、二次加工性や衝撃性において問題を生じる可能性がある。それ故、本発明の鋼板では、残留オーステナイトの体積率を20%以下とした。
なお、金属組織は、その他、フェライト、ベイナイト、マルテンサイトおよび炭化物を含むものである。
【0029】
次に、本発明鋼の熱延鋼板、冷延鋼板、溶融亜鉛めっき鋼板および合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法に係る限定理由について述べる。
本発明鋼の熱延鋼板は、上記成分組成の要件を満足する鋼材を、鋳造後熱間圧延する際に、800℃以上の温度で熱間圧延を終了し、その後、350℃〜600℃で巻き取ることで得られる。
【0030】
圧延終了温度を低くすると、鋼中に加工組織が残存して残留オーステナイトが確保できず、延性の劣化を招くので、圧延終了温度は、800℃以上必要である。圧延終了温度の上限は特に規定しないが、工業的に安定して製造できる1000℃以下が望ましい。
Cuを添加した鋼板のフェライト相の強度およびCu析出物の形態は、巻き取り温度により大きく変化し、適正な温度範囲で巻き取った際において、優れた穴拡げ性と成形性を両立させることができる。
【0031】
350℃未満の巻き取り温度ではCu粒子の微細析出量が十分でなく、ベイナイト変態が進行しない結果、残留オーステナイトが確保されない。従って350℃以上の巻き取り温度が必要である。
一方、600℃を超える温度で巻き取ると、Cu粒子が粗大析出し、また、炭化物が析出し、残留オーステナイトが確保できない結果、穴拡げ性と延性が劣化する。従って、600℃以下の巻き取り温度が必要である。以上の製造条件により、穴拡げ性および成形性に優れた熱延鋼板を製造することができる。
なお、本発明では、巻き取り温度の下限を、実施例に基づき460℃とした。
【0032】
本発明鋼の冷延鋼板は、上記鋼組成を満足する冷延鋼板を、650〜850℃の二相共存温度域で10秒以上、10分以下焼鈍した後、4〜200℃/sの冷却速度で350〜600℃まで冷却し、次いで、この温度域で10秒以上、10分以下保持した後、5℃/s以上の冷却速度で250℃以下に冷却することにより得られる。
なお、本発明では、4〜200℃/sの冷却速度で冷却する温度の下限を、実施例に基づき460℃とした。
【0033】
また、本発明鋼の溶融亜鉛めっき鋼板は、上記鋼組成を満足する冷延鋼板を、650〜850℃の二相共存温度域で10秒以上、10分以下焼鈍した後、4〜200℃/sの冷却速度で350〜600℃まで冷却し、次いで、この温度域で10秒以上、10分以下保持した後、溶融亜鉛めっきを施し、その後、5℃/s以上の冷却速度で250℃以下に冷却することにより、鋼板表面に、Al:1%以下および不可避不純物よりなるZnめっき層を形成することにより得られる。
なお、本発明では、4〜200℃/sの冷却速度で冷却する温度の下限を、実施例に基づき460℃とした。
【0034】
さらに、本発明鋼の合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、上記鋼組成を満足する冷延鋼板を、650〜850℃の二相共存温度域で10秒以上、10分以下焼鈍した後、4〜200℃/sの冷却速度で350〜500℃まで冷却し、その後、溶融亜鉛めっきを施し、450〜600℃の範囲の温度域で5秒以上、2分以下保持してから、5℃/s以上の冷却速度で250℃以下に冷却することにより、鋼板表面に、Fe:8〜15%、Al:1%以下および不可避不純物よりなるZn合金めっき層を形成することにより得られる。
【0035】
冷間圧延後の冷延鋼板の連続焼鈍では、まず、〔フェライト+オーステナイト〕の2相組織とするために、Ac1 変態点以上Ac3 変態点以下の温度域に加熱が行われる。このときに、加熱温度が650℃未満であると、セメンタイトが再固溶するのに時間がかかり過ぎ、オーステナイトの存在量もわずかになるので、加熱温度の下限は650℃とする。
