本発明は、ディジタル放送を受信するディジタル放送受信装置に関する。
アナログ放送に代わる新たな放送メディアとして、ディジタルラジオ放送やディジタルテレビ放送が開始されている。一方、これらのディジタル放送を受信するディジタル放送受信装置側では、フェージングや電波強度の低下等により放送波の電波状態が劣化した場合でも、受信信号を復調等する際に誤り訂正処理を行うことにより、高品質の映像や音声等を再生してユーザに提供することを可能にしている。
ところが、ディジタル放送の特徴として、ディジタル放送受信装置が放送波を受信中に、電波状態が劣化した場合、誤り訂正能力の限界に達するまでは、映像や音声等の品質劣化を抑制することが可能であるが、誤り訂正能力の限界点を超えると、映像や音声等の品質が急激に劣化する、いわゆる崖効果と呼ばれる現象が生じることが問題となっている。
そこで、このような崖効果の影響を回避し、映像や音声等の品質劣化を防止するため、特許2001−217735号公報に開示された放送受信装置が提案されている。
この放送受信装置は、同一番組から成るディジタル放送信号とアナログ放送信号とが周波数分割多重化されたサイマルテレビ放送を受信するサイマル放送受信装置であり、ディジタル放送信号を受信中に、ビット誤り率(BER:Bit Error Rate)を監視し、そのビット誤り率が所定の限界点に達すると、アナログ放送信号に切り替えて受信することで、映像や音声等の品質の急減な劣化を防止するようにしている。すなわち、アナログ放送信号に切り替えると、良好な受信状態の下でディジタル放送信号を受信する場合に較べて映像や音声等の品質が低下することとなるが、崖効果の影響を回避することができ、放送番組を継続して受信することを可能にしている。
ところが、上記従来の放送受信装置では、ビット誤り率が所定の限界点に達したことを検出した場合に、ディジタル放送信号からアナログ放送信号への迅速な受信切り替えを行うことができず、また、アナログ放送信号への切り替えに際して歪みやノイズが混入するという問題がある。
また、上記従来の放送受信装置は、サイマルテレビ放送のように、ディジタル放送による放送番組とアナログ放送による放送番組が周波数分割多重化されて同時に送られてきた場合に限られるものであり、ディジタル放送による番組間での受信切り替えを行うことができないという問題がある。
本発明はこうした従来の課題に鑑みてなされたものであり、例えば受信状態が劣化したような場合に、ディジタル放送による番組間での受信切り替えを行うことにより、番組を良好な品質の下で継続して再生することを可能にするディジタル放送受信装置及びその受信方法を提供することを目的とする。
また、迅速な受信切り替えを行うことを可能にするディジタル放送受信装置及びその受信方法を提供することを目的とする。
請求項1に記載の発明は、同じ内容でビットレートの異なる高ビットレートの番組のデータと低ビットレートの番組のデータとを、夫々複数のパケットデータに分割し、時分割多重化したストリームデータにして伝送されてくる放送波を受信するディジタル放送受信装置であって、前記放送波を受信する受信手段と、前記受信手段から出力される受信信号に基づいて、前記ストリームデータを復調してトランスポートストリーム(以下、TSという)を復元すると共に、復調をするに際しエラーのあるトランスポートストリームパケット(以下、TSPという)にエラーパケットマークデータを付す復調手段と、前記復調されたTSを前記ビットレートの異なる番組毎のパケッタイズドエレメンタリストリーム(以下、PESという)に情報分離すると共に、前記エラーパケットマークデータを検出して前記エラーパケットマークデータをPESに付したまま前記PESを出力し、前記エラーパケットマークデータに関連するPESを識別するための第1エラーデータを出力する情報分離手段と、前記情報分離された音声または映像に関するPESを前記ビットレートの異なる番組間で同期を取ってデコードすると共に、前記エラーパケットマークデータを検出し、前記エラーパケットマークが付されている音声または映像に関するPESをデコードする直前に、前記エラーパケットマークデータが付されている前記音声または映像に関するPESを識別するための第2エラーデータを出力するデコーダ手段と、受信選択された番組の前記デコーダ手段によってデコードされたデータを出力する出力手段と、前記情報分離手段から前記高ビットレートの番組のPESに関連する第1エラーデータが出力された場合に、前記第1エラーデータに基づきエラーを有するPESを特定し、前記特定されたPESに関連する前記第2エラーデータが前記デコーダ手段から出力されるに従い、前記エラーを有するPESがデコードされたデータを、前記低ビットレートの番組のPESがデコードされたデータに切替えて出力するように、前記出力手段を制御するエラー判別手段と、を具備することを特徴とする。
