JP4396811B2 - 複合粒子の製造方法、球状複合粒子の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、コアシェル構造などの複合構造を有する複合粒子およびその製造方法に関する。特に、コアシェル構造を有する球状複合粒子の製造方法および球状複合粒子に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、セラミックス材料や塗料、コンポジット材料などの製造において、粉末に特殊な機能を持たせるために、または粉末の分散性や流動性を向上させるために、コアシェル構造などの複合構造を有する粒子(以下、複合構造を有する粒子を「複合粒子」と称する)の合成方法が研究されている。複合粒子を構成する元素の組合せを適宜選択することにより、複合粒子に様々な物性を持たせることができる。こうした複合粒子の用途としては、フィラーや焼結体の原料、圧粉体の原料等が挙げられ、その応用分野は広い。ここで、複合粒子を作製する方法として、気相から合成するCVD法やプラズマ法、液相からの合成法である噴霧熱分解法、ゾルゲル法、共沈法がある。
特開平11−71601号公報には、噴霧熱分解法によってコアシェル構造の複合粒子を得る方法が開示されている。具体的には、特開平11−71601号公報では、酸化ケイ素の超微粒子をPd塩の水溶液中に分散させて原料溶液を調製し、かつ、この原料溶液を噴霧して液滴とした後、乾燥、熱分解および結晶化処理して、結晶性Pd粒子を芯材とし、この外表面を一様に被覆する非晶質酸化ケイ素の表面層とからなる複合粒子を得る方法を開示している。
【0003】
ところで、エレクトロニクス分野における各種部品はこれからますます高周波での使用が余儀なくされる。プリント基板も同様であり、また誘電率の高い基板、磁気特性の高い基板、電波を吸収する基板等、種々の特性を有する基板が要求される。近年、粉末を単体として使用するのではなく、粉末を有機ビヒクルと混合したペースト、樹脂材料と複合化した複合材料として高特性の基板を得ることも行われている。例えば、高周波特性のよい磁性粉末を樹脂に混合、分散させて複合材料とし、この複合材料を用いて磁気特性の高い基板を得たり、同様に誘電特性のよい誘電体セラミックス粉末を樹脂に混合、分散させて複合材料とし、この複合材料を用いて誘電特性の高い基板を得るのである。ペースト、複合材料として用いられる粉末には、有機ビヒクル、樹脂材料(以下、樹脂材料と総称する)に対する分散性、充填性が要求される。また、プリント基板以外では、パッケージの分野において、樹脂に電波吸収材料からなる粉末を混合、分散したり、導電性ペーストの分野では、電子回路、抵抗、コンデンサ、ICパッケージ等の部品を製造するための厚膜ペースト中に導電性粒子を混合、分散することが行われている。このような背景から、特性がよいことのみならず、樹脂材料に対する分散性、充填性に優れることも、粉末に求められる重要な要件となってきている。なお、本願明細書中において、粉末とは粒子の集合を意味しており、粒子の集合体として粉末と呼ぶのが適当と判断される場合には「粉末」といい、粉末を構成する単位としての「粒子」と呼ぶのが適当と判断される場合には粒子ということにする。しかし、その基本単位が共通であるから、その実態に差異がない場合があることは言うまでもない。したがって、「粉末」および「粒子」のいずれの表現を用いることができる場合がある。
【0004】
【特許文献1】
特開平11−71601号公報(特許請求の範囲)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上述したCVD法やプラズマ法に代表される気相からの製造方法による粉末は、粒径が微少であり、樹脂材料と混合する用途には不向きである。また、プラズマ・フレームを用いるCVD法やプラズマ法は、キャリア・ガスとして高価なアルゴン・ガスを大量に使用するのに加えて、数百kWの電力を消費するので、コストが高いという問題がある。そのため、量産プロセスへの応用まではまだ距離があり、応用領域が限定されているのが現状である。
一方、液相合成法の一種であるゾルゲル法や共沈法では、粒子の表面に沈殿層を作ることにより層状構造の複合粒子が得られるが、原料に対する制約条件を考慮すると、作製可能な無機化合物の種類はかなり限定されてしまう。具体的には、ゾルゲル法の場合には、原料として使用される金属アルコキシドが安定に存在する元素が少ないし、また共沈法の場合には、原料である塩が水と反応して分解してしまい、不安定となるという制約を受けるからである。また、これらの合成法は、粒子を溶液中で処理するが、処理後の粒子を溶液から分離し乾燥させる工程で粒子が凝集を起こしやすい。よって、粒径の制御が困難であるという問題があるとともに、廃水処理の問題も伴う。