【0036】
また、加熱温度が高すぎると、オーステナイトの体積率が大きくなり過ぎて、オーステナイト中のC濃度が低下するので、加熱温度の上限を850℃とする。
均熱時間としては、短かすぎると、未溶解炭化物が存在する可能性が高くなり、オーステナイトの存在量が少なくなる。また、均熱時間を長くすると、結晶粒が粗大になる可能性が高くなり、強度−延性バランスが悪くなる。よって、本発明の製造方法では、保持時間を10秒以上、10分以下とする。
【0037】
均熱後は、4〜200℃/sの冷却速度で350〜600℃まで冷却する。これは、二相共存温度域に加熱して生成させたオーステナイトを、パーライトに変態させることなくベイナイト変態域に持ち越し、引き続く処理により、室温では残留オーステナイトとベイナイトとして、所定の特性を得るためである。
この時の冷却速度が4℃/s未満であると、冷却中にオーステナイトの大部分がパーライト変態をしてしまい、残留オーステナイトが確保されないことになる。また、冷却速度が200℃/sを超えると、冷却終点温度が幅方向、長手方向で大きくずれてしまい、均一な鋼板を製造することができなくなる。
【0038】
この後、冷延鋼板と溶融亜鉛めっき鋼板を製造する際には、350〜600℃で、10秒以上、10分以下保持する。この際に、ベイナイト変態を進行させ炭化物をほとんど含まないベイナイト、その部分から掃き出されたCが濃化しMs点が室温以下に低下した残留オーステナイト、および、二相共存温度域に加熱中に清浄化が進んだフェライトが混在した組織を現出させ、高強度と成形性を両立させると同時に、Cuをフェライト中に微細析出させることにより、穴拡げ性と成形性が両立した高強度鋼板を得る。
【0039】
350℃未満の保持温度では、Cu粒子の微細析出量が十分でなく、良好な穴拡げ性を確保できないので、350℃以上の保持温度が必要である。一方、600℃を超える温度で保持すると、Cu粒子が粗大析出化し穴拡げ性と延性を劣化させるので、600℃以下で保持する必要がある。
また、保持時間が短い場合、ベイナイト変態が十分に進行しないので、Cが濃縮したオーステナイトを得ることができない。その結果、室温まで冷却した際に、オーステナイトの大半がマルテンサイトに変態するので、高強度にはなるものの、プレス成形性が悪化する。また、保持時間を長くすると、残留オーステナイトが分解し、炭化物を析出する。その結果、成形性が悪化する。以上の観点で、保持時間を、10秒以上、10分以下と規定する。
【0040】
溶融亜鉛めっき鋼板を製造する場合は、その後、溶融亜鉛めっきを行う。その後、5℃/s以上の冷却速度で250℃以下に冷却する。保持後の冷却速度を5℃未満としたり、冷却終点温度を250℃超とするとベイナイト変態がさらに進み、前段の反応でCの濃化したオーステナイトも炭化物を析出してベイナイトに分解するので、変態誘起塑性により加工性を改善する残留オーステナイトの量が減少してしまい、当初の目的を達し得ない。
【0041】
また、合金化溶融亜鉛めっき鋼板を製造する場合は、350〜500℃に冷却した後、溶融亜鉛めっきを行い、450〜600℃の温度域で5秒以上、2分以下保持し、その後、5℃/s以上の冷却速度で250℃以下に冷却する。冷却終点温度が低くなるとオーステナイトの大半がマルテンサイトに変態するので、高強度にはなるもののプレス成形性が悪化する。また、冷却終点温度を低くすると、Znめっき時に鋼板温度を上げる必要があり、余分の熱エネルギーを与える必要があるため非効率になる。
【0042】
一方、冷却終点温度が高くなると、溶融亜鉛めっきを行った際に鉄と亜鉛の合金化反応が激しく生じて、亜鉛めっき層の鉄%が高くなりすぎると同時に、めっき膜厚さの制御が困難になる。そのため、本発明の製造方法では、冷却終点温度を350〜500℃とした。
