JP4397558B2 - 熱駆動マイクロチップ化学送達デバイス - Google Patents
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Description
(発明の背景)
本発明は化学分子の送達デバイスの小型化に関し、さらに詳細には、放出時間および速度が制御された複数井戸型送達(multi−welled delivery)デバイスに関する。
【0002】
薬物送達は、医療の重要な局面である。多くの薬物の効力は、薬物が投与される方法に直接に関連する。いくつかの治療は、薬物が、長期間にわたって患者に繰り返し、投与されることを必要とする。これは、適切な薬物送達方法の選択を困難とする。患者が、自分の薬物服用を行うことを忘れたり、気が進まなかったり、出来なかったりする場合は多い。薬物送達はまた、薬物が全身の送達について効き目がありすぎる場合、問題となる。それゆえ、薬物および他の治療薬(therapeutics)を含むが、これらに限定されない広範な様々な分子を脈動的にまたは連続的に制御して放出できる送達デバイスを設計し、製造しようとする試行が為されてきた。
【0003】
Santini Jrらに付与された米国特許第5,797,898号は、複数の(典型的には数百〜数千)の小さなリザーバを有するマイクロチップ送達デバイスを開示する。それぞれのリザーバは、分子にわたってリザーバに位置するリザーバキャップを有し、その結果、分子(例えば、薬物)は、リザーバキャップの分解により、または分解と同時に拡散することによりデバイスから放出される。リザーバは、既知の速度で減少するか、またはそれは既知の浸透性を有する(受動放出)材料で作製されたキャップを有し得る。もしくは、キャップは、分解する材料か、または電気ポテンシャルの適用に依存して浸透可能になり得る(能動放出)導電材料を含み得る。しかし、トリガリング(triggering)放出についての他の方法を利用することは、特に電解質の存在が不都合かまたは不可能である場合に有用である。キャプ材料が、分解し得るか、または電気ポテンシャルの適用に依存して浸透可能になり得る導電材料を含むという限定がなしに、能動放出を提供することもまたは有益である。
【0004】
それゆえ、本発明の目的は、薬物および電解質の存在を必要としない他の分子用の複数井戸型送達デバイスを提供することである。
【0005】
本発明の別の目的は、薬物と導電性リザーバキャップを必要としないか、または電気ポテンシャルの付与を指向しない他の分子とを能動放出する複数井戸型送達デバイスを提供することである。
【0006】
(発明の要旨)
マイクロチップ送達デバイスは、分子の放出の速度および時間の両方を制御するように提供される。上記デバイスは、基板と、分子を含む基板(すなわち、放出システム)内の少なくとも1つのリザーバ、および分子にわたってリザーバ上に位置するリザーバキャップとを含み、分子は、デバイスを冷却するかまたは加熱すると同時にリザーバから放出されるか、もしくはリザーバキャップを破裂させるのに十分なリザーバの一部から放出される。好適な実施形態において、デバイスは、リザーバに集積されたレジスタまたはリザーバキャップの近傍に取り付けられたレジスタを含み、リザーバキャップは、レジスタを介して、電流の付与と同時に、リザーバの含有物の少なくとも1つを熱的に膨張させ、蒸発させ、相変化させ、または熱的な駆動反応を受けさせ、その結果、リザーバキャップが機械的応力により破裂する。あるいは、熱トリガは、(例えば、抵抗加熱(resistive heateing)の付与なしで)例えば、本体上へのまたは本体内へ熱トリガを配置することにより、デバイス全体に対する温度変化を生じさせ得、他の場合、デバイスが配置される環境の温度の大きな変化により引き起こされる。別の実施形態において、デバイスは、温度変化に応答してキャップ材料を膨張させ、縮小させ、または相変化させることによって破壊されるリザーバキャップを含む。さらに別の実施形態において、デバイスは、温度変化に応答して分子にさらに浸透可能となるリザーバキャップまたは放出システムを含む。
【0007】
リザーバキャップは、好適には、降伏強さおよび引張強さを超える破損またはいくつかの他の形態の機械的な破損により材料が劣化する降伏強さおよび引張強さを有する材料の薄膜である。あるいは、リザーバキャップは、温度の変化に応答して相変化を受ける場合に構造的一体性を失う材料で作製され得る。そのような材料例は、金属、ガラス、化学物質、および半晶質ポリエステル等のポリマーを含む。
【0008】
デバイスは、連続的な、または脈動的な態様のどちらかの放出を提供するように設計される。マイクロチップは、分子が放出する速度および放出が始まる時間についての制御を提供する。1実施形態において、リザーバの熱トリガは、予めプログラムされたマイクロチップ、遠隔制御により、またはバイオセンサからの信号により制御され得る。
【0009】
リザーバは、様々な薬物量の複数の薬物または他の分子を含み得る。信号マイクロチップのそれぞれのリザーバは、独立して放出され得る異なる分子および/または異なる量および密度を含み得る。送達される分子の例は、薬物、フレグランス、染料または着色剤、甘味料、診断試薬、および細胞成長因子等の組織培養で使用される化合物を含む。
【0010】
(発明の詳細な説明)
マイクロチップ送達デバイスは、分子の放出の速度および時間の両方を制御するように提供される。デバイスは、基板と、分子を含む基板における少なくとも1つのリザーバと、分子にわたってリザーバ上に位置するリザーバキャップとを含み、分子は、デバイスを冷却するか、または加熱すると同時にリザーバから放出されるか、もしくはリザーバキャップを破裂させるのに十分なリザーバの一部から放出される
本明細書中で使用されるように、用語「破裂」は、機械的な破損のいくつかの他の形態、および温度変化に応答する相変化(例えば、融解)による構造的な一体性の損失を含み、上記の特定の機構が示されない場合、破裂を含む。
【0011】
本明細書中で使用されるように、「マイクロチップ」は、集積回路およびMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)の製造に一般に適用される方法を用いる小型デバイスである。集積回路およびMEMS(Micro Electro Systems)の製造に一般に適用される方法は、例えば、Wolf&Tauberによる、Silicon Processing for the VLSI Era,Volume1−Process Technology(Lattice Press,Sunset Beach,CA,1986);およびJager,Introduction to Microelectronic Fabrication,Volume V in The Modular Series on Solid State Devices(Addison−Wesley,Reading,MA,1988)に記載されるような、紫外線(UV)フォトリソグラフィー、反応性イオンエッチング、および電子ビーム蒸着法(evaporation)等の方法、ならびに、例えば、Madou.Fundamentals of Microfabrication(CRC Press,1997)に記載される方法を含むコンピュータチップ作製において標準ではないMEMS方法、ならびに、公知のマイクロモールディング技術およびマイクロマッチング技術である。マイクロチップは、分子が放出される速度およびその放出が始まる時間についての制御を提供する。放出時間は、受動的にまたは能動的に制御され得る。マイクロチップ製造プロシージャは、1ミリメートル未満〜数センチメートルの範囲である主な寸法(矩形、長方形の場合は側面の長さ、あるいは円の場合は直径の長さ)を有するデバイスの製造を可能にする。一般的なデバイスの基板厚みは500マイクロメートルである。しかし、デバイスの厚みは、デバイスの用途に応じて、約10マイクロメートル〜数センチメートルまで変化し得る。基板は、1つのみの材料から構成され得るか、または複数の材料あるいは多層材料であり得る。多層材料は、共に結合される同じまたは異なる基板材料のいくつかの層から構成される。デバイス全体の厚みおよびリザーバの体積は、例えば、図6a〜図6dに示されるように、マイクロチップデバイスを形成するためのさらなるシリコンウエハあるいは他の基板材料のボンディングまたは取り付けにより増加され得る。
【0012】
一般に、デバイスの厚みを変化させることは、各リザーバの体積に影響を与え得、マイクロチップに組み込まれ得るリザーバの最大数に影響を与え得る。デバイスのインビボ用途は、主な寸法が一般に5cmまたは5cm未満であるデバイスを必要とする。より小さな(1ミリメートルまたはそれ未満のオーダーの)インビボデバイスが、カテーテルまたは他の挿入手段を用いて埋め込まれ得る。インビボ用途用のデバイスは、より僅かなサイズ制限を有し、必要である場合、インビボデバイス用の寸法範囲よりかなり大きくなり得る。
【0013】
(装置製造のための装置)
それぞれの装置は、少なくとも基板、リザーバ、および送達されるべき分子を含むか、封入するかまたは層状化される放出システムからなる。装置は、さらに、分子の放出時間を制御するために、それぞれのリザーバの上部にリザーバキャップを含む。動作装置は、さらに、制御回路および電源を含み得る。
【0014】
(A.基板)
基板は、エッチングされたリザーバ、機械加工されたリザーバ、または成形されたリザーバを含み、マイクロチップの支援として利用される。支援として利用され得るいかなる材料も、エッチング、機械加工または成形に適切であり、送達されるべき分子に対しておよび取り囲む液体(例えば、水、血液、電解質、または他の溶液)に対して不浸透性であり、基板として使用され得る。基板の材料の例は、ガラス、セラミック、金属、半導体ならびに分解性ポリマーおよび非分解性ポリマーを含む。基板は1つの材料のみから形成され得るか、あるいは合成材料または多積層材料(例えば、同じ基板材料または異なった基板材料が相互に接合されたいくつかの層等)であり得る。合成基板または多積層基板は、シリコン、ガラス、セラミック、半導体、金属、ポリマーの任意の数の層を含み得、さらに、相互に接合された(図6a−d参照)2つ以上の完全なマイクロチップデバイスから形成され得る。インビボアプリケーションでは、基板材料の生体適合性は好適であるが、必要とされない。それは、インビボアプリケーションでは、非生体適合性材料は、使用前に、ポリ(エチレングリコール)やポリテトラフルオロエチレンのような材料等、生体適合材料によってカプセル化されるか、これによってコーティングされ得るからである。極めて非分解性で、容易にエッチングされる送達されるべき分子および取り囲む流体に対して不浸透性である基板の1例は、シリコンである。多積層基板の1実施形態は、シリコンとガラスとを接合することを含む。別の実施形態において、基板は、1期間に渡って生体適合成分に分解または分離する強固な材料から作製される。この実施形態は、装置に埋め込まれるインビボ用途に好適であり、例えば、脳への埋め込み等、後から装置の物理的除去は適切でないか、または推められない。強い生体適合性の材料分類の1例は、ポリ(無水物−co−イミド)であり、Uhrichらの「Synthesis and characterization of degradable poly(anhydride−co−imides)」、「Macromolecules」28:2184−93(1995年)に記載されている。
【0015】
(B.放出システム)
送達されるべき分子は、その純粋な形態、つまり固体、溶液またはゲルとして、あるいは迅速に蒸発する材料としてリザーバに挿入され得る。代替的に、分子は放出システムの中に、または放出システムによってカプセル化され得る。本明細書中で用いられるように、「放出システム」は、分子(1)が純粋な形態で、つまり固体、液体、ゲルまたは蒸気として存在するか、あるいは(2)分解材料あるいはマトリクスからの拡散またはマトリクスの分解によって組み込まれた分子を放出する材料から形成されるマトリクスに存在するという両方の状態を含む。放出システムの分解、溶解、または拡散特性は、分子の放出速度を制御する方法を提供するので、分子は時々放出システムに存在し得る。分子は、放出システム内で均一に分布されるかまたは不均一に分布され得る。放出システムの選択は、分子の放出の所望のレートに依存する。非分解システムおよび分解システムの両方は、分子の送達のために用いられ得る。適切な放出システムは、ポリマーおよびポリマーマトリクス、非ポリマーマトリクス、または無機賦形剤および有機賦形剤、ならびに限定はされないが炭酸カルシウムおよび糖等の希釈剤を含む。合成放出システムは、放出プロフィールのより良い特質ゆえに好適であるが、放出システムは天然または合成であり得る。
