JP4411881B2 - リチウム電池の処理方法およびリサイクル方法 - Google Patents

リチウム電池の処理方法およびリサイクル方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、リチウム電池から有価物を回収する技術および回収された有価物を利用する技術に関する。特に、正極活物質等として用いられているリチウム含有複合酸化物から有用な回収物を得る方法ならびにその回収物をリチウム電池の構成要素等として再利用(リサイクル)する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
廃リチウム電池から有価物を回収することに関する種々の方法が提案されている。例えば特許文献1には、リチウムと遷移金属元素との複合酸化物(コバルト酸リチウム等)を含む電池正極廃材を硝酸で溶解し、これを濾過して硝酸リチウムおよび遷移金属元素の硝酸塩を含有する濾液と残渣とに分離し、この濾液に水酸化リチウムを加えて生成した遷移金属水酸化物を濾別することが記載されている。他の先行技術文献として特許文献2〜10が挙げられる。
【0003】
【特許文献1】
特開平11−54159号公報
【特許文献2】
特開平10−255861号公報
【特許文献3】
特開平10−255862号公報
【特許文献4】
特開平11−6020号公報
【特許文献5】
特開2000−15216号公報
【特許文献6】
特開2003−27151号公報
【特許文献7】
米国特許第5888463号明細書
【特許文献8】
特開平8−41554号公報
【特許文献9】
特開平8−134556号公報
【特許文献10】
特開2000−119763号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来の方法は、回収される有価物の有用性(純度、性状等)や回収費用等の点でなお改善の余地のあるものであった。特に、リチウム電池の正極活物質等として用いられているリチウムと遷移金属元素とを含む複合酸化物から、リチウム成分および遷移金属成分を、より再利用しやすい形態で、かつ/または、より効率よく回収することができれば有益である。
【0005】
そこで本発明は、リチウムと一種または二種以上の遷移金属元素とを含む複合酸化物を備えるリチウム電池の処理方法であって、そのリチウム電池から有価物を、より再利用しやすい形態で回収し得る処理方法(有価物の回収方法)を提供することを一つの目的とする。本発明の他の一つの目的は、かかる有価物をより効率よく回収する処理方法を提供することである。他の一つの目的は、リチウム電池から回収した有価物のリサイクル方法を提供することである。関連する一つの目的は、リチウム電池から回収した有価物を利用して得られたリチウム電池用材料およびその製造方法を提供することである。関連する他の一つの目的は、そのリチウム電池用材料を用いてなるリチウム電池およびその製造方法を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段と作用と効果】
この出願により提供される一つの発明は、リチウムと一種または二種以上の遷移金属元素とを含む複合酸化物から構成される正極活物質を備えるリチウム電池(典型的にはリチウムイオン二次電池)を処理する方法に関する。その方法は、該リチウム電池を構成する金属部材から分別された被処理材であって該正極活物質を含む被処理材から、リチウムおよび前記遷移金属元素を酸で溶出する工程を含む。また、その酸溶出工程で得られた酸性溶液と水酸化リチウムとを混合して前記遷移金属元素を含む化合物を析出させる工程を含む。その析出した遷移金属化合物を該溶液から分離する工程を含むことができる。また、その分離後の溶液(リチウム溶液)に炭酸ガスおよび/または炭酸水を供給して炭酸リチウムを析出させる工程を含む。その析出した炭酸リチウムを該溶液から分離する工程を含むことができる。上記析出工程で析出する遷移金属化合物は、典型的には主として該遷移金属元素の水酸化物であり得る。この遷移金属水酸化物は、金属種によってはオキシ水酸化物であり得る。例えば、上記析出工程で析出するニッケル化合物の典型例は、ニッケルの水酸化物(化学式:Ni(OH)で表される化合物および化学式:NiOOHで表される化合物を包含する)である。
【0007】
処理対象たる被処理材に含まれる上記複合酸化物(以下、「リチウム・遷移金属含有複合酸化物」ともいう。)の好適例としては、リチウムとニッケルとを含む複合酸化物が挙げられる。ここで、「リチウムとニッケルとを含む複合酸化物」とはリチウムとニッケルとを構成金属元素とする酸化物の他、リチウムおよびニッケル以外に他の少なくとも一種の金属元素(すなわち、リチウムおよびニッケル以外の遷移金属元素および/または典型金属元素)を含む複合酸化物をも包含する意味である。そのような複合酸化物は、例えば一般式LiNi1-xx2で表すことができる。この式中のAは上記「他の少なくとも一種の金属元素」に対応する。また、式中のxは、0≦x<0.5、好ましくは0.1<x<0.3を満たす値である。上記複合酸化物の他の好適例としては、リチウムとコバルトとを含む複合酸化物(リチウムおよびコバルト以外の少なくとも一種の金属元素を含有するものを包含する。)、リチウムとマンガンとを含む複合酸化物(リチウムおよびマンガン以外の少なくとも一種の金属元素を含有するものを包含する。)が挙げられる。
【0008】
上記処理方法によると、リチウム電池に由来する被処理材からリチウム成分(炭酸リチウム等)および遷移金属成分(遷移金属水酸化物等)を、それぞれ固体の状態で回収することができる。このように固体状として回収されたリチウム成分および遷移金属成分は再利用するのに都合がよい。
この処理方法では、金属製の電池構成部材(電池容器、集電体等)から分別されている被処理材に対して酸溶出工程を行う。したがって、この酸溶出工程で得られる酸性溶液に、該金属部材に由来する余分な金属元素が混入することが防止される。このことは、該酸性溶液から有用性の高い(再利用に適した)回収物を得るという点で有利である。
【0009】
この処理方法の典型的な態様では、酸溶出工程で得られた酸性溶液と水酸化リチウム(LiOH)とを混合して遷移金属元素の水酸化物を析出させる。一般に、遷移金属元素の水酸化物は実質的に非水溶性であり、少なくとも水酸化リチウムに比べて溶解度が著しく低い。例えば、25℃の水に対するLiOHの溶解度は約12.5g/100g(H2O)であるのに対し、Ni(OH)2の溶解度は約7.5×10-4g/100g(H2O)、NiOOHの溶解度は約1×10-4g/100g(H2O)、Fe(OH)2の溶解度は約4.8×10-3g/100g(H2O)、Cu(OH)2の溶解度は約2.4×10-3g/100g(H2O)、Co(OH)2の溶解度は約8〜22×10-4g/100g(H2O)である。このような溶解度の違いを利用して、リチウム成分(リチウムイオン)と遷移金属成分(析出した遷移金属水酸化物)とを容易に分離することができる。
【0010】
また、遷移金属化合物(析出物)を分離した後の溶液(リチウム溶液)から炭酸リチウム(Li2CO3)を析出させるには、炭酸ガス(CO2)または炭酸水(H2CO3)を用いる。このようにアルカリ金属成分を含まない材料を用いて炭酸リチウムを析出させることにより、リチウム以外のアルカリ金属元素の混入が少ない炭酸リチウムを得ることができる。例えば、炭酸ガスまたは炭酸水に代えて炭酸ナトリウム(Na2CO3)を用いた場合と比較すると、得られた炭酸リチウムに含まれるナトリウム成分の量を顕著に少なくすることができる。また、上述のように、上記遷移金属化合物析出工程では水酸化リチウム(LiOH)を用いる。これにより、該析出工程で水酸化リチウムに代えて水酸化ナトリウム(NaOH)等の他のアルカリ金属水酸化物を用いた場合に比べて、得られた炭酸リチウムに含まれるナトリウム成分の量を顕著に少なくすることができる。いったん混入したナトリウム成分をリチウム成分から分離することは一般に困難であるところ、本発明の方法によると、簡単な操作により純度の高い(特に、リチウム以外のアルカリ金属元素の混入が少ない)炭酸リチウムを得ることができる。
【0011】
一般的なリチウム電池の多くは、導電性のよい集電体(金属箔等)に正極活物質を含む正電極材が付着した構成の正極を備える。この正電極材は、典型的には正極活物質に加えてポリフッ化ビニリデン等の結着剤(バインダ)を含有する。さらにカーボンブラック等の導電材を含有することもある。これらを含む正電極材を、そのまま被処理材として用いる(酸溶出工程に供する)ことができる。また、後述する加熱処理等によって結着剤の少なくとも一部(好ましくは実質的に全部)を除去した正電極材を被処理材として用いてもよい。負極活物質を含む負電極材が集電体に付着した構成の負極を備えるリチウム電池にあっては、その負電極材と正電極材(正極活物質等)とを含む被処理材を用いてもよく、実質的に正電極材(正極活物質等)のみを含む被処理材を用いてもよい。
【0012】
この出願により提供される処理方法の好ましい一つの態様では、処理対象たるリチウム電池を加熱して揮発性材料を除去する処理を行う。ここで「揮発性材料」とは、加熱により気体状(蒸発、昇華、熱分解等の種類を問わない)となって除去し得る材料をいう。そのような揮発性材料としては、電解液を構成する有機溶媒、電解質(リチウム塩等)、セパレータ、結着剤、絶縁材、外装塗料等の一種または二種以上が挙げられる。各構成材料は、実質的に全部を除去することが好ましいが、少なくとも一部を除去することによっても本発明の効果が発揮され得る。リチウム電池に含まれる有機物(有機溶媒、セパレータ、結着剤等)の大部分を除去することが好ましく、実質的に全部を除去することがより好ましい。加熱によりリチウム電池から除去した揮発性材料(典型的には有機物)は、その一部または全部を回収して再利用することができる。加熱後に残った電池構成部材(例えば電池容器、集電体等の金属材料)から正極活物質を含む電極材(正電極材と負電極材とが混ざっていてもよい)を分別し、その電極材を被処理材として前記酸溶出工程に供することが好ましい。上記電極材の分別は、例えば篩い分け等により行うことができる。
【0013】
リチウム電池を加熱して揮発性材料(典型的には有機物)を除去する操作は、その加熱温度を段階的に高めて行うことが好ましい。一または二以上の段階で除去される揮発性材料を、他の段階で除去される揮発性材料とは別に(分別して)回収することによって、より有用性の高い(再利用性のよい)回収物を得ることができる。