溶融亜鉛めっき後の保持温度とその後の冷却条件は、FeとZnの合金化反応と、組織的な観点から求まる。本発明の鋼板では、SiやAlが含まれているので、オーステナイトからベイナイトへの変態が二段階に分離することを活用し、炭化物をほとんど含まないベイナイト、その部分から掃き出されたCが濃化しMn点が室温以下に低下した残留オーステナイト、および、二相共存温度域に加熱中に清浄化が進んだフェライトが混在した組織を現出させ、高強度と成形性を両立させている。
【0043】
それと同時に、フェライト中に微細Cuを析出させることにより、優れた穴拡げ性を得ることも可能にしている。保持温度が600℃を超えると、パーライトが生成するために残留オーステナイトが含まれなくなり、また、合金化反応が進みすぎ、めっき中のFe濃度が15%を超えてしまうと同時に、Cu析出物が粗大化し穴拡げ性をも劣化させる。一方、加熱温度が450℃未満になると、めっきの合金化反応速度が遅くなり、めっき中のFe濃度が低くなる。また、保持時間が5秒未満では、ベイナイトが十分に生成せず、未変態のオーステナイト中へのC濃化も不充分となり、冷却中にマルテンサイトが生成し成形性が劣化すると同時に、めっきの合金化反応が不充分になる。また、保持時間が2分超になると、めっきの過合金化が生じ成型時にめっき剥離などが生じやすくなる。
【0044】
さらに、保持後の冷却速度を5℃未満としたり、冷却終点温度を250℃超としたりすると、ベイナイト変態がさらに進み、前段の反応でCの濃化したオーステナイトも炭化物を析出してベイナイトに分解し、変態誘起塑性により加工性を改善する残留オーステナイトの量が減少してしまうので、当初の目的を達し得ない。
【0045】
溶融Znめっき層としては、Al:1%以下と残部Znおよび不可避的不純物を含むものである。めっき中のAl含有率を1%以下にしたのは、Al含有率が1%を超えると、めっき中に偏析したAlが局部電池を構成し、耐食性が劣化すると同時に、Fe−Al合金層が顕著に発達し、めっき密着性が劣化するからである。
【0046】
また、Zn合金めっき層としては、Fe:8〜15%、Al:1%以下と残部Znおよび不可避的不純物からなるものである。めっき層中のFe含有率を8%以上としたのは、8%未満では、化成処理性(リン酸塩処理)塗膜密着性が良好となるためである。また、Fe含有率を15%以下としたのは、15%超では、過合金となり加工部のめっき密着性が劣化するからである。
【0047】
また、めっき中のAl含有率を1%以下にしたのは、Al含有率が1%を超えると、めっき中に偏析したAlが局部電池を構成し、耐食性が劣化すると同時に、Fe−Al合金層が顕著に発達し、めっき密着性が劣化するからである。
本発明でのZnめっき層およびZn合金めっき層は、以上のとおりであるが、その他、Mn、Pb、Fe、Sb、Ni、Cu、Sn、Co、Cd、Crなど不可避に混入する元素を含んでもよい。また、Mg、Caは、Znめっき時に鋼板表層の酸化物を還元し、めっき密着性を改善する効果を有するので、それぞれ、8%未満、1%未満含んでもよい。
【0048】
また、場合によっては、合金化溶融亜鉛めっき鋼板を製造する際に、溶融亜鉛めっきを行う前に、350〜500℃の範囲内で10分以下保持してもよい。Znめっき前に温度保持をすることで、ベイナイト変態を進行させ、Cの濃縮した残留オーステナイトを安定化させることができ、より安定して、強度、伸びの両立した鋼板を製造することができる。この時、保持時間が10分を超えると、Znめっき後の加熱で炭化物析出と未変態オーステナイトの消失による、強度とプレス成形性両方の劣化が起きるので、保持時間は10分以下が望ましい。
【0049】
溶融亜鉛めっき温度は、めっき浴の融点以上500℃以下が望ましい。500℃超になると、めっき浴からの蒸気が多量になり、操業性が悪化する。めっき後の保持温度までの加熱速度については、特に規定する必要はないが、めっき組織や金属組織の観点から、3℃/s以上が望ましい。
また、Zn合金めっき層厚みについては、特に制約を設けないが、耐食性の観点から、0.1μm以上、加工性の観点からすると、15μm以下であることが望ましい。