請求項6に記載の発明は、同じ内容でビットレートの異なる高ビットレートの番組のデータと低ビットレートの番組のデータとを、夫々複数のパケットデータに分割し、時分割多重化したストリームデータにして伝送されてくる放送波を受信するディジタル放送受信装置における受信方法であって、前記放送波を受信する受信工程と、前記受信工程で受信した受信信号に基づいて、前記ストリームデータを復調して、TSを復元すると共に、復調をするに際しエラーのあるTSPにエラーパケットマークデータを付す復調工程と、前記復調されたTSを前記ビットレートの異なる番組毎のPESに情報分離すると共に、前記エラーパケットマークデータを検出して前記エラーパケットマークデータをPESに付したまま前記PESを出力し、前記エラーパケットマークデータに関連するPESを識別するための第1エラーデータを出力する情報分離工程と、前記情報分離された音声または映像に関するPESを前記ビットレートの異なる番組間で同期を取ってデコードすると共に、前記エラーパケットマークデータを検出し、前記エラーパケットマークが付されている音声または映像に関するPESをデコードする直前に、前記エラーパケットマークデータが付されている前記音声または映像に関するPESを識別するための第2エラーデータを出力するデコーダ工程と、受信選択された番組の前記デコーダ工程によってデコードされたデータを出力する出力工程と、前記情報分離工程によって前記高ビットレートの番組のPESに関連する第1エラーデータが出力された場合に、前記第1エラーデータに基づきエラーを有するPESを特定し、前記特定されたPESに関連する前記第2エラーデータが前記デコーダ工程によって出力されるに従い、前記エラーを有するPESがデコードされたデータを、前記低ビットレートの番組のPESがデコードされたデータに切替えて出力するように、前記出力工程を制御するエラー判別工程と、を具備することを特徴とする。
本発明の実施の形態に係るディジタル放送受信装置について図1を参照して説明する。図1(a)は、本実施形態のディジタル放送受信装置の構成を表したブロック図である。
同図(a)において、このディジタル放送受信装置1は、地上ディジタル放送を受信する受信装置であり、到来電波を受信するアンテナANTが接続された受信部2と、復調及びエラー訂正部3と、情報分離部4、デコーダ部5、出力部6、エラー判別部7とを有して構成されている。
ここで、このディジタル放送受信装置1の個々の構成を説明する前に、放送局側から伝送されてくる地上波ディジタル放送について、図2及び図3を参照して概説することとする。
地上ディジタル放送では、MPEG-2でエンコード(符号化)された映像や音声、データ等の多チャンネルの番組(コンテンツ)を1つのストリームとしてまとめて多重伝送することを可能にするMPEG-2 TS(Transport Stream)が用いられ、更に、MPEG-2 TSを伝送するための伝送路符号化方式として、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)方式が採用されている。
まず、図2を参照して、MPEG-2 TS(以下「トランスポートストリーム」という)について説明する。
トランスポートストリーム(TS)は、トランスポートストリームパケット(TSP:Transuport Stream Packet)と呼ばれる固定長(188バイト)のパケットデータが複数個集まって構成されている。
各トランスポートストリームパケット(TSP)は、固定長のTSヘッダ(Transuport Stream header)と、それに続く可変長のアダプテーションフィールド(adaptation field)及びTSペイロード(Transuport Stream payload)を有して構成され、各TSペイロードは、PESヘッダ(Packetized Elementary Stream header)と、それに続くPESペイロード(Packetized Elementary Stream payload)とから成るPESパケット(Packetized Elementary Stream packet)で構成されるようになっている。