なお、処理対象たるリチウム電池は、事前にほぼ完全に放電させておくことが好ましい。このことによって、処理時の取扱性や作業性の向上、作業環境の改善、処理装置の小型化・簡略化等のうち少なくとも一つの効果が得られる。
【0014】
遷移金属化合物を析出させる工程は、酸性溶液に含まれる遷移金属イオンの量に対して水酸化リチウムの量が過剰となる条件で行うことが好ましい。これにより、析出した遷移金属化合物を分離した後の溶液(リチウム溶液)に残留する遷移金属成分(イオン)の濃度を低減することができる。溶液に残留する遷移金属イオンの濃度を低減することにより、この溶液から得られる炭酸リチウムの有用性(純度)を高めることができる。
【0015】
この出願により提供される処理方法の他の好ましい一つの態様では、上記遷移金属化合物析出工程を酸化性条件下で行う。このことによって遷移金属化合物の生成および/または析出が促進される。例えば、酸性溶液に含まれる遷移金属イオンの量に対して使用する水酸化リチウムの量をより少なくしても(過剰の程度を小さくしても)、分離後の溶液に残留する遷移金属イオン濃度を十分に低減することができる。この遷移金属化合物析出工程で余った(過剰に用いられた)水酸化リチウム(未反応物)は、被処理材から溶出したリチウムとともに、後続する炭酸リチウム析出工程で炭酸リチウムとして回収される。したがって、遷移金属イオンに対して過剰に使用する水酸化リチウムの分量を少なくするということは、水酸化リチウムの利用効率(酸性溶液と混合した水酸化リチウムのうち、該酸性溶液に含まれる遷移金属イオンと反応する水酸化リチウムの割合)を高めるという点で好ましい。酸化性条件下で行う遷移金属化合物析出工程の好ましい一つの態様は、過酸化水素を含有させた前記酸性溶液と水酸化リチウムとを混合する処理を含む。他の好ましい一つの態様は、酸素ガスを供給(典型的にはバブリング)しながら酸性溶液と水酸化リチウムとを混合する処理を含む。
【0016】
この出願により提供される処理方法は、前記分離工程において分離された遷移金属化合物を酸に溶解させる工程をさらに含むことができる。また、その酸溶解工程で得られた酸性溶液に中和剤を添加して前記遷移金属元素の水酸化物を析出させる第二の析出工程を含むことができる。上記酸溶解工程および第二析出工程を行うことによって、より有用な回収物(遷移金属水酸化物)を得ることができる。例えば、純度、金属組成、粒径、比表面積および/またはX線回折ピークの半価幅等のうち少なくとも一つの点で、リチウム電池の正極活物質等として用いられるリチウム・遷移金属複合酸化物用の原料として適したものとなり得る。
【0017】
被処理材に含まれる正極活物質は、リチウムと、第一の遷移金属元素と、他の少なくとも一種の金属元素(以下、「他の金属元素」ということもある。)とを含むものであり得る。上記第一遷移金属元素の好適例としては、Ni,CoおよびMnが挙げられる。また、上記他の金属元素は、第一遷移金属元素とは異なる金属元素であって、Co,Al,Mn,Cr,Fe,V,Mg,Ti,Zr,Nb,Mo,W,Cu,Zn,Ga,In,Sn,LaおよびCeからなる群から選択される一種または二種以上の金属元素であり得る。このような場合、前記酸溶出工程ではリチウム、前記第一金属元素および前記他の金属元素を酸に溶出させ、得られた酸性溶液と水酸化リチウムとを混合して前記第一遷移金属元素を含む化合物(典型的には、第一遷移金属元素の水酸化物)および前記他の金属元素(典型的には該他の金属の水酸化物)を含む化合物を析出させるとよい。その析出物を溶液から分離して前記酸溶解工程で酸に溶解させるとよい。前記第二析出工程では、その酸溶解工程で得られた溶液に中和剤を添加して、前記第一遷移金属元素の水酸化物とともに前記他の金属元素の水酸化物を該溶液から析出させるとよい。
【0018】
この第二析出工程では、前記酸溶解工程で得られた溶液につき、前記第一遷移金属元素および前記他の金属元素の含有量の比(典型的にはモル比あるいは質量比等)を把握し、その比が所定範囲から外れている場合には該所定範囲内の量比に調整した後に、その溶液から前記第一遷移金属元素の水酸化物とともに前記他の金属元素の水酸化物を析出(好ましくは共沈)させるとよい。特に、前記第一遷移金属元素がニッケルであり、前記他の金属元素がコバルトである場合には、水酸化ニッケルと水酸化コバルトとを共沈させることにより、正極活物質用原料として適した状態でニッケルとコバルトとが融合した回収物が得られる。また、一般に溶液から析出された水酸化コバルトはコロイド状となりやすいところ、水酸化ニッケルと共沈させることにより液相と容易に分離することができる。
【0019】
前記中和剤としてはアンモニア水を用いることが好ましい。このアンモニア水は単独で使用してもよく、他の中和剤(アルカリ金属水酸化物等)と併用してもよい。中和剤としてアンモニア水を用いる場合、この第二析出工程は、遷移金属イオンの濃度(第一遷移金属元素および他の金属元素を含有する溶液にあっては、第一遷移金属元素のイオン(第一遷移金属イオン)の濃度)、溶液のpH、アンモニウムイオン(NH4 +)の濃度、のうち少なくとも一つの項目が所定範囲となるように管理しつつ行うことが好ましい。上記第二析出工程では、これらの項目のうち二以上の項目が所定範囲となるように管理することが好ましく、三つの項目の全てが所定範囲内となるように管理することが特に好ましい。これにより、平均粒径、比表面積、X線回折ピークの半価幅、のうち少なくとも一つの特性値が所望の範囲にある析出物(主として遷移金属元素の水酸化物)が得られる。これらの特性値のうち二つ以上が所望の範囲にあることが好ましく、三つの特性値の全てが所望の範囲にあることが特に好ましい。このような析出物は、リチウム電池の正極活物質等として用いられるリチウム・遷移金属含有複合酸化物を製造するための原料等として好適である。なお、上記平均粒径は、例えばレーザ回折・散乱法を利用した粒径測定装置等により測定することができる。上記比表面積は、例えばBET法を利用した比表面積測定装置等により測定することができる。上記半価幅は、例えば一般的な粉末X線回折装置を用いて得られたX線回折強度曲線から得ることができる。
【0020】
この出願により提供される処理方法の好ましい適用対象としては、リチウム・遷移金属含有複合酸化物の遷移元素がニッケルである複合酸化物(すなわち、リチウム・ニッケル含有複合酸化物)から構成される正極活物質を備えるリチウム電池が挙げられる。また、この方法は、そのような正極活物質の処理方法として好適である。また、上記リチウム・ニッケル含有複合酸化物の処理方法として好適である。特に好ましい適用対象(処理対象)としては、第一遷移金属元素がニッケルであり、他の金属元素(副成分)としてコバルトを含むリチウム・ニッケル含有複合酸化物、この複合酸化物から構成される正極活物質、およびこのような正極活物質を備えるリチウム電池が例示される。かかる適用対象に対しては、本発明の処理方法を採用することによる長所が特によく発揮され得る。そのようなリチウム・ニッケル複合酸化物の一例として、一般式LiNiOで表されるものが挙げられる。他の例として、一般式LiNi1−xCoで表されるものが挙げられる。ここで、0<x<0.5であり、好ましくは0.1<x<0.3である。Coに代えてAl,Mn,Cr,FeまたはVを有する複合酸化物であってもよい。さらに他の例として、一般式LiNi1−y−zCoAlで表されるものが挙げられる。ここで、0≦y<0.5(好ましくは0<y<0.2)であり、0<z<0.5(好ましくは0<z<0.1)であり、かつ0<(y+z)<0.5(好ましくは0.1<(y+z)<0.3)である。Alに代えて、あるいはAlとともに、Mn,Cr,Fe,V,Mg,Ti,Zr,Nb,Mo,W,Cu,Zn,Ga,In,Sn,LaおよびCeからなる群から選択される一種または二種以上の金属元素を有する複合酸化物であってもよい。
【0021】
この出願はまた、リチウムと一種または二種以上の遷移金属元素とを含む複合酸化物から構成される正極活物質を備えるリチウム電池をリサイクル(再利用)する方法を提供する。例えば、かかるリチウム電池の構成要素であって有価物たり得る構成要素をリサイクルする方法を提供する。そのリサイクル方法では、水酸化リチウムと遷移金属水酸化物とを所定の組成比で混合する。その混合物を焼成してリチウム・遷移金属含有複合酸化物を生じさせる。ここで使用する水酸化リチウムおよび遷移金属水酸化物の少なくとも一方として、上述したいずれかの処理方法により得られた(すなわち、リチウム電池から回収された)ものを用いる。例えば、水酸化リチウムとして、上述したいずれかの処理方法により得られた(すなわち、リチウム電池から回収された)炭酸リチウムを焼成した後に水と反応させて生成させた水酸化リチウムを用いる。あるいは、遷移金属水酸化物として、上述したいずれかの処理方法により得られた(すなわち、リチウム電池から回収された)遷移金属水酸化物を用いる。このリサイクル方法は、得られたリチウム・遷移金属含有複合酸化物を集電体に付着させて正極を作製する工程を備えることができる。その正極を、電解液およびその電解液を介して配置された負極とともに電池容器に収容してリチウム電池を構築する工程をさらに備えることができる。
【0022】
また、この出願により開示される技術には以下のものが含まれる。
(1)リチウムと一種または二種以上の遷移金属元素とを含む複合酸化物から構成される正極活物質であって、
その複合酸化物は、水酸化リチウムと該遷移金属元素の水酸化物とを所定の割合で混合した混合物を焼成して得られたものであり、
以下の条件:
その水酸化リチウムとして、上述したいずれかの処理方法により得られた(すなわち、リチウム電池から回収された)炭酸リチウムを焼成した後に水と反応させて得られた水酸化リチウム(例えば、水酸化リチウム一水塩(LiOH・HO))を用いる;および、
その水酸化物として、上述したいずれかの処理方法により得られた(すなわち、リチウム電池から回収された)遷移金属水酸化物を用いる;
の少なくとも一方を満たすことを特徴とするリチウム電池用(典型的には、リチウムイオン二次電池用)正極活物質。
【0023】
上記処理方法により得られた炭酸リチウムは純度が高いものとなり得る。特に、リチウム以外のアルカリ金属元素(ナトリウム等)の混入量の少ないものとすることができる。したがって、そのような炭酸リチウムから得られた(調製された)水酸化リチウムは、リチウム電池の正極活物質製造用の原料として好適に用いることができる。また、遷移金属水酸化物としては、上述したいずれかの方法により得られた(すなわち、リチウム電池から回収された)遷移金属水酸化物を好ましく用いることができる。