さらに、液相合成法の一種である噴霧熱分解法では、製造速度が遅いため、生産性が低いという問題がある。また、噴霧熱分解法は溶液を原料としており、熱分解のための高温加熱工程において本来得ようとする金属とは無関係の水分を熱分解するために熱エネルギーを消費してしまう。つまり、加熱エネルギーに対する収率が低い。
以上の通りであり、量産性に優れた複合粒子の製造方法はこれまで見出されていない。そこで本発明は、複合粒子を、コスト高を招くことなく量産できる製造方法を提供する。また、本発明は、樹脂材料との複合化に適する粒径を有し、しかも樹脂材料に対する分散性、充填性に優れた球状複合粒子を効率良く得る技術を提供する。
【0006】
上記課題を解決するために、本発明者は様々な検討を行った。その結果、多成分の顆粒粉末を燃焼炎内に供給することが、複合粒子を効率良く得る上で極めて有効であることを知見した。すなわち、本発明は、第1の組成物からなるコア体と、第1の組成物とは異なる第2の組成物からなりかつコア体を被覆する被覆層とを備えた複合粒子を製造する方法であって、第1の組成物となる第1の原料粉体と、第2の組成物となる第2の原料粉体からなる顆粒粉末を酸化性ガスまたは/および不活性ガスとともに燃焼炎内に供給する工程aと、顆粒粉末を燃焼炎内で溶融させることにより、溶融処理物を得る工程bと、溶融処理物を、第1の組成物からなるコア体と、第2の組成物からなりかつコア体を被覆する被覆層とに分離させる工程cと、を備えたことを特徴とする複合粒子の製造方法であって、上記した第1の組成物および第2の組成物の組合せが、以下に示す組合せ1から8のいずれかであることを特徴とする複合粒子の製造方法を提供する。
組合せ1:第1の組成物が酸化鉄であり、かつ第2の組成物がSiO 2 である。
組合せ2:第1の組成物がAgであり、かつ第2の組成物がSiO 2 である。
組合せ3:第1の組成物がPdであり、かつ第2の組成物がSiO 2 である。
組合せ4:第1の組成物がPdであり、かつ第2の組成物がBaTiO 3 である。
組合せ5:第1の組成物がPtであり、かつ第2の組成物がBaTiO 3 である。
組合せ6:第1の組成物がPtであり、かつ第2の組成物がTiO 2 である。
組合せ7:第1の組成物がSnO 2 であり、かつ第2の組成物がAl 2 O 3 である。
組合せ8:第1の組成物がNb 2 O 5 であり、かつ第2の組成物がSiO 2 である。
本発明の複合粒子の製造方法によれば、工程bで得られた溶融処理物が工程cでコア体と、コア体を被覆する被覆層とに分離されるので、コア体の調製と被覆層の形成を2段階に分けて行う必要がない。しかも、顆粒粉末を用いるため、粒径の制御が容易となり、樹脂に対する分散性、充填性に優れた粒径の複合粒子を得ることができる。なお、不活性ガスとしては、窒素ガス、Heガス、Neガス、Arガス、Krガス、Xeガス、Rnガス等を用いることができる。
本発明の複合粒子の製造方法において、上述した第1の組成物および第2の組成物を、いずれも酸化物とすることができる。具体的には、第1の組成物および第2の組成物の組合せとして、上述の組合せ1、7、8のいずれかを採用することができる。また、第1の組成物を金属とし、第2の組成物を酸化物とする場合には、上述の組合せ2から6のいずれかを採用することができる。
さらに、本発明によれば、複合粒子の形状を球状とすることができる。ここで、粉砕により得られた粉末は、粒子の形態が不定形となり、樹脂材料に対する分散性、充填性を確保することができない。つまり、樹脂材料に対する分散性、充填性を確保するための要素として、粒径以外に粒子の形態がある。顆粒粉末を燃焼炎内で処理する本発明によれば、樹脂材料との複合化に適した球状の複合粒子を得ることができる。
【0007】
また、本発明は、融点が異なる複数の粉末を非還元性雰囲気下で加熱溶融した後、冷却することで、コアシェル構造の球状複合粒子を得る技術も提供する。すなわち、本発明は、第1の組成物からなるコア体と、第1の組成物とは異なる第2の組成物からなりかつコア体を被覆する被覆層とを備えたコアシェル構造の球状複合粒子を製造する方法であって、第1の組成物となる第1の原料粉体と、第2の組成物となる第1の原料粉体より融点が高い第2の原料粉体とを含む顆粒粉末を、非還元性雰囲気下で加熱することにより球状体とし、球状体を冷却する過程において、第1の組成物を前記球状体の中心部に位置させるとともに、第2の組成物を球状体の表面に位置させてコアシェル構造の球状複合粒子を得ることを特徴とする球状複合粒子の製造方法を提供する。本発明における球状複合粒子の製造方法において、上記した第1の組成物および第2の組成物の組合せは、上述した組合せ1から8のいずれかである。