そして、放送局側と受信装置側とで基本クロックを合わせるためのプログラムクロックリファレンス(PCR:Program Clock Referennce)と呼ばれるクロックデータをアダプテーションフィールド中に伝送すると共に、映像符号化方式としてのMPEG-2 Videoで符号化された映像や、音声符号化方式としてのMPEG-2 AAC(Advanced Audio Coding)で符号化された音声等のエレメンタリストリーム(ES:Elementary Stream)をパケッタイズドエレメンタリストリーム(PES:Packetized Elementary Stream)と呼ばれるパケットデータに分割し、PESペイロード中に伝送するようになっている。
更に、PESヘッダには、PESペイロード中に伝送されるパケッタイズドエレメンタリストリーム(PES)を識別するための識別子(Stream ID)やパケットサイズ、受信装置側で同期再生を行うための時間情報、その他の制御情報が記述されて伝送され、TSヘッダには、トランスポートストリームパケット(TSP)の種類を識別するための識別子(PID)や各種フラグが記述されて伝送されるようになっている。
更に、トランスポートストリームは、多チャンネルのコンテンツを多重伝送することが可能であるため、各チャンネルと映像や音声等のパケッタイズドエレメンタリストリーム(PES)との関係を表すための記述子から成るテーブル情報が規定されている。
このテーブル情報は、プログラムスペシフィケーションインフォメーション(PSI:Program Specification Information)と呼ばれ、プログラムアソシエーションテーブル(PAT:Program Association Table)、プログラムマップテーブル(PMT:Program Mapped Table)等の計4種類が規定され、セクションと呼ばれる単位で、トランスポートストリームパケット(TSP)中のTSペイロードに配置されて伝送されるようになっている。
そして、プログラムアソシエーションテーブル(PAT)に、プログラムマップテーブル(PMT)を識別するための識別子(PID)等を記述し、プログラムマップテーブル(PMT)に、各チャンネルの構成と、各チャンネルに対応する映像や音声等のストリームを識別するための識別子(PID)等を記述して、放送局側から受信装置側へ伝送すると、受信装置側では、プログラムアソシエーションテーブル(PAT)とプログラムマップテーブル(PMT)に記述されている上述の識別子等の内容を参照することにより、例えばユーザから選択指定されたチャンネルに関連するトランスポートストリームパケット(TSP)を抽出して、所定のデコード処理を行うことで映像再生や音楽再生を行えるようになっている。
次に、地上波ディジタル放送における伝送路符号化方式について、図3に模式的に示す系統図を参照して説明する。
放送局側では、ティジタル放送を伝送するに際して、上述のトランスポートストリーム(TS)を作成した後、各トランスポートストリームパケット(TSP)に誤り訂正符号(リードソロモン符号)を付加することで外符号符号化を行い、所定スロット数のフレームへマッピングすると共に、所定フレーム数を単位とするスーパーフレームを構成し、次に、スロット位置毎にバイトインターリーブを行って、畳み込み符号による内符号符号化を施し、DQPSK、QPSK、16QAM、64QAMの中から選択した変調方式でディジタル変調を行う。
ここで、例えば同一内容の番組を高ビットレートと低ビットレートとで階層化伝送する場合、図3に示すように、上述の外符号符号化後にトランスポートストリームパケット(TSP)単位で分割(階層分離)し、上述のバイトインターリーブと内符号符号化及びディジタル変調の処理を並列的に行う。
次に、階層化伝送の場合には、並列処理された各階層のビットレートが異なることから、ディジタル変調した各変調信号に対してシンボル単位で速度変換を施して階層合成を行った後、マルチパスに対するエラー耐性の向上等を図るべく、時間インターリーブと周波数インターリーブを施し、更にIFFT(逆フーリエ変換)を行うことによってOFDM変調波を生成し、更にガードインターバルを付加して直交変調することによりOFDM波(ディジタル放送波)を生成して送信アンテナから送信する。
そして、受信装置側でティジタル放送波を受信し、図3に示した逆の処理、すなわち直交復調、FFT処理及びティジタル復調等を行うことによって復調信号を生成すると共に、その復調信号について内符号復号化、デインターリーブ及び外符号復号化等の処理を行うことにより、トランスポートストリーム(MPEG-2 TS)を復元し、更にパケッタイズドエレメンタリストリーム(PES)をデコードすると、映像や音声等の放送局側送られてきたコンテンツを再生することができるようになっている。
再び図1(a)を参照して、本実施形態の受信装置1の各構成を説明する。