【0024】
(2)上記(1)の正極活物質を用いて構築されていることを特徴とするリチウム電池。例えば、正極活物質を含む正電極材が正極集電体上に設けられている正極と、
負極活物質を含む負電極材が負極集電体上に設けられている負極と、
その正電極材と負電極材の間に配置されている電解液とを備え、
ここで、前記正極活物質として上記(1)の正極活物質を用いて(再利用して)構築されていることを特徴とするリチウム電池。
【0025】
(3)水酸化リチウムと一種または二種以上の遷移金属元素の水酸化物とを所定の割合で混合した混合物を焼成して、リチウムと該遷移金属元素とを含む複合酸化物を生じさせる工程と、
その複合酸化物を集電体に付着させて正極を作製する工程と、
その正極を、電解液およびその電解液を介して配置された負極とともに電池容器に収容してリチウム電池を構築する工程とを包含するリチウム電池製造方法であって、
以下の条件:
その水酸化リチウムとして、上述したいずれかの処理方法により得られた(すなわち、リチウム電池から回収された)炭酸リチウムを焼成した後に水と反応させて生成させた水酸化リチウムを用いる;および、
その遷移金属水酸化物として、上述したいずれかの処理方法により得られた(すなわち、リチウム電池から回収された)遷移金属水酸化物を用いる;
の少なくとも一方を満たすことを特徴とするリチウム電池製造方法。
【0026】
【発明の実施の形態】
この発明はまた、下記の形態で実施することができる。
(形態1)
リチウム電池を加熱して揮発性材料(主として有機物)を除去する工程を含む処理方法において、その揮発性材料の除去を減圧下で行う。この場合には、減圧による沸点降下を利用して、常圧の場合よりも低温で揮発性材料(有機溶媒等)を揮発させることができる。これにより、例えば電解液に含まれる有機溶媒の変質(熱分解等)を抑制して、再利用性のよい回収物を得ることができる。また、減圧により揮発速度を高めることができるので、加熱下におかれる時間が短くなり、より変質の少ない(再利用性のよい)回収物を得るという効果が得られる。このように減圧下で加熱することにより、リチウム電池を構成する金属部材の酸化が抑制され得る。このことは金属部材を回収・再利用する上で有利である。
【0027】
(形態2)
遷移金属水酸化物を析出させる工程では、酸性溶液と水酸化リチウムとを、混合後の溶液のpHが約7.5以上、より好ましくはpH約8以上の範囲となる量比で混合する。これにより、析出した遷移金属化合物を分離した後の溶液に残留する遷移金属成分(イオン)の濃度を低くすることができる。したがって、該酸性溶液からの遷移金属成分の回収率を高めることができる。また、遷移金属化合物分離後の溶液から得られる炭酸リチウムの純度を高める(例えば、遷移金属成分の含有率を低減する)ことができる。これらのうち少なくとも一つの効果を実現することができる。該析出工程を酸化性条件下で行う場合には、かかる条件を満たすように行うことが特に有効である。一方、混合後の溶液のpHが上記範囲よりも低すぎると、生成した遷移金属化合物が溶液に溶解しやすくなって析出量が減少することがある。また、遷移金属化合物分離後の溶液に残留する水酸化リチウムの量を減らす(水酸化リチウムの利用効率を高める)という観点からは、混合後の溶液のpHが凡そ7.5〜10(より好ましくはpHが凡そ8〜9.5)となるような量比で酸性溶液と水酸化リチウムとを混合することが好ましい。
【0028】
【実施例】
以下、本発明に関する具体的実施例を説明するが、本発明をかかる実施例に示すものに限定することを意図したものではない。また、本明細書において特に言及している内容以外の技術的事項であって本発明の実施に必要な事項は、従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている技術内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
【0029】
<実施例1:リチウムイオン二次電池の処理方法>
まず、この実施例で処理するリチウム電池(ここでは、使用済みの車両用リチウムイオン二次電池)の構成を説明する。
図2は、本実施例に係るリチウムイオン二次電池を示す模式的断面図である。この図に示されるように、二次電池1は、一対の電極シート(正極シート12および負極シート14)が二枚のセパレータシート16を介して偏平状に捲回された捲回型電極体10と、電極体10を収容する偏平な直方体状(角型または平型ともいう。)の容器20と、電極体10の軸方向両端部に接続された正極端子30および負極端子40とを備える。
【0030】
電極体10を構成する正極シート12の捲回前の状態を図3に示す。この正極シート12は、長尺状の正極集電体122と、その両面に正電極材を層状に付着させて設けられた正電極材層124とを備える。正極シート12の一方の長辺側(図3の上側)は、いずれの面にも正電極材層124が設けられていない接続部126となっている。なお、負極シート14の構造は正極シート12と同様であるので、図3の括弧内に負極シート14に対応する番号を付し、重複した説明は省略する。
電極体10は、これらのシートを正極シート12、セパレータシート16、負極シート14、セパレータシート16の順に積層し、この積層体を長尺方向に捲回した構成を有する。ここで、正極シート12と負極シート14とは捲回軸方向に対して互いに位置をずらして、セパレータシート16の両側から接続部126,146がそれぞれはみ出すようにして積層されている。その結果、図2に模式的に示すように、電極体10の軸方向の一端は主として正極シート12から構成され、軸方向の他端は主として負極シート14から構成されている。この一端および他端に正極端子30および負極端子40がそれぞれ接続されている。
【0031】
このリチウムイオン二次電池1の正電極材層124は、第一遷移金属元素がニッケルであって、他の金属元素としてコバルトを含有するリチウム・ニッケル含有複合酸化物から実質的に構成される正極活物質を主成分とする。かかる正極活物質は、一般式LiNi1-xCox2(0<x<0.5、好ましくは0.1<x<0.3)で表すことができる。本実施例に係る二次電池1では、上記一般式におけるxが約0.2であるリチウム・ニッケル含有複合酸化物(すなわち、LiNi0.8Co0.22で表される複合酸化物)を正極活物質に用いている。正電極材層124は、カーボンブラック(CB)およびポリテトラフルオロエチレン(PTFE)をさらに含有する。それらの含有割合は、例えば正極活物質:CB:PTFEの質量比が凡そ85:10:5となる割合である。一方、負電極材層144は、負極活物質としてのカーボンブラック(CB)を主成分とし、結着剤としてのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を含有する。それらの含有割合は、例えばCB:PTFEの質量比が凡そ90:10となる割合である。この二次電池1を構成する正極集電体122および正極端子30はアルミニウム製(アルミニウムまたはアルミニウム合金を主構成材料とすることをいう。以下同じ。)であり、負極集電体142および負極端子40は銅製である。また、セパレータシート16はポリオレフィン製(ここではポリエチレン製)の多孔質シートである。
【0032】
容器20はアルミニウム製であって、有底筒状の本体22と、本体22の上端開口部を封止する蓋体24とを備える。この容器20に捲回型電極体10が収容されている。正極端子30および負極端子40は、蓋体24を貫通して容器20の外方に延びている。これらの端子30,40はナット32,42により蓋体に固定されている。正極端子30と蓋体24は絶縁体26により隔てられている。また、蓋体24には安全弁28が設けられている。この安全弁28は、容器20の内部圧力が所定の設定値を超えて高くなると容器20の内外を自動的に連通させて圧力を解放するように構成されている。
【0033】
電極体10には図示しない電解液が含浸されている。この電解液を構成する有機溶媒としては、γ−ブチロラクトン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン等からなる群から選択された一種または二種以上を用いることができる。本実施例に係る二次電池1ではジメチルカーボネート(DMC)とエチルメチルカーボネート(EMC)との7:3(質量比)混合溶媒を用いている。また、この電解液を構成する電解質としては、LiPF6,LiCF3SO3,LiC49SO3,LiClO4,LiBF4,LiAsF6,LiN(CF3SO22,LiC(CF3SO23等の各種リチウム塩から選択される一種または二種以上を用いることができる。本実施例に係る二次電池1ではヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)を用いている。その濃度は約1mol/リットルである。
【0034】
次に、上記構成のリチウムイオン二次電池1から有価物を回収する手順につき説明する。図1は、その手順の概略を示すフローチャートである。
まず、使用済みのリチウムイオン二次電池1を加熱して揮発性成分(主として有機物)を回収する処理を行う(ステップ220)。このステップ220は、有機溶媒を除去(回収)するステップ222と、電解質を除去(回収)するステップ224と、セパレータを除去(回収)するステップ226と、結着剤を除去(回収)するステップ228とを含む。
【0035】
かかる揮発性成分の回収に用いる装置の概略構成例を図4に模式的に示す。図4において、減圧加熱炉60は、処理室64を区画する本体61を備える。本体61の壁面には誘導加熱コイル62が設けられている。処理室64内の温度は、コイル62に接続された温度制御器63によって任意のパターンに制御することができる。本体61には真空ポンプ65が接続されており、処理室64の内部圧力を任意に制御できるようになっている。
処理室64の下方には一次冷却装置67が設けられている。処理室64内の気体(例えばリチウムイオン二次電池から揮発した有機溶媒)は炉内ガス導管66を介して一次冷却装置67に導入される。一次冷却装置67の壁面には誘導加熱コイル68が設けられており、この一次冷却装置67における冷却の程度を調節することができるようになっている。一次冷却装置67の下流には、炉外ガス導管70を介して二次冷却装置71が連結されている。この二次冷却装置71で冷却されて凝縮(液体化または固体化)した回収物はコレクタ74に集められる。残りの気体は排ガス浄化器72を介して外部に排出される。
