しかし、これら従来の計測方法では、記録シートを実際に供給トレイから給送してみないと、その厚さを把握することができなかった。すなわち、供給トレイにセットされているシート束の種類を交換した場合には、画像形成に関するパラメータ、記録シートの給送に関するパラメータを1枚目の記録シートの搬送時から変更することができず、コピージョブ、プリントジョブの最初から高画質の記録画像を形成し得る保証がなかった。
また、供給トレイにセットされた記録シートの厚さを把握すれば、把握した厚さを手がかりとしてセットされている記録シートの種類、例えば普通紙、厚紙、OHP用フィルム等の違いを複写機やプリンタ等の画像形成装置に自動判別させることも可能となるが、前述した従来技術では記録シートを実際に搬送してからでないとその厚さを把握することが出来なかったので、供給トレイにセットされている記録シートを交換した直後は該記録シートの種類を自動判別することができなかった。このため、プリントジョブ、コピージョブが開始されてから、記録シートの選択ミスに気がつく場合も多々あり、特殊な記録シートに対してプリント又はコピーを行う際には、これらジョブに先立って供給トレイにセットされている記録シートを確認しなければならず、作業性の悪いものとなっていた。
本発明はこのような問題点に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、供給トレイにセットされた記録シートの厚さや材質等に関する各種情報を、かかる記録シートを供給トレイから給送する前に検出することが可能なシート供給装置を提供すると共に、検出した記録シートの情報を用いてプリントジョブやコピージョブの最初から最適な画像形成動作を行うことが可能な画像形成装置を提供することにある。
すなわち、本発明は、複数の記録シートが整合されたシート束を供給トレイ内に収容すると共に、かかるシート束から記録シートを一枚ずつ分離し、前記供給トレイから給送するシート供給装置であって、供給トレイ内にセットされたシート束をその側端方向から撮像する手段と、この撮像手段から得られた画像データから前記記録シートに関する情報を検出する情報抽出手段とを備えたことを特徴とするものである。
このような技術的手段によれば、シート束が供給トレイにセットされた状態で、かかるシート束の側面の画像データから記録シートの各種情報を検出するので、記録シートを前記供給トレイから給送することなく、かかる記録シートの厚さや材質を把握することができる。
供給トレイ内にセットされた記録シートの厚さ等の各種情報を該記録シートを実際に搬送することなく把握することができれば、かかる情報を手がかりとして供給トレイにセットされた記録シートの種類、例えば普通紙、厚紙、OHP用フィルム等の違いを複写機やプリンタ等の画像形成装置に自動判別させることも可能となり、判別した記録シートの種類に応じ、かかる記録シートの搬送に必要なパラメータや画像形成に必要なパラメータを最適化することが可能となり、コピージョブやプリントジョブの当初から高画質の記録画像を形成することが可能となる。
また、プリンタに複数の供給トレイが設けられている場合には、プリントジョブやコピージョブにおいて指定された記録シートを収容している供給トレイを自動選択させ、逆に、指定された記録シートがいずれの供給トレイにもセットされていないのであれば、プリントジョブを指示したコンピュータの画面や複写機の操作パネルに警告メッセージを表示させるといったことが可能となり、無駄なコピーやプリントを防止すると共に、作業性の向上を図ることができる。
このような技術的手段において、前記撮像手段としては、供給トレイ内にセットされたシート束をその側端方向から撮像し、シート束の側面の画像データを採取し得るものであれば、その具体的構成は適宜変更することが可能である。例えば、CCDセンサを利用して撮像を行うことができる。かかるCCDセンサとしてはシート束の厚さ方向に沿った所定領域に関して画像データを採取し得るものであれば、複数の撮像素子がシート束の厚さ方向に沿ってライン状(一次元)に配列されたものであっても良いし、複数の撮像素子が面状(二次元)に配列されたものであっても良い。また、極小さい領域に関して画像データを採取し得るCCDセンサを設け、このCCDセンサをシート束の厚さ方向へ移動させながら画像データを採取するようにしても良い。撮像素子がライン状に配列されたCCDセンサを使用した場合には、一回の撮影でシート束の厚さ方向に沿った1ライン分の画像データしか採取できないが、撮像素子が面状に配列されたCCDセンサを用いれば、一回の撮影でシート束の厚さ方向に沿った複数ライン分の画像データを採取することができるので、これらの画像データを比較することにより、記録シートの厚さ等に関する情報抽出の精度を高めることができる。
また、シート束の側端面の画像データを採取するに当たり、必ずしも前記撮像手段をシート束の厚さ方向へ上下動させる必要はなく、撮像手段に対してシート束を上下動さるように構成しても良い。そもそも、この種のシート供給装置では、供給トレイの上方に設けられたピックアップロールやフィードロールに対してシート束の最上位記録シートを接触させる目的から、供給トレイ内に上下動自在なボトムフムレートが設けられており、例えば供給トレイ内にセットされているシート束を交換した場合等には、前記ボトムプレートが上昇してシート束をピックアップロール等に接触させるようになっている。従って、このボトムプレートの機構を利用してシート束を撮像手段に対して厚さ方向へ移動させるように構成しても良い。
また、前記ボトムプレートは記録シートの補充や交換のために供給トレイを複写機やプリンタ等の画像形成装置の筐体から引き出すと下降し、かかる供給トレイを画像形成装置の筐体に装着し直すと自動的に上昇するように設定されているのが通例であるから、前述のようにボトムプレートの上下動を利用してシート束側端面の濃度データを採取するように構成すれば、記録シートの補充や交換の度毎に供給トレイにセットされた記録シートの厚さを検出することが可能となる。その結果、供給トレイ内にセットされた記録シートの厚さを常に把握した状態でプリントジョブやコピージョブを開始することができ、ミスコピーやミスプリントの発生を防止すると共に高画質の記録画像を記録シート上に形成することが可能となる。