2つの基準、すなわち互いに殆ど反応または固溶せずかつ濡れ性が悪いことを基準として第1の組成物および第2の組成物を選択することで、より具体的には上述した組合せ1から8のいずれかを選択することで、加熱溶融物である球状体を冷却する過程において、第1の組成物を球状体の中心部に位置させるとともに、第2の組成物を球状体の表面に位置させることが可能となる。
本発明では、加熱して得られる溶融物としての球状体を、第1の原料粉体が溶融して生成された第1の溶融物と、第2の原料粉体が溶融して生成された第2の溶融物とで構成するとともに、第2の溶融物を第1の溶融物と共存させることができる。ここで、第1の溶融物と第2の溶融物とが共存可能なのは、両者が殆ど反応せず、かつ固溶しないためである。
本発明における球状複合粒子の製造方法では、上述した第2の溶融物、つまり融点の高い方が、第1の溶融物よりも先行して凝固する。
また、球状体を冷却する過程において、球状体を徐冷することが好ましい。
【0008】
【発明の実施の形態】
図1(a)は本実施の形態に係る複合粒子の構成を模式的に示す断面図、図1(b)は本実施の形態に係る複合粒子断面のSEM(走査型電子顕微鏡)観察像である。図1に示すように、本実施の形態に係る複合粒子(球状複合粒子)10は、コア体1と、このコア体1の表面を覆う被覆層2とからなる2層構造で構成されている。
【0009】
コア体1は金属または酸化物から構成される。コア体1を構成する金属としては、例えば銀,パラジウム,白金が挙げられる。なかでも、複合粒子10を表面絶縁化導電粒子に用いる場合には、導電性が良いうえ、融点が低く溶融しやすいという理由から銀が望ましい。
【0010】
コア体1を構成する酸化物としては、公知の誘電体材料、磁性材料、ガラス等の他の材料が広く挙げられる。但し、本願においてコア体1を酸化物で構成する場合には、上述した組合せ1、7、8にて示した酸化物(酸化鉄,SnO 2 ,Nb 2 O 5 )のいずれかを選択する。
【0011】
被覆層2は、コア体1を構成する物質とは異なる物質で構成される。具体的には、上述した組合せ1から8にて示した酸化物(SiO 2 ,BaTiO 3 ,TiO 2 ,Al 2 O 3 )で被覆層2を構成する。
【0012】
本実施の形態に係る複合粒子10は、図1に示したように球状である。本発明では、粒子の球状度が0.8〜1の場合に、球状であると判断する。複合粒子10を、その粒子の球状度が0.8〜1であるものとすることにより、複合粒子10を樹脂材料と複合化する際に複合粒子10の充填性が向上する。また、球状度が0.8以上である複合粒子10を用いた場合には、樹脂材料に対して均一に分散しやすくなる。複合粒子10を球状とする場合の望ましい球状度は0.85〜1、さらには0.9〜1である。ここで「球状」とは、表面が平滑な完全な球状のほか、極めて真球に近い多面体を含む。具体的には、Wulffモデルで表されるような安定な結晶面で囲まれた等方的な対称性を有し、かつ球状度が1に近い多面体粒子も含まれる。また、微小な凹凸が表面に形成されている粒子、あるいは楕円状の断面を有する粒子であっても、球状度が0.8〜1の範囲にあれば、本発明で言う球状に該当する。ここで「球状度」とは、Wadellの実用球状度、すなわち粒子の投射面積に等しい円の直径と粒子の投射像に外接する最小円の直径の比である。
【0013】
複合粒子10を単体として、すなわち、樹脂材料と複合化せずに用いる場合の望ましい平均粒径は0.1〜20μmである。この場合における望ましい平均粒径は0.5〜10μm、さらに望ましくは1〜5μmである。
一方、複合粒子10を樹脂材料と複合化して用いる場合の望ましい平均粒径は0.5〜10μmである。複合粒子10の平均粒径が0.5μm未満と小さい場合には、樹脂材料との混練がしにくいという不都合も生じる。但し、複合粒子10の平均粒径が10μmを超えると、特性は良好であるものの、例えば基板を作製する場合にはパターン等が作製し難く、厚さの薄い平滑な基板を得にくいという問題が生じる。よって、複合粒子10を樹脂材料と複合化して用いる場合には、複合粒子10の平均粒径を0.5〜10μmとする。この場合の望ましい平均粒径は1〜6μm、さらに望ましい平均粒径は1〜3μmである。
【0014】
被覆層2の厚さは、以下のように設定すればよい。すなわち、コア体1が金属で構成される場合に、この金属の酸化防止を主たる目的として被覆層2を形成させる場合には、被覆層2の膜厚は、10nm〜0.3μm、望ましくは20nm〜0.1μmとする。一方、コア体1が金属または酸化物で構成される場合に、コア体1とは異なる特性を被覆層2に供与することを主たる目的として被覆層2を形成させる場合には、その目的に応じて被覆層2の膜厚を設定すればよい。例えば、コア体1を酸化鉄で構成し、かつ被覆層2をBaTiO 3 で構成して複合粒子10を作製した場合には、磁気特性と誘電体特性を兼備した複合粒子を得ることができる。磁気特性と誘電体特性を兼備した複合粒子は、例えば電波吸収体に用いることができるが、この場合には被覆層2の膜厚は10nm〜1μm、望ましくは20nm〜0.1μmとすればよい。