【0036】
このような構成の装置を用いて、例えば以下のようにして二次電池1から有機溶媒を揮発除去し、その揮発物を回収する(ステップ222)。すなわち、あらかじめ開孔した使用済みリチウムイオン二次電池1を処理室64に収容する。二次電池1を開孔する方法は、容器に孔をあける方法、安全弁を作動させる方法等から適宜選択すればよい。真空ポンプ65を稼動させて処理室64内を減圧する。この減圧の程度は特に限定されない。通常は少なくとも80kPa以下(典型的には0.1〜80kPa)に減圧することが適当である。50kPa以下(典型的には0.1〜50kPa)に減圧することがより好ましい。本実施例では処理室64内を1〜10kPaに減圧している。
かかる減圧状態を維持しつつ、誘導加熱コイル62に通電して処理室64内の温度(炉内温度)を上昇させる。これにより二次電池1を加熱する。このときの加熱温度は、処理室64内の圧力に応じて、二次電池1に用いられている電解液の有機溶媒の沸点(二種以上の有機溶媒を含む場合には各成分の沸点またはそれらの共沸点)付近とすることができる。あるいは、上記有機溶媒以外の電池構成材料が実質的に揮発しない範囲で、該有機溶媒の沸点を上回る温度に加熱することも好適である。これにより二次電池1から有機溶媒を効率よく揮発させることができる。なお、常圧におけるDMCの沸点は約90℃であり、EMCの沸点は約107℃である。
【0037】
本実施例では、図5に示す温度チャートのように、炉内温度を常温から徐々に上昇させ、約85℃に30分間維持する(図中に矢印aで示す段階)。これにより上記有機溶媒のうちDMCが優先的に揮発(ガス化)する。発生したガスは、炉内ガス導管66、一次冷却装置67および炉外ガス導管70を経て二次冷却装置71に導入される。この二次冷却装置71でガスを冷却して有機溶媒を凝結(液化)させ、コレクタ74に回収する。次いで、炉内温度をさらに上昇させ、102℃に30分間維持する(図中に矢印bで示す段階)。これにより、残存する有機溶媒(主としてEMC)を揮発(ガス化)させて二次冷却装置71で液化・回収する。
このように本実施例では、沸点の異なる二成分を含む有機溶媒(混合溶媒)を、二段階の加熱によって揮発させる。すなわち、上記aの段階で相対的に低沸点のDMCの大部分を揮発させた後に、加熱温度をさらに上昇させて残りの有機溶媒(主としてEMC)を揮発させる。このように加熱温度を段階的に変化させて低沸点溶媒から高沸点溶媒へと順に抜き取ることにより、加熱による変質(分解等)を抑制しつつ有機溶媒を効率よく揮発・回収することができる。
なお、24℃におけるDMCの蒸気圧は約2.4kPaであり、25℃におけるEMCの蒸気圧は約3.3kPaである。このため、上記a〜b段階で揮発したDMCおよびEMCは、典型的には混合溶媒として回収される。後述するように、この回収された混合溶媒は、不純物(DMCおよび/またはEMCの熱分解物等)の含有割合が少なく、再利用性のよいものである。例えば、リチウムイオン二次電池用の電解液として使用(再利用)することができる。
【0038】
次いで、上記加熱後に残った電池構成材料から電解質(ここではLiPF6)を揮発(主として熱分解)させて除去し、その揮発物を回収する(ステップ224)。例えば図5に示す温度チャートのように、炉内温度を約160〜180℃(LiPF6の熱分解温度域に相当する)に維持する(図中に矢印cで示す段階)。これによりLiPF6が熱分解してフッ化リチウム(LiF)およびフッ化リン(PF5)が生じる。フッ化リンは、一次冷却装置67および二次冷却装置71を経て、真空ポンプ65の下流にある排ガス浄化器72に導入される。この排ガス浄化器72の器内には水酸化カルシウム水溶液が貯留されており、この水酸化カルシウムがフッ化リンと反応してフッ化カルシウム(CaF2)およびリン酸カルシウム(Ca3(PO42)を生じる。これによりフッ素成分およびリン成分を固体として安定的に回収(捕集)することができる。なお、このcの段階を行う際の加熱温度は上記温度に限定されるものではなく、実用的な速度で電解質を揮発させて二次電池1から除去し得る温度域であればよい。例えば、電解質の揮発(熱分解)温度と同等以上の温度域で行うことができる。揮発(熱分解)温度〜+50℃の範囲とすることが好ましい。減圧度が同程度であれば、c工程における加熱温度は上記aおよびbの段階の温度よりも80℃以上高く設定することが好ましい。
【0039】
上記加熱後に残った電池構成材料からセパレータを揮発(主として熱分解)させて除去し、その揮発物を回収する(ステップ226)。すなわち、図5に示す温度チャートのように、炉内温度を約300℃に維持する(図中に矢印dで示す段階)。これにより、図2に示す電極体10を構成するセパレータ16(多孔質ポリエチレンシート)が熱分解して低級炭化水素等のガスを生じる。そのガスは、一次冷却装置67および/または二次冷却装置71にて液状(例えば、複数種類の炭化水素の混合物を主体とする粘稠な液体状)または固体状として回収することができる。得られた回収物は、燃料等として有効に再利用することができる。なお、このdの段階を行う際の加熱温度は上記温度に限定されるものではなく、セパレータを揮発(熱分解等)させて二次電池1から除去し得る温度域であればよい。ポリオレフィン製(ポリエチレン製、ポリプロピレン製等)のセパレータであれば、加熱温度を例えば230〜450℃の温度範囲とすることができ、300〜400℃の範囲とすることが好ましい。減圧度が同程度であれば、このd段階における加熱温度を上記c段階の温度よりも50℃以上(典型的には50〜250℃、好ましくは100〜200℃)高く設定することが好ましい。
【0040】
さらに、上記加熱後に残った電池構成材料から、電極材を構成する結着剤を揮発(主として熱分解)させて除去し、その揮発物を回収する(ステップ228)。すなわち、図5に示す温度チャートのように、炉内温度を約550℃に維持する(図中に矢印eで示す段階)。これにより、電極材を構成する結着剤(ポリテトラフルオロエチレン)が熱分解して、低級炭化水素やフッ化物等のガスを生じる。生じたガスは、一次冷却装置67、二次冷却装置71および排ガス浄化器72のうち一または二以上の箇所で液体状または固体状として回収(捕集)することができる。なお、このe段階を行う際の加熱温度は上記温度に限定されるものではなく、実用的な速度で結着剤を揮発させて炉内から除去し得る温度域であればよい。例えば、結着剤としてポリテトラフルオロエチレンを用いている場合には、上記e段階における加熱温度を430〜570℃(好ましくは500〜550℃)の温度範囲とすることができる。また、結着剤としてポリフッ化ビニリデンを用いている場合には、この加熱温度を400〜570℃(好ましくは470〜520℃)の温度範囲とすることができる。減圧度が同程度であれば、このe段階における加熱温度を上記d段階の温度よりも50℃以上(典型的には50〜350℃、好ましくは100〜300℃)高く設定することが好ましい。結着剤の除去に要する時間の短縮および/または結着剤の除去率の向上という観点からは、このe段階を行う際の加熱温度を高めに設定することが好ましい。ただし、この電池を構成する金属部材(例えばアルミニウム製の正極集電体)が溶融しない程度の温度(例えば、アルミニウムの場合には凡そ570℃以下、より好ましくは凡そ550℃以下)とすることが好ましい。
【0041】
以上の工程(ステップ220)では、加熱温度を段階的に上昇させて各段階毎に揮発物を回収する。このように二次電池からその構成材料を揮発温度の低い材料から高い材料へと順次抜き取ることにより、再利用性のよい回収物(有価物)を得ることができる。なお、このように電池からまず有機溶媒を抜き取る(除去する)ことは、電池の内部抵抗が高まること等から、以後の工程における電池の取扱性が向上するので好ましい。また、この有機溶媒の抜き取り(ステップ222)を減圧下で行うことにより、(1).過度の加熱による有機溶媒の変質を防ぐ、(2).有機溶媒の除去に要する時間を短縮する、(3).加熱のためのエネルギーを節約する、のうち少なくとも一つの効果を得ることができる。
【0042】
上記工程(ステップ220)を経て有機物が除去された電池構成材料(加熱残分)には、容器と、正極および負極の端子と、正極および負極の集電体と、正極および負極の電極材(結着剤を除く)が含まれている。図1に示すステップ232,234では、この加熱残分から金属部材を回収(分別)する。
すなわち、ステップ232では容器20(図2参照)を例えば上下に分割(切断等)して容器20から電極体10を取り出す。ナット32,42を緩めて容器20(蓋体22)と電極体10とを分離する。このようにして分別した容器20(本体22および蓋体24)は、アルミニウム材料として各種用途に再利用することができる。
【0043】
捲回型電極体10は、すでにセパレータシート16が失われている(揮発している)ことにより空隙の多い状態となっている。このため、電極体10を構成している正極集電体122と負極集電体142とを容易に分離することができる。例えば、正極端子30と負極端子40とを電極体10の捲回軸方向に互いに遠ざかるように引っ張ることにより、捲回状態にある正極集電体122から、同じく捲回状態にある負極集電体142を引き抜くことができる。また、これらの集電体122,142の両面で電極材層124,144を構成していた電極材は、すでに結着剤が揮発していることから、集電体から脱落(剥離)しているか、少なくとも脱落しやすい状態となっている。したがって、集電体を振動篩機により加振する方法、集電体を水に漬けて超音波振動を加える方法等によって、集電体表面に残っている電極材を容易に脱落させることができる。このようにして集電体を分離回収する(ステップ234)。回収した集電体は、アルミニウム材料および銅材料としてそれぞれ各種用途に再利用することができる。
【0044】
図1に示すステップ245では、ここまでの工程によって種々の電池構成部材から分別された電極材(正電極材と負電極材との混合物)を被処理材として、この被処理材に含まれる金属成分を酸で溶出する。酸としては塩酸(HCl)、硫酸(H2SO4)、硝酸(HNO3)等を用いることができる。本実施例では塩酸を用いた。この酸溶出工程により被処理材から溶出する主な金属元素は、正極活物質を構成するリチウム、ニッケルおよびコバルトである。
ステップ245で得られた酸性溶液を濾過する(ステップ246)。この濾液は、リチウムイオン、ニッケルイオンおよびコバルトイオンを含有する。一方、ステップ246の濾過により酸性溶液から分離回収された不溶分は、主に正電極材の導電材および負極活物質として用いられていたカーボン材料(カーボンブラック)である。回収されたカーボン材料は、例えば融雪材、土壌改良材等として有効に利用することができる。