一方、前記画像データから抽出可能な記録シートの情報としては、かかる記録シートの厚さが考えられる。複数の記録シートが重なり合ってシート束を構成している状態では、かかるシート束をその側端方向から撮像して画像データを採取した際に、シート束の厚さ方向に濃淡が繰り返す縞模様状の濃度データが得られ、かかる濃度データを解析することで記録シートの厚さを検出することができるからである。記録シートの厚さを画像データから抽出する具体的な手法としては、かかる画像データからシート束の厚さ方向に沿った1ラインのデータを抽出した後に、このラインデータを濃度データに変換すると共に該濃度データの周波数特性を演算し、かかる周波数特性から記録シートの厚さを検出することが考えられる。
また、供給トレイ内のシート束をその側端方向から撮像するに当たっては、かかるシート束に対して空気を吹きつけるエアー供給手段を設け、空気を吹き付けることによって重なり合った記録シートの間に隙間を形成するのが好ましい。このように構成すれば、シート束を撮像した場合に、重なり合った記録シート同士が密着している状態よりも濃度データに現れる縞模様の濃淡のコントラストを強くすることができ、前述した周波数特性を演算することなく、撮像した画像から直接的に記録シートの厚さを検出することが可能となる。
加えて、供給トレイ内のシート束に対して空気を吹き付けて、重なり合った記録シートの間に隙間を形成することができれば、ピックアップロールやフィードロールによって記録シートを給紙する際に、記録シートを一枚ずつに分離するのが容易なものとなり、記録シートの重送を防止することが可能となる。特に、カラー複写機やカラープリンタで多用されるアート紙やコート紙と称される光沢のある記録シートは、その表面の平滑性が高いがゆえに記録シート同士の密着度が高く、ピックアップロールによる給紙の前段階として、重なり合った記録シートの間に隙間が形成されていれば、記録シート同士の密着力を低減又は解消させて、重送を防止することが可能となる。
シート束に対して空気を吹きつけるめたのエアー供給手段は、かかるシート束が収容された供給トレイの何処であっても差し支えないが、撮像手段によって採取される濃度データのコントラストを強くするという観点からすれば、前記撮像手段による撮像領域に対して空気を吹きつける位置に設けられるのが好ましい。また、供給トレイ内における記録シート同士の密着力を弱めて給紙時の分離を促進するという観点からすれば、給紙方向におけるシート束の前端面に対して空気を吹き付けるのが好ましい。
このように供給トレイ内のシート束に対して空気を吹き付けると、重なり合った記録シートの間に空気の通り道となる隙間が形成され、かかる隙間の上側に位置する記録シートは浮揚した状態となる。撮像手段によって得られた画像データを分析すると、かかる記録シートの浮揚状態、例えば、記録シートの浮揚高さや浮揚範囲、浮揚姿勢等を把握することができるが、供給トレイ内に蓄積されている記録シートの量、吹き付ける空気流の強さ、温度・湿度といった環境条件が略同一であれば、かかる浮揚状態は記録シートの種類に依存していると考えることができる。従って、前記情報抽出手段は撮像手段の画像データから供給トレイ内における記録シートの浮揚状態を検出し、この浮揚状態から記録シートの厚さや材質に関する情報を検出することも可能である。
また、供給トレイ内における記録シートの浮揚状態をから記録シートの物性に関する情報を検出する場合、安定的に浮揚した記録シートを撮像してその画像データを分析するようにしても良いし、空気の吹き付けを開始してから安定的な浮揚状態に達するまでの過渡的な記録シートの動きを画像分析しするように構成しても良い。空気流の吹きつけを開始してから記録シートが実際に浮揚を開始し、その浮揚状態が安定するまでには僅かな時間が存在するが、例えば坪量50〜100g/m2 程度の軽い記録シートでは浮揚開始から1秒以内に浮揚状態が安定する。一方、坪量200g/m2 以上の厚紙では浮揚状態が安定するまでに、一層長い時間が必要となる。従って、この過渡的な記録シートの動きを画像データから分析することによっても、記録シートの物性を検出することが可能となる。
更に、供給トレイ内のシート束に対して空気を吹き付けて記録シートの分離を促進するにあたっては、シート束の最上位の記録シートが2枚目の記録シートに対して浮揚して、これら両者の間に隙間が形成されるのが好ましいが、例えば坪量の小さい軽量の記録シートであると、最上位の記録シートを含めた複数枚の記録シートが一団となってその下の記録シートに対して浮揚してしまう場合もあり、記録シートの分離を十分に促進できないこともある。
従って、かかる観点からすれば、供給トレイ内のシート束を撮像することにより得られた記録シートの厚さなどに関する情報を利用して前記エアー供給手段を制御し、シート束に対して吹き付ける空気流の強さや、吹き出しノズルの高さや吹き出し方向を変化させて、常に最上位の記録シートと2枚目記録シートとの間に最適な隙間を形成できるようにするのが好ましい。また、撮像手段から得られた画像データを解析することにより、供給トレイ内における最上位の記録シートの2枚目記録シートに対する浮揚状態を把握することもできるので、かかる画像データを解析しながら前記エアー供給手段をフィードバック制御するように構成しても良い。
このように、本発明のシート供給装置によれば、供給トレイにセットされたシート束をその側端方向から撮像して濃度データを得ることにより、かかる濃度データから記録シートに関する種々の情報を抽出することができるので、かかる記録シートを供給トレイから給送する前に該記録シートの厚さや材質等に関する情報を検出することができ、検出した情報を用いてプリントジョブやコピージョブの最初から最適な画像形成動作を行うことが可能となる。
以下、添付図面に沿って本発明のシート供給装置を詳細に説明する。