【0050】
冷延鋼板、溶融亜鉛めっき鋼板、合金化溶融亜鉛めっき鋼板の素材は、通常の製鉄工程である精錬、鋳造、熱延、冷延工程を経て製造させるものを原則とするが、その一部あるいは全部を省略して製造した素材でも本発明の趣旨を損なうものではない。
なお、以上説明した工程における各温度、冷却温度は規定の範囲内であれば、一定である必要はなく、その範囲内で変動したとしても最終製品の特性はなんら劣化しないし、向上する場合もある。
【0051】
また、めっき密着性をさらに向上させるために、鋼板焼鈍時の雰囲気を調節し、初めは鋼板表面を酸化させ、その後に還元することにより、めっき前の鋼板表面の清浄化を行ってもよい。さらに、めっき密着性を改善するために、焼鈍前に鋼板を酸洗あるいは研削することで鋼板表面の酸化物を取り除いても問題はない。これら処理をすることで、めっき密着性がさらに向上する。
【0052】
【実施例】
〔実施例1〕
表1に示す成分組成を有する鋼を転炉溶製した後、連続鋳造にてスラブとし、表2に示す製造条件で熱間圧延を行い、熱延鋼板を製造した。製造した熱延鋼板については、下記に示す「引張り試験」、「穴拡げ性試験」、「フェライト相硬度試験」、「残留オーステナイト測定試験」、「溶接試験」、および、「Cu析出物観察」を行った。ここで、加熱時の在炉温度は200分、均熱時間は60分とした。また、製造した熱延鋼板の板厚は2mmとした。
【0053】
「引張り試験」は、JIS5号引張試験片を採取し、ゲージ厚さ50mm、引張り速度10mm/min で、常温引張り試験を行った。
「穴拡げ性試験」は、20mmの打ち抜き穴をバリのない面から30円錐ポンチで押し拡げて行った。その結果を、クラックが板厚を貫通した時点での穴径(d)と初期穴径(d0 :20mm)との比d/d0 で示した。
【0054】
「フェライト相硬度」は、ビッカース硬さ試験で、対面角が136度のダイヤモンド四角すい圧子を用い、試験荷重500gで測定を行った。
「残留オーステナイト測定試験」は、表層より板厚の1/4内層を化学研磨後、Mo管球を用いたX線回析でα−Feとγ−Feの強度から求める5ピーク法と呼ばれる方法で行った。
【0055】
「溶接試験」は、溶接電流:10kA、加圧力:220kg、溶接時間:12サイクル、電極径:6mm、電極形状:ドーム型、先端6φ−40Rの溶接条件でスポット溶接を行い、ナゲット径が4√t(t:板厚)を切った時点までの連続打点数を評価した。評価基準は○:連続打点1000点超、△:連続打点500〜1000点、×:連続打点500点未満とした。ここでは、○を合格とし、△・×は不合格とした。
【0056】
「Cu析出物観察」は、SPEED法により得られた抽出レプリカ法を透過型電子顕微鏡(TEM)にて観察した。観察は、20000倍で10視野観察した。各視野は2.7μm×4μmである。各視野でCu析出物の直径及び数を測定し、0.1μm以下のCu析出量の質量%を算出した。
性能評価試験結果を表3に示す。本発明である試料1、3〜6、8〜10は残留オーステナイトが2〜20%で550MPa 以上でありながら、全伸びも30%以上であり、また、穴拡げ比も1.3を超えており、高強度とプレス成形性、穴拡げ性の良好さを両立していると同時に、溶接性も満足した熱延鋼板である。
【0057】
それに対し、試料11はC濃度が低いために、試料12はC濃度が高いために、試料13はSi濃度が低いために、試料14はSi濃度が高いために、試料15はMn濃度が低いために、試料16はMn濃度が高いために、試料17はAl濃度が高いために、試料18はCu濃度が低いために、試料19はCu濃度が高いために、高強度と成形性、穴拡げ性、残留オーステナイト量、フェライト相硬度、溶接性を全ては満足してはおらず、本発明の目的を達し得ない。
【0058】
また、本発明の鋼板であっても、処理条件の一つに問題があると、試料20〜22のように高強度と成形性、穴拡げ性、残留オーステナイト量、フェライト相硬度、溶接性を全ては満足してはおらず、本発明の目的を達し得ない。