【0016】
放出システムは、リザーバまたはリザーバ群から放出されることが所望される期間に基づいて選択される。いくつかのインビボ実施形態において、材料を放出する多くのリザーバを有する単一装置は、1ヶ月〜12ヶ月等の延長期間の間の放出を提供し得る。これに対して、いくつかのインビボ用途のために、装置からの放出タイムが数秒または数分であることが所望され得る。いくつかの場合、リザーバからの連続(一定)放出は、最も有用であり得る。他の場合、リザーバからのパルス(バルク)放出は、より効果的な結果を提供し得る。1実施形態において、個々のリザーバからの単一パルスは、逐次放出複数リザーバによって拍動性放出プロフィールを効果的に提供し得る。放出システムおよび他の材料のいくつかの層を、単一リザーバからの拍動性送達を達成するために単一リザーバに組み込むことも可能である。連続放出は、延長期間に渡って分解し、溶解し、または放出システムによって分子の拡散を可能にする放出システムを組み込むことによって達成され得る。さらに、連続放出は、迅速な遷移で分子のいくつかパルスの放出を精密に調節することによってシミュレートされ得る。
【0017】
放出システム材料は選択され得るので、異なった分子量の分子は、材料からの拡散または材料を通って、あるいは材料の分解によってリザーバから放出される。生分解性ポリマー、生侵食性ヒドロゲルおよびタンパク質送達システムは、拡散、分解または分離による分子の放出にとって好適である。一般的には、これらの材料は、インビボまたはインビトロで酵素加水分解または水に曝すことによって、あるいは表面侵食かまたはバルク侵食のどちらかによって分解するか、または分離する。代表的な合成生分解性ポリマーは、ポリ(アミノ酸)およびポリ(ペプチド)等のポリ(アミド)と、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸−co−グリコール酸)およびポリ(カプロラクトーネ)等のポリ(エステル)と、ポリ(無水物)と、ポリ(オルトエステル)と、ポリ(カーボネート)と、それらの化学物質誘導体(化学基(例えば、アルキル、アルキレン)の置換、付加、ヒドロキシル化、酸化ならびに当業者によって通常に行なわれる修飾)、コポリマーおよびそれらの混合物とを含む。代表的な合成非分解性ポリマーは、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(テトラメチレンオキシド)等のポリ(エステル)と、ビニルポマーと、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、他のアルキルメタクリレート等のポリ(アクリレート)およびポリ(メタクリレート)アクリル酸およびメタクリル酸、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルビロリドン)、およびポリ(ビニールアセテート)等の他の化合物と、ポリ(ウレタン)と、セルロースならびに、アルキル、ヒドロキシアルキル、エーテル、エステル、ニトロセルロース等のそれらの誘導体と、様々なセルロースアセテートと、ポリ(シロキサン)と、それらの任意の化学物質誘導体(例えば、アルキル、アルキレン等の化学基の置換、付加、ヒドロキシル化、酸化等、ならびに当業者によって通常行なわれる修飾)、それらのコポリマーおよび混合物とを含む。
【0018】
(C.放出されるべき分子)
任意の天然または合成の、有機分子または無機の分子あるいはそれらの混合物が送達され得る。1実施形態において、マイクロチップは、薬物を必要とする患者に薬物を全身送達するために用いられる。別の実施形態においては、患者の中のマイクロチップの構成および配置は、薬物を局所的に放出することを可能にし、これは全身送達にとって極めて有用であり得る。本明細書中で用いられるように、薬物は有機分子または無機分子であり、タンパク質、核酸、ポリサッカライドおよび合成有機分子を含み、例えば、麻酔、ワクチン、化学療法剤、ホルモン、代謝産物、糖、免疫モジュレータ、酸化防止剤、イオンチャネルレギュレータおよび抗生物質等のバイオ活性効果を有する。薬物は、単一薬物または薬物の混合物の形態であり得、製薬上許容できるキャリアを含み得る。
【0019】
別の実施形態において、少量(ミリグラム〜ナノグラム)の1つ以上の分子の制御された放出が必要とされる、例えば、分析化学または医療診断の分野など、分子は任意のシステムにおいてインビボ放出される。分子は、pH緩衝剤として、診断剤として、およびポリメラーゼ連鎖反応または他の核酸増幅処置等の複合的反応における試薬であり得る。
【0020】
また別の実施形態においては、放出されるべき分子は、香料、芳香剤、染料、着色剤、甘味料または他の様々な化合物である。
【0021】
(リザーバキャップ)
リザーブキャップは、リザーバキャップを破壊するための装置または装置部分を加熱または冷却することによってリザーバから放出される分子を介してリザーバ上に位置が定められる。図10において模式的に示される好適な実施形態において、加熱または冷却は、分子がリザーバ内で熱的に膨張する原因となる(すなわち体積の増加)。所与の温度(T1)において、放出システムはリザーバの体積(図10a)を完全に満たす。温度T2を加熱する間(図10b)、放出システムは膨張し始め、リザーバキャップに力を加える。この力が1度キャップの破壊力を超えると(図10c)、キャップは破砕し、分子が放出される。図11において示されているこの実施形態の変形において、分子は気化または反応を起こし得、これによってリザーバ内の圧力は、機械的応力によってリザーバキャップを破壊するのに十分な圧力に上昇する。熱を加える前に(図11a)、リザーバ内の圧力はリザーバキャップを破壊するのに必要な圧力よりも低い。熱を加えると、リザーバ内の平衡圧は(図11b)上昇し、キャップ材料に作用する力は増加する。さらなる温度の上昇は、内部圧がリザーバキャップ(図11c)の破壊強度を超えるまで上昇し続ける原因となる。典型的には、熱膨張、熱気化、または熱反応は、リザーバの分子を、例えば、周囲温度を超えて加熱することによって誘導される。しかしながら、特定の用途において、熱膨張または熱反応は、リザーバにおいて分子を冷却することによって誘導し得る。水は、例えば、冷凍することで膨張する。冷却によって熱収縮する材料が、水分子を介してリザーバキャップとして用いられる場合、十分な冷却によって機械的破損はさらに促され得る。
【0022】
一実施形態において、リザーバキャップは、リザーバキャップの材料自体の物理的(すなわち、構造上の)または化学的な変化によって破裂される(例えば、温度変化によって引き起こされる変化)。例えば、リザーバキャップは、加熱されると膨張する材料から作製されるか、またはその材料を含み得る。リザーバキャップが定位置に固定され加熱される(図12b)と、リザーバキャップは、体積の増加によって亀裂が入るか、または破裂するまで膨張する(図12c)。この実施形態は、リザーバ含有物の加熱を最小限にするか、または全く加熱せずに、リザーバキャップを加熱することを可能にし、これは、リザーバが熱に敏感な分子(例えば、過度の熱に露出されると変性可能なタンパク質の薬品(protein drugs))を含む場合に特に重要な特徴である。
【0023】
能動的な放出メカニズムを用いる別の実施形態において、リザーバキャップ材料は、抵抗加熱を用いて溶解される(すなわち、相変化を受ける)。インビボに適用する場合、リザーバキャップは好適には、生体適合性のコポリマー(例えば、有機ヒドロキシ酸誘導体(例えば、ラクチドおよびラクトン))を含み、選択可能な溶解温度の範囲(PCT WO 98/26814を参照)を提供し得る。コポリマーの初期のモノマー比率とその結果得られる分子量とを適切に選択することによって、特定の溶解温度(例えば、通常の体温より上の温度である約2℃〜約12℃)をリザーバキャップに応じて選択し得る。この種類のリザーバ開口部のメカニズムは、少なくとも2つの送達スキームを提供する。第1のスキームは、様々な溶解温度を有する個々のリザーバキャップに基づく。デバイスまたはその一部分を一定温度まで加熱することにより、特定のリザーバキャップのみが溶解して、これにより、リザーバを開いて、分子を露出させる。従って、異なる温度のプロフィールを適用すると、選択的分子放出が可能になる。図13に示される第2のスキームでは、一定組成物および均一溶解温度を有する全てのキャップに注目する。温度T1(図13a)におけるキャップは固相である。個々のリザーバキャップを温度T2(図13b)まで局所的に加熱することにより、リザーバキャップは溶融状態になる。次いで流動リザーバキャップは流動性になり、その結果、リザーバの開口および分子の放出は容易になる(図13c)。インビトロへの適用の場合、同様の能動的なスキームを、それほど厳格でない組成要件および温度要件で行うことが可能である。
【0024】
受動的な放出の実施形態において、リザーバキャップの破裂は、環境の温度変化(例えば、デバイスを人間または他の動物の体の上または中に配置すること)によってトリガされる。受動的なメカニズムと能動的なメカニズムとの間の相違点は、能動的なデバイスのリザーバキャップの破裂は、環境の温度変化ではなく、直接適用される温度変化によってトリガされることである。
【0025】
受動的なデバイスの一実施形態において、分解を促進するために、リザーバキャップに熱刺激を与える。例えば、リザーバキャップ分解の動力学は、常温ではとても遅くあり得、キャップは、化学的に安定していると考えられ得る。しかし、分解の動力学は、キャップ材料の温度を(例えば、インビボ移植によって)上昇させることにより著しく増加する。分解の絶対速度は、リザーバキャップ材料の組成を制御することにより選択され得る。例えば、生体適合性のコポリマー(例えば、ラクトンおよびラクチド)の分解速度は、一次構造ユニットの特定のモル比(molar ratios)に応じて、数時間〜数年であり得、好適には、数時間〜数年であり、好適には、37℃の温度で2日〜1年である。それぞれが異なる組成を有するリザーバキャップのアレイを使用することにより、一旦デバイスがその環境によって定義される臨界温度に達すると、複雑な分子放出プロフィール(complex molecular release profiles)が達成され得る。
【0026】
受動的なデバイスの別の実施形態において、全てのリザーバキャップは、一定の分解速度(例えば、温度に依存しない分解速度)を有し、放出プロフィールは、リザーバキャップ材料の物理的寸法を選択することにより制御される。分解の速度を固定することにより、キャップ分解の時間を、リザーバキャップ材料の厚さに依存させる。例えば、全てのリザーバキャップが同一の組成物を有する一実施形態において、キャップの厚さを変化させることにより、分子放出を制御し得る。
【0027】
能動的なデバイスと受動的なデバイスとの両方において、リザーバキャップは、降状強さもしくは引張り強さを越えると材料が断口によって破損する降状強さもしくは引張り強さを有する材料、または選択された温度変化によって相変化(例えば、溶解)を受ける材料によって形成される。材料は好適には、金属(例えば、銅、金、銀、プラチナおよび亜鉛、ガラス、セラミックス、半導体、ならびに脆性ポリマー(例えば、半晶質のポリエステル))から選択される。好適には、リザーバキャップは、薄膜の形態(例えば、約0.1μm〜1μmの厚さを有する膜)である。しかし、厚さは特定の材料および破裂のメカニズム(すなわち、電気化学的な破壊対機械的な破壊)に依存するため、いくつかの材料(例えば、特定の脆性材料)には、より厚いリザーバキャップ(例えば、1μm〜100μm以上の厚さを有するリザーバキャップ)の方がよりよく働き得る。
【0028】