図1は本発明のシート供給装置を適用したデジタルカラー複写機の一例を示すものである。この複写機は、プラテンガラス10上に置かれた原稿11の画情報を光学的に読み取ってこれをCCDセンサ12で電気的な画像データに変換する画像入力部1と、この画像入力部1から転送された画情データに基づいて記録シートP上に画像形成を行う画像出力部2とから構成されている。
上記画像出力部2は画像入力部1から転送された画像データに基づいて感光体ドラム20上にトナー像を形成した後、かかるトナー像を無端状の転写ベルト3に一次転写し、更に転写ベルト3上のトナー像を記録シートPに二次転写することで該記録シートP上に記録画像を形成しており、トナー像が二次転写された記録シートPは定着器4を経て排出トレイ50上に排出されるようになっている。
また、上記感光体ドラム20は所定のプロセス速度で矢線方向に回動しており、その周囲には、かかる感光体ドラム20の表面を所定の背景部電位にまで一様帯電する帯電コロトロン21と、画像データに基づいて変調されたレーザピームで感光体ドラム20を露光し、該感光体ドラム20上に静電潜像を形成するレーザビームスキャナ22と、ブラック、イエロー、マゼンタ、シアンの各色現像器を有し、いずれかの現像器で感光体ドラム上の静電潜像を現像するロータリ現像ユニット23と、転写ベルト3に対するトナー像の一次転写に先立って感光体ドラム20上の電位を除去する転写前処理コロトロン24と、トナー像の一次転写が終了した後の感光体ドラム20上の残留トナーを除去するクリーナ25とが配置されている。
一方、上記転写ベルト3は複数のロールに掛け回されて矢線方向に回動しており、感光体ドラム20上に順次形成される各色トナー像はこの転写ベルト3に多重転写された後に、かかる転写ベルト3から記録シートPへ一括して二次転写されるようになっている。この転写ベルト3を挟んで感光体ドラム20と対向する位置には該感光体ドラム20との間に転写電界を形成する一次転写ロール30が配設される一方、トナー像の二次転写位置には二次転写ロール31及び対向電極ロール32が転写ベルト3を挟んで配設されており、記録シートPは上記二次転写ロール31と転写ベルト3との間に挿通されてトナー像の転写を受けるように構成されている。また、転写ベルト3の回動経路のうち、二次転写位置と一次転写位置との間には、二次転写が終了した転写ベルト3の表面から紙粉や残留トナーを除去するベルトクリーナ33が設けられている。
また、上記画像出力部2の下方にはサイズの異なる記録シートPを収容した4段のシート供給トレイ5a〜5dが装備されており、画像入力部1で検知された原稿サイズに応じた適切なサイズの記録シートPがピックアップロール51の回動により、いずれかのシート供給トレイから画像出力部2へ送り出されるようになっている。各シート供給トレイ5a〜5dからトナー像の二次転写位置へ至る記録シートPの搬送経路上には複数のシート搬送ロール52が配設されると共に、二次転写位置の直前にはレジストレーションロール53が配設されており、かかるレジストレーションロール53はシート供給トレイ5a〜5dから送り出された記録シートPを感光体ドラム20に対する静電潜像の書き出しタイミングに同期した所定のタイミングで二次転写位置に送り込む。
尚、図1中において、符号13はプラテンカバー、符号26は画像入力部1から画像出力部2に転送されてきた画像データを複写作業の内容に応じて処理した後に上記レーザビームスキャナ22に供給する画像処理部、符号54は記録シートPの手差し給紙に用いる手差しトレイ、符号55はトナー像が二次転写された記録シートPを定着器4へ給送するためのシート搬送ベルト、符号56は記録シートPの両面コピーの際に該記録シートPを反転させて定着器4から二次転写位置へ給送するためのインバータ通路である。
以上のように構成された本実施例のカラー複写機では、画像入力部1によって取り込まれた原稿の画情報に基づいてレーザビームスキャナ22が感光体ドラム20を露光し、先ず、感光体ドラム20上にはブラックに対応した静電潜像の書き込みが行われる。一方、ロータリー現像ユニット23ではブラックトナーの現像器が感光体ドラム20との対向位置に設定され、上記静電潜像はこのブラック現像器によってその書き込みタイミングから少し遅れて現像される。そして、このようにして形成されたブラックのトナー像は一次転写ロール30によって転写ベルト3上に一次転写され、転写ベルト3はトナー像を担持したまま回転する。また、ブラック現像器による現像工程が終了すると、転写ベルト3が1回転サイクルを終了する迄の間に現像器の交換が行われ、ロータリ現像ユニット23の90°回転によってイエロートナーの現像器が感光体ドラム20との対向位置に設定される。
以降は転写ベルト3の1回転サイクル毎にこれら動作が繰り返され、その度毎にイエロー、マゼンタ及びシアンのトナー像が感光体ドラム20から転写ベルト3に転写され、かかる転写ベルト3上には4色のトナー像による重ね合わせトナー像が形成される。そして、このようにして形成されたフルカラーの多重転写トナー像は所定のタイミングでレジストレーションロール53から送られてきた記録シートPに二次転写され、未定着トナー像が転写された記録シートPは定着器4を経て排出トレイ50に排出される。
図2は各シート供給トレイ5(5a〜5d)の具体的構成を示す概略図である。
このシート供給トレイ5は記録シートPの収容空間を備えて略矩形状に形成されており、給紙部を構成する複写機の筐体に対してフロント側(図1の紙面手前側)から挿入し得るように構成されている。シート供給トレイ5の内部には記録シートPを搭載すると共に、該記録シートPを上方へ向けて押し上げるボトムプレート60が設けられている。
また、このシート供給トレイ5が挿入される複写機の筐体側には、シート供給トレイ5内に位置決めされた記録シートPの先端に対応して前述のピックアップロール51が設けられており、ボトムプレート60の上昇によって記録シートPが持ち上がると、シート供給トレイ5内で最上位に位置する記録シートPの先端がピックアップロール51と圧接するようになっている。これにより、ピックアップロール51が回転すると、記録シートPとピックアップロール51との間に所定の摩擦力が作用し、最上位の記録シートPがシート供給トレイ5から引き出される。一方、シート供給トレイ5から引き出された記録シートPが多数枚重なった状態で搬送される所謂重送を防止するため、複写機の筐体側には上記ピックアップロール51に隣接してフィードロール63及びリタードロール64が設けられている。