受信部2は、到来電波を受信するアンテナANTから出力される高周波信号を、ユーザが受信選択した放送局に相当する局部発信周波数に基づいて同調受信することによって周波数変換し、その周波数変換信号をティジタル信号処理が可能なティジタルデータ列から成る周波数変換信号(以下「受信信号」という)DifにA/D変換して出力する。
復調及びエラー訂正部3は、受信信号Difを復調等することにより、トランスポートストリームDtsを復元するための処理を行う。
すなわち、復調及びエラー訂正部3は、受信信号Difに含まれているガードインターバルに基づいて同期を取った後、フーリエ変換を行って周波数デインタリーブと時間デインターリブを行うことで復調信号を生成し、更にその復調信号についてビタビ復号による誤り訂正(内符号復号化)処理を行って、バイトデインタリーブを行った後、更にリードソロモン復号による誤り訂正(外符号復号化)処理を行うことで、トランスポートストリームDtsを復元する。
更に、復調及びエラー訂正部3では、上述の内符号復号化と外符号復号化処理による誤り訂正処理に際して、トランスポートストリームパケット(TSP)単位でビット誤り率(BER:Bit Error Rate)を検出し、検出したビット誤り率BERが所定の閾値を超える悪い結果となった場合に、そのトランスポートストリームパケット(TSP)に、エラーパケットであることを示すエラーパケットマークデータERを付して情報分離部4側へ出力する。
情報分離部4は、トランスポートストリームDtsをデマルチプレクスすることにより、映像や音声等のコンテンツ毎のパケッタイズドエレメンタリストリーム(PES)に分離してデコーダ部5へ出力する。
更に、情報分離部4では、デマルチプレクスの際に、エラーパケットマークデータERの有無を検出する。そして、エラーパケットマークデータERを検出すると、そのエラーパケットマークデータERをパケッタイズドエレメンタリストリーム(PES)に付したままデコーダ部5へ出力すると共に、そのエラーパケットマークデータERに関連しているパケッタイズドエレメンタリストリーム(PES)を識別するための第1エラーデータER1をエラー判別部7へ出力する。
デコーダ部5は、情報分離部4から供給されるパケッタイズドエレメンタリストリーム(PES)をコンテンツ毎にデコードし、放送局側で送信した元の映像や音声等のティジタル信号に戻して出力する。
更に、デコーダ部5は、ユーザ等が選局した放送が高ビットレートの音楽番組(例えば、5.1チャンネルの高品質の音楽番組)と低ビットレートの音楽番組(例えば、フェージング等に強い移動受信が可能な2チャンネルの音楽番組)として同時放送されている場合、図1(a)に例示するように、情報分離部4から高ビットレートの音楽番組に関するパケッタイズドエレメンタリストリームDpaと、低ビットレートの音楽番組に関するパケッタイズドエレメンタリストリームDpbが供給されることとなる。
このように、同一内容であるがビットレートの異なる番組のパケッタイズドエレメンタリストリームDpa,Dpbが供給されると、デコーダ部5は、パケッタイズドエレメンタリストリームDpaをデコードすることにより、高品質の音楽再生等を可能にするティジタル信号Daを生成すると共に、パケッタイズドエレメンタリストリームDpbをデコードすることにより、フェージング等に強い移動受信が可能なディジタル信号Dbを生成して出力する。
更に、デコーダ部5は、各々のパケッタイズドエレメンタリストリームDpa,Dpbについてデコード処理を開始する直前に、エラーパケットマークデータERの有無を検出する。そして、エラーパケットマークデータERを検出すると、そのエラーパケットマークデータERが付されていたパケッタイズドエレメンタリストリームDpa又はDpbを識別するための第2エラーデータER2をエラー判別部7へ出力する。
出力部6は、アナログスイッチ等で形成されており、上述したように、ユーザ等が選局した放送が高ビットレートと低ビットレートの同一内容の音楽番組であった場合、エラー判別部7からの切替え制御信号CNTに指示に従って、高ビットレート側のディジタル信号Daを優先して出力すべく切替え動作する。更に、高ビットレート側のディジタル信号Daを出力している際に、低ビットレート側のディジタル信号Dbを出力すべく、エラー判別部7からの切替え制御信号CNTによって指示がなされると、出力部6は、切替え動作を行ってディジタル信号Dbを出力する。