オプションとして、リザーバキャップを上塗り膜材料でコーティングして、溶解、侵食、生物分解、酸化、または別の方法による分解(例えば、インビボまたはインビトロの水への露出)によって上塗り膜材料が実質的に除去されるまで、可裂性の材料層を構造的に強化してもよい。代表的な適切な劣化性の材料としては、合成ポリマーまたは自然生物分解性のポリマーがある。
【0029】
受動的なまたは能動的な実施形態のいずれかにおけるリザーバキャップは、温度に応じて、透過性膜または半透性膜として機能する材料によって形成され得る。このようなキャップの例は、下記の例2にさらに示される。
【0030】
(E.加熱用のレジスタ)
能動的なデバイスの好適な実施形態において、レジスタは、リザーバ内に一体化されるか、またはリザーバの近くに取り付けられ、この場合、電流が印加されてレジスタを通過すると、リザーバの含有物、キャップ材料、またはその両方が加熱される。典型的な実施形態において、レジスタは、リザーバの底部またはリザーバの内壁に沿って配置されるか、または小さなリザーバ開口部を覆うリザーバキャップの上またはリザーバの近くに配置され得る。レジスタは通常、薄膜レジスタであり、製造処理中にリザーバと一体化され得る。このようなレジスタは、金属(例えば、プラチナまたは金、セラミックス、半導体およびいくつかのポリマー)から作製され得る。これらのレジスタを製造する方法は、例えば、Wogersienらの「Fabrication of Thin Film Resistors and Silicon Microstructures Using a Frequency Doubled Nd:YAG−Laser」Proc.SPIE−Int.Soc.Opt.Eng.,3680:1105−12(1999)、Bhattacharya & Tummalaの「Next Generation Integral Passives:Materials,Processes,and Integration of Resistors and Capacitors on PWB Substrates」J.Mater.Sci.−Mater.Electron.11(3):253−68(2000)、およびVladimirskyらの「Thin Metal Film Thermal Micro−Sensors」Proc.SPIE−Int.Soc.Opt.Eng.,2640:184−92(1995)に記載される。あるいは、小さなチップレジスタは、リザーバまたはリザーバキャップに近接してデバイスに表面実装され得る。
【0031】
図9a〜図9cは、リザーバ、リザーバキャップおよび関連レジスタの3つの可能な構造を示す。これらの図に、基板は示されていない。図9aは、リザーバキャップ916によって覆われているリザーバ914の底部にレジスタ912を示し、レジスタが存在する平面は、実質的にリザーバの底部に沿っている。図9bは、リザーバ914を覆っているリザーバキャップ916の上部の近くにレジスタ912を示し、図9cは、リザーバ914を覆っているリザーバキャップ916の上またはすぐ下にレジスタ912を示す。これらの2つの構造においてレジスタが存在する平面は、実質的にリザーバの上部に沿っているか、または上部のすぐ上にある。
【0032】
(F.デバイスパッケージング、制御回路部および電源)
マイクロエレクトロニクスデバイスパッケージは典型的には、絶縁材料または誘電材料(例えば、酸化アルミニウムまたは窒化珪素)から作製される。これらの材料を使用する目的は、デバイスの全ての構成要素を近接して配置し、構成要素と電源との相互接続および構成要素間の相互接続を容易にすることを可能にすることである。パッケージのいくつかの潜在的な種類は、マルチチップモジュール(MCM)またはハイブリッドのパッケージを含む。送達デバイスをインビボに適用する場合、全ての構成要素(すなわち、デバイス、マイクロプロセッサおよび電源)を含むパッケージ全体を、生体適合性材料(例えば、ポリ(エチレングリコール)またはポリテトラフルオロエチレン様材料)内にコーティングするか、または封入する。インビトロに適用する場合の材料要件は、あまり厳格でなく、特定の状況に依存し得る。
【0033】
制御回路部は、タイマー、デマルチプレクサ、マイクロプロセッサ、および入力ソース(例えば、メモリソース、信号レシーバまたはバイオセンサ)を含む。タイマーおよびデマルチプレクサ回路部は、電極製造中にマイクロチップの表面上に直接的に設計され組み込まれ得るか、またはマイクロチップパッケージ内に一体化される製造前の構成要素からなり得る。マイクロプロセッサの選択の基準は、サイズが小さいことと、電力要件が低いことと、メモリソース、信号レシーバまたはバイオセンサからの出力を、デマルチプレクサを介して送達デバイス上の特定のリザーバに電力を誘導するアドレスに変換可能なこととである。マイクロプロセッサへの入力のソース(例えば、メモリソース、信号レシーバまたはバイオセンサ)の選択は、送達デバイスの特定アプリケーションと、デバイス動作があらかじめプログラムされているか、遠隔手段によって制御されているか、またはその環境からのフィードバック(すなわち、バイオフィードバック)によって制御されているか否かに依存する。
【0034】
電源の選択の基準は、サイズが小さいことと、電力容量が充分であることと、制御回路またはパッケージ内に一体化されることが可能なことと、充電可能なことと、充電が必要となるまでの時間の長さとである。いくつかのリチウムベースの充電可能なマイクロバッテリは、Jones & Akridgeの「Development and performance of a rechargeable thin−film solid−state microbattery」J.Power Sources,54:63−67(1995)、およびBatesらの「New amorphous thin−film lithium electrolyte and rechargeable microbattery」IEEE 35th International Power Sources Symposium,pp.337−39(1992)に記載された。これらのバッテリは典型的には、厚さはわずか10ミクロンであり、面積は1cm2である。これらのバッテリの1つ以上は、送達デバイスまたはパッケージの上に直接組み込まれ得る。
【0035】
(マイクロチップデバイス製造の方法)
マイクロチップデバイスを製造する方法を本明細書で説明する。これらの技術は、米国特許第5,797,898号、PCT WO98/00107号に説明する技術を適用する。
【0036】
受動デバイスおよび能動デバイスを製造する好適な方法を、図1および図2a〜2dにそれぞれ示す。これらの方法を、以下の文書および例1〜3に説明する。例で説明された製造方法においては、マイクロ製造技術およびマイクロ電子処理技術を用いているが、いかなる能動マイクロチップ化学送達デバイスおよび受動マイクロチップ化学送達デバイスの製造も、半導体などの材料、またはマイクロ電子製造において通常用いられるプロセスに限定されないことが理解される。例えば、他の材料(例えば、金属、セラミックスおよびポリマー)がデバイス内で用いられてもよい。同様に、他の製造プロセス(例えば、めっき、鋳造または成形)も、能動マイクロチップ化学送達デバイスおよび受動マイクロチップ化学送達デバイスを製造するために用いられてもよい。
【0037】
(A. リザーバの製造)
デバイスは、当業者に公知である技術を適用することによって製造される。この技術は、例えば、Wolfら(1986年)、Jaeger(1988年)およびMadouのFundamentals of Microfabrication (CRC Press、1997年)に検討されている。
【0038】
製造は、リザーバエッチングの間にエッチングマスクの役割を果たすように、材料(通常、絶縁材料または誘電材料)を基板上に堆積し、フォトリソグラフィックを用いてパターニングすることで開始する。マスクとして用いる通常の絶縁材料には、窒化シリコン、二酸化シリコンおよびいくつかのポリマー(例えば、ポリイミド)が含まれる。好適な実施形態において、応力が低く、シリコンに富んだ窒化物の薄膜(約1000〜3000Å)が、垂直チューブリアクタ(VTR)内のシリコンウエハの両側に堆積される。あるいは、化学量論的な、多結晶窒化シリコン(Si3N4)が、低圧化学蒸着法(LPCVD)によって堆積されてもよいし、またはアモルファスシリコン窒化物がプラズマエンハンスメント化学蒸着法(PECVD)によって堆積されてもよい。リザーバは、紫外線フォトリソグラフィ、およびプラズマエッチングプロセス(すなわち、リアクティブイオンエッチング)あるいは熱リン酸または緩衝フッ化水素酸からなる化学エッチングのいずれかによって、ウエハの1つの面上でシリコン窒化物膜内にパターニングされる。パターニングされたシリコン窒化物は、濃縮された水酸化カリウム溶液(75〜90℃の温度で、約20〜40重量%のKOH)によって露出されたシリコン34/340を化学エッチングするエッチングマスクとして機能する。あるいは、リザーバは、TMAH(テトラ−メチルアンモニウム水酸化物)、またはドライエッチング技術(例えば、リアクティブイオンエッチングまたはイオンビームエッチング)によって基板内にエッチングされ得る。例えば、Wolfら(1986年)、Jaeger(1988年)およびMadou(1997年)によって検討されるように、これらの技術は、マイクロ電子デバイスまたはMEMS(マイクロ電子メカニカルシステム)デバイスの製造において通常用いられる。これらのマイクロ製造技術を用いることによって、数百〜数千のリザーバを1つのマイクロチップ上に組み込むことが可能となる。各リザーバ間の距離は、特定の用途およびデバイスが受動デバイスであるか能動デバイスであるかに依存する。受動デバイスにおいて、リザーバは1ミクロンより多くは離れ得ない。能動デバイスにおいて、リザーバ間の距離はこれよりやや大きい(約1〜10μm)。これはレジスタあるいは各リザーバの上または各リザーバ近傍の他の電子構成要素が占める空間に起因する。リザーバは、ほとんどあらゆる形状および深さで製造され得、基板を完全に貫通する必要はない。好適な実施形態において、リザーバは、54.7°で傾斜した側壁を有する正方形の角錐の形状の、(100)方向に配向されたシリコン基板に、水酸化カリウムによってエッチングされ、基板(例えば、厚さ500μm)を基板のもう一方の側上のシリコン窒化物膜まで完全に貫通し、シリコン窒化物膜を形成する(ここで、シリコン窒化物膜は水酸化カリウムエッチング停止として機能する)。角錐の形状によって、基板のパターニングされた面のリザーバの大きな開口部(例示的な寸法は800μm×800μm)を介してリザーバを容易に満たし、基板のもう一方の側上のリザーバの小さな開口部(例示的な寸法は50μm×50μm)を介して放出し、かつ送達されるべき薬物または他の分子を格納するためにデバイス内に大きなキャビティを設けることが可能となる。
【0039】
(B. レジスタの製造)
能動デバイスの好適な実施形態において、レジスタはデバイス内に集積される。通常、薄膜レジスタは、リザーバの底面またはリザーバの内壁に沿って設けられるか、または小さなリザーバの開口部をカバーするリザーバキャップ上またはリザーバキャップ近傍に設けられてもよい。本明細書において説明し、かつ当業者に公知であるように、これらのレジスタは、フォトリソグラフィおよび薄膜堆積技術を用いて製造される。あるいは、小さなチップのレジスタは、内側に装着される表面であり得るか、またはリザーバに非常に近接した表面であり得る。
【0040】
(C. 受動のタイミング指定された放出リザーバキャップの製造)