図3に示すように、フィードロール63は所定の高さに固定的に設けられる一方、リタードロール64は支点65を中心として揺動自在に設けられたアーム65aに支承されており、このアーム65aの一端に連結された弾性部材66の付勢力によってフィードロール63に圧接している。また、記録シートPの重送を確実に防止するため、フィードロール63に対するリタードロール64の圧接力は使用する記録シートPの厚さ等に応じて調節することができるようになっている。すなわち、前記弾性部材66の一端にはアクチュエータロッド67が結合されており、調整モータ68を回転させて前記アクチュエータロッド67を移動させると、前記弾性部材66の発揮する付勢力が変更され、フィードロール63に対するリタードロール64の圧接力を自由に調整することができるようになっている。そして、シート供給トレイ5から引き出された記録シートPはこれらフィードロール63及びリタードロール64が形成するニップの間を通過する際に一枚ずつに分離される。尚、これらフィードロール63とピックアップロール51は共通のフィードモータ(図示せず)によって回転駆動される一方、リタードロール64は所定以上のトルクが作用した場合にのみ回転するよう、トルクリミッタを介して支承されている。
図4は前記ボトムプレート60を昇降させるための機構を示すものである。ボトムプレート60にはプーリ62に架け回されたワイヤ69が連結されており、このワイヤ69をリフトアップモータ70に連結された巻き取りプーリ71によって巻き取ると、ボトムプレート60がシート供給トレイ5内で上昇し、最上位の記録シートPが前記ピックアップロール51に接触するようになっている。前記巻き取りプーリ71は、シート供給トレイ5を複写機筐体に押し込んだ際にリフトアップモータ70と連結される一方、シート供給トレイ5を複写機筐体から抜き出し際にリフトアップモータ70から分離されるように構成されている。このため、シート供給トレイ5を装置筐体から抜き出すと、ボトムプレート60は自重によってシート供給トレイ5の底面まで下降し、ユーザによる記録シートPの補充が容易に行い得るようになっている。また、シート供給トレイ5が複写機筐体に対して完全に押し込まれたことが図示外のセンサによって確認されると、記録シートPを給紙するための準備動作として、リフトアップモータ70が駆動されてワイヤ69の巻き取りが行われ、ボトムプレート60に積載されたシート束の最上位の記録シートPが前記ピックアップロール51に接触するまで該ボトムプレート60の上昇が行われる。
更に、前記ピックアップロール51は上下動自在に配置されており、ボトムプレート60に積載された記録シートPの枚数が給紙によって減少していくと、徐々に下降していくようになっている。このピックアップロール51を前記フィードロール63と略同じ高さレベルに維持するため、継続的な給紙によってピックアップロール51が所定の高さレベルにまで下降すると、図示該のセンサがこれを感知し、このセンサの出力信号の変化をトリガーとしてリフトアップモータ70が所定時間駆動されるように構成されている。これにより、ボトムプレート60が給紙された記録シートPの厚さに見合った量だけ上昇し、シート供給トレイ5内の最上位の記録シートPが常に所定の高さでピックアップロール51と接触するようになっている。
一方、この種の電子写真複写機、特に複数色のトナー像を記録シートPに対して多重転写するカラー複写機では、二次転写ロール31に対して記録シートPの厚さに応じた最適な転写バイアスを印加する必要があり、仮に印加した転写バイアスが不適当な場合には、トナー像の転写不良、トナーの極性反転によるリトランスファーが発生し、高品質の記録画像を形成することが不可能となってしまう。また、シート供給トレイ5から記録シートPを給紙するに当たり、記録シートPの重送を防止するためには、前記フィードロール63に対するリタードロール64の圧接力を記録シートPの厚さに応じて最適化することが重要となる。このため、この実施例のカラー複写機では、シート供給トレイ5にセットされている記録シートPの厚さを自動的に把握し、把握した記録シートPの厚さに応じてトナー像の二次転写バイアス、リタードロール64の圧接力等を最適化し得るように構成されている。
記録シートPを画像出力部2に向けて搬送することなくその厚さを把握するため、この実施例のカラー複写機では、シート供給トレイ5にセットされたシート束Psを撮像手段としてのCCDセンサを用いて撮影し、その撮影画像の濃度データから記録シートPの厚さを検出している。具体的には、図5に示すように、シート供給トレイ5内のシート束の側端面と対向する位置にCCDセンサ75が取り付けられており、このCCDンサ75がシート束Psの側端面を撮像するようになっている。
前記CCDセンサ75の取付位置としては、シート供給トレイ5内にセットされる記録シートPのサイズに関係なくシート束Psの側端面の撮影を可能とするため、例えば図6に示すように、シート供給トレイ5内で記録シートPが所謂サイドレジストレーションでセットされるのであれば、シート束Psを整合するための基準側壁であって、しかもピックアップロール51の回転軸51aと近接した位置に設定するのが好ましい。また、図7に示すように、シート供給トレイ5内で記録シートPが所謂センターレジストレーションでセットされるのであれば、CCDセンサ75はシート供給トレイ5の前端壁の中央付近に設けるのが好ましい。