エラー判別部7は、上述したように、ユーザ等が選局した放送が同一内容の高ビットレートと低ビットレートの音楽番組であった場合、高ビットレート側のパケッタイズドエレメンタリストリームDpaに関連する第1,第2エラーデータER1,ER2が情報分離部4とデコーダ部5から供給されたか逐一監視する。そして、第1,第2エラーデータER1,ER2が供給されない期間では、切替え制御信号CNTによって出力部6を切替え制御することにより、高ビットレート側のディジタル信号Daを出力させる。
一方、高ビットレート側のパケッタイズドエレメンタリストリームDpaに関連する第1,第2エラーデータER1,ER2が供給されると、エラー判別部7は、情報分離部4から先に供給される第1エラーデータER1に基づいて、エラーを有するパケッタイズドエレメンタリストリームDpaを特定しておき、次にデコーダ部5からそのパケッタイズドエレメンタリストリームDpaに関する第2エラーデータER2が供給されると、切替え制御信号CNTによって出力部6を切替え制御することにより、低ビットレート側のディジタル信号Dbを出力させる。
すなわち、デコーダ部5が情報分離部4から各々のパケッタイズドエレメンタリストリームDpa,Dpbを入力してデコード処理を開始するまでに、いわゆるバッファリング等を行うことで時間遅延を生じることとなるため、エラー判別部7は、第1エラーデータER1に基づいて予めエラーを有するパケッタイズドエレメンタリストリームDpaを特定しておき、そのパケッタイズドエレメンタリストリームDpaがデコード処理される直前に第2エラーデータER2が供給されると、迅速に出力部6を切替え制御することにより、パケッタイズドエレメンタリストリームDpbがデコード処理されて生じるディジタル信号Dbを出力させる。
そして、高ビットレート側のパケッタイズドエレメンタリストリームDpaに関する第1,第2エラーデータER1,ER2が供給されなくなると、エラー判別部7は、再び出力部6を切替え制御することにより、高ビットレート側のディジタル信号Daの出力に切り替えさせる。
以上説明したように、本実施形態のディジタル放送受信装置によれば、ビットレートの異なる同一内容の音楽番組等を受信する際、高ビットレートの番組を優先していわゆる受信再生を行い、その高ビットレートの番組を構成しているパケッタイズドエレメンタリストリームDpaにエラーがあることを検出すると、低ビットレートの番組を構成しているパケッタイズドエレメンタリストリームDpbに切り替えて自動的に受信再生を行うことにより、大幅な品質劣化を生じることなくその音楽番組等を継続して受信再生することができる。
すなわち、図1(b)(c)に例示するように、高ビットレート側のパケッタイズドエレメンタリストリームDpa(j-1)〜Dpa(j+6)…のうち、Dpa(j+1)とDpa(j+5)にエラーが生じており、低ビットレート側のパケッタイズドエレメンタリストリームDpb(k-1)〜Dpb(k+6)…にはエラーが生じていなかった場合、エラー判別部7の制御下で出力部6が切り替え動作を行うことにより、図1(d)に例示するように、エラーを有するパケッタイズドエレメンタリストリームDpa(j+1)とDpa(j+5)に代えて、低ビットレート側のパケッタイズドエレメンタリストリームDpb(k+1)とDpb(k+5)に基づいてデコードされたデジタル信号Db(k+1)とDpb(k+5)が出力信号Doutとして出力される。
したがって、この出力信号DoutをD/A変換等してスピーカに供給することで、大幅な品質劣化を生じることなく同一内容の音楽番組等を継続して再生させ、ユーザ等に提供することが可能である。
更に、デコーダ部5がエラーを有する高ビットレート側のパケッタイズドエレメンタリストリームDpaをデコード処理する前に、エラー判別部7が第1エラーデータER1に基づいて、そのパケッタイズドエレメンタリストリームDpaを特定しておき、そのパケッタイズドエレメンタリストリームDpaがデコード処理される直前で第2エラーデータER2が供給されるのに従って出力部6を切り替え制御するので、極めて迅速に切り替え制御を行うことができる。このため、エラーを有するパケッタイズドエレメンタリストリームDpaに基づいてデコード処理されたエラーを有するディジタル信号を出力してしまうといった問題の発生を未然に防止することができ、品質の良好な音楽等を継続して再生することができる。
更に、パケッタイズドエレメンタリストリーム単位での切り替えを行うことが可能であるため、例えば音楽番組等を受信再生中に、再生音の欠落が生じるといった問題の発生も未然に防止することができ、品質の良好な音楽等を継続して再生することができる。
更に、高ビットレート側のパケッタイズドエレメンタリストリームを優先的に受信再生し、エラーが生じると低ビットレート側のパケッタイズドエレメンタリストリームを受信再生するように切り替わることとなるため、従来問題となっていた崖効果の影響を、ディジタル放送番組間における切り替えにおいても回避することができる。