図1において、36a、38aおよび40aが示す工程は、インクジェットまたはミクロ注入を用いて実施され、36b、38bおよび40bが示す工程は、スピンコーティングを用いて実施される。受動のタイミング指定された放出マイクロチップの製造において、リザーバキャップの材料は、マイクロシリンジによって注入されるか(36a)、インクジェットプリンターカートリッジによって印刷されるか、またはリザーバの小さな開口部上に依然として存在する絶縁マスク材料の薄膜を有するリザーバ内にスピンコーティングされる(36b)。あるいは、リザーバキャップ材料は、リザーバの小さな開口部をカバーする絶縁マスク材料をもはや有さないリザーバ内に注入されてもよい。キャップ材料の特性に依存して、キャピラリー力および表面張力が、小さなリザーバの開口部において、支援されていないキャップ材料の膜を形成し得る。キャップ材料は液体の形状であってもよいし、あるいは小さなリザーバの開口部上に固体または半固体キャップを形成するように乾燥されてもよい。いずれの場合にしても、注入またはインクジェット印刷の方法が用いられる場合、キャップ形成は材料が注入された後に完了するか、またはリザーバ内に印刷されて(38a)、さらなる処理を必要としない。スピンコーティングが用いられる場合、キャップ材料は複数のスピンコーティングによって平坦にされる(36b)。膜の表面は次いで、所望のキャップの厚さが得られるまで、プラズマ、イオンビーム、化学エッチング剤によってエッチングされる(38b)。好適な実施形態において、用いられる絶縁材料は、シリコン窒化物であり、キャップ材料は、キャップ材料の溶液または懸濁液で満たされたミクロ注入器によってリザーバ内に注入される。
【0041】
リザーバキャップは、分子がリザーバから放出される時間を制御する。各リザーバキャップは、異なる物理的特性または熱的特性を有し得、分子を含む各放出システムが周囲の流体に露出される時間を変化させる。例えば、異なる成分のリザーバキャップは、デバイスが特定の温度に露出される場合(室温(通常約20〜25℃と考えられる)より高い場合か、または低い場合)、異なる速度および時間で、劣化、溶解または分解し得る。
【0042】
1実施形態において、リザーバキャップは、例えば、注入およびインクジェット印刷またはスピンコーティングによって、リザーバの放出端部をリザーバキャップ材料で満たすことによって製造される。注入およびインクジェット印刷は深い(10μmより深い)リザーバ、または大きな開口部(50μmより大きい)を有するリザーバを満たす好適な方法である。例えば、注入またはインクジェット印刷を用いて、異なるキャップの厚さを得るには、異なる量のキャップ材料が注入されるか、またはそれぞれ個々のリザーバ内に直接印刷される。スピンコーティングは、浅い(10μmより浅い)リザーバ、基板を完全に通過しないリザーバ、または小さな開口部(50μmより小さい)を有するリザーバを満たす好適な方法である。スピンコーティングによるリザーバキャップの厚さまたは材料における変異は、スピンコーティング、選択リザーバのマスキング、およびエッチングの繰り返されるステップワイズプロセスによって達成され得る。例えば、スピンコーティングによってキャップの厚さを変化させるには、キャップ材料を基板全体の上でスピンコーティングする。スピンコーティングは、必要に応じて、材料がほぼ平坦になるまで繰り返される。フォトレジストなどのマスク材料は、パターニングされて、1つを除くすべてのリザーバ内のキャップ材料をカバーする。プラズマ、イオンビームまたは化学エッチング剤は、露出されたリザーバ内のキャップ材料を、所望の厚さになるまでエッチングするために用いられる。フォトレジストは次いで、基板から取り除かれる。このプロセスは繰り返され、新たなフォトレジスト層を堆積し、かつパターニングして、1つを除くすべてのリザーバ内のキャップ材料をカバーする(露出されたリザーバは、所望の厚さになるまでエッチングされたリザーバと同じではない)。このリザーバ内の露出されたキャップ材料のエッチングは、所望のキャップの厚さが得られるまで続く。マスク材料を堆積し、かつパターニングするこのプロセス(例えば、フォトレジスト、エッチングおよびマスキング除去)は、各リザーバがそれぞれ一意的なキャップの厚さを有するまで繰り返され得る。この技術(例えば、UVフォトリソグラフィおよびプラズマまたはイオンビームエッチング)は、マイクロ製造の分野の当業者に周知である。
【0043】
注入、インクジェット印刷およびスピンコーティングがリザーバキャップ製造の好適な方法ではあるが、キャピラリー作用、表面張力によって、真空または他の圧力勾配を用いて材料を引いたり、またはリザーバ内に材料を押し込むことによって、リザーバ内に材料を溶解させることによって、遠心法および関連のプロセスによって、固体をリザーバ内に手動でパッキングすることによって、あるいはこれらの任意の組み合わせ、または同様のリザーバを満たす技術によって、各リザーバが個々にキャッピングされ得ることが理解される。
【0044】
キャップ製造法が選択されると、リザーバから分子を放出する時間を制御するさらなる方法が、例えば、温度反応性ポリマーまたはUV重合可能ポリマーを含むこと、または放出システムおよびキャップ材料の層形成に用いられ得る。第1の実施形態では、温度反応性ポリマーを含むリザーバキャップの組成により、キャップが特定の温度(例えば、体温)で分解、溶解、または崩壊する時間および速度を制御することができる。例えば、リザーバキャップの分解の動力学は、室温では非常に遅くなり得、キャップは化学的に安定であるとみなされ得る。しかしながら、分解の動力学(kinetics)は、例えば、生体内移植によりキャップ材料の温度を上昇させることにより著しく増加する。分解の絶対速度は、リザーバキャップ材料の組成を制御することにより選択され得る。例えば、生体適合コポリマー(例えば、ラクトンおよびラクチド)の分解速度は、一次構造単位の比モル比(specific molar ratio)に依存して、37℃の温度で、数時間から数年の間であり得る。それぞれが異なる組成を有する、リザーバキャップのアレイを用いることにより、デバイスがその環境により規定される臨界温度に達すると、複雑な分子放出プロファイルが達成され得る。第2の実施形態では、リザーバキャップは、注入、インクジェット印刷、またはスピンコーティングされたUV重合可能ポリマーから構成され、各キャップは、様々な度合いの交差結合を与え、それにより、分解性キャップに異なる温度依存分解または溶解速度を与えるか、もしくは非分解性キャップに分子に対する異なる透過性を与えるために、異なる強度のUV光にさらされ得る。第3の実施形態では、温度により影響される拡散特性を備えたポリマーが、キャップ材料として用いられ得る。例えば、異なるガラス遷移温度を有するポリマーは、所与の温度で放出速度に影響を及ぼすために用いられ得る。この技術は、ポリマーを介する化学拡散速度が、ポリマーの現在の温度がそのガラス遷移温度に近接するにつれて変化する場合に可能である。各リザーバキャップは、異なる組成、それゆえ、特定の温度を有するポリマーで構成され得、リザーバキャップは、それらのガラス遷移温度への近接度により、異なる透過性を有する。第4の実施形態では、分解性および非分解性の両方のキャップ材料の層が、注入、インクジェット印刷、スピンコーティング、または選択的交差結合により、送達される分子を含む放出システムの層の間に挿入され得る。これらの方法および他の同様の方法により、単一のリザーバから複雑な放出プロファイル(例えば、不規則な時間間隔での脈動送達(pulsatile delivery))を達成することが可能になる。
【0045】
所望であれば、受動型時間放出デバイス(passive timed release device)が、リザーバキャップなしで製造され得る。よって、分子の放出速度は、送達される分子を含む放出システムの物理特性および材料特性によってのみ制御される。
【0046】
(D.能動型時間放出リザーバキャップの製造)
好適な実施形態では、フォトレジストが、絶縁材料または誘電体材料の薄膜により覆われるリザーバを有する基板の表面に、リザーバキャップの形態でパターニングされる。フォトレジストは、リザーバの覆われた開口部のちょうど上にある領域がフォトレジストに覆われていないままで、リザーバキャップの形状をするように成長させられる。薄膜の材料が、蒸発、スパッタリング、化学気相成長、溶媒鋳造、スリップ鋳造、密着焼付法、スピンコーティング、または公知の他の薄膜堆積技術等の方法により、基板上に堆積される。膜堆積の後、フォトレジストが基板から取り除かれる。これにより、フォトレジストにより覆われていない領域を除いて、堆積された膜が除去される(リフトオフ技術)。これにより、基板表面の材料がリザーバキャップの形態で残る。代替的な方法は、デバイスの表面全体にわたって材料を堆積する工程、UVフォトリソグラフィまたは赤外線(IR)フォトリソグラフィを用いて、薄膜の上にフォトレジストをパターニングすることにより、フォトレジストがリザーバキャップの形状でリザーバ上に存在するようにさせる工程、およびプラズマ、イオンビーム、または化学エッチング技術を用いてマスクされていない材料をエッチングする工程を包含する。次いで、フォトレジストが取り除かれ、リザーバを覆う薄膜キャップが残る。リザーバキャップ材料の通常の膜厚は、0.05μmから数ミクロンの間である。
【0047】
種々の形状およびサイズのレジスタが、先の段落で述べた公知の同様のフォトリソグラフィ、堆積、およびエッチング技術を用いて、リザーバの内側またはリザーバキャップの近くに製造される。薄膜レジスタは、リザーバ内の分子またはリザーバキャップに熱を選択的に加えるために用いられ、プラチナまたは金等の金属、セラミックス、半導体、およびなんらかのポリマーを含む、1種類以上の材料を含み得る。
【0048】
いくつかの実施形態では、シリコン酸化物(SiOx)またはシリコン窒化物(SiNx)等の絶縁材料または誘電体材料が、化学気相蒸着(CVD)、電子またはイオンビーム蒸着、スパッタリング、もしくはスピンコーティング等の方法により、デバイスの表面全体にわたって堆積される。フォトレジストが、誘電体をエッチングすることを防ぐために、各リザーバを覆うリザーバキャップ上を除いて、誘電体上にパターニングされる。誘電体材料は、プラズマ、イオンビーム、または化学エッチング技術によりエッチングされ得る。この膜の目的は、レジスタが周囲の環境にさらされる必要がない全ての領域において、レジスタの腐食、分解、または溶解を防ぐことである。
【0049】
1つの実施形態では、レジスタは、電流がレジスタに印加されたときに、リザーバ内の材料が膨張、収縮、蒸発、またはリザーバキャップが破裂するまでリザーバ内の圧力を上昇させる反応をするように、リザーバ内に配置される。別の実施形態では、レジスタは、電流がレジスタに印加されたときに、リザーバキャップが膨張または収縮により破裂するか、または構造保全を失わせる相変化を起こすように、リザーバキャップの近くに配置される。リザーバが開口されると、分子が、分解放出システムの分解または溶解速度に依存した速度、もしくは非分解放出システムからの分子の拡散速度、または非分解放出システムを介する分子の拡散速度でリザーバから放出される。
【0050】
(E.絶縁体膜の除去(リザーバエッチングストップ))
リザーバの製造中にマスクおよびエッチングストップとして用いられる、リザーバを覆う絶縁材料または誘電体材料の薄膜は、リザーバを充填する前に能動型時間放出デバイスから、そして(リザーバが完全に基板をわたって広がっている場合)リザーバを充填した後に受動型時間放出デバイスから除去されなければならない。この膜は、2通りの方法で除去され得る。まず、この膜は、イオンビームまたは反応性イオンプラズマにより除去され得る。好適な実施形態では、絶縁材料として用いられるシリコン窒化物が、酸素、およびCHF3、CF4、またはSF6等のガスを含むフッ素からなる反応性イオンプラズマにより除去され得る。2つ目は、この膜は、化学エッチングにより除去され得る。例えば、緩衝されたフッ化水素酸(BHFまたはBOE)が、二酸化シリコンをエッチングするために用いられ得、熱リン酸(hot phosphoric acid)が、シリコン窒化物をエッチングするために用いられ得る。
【0051】
(F.リザーバ充填)
送達のための分子を含む放出システムが、注入、インクジェット印刷、またはスピンコーティングにより、リザーバの大きな開口部に挿入される。各リザーバは、異なる分子をおよび注入量を含み得る。同様に、各リザーバ内の分子の放出動力学は、放出システムおよびキャップ材料の選択により変わり得る。さらに、各リザーバ内の放出システムおよびキャップ材料の混合または層形成は、放出動力学を特定の用途の必要性に適合させるために用いられ得る。
【0052】