【0015】
ここで、本発明に係る球状複合粒子の製造方法では、コア体となる物質を予め準備した上で、その表面に被覆層を形成するという手法を用いるものではない。詳しくは後述するが、本発明では、多成分を含有する溶融処理物を冷却する過程で、コア体1と、被覆層2とに分離させるという新規な手法を採用する。このため、本発明では、コア体1を構成する物質(第1の組成物)と、被覆層2を構成する物質(第2の組成物)とが溶融状態で互いに殆ど反応または固溶しないこと、すなわち両者が共存可能であること、および濡れ性が悪いこと、という2つの条件を満たすようにコア体1を構成する物質および被覆層2を構成する物質を選別する。
【0016】
ここで、上述した濡れ性の悪さの一般的な判断基準を以下に示す。
コア体1を構成する物質と、被覆層2を構成する物質が濡れ性が悪いか否かを判断する際の基準として、それぞれの物質の結合様式を参酌することができる。物質の結合様式としては、金属結合、イオン結合、共有結合等があるが、コア体1を構成する物質の様式と被覆層2を構成する物質の結合様式とが相違する場合には、濡れ性が悪いと判断することができる。一般的に、コア体1を構成する物質として金属、特に貴金属単体を選択し、一方、被覆層2を構成する物質として共有結合のものを用いることで、コア体1を構成する物質と、被覆層2を構成する物質とを濡れ性の悪い状態とすることができる。同様に、コア体1を構成する物質として例えばイオン結合の酸化物を選択し、被覆層2を構成する物質として例えば共有結合の酸化物を選択することで、互いに濡れ性の悪い状態とすることができる。
ここで、コア体1を構成する物質と、被覆層2を構成する物質の両者が酸化物である場合、ならびにコア体1を構成する物質が貴金属単体であり、かつ被覆層2を構成する物質が酸化物である場合を例にし、上記した2つの条件、すなわち、殆ど反応または固溶しないこと、および濡れ性が悪いこと、という条件を満たす物質の組合せを、表1に示しておく。
【0017】
【表1】
【0018】
また、濡れ性の悪さの判断基準として、コア体1を構成する物質と、被覆層2を構成する物質との界面張力を参酌することができる。詳細については後述するが、本発明では、コア体1を構成する組成物となる原料粉体(第1の原料粉体)と、被覆層2を構成する組成物となる原料粉体(第2の原料粉体)からなる顆粒粉末を、一旦溶融させて液滴とする。この液滴中において、コア体1を構成する組成物と被覆層2を構成する組成物との界面張力が大きいほど、両者間の濡れ性が悪いと判断することができる。
【0019】
次に、本発明の複合粒子10の製造方法について説明する。本実施の形態では、複数の原料粉体から顆粒粉末を作製する顆粒粉末作製工程、顆粒粉末を燃焼炎内に供給する粉体供給工程(工程a)、燃焼炎内で顆粒粉末を溶融させる溶融処理工程(工程b)、溶融処理物をコア体1と被覆層2とに分離させる分離工程(工程c)を含む。
【0020】
<原料粉体の準備>
まず後述する顆粒粉末作製工程で使用される複数の原料粉体を準備する。図1に示した2層構造を有する複合粒子10を最終的に得たい場合には、コア体1を構成する組成物(第1の組成物)となる原料粉体(第1の原料粉体)と、被覆層2を構成する組成物(第2の組成物)となる原料粉体(第2の原料粉体)とをそれぞれ準備する。なお、3層構造を有する複合粒子10を最終的に得たい場合には、3種類の原料粉体を準備すればよい。説明の便宜上、以下では2層構造を有する複合粒子10を得る場合を例にして説明する。
【0021】
2種類の原料粉体の選択は、最終的にどのような特性を有する複合粒子10を得たいか、ということに基づいてなされる。例えば、誘電特性と磁気特性を兼備した複合粒子10を得たい場合には、誘電体セラミックス粉末と磁性粉末を原料粉体として選択すればよい。それに加え、上述した2つの条件、すなわち、互いに殆ど反応または固溶しないこと、および濡れ性が悪いこと、という条件を満たすように2種類の原料粉体を選択する。具体的には、上述した組合せ1から8に基づき、原料粉体を選択する。
原料粉体の作製方法は特に限定されるものではない。原料粉体としては、金属の酸化物、窒化物、硼化物、硫化物等の化合物及び金属塩、スプレー法などで作製した顆粒粉、粉砕機により粉砕した粉砕粉を用いてもよい。また、作製したい組成比として混合した塩を含む水溶液を用いた溶液スプレー法による粉末、また、圧電素子、2流体ノズルまたは4流体ノズルを用いた噴霧熱分解法による粉末でもよい。