次に、上述した実施形態に係るより具体的な実施例について図4及び図5を参照して説明する。図4は、本実施例のディジタル放送受信装置の構成を表したブロック図であり、図1(a)と同一又は相当する部分を同一符号で示している。
図4において、このディジタル放送受信装置1は、図1(a)に示した受信部2に相当するフロントエンド部2と、復調及びエラー訂正部3と、情報分離部4としてのデマルチプレクサ(DEMUX:MPEG-2 Demultiplexer)と、デコーダ部5としてのAACデコーダ5と、アナログスイッチ等で形成された出力部6と、エラー判別部7及びビデオデコーダ部8を有して構成されている。
フロントエンド部2は、アンテナANTから出力される高周波信号を、ユーザが受信選択した放送局に相当する局部発信周波数に基づいて同調受信することによって周波数変換信号を生成し、更に周波数変換信号をディジタル信号処理が可能なディジタルデータ列から成る受信信号DifにA/D変換して出力する。
復調及びエラー訂正部3は、受信信号Difを復調等することにより、トランスポートストリームDtsを復元するための処理を行う。
すなわち、復調及びエラー訂正部3は、受信信号Difに含まれているガードインターバルに基づいて同期を取った後、フーリエ変換を行って周波数デインタリーブと時間デインターリブを行うことで復調信号を生成し、更にその復調信号についてビタビ復号による誤り訂正(内符号復号化)処理を行って、バイトデインタリーブを行った後、更にリードソロモン復号による誤り訂正(外符号復号化)処理を行うことで、トランスポートストリームDtsを復元する。
更に、復調及びエラー訂正部3では、内符号復号化と外符号復号化処理による誤り訂正処理に際して、トランスポートストリームパケット(TSP)単位でビット誤り率(BER)を検出し、検出したビット誤り率(BER)が所定の閾値を超える悪い結果となった場合に、そのトランスポートストリームパケット(TSP)のPESパケットのPESヘッダにエラーパケットマークデータERを付して、情報分離部4側へ出力する。
情報分離部4は、トランスポートストリームDtsをデマルチプレクスすることにより、映像や音声等のコンテンツ毎のパケッタイズドエレメンタリストリーム(PES)に分離してデコーダ部5とビデオデコーダ部8へ出力する。すなわち、同図に示すように、音声に関するパケッタイズドエレメンタリストリームDpa,DpbはAACデコーダ5へ、映像に関するパケッタイズドエレメンタリストリームDVをビデオデコーダ部8へ出力する。
更に、情報分離部4では、デマルチプレクスの際に、エラーパケットマークデータERの有無を検出し、エラーパケットマークデータERを検出すると、そのエラーパケットマークデータERをPESヘッダ(別言すると、パケッタイズドエレメンタリストリーム(PES))に付したまま、デコーダ部5へ出力すると共に、そのエラーパケットマークデータERに関連しているパケッタイズドエレメンタリストリーム(PES)を識別するための第1エラーデータER1をエラー判別部7へ出力する。
AACデコーダ5は、情報分離部4から供給されるMPEG-2 AAC符号化方式によって符号化された音楽等のパケッタイズドエレメンタリストリーム(PES)をデコードすることにより、放送局側から送られてきた元のディジタル信号を生成して出力する。
更に、AACデコーダ5は、ユーザ等が選局した放送が高ビットレートの音楽番組と低ビットレートの音楽番組として同時放送され、情報分離部4から高ビットレートの音楽番組に関するパケッタイズドエレメンタリストリームDpaと、低ビットレートの音楽番組に関するパケッタイズドエレメンタリストリームDpbが供給されると、パケッタイズドエレメンタリストリームDpaをデコードする音声デコーダ部5aと、パケッタイズドエレメンタリストリームDpbをデコードする音声デコーダ部5bとの機能を発揮して、音声デコーダ部5a,5bから各ディジタル信号Da,Dbを出力する。
更に、音声デコーダ部5aは、パケッタイズドエレメンタリストリームDpaについてデコード処理を開始する直前に、エラーパケットマークデータERの有無を検出し、エラーパケットマークデータERを検出すると、そのエラーパケットマークデータERが付されていたパケッタイズドエレメンタリストリームDpaを識別するための第2エラーデータER2aを出力し、音声デコーダ部5bも同様に、パケッタイズドエレメンタリストリームDpbについてデコード処理を開始する直前に、エラーパケットマークデータERの有無を検出し、エラーパケットマークデータERを検出すると、そのエラーパケットマークデータERが付されていたパケッタイズドエレメンタリストリームDpbを識別するための第2エラーデータER2bを出力する。