送達される分子を含む放出システムを充填されたリザーバのマイクロチップ上の分布は、患者の医療の必要性またはそのシステムの他の要件に依存して変わり得る。薬物の送達の用途では、例えば、ロウ(row)の各々の薬物は相互に異なり得る。1つのロウは、ホルモンを含み得、別のロウはメタボライトを含み得る。また、放出システムは、1つのリザーバからは高速で、別のリザーバからは遅い速度で薬物を放出するために、各ロウ内で異なり得る。投与量もまた、各ロウ内で変わり得る。深い(10μmよりも深い)リザーバまたは大きな(50μmよりも大きい)開口部を備えたリザーバを有するデバイスに関して、異なる量の材料を各リザーバに直接注入するか、またはインクジェット印刷することにより、リザーバの充填量を相違させることができる。リザーバ間の変動は、浅い(10μmよりも浅い)リザーバ、基板を完全には通過しないリザーバ、または小さな(50μmよりも小さい)開口部を備えたリザーバを有するデバイスで、受動型時間放出リザーバキャップのスピンコーティングによる製造に関し上述したように、選択されたリザーバをマスクする工程、スピンコーティングする工程、およびエッチングする工程の繰り返される段階的な処理により達成される。好ましくは、放出システムおよび送達される分子は、リザーバへの適用前に混合される。注入、インクジェット印刷、およびスピンコーティングは、リザーバを充填する好適な方法であるが、各リザーバは、毛管作用または表面張力により、真空または他の圧力勾配を用いてリザーバに材料を引き込むかまたは押し込むことにより、遠心分離および関連処理によってリザーバに材料を溶かし込むことにより、手動で固体をリザーバに詰め込むことにより、もしくはこれらまたは同様のリザーバ充填技術の任意の組み合わせにより、個別に充填され得る。
【0053】
能動型および受動型の両方の放出デバイスの好適な実施形態では、充填のために用いられるリザーバの開口部(すなわち、リザーバキャップエンドの反対の開口部)が、種々の公知技術のうちのいずれかを用いて、リザーバの充填に続いて、シーリングされる。例えば、シーリングは、開口部をわたって、硬質の受板または薄い可撓性膜をボンディングすることにより提供され得る。あるいは、開口部は、流体材料(例えば、開口部をふさぎ、シールを形成するために硬化する接着剤)を塗布することによりシーリングされ得る。別の実施形態では、(例えば、第2のデバイスの)第2の基板部分が、図6に示すように、リザーバの開口部にわたってボンディングされ得る。
【0054】
(G.デバイスパッケージング、制御回路、および電源)
受動型デバイスおよび能動型デバイスのリザーバを充填するために介する開口部は、ウエハボンディングによって、もしくは防水エポキシまたは周囲の流体を通さない他の適切な材料を用いてシーリングされる。生体内での用途のために、リザーバおよび電極を含むデバイスの表面を除く、ユニット全体が、そのシステムに適切な材料のケースに入れられる。生体内での用途のために、ユニットは、好ましくは、ポリ(エチレングリコール)またはポリテトラフルオロエチレン等の生体適合材料でカプセル化される。
【0055】
能動時間放出デバイスによる分子の放出のためのメカニズムは、収縮または除かれなければならない、ともに合わされたか、または接着された複数の部分には依存しない。各リザーバの放出時間の制御は、図3に概略的に示されるように、予めプログラムされたマイクロプロセッサによって、リモコンによって、バイオセンサからの信号によって、またはこれらの方法の任意の組み合わせによって達成され得る。最初に、マイクロプロセッサは、プログラム可能読出し専用メモリ(PROM)等のメモリソース、タイマー、デマルチプレクサ、ならびに例えば、Jonesら(1995年)およびBatesら(1992年)により記載されるようなマイクロバッテリ等の電源とともに用いられる。放出パターンは、ユーザにより、PROMに直接書き込まれる。PROMは、これらの命令をマイクロプロセッサに送信する。タイマーにより示される、放出のための時間に達すると、マイクロプロセッサは、特定のリザーバのアドレス(位置)に対応する信号をデマルチプレクサに送信する。デマルチプレクサは、電位または電流等の入力をマイクロプロセッサによりアドレシングされたリザーバに送信する。マイクロバッテリは、PROM、タイマー、およびマイクロプロセッサを動作させるために電力を提供し、デマルチプレクサにより特定のリザーバに向けられる電位または電流入力を提供する。これらのコンポーネントの各々の製造サイズおよび位置は、特定の用途の要件に依存する。1つの実施形態では、メモリ、タイマー、マイクロプロセッサ、およびデマルチプレクサ回路は、チップの表面上に直接統合される。マイクロバッテリは、チップの反対側に取り付けられ、バイアまたは細いワイヤによりデバイス回路に接続される。しかしながら、多くの場合、メモリ、タイミング、処理、およびデマルチプレクシングのためには、個別の予め製造されたコンポーネントチップを用いることが好ましい。これらのコンポーネントは、マルチチップモジュール(MCM)等のパッケージまたはハイブリッドパッケージ内で、薬品送達マイクロチップと統合され得るか、またはバッテリを備えた小型化された送達デバイスの裏側に取り付けられ得る。用いられる予め製造されたチップのサイズおよびタイプは、送達デバイスの全体寸法およびリザーバの数に依存する。2番目に、電流をレジスタに印加することによる特定のリザーバの活性化は、リモコンにより外部で制御され得る。リモコンのために用いられる回路の大部分は、予めプログラムされた方法で用いられるものと同じである。主な相違点は、PROMが信号受信器に置き換えられることである。電波、マイクロ波、低電力レーザ、または超音波等の信号は、例えば、コンピュータまたは超音波生成器等の外部ソースにより、受信器に送信される。信号は、マイクロプロセッサに送信され、そこで、リザーバアドレスに変換される。次いで、電力が、デマルチプレクサを介して、適切なアドレスを有するリザーバに向けられる。3番目に、バイオセンサが周囲の流体内の分子を検出するために、マイクロチップに統合される。分子の濃度が一定のレベルに達すると、センサは、1以上のリザーバを開口するためにマイクロプロセッサに信号を送信する。マイクロプロセッサは、デマルチプレクサを介して、1つまたは複数の特定のリザーバに電力を向ける。
【0056】
(H.現在の制御方法)
リザーバ開口および化学的放出の方法は、リザーバ内の材料の温度変化またはリザーバキャップを形成する材料の温度変化によってリザーバキャップを破裂させることに基づく。好適な実施形態において、このような温度変化は、マイクロチップ自体、またはマイクロチップまたはその関連パッケージングに取り付けられた小型の予め製造されたチップレジスタ表面に組み込まれたフィルムレジスタを用いて誘導される。温度変化は、レジスタを通過する電流量、およびリザーバ内の材料またはリザーバキャップの材料自体の熱特性によって制御され得る。付与される電流量および付与期間に対する制御は、マイクロプロセッサ、リモートコントロール、バイオセンサまたはこれらのデバイスの組み合わせによって制御され得る。
【0057】
(マイクロチップデバイスの適用)
パッシブまたはアクティブマイクロチップデバイスは、多くのインビボおよびインビトロ適用を有する。マイクロチップは、少量の制御された量の化学試薬または他の分子を溶液または反応混合物に、精密に制御されたタイミングおよび速度で送達するために、インビトロで用いられ得る。分析化学および医療診断は、マイクロチップ送達デバイスが用いられ得る分野の例である。マイクロチップは、薬物送達デバイスとしてインビボで用いられ得る。マイクロチップは、外科的手法または注入によって患者に移植され得、または呑み込まれ得る。マイクロチップは、動物、または記憶できないか投薬するのに十分歩行可能な人間への薬物の送達を提供する。マイクロチップはさらに、様々な速度、かつ変化する送達タイミングで、多くの異なる薬物を送達する。
【0058】
(実施例)
本明細書において説明するデバイスおよび方法は、以下の実施例(本発明の範囲を限定するものではない)を参照することによってさらに理解される。
【0059】
実施例1〜3は製造プロセスを説明し、図1および図2を参照して理解され得る。実施例1は、リザーバキャップの近傍に配置された薄膜レジスタに電流を印加することにより起こる温度変化によって破れるリザーバキャップを有する、能動放出マイクロチップデバイスを製造するプロセスを説明する。実施例2は、レジスタがリザーバ内に配置されること以外は実施例1と同様の、能動放出マイクロチップデバイスを製造するプロセスを説明する。実施例3は、受動放出マイクロチップデバイスを製造するプロセスを説明する。
【0060】
実施例4〜6は、マイクロチップデバイスのさまざまな実施形態を詳細に説明する。
【0061】
(実施例1:リザーバキャップの近傍にレジスタを有する能動放出マイクロチップの製造)
1)両面が研磨された、プライムグレード(prime grade)の、(100)方向に配向されたシリコンウエハ(つまり基板)を得る。
【0062】
ウエハの厚さ=約295〜310μm
2)SVG/Thermco7000Series垂直管リアクタ(VTR)内で、ウエハの両側面上に、約1600〜1900Åの低ストレス(10:1、シリコンリッチ)窒化シリコンを堆積する(300a/300b/300c/300d)。
【0063】
気体流量: アンモニア(NH3)=24sccm
ジクロロシラン(SiH2Cl2)=253sccm
温度=780℃
チャンバ圧力=268mtorr
堆積速度=約30Å/分
3)ポジ型のフォトレジスト(PR)を正方形(約500μm×500μm)にパターニングする。この正方形部分は、堆積された低ストレス窒化シリコンを有するウエハの一方の側面上において大きなリサーバ開口部として働く。
【0064】
ウエハの両側面上にヘキサメチルジシラザンを堆積
真空オーブン内に(「HMDS蒸気プライム」)
150℃で約30分
フォトレジスト(PR)タイプ−OCG825−20
PRスピン速度および時間(Solitec Inc.のModel5110スピナー)
500rpmで7秒(コート)、750rpmで7秒(拡散)、
3500rpmで30秒(スピン)
プリベーク(Blue M Model DDC−146Cオーブン内で):90℃で30分
コンタクトアライナ(contact alligner)(Karl Suss Model MA4)内で、パターニングされたマスクを用いて各ウエハを紫外線(UV)露光
波長=320nmで32秒
現像液のタイプ−OCG934 1:1
露光されたウエハをわずかに攪拌された室温の現像液に浸ける
現像時間=約40秒
カスケードリンス=2分
スピンリンスドライヤ(SRD)内でウエハのリンスおよび乾燥
ポストベーク(Blue M Model DDC−146Cオーブン内で):120℃で30分
4)プラズマエッチャー(Plasmaquest Series II Reactor Model 145)を用いて、下地シリコンまでVTR窒化物をエッチングする(320a/320b/320c/320d)。
【0065】
気体流量: 酸素(O2)=2sccm、ヘリウム(He)=15sccm、四フッ化炭素(CF4)=15sccm
電力 RF=10W、ECR=100W
チャンバ圧力=20mtorr
温度=25℃
窒化物エッチング速度=約350Å/分
5)溶媒(アセトン、メタノール、イソプロパノール)を用いて余分なPRを除去
6)湿式処理フード(Semifab,Inc.製)内において、露出したシリコンを水酸化カリウム(KOH)水溶液でエッチング(340a/340b/340c/340d)。
【0066】
濃度=約38〜40重量%
温度=約85〜90℃
エッチング速度=約1μm/分
7)湿式処理フード(Laminaire Corp.製)内でポストKOH洗浄を行って、クリーンルーム内のK+汚染を避ける
ピラニア洗浄を15分
ダンプリンス=3回
フッ化水素酸(HF)浸漬
水:HF=50:1(体積比)の溶液内に10秒
ダンプリンス=3回
標準RCA洗浄
SRD内でリンスおよび洗浄
8)窒化物メンブレン近隣においてイメージ反転PRをパターニングして、その後のプラチナリフトオフプロセスに備える。
【0067】
真空オーブン中のHMDS蒸気プライム:150℃で約30分