なお、本発明で原料粉体とは、粉末、顆粒粉、粉砕粉等、その形態に拘わらず粒子から構成される種々の形態を包含している。原料粉体のサイズは、10nm〜5μmの範囲で適宜定めればよい。なお、コア体1を構成する組成物からなる原料粉体は、被覆層2を構成する組成物からなる原料粉体よりも平均粒径が大きなものとすることが望ましい。また、被覆層2を構成する組成物からなる原料粉体の平均粒径、被覆層2を構成する組成物からなる原料粉体の量を制御することで、被覆層2の膜厚を制御することができる。
【0022】
<顆粒粉末作製工程>
本実施の形態では、2種類の原料粉体、すなわちコア体1を構成する組成物となる原料粉体および被覆層2を構成する組成物となる原料粉体を混合分散して顆粒粉末とした上で、燃焼炎内に供給する。このように、本発明は、燃焼炎に供給される粉体として顆粒粉末を用いることを1つの特徴としている。これは、各組成を最終的に個々の粒子レベルまで均一に混合するために必要なことはいうまでもないが、顆粒粉末を得る段階で粒度分布の幅を狭く制御でき、しかも、その粒径をも制御することができるためである。顆粒粉末を得る典型的な手法として、スプレー・ノズルを用いた噴霧造粒法がある。噴霧造粒法においては、出発原料粉体、つまり、第1の原料粉体および第2の原料粉体をスプレー・ノズルから噴霧するためのスラリを作成する。スラリは、出発原料粉末を溶媒に適量添加した後に、ボール・ミルまたはアトライタ等の混合機を用いて混合することにより得ることができる。溶媒として水を用いることができるが、出発原料粉体の分散性を向上するために分散剤を添加することが推奨される。出発原料粉体同士を機械的に結合するための結合剤、例えばPVA(ポリビニルアルコール)を添加することもできる。
【0023】
原料粉体を含むスラリをスプレー・ノズルまたは回転ディスク等により噴霧して液滴を形成する。ここで、スプレー・ノズルは、上記のスラリと圧縮気体とを噴霧するためのものであり、2流体ノズル、あるいは4流体ノズルを用いることができる。圧縮気体とともにスプレー・ノズルから吐出されたスラリは微粒化されて噴霧を形成する。噴霧中の液滴の粒径は、スラリと圧縮気体との比率により制御することができる。液滴の粒径を制御することにより、最終的に得られる顆粒粉末の粒径を制御することができる。噴霧状態のスラリが自由落下する過程で水分を乾燥するための熱を与えることにより、液体成分を乾燥、除去した粉末を得ることができる。この熱は、スプレー・ノズルから吐出する気体を加熱気体とする、あるいは噴霧雰囲気に加熱気体を供給することにより与えることができる。乾燥のためには、100℃以上の加熱気体を用いればよい。スプレー・ノズルによる噴霧および乾燥の工程は、所定のチャンバ内で行われる。スプレー・ノズルを用いた噴霧造粒法により得られる粉体は、通常、顆粒粉末である。この顆粒粉末の粒径は、前述のように、スラリと圧縮気体との比率によって制御することができる。スラリ同士を衝突させることにより小さな液滴を作成することもできる。
【0024】
<粉体供給工程>
粉体供給工程では、以上のようにして得られた顆粒粉末を酸化性ガスまたは/および不活性ガスとともに燃焼炎中に供給する。燃焼炎中に供給される顆粒粉末は、乾式状態で供給することもできるが、当該顆粒粉末を含むスラリとして湿式状態で供給することもできる。
【0025】
<溶融処理工程>
粉体供給工程で燃焼炎内に供給された顆粒粉末は、燃焼炎中に所定時間だけ滞留する。詳しくは後述するが、燃焼炎内の温度は顆粒粉末の融点以上の温度に制御されている。このため、燃焼炎内に滞留中に顆粒粉末は熱処理され、具体的には、顆粒粉末が溶融し、球状体を構成する。この溶融処理工程は、非還元性雰囲気で行われる。
【0026】
<分離工程>
溶融処理工程で得られた球状体は、冷却される過程でコア体1と被覆層2とに分離される。ここで、コア体1を構成することとなる組成物と被覆層2を構成することとなる組成物のうち、融点の高い組成物が融点の低い組成物よりも先に凝固し、溶融中の融点の低い組成物中に融点の高い組成物が浮遊した状態が形成される。この浮遊物、つまり融点の高い組成物は、融点の低い組成物と殆ど反応または固溶せずかつ両組成物は濡れ性が悪い。このため、まだ溶融中の融点の低い組成物は球状粒子の中心部に位置し、かつ先に凝固した融点の高い組成物は球状粒子の表面に押し出されるような形で球状粒子の表層部に位置することとなる。一方、球状粒子の冷却が進行すると、球状粒子の中心部に位置していた融点の低い組成物も凝固を開始し、コア体1を形成する。以上のように、この分離工程では、コア体1と、コア体1を被覆する被覆層2とを備えた球状の複合粒子10が得られるのである。分離工程で完全なコアシェル構造を有する複合粒子10を得るためには、溶融処理工程で得られた球状粒子を徐冷することが好ましい。好ましい徐冷の形態は、後述する。