出力部6は、アナログスイッチ等で形成されており、ユーザ等が選局した放送が高ビットレートと低ビットレートの同一内容の音楽番組であった場合、エラー判別部7からの切替え制御信号CNTの指示に従って、高ビットレート側のディジタル信号Daを優先して出力すべく切替え動作する。更に、高ビットレート側のディジタル信号Daを出力している際に、低ビットレート側のディジタル信号Dbを出力すべく、エラー判別部7からの切替え制御信号CNTによって指示がなされると、出力部6は、切替え動作を行ってディジタル信号Dbを出力する。
エラー判別部7は、ユーザ等が選局した放送が同一内容の高ビットレートと低ビットレートの音楽番組であった場合、高ビットレート側のパケッタイズドエレメンタリストリームDpa,Dpbに関連する第1エラーデータER1と第2エラーデータER2a,ER2bが情報分離部4と音声デコーダ部5a,5bから供給されたか否かを逐一監視する。
そして、高ビットレート側のパケッタイズドエレメンタリストリームDpaに関連する第1エラーデータER1と第2エラーデータER2aが供給されない期間では、切替え制御信号CNTによって出力部6を切替え制御することにより、高ビットレート側のディジタル信号Daを出力させる。
また、低ビットレート側のパケッタイズドエレメンタリストリームDpbに関連する第1エラーデータER1と第2エラーデータER2bが供給された場合にも、切替え制御信号CNTによって出力部6を切替え制御することにより、高ビットレート側のディジタル信号Daを出力させる。
一方、高ビットレート側のパケッタイズドエレメンタリストリームDpaに関連する第1エラーデータER1と第2エラーデータER2aが供給され、且つ、低ビットレート側のパケッタイズドエレメンタリストリームDpbに関連する第1エラーデータER1が供給されないときには、エラー判別部7は、情報分離部4から先に供給される第1エラーデータER1に基づいて、エラーを有するパケッタイズドエレメンタリストリームDpaを特定しておき、次に音声デコーダ部5aからそのパケッタイズドエレメンタリストリームDpaに関する第2エラーデータER2aが供給されると、切替え制御信号CNTによって出力部6を切替え制御することにより、低ビットレート側のディジタル信号Dbを出力させる。
次に、かかる構成を有するディジタル放送受信装置1の動作について、図5に示すフローチャートを参照して説明する。なお、高ビットレートと低ビットレートで放送されている同一内容の音楽番組等を受信した場合の動作について説明する。
まず、ユーザ等によって放送番組が選択されると、ステップST1において、フロントエンド部2、復調及びエラー訂正部3、情報分離部4、ACCデコーダ5、出力部6、エラー判別部7が受信動作を開始する。そして、情報分離部4が、復調及びエラー訂正部3から出力される高ビットレート側のパケッタイズドエレメンタリストリームDpaを音声デコーダ部5a、低ビットレート側のパケッタイズドエレメンタリストリームDpbを音声デコーダ部5bへ分離して出力し、更に音声デコーダ部5a,5bが夫々デコードしたディジタル信号Da,Dbを出力すると共に、パケッタイズドエレメンタリストリームDpaにエラーが生じていない間、エラー判別部7の制御下で出力部6が高ビットレート側のディジタル信号Daを出力する。
また、ステップST2において、エラー判別部7が、情報分離部4から第1エラーデータER1が出力されたか否かを逐一監視し、第1エラーデータER1が出力されていなければステップST1からの処理を繰り返し、出力された場合にはステップST3の処理に移行する。
ステップST3では、エラー判別部7が、第1エラーデータER1に基づいて、エラーを有するパケッタイズドエレメンタリストリームDpa又はDpbを特定する。
次に、ステップST4において、エラー判別部7が、音声デコーダ部5a,5bから第2エラーデータER2a又はER2bが出力されたか判断し、出力されるとそれらの第2エラーデータER2a又はER2bをステップST5において入力して、ステップST6に移行する。
ステップST6では、エラー判別部7が、第1の判断処理を行う。すなわち、高ビットレート側のパケッタイズドエレメンタリストリームDpaに関連する第1エラーデータER1と第2エラーデータER2aを入力していること、及び、低ビットレート側のパケッタイズドエレメンタリストリームDpbに関連する第1エラーデータER1を入力していないことの2条件を満足しているか否か判断する。