【0045】
ステップ246の濾過により得られた塩酸溶液(濾液)を攪拌しながら、この溶液に水酸化リチウム溶液を添加すると、溶液中のニッケルイオンおよびコバルトイオンが水酸化物を生じる(ステップ247)。ここで、25℃の水に対するLiOHの水に対する溶解度は、約12.5g/100g(H2O)である。これに対して、水酸化ニッケル(Ni(OH)2)の溶解度は、25℃の水に対して約7.5×10-4g/100g(H2O)である。また、水酸化コバルト(Co(OH)2)の溶解度は、25℃の水に対して約8〜22×10-4g/100g(H2O)である。かかる溶解度の顕著な違いによって、溶液から水酸化ニッケルおよび水酸化コバルトが析出する。一方、溶液中にはリチウムイオンおよび塩素イオンが存在するが、塩化リチウムは溶解度が高いので通常は実質的に析出しない。したがって、この溶液を濾過することにより(ステップ248)、析出した遷移金属水酸化物(水酸化ニッケルおよび水酸化コバルト)と、リチウムイオンを含む溶液(リチウム)とを分離することができる。
【0046】
ステップ248で得られたリチウム溶液からリチウム成分を固体状として回収する(ステップ252〜256)。すなわち、この溶液に炭酸ガス(CO2)を供給すると、液中のリチウムイオンがCO2と反応して炭酸リチウム(Li2CO3)を生じる(ステップ252)。このとき、ステップ248で濾別したリチウム溶液を、塩化リチウム(LiCl)が析出しない程度の範囲で濃縮して用いてもよい。炭酸リチウムは塩化リチウムに比べて水に対する溶解度が低いので、溶液から析出して沈殿を生じる。その沈殿(析出物)を液相と濾別し(ステップ254)、乾燥させる(ステップ256)。このようにして高純度の炭酸リチウムを回収することができる。なお、ステップ254で析出物を分離した後の溶液(濾液)は、ステップ245で被処理材から金属成分を溶出するのに用いる塩酸溶液として再利用することができる。
【0047】
このステップ252においてリチウム溶液に炭酸ガスを供給する方法としては、溶液にCO2ガスをバブリングする方法等を採用することができる。リチウム溶液(リチウムイオン)とCO2とをより効率よく反応させるために、CO2を含む加圧(例えば、常圧〜凡そ1Mpaの)雰囲気下で反応させる、CO2を含む雰囲気中にリチウム溶液を噴霧する、等の手段を適宜採用することができる。雰囲気中の炭酸ガス濃度は高いほうが好ましい。例えばCO2濃度が凡そ50〜100vol%(より好ましくは凡そ80〜100vol%)の雰囲気中で反応させることが好ましい。実質的にCO2ガスからなる雰囲気下で反応させることが特に好ましい。なお、反応液に溶存するCO2の濃度が高くなると炭酸リチウムの溶解度が上昇する傾向にある。そこで、例えばCO2濃度がほぼ100%の常圧または加圧(例えば、常圧〜凡そ1Mpa以下の)雰囲気下でリチウムイオンとCO2とを反応させた後、反応液に溶存するCO2の量を低下させる(液中からCO2を追い出す)処理を行うことが好ましい。この脱炭酸処理によって溶液のCO2濃度が低下すると、炭酸リチウムの溶解度が低下する。その結果、該脱炭酸処理前には反応液に溶解していた炭酸リチウムの一部が析出(再結晶)するので、これを液相から容易に分離回収することができる。上記脱炭酸処理は、例えば、反応液を常圧または減圧の大気雰囲気中で攪拌する、その雰囲気中で反応液に空気または不活性ガス(窒素ガス等)をバブリングする、等の手段により実施することができる。また、炭酸リチウムの溶解度は温度の上昇とともにやや低下する傾向にある(100℃では約0.72g/100g(H2O))。したがって、反応液の温度を高める(例えば約40〜80℃に加温する)ことにより、炭酸リチウムの溶解度を低下させて析出量を増すことができる。このような手法によって、リチウム溶液からのリチウム成分(炭酸リチウム)の回収率をさらに向上させることができる。
このようにして得られた炭酸リチウムは、その回収工程でナトリウム等の異種アルカリ金属元素を含む材料(NaOH,Na2CO3等)を用いていないことから、特に異種アルカリ金属元素の含有量が少ないものとなり得る。したがって、各種用途に好適に利用(再利用)することができる。
【0048】
ステップ248で得られたリチウム溶液から固体状のリチウム塩(リチウム成分)を回収する上記工程は、例えば図6に示す構成の回収装置(製造装置)を用いて実施することが可能である。このリチウム成分回収装置300は、被処理液を炭酸ガス(CO2ガス)と接触させるCO2接触部320と、被処理液の溶存CO2濃度を調整するCO2濃度調整部360と、被処理液をフッ素イオンで処理するフッ素塩生成部380とを備える。また、被処理液から固体(析出物等)を分離する分離手段としての第一濾過装置350および第二濾過装置390を備える。
【0049】
CO2接触部320は、ステップ248で得られた濾液(被処理液(原料液))321を配管323から受入れて貯蔵する原料液貯蔵タンク322と、原料液タンク322から供給された被処理液を保持(貯留)する第一反応槽(反応室)330と、反応槽330にCO2ガスを供給するCO2ガス供給手段333とを有する。
原料液タンク322は配管324を介して反応槽330に接続されている。配管324は第一送液装置(ポンプ)325を有する。配管324の先端には噴霧手段(噴霧供給手段)としての噴霧器326が設けられている。ポンプ325を作動させることにより、原料液タンク322内の被処理液(原料液)を噴霧器326から反応槽330内に噴霧する(霧状に噴出する)ことができる。反応槽330は、その内部にある被処理液の量を検知する液面検知器327を備える。液面検知器327はポンプ325に電気的に接続されている。これにより、例えば、第一反応槽330内の被処理液の液面が所定の高さになったら液面検知器327からポンプ325に液面検知信号を送ってポンプ325の作動を停止させ、被処理液の反応槽330への供給(噴霧)を止めることができるように構成されている。
【0050】
CO2ガス供給手段333は、図示しないCO2源からのCO2ガス(本実施例では実質的にCO2からなるガスを用いる。)を反応槽330内に供給するCO2ガス供給管333aを備える。供給管333aの先端には細泡器333bが設けられており、CO2ガスを細泡(細かい気泡)として被処理液中に供給し得るように構成されている。なお、図6には一つのCO2ガス供給手段333(一本の供給管333aおよび一つの細泡器333b)を示しているが、一つの反応槽330に対して二つ以上のCO2ガス供給手段333を設けてもよい。また、一本の供給管333aに二つ以上の細泡器333bが設けられた構成のCO2ガス供給手段333としてもよい。
反応槽330は、その内部に溜まっている被処理液を汲み上げて、その反応槽330内で該被処理液の液面上方にある空間(典型的にはCO2ガスが満たされた気相)に噴霧する循環噴霧装置(噴霧循環手段)336を備える。この循環噴霧装置336は、一端が液面検知器327よりも下方に位置し、他端が液面検知器327よりも上方に位置するように配設された配管336aを有する。配管336aはポンプ336bを備える。また、配管336aの他端には噴霧器336cが設けられている。なお、図6には一つの循環噴霧装置336を示しているが、一つの反応槽330に対して二つ以上の循環噴霧装置336を設けてもよい。
【0051】
反応槽330は温度検知器(温度計)331を備える。反応槽330の外周にはスチーム通路332が形成されている。このスチーム通路332にスチームを供給して反応槽330の温度を調整することができる。また、反応槽330は圧力検出器334および圧力調整弁335を備える。必要に応じて圧力調整弁335を開閉して反応槽330内の圧力を調節することができる。反応槽330は、その内部にある被処理液のpHを測定するpH測定器337を備える。この被処理液のpHによって反応の進行の具合を把握することができる。反応槽330に溜まっている被処理液は攪拌器338により攪拌することができる。
【0052】
第一反応槽330の底部には配管341の一端が接続されている。配管341の他端は第一濾過装置350の濾過容器352に接続されている。また、配管341にはコック341および第二送液装置(ポンプ)343が設けられている。この配管341を介して、反応槽330内の被処理液を濾過容器352に移送することができる。
濾過容器352は、濾盤上に配置されたフィルタ353によって上下に分割されている。配管341は、フィルタ353の上方に形成された入口室352aに接続されている。この入口室352aからフィルタ下方の出口室352bへと被処理液を通過させる(濾過する)ことにより、被処理液から析出物等の固体を分離(回収)することができる。入口室352aにはガス供給管354が接続されている。このガス供給管354からガス(典型的には空気)を供給して入口室352aの圧力を高める(入口室352aに導入された被処理液を加圧する)ことができる。入口室352aの圧力(被処理液の背圧)を出口室352bよりも相対的に高くすることにより、被処理液の濾過速度を向上させることができる。出口室352bには排気管355が接続されており、余分なガス圧を逃すことができるように構成されている。
【0053】
濾過容器352の出口室352bには、その底部に配管356および配管371の一端が接続されている。配管356の他端はCO2濃度調整部360の再結晶槽362に接続されている。また、配管371の他端は後述するフッ素塩生成部380の第二反応槽382に接続されている。再結晶槽362に至る配管356にはコック357が設けられており、第二反応槽282に至る配管371にはコック372および第四送液装置(ポンプ)373が設けられている。これらのコック357,372を開閉することにより、フィルタ353を通過した被処理液を、再結晶槽362および第二反応槽382の任意の槽に選択的に移送することができる。
【0054】
再結晶槽362は、CO2濃度調整手段として、その再結晶槽362内の雰囲気を調整する雰囲気調整機構を備える。この雰囲気調整機構は、例えば図6に示すように、再結晶槽362内に実質的にCO2を含まないガス(例えば空気)を供給する非CO2ガス供給管363と、余分なガスを再結晶槽362の外部へ逃す排気管364とを含む構成とすることができる。また、再結晶槽362が大気に開放されているような構成とすることも雰囲気調整機構の一つの態様である。再結晶槽362内に保持されている被処理液は攪拌器365により攪拌することができる。また、再結晶槽362の温度は図示しない温度調節機構によって調節することができる。