【0027】
ここで、本実施の形態に係る複合粒子10を作製する場合に好適な製造装置の一例を示す。
【0028】
図2は、本発明の複合粒子10の製造方法に好適な球状粉末製造装置200の一例を示す断面図である。図2に示すように、球状粉末製造装置200は、チャンバ20、バーナ30、処理粉末回収手段40、ガス排出手段50とを有する。
【0029】
チャンバ20は、例えば耐熱性の高いアルミナ等で形成され、上下方向に軸線を有した円筒状で、同一の内径を有する円筒壁部20aと、その下端部に連続して形成され、下方にいくにしたがい内径が徐々に小さくなるテーパ部20bとを有している。
チャンバ20の上部は開口しており、この開口部に蓋体21が設けられている。この蓋体21は、チャンバ20の中央部に臨む位置にバーナ30を備えており、その外周部には水冷ジャケット21aを内蔵している。水冷ジャケット21aは、バーナ30から発生する燃焼炎Fの調節と燃焼炎Fの熱により球状粉末製造装置200が損傷することを防ぐものである。
【0030】
バーナ30は、各々の領域に、顆粒粉末100aを供給する顆粒粉末供給管31、燃焼ガスを供給する燃焼ガス供給管32、および酸素を供給する酸素供給管33が接続されている。このようなバーナ30は、燃焼ガス供給管32から供給される燃焼ガスと酸素供給管33から供給される酸素をチャンバ20内の下方に向けて噴出しつつ、これに着火することで、チャンバ20中央部の上部に、燃焼炎Fを生成する。
【0031】
燃焼炎Fを得るための燃焼ガスは、特に制限されない。LPG、水素、アセチレン等公知の燃焼ガスを用いることができる。酸化物を処理する場合には、燃焼炎Fの酸化度を制御する必要があり、燃焼ガスに対して適当な量の酸素を供給することが望まれる。LPGを燃焼ガスとして用いる場合にはLPG供給量の5倍の酸素を、アセチレンを燃焼ガスとして用いる場合にはアセチレン供給量の2.5倍の酸素を、また水素を燃焼ガスとして用いる場合には水素供給量の0.5倍の酸素を供給すると等量となる。この値を基準として酸素供給量を適宜設定することにより、燃焼炎Fの酸化度を制御することができる。これら燃焼ガスの流量は、バーナ30のサイズに応じて適宜定めればよい。
燃焼炎Fの温度は、燃焼ガスの種類、量、酸素との比率、顆粒粉末100aの供給量などによって変動する。LPGを用いる場合には約2100℃まで、アセチレンを用いる場合には約2600℃までの温度を得ることができる。
【0032】
燃焼炎Fに対する顆粒粉末100aの供給の手法は、顆粒粉末100aが燃焼炎F内に入る限り制限はない。しかし、バーナ30から燃焼炎Fが生成される方向に沿って供給することが望ましい。燃焼炎F内を顆粒粉末100aが通過する時間をより長くするためである。したがって、燃焼炎Fの下部に達する前に供給した顆粒粉末100aが燃焼炎Fの外に漏洩しないように制御することが望ましい。
【0033】
燃焼炎F中に供給される顆粒粉末100aは、乾式状態で供給することもできるが、当該原料粉末としての顆粒粉末100aを含むスラリとして湿式状態で供給することもできる。
【0034】
上述した顆粒粉末作製工程で得られる顆粒粉末100aは、その平均粒径が15μm以下、より好ましくは2〜15μmとなるように生成するのが特に好ましい。
これは、顆粒粉末供給管31における顆粒粉末100aの流動性を高めるためである。これにより、顆粒粉末供給管31内で顆粒粉末100aが詰まるのを防止でき、バーナ30に顆粒粉末100aを安定して供給することができる。
【0035】
顆粒粉末100aの供給は、上述したように酸化性ガスまたは/および不活性ガスをキャリア・ガスとして用いて行われる。本実施の形態では、顆粒粉末100aを用いるので、キャリア・ガスによる搬送性が優れる。また、当然のことではあるが、供給する顆粒粉末100aを増加するためには、キャリア・ガス量を増加する必要があり、キャリア・ガスに酸素を用いる場合は、支燃ガスである酸素の量を減少させ、キャリア・ガスと支燃ガスとの混合比率を調整する必要がある。
【0036】
このような球状粉末製造装置200では、バーナ30の燃焼ガス供給管32からLPG等の燃焼ガスおよび酸素供給管33から酸素をバーナ30に供給しながら、着火する。すると、燃焼炎Fが下方に向けて発生する。
そして、顆粒粉末供給管31からキャリア・ガスとともに顆粒粉末100aを供給する。顆粒粉末100aは、バーナ30にて形成された燃焼炎Fに向かって供給される。
【0037】