図8はCCDセンサ75で撮影した画像からから記録シートPの厚さを検出するまでの処理系、並びに検出した記録シートPの厚さを利用した転写バイアス等の制御系を示すブロック図である。CCDセンサ75でシート束Psの側端面を撮影すると、図9に示すような画像データを得ることができる。図の上下方向がシート束Psの厚さ方向、換言すれば記録シートPが積み重なっている方向であり、画像データ中には該方向に沿って濃淡が繰り返されている。この繰り返し間隔が1枚の記録シートPの厚さと対応している。このようにしてCCDセンサ75から得られた画像データはコンピュータシステムからなる情報抽出部76に入力される。この情報抽出部76では図9に示す画像データ中からシート束Psの厚さ方向沿った1ラインを取り出し、かかるライン中の各画素における濃度データを算出する。図10は算出した濃度データを示すものであり、横軸はシート束Psの厚さ方向に沿った画素位置を、縦軸は256階調で表現される各画素の濃度データであり、シート束Psの厚さ方向に沿って各画素の濃度の高低が繰り返されていることが伺われる。次に、情報抽出部は算出した濃度データに対して高速フーリエ変換(FFT処理)等の周波数解析を行い、濃淡の周期を演算する。図11は、CCDセンサ75による撮像倍率、CCDセンサ75中の撮像素子の配列ピッチに基づき、周波数解析の結果から得られた濃淡周期を距離の単位に変換した結果を示すグラフであり、横軸は濃淡周期の繰り返し距離を、縦軸は濃度差を表している。そして、この結果から、濃度差に対して急峻なピークを有している繰り返し距離がシート供給トレイ5内にセットされた記録シートPの厚さとなる。
図1に示す複写機ではシート供給トレイ5が4段設けられているので、各シート供給トレイ5毎にセットされている記録シートPの厚さが検出される。情報抽出部76によって把握された記録シートPの厚さに関する情報は複写機の主制御部77に送られ、かかる主制御部77において各シート供給トレイ5a〜5dとの対応で記憶される。
このようにして記録シートPの厚さが把握されると、フィードロール63に対するリタードロール64の圧接力を記録シートPの厚さに応じて最適化するため、前記主制御部77は各シート供給トレイ毎に設けられた調整モータ68を駆動し、前述の弾性部材66の付勢力を変更する。これによってフィードロール63とリタードロール64の協働による記録シートPの分離動作を、シート供給トレイ5にセットされた記録シートPの厚さに応じて最適化することが可能となる。また、検出した記録シートPの厚さに応じ、前記ピックアップロール51の記録シートPに対する圧接力も変更することが可能となる。このように、把握した記録シートPの厚さを用いてピックアップロール51の圧接力やリタードロール63の圧接力を最適化することにより、シート供給トレイ5から画像出力部2に対して記録シートPを給紙する動作を安定化して行うことが可能となる。
更に、ユーザがコピージョブを行う際に、かかるジョブにおいて使用するシート供給トレイ5が自動又は手動で選択されると、前記主制御部77は該ジョブで使用される記録シートPの厚さを不揮発性メモリから読み出し、かかる記録シートPの厚さに対応した転写バイアスを転写バイアス電源78に設定する。これにより、トナー像を中間転写ベルト3から記録シートPへ二次転写する際、記録シートPの厚さに応じた最適な強度の転写バイアスを印加することができ、トナー像の転写不良やリトランスファーを防止することが可能となる。
実際にCCDセンサ75でシート束Psの側端面を撮像し、前述の方法で記録シートPの厚さを演算したところ、濃度差がピークを示す記録シートPの厚さは66.8μmであった。このシート束Psを構成している記録シートPの厚さを直接測定したところ、その厚さは65.2μmであったので、撮像した画像に基づいて記録シートPの厚さを演算しても、その誤差は3%以内に収まることが判明した。記録シートPの厚さの違いが画像出力部2への給紙動作やトナー像の転写に影響を及ぼすのは、記録シートPの厚さが予想している厚さに対して±10〜20μm程度食い違っている場合であると考えられるが、撮像画像から抽出されたシート厚は実際の記録シートPの厚さに対して十分に近く、撮像画像から抽出された記録シートPの厚さを用いて給紙パラメータやトナー像の転写パラメータを決定しても、実用上は何ら問題ないものと考えられる。すなわち、本発明によれば、実用上問題のない精度でシート供給トレイ5内にセットされた記録シートPの厚さを検出することができるのである。
前記CCDセンサ75によるシート束Psの側端面の撮像は、シート供給トレイ5の開閉が図示外のセンサで検知される度に行うことができる。これにより、シート供給トレイ5にセットされている記録シートの種類が変更された場合に、直ちにそれを検出することができ、次に行われるコピージョブの最初から記録シートPの厚さに応じた最適な画像形成動作を行わせることが可能となる。また、複写機の主電源が切断されている状態でシート供給トレイ5内の記録シートPの種類が変更される場合も存在することから、複写機の主電源が投入されたことをトリガーとして、CCDセンサ75によるシート束Psの側端面の撮像を行わせるようにしても良い。
一方、シート供給トレイ5の開閉が行われない場合でも、記録シートPの給紙ジャムが複数回続けて発生するような場合には、記録シートPの厚さに対するリタードロール64、ピックアップロール51の圧接力の最適化がなされていないと考えられることから、所定のジャム処理回数をトリガーとして前述した記録シートPの厚さ検出動作を行い、主制御部77に記憶されている記録シートPの厚さに関するデータを書き換えるようにしても良い。
このような構成により、複写機の主制御部77はシート供給トレイ5にセットされている記録シートPの厚さに関する情報を常に保有している状態となり、画像形成動作を常に記録シートPに対して最適化させることができる他、コントロールパネル等のユーザインターフェースを通じて、記録シートPに関する情報をユーザに提示することができる。また、複写機ではなく、プリンタのシート供給装置に本発明を適用した場合には、前記主制御部77が該プリンタに接続されたコンピュータに対して、シート供給トレイ5内にセットされている記録シートPの厚さに関する情報を送信することも可能となり、ユーザは自己のPCに表示されるプリンタの管理画面等でこの情報をモニターすることが可能となる。