フォトレジストタイプ(PR)−AZ 5214E
PRスピンの速度および回数(ただし、Solitec Inc.のモデル5110のスピナーの場合):500rpmで6秒(コート);750rpmで6秒(拡散);および4000rpmで30秒(スピン)
(Blue MモデルのDDC−146Cオーブンにおける)予備加熱:90℃で30分
パターニングされたマスクを用いた接触アライナ(Karl SussモデルMA4)中での各ウエハの紫外線(UV)への暴露
波長=320nmにおいて40秒
オーブン(Blue MモデルDDC−146C)中の金属プレート上で120℃で90秒加熱する
接触アライナ(Karl SussモデルMA4)において、パターニングされたマスクを用いずに各ウエハをUVフラッドに暴露する(すなわち、ウエハ全体を暴露する)。
【0068】
波長=320nmにおいて約200秒
顕色剤のタイプ−AZ 422 MIF
暴露されたウエハを、わずかに攪拌された室温の顕色剤中に入れる。
【0069】
顕色時間=約1分30秒
カスケードリンス=2分
スピンリンスドライヤ(SRD)中のウエハをリンスおよび乾燥する。
【0070】
9)電子ビーム蒸発器(Temescal Semiconductor ProductsのモデルVES 2550)中のリフトオフプレート(ウェハホルダ)を用いて、各ウエハのイメージ反転PRのパターニング側の上にプラチナを蒸発させる。
【0071】
プラチナ堆積速度=5Å/秒
プラチナ厚さ=約3000Å
ベース圧力=約5.0×10−7torr
室温(外部からの加熱または冷却無し)
10)アセトンでプラチナ層をリフトオフする、360a/360b。
【0072】
11)溶媒(アセトン、メタノール、イソプロパノール)でウエハを洗浄する。
【0073】
12)プラズマエッチャー(PlasmaquestシリーズIIの反応器モデル145)において、酸素プラズマ洗浄(アッシュ)を行う。
【0074】
ガスフロー:O2=25sccm;He=15sccm
出力:RF=10W;ECR=200W
チャンバ圧力=20mtorr
温度=25℃
13)PECVDチャンバ(Plasma−Therm 700シリーズのウエハ/バッチデュアル チャンバプラズマ処理システム)を用いて、プラズマによって強化された化学蒸着法(PECVD)による二酸化ケイ素を、自身の上にプラチナレジスタを載せたウエハの表面全体上に堆積させる。
【0075】
ガスフロー:N2中に2%のSiH4=400sccm;N2O=900sccm
RF出力=20W
チャンバ圧力=900mtorr
堆積速度=約250〜500Å/分
温度=350℃
14)溶媒(例えば、アセトン、メタノール、イソプロパノール)でウエハを洗浄する。
【0076】
15)PRをパターニングして、プラチナレジスタ390a/380bの部分を被覆する二酸化ケイ素の部分を露出させる。(工程13、14および15において述べたような酸化物層の包有物は任意である。)
真空オーブン中のHMDS蒸気プライム
:150℃で約30分
フォトレジスト(PR)タイプ:OCG825−20
PRスピン速度および回数(ただし、Solitec Inc.のモデル5110スピナーの場合)
:500rpmで7秒(コート);750rpmで7秒(拡散);および3500rpmで30秒(スピン)
(Blue MモデルDDC−146Cオーブン中での)予備加熱:90℃で30分
パターニングされたマスクを用いた接触アライナ(Karl SussモデルMA4)中での各ウエハの紫外線(UV)への暴露:波長=320nmで32秒
顕色剤のタイプ=OCG9341:1
暴露されたウエハを、わずかに攪拌された室温の顕色剤中に入れる。
【0077】
顕色時間=約55秒
カスケードリンス=2分
スピンリンスドライヤ(SRD)において、ウエハをリンスおよび乾燥する。
(Blue MモデルDDC−146Cオーブン)中での事後加熱:120℃で30分
16)プラズマエッチャー(PlasmaquestシリーズIIの反応器モデル145)を用いて、プラチナ表面に対して露出した二酸化ケイ素をエッチングする。
【0078】
ガスフロー:He=15sccm;CF4=15sccm
出力:RF=10W;ECR=100W
チャンバ圧力=20mtorr
温度=15℃
二酸化ケイ素のエッチング速度=約215Å/分
17)プラズマエッチャー(PlasmaquestシリーズIIの反応器モデル145)を用いて、デバイス背面から窒化物メンブレンをエッチング(例えば、完全除去)する。
【0079】
ガスフロー:O2=2sccm;He=15sccm;およびCF4=15sccm
出力:RF=10W;ECR=100W
チャンバ圧力=20mtorr
温度=25℃
窒化物のエッチング速度=約350Å/分
18)マイクロインジェクタ(World Precision Instruments Ultra Micro Pump UMP II)を用いて、熱反応性ポリマーの溶液を大型のリザーバの開口部400bに注入する。毛管現象および表面張力により、材料がリザーバの小開口部から流出するのを防ぐ。
【0080】
19)熱反応性ポリマー溶液中の溶媒を気化させると、その結果、小型のリザーバの開口部420bを被覆する固形のポリマーリザーバキャップが形成される。
【0081】
乾燥時間および乾燥温度は、ポリマー溶液中に用いられる特定の溶媒によって異なる(例えば、水はメタノールよりも気化するのに時間がかかる)。
【0082】
20)マイクロインジェクタまたは他の充填技術を用いて、放出システム400a/420a(および420bと440bとの間で示した工程)を用いてリザーバを充填し、次いで、バッキングプレートを基板440a/440bのリザーバの大開口部側にわたって結合させることにより、大型のリザーバの開口部をシーリングする。
【0083】
21)ダイシングソー(diesaw)(Disco Automatic Dicing SawのモデルDAD−2H/6T)を用いて、ウエハをダイス状にする。
【0084】
この処理により、4インチのウエハ1つあたり21個のデバイスが得られ、各デバイスの側部のサイズは17mm×17mmとなる。
【0085】
リザーバキャップ近隣にレジスタを有するアクティブマイクロチップデバイスの作製が終了する。
【0086】
この方法は、上記処理工程のいくつかの順序を変更することにより簡単に変更が可能であり、これにより、温度反応性リザーバキャップを形成する他の方法を用いることが可能となる。例えば、キャップ材料を、窒化物メンブレンによって被覆されたリザーバ開口部を有するシリコンウエハの表面上にスピンコートしてもよく、また、フォトリソグラフィーを用いてキャップ材料をパターニングして、化学的エッチング方法またはドライエッチング方法を用いてエッチングして、リザーバキャップ380aを形成してもよい。これらの技術を用いて、リザーバキャップを任意の形状、サイズ、および配置で形成することが可能となる(例えば、440aのリザーバキャップを440bと比較のこと)。
【0087】
あるいは、処理工程の順序と、本実施例において上述したフォトリソグラフィーマスク上のパターンとを簡単に変更して、リザーバキャップ材料の直接上またはリザーバキャップ材料の直接下にレジスタを作製することが可能である。
【0088】
(実施例2:リザーバ中にレジスタを有するアクティブ放出マイクロチップの作製)
窒化物メンブレンで被覆されたリザーバを含む第1のウエハを生成するための1)から7)までの工程は、実施例1の工程と同じである。
【0089】
8)第2のウエハ370a/370b(例えば、シリコンウエハまたはガラス等の他の基板)上にイメージ反転PRをパターニングして、その後のプラチナリフトオフプロセスに備える。
【0090】
真空オーブン中のHMDS蒸気プライム:150℃で約30分
フォトレジストタイプ(PR)−AZ 5214 E
PRスピンの速度および回数(ただし、Solitec Inc.のモデル5110のスピナーの場合):500rpmで6秒(コート);750rpmで6秒(拡散);および4000rpmで30秒(スピン)
(Blue M モデルのDDC−146Cオーブンにおける)予備加熱:90℃で30分
パターニングされたマスクを用いた接触アライナ(Karl SussモデルMA4)中での各ウエハの紫外線(UV)への暴露
波長=320nmにおいて40秒
オーブン(Blue MモデルDDC−146C)中の金属プレート上で120℃で90秒加熱する。
【0091】
接触アライナ(Karl SussモデルMA4)において、パターニングされたマスクを用いずに各ウエハをUVフラッドに暴露する(すなわち、ウエハ全体を暴露する)。
【0092】
波長=320nmにおいて約200秒
顕色剤のタイプ−AZ 422 MIF
暴露されたウエハを、わずかに攪拌された室温の顕色剤中に入れる。
【0093】
顕色時間=約1分30秒
カスケードリンス=2分
スピンリンスドライヤ(SRD)において、ウエハをリンスおよび乾燥する。
【0094】
9)電子ビーム蒸発器(Temescal Semiconductor ProductsのモデルVES 2550)中のリフトオフプレート(ウェハホルダ)を用いて、第2のウエハのイメージ反転PRのパターニング側の上にプラチナを蒸発させる。
【0095】
プラチナ堆積速度=5Å/秒
プラチナ厚さ=約3000Å
ベース圧力=約5.0×10−7torr
室温(外部からの加熱または冷却無し)
10)アセトンでプラチナ層をリフトオフする、372a/372b。
【0096】
11)溶媒(アセトン、メタノール、イソプロパノール)で第2のウエハを洗浄する。
【0097】
12)プラズマエッチャー(PlasmaquestシリーズIIの反応器モデル145)において、第2のウエハを酸素プラズマ洗浄(アッシュ)する。
【0098】
ガスフロー:O2=25秒
He=15sccm
出力:RF=10W
ECR=200W
チャンバ圧力=20mtorr
温度=25℃
13)マイクロインジェウエハWorld Precision Instruments Ultra Micro Pump−UMP II)を用いて、放出システムおよび分子またはこれらの任意の組み合わせを、第1のウエハ360c/360d(380c/380dと同じもの)のリザーバに注入する。
【0099】
14)第2のウエハ上の抵ウエハ、第1のウエハ400c/400dのリザーバとのアラインメントをとり、化学接着剤もしくは熱接着剤を用いるかまたは標準的なSi−Si結合技術もしくはSi−ガラス結合技術(例えば、陽極結合(anodic bonding))420c/420dを用いて、これらの2枚のウエハを互いに結合させる。
【0100】
15)ダイシングソー(Disco Automatic Dicing SawのモデルDAD−2H/6T)を用いて、ウエハをダイス状にする。
【0101】
この処理により、4インチのウエハ1つあたり21個のデバイスが得られ、各デバイスの側部のサイズは17mm×17mmとなる。
【0102】
リザーバ内にレジスタを有するアクティブマイクロチップデバイスの作製が終了する。
【0103】
図2cに示す最終生成物中のエッチングマスク材料は、可裂(rupturable)リザーバキャップ420cとして機能するか、または、放出側(レジスタの遠位側)上においてリザーバキャップ材料層と取り換えられる。リザーバキャップ材料は、可裂性であるか、または、浸透性もしくは半浸透性のメンブレン材料のいずれかである。後者の場合、浸透性は温度によって異なり、そのため、リザーバ中の分子は、レジスタが活性化されない場合または温度が選択閾値温度を下回る場合、メンブレン(すなわち、リザーバキャップ)を無視できる速度で通過するかまたは全く通過しない。しかし、レジスタの活性化および/またはマイクロチップ周囲の環境温度の(選択閾値温度を超えた)上昇によってメンブレンが加熱されると、そのメンブレン(すなわち、リザーバキャップ)の浸透性は十分なものとなり、これにより、リザーバから分子が放出される。この実施形態において、レジスタの活性化および不活性化は、レジスタの位置がリザーバ内であってもまたはリザーバキャップ近隣であっても、リザーバからの分子の放出を制御するオン/オフスイッチとして機能することができる。
【0104】