燃焼炎Fはその燃焼領域内の位置、例えば中心部と外周部において温度が異なる。したがって、顆粒粉末100aの種類と処理の種類によって、燃焼炎Fの大きさ等の調節が行われると共に、顆粒粉末100aの供給先の位置も適宜調節される。本実施の形態では、顆粒粉末100aを燃焼炎Fの熱により溶融させて球状体、すなわち球状の溶融処理物100bを得る。このため、燃焼炎Fの温度を、顆粒粉末100aの融点以上の温度となるように設定する。つまり、顆粒粉末100aを構成する第1の原料粉体および第2の原料粉体のうち、融点が高い方を基準として燃焼炎Fの温度を設定する。
大きさや温度が適宜調整された燃焼炎F中に投入された顆粒粉末100aは、燃焼炎F中に所定時間滞留し、燃焼炎Fの熱によって溶融され、または化学的・物理的修飾を受け、チャンバ20内を落下する。このとき、顆粒粉末100aは、チャンバ20内を落下する間にその温度が低下し、凝固する。これにより、複合粒子10が得られる。
【0038】
上記のような処理が行われるチャンバ20のテーパ部20bの下端部は開口しており、複合粒子10を回収する処理粉末回収手段40としての回収容器41が接続されている。この回収容器41の側面には、ガス排出手段50としてのサイクロン51が接続されている。
チャンバ20内を落下した複合粒子10は、回収容器41の底部に堆積し、またその一部はガスとともにサイクロン51に送り込まれる。
サイクロン51では、円筒壁部20aから流れてくる、複合粒子10が混在したガスの気体(ガス)と固体(複合粒子10)とを上下に分離する。ガスと分離された複合粒子10はサイクロン51の底部に堆積する。
これら処理粉末回収手段40としての回収容器41およびサイクロン51の底部に堆積した複合粒子10を回収することで、球状の複合粒子10を得ることができるのである。
また、サイクロン51の上部にはバグフィルタ等のフィルタ装置52が接続され、サイクロン51から排出されるガスに残存する複合粒子10を、フィルタ本体52aで回収し、ガスのみを、排風機53を介して、排出管55から排出するようになっている。
【0039】
上記のようにして回収された複合粒子10は、球状でありかつコアシェル構造を有する。また本実施の形態で得られる複合粒子10の平均粒径は、0.1〜50μm程度であり、特に0.5〜10μm程度の樹脂材料との複合化に適した粒径の粒子を得ることが可能である。
【0040】
なお、図2に示したように、球状粉末製造装置200において、チャンバ20内の上部に気流発生部60を設けることが望ましい。ここで使用されるガスは被処理物との反応の有無等を考慮して適宜選択することができるが、例えばN2、O2、Arおよび空気等である。管体61からなる気流発生部60からガスを供給することにより、環状の気流発生部60から噴出される気流Aは、チャンバ20の円筒壁部20aのほぼ全周に沿った、いわゆるエアカーテンのように形成される。このように、気流発生部60から噴出させた気流Aをチャンバ20の円筒壁部20aに沿って流すことで、燃焼炎F中で溶融されてチャンバ20内を落下する溶融処理物100bは、チャンバ20の円筒壁部20aに近づくとこの気流Aによって下方に流される。これによって、溶融処理物100bがチャンバ20の円筒壁部20aに付着するのが防止できるのである。
【0041】
完全なコアシェル構造を有する複合粒子10を得るためには、溶融処理物100bを徐冷することが望ましい。ここで、チャンバ20内を落下する溶融処理物100bを徐冷する際に好適な球状粉末製造装置300の一例を図3に示す。
球状粉末製造装置300は、加熱部25a〜25cを設けた点を除けば、球状粉末製造装置300は、上述した球状粉末製造装置200と同一の構造を有している。なお、便宜上、図3では気流発生部60を省略してある。
球状粉末製造装置300では、円筒壁部20aの外周には、円筒壁部20a内に加熱領域を形成するため、上から順に第1の加熱部25a、第2の加熱部25b、第3の加熱部25cが設けられ、チャンバ20内に加熱領域が形成されている。
【0042】
加熱領域では、第1の加熱部25aは、顆粒粉末100aの融点より若干低い温度に設定されている。さらに、第2の加熱部25bは第1の加熱部25aより低い温度に、第3の加熱部25cは第2の加熱部25bより低い温度にそれぞれ設定されている。したがって、円筒壁部20a内の温度は、第1の加熱部25aから第3の加熱部25cまで徐々に低下するようになっている。なお、加熱部25a、25b、25cにおける加熱としては、電気による加熱、ガスの燃焼熱による加熱および高周波加熱等の公知の手段が採用され、この中でも炉内の雰囲気の制御が容易であるため電気による加熱が好ましい。また、燃焼炎Fの全長の10%以上が、加熱部25a〜25cが設けられた領域内に位置していることが望ましい。
【0043】