【0059】
【表1】
【0060】
【表2】
【0061】
【表3】
【0062】
〔実施例2〕
表1に示す成分組成を有する鋼を転炉溶製した後、連続鋳造にてスラブとし、その後、加熱温度1200℃、在炉時間200分、仕上げ圧延終了温度880℃、巻き取り温度600℃で熱間圧延をし、4mmの熱延鋼板を得た。その後、酸洗、冷延し1.4mmの素材を得た。その後、表4に示す製造条件で焼鈍を行い、冷延鋼板を製造した。
【0063】
製造した冷延鋼板については、実施例1の場合と同じ手法により、「引張り試験」、「穴拡げ性試験」、「フェライト相硬度」、「残留オーステナイト測定試験」、「溶接試験」および、「Cu析出物観察」を行った。
性能評価試験結果を表5に示す。本発明である試料23、24、28〜30、32は残留オーステナイトが2〜20%で550MPa 以上でありながら、全伸びも30%以上であり、また、穴拡げ比も1.3を超えており、高強度とプレス成形性、穴拡げ性の良好さを両立していると同時に、溶接性も満足した冷延鋼板である。
【0064】
それに対し、試料33はC濃度が低いために、試料34はC濃度が高いために、試料35はSi濃度が低いために、試料36はSi濃度が高いために、試料37はMn濃度が低いために、試料38はMn濃度が高いために、試料39はAl濃度が高いために、試料40はCu濃度が低いために、試料41はCu濃度が高いために、高強度と成形性、穴拡げ性、残留オーステナイト量、フェライト相硬度、溶接性を全ては満足してはおらず、本発明の目的を達し得ない。
【0065】
また、本発明鋼であっても処理条件の一つに問題があると、試料42〜52のように高強度と成形性、穴拡げ性、残留オーステナイト量、フェライト相硬度、溶接性を全ては満足してはおらず、本発明の目的を達し得ない。
【0066】
【表4】
【0067】
【表5】
【0068】
〔実施例3〕
表1に示す成分組成を有する鋼を転炉溶製した後、連続鋳造にてスラブとし、その後、加熱温度1200℃、在炉時間200分、仕上げ圧延終了温度880℃、巻き取り温度600℃で熱間圧延をし、4mmの熱延鋼板を得た。その後、酸洗、冷延し1.4mmの素材を得た。その後、表6に示す製造条件で焼鈍および溶融亜鉛めっきを行い、溶融亜鉛めっき鋼板を製造した。ここで、溶融亜鉛めっきの浴温は460℃とした。製造した溶融亜鉛めっき鋼板については、実施例1、および、実施例2の場合と同じ手法により、「引張り試験」、「穴拡げ性試験」、「フェライト相硬度」、「残留オーステナイト測定試験」、「溶接試験」、および「Cu析出物観察」を行った。さらに、「メッキ密着性」および、「メッキ層中濃度測定」の試験を行った。
【0069】
「メッキ密着性」は、メッキ鋼板の60度V曲げ試験を実施後、テープテストを行い、以下の基準に従い評価した。
テープテスト黒化度(%)
評価:◎ … 0〜10
評価:○ … 10〜20未満
評価:△ … 20〜30未満
評価:× … 30以上
(◎と○が合格、△・×は不合格)
「メッキ層中濃度測定」は、アミン系インヒビターを入れた5%塩酸でメッキ層を溶かした後、ICP発光分析法で測定した。
【0070】
性能評価試験結果を表7に示す。本発明である試料53、54、58〜60、62は残留オーステナイトが2〜20%で550MPa 以上でありながら全伸びも30%以上であり、また、穴拡げ比も1.3を超えており、高強度とプレス成形性、穴拡げ性の良好さを両立していると同時に、溶接性、めっき性も満足した溶融亜鉛めっき鋼板である。
【0071】
それに対し、試料63はC濃度が低いために、試料64はC濃度が高いために、試料65はSi濃度が低いために、試料66はSi濃度が高いために、試料67はMn濃度が低いために、試料68はMn濃度が高いために、試料69はAl濃度が高いために、試料70はCu濃度が低いために、試料71はCu濃度が高いために、高強度と成形性、穴拡げ性、残留オーステナイト量、フェライト相硬度、溶接性、めっき性を全ては満足してはおらず、本発明の目的を達し得ない。