前記CCDセンサ75で撮像した画像データから濃度データを取り出し、更に該濃度テータの周波数解析を行うに当たっては、画像データがシート束Psの側端面以外の画像を含まないのが好ましい。その方が、周波数解析の際にノイズが含まれず、記録シートPの厚さを正確に検知することが可能となるからである。従って、かかる観点からすれば、シート供給トレイ5内におけるCCDセンサ75の高さ方向の取付位置は、図12に示すように、ピックアップロール51に接触している記録シートPよりも下方で、撮像領域の上端がシート束Psの最上位記録シートPよりも僅かに下側となる位置が好ましい。これにより、シート供給トレイ5に対して記録シートPを補充した直後では、かかるシート供給トレイ5内に十分な量の記録シートPが存在することから、前記CCDセンサ75の撮像領域にボトムプレート60が含まれることはなく、CCDセンサ75がシート束Psの側端面のみを撮影することが可能となる。
一方、シート供給トレイ5内の記録シートPが消費されていくと、図13に示すようにシート供給トレイ5内のボトムプレート60が次第に上昇し、CCDセンサ75の撮像範囲にボトムプレート60の側端面が含まれるようになる。この場合、前記情報抽出部76でCCDセンサ75から送られてきた画像データを処理するに当たり、シート束Psの側端面とは明らかに異なる画像が画像データ中に含まれていることを認識することは可能であり、そのような画像がCCDセンサ75の画像中に明らかに含まれていると認識される場合、前記情報抽出部76は当該シート供給トレイ5内にセットされている記録シートPの残量が少なくなってきたと判断し、記録シートPのエンプティに関する情報をコントロールパネル等を通じてユーザに表示する。また、プリンタのシート供給トレイ5の場合には、このプリンタに接続されたPCに表示することも可能である。更に、このようにシート供給トレイ5内の記録シートPの残量が少ない場合でも、CCDセンサ75で撮像した画像データの中から、明らかにシート束Psの側端面とは異なると認識される画像データを除去し、それ以外の画像データを用いて記録シートPの厚さを判別することも可能である。
記録シートPの厚さの検出精度を高めるといった観点からすれば、CCDセンサ75の撮影した画像データ中からシート束Psの厚さ方向に沿ったラインデータを数ライン分取り出し、各ラインデータから前述の方法で記録シートPの厚さを検出した後、総てのラインデータに関する検出結果を平均化するのが好ましい。そのためには、CCDセンサ75の撮像範囲はシート束Psの厚さ方向及び記録シートPの面方向に拡がる面領域であることが好ましく、CCDセンサ75の有する複数の撮像素子が2次元に配列されていることが好ましい。
もっとも、本発明を実施する上では、CCDセンサ75の撮像した画像中からシート束Psの厚さ方向に沿った1ラインの画像データのみを抽出するできれば良く、かる観点からすれば、CCDセンサ75の有する複数の撮像素子はシート束Psの厚さ方向に沿ってライン状(一次元)に配列されているものであれば良い。
また、前述のようにシート供給トレイ5を複写機の筐体に装着した際には、シート供給トレイ5内のボトムプレート60が上昇してシート束Psを持ち上げることから、かかる動作を利用してシート束Psの側端面をその厚さ方向へ走査して画像データを得ることも可能である。すなわち、CCDセンサ75には単数の撮像素子又は記録シート2、3枚分に相当する撮像素子だけを具備させ、図14に示すように、シート供給トレイ5の装着後、ボトムプレート60の上昇動作に合わせて前記撮像素子から時系列的に画像データを採取するのである。ボトムプレート60の上昇速度とCCDセンサ75から出力される画像データのサンプリング速度を適宜調整することにより、図10に示したものと同様な濃度データを算出することは可能であり、これにボトムプレート60の上昇速度を加味することで、図11に示したものと同様な濃度差の繰り返し周期に関するデータを作成し、そこから記録シートPの厚さを検出することが可能である。このような構成によれば、CCDセンサ75としては極めて安価なものを使用することができ、しかもシート束Psを上昇させる構成は従来からシート供給トレイ5に具備されている構成なので、極めて簡易な構成で本発明を実施することができるものである。
尚、図14に示した例ではCCDセンサ75をシート供給トレイ5の側壁に対して固定し、シート束Psを積載したボトムプレート60をCCDセンサ75に対して移動させるように構成したが、CCDセンサ75そのものをアクチュエータ等の移動手段によってシート束Psの厚さ方向へ移動させながら撮像を行うようにすることも可能である。
一方、CCDセンサ75によってシート供給トレイ5内にセットされたシート束Psの側端面を撮影するに当たり、複写機の筐体に収容されているシート供給トレイ5の中は暗いので、鮮明な撮像画像を得るためにはシート束Psの側端面の撮像領域を照らす照明手段を設けるのが好ましい。この照明手段としてはLED素子等を使用することができ、CCDセンサ75によるシート束Psの側端面の撮像中のみ点灯させ、撮像が終了したならば直ちに消灯する構成とするのが良い。また、図15に示すように、前記照明手段80は、シート束Psの側端面をCCDセンサ75の光軸よりも斜め上方向又は斜め下方向から照明する位置に取り付けるのが好ましい。シート束Psの側端面では各記録シートPのエッジ部が微妙な凹凸を形成しているので、照明手段80がCCDセンサ75の光軸に対して斜め上方向又は斜め下方向からシート束Psの側端面を照明すれば、積み重なって接する記録シートPと記録シートPとの間の陰影を強調することができ、CCDセンサ75の撮像した画像データから濃度データを取り出し、更にこの濃度データを解析する際に、かかる解析を容易に行うことが可能となり、記録シートPの厚さの検出精度を高めることが可能となる。