あるいは、図2dに示すように、図示の最終生成物中のエッチングマスク材料を、放出側(レジスタの遠位部)440d上で除去する。この実施形態において、リザーバキャップは提供されず、そのため、(レジスタが不活性化状態の場合または温度が選択閾値温度を下回る場合にリザーバから無視できる程度の分子を放出するかまたは分子を放出しない)固形物放出システムまたはゲル放出システムを選択することによって、リザーバからの分子の放出を、熱によって制御する。しかし、加熱の際、レジスタの活性化および/または環境温度の上昇によって、放出システムは、(例えば、放出システムまたはその一部に相変化(例えば、融解、気化、昇華、溶解)を生じさせるか、放出システムの劣化可能なマトリクス部分に劣化または反応を生じさせるか、または、放出システムマトリクスの浸透性を変更することにより)分子を放出する。
【0105】
(実施例3:パッシブ放出マイクロチップの作製)
1)両側が研磨された最上グレードの(100)配向のシリコンウエハを、そのウエハを完全に貫通して伸びたリザーバを有するデバイス用に入手するか、または、片側が研磨された最上グレードの(100)配向のシリコンウエハを、ウエハを完全には貫通して伸びないリザーバを有するデバイス用に入手する。
【0106】
ウエハ厚さ=約295〜310μm(ただし、ウエハを完全に貫通して伸びるリザーバを有するデバイスの場合)(ウエハを貫通して伸びるリザーバを有さないデバイスの場合、ウエハ厚さは任意の所望の厚さでよい)
2)SVG/Thermco7000シリーズの垂直チューブ型反応器(VTR)30において、約1600〜1900Åの低ストレスの(10:1でシリコンを多量に含有する)窒化ケイ素をウエハの両側上に堆積させる。
【0107】
ガスフロー:アンモニア(NH3)=24sccm
ジクロロシラン(SiH2Cl2)=253sccm
温度=780℃
チャンバ圧力=268mtorr
堆積速度=約30Å/分
3)正のPRを、(ウエハを完全に貫通して伸びるリザーバを有するデバイスの場合は約500μm×500μmで、または、ウエハを完全に貫通して伸びるリザーバを有さないリザーバの場合は任意の所望の寸法で)正方形としてパターニングする。これは、それら32上に堆積された低ストレスの窒化ケイ素を有するウエハの片側上の大型のリザーバ開口部として機能する。
【0108】
ウエハの両側上へのヘキサメチルジシラザンの堆積
真空オーブン中での(「HMDS蒸気プライム」):150℃で約30分
フォトレジスト(PR)タイプ−OCG825−20
PRスピン速度および回数(ただし、Solitec Inc.モデルの5110スピナーの場合):500rpmで7秒(コート);750rpmで7秒(拡散);および3500rpmで30秒(スピン)
(Blue MモデルDDC−146Cオーブン中での)予備加熱:90℃で30分
パターニングされたマスクを用いた接触アライナ(Karl Suss モデルMA4)中での各ウエハの紫外線(UV)への暴露:波長=320nmで32秒
顕色剤のタイプ−OCG9341:1
暴露されたウエハを、わずかに攪拌された室温の顕色剤中に入れる。
【0109】
顕色時間=約40秒
カスケードリンス=2分
スピンリンスドライヤ(SRD)においてウエハをリンスおよび乾燥する。
【0110】
(Blue MモデルDDC−146Cオーブンに)中での事後加熱:120℃で30分
4)プラズマエッチャー(PlasmaquestシリーズIIの反応器モデル145)32を用いて、VTR窒化物を下のシリコンまでエッチングする。
【0111】
ガスフロー:酸素(O2)=2sccm
ヘリウム(He)=15sccm
四フッ化炭素(CF4)=15sccm
出力:RF=10W
ECR=100W
チャンバ圧力=20mtorr
温度=25℃
窒化物エッチング速度=約350Å/分
5)過剰なPRを溶媒(アセトン、メタノール、イソプロパノール)を用いて除去する。
【0112】
6)(Semifab,Inc.製の)湿式法フード(wet processing hood)34中の水溶性の水酸化カリウム(KOH)において、露出したシリコンをエッチングする。
【0113】
濃度=約38〜40重量%
温度=約85〜90℃
エッチング速度=約1μm/分
7)その後、湿式法フード(Laminaire Corp.製)においてKOHで洗浄して、クリーンルームのK+汚染を防ぐ。
【0114】
ピラニア(Piranha)洗浄:15分
ダンプリンス=3回
フッ化水素酸(HF)浸漬:水:HFの(体積比が)50:1の溶液で10秒
ダンプリンス=3回
標準的RCA洗浄
SRD中でのリンスおよび乾燥
窒化物メンブレン(ウエハを完全に貫通して伸びないリザーバ)を有さないデバイスの場合、パッシブマイクロチップデバイスの作製は終了する。ウエハをダイス化して個々のデバイスにする。これで、各デバイスのリザーバは、充填可能となる。
【0115】
あるいは、窒化物メンブレン(ウエハを完全に貫通して伸びるリザーバ)、を有するデバイスの場合、続いて以下の工程を行う:
8)注入、インクジェット印刷、スピンコーティングまたは別の方法を用いて、リザーバキャップ材料36a/36b/38a/38b、放出システム40a/40b/42、またはこれらの任意の組み合わせをリザーバに充填する。リザーバキャップもしくは放出システムの分解(disintegration)速度かまたはリザーバキャップもしくは放出システムを通じた特定の環境温度(例えば、人体温度の37℃)における薬物の拡散速度を変更するために、リザーバキャップ材料の組成および/または放出システムは、各リザーバに応じて変更可能である。
【0116】
9)ウエハ側のリザーバ開口部をシーリングする。この開口部では、リザーバの充填が行なわれる44。
【0117】
10)プラズマエッチャー(PlasmaquestシリーズIIの反応器モデル145)を用いることにより、充填側の反対にあるウエハ側上の窒化物メンブレンを、キャップ材料または放出システムに到達するまでエッチングする。(エッチングパラメータは、キャップ材料のタイプまたは窒化物下の放出システムに応じて変更可能である)46。
【0118】
ガスフロー:酸素(O2)=2sccm
ヘリウム(He)=15sccm
四フッ化炭素(CF4)=15sccm
出力:RF=10W
ECR=100W
チャンバ圧力=20mtorr
温度=25℃
窒化物エッチング速度=約350Å/分
11)露出したキャップ材料または放出システムを有するウエハ側上にスピンフォトレジストを行って、ウエハがダイス化されている間にウエハを保護する(この工程は、露出したキャップ材料または放出システムのタイプに応じて不要となり得る)。
【0119】
フォトレジスト(PR)タイプ−OCG825−20
PRスピン速度および時間(Solitec Inc.のModel5110スピナー)
500rpmで7秒(コート)、750rpmで7秒(拡散)、
3500rpmで30秒(スピン)
プリベーク(Blue M Model DDC−146Cオーブン内で):90℃で30分
12)ダイシングソーでウエハをダイシングする(Disco Automatic Dicing Saw Model DAD−2H/6T)
製造歩留まり:4インチのウエハあたり21個のデバイスが得られ、各デバイスの1つの面は17mm×17mmの大きさを有する
13)溶媒およびO2プラズマでデバイスを洗浄する(露出されたキャップ材料または放出システムの種類によって、これらの工程は必要ないかもしれない)
溶媒洗浄−アセトン、メタノール、イソプロパノール
プラズマエッチャー(Plasmaquest Series II Reactor Model 145)内で酸素プラズマ洗浄
気体流量: O2=25sccm
He=15sccm
電力 RF=10W
ECR=200W
チャンバ圧力=20mtorr
温度=25℃
受動マイクロチップデバイスの製造が完了する。
【0120】
(実施例4:受動型のタイミング制御された分子放出を行うマイクロチップ)
受動タイミング制御型放出デバイスであるマイクロチップ10を、図4に示す。マイクロチップ10は基板14から形成される。リザーバ16は、基板14内にエッチングによって形成される。リザーバ16内に、放出される分子18を含む放出システムが配置される。リザーバは、リザーバキャップ12でふたをされる。放出システムおよび放出される分子18は、列20a、20b、および20cの間で、ならびに、アレイの各列のリザーバ内で異なり得る。
【0121】
図7a〜図7iは、受動供給デバイスの、いくつかのさらなる可能な構成を示す。このような受動デバイス構成からの分子の放出がどのように温度に影響されるかは、以下の説明および考察を鑑みて最も良く理解され得る。室温で分解しないが、その組成によっては、わずかに高い温度で分解し得るポリマーが存在する。したがって、受動マイクロチップデバイスは、各リザーバがわずかに異なるポリマー組成のリザーバキャップまたは放出システムを有するように製造され得る。室温において、全てのリザーバキャップおよび放出システムが安定に維持され、分子を放出しない。しかし、デバイス全体がわずかに高い温度に上昇されると、選択されたリザーバキャップおよび放出システムが分解し始める。したがって、デバイスを特定の温度に曝すことにより、受動マイクロチップからの分子の放出を制御することが可能になり得る。非分解性ポリマーの浸透性はまた、ほぼ同様に、温度および組成に依存し得、放出される分子、デバイスの特定のアプリケーション、および分子放出の所望の時間および速度に基づいて、分解性材料または非分解性材料、もしくはそれらの任意の組み合わせを選択することになる。
【0122】
(実施例5:能動制御型時間放出を行うマイクロチップ)
能動タイミング制御された放出を提供する薬物供給デバイスを、マイクロチップ100として図5に示す。マイクロチップ100は基板130を含み、基板130内では、リザーバ160が、放出される分子180を含む放出システムを内部に備えている。マイクロチップ100は、また、リザーバキャップ120a/120bおよびレジスタ140a/140bを含む。図5は、レジスタの数ある可能な構成のうちの2つのみを示す。ここで、リザーバのうちの3つのリザーバに、リザーバキャップ120aの近傍に配置されたレジスタ140aが設けられ、残りの3つのリザーバに、リザーバキャップ120bの上に配置されたレジスタ140bが設けられる。好ましくは、マイクロチップ100は、入力ソース、マイクロプロセッサ、タイマー、デマルチプレクサ、および電源(図示せず)をさらに含む。電源は、レジスタに電流を提供して、レジスタ近傍のリザーバキャップの温度を上昇させる。レジスタに小さな電流を印加すると、最も近傍のリザーバキャップの局所的な温度上昇により、これらのリザーバキャップが、熱誘導された膨張または収縮によって、もしくは、リザーバキャップの構造的一体性が無くなるようなリザーバキャップ材料の相変化(例えば、溶融)によって破られる。リザーバキャップがいったん破られるかまたは溶融されると、放出される分子180を含む放出システムは周囲の環境に暴露され、リザーバからの放出が開始される。マイクロプロセッサは、PROM、リモコン、またはバイオセンサの指示通りに、デマルチプレクサを介して特定の電極対に電力を与える。
【0123】
図8a〜図8dは、能動供給デバイス内のレジスタおよびリザーバキャップの、4つのさらなる可能な構成を示す。図8aにおけるレジスタは、リザーバの外側の、リザーバキャップの近傍に配置される。図8bにおけるレジスタは、リザーバキャップの上に配置される。図8cおよび図8dにおいて、レジスタはリザーバ内に配置される。実施例5におけるように、分解性材料または非分解性材料の選択、もしくはそれらの任意の組み合わせは、放出される分子、デバイスの特定のアプリケーション、ならびに分子放出の所望の時間および速度に依存する。分解性または非分解性リザーバキャップまたは放出システムに対するレジスタの配置は、最適な分子の放出を達成するために熱を供給する位置に依存する。例えば、リザーバキャップを破るかまたは浸透性を高めるのにリザーバキャップを直接熱する必要がある場合、レジスタの最良の位置は、キャップの近傍またはリザーバの底部ではなく、リザーバキャップ材料の真上または真下であり得る。リザーバキャップをリザーバの上またはわずかにリザーバの内部に配置することは、キャップ材料に適合したキャップ製造方法に依存する。
【0124】