【0072】
また、本発明鋼であっても処理条件の一つに問題があると、試料72〜83のように高強度と成形性、穴拡げ性、残留オーステナイト量、フェライト相硬度、溶接性、めっき性を全ては満足してはおらず、本発明の目的を達し得ない。
【0073】
【表6】
【0074】
【表7】
【0075】
〔実施例4〕
表1に示す成分組成を有する鋼を転炉溶製した後、連続鋳造にてスラブとし、その後、加熱温度1200℃、在炉時間200分、仕上げ圧延終了温度880℃、巻き取り温度600℃で熱間圧延をし4mmの熱延鋼板を得た。その後、酸洗、冷延し1.4mmの素材を得た。その後、表8に示す製造条件で焼鈍および溶融亜鉛めっき、合金化処理を行い、合金化溶融亜鉛めっき鋼板を製造した。ここで、溶融亜鉛めっきの浴温は460℃とした。製造した合金化溶融亜鉛めっき鋼板については、実施例3の場合と同じ手法により、「引張り試験」、「穴拡げ性試験」、「フェライト相硬度」、「残留オーステナイト測定試験」、「溶接試験」、「Cu析出物観察」、「メッキ密着性」、および、「メッキ層中濃度測定」を行った。
【0076】
性能評価試験結果を表9に示す。本発明である試料84〜93は残留オーステナイトが2〜20%で550MPa 以上でありながら全伸びも30%以上であり、また、穴拡げ比も1.3を超えており、高強度とプレス成形性、穴拡げ性の良好さを両立していると同時に、溶接性も満足した合金化溶融亜鉛めっき鋼板である。
【0077】
それに対し、試料94はC濃度が低いために、試料95はC濃度が高いために、試料96はSi濃度が低いために、試料97はSi濃度が高いために、試料98はMn濃度が低いために、試料99はMn濃度が高いために、試料100はAl濃度が高いために、試料101はCu濃度が低いために、試料102はCu濃度が高いために、高強度と成形性、穴拡げ性、残留オーステナイト量、フェライト相硬度、溶接性を全ては満足してはおらず、本発明の目的を達し得ない。
【0078】
また、本発明鋼であっても処理条件の一つに問題があると、試料103〜118のように高強度と成形性、穴拡げ性、残留オーステナイト量、フェライト相硬度、溶接性を全ては満足してはおらず、本発明の目的を達し得ない。
【0079】
【表8】
【0080】
【表9】
【0081】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、高強度でありながら良好な成形性と穴拡げ性を両立することができるので、鋼板利用者側からの新たな要求に十分答え得るものであり、産業上有益なところが極めて大である。
【図面の簡単な説明】
【図1】フェライトの硬度Hvと穴拡げ率および全伸びElとの関係を示す図である。
Claims (11)
- 質量%で、
C :0.05%以上、0.2%以下、
Si:0.5%以上、2.5%以下、
Al:0.01%以上、2.5%以下、
S :0.01%以下、
P :0.03%未満、
Cu:0.5%以上、2.5%以下、
Mn:0.5%以上、3.0%以下
を含有し、残部Fe及び不可避不純物からなり、0.1μm以下の大きさのCu析出量が0.2質量%以上であり、フェライト相の硬度がHvで150以上、240以下であるとともに、鋼組織中の残留オーステナイトの体積率が2〜20%であることを特徴とする成形性並びに穴拡げ性に優れた高強度熱延鋼板。 - 更に、質量%で、Ni:2.0%未満、Mo:0.2%未満、Cr:1.0%未満、V:0.3%未満、B:0.01%未満、Ti:0.06%未満、Nb:0.06%未満、Ca:0.05%未満、および、Mg:0.05%未満のうち少なくとも1種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の成形性並びに穴拡げ性に優れた高強度熱延鋼板。
- 質量%で、