図16はCCDセンサ75によるシート束Psの撮影方法の他の例を示すものである。図5に示した例ではシート供給トレイ5内にセットされたシート束Psの側端面をそのままCCDセンサ75で撮影したが、図16に示す例ではシート束Psの側端面と対向する位置にエアノズル82を設け、シート束Psに対して空気を吹きつけながら撮影を行っている。積み重なった記録シートPの間に空気を吹き込むことで、僅かではあるが各記録シートPは上下に隣接する記録シートPに対して浮揚状態となり、単に積み重なっている状態よりも記録シートPと記録シートPとの間の隙間を大きくすることができる。これにより、CCDセンサ75で撮影した画像では、記録シートPのエッジを示す部分と、記録シートPと記録シートPとの間の隙間を示す部分とで、濃淡のコントラストが大きくなり、この画像データを用いることで記録シートPの検出を一層容易に且つ正確に行うことが可能となる。
シート供給トレイ5内における前記エアノズルの配設位置は、シート束Psの側端面に対して空気を吹きつけ、シート束Psを構成する各記録シートPを若干の浮揚状態に設定するものであれば、如何なる位置であっても差し支えないが、撮像画像中の濃淡コントラストを一層顕著に発生させるといった観点からすれば、CCDセンサ75の撮像領域に対して直接空気を吹きつける位置に配設するのが好ましい。
また、このようにシート束Psの側端面に空気を吹きつけることで、撮像画像中の濃淡コントラストを高く検出することができるのであれば、画像データから濃度データを抽出した後、かかる濃度データの周波数解析を行わずとも、濃度データから直接的に記録シートPの厚さを検出することができる。すなわち、CCDセンサ75の画像データ中において、記録シートPのエッジ部は白っぽく、または淡い色に写るので、抽出した濃度データから該当する色の幅を直接検出し、CCDセンサ75における撮影倍率から記録シートPの厚さを検出することが可能となる。CCDセンサ75の撮像領域中に浮揚状態にある記録シートPが複数枚含まれるのであれば、これらの記録シートPに関して直接検出した厚さの平均値を用いることで、更に検出精度を高めることも可能である。
この場合、CCDセンサ75から画像データを取り込んだ情報抽出部76は、記録シートPの厚さや材質などの物性を判断するに当たり、かかる記録シートPのシート供給トレイ5a〜5d内おける浮揚状態を加味することができる。すなわち、空気が吹き込まれることで互いに重なり合った記録シートPの間には隙間が形成され、図17に示したようにシート束Psを構成する記録シートPは浮揚状態となるが、そのときの浮揚高さや浮揚幅、浮揚している記録シートPの枚数、空気流の吹き込み初期における浮揚状態の時間変化を画像データから分析し、その分析結果を予め情報抽出部76に格納されている記録シート種別毎のデータと比較することで、かかるシート供給トレイ5a〜5dに格納された記録シートPの厚みや材質を判別することができる。
ピックアップロール51はシート供給トレイ5a〜5d内のシート束Psに対して上から圧接しており、前述の如くその高さは略一定となるようにボトムプレート60の上昇が制御されていることから、記録シートPの浮揚高さを検出するに当たっては、ピックアップロール51とシート束Psの接触面を規準として該浮揚高さを定義することができる。また、記録シートPの浮揚幅に関しては、CDセンサ75による撮影範囲よりも、空気の吹き込みによって生じた記録シートPの浮揚幅の方が広い場合も想定されるが、撮影範囲内における記録シートPの湾曲形状から類推して算出することが可能である。
そして、このようにしてシート供給トレイ5a〜5dに格納された記録シートPの物性を把握すれば、前述の如く、記録シートPの厚さに応じてフィードロール63に対するリタードロール64の圧接力、シート束Psに対するピックアップロール51の圧接力を最適化して、画像出力部2に対する記録シートPの給紙動作を安定化して行うことができる。また、リタードロール64に対してフィードロール63の回転方向と逆方向の回転トルクを与えて記録シートPの分離動作を行っている場合であれば、リタードロール64に与える逆方向回転トルクの大きさを調整することで、記録シートPの分離動作の安定化を図ることも可能である。
加えて、前記情報抽出部76においてシート供給トレイ5a〜5d内における記録シートPの浮揚状態を加味すれば、すなわち互いに重なり合った記録シートPの間にどの程度の隙間が形成されているのかを把握することができるので、そのままシート供給トレイ5a〜5d内の記録シートPをピックアップロール51で画像出力部2へ送り出した場合に、記録シートの給紙ミスや重送が発生しやすいか否かを把握することができる。例えば、軽量の記録シートPが積み重なったシート束Psに対して空気を吹き込むと、図18に示すように、複数枚の記録シートPがまとまった状態で浮揚してしまうことがあり、この場合には一団となって浮揚した記録シートPがそのままフィードロール63とリタードロール64のニップ部に突入してくるので、画像出力部2への給紙に際して重送が発生し易い。また、重い記録シートPが積み重なったシート束Psに対して空気を吹き込むと、図19に示すように、記録シートPの浮揚範囲が十分ではなく、シート供給トレイ5a〜5d内においてシート束Psを十分に捌けていないことから、記録シートPの給紙ミスや重送が発生し易い。従って、単にシート供給トレイにセットされている記録シートの厚さなどの物性を把握して、リタードロール64の圧接力やピックアップロール51の圧接力等の分離パラメータを最適化することにとどまらず、シート供給トレイ5a〜5d内における記録シートの浮揚状態を把握し、かかる浮揚状態も加味して分離パラメータを最適化すれば、記録シートの給紙ミスや重送を確実に防止することができる。
一方、シート供給トレイ5a〜5d内のシート束Psに対して空気流を吹きつけたことによる記録シートPの捌き具合を良好なものにするといった観点からすれば、前記情報抽出部76において記録シートPの浮揚状態を把握し、かかる浮揚状態が前述の図18又は図19に示すように不良なものであった場合、エアノズル82から吹き出す空気流の強さ、エアノズル82の向き及び高さを変更して、記録シートの浮揚状態を最適化することもできる。