(実施例6:複合基板を有するマイクロチップデバイス)
図6a〜図6dは、能動放出型または受動放出型の、デバイスのいくつかの典型的な変形例を示す。これらの変形例において、2つ以上の基板部分が互いに取り付けられて、例えば、より大きな基板または複合体の基板を形成する。図6aは、比較のため、「単一の」基板デバイス500を示す。デバイス500は基板510を有する。基板510において、リザーバ520には放出される分子540が充填されている。リザーバ520は、リザーバキャップ530によって覆われ、バッキングプレートまたは他の種類のシールで密封されている。レジスタ560は、リザーバキャップ530の近傍に配置される。
【0125】
図6bは、底側基板部分610bにボンディングされた上側基板部分610aから形成された基板を有するデバイス600を示す。上側基板部分610aのリザーバ620aは、底側基板部分610bのリザーバ620bと連絡している。リザーバ620a/620bは、放出される分子640が充填され、リザーバキャップ630で覆われ、バッキングプレート650で密封される。レジスタ660は、リザーバキャップ630の近傍に配置される。
【0126】
図6cは、底側基板部分710bにボンディングされた上側基板部分710aから形成された基板を有するデバイス700を示す。上側基板部分710aは、リザーバ720aを有し、リザーバ720aは、底側基板部分710bのリザーバ720bと連絡している。リザーバ720bは、リザーバ720aよりもかなり大きく、リザーバ720a/720bは、放出される分子740を保持している。リザーバ720a/720bは、放出される分子740が充填され、リザーバキャップ730で覆われ、バッキングプレート750で密封される。レジスタ760は、リザーバキャップ730の近傍に配置される。
【0127】
図6dは、底側基板部分810bにボンディングされた上側基板部分810aから形成された基板を有するデバイス800を示す。上側基板部分810aは、リザーバ820aを有し、リザーバ820aは、第1の放出される分子840aを保持する。底側基板部分810bは、リザーバ820bを有し、リザーバ820bは、第2の放出される分子840bを保持する。第1の放出される分子840aは、第2の放出される分子840bと同じであるか、または異なり得る。リザーバ820aは、リザーバキャップ830aで覆われ、リザーバキャップ830bによって密封され、底側基板部分810bによって部分的に密封される。リザーバ820bは、リザーバキャップ830bによって覆われ、バッキングプレート850で密封される。レジスタ860aは、リザーバキャップ830aの近傍に配置され、レジスタ860bは、リザーバキャップ830bの近傍に配置される。
【0128】
図6eは、別のリザーバの形状構成を示す。
【0129】
(実施例7:冷却によって放出が行われるマイクロチップデバイス)
能動マイクロチップおよび受動マイクロチップは、デバイス、放出システム、またはリザーバキャップの冷却によって分子を放出することができる。ある能動マイクロチップの実施形態において、リザーバキャップ材料は、室温よりも高い温度に維持された場合、より小さな機械的応力を受ける。リザーバキャップの温度は、リザーバキャップの上または近傍に配置されたレジスタに電流を印加することによって、室温よりも高く維持される。特定のリザーバからの放出が望まれる場合、そのリザーバキャップのレジスタに供給される電流がオフにされ得、事実上、リザーバキャップの熱源が除去される。その後、リザーバキャップの温度が低下して室温に戻り、リザーバキャップ内の機械的応力が増大する。機械的応力の増大の速度および大きさは、キャップの組成、配置、および厚さに依存する。リザーバキャップ内の機械的応力が一旦閾値レベルに達すると、リザーバキャップが破れ、リザーバ内に格納された分子が放出される。
【0130】
受動マイクロチップもまた、冷却に応答して分子を放出し得る。ある実施形態において、デバイスを取り囲む環境の温度を低下することにより、リザーバキャップ内の機械的応力を増大させることができる。機械的応力の増大の速度および大きさは、キャップの組成、配置、および厚さに依存する。リザーバキャップ内の機械的応力がある閾値を超えた場合、リザーバキャップが破れ、リザーバ内に格納された分子が放出される。
【0131】
別の実施形態において、能動デバイスおよび受動デバイスの両方において、リザーバ内の放出システムの温度の低下によりリザーバが収縮し、リザーバキャップに内向きの力が加わり、最終的にリザーバキャップが破れて、リザーバ内に格納された分子が放出される。
【0132】
上記の詳細な説明から、本明細書中に記載した方法およびデバイスの改変例および変形例は当業者に明らかである。そのような改変例および変形例は、添付の請求の範囲内に含まれるように企図される。
【図面の簡単な説明】
【0133】
【図1】 図1は、受動送達デバイスの典型的な製造スキームを示す断面図である。
【図2a】 図2aは、能動送達デバイスの製造スキームを示す断面図である。
【図2b】 図2bは、能動送達デバイスの製造スキームを示す断面図である。
【図2c】 図2cは、能動送達デバイスの製造スキームを示す断面図である。
【図2d】 図2dは、能動送達デバイスの製造スキームを示す断面図である。
【図3】 図3は、典型的なデバイス制御回路フローチャートである。
【図4】 図4は、受動送達デバイスの1実施形態を示す透視的な部分断面図である。
【図5】 図5は、能動送達デバイスの1実施形態を示す透視的な部分断面図である。
【図6a】 図6aは、共に結合された2つの製造された基板部分から形成された基板を有するデバイスの実施形態の模式的な断面図である。
【図6b】 図6bは、共に結合された2つの製造された基板部分から形成された基板を有するデバイスの実施形態の模式的な断面図である。
【図6c】 図6cは、共に結合された2つの製造された基板部分から形成された基板を有するデバイスの実施形態の模式的な断面図である。
【図6d】 図6dは、共に結合された2つの製造された基板部分から形成された基板を有するデバイスの実施形態の模式的な断面図である。
【図6e】 図6eは、共に結合された2つの製造された基板部分から形成された基板を有するデバイスの実施形態の模式的な断面図である。
【図7a】 図7aは、受動送達デバイスの構成の模式的な断面図である。
【図7b】 図7bは、受動送達デバイスの構成の模式的な断面図である。
【図7c】 図7cは、受動送達デバイスの構成の模式的な断面図である。
【図7d】 図7dは、受動送達デバイスの構成の模式的な断面図である。
【図7e】 図7eは、受動送達デバイスの構成の模式的な断面図である。
【図7f】 図7fは、受動送達デバイスの構成の模式的な断面図である。
【図7g】 図7gは、受動送達デバイスの構成の模式的な断面図である。
【図7h】 図7hは、受動送達デバイスの構成の模式的な断面図である。
【図7i】 図7iは、受動送達デバイスの構成の模式的な断面図である。
【図8a】 図8aは、能動送達デバイスの構成の模式的な断面図である。
【図8b】 図8bは、能動送達デバイスの構成の模式的な断面図である。
【図8c】 図8cは、能動送達デバイスの構成の模式的な断面図である。
【図8d】 図8dは、能動送達デバイスの構成の模式的な断面図である。
【図9a】 図9aは、熱的に能動化された化学的送達デバイスの構成の模式的な透視図である。
【図9b】 図9bは、熱的に能動化された化学的送達デバイスの構成の模式的な透視図である。
【図9c】 図9cは、熱的に能動化された化学的送達デバイスの構成の模式的な透視図である。
【図10a】 図10aは、放出システムの膨張によるキャップの破裂を介する分子放出の模式的な断面図である。
【図10b】 図10bは、放出システムの膨張によるキャップの破裂を介する分子放出の模式的な断面図である。
【図10c】 図10cは、放出システムの膨張によるキャップの破裂を介する分子放出の模式的な断面図である。
【図11a】 図11aは、蒸気加圧によるキャップの破裂を介する分子放出の模式的な断面図である。
【図11b】 図11bは、蒸気加圧によるキャップの破裂を介する分子放出の模式的な断面図である。
【図11c】 図11cは、蒸気加圧によるキャップの破裂を介する分子放出の模式的な断面図である。
【図12a】 図12aは、キャップの膨張によるキャップ破裂を介する分子放出の模式的な断面図である。
【図12b】 図12bは、キャップの膨張によるキャップ破裂を介する分子放出の模式的な断面図である。
【図12c】 図12cは、キャップの膨張によるキャップ破裂を介する分子放出の模式的な断面図である。
【図13a】 図13aは、キャップの融解(例えば、相変化)による分子放出の模式的な断面図である。
【図13b】 図13bは、キャップの融解(例えば、相変化)による分子放出の模式的な断面図である。
【図13c】 図13cは、キャップの融解(例えば、相変化)による分子放出の模式的な断面図である。
Claims (20)
- 分子放出のためのマイクロチップデバイスであって:
ガラス、セラミックス、シリコン、半導体、ポリマー、またはそれらの組み合わせを含む基板;
該放出する分子を含む放出システムを含む、該基板内の複数のリザーバ;および
該複数のリザーバのそれぞれの上または該複数のリザーバのそれぞれの内に位置し、該放出システムを覆う別個のリザーバキャップであって、温度変化に応答して相変化をおこす材料を含む別個のリザーバキャップ、
を備え、ここで該デバイスは、該リザーバキャップを加熱して、該リザーバキャップを相変化させそして破裂させると、各リザーバから該分子を選択的に放出するように適合されている、マイクロチップデバイス。 - 前記リザーバキャップの材料が、金属薄膜を含む、請求項1に記載のデバイス。
- 前記相変化が溶融を含む、請求項1に記載のデバイス。
- 前記相変化が蒸発を含む、請求項1に記載のデバイス。
- 前記リザーバキャップの材料がポリマーを含む、請求項3に記載のデバイス。
- 請求項5に記載のデバイスであって、ここで前記ポリマーが35℃と50℃との間の溶融温度を有するコポリマーを含む、デバイス。
- 請求項1〜6のいずれかに記載のデバイスであって、前記リザーバキャップに一体化されているかまたは前記リザーバキャップの近傍に取り付けられているレジスタをさらに備え、該レジスタを通して電流が適用されると、該リザーバキャップが加熱される、デバイス。
- 請求項1〜7のいずれかに記載のデバイスであって、前記リザーバキャップの加熱を制御するために協同作用するタイマー、デマルチプレクサ、マイクロプロセッサ、電源および入力ソースをさらに備える、デバイス。
- 前記入力ソースが、メモリソース、信号レシーバまたはバイオセンサを備える、請求項1〜7のいずれかに記載のデバイス。
- 前記バイオセンサが前記デバイスに一体化されており、該デバイスを取り囲む流体中の分子を検出し得る、請求項9に記載のデバイス。
- 前記放出する分子が薬物分子を含む、請求項1〜10のいずれかに記載のデバイス。
- 前記薬物分子が、タンパク質、核酸またはポリサッカライドを含む、請求項11に記載のデバイス。
- 前記薬物分子が、合成有機分子を含む、請求項11に記載のデバイス。
- 請求項11に記載のデバイスであって、ここで前記薬物分子が麻酔薬、ワクチン、化学療法剤、代謝産物、糖、免疫モジュレータ、酸化防止剤、イオンチャネルレギュレータ、抗生物質、またはこれらの組み合わせを含む、デバイス。
- 前記薬物分子がホルモンを含む、請求項13に記載のデバイス。
- 前記薬物分子の拍動性放出を提供する、請求項13〜15のいずれかに記載のデバイス。
- 前記薬物分子の連続放出を提供する、請求項13〜15のいずれかに記載のデバイス。
- 前記放出する分子が、診断試薬、香水、芳香剤、染料または着色剤である、請求項1〜10のいずれかに記載のデバイス。
- 前記放出する分子が、固体形態においてリザーバに含まれるか、または分解可能放出システムに組み込まれている、請求項1〜18のいずれかに記載のデバイス。
- 前記基板が、複合基板または積層基板である、請求項1〜19のいずれかに記載のデバイス。
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