C :0.05%以上、0.2%以下、
Si:0.5%以上、2.5%以下、
Al:0.01%以上、2.5%以下、
S :0.01%以下、
P :0.03%未満、
Cu:0.5%以上、2.5%以下、
Mn:0.5%以上、3.0%以下
を含有し、残部Fe及び不可避不純物からなり、0.1μm以下の大きさのCu析出量が0.2質量%以上であり、フェライト相の硬度がHvで150以上、240以下であるとともに、鋼組織中の残留オーステナイトの体積率が2〜20%であることを特徴とする成形性並びに穴拡げ性に優れた高強度冷延鋼板。 - 更に、質量%で、Ni:2.0%未満、Mo:0.2%未満、Cr:1.0%未満、V:0.3%未満、B:0.01%未満、Ti:0.06%未満、Nb:0.06%未満、Ca:0.05%未満、および、Mg:0.05%未満のうち少なくとも1種以上を含有することを特徴とする請求項3に記載の成形性並びに穴拡げ性に優れた高強度冷延鋼板。
- 請求項3または4に記載の冷延鋼板の表面に、溶融亜鉛めっきが施されていることを特徴とする成形性並びに穴拡げ性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
- 請求項3または4に記載の冷延鋼板の表面に、合金化溶融亜鉛めっきが施されていることを特徴とする成形性並びに穴拡げ性に優れた高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板。
- 請求項1または2に記載の鋼組成を満足する鋼を、800℃以上の温度で熱間圧延を終了した後、460〜600℃で巻き取ることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の成形性並びに穴拡げ性に優れた高強度熱延鋼板の製造方法。
- 請求項3または4に記載の鋼組成を満足する冷延鋼板を、650〜850℃の二相共存温度域で10秒以上、10分以下焼鈍した後、4〜200℃/sの冷却速度で460〜600℃まで冷却し、次いで、この温度域で10秒以上、10分以下保持した後、5℃/s以上の冷却速度で250℃以下に冷却することを特徴とする請求項3または4に記載の成形性並びに穴拡げ性に優れた高強度冷延鋼板の製造方法。
- 請求項3または4に記載の鋼組成を満足する冷延鋼板を、650〜850℃の二相共存温度域で10秒以上、10分以下焼鈍した後、4〜200℃/sの冷却速度で460〜600℃まで冷却し、次いで、この温度域で10秒以上、10分以下保持した後、溶融亜鉛めっきを施し、その後、5℃/s以上の冷却速度で250℃以下に冷却することにより、鋼板表面に、Al:1%以下および不可避不純物よりなるZnめっき層を形成することを特徴とする請求項5に記載の成形性並びに穴拡げ性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
- 請求項3または4に記載の鋼組成を満足する冷延鋼板を、650〜850℃の二相共存温度域で10秒以上、10分以下焼鈍した後、4〜200℃/sの冷却速度で350〜500℃まで冷却し、その後、溶融亜鉛めっきを施し、450〜600℃の範囲の温度域で5秒以上、2分以下保持してから、5℃/s以上の冷却速度で250℃以下に冷却することにより、鋼板表面に、Fe:8〜15%、Al:1%以下および不可避不純物よりなるZn合金めっき層を形成することを特徴とする請求項6に記載の成形性並びに穴拡げ性に優れた高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
- 前記溶融亜鉛めっきを行う前に、350〜500℃の温度域で10分以下保持することを特徴とする請求項10に記載の成形性並びに穴拡げ性に優れた高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
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