図20は、シート供給トレイ5a〜5dにセットされたシート束Psに対して空気流を吹き込み、かかるシート束Psの捌き具合を最適化するための処理手順を示すフローチャートである。例えば、複写機の主電源が投入されると、この時点から図示外のブロワーが始動し、エアノズル82から噴出した空気流がシート供給トレイ5a〜5d内にセットされたシート束Psに対して吹き込まれる(ST1)。これにより、互いに重なり合ってシート束5a〜5dを構成している記録シートPは浮揚を開始することから、主電源の投入から所定の時間が経過した後に、この浮揚状態を把握する浮揚状態検出モードが開始される(ST11)。浮揚状態検出モードが開始されると、情報抽出部76はCCDセンサ75が撮影したシート束Psの側端面の画像データを取り込み(ST12)、この画像データは例えばグレースケール256階調の濃度データに変換され、画像情報の演算が行われる(ST13)。そして、その濃度データから浮揚中の記録シートPの輪郭が把握され、この輪郭を基に記録シートPの浮揚高さや浮揚している幅が算出されると共に、画質の濃淡パターンから浮揚している記録シートPの枚数と各記録シートPの間に形成された隙間の大きさ等が算出される(ST14)。例えば浮揚時における記録シートPの過渡的な運動が激しく、良好な画像データを得られなかった場合等は、記録シートPの浮揚状態に関する各種パラメータ(浮揚高さ、浮揚幅、浮揚枚数、隙間の大きさ)を正常に算出することができないことから、情報抽出部76はこれらパラメータを正常に算出できたか否かをチェックし(ST15)、正常に算出でなかったと判断した場合には、CCDセンサ75の撮影した画像データを再度取り込み(ST16)、前述のST13及びST14を繰り返す。
次に、シート供給トレイ5a〜5d内における記録シートPの浮揚状態が望ましい状態か否か、換言すれば、空気の吹き込みによってシート束Psを良好に裁くことができているか否かを確認するため、情報抽出部76は算出した記録シートPの浮揚状態に関するパラメータを予め格納されている参照テーブル内のデータと比較し(ST17)、現在の浮揚状態が最適か否かをチェックする(ST18)。ここで、浮揚状態が最適であると判断した場合には、エアノズル82による空気量の吹き出し強度、吹き出し方向、エアノズル82の設定位置をCCDセンサ75による撮影時の状態に維持する(ST19)。一方、浮揚状態が不良であると判断した場合には、算出したパラメータと参照テーブルに格納されているパラメータとの誤差に応じ、エアノズル82による空気流の吹き出し強度、吹き出し方向、エアノズル82の設定位置を変更する(ST20)。エアノズル82による空気の吹き出し強度は、ブロワーの印加電流や印加電圧を調整することによって強化又は低減させることができる。また、エアノズル82の前面に可動式の規制羽根を設け、この規制羽根の向きを変更することによって、空気流の吹き出し方向や吹き出し強度を調整するようにしても良い。これにより、浮揚状態の検出モードは終了する(ST21)。
このように、シート供給トレイ5a〜5d内のシート束Psに空気流を吹き込んだ際の該シート束Psの捌き状態をCCDセンサ75の撮影した画像データから把握し、かかる捌き状態が最適なものとなるように空気流の吹き込み方を調整してやれば、ピックアップロール51を回転させて記録シートPの給紙を行った際に、シート束Psの最上位の記録シートPのみを確実にフィードロール63とリタードロール64のニップ部に搬送することができ、記録シートPの給紙ミスや重送を防止することが可能となる。
尚、図5〜20を用いて説明した前記実施例ではCCDセンサ75の撮影した画像ータを用いてシート供給トレイ5内にセットされた記録シートPの厚さ等の物性を検出するように構成したが、厚さを検出する以外にも記録シートPに表示される種々の情報をCCDセンサ75で撮影し、その画像データからそれらの情報を読み取り、複写機やプリンタ等の画像形成装置の制御に利用するように構成することができる。
例えば、記録シートPのエッジ部の特定の領域に対して加熱により変色するマーク領域を設けておき、かかる記録シートPが複写機やレーザビームプリンタの加熱定着器4を通過した際には、加熱定着器4から伝播する熱によって前記マーク領域が変色するように構成しておく。この記録シートPが片面印刷済みの記録シートとして再度シート供給トレイ5にセットされると、図21に示すように前記マーク領域81をCCDセンサ75で撮像することができ、撮影した画像データを前記情報抽出部76で判別することにより、シート供給トレイ5にセットされている記録シートPが片面印刷済みの記録シート、換言すれば裏紙か否かを判別することが可能となる。そして、情報抽出部76において片面印刷済みの記録シートPであると判別されたならば、複写機の主制御部77はその結果に基づいて、記録シートPの画像出力部2に対する給紙パラメータや、画像出力部2における画像形成パラメータの設定を変更することができ、また、シート供給トレイ5に裏紙がセットされていることを複写機のコントロールパネルに表示し、あるいはクライアントンピュータのプリンタ管理画面上に表示することが可能となる。
前記マーク領域81の大きさをどの程度に設定すれば良いかは、記録シートPそのものの色とマーク領域81の色との明度差、色差等の条件で異なるが、発明者らが実験した結果によれば、マーク領域81がオレンジ色に変色するように設定した場合に、かかるマーク領域81の幅が3mm程度であれば目視によって認識可能であり、CCDセンサ75等の撮像手段を用いるのであれば、更に小さく設定しても十分に変色を検出可能である。変色する材料としては、表面温度感熱示温ラベル(非可逆性)、サーモラベルとして一般的に用いられている材料を流用することが可能であり、変色後のいろはオレンジ色、赤色、黒色等が存在する。変色する原理は、例えばワックス層と色素層とを積層したタイプであれば、ワックス層が所定温度以上になると溶けて下の色素層に染み込み、かかる色素層が変色するものが知られている。この場合、色素は顔料又は染料であり、ワックスはパラフィン系ワックスである。
5…シート供給トレイ、51…ピックアップロール、60…ボトムプレート、63…フィードロール、64…リタードロール、75…CCDセンサ(撮像手段)、76…情報抽出部、P…記録シート、Ps…シート束