そして、これらの2条件を満足している場合には、ステップST7に移行して、出力部6を切替え制御することにより、低ビットレート側のディジタル信号Dbを出力させる。
一方、ステップST6における第1の判断処理において、上述の2条件を満足していない場合には、ステップST8に移行し、エラー判別部7が第2の判断処理を行う。
すなわち、ステップST8では、エラー判別部7が、高ビットレート及び低ビットレート側のパケッタイズドエレメンタリストリームDpa,Dpbに関連する第1エラーデータER1と第2エラーデータER2a,ER2bを入力しているか判断する。そして、これらの条件を満足している場合には、ステップST9に移行して、出力部6を切替え制御することにより、高ビットレード側のディジタル信号Daを継続して出力させる。また、ステップST8において、これらの条件を満足していない場合には、高ビットレード側のディジタル信号Daを継続させたまま、ステップST1から処理を継続する。
すなわち、ステップST8,ST9では、パケッタイズドエレメンタリストリームDpa,Dpbの両者にエラーがある場合を確認する。そして、パケッタイズドエレメンタリストリームDpbにエラーがある場合には、ディジタル信号Dbを切替えて出力しても、不可避的に受信品質の向上が望まないことから、高ビットレート側のディジタル信号Daを継続して出力させるようになっている。
そして、ステップST7又はST9の処理を終了すると、ステップST1に戻ってエラー判別部7の制御下で出力部6が高ビットレート側のディジタル信号Daを出力するように切り替わり、受信動作を継続する。
なお、上述のステップST8,ST9は、確認的に行われる処理であるため、省略してもよく、上述のステップST6において、条件を満足しないと判断した場合に、直接ステップST1に戻って処理を継続してもよい。
以上説明したように、本実施例のディジタル放送受信装置によれば、ビットレートの異なる同一内容の音楽番組等を受信する際、高ビットレートの番組を優先していわゆる受信再生を行い、その高ビットレートの番組を構成しているパケッタイズドエレメンタリストリームDpaにエラーがあることを検出すると、低ビットレートの番組を構成しているパケッタイズドエレメンタリストリームDpbに切り替えて自動的に受信再生を行うことにより、大幅な品質劣化を生じることなくその音楽番組等を継続して受信再生することができる。
更に、ACCデコーダ5がエラーを有する高ビットレート側のパケッタイズドエレメンタリストリームDpaをデコード処理する前に、エラー判別部7が第1エラーデータER1に基づいて、そのパケッタイズドエレメンタリストリームDpaを特定しておき、そのパケッタイズドエレメンタリストリームDpaがデコード処理される直前で第2エラーデータER2が供給されるのに従って出力部6を切り替え制御するので、極めて迅速に切り替え制御を行うことができる。このため、エラーを有するパケッタイズドエレメンタリストリームDpaに基づいてデコード処理されたエラーを有するディジタル信号を出力してしまうといった問題の発生を未然に防止することができ、品質の良好な音楽等を継続して再生することができる。
更に、パケッタイズドエレメンタリストリーム単位での切り替えを行うことが可能であるため、例えば音楽番組等を受信再生中に、再生音の欠落が生じるといった問題の発生も未然に防止することができ、品質の良好な音楽等を継続して再生することができる。
更に、高ビットレート側のパケッタイズドエレメンタリストリームを優先的に受信再生し、エラーが生じると低ビットレート側のパケッタイズドエレメンタリストリームを受信再生するように切り替わることとなるため、従来問題となっていた崖効果の影響を、ディジタル放送番組間における切り替えにおいても回避することができる。
なお、以上の説明では、音楽番組等について切り替え動作を行うことによって、いわゆる受信品質の向上を図る場合について説明したが、映像番組について切り替え動作を行うことで、受信品質の向上を図ることも可能である。
本発明の実施の形態に係るディジタル放送受信装置の構成および動作を説明するための図である。
トランスポートストリームについて説明するための図
OFDM方式について説明するための図
ディジタル放送受信装置のより具体的な実施例の構成を表したブロック図である。
図4に示したディジタル放送受信装置の動作を説明するためのフローチャートである。
符号の説明
1…ディジタル放送受信装置
2…受信部
3…復調及びエラー訂正部
4…情報分離部
5…デコーダ部
6…出力部
7…エラー判別部