再結晶槽362内の被処理液は、第三送液装置(ポンプ)367を有する配管366を介して、濾過容器352の入口室352aに移送することができる。この濾過容器352のフィルタ353を通過させて、再結晶槽362を経た被処理液から固体(析出物等)を分離することができる。このように、第一濾過装置350は、CO2接触部320(第一反応槽330)から移送された被処理液と、CO2濃度調整部360(再結晶槽362)から移送された被処理液の双方を濾過できるように構成されている。また、再結晶槽362と第一濾過装置350(濾過容器352)との間で被処理液を循環できるように構成されている。
【0055】
フッ素塩生成部380は、配管371の他端が接続された第二反応槽382を有する。第一濾過装置350のフィルタ353を通過した被処理液は、濾過容器352の出口室352bから配管371を介して第二反応槽382に移送することができる。また、フッ素塩生成部380はフッ酸貯蔵タンク383を有する。このフッ酸貯蔵タンク383からフッ素供給管384を介して第二反応槽382にフッ素イオン(本実施例ではフッ酸)を供給することができる。第二反応槽382は、被処理液のフッ素イオン濃度を測定するフッ素イオン濃度測定器385を備える。また、槽内の被処理液を攪拌する攪拌器386を備える。
【0056】
第二反応槽382には配管387の一端が接続されている。配管387は、第五送液装置(ポンプ)388を有し、その他端は第二濾過装置390の濾過容器392に接続されている。濾過容器392は、濾盤上に設けられたフィルタ393によって上下に分割され、配管387はフィルタ上方の入口室392aに接続されている。この入口室392aからフィルタ下方の出口室392bへと被処理液を通過させる(濾過する)ことにより、被処理液から析出物等の固体を分離(回収)することができる。入口室392aにはガス供給管394が接続され、出口室382bには排気管395が接続されている。ガス供給管394からガス(典型的には空気)を供給して入口室392aの圧力(被処理液の背圧)を出口室392bよりも相対的に高くすることにより濾過速度を向上させることができる。出口室392bには濾液排出管396が接続されている。フィルタ393を通過した被処理液は、濾液排出管396のコック397を開いてここから系外に取り出す(排出する)ことができる。
【0057】
かかる構成のリチウム塩製造装置300を用いて、ステップ248で得られた濾液(原料液)からリチウム塩を製造する(リチウム成分を回収する)方法の一例につき、図7に示すフローチャートを参照しつつ説明する。
まず、第一反応槽330で被処理液とCO2ガスとを接触させるCO2接触工程(ステップ252)を行う。このCO2接触工程は、反応槽330内の圧力を約100〜1000kPa(より好ましくは約100〜200kPa)として行うことが好ましい。ここでは反応槽330内の圧力を150kPaとした。また、反応槽330内で被処理液の上方にある空間(被処理液の液面に接する気相)にCO2を主成分とするガス(例えば、CO2濃度が凡そ50〜100vol%、より好ましくは凡そ80〜100vol%であるガス。ここではCO2濃度がほぼ100%であるガス)が充填されている状態、すなわち該空間がCO2充填層330aを形成している状態でCO2接触工程を行うことが好ましい。このような加圧CO2雰囲気は、例えば、CO2ガス供給手段333および圧力調整弁335を用いて実現することができる。また、スチーム通路332にスチームを流通する等の手段により、反応槽330内の温度を約30〜100℃(好ましくは約40〜80℃)に調整するとよい。ここでは約60℃とした。
【0058】
反応槽330内の被処理液を攪拌器338で攪拌しつつ、CO2ガス供給手段333の細泡器333bから該被処理液にCO2ガスの細泡を供給(バブリング)する。未反応のCO2ガスは、被処理液の液面まで浮上してCO2充填層330aに合流し、あるいは被処理液に溶解する。ここで、被処理液とCO2ガスの気泡との接触時間を長くするためには、細泡器333bが反応槽330の底面近傍に位置するようにCO2ガス供給手段333を構成することが好ましい。また、CO2ガスをなるべく細かい気泡として供給することにより、CO2ガスと被処理液との接触面積が大きくなる。また、CO2ガスの気泡が被処理液中に浮遊する時間(被処理液と接触する時間)が長くなる。このように被処理液とCO2ガスとの接触面積を大きくすることおよび/または接触時間を長くすることは、被処理液とCO2との反応効率を高めるために有効である。
【0059】
このCO2接触工程では、循環噴霧装置336のポンプ336bを作動させて反応槽230に溜まっている被処理液を汲み上げ、CO2ガス充填層330a中に噴霧(霧状に噴出)するとよい。噴霧された被処理液(液滴)は、CO2ガス充填層330aを構成するCO2ガスと接触しつつ反応槽330内を落下する。このように反応槽330の内部に被処理液を噴霧して循環させることにより、被処理液とCO2との接触効率(反応効率)をさらに高めることができる。なお、原料液貯蔵タンク322から反応槽330に被処理液(原料液)を供給する際(ステップ251)には、加圧CO2雰囲気に調整した反応槽330内に、噴霧器326から被処理液を噴霧するとよい。これにより被処理液とCO2との接触機会をさらに増すことができる。
【0060】
被処理液とCO2との反応が進行して反応生成物の生成量がその被処理液への溶解度を上回ると、被処理液から生成物(主として炭酸リチウム)が析出する。また、反応が進行すると被処理液のpHが次第に低下する。このpHの変化をpH測定器337で検出することによって反応の進行の程度を把握することができる。CO2接触工程は、被処理液のpHが凡そ9〜7(好ましくは凡そpH8〜7)の範囲に低下するまで行うことが好ましい。pHが低くなりすぎると炭酸リチウムの溶解度が上昇する傾向にある。
上述のように、被処理液中にCO2ガスをバブリングする処理と、CO2充填層330a中に被処理液を噴霧する処理とを共に行うことにより、被処理液とCO2とを効率よく反応させることができる。このことによって、例えば、反応槽330内の加圧の程度が比較的低い(例えば100〜200kPa程度)場合にも実用上好ましい反応効率を実現することが可能である。加圧の程度を少なくできるということは、装置の小型化および/または軽量化等の観点から好ましい。
【0061】
CO2接触工程を経た被処理液を反応槽330から第一濾過装置350に移送する。すなわち、配管341のコック342を開き、ポンプ343を稼動して反応槽330の内容物(被処理液)を抜き出す。この被処理液を濾過容器352の入口室352aに導入し、フィルタ353で濾過する(ステップ254a)。この分離工程により、被処理液に含まれていた析出物(主として炭酸リチウム)はフィルタ353上に分離される。フィルタ353を通過した被処理液(濾液)は出口室352bに溜まる。なお、必要に応じてガス供給管354から入口室352aに加圧空気等を送って濾過速度を高めることができる。
【0062】
次いで、配管356のコック357を開き、出口室352b内の被処理液を再結晶槽362に移送する。この再結晶槽362は大気に開放されており、被処理液を攪拌器365で攪拌しつつ大気(非CO2雰囲気)に接触させて溶存CO2濃度を低下させることができる(ステップ255)。このCO2濃度低減工程により被処理液に対する炭酸リチウムの溶解度が低下し、該工程の実施前には被処理液に溶解していた炭酸リチウムが新たに析出(再結晶)し得る。なお、炭酸リチウムの溶解度は温度の上昇とともにやや低下する傾向にある(例えば、60℃では約1g/100g(H2O)であるのに対し、100℃では約0.72g/100g(H2O)である)。したがって、図示しない温度調整機構等により被処理液の温度を高める(例えば約40〜80℃に加温する)ことにより、炭酸リチウムの溶解度を低下させて析出量(収率)をさらに増すことができる。
【0063】
かかるCO2濃度低減工程を経た被処理液を再結晶槽362から第一濾過装置350に移送する。すなわち、配管366に設けられたポンプ367を稼動して、再結晶槽362の内容物(被処理液)を濾過容器352の入口室352aに導入する。この被処理液をフィルタ353で濾過して析出物(主として炭酸リチウム)を分離する(ステップ254b)。
【0064】
さらに、上記CO2濃度低減工程および分離工程を経た被処理液をフッ素塩生成工程に供する。すなわち、配管371のコック372を開き、ポンプ373を稼動して出口室352b内の被処理液を第二反応槽382に移送する。第二反応槽382内の被処理液を攪拌しつつ、フッ酸貯蔵タンク383からフッ酸供給管384を介してフッ酸を添加する。このフッ酸(フッ素イオン)は、該被処理液に残存(溶解)している炭酸リチウムおよび/または未反応のリチウムイオン等と反応してフッ化物塩(主としてフッ化リチウム)を生成する。炭酸リチウムに比べてフッ化リチウムは溶解度が低い(例えば、25℃において約0.13g/100g(H2O))ことから、反応の進行によりフッ化リチウム等が被処理液から析出し得る。この被処理液を第二濾過装置390の濾過容器392に移送してフィルタ393で濾過することにより(ステップ258)、上記析出物(主としてフッ化リチウム)を被処理液から分離することができる。
【0065】
フィルタ393を通過した被処理液(濾液)からはリチウム成分の大部分が除去されている。この濾液は出口室392bの排出管396から排出される。なお、上記フッ素塩生成工程は、該工程終了後の被処理液に含まれるフッ素イオンの濃度が15ppmを超えないようにフッ酸(フッ素イオン)の供給量を調節して実施するとよい。これにより、濾過(ステップ258)後に排出される濾液の廃棄処理が容易になる。例えば、フッ素イオン濃度測定器385により検出されるフッ素イオン濃度が1〜3ppmに達したらフッ酸の供給を止め、反応の進行により被処理液中のフッ素イオンが消費されてフッ素イオン濃度が低下したらさらにフッ酸を添加する等の操作方法をとることができる。このような操作を行うために適した装置の構成として、フッ素供給管384に図示しない送液装置(ポンプ)を設け、そのポンプにフッ素イオン濃度測定器385が電気的に接続された構成等を採用することができる。
【0066】
図1に示すステップ260〜274では、ステップ248で溶液から分離(回収)した遷移金属水酸化物(析出物)を用いて、リチウム−ニッケル複合酸化物にコバルトが添加された正極活物質(典型的には、LiNi1-xCox2(0<x<0.5、好ましくは0.1<x<0.3)で表される正極活物質)を製造するための原料等として有用な遷移金属水酸化物材料を合成する。ここでは、LiNi0.8Co0.22で表される正極活物質を製造するための原料を合成(調製)する場合につき説明する。
【0067】
ステップ248で分離した遷移金属水酸化物(析出物)を酸に溶解させる(ステップ260)。酸としては塩酸、硫酸、硝酸等を使用することができる。本実施例では硫酸を用いた。この硫酸溶液に含まれるニッケルイオンおよびコバルトイオンの濃度を常法により測定する。そして、これらのイオンの濃度(含有量)の比が、あらかじめ設定した目標値(ここでは、金属換算でNi:Coのモル比が0.8:0.2)から所定以上外れている場合には、足りないイオン種を外部から補充(溶液中に添加)する。これにより硫酸溶液に含まれる両イオンの量比が所定範囲内となるように調整する(ステップ266)。このように不足分のみを補うので、新たに使用する遷移金属成分(例えばコバルト)の量を節約することができる。なお、以前の処理経験や予備実験等からステップ260で得られた硫酸溶液に含まれるニッケルイオンおよびコバルトイオンの量比を予測(把握)できる場合には、これらのイオンの濃度を測定する操作を省略することができる。
【0068】
ニッケルイオンおよびコバルトイオンを所定の量比で含有する硫酸溶液に中和剤を添加する(ステップ270)。本実施例では、中和剤としてアンモニア水(NH4OH)および水酸化ナトリウム(NaOH)を使用した。中和剤の添加は、溶液中のニッケルイオンの濃度を50〜500ppmの範囲に維持し、溶液のpHを8〜13の範囲に維持し、かつアンモニウムイオンの濃度を5〜15g/リットルの範囲に維持するように制御しつつ行った。このとき、相対的に析出量の多い水酸化ニッケルが、水酸化コバルトを取り込みつつ順調に沈殿(共沈)した。この沈殿物は、正極活物質用のリチウム・遷移金属含有複合酸化物の原料として適した状態でニッケルとコバルトとが融合したものである。得られた沈殿物を濾別等により溶液から回収し(ステップ272)、乾燥させた(ステップ274)。このようにして得られた遷移金属水酸化物材料の平均粒径は3〜20μmの範囲にあった。また、比表面積は3〜20m2/gの範囲にあった。X線回折ピークの半価幅は0.2〜14degの範囲にあった。このような遷移金属水酸化物材料を用いて製造した正極活物質は、電池性能(例えば放電容量)に優れたリチウムイオン二次電池を構成し得る。
【0069】
<実施例2:回収物を用いた正極活物質の製造>
実施例1で得られた遷移金属水酸化物材料は、ニッケルとコバルトとが適切な状態に混在(融合)していること等から、正極活物質製造用の原料として好適である。例えば、この遷移金属水酸化物材料と水酸化リチウム材料(LiOH・H2O等)とを所定の割合で混合し、適切な条件で焼成することにより、リチウム・ニッケル含有複合酸化物であってコバルトを含む複合酸化物から実質的に構成される正極活物質(例えばLiNi0.8Co0.22で表される正極活物質)を得ることができる。ここで、遷移金属水酸化物材料とともに用いる水酸化リチウム材料は、上記実施例1で回収した炭酸リチウムを用いて調製することができる。すなわち、回収した炭酸リチウムを高温で焼成すると脱炭酸によりLi2Oが生じる。このLi2Oを水と反応させて得られた水酸化リチウム(一水塩)を正極活物質の製造に用いることができる。
【0070】
本実施例により製造した正極活物質を利用(再利用)したリチウムイオン二次電池の製造例につき簡単に説明する。例えば、図2に示す構成のリチウムイオン二次電池1を製造するには、この正極活物質をカーボンブラック(CB)およびポリテトラフルオロエチレン(PTFE)粉末とともに適当な溶媒に分散させて正電極材ペーストを調製する。溶媒としては、水、N−メチルピロリドン等を用いることができる。このペーストを正極集電体(アルミニウム箔等)に塗布して溶媒を揮発させる。このようにして、正極集電体の両面に正電極材層が設けられた正極シートを作製する。正電極材ペーストの塗布は、コンマコーター、ダイコーター等を用いて行うことができる。一方、カーボンブラック(CB)およびポリテトラフルオロエチレン(PTFE)粉末を適当な溶媒に分散させて負電極材ペーストを調製する。これを負極集電体(銅箔等)に塗布して溶媒を揮発させることにより、負極集電体の両面に負電極材層が設けられた負極シートを作製する。セパレータシート(多孔質ポリエチレンシート等)を介してこれらの電極シートを積層する。その積層体を捲回して電極体を作製する。電極体の軸方向両端に正極端子および負極端子を溶接等により接続する。これを電解液とともにアルミニウム製等の電池容器に収容する。電解液としては、ジメチルカーボネート(DMC)とエチルメチルカーボネート(EMC)との7:3(質量比)混合溶媒に約1mol/リットルのLiPF6を溶解させたもの等を用いることができる。このDMC−EMC混合溶媒としては、実施例1のステップ222により回収したもの等を使用可能である。このようにしてリチウムイオン二次電池を構築(再生)することができる。
【0071】
<実施例3:回収物の評価>
実施例1のようにリチウムイオン二次電池を減圧下で加熱することにより、有機溶媒等の変質を防いで、より有用な回収物(混合溶媒)を得ることができる。また、回収効率(揮発速度)を高めることができる。
図8は、実施例1のステップ222(図5のa段階〜b段階)においてコレクタ74に回収された有機溶媒のGC−MS分析(ガスクロマトグラフ質量分析)の結果を示すチャートである。この結果から、「*1」を付したピークは分子量約90のDMC、「*2」を付したピークは分子量約104のEMCと同定できる。各ピークの強度と濃度検量線から各成分の濃度を計算したところ、回収された有機溶媒の組成は、もとの電解液の組成とほぼ同じであった。また、図8にはDMCおよびEMCに対応するもの以外のピークは表れていない。したがって、この回収物に含まれるDMCおよびEMC以外の成分(これらの分解物等)の割合はせいぜい1〜2%程度と考えられる。このことは、得られた回収物が再利用性のよいものであることを示している。
【0072】
<実施例4:遷移金属化合物析出工程の検討(1)>
遷移金属イオンを含む酸性溶液と水酸化リチウム水溶液とを混合して遷移金属元素の水酸化物を析出させる工程(図1のステップ247に相当する。)について検討した。
【0073】
(実験例1)
1mol/リットルのLiOH水溶液(pH12以上)2リットルを用意し、これを反応槽内で60〜90℃(好ましくは75〜85℃)に加温した。また、1molのニッケルを含む塩酸ニッケル(NiCl2)溶液を用意した。反応槽内のリチウム溶液を攪拌しつつ、NiCl2溶液を徐々に添加した。これによりニッケルイオンとLiOHが反応してニッケルの水酸化物が析出する。また、生成した塩化リチウムは反応液に溶解する。このとき反応液のニッケルイオン濃度(mg/リットル)を測定したところ、図9に示すように、ニッケル溶液の添加量が約0.8mol(ニッケル換算)に至るまでは反応液中にニッケルイオンは検出されなかった。これは、反応液のLiOH濃度が相対的に高いために反応がスムーズに進行し、反応槽に添加されたニッケルイオンが反応液中から速やかに消費されているためと考えられる。ニッケル溶液の添加量が約0.8mol(ニッケル換算)を超えると反応液中にニッケルイオンが検出されるようになり、その後はニッケル溶液の添加量の増加につれてニッケルイオン濃度が上昇した。例えば、ニッケルイオン濃度の許容値を20mg/リットルとすると、図9に示すように、この許容値に至るまでのニッケル溶液の添加量は、ニッケル換算で約0.9molであった。
【0074】
(実験例2)
この実験例2は、上記析出工程を酸化性条件下で行った一例である。ニッケル換算で0.5molに相当するニッケル溶液を水酸化リチウム溶液に添加するまでの操作は実験例1と同様にして行った。これ以降のニッケル溶液の添加は、反応液に酸素ガスをバブリングしながら行った。酸素ガスのバブリング量(供給量)は200〜500ml/minとした。反応液のニッケルイオン濃度を測定したところ、図9に示すように、本実験例ではニッケル溶液の添加量が約0.88mol(ニッケル換算)に至るまではニッケルイオンが検出されなかった。この添加量を超えるとニッケルイオンが検出されるようになるが、実験例1と比較すると添加量に対するニッケルイオンの濃度は全体に低かった。そして、上記許容値(20mg/リットル)に至るまでのニッケル溶液の添加量は、ニッケル換算で約0.96mol/リットルであった。
【0075】
(実験例3)
この実験例3は、上記析出工程を酸化性条件下で行った他の例である。すなわち、ニッケル溶液に過酸化水素水を混合して調製した過酸化水素含有ニッケル溶液を、実験例1と同様にして水酸化リチウム溶液に添加した。反応液のニッケルイオン濃度を測定したところ、図9に示すように、本実験例ではニッケル溶液の添加量が約0.86mol(ニッケル換算)に至るまではニッケルイオンが検出されなかった。この添加量を超えるとニッケルイオンが検出されるようになるが、実験例1と比較すると添加量に対するニッケルイオンの濃度は全体に低かった。そして、上記許容値(20mg/リットル)に至るまでのニッケル溶液の添加量は、ニッケル換算で約0.95mol/リットルであった。
【0076】
(実験例4)
ニッケル溶液と水酸化リチウム溶液とを酸化性条件下で混合することに関し、さらに以下の実験を行った。すなわち、1リットル当たり5gのニッケルを含有する硫酸ニッケル溶液(pH約4)を用意した(ニッケル濃度5g/リットル)。この硫酸ニッケル溶液250mlに、10%過酸化水素水100mlを添加して過酸化水素含有ニッケル溶液を調製した。また、1mol/リットルのLiOHを含有する水酸化リチウム溶液(pH12以上)を用意した。この水酸化リチウム溶液42.6mlをビーカーに入れて、攪拌しながら上記過酸化水素含有ニッケル溶液を徐々に滴下したところ、滴下とほぼ同時にNi(OH)2の結晶が析出(生成)した。過酸化水素水を混合しないニッケル溶液を用いた点以外は同様にして上記実験を行った場合と比較すると、本実験例では結晶の析出が相対的に促進されていた。また、過酸化水素含有ニッケル溶液中の過酸化水素がアルカリ性の溶液と混合されることにより酸素ガスの気泡が発生した。反応系を目視観察したところ、析出したNi(OH)2が深緑色に変色する現象がみられた。この現象は、Ni(OH)2が酸化されてオキシ水酸化ニッケル(NiOOH)を生成したことによるものと推察される。過酸化水素含有ニッケル溶液の滴下を続けると結晶の析出量が次第に増加したが、反応液のpHが約7を下回ると新たな析出はみられなくなった。
【0077】
<実施例5:遷移金属化合物析出工程の検討(2)>
実験例1の条件で、反応液のニッケルイオン濃度が20mg/リットルに到達するまで上記ニッケル溶液(1molのニッケルを含むNiCl2溶液)を添加した。すなわち、2molの水酸化リチウムを含む溶液に、ニッケル換算で約0.9molに相当する量のニッケル溶液を添加した。この反応液を濾過して溶液から析出物を分離し、乾燥させた。分析の結果、回収された析出物に含まれるニッケルの量(2molの水酸化リチウムを用いて得られたニッケルの量)は約0.9molであった。反応液から析出物を分離した後の溶液(濾液)には、反応槽に入れたLiOHの10%(0.2mol)に相当する量が未反応のまま残留(溶解)している。この濾液にCO2ガスを吹き込んで炭酸リチウムを析出させ、溶液から分離して乾燥させた。分析の結果、得られた炭酸リチウムのニッケル含有率は約0.0018質量%であった。
【0078】
同様に、実験例2および3の条件で、それぞれ反応液のニッケルイオン濃度が20mg/リットルに到達するまでニッケル溶液を添加した。すなわち、実験例2ではニッケル換算で約0.96mol、実験例3ではニッケル換算で約0.95molに相当する量のニッケル溶液を添加した。この反応液から回収した析出物を分析したところ、実験例2の条件で得られた析出物は約0.96mol、実験例3の条件で得られた析出物は約0.95molのニッケルを含んでいた。また、析出物を分離した後の溶液(濾液)には、実験例2では約0.08mol、実験例3では約0.10molのLiOHが未反応のまま残留している。これらの濾液にCO2ガスを吹き込んで得られた炭酸リチウムのニッケル含有率は、実験例2では約0.0016質量%、実験例3では約0.0015質量%であった。
以上の結果を表1にまとめて示す。
【0079】
【表1】
Figure 0004411881
【0080】
この表1から判るように、実験例1〜3のいずれの条件(操作方法)によっても、ニッケル含有率が0.002質量%以下という高純度の炭酸リチウムを回収することができた。また、ニッケル溶液と水酸化リチウム溶液とを酸化性条件下で混合した実験例2および実験例3では、このように高純度の炭酸リチウムが得られるとともに、反応液中のニッケル濃度が所定の許容量(ここでは20mg/リットル)に至るまでに添加することのできるニッケルイオンの量が実験例1よりも多い。すなわち、水酸化リチウムの使用量(モル数)に対して処理し得るニッケル溶液(ニッケルイオン)の量が多い。このため、実験例2および実験例3では、同量の水酸化リチウムを用いて、実験例1よりも多くのニッケルを回収することができた。すなわち、水酸化リチウムの利用効率を高めることができた。
【0081】
<実施例6:遷移金属化合物析出工程の検討(3)>
上述した実験例2の条件で、ニッケル溶液の添加量(ニッケル換算)と反応液のpHとの関係を調べた。また、実験例2の条件でニッケル溶液の添加量を異ならせて得られた各反応液から析出物を回収し、各回収物に含まれるニッケルの量(ニッケル回収量)を調べた。また、各反応液から析出物を分離した後の溶液(濾液)にCO2ガスを吹き込んで炭酸リチウムを析出させ、それらのニッケル含有率を測定した。以上の結果を表2および図10に示す。
【0082】
【表2】
Figure 0004411881
【0083】
表2および図10に示すように、ニッケル溶液の添加量(ニッケル換算の添加モル数)が増すと反応液中のLiOHが消費されることによりpHが低下する。水酸化リチウムの使用量(ここでは2mol)に対するニッケル回収量は、ニッケルイオン添加量が増すにつれて増加する傾向にあるが、pHが約8まで低下するとほぼ飽和する。また、濾液から得られる炭酸リチウムのニッケル含有率は、pH8までは0.002質量%以下と少ないが、pH8を下回るとニッケル含有率が顕著に増加する。このことから、ニッケル回収量(水酸化リチウムの利用効率)と、濾液から得られる炭酸リチウムの純度とを両立させるためには、混合後の溶液のpHが凡そ8〜9.5となる量比でニッケル溶液(ニッケルイオン)と水酸化リチウムとを混合することが好ましい。
【0084】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組み合わせによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例1においてリチウムイオン二次電池から有価物を回収する手順の概略を示すフローチャートである。
【図2】 リチウムイオン二次電池の構成を模式的に示す断面図である。
【図3】 リチウムイオン二次電池に用いられている正極シート(展開した状態)を示す平面図である。
【図4】 揮発性成分の回収に用いる装置の概略構成例を示す模式図である。
【図5】 炉内温度の推移を示す説明図である。
【図6】 リチウム溶液からリチウム成分を回収する装置の概略構成例を示す模式図である。
【図7】 リチウム溶液からリチウム成分を回収する手順の概略を示すフローチャートである。
【図8】 実施例1で回収した有機溶媒のGC−MS分析結果を示すチャートである。
【図9】 ニッケル添加量と反応液のニッケルイオン濃度との関係を示す特性図である。
【図10】 ニッケル添加量と反応液のpHとの関係、および、ニッケル添加量と炭酸リチウムのニッケル含有量との関係を示す特性図である。
【符号の説明】
1:リチウムイオン二次電池(リチウム電池)
10:電極体
122:正極集電体(金属部材)
124:正電極材層
142:負極集電体(金属部材)
144:負電極材層
16:セパレータシート
20:容器(金属部材)
30:正極端子(金属部材)
40:負極端子(金属部材)
60:減圧加熱炉
65:真空ポンプ
67:一次冷却装置
71:二次冷却装置
72:排ガス浄化器
74:コレクタ

Claims (12)

  1. リチウムと一種または二種以上の遷移金属元素とを含む複合酸化物から構成される正極活物質を備えるリチウム電池を処理する方法であって、
    該リチウム電池を構成する金属部材から分別された被処理材であって該正極活物質を含む被処理材からリチウムおよび前記遷移金属元素を酸で溶出する工程と、
    その酸溶出工程で得られた酸性溶液と水酸化リチウムとを混合して前記遷移金属元素を含む化合物を析出させる工程と、
    析出した遷移金属化合物を該溶液から分離する工程と、
    その分離後の溶液に炭酸ガスおよび/または炭酸水を供給して炭酸リチウムを析出させる工程と、
    析出した炭酸リチウムを該溶液から分離する工程とを包含するリチウム電池処理方法。
  2. 前記リチウム電池を加熱して有機物を除去し、その加熱後に残った電池構成部材から正極活物質を含む電極材を分別し、その電極材を前記被処理材として用いる、請求項1に記載の方法。
  3. 前記有機物の除去は、リチウム電池の加熱温度を段階的に高めて行う、請求項2に記載の方法。
  4. 前記遷移金属化合物析出工程を酸化性条件下で行う、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
  5. 前記遷移金属化合物析出工程は、過酸化水素を含有させた前記酸性溶液と水酸化リチウム溶液とを混合する処理を含む、請求項4に記載の方法。
  6. 前記分離工程において分離された前記遷移金属化合物を酸に溶解させる工程と、
    その酸溶解工程で得られた酸性溶液に中和剤を添加して前記遷移金属元素の水酸化物を析出させる第二の析出工程とをさらに包含する、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
  7. 前記正極活物質は、リチウムと、第一の遷移金属元素と、他の少なくとも一種の金属元素とを含むものであり、
    前記酸溶出工程では、リチウム、前記第一遷移金属元素および前記他の金属元素を酸に溶出させ、
    前記析出工程では、前記第一遷移金属元素を含む化合物および前記他の金属元素を含む化合物を析出させ、
    前記酸溶解工程では、前記分離工程において分離された前記第一遷移金属化合物および前記他の金属元素の化合物を酸に溶解させ、
    前記第二析出工程では、前記第一遷移金属元素の水酸化物および前記他の金属元素の水酸化物を析出させる、請求項6に記載の方法。
  8. 前記酸溶解工程で得られた溶液について前記第一遷移金属元素および前記他の金属元素の含有量の比を把握し、その比が所定範囲から外れている場合には該所定範囲内の比に調整した後に、その溶液から前記第一遷移金属元素の水酸化物とともに前記他の金属元素の水酸化物を析出させる、請求項7に記載の方法。
  9. 前記中和剤はアンモニア水を含み、
    前記第二析出工程は、遷移金属イオンの濃度、溶液のpHおよびアンモニウムイオンの濃度をいずれも所定範囲に管理することにより、
    平均粒径、比表面積およびX線回折ピークの半価幅がそれぞれ所望の範囲となる析出物が得られるように行う、請求項6から8のいずれか一項に記載の方法。
  10. 前記正極活物質ニッケルを含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
  11. 前記正極活物質はコバルトを含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
  12. 水酸化リチウムと一種または二種以上の遷移金属元素の水酸化物とを所定の割合で混合した混合物を焼成して、リチウムと該遷移金属元素とを含む複合酸化物を生じさせる工程と、
    その複合酸化物を集電体に付着させて正極を作製する工程と、
    その正極を、電解液およびその電解液を介して配置された負極とともに電池容器に収容してリチウム電池を構築する工程とを包含し、
    以下の条件:
    その水酸化リチウムとして、請求項1から5のいずれかの方法によって得られた炭酸リチウムを焼成した後に水と反応させて生成させた水酸化リチウムを用いる;および、
    その遷移金属水酸化物として、請求項6から9のいずれか一項に記載の方法によって得られた遷移金属水酸化物を用いる;
    の少なくとも一方を満たすことを特徴とするリチウム電池リサイクル方法。
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