燃焼炎Fを通過した溶融処理物100bがチャンバ20の円筒壁部20a内へ浮遊した状態で落下すると、溶融処理物100bが第1〜第3の加熱部25a、25b、25cを通過するにしたがって、それぞれの加熱部25a、25b、25cに応じた温度に順次さらされる。したがって、燃焼炎Fに所定時間滞留して高温・溶融状態となった顆粒粉末100aは、その温度が急激に下がることなく、徐々に冷却される。このように、バーナ30に連続するようにして、溶融処理物100bの進行方向に向かって徐々に温度が低下するような加熱領域を設けることにより、溶融処理物100bを加熱しないでそのまま冷却させる場合に生じる、溶融処理物100bの急激な温度変化を防止できる。つまり、溶融処理物100bが急激な温度変化を受けて、完全に相分離が終了しないまま凝固してしまうことを防止できる。
【0044】
なお、それぞれの加熱部25a、25b、25cにおける加熱温度の設定は、粉末の種類や、処理の目的によっても異なるが、第1の加熱部25aの設定温度は、上述したように顆粒粉末100aの融点近傍(顆粒粉末100aを構成する組成物のうち、融点の低い組成物を基準とする)であることが好ましい。また、第1の加熱部25aと第2の加熱部25bとの設定温度差、並びに第2の加熱部25bと第3の加熱部25cとの設定温度差は、それぞれ100〜300℃程度であることが好ましい。なお、加熱領域における最後の加熱部である第3の加熱部25cにおいては、溶融処理物100bが変質しない温度に設定することが好ましい。
【0045】
以上のようにして、燃焼炎Fに所定時間滞留することにより高温に加熱された溶融処理物100bは、燃焼炎Fを通過した瞬間に急速に冷却されることなく、加熱領域を通過することで徐々に冷却される。この徐冷により、最終的に得られる複合粒子10を、図1に示したような完全なコアシェル構造のものとすることができる。
さらに本実施の形態では、粒子の球状度が0.8〜1である複合粒子10を得ることができる。また球状度が0.9〜1、さらには0.95〜1である複合粒子10を得ることもできる。球状度が0.8以上である複合粒子10は、樹脂材料等の他の材料に対して均一に分散しやすくなる。
【0046】
以上詳述したように、本実施の形態においては、原料粉末を上述した2つの条件を満たすようにして選択しているため、コアシェル構造を有する複合粒子10を容易に得ることができる。また、溶融処理物100bを徐冷するようにすれば、球状粒子内の相の分離を確実に行うことができる。複合粒子10によれば、コア体1が担う特性と、被覆層2が担う特性を異ならせることができる。つまり、複数の特性を兼備させることができるため、優れた特性を有する製品や特殊な構造や機能を有する材料や部品を得ることができる。具体的には、センサー、電波吸収体、ノイズ対策部品、コンデンサー、共振器等を得ることができる。
【0047】
なお、以上述べた図3に示した球状粉末製造装置300では、加熱領域が第1〜第3の加熱部25a、25b、25cによって構成されているが、加熱領域は第1の加熱部25aのみで構成してもよく、その他、さらに多い加熱部によって構成されるものであってもよい。設ける加熱部の数は、処理する粉末の種類と、目的とする処理の種類によって適宜調節される。また加熱領域として、溶融処理物100bの落下方向、すなわちバーナ30側から処理粉末回収手段41に向かって温度が下がる温度勾配を付与できる手段であれば、図3に示すような加熱部25a、25b、25cに限定されず、例えば加熱ガスを円筒壁部20a内に吹き込む手段等、他の手段を用いることもできる。
【0048】
【実施例】
以下本発明を具体的な実施例に基づいて説明する。
(実施例1)
火炎中加水分解法により得た平均粒径30nmのシリカ(SiO2)粒子と、沈殿法により得た平均粒径0.2μmの酸化鉄(Fe2O3)粒子とを重量比1:20で混合し、固形分45wt%のスラリを作製した。なお、スラリ作製に先立ち、シリカ粒子および酸化鉄粒子の融点をそれぞれ測定したところ、シリカ粒子の融点は1730℃、酸化鉄粒子の融点は1570℃であった。
【0049】
このスラリを4流体ノズルを備えたスプレードライヤで噴霧造粒し、平均粒径4.8μmの顆粒粉末を作製した。この顆粒粉末は、2種類の化合物粒子が接触状態で集合した粉体である。またこの顆粒粉末の球状度は0.98であった。また、その粒度分布を測定したところ、10%径が1.8μm、90%径が6.8μmであった。なお、10%径とは、測定された粉末の全体積を100%として累積カーブを求めたとき、その累積カーブが10%となる点の粒径をいう。同様に90%径とは、前記累積カーブが90%となる点の粒径をいう。したがって、10%径と90%径の差が小さいほど粒度分布幅が狭く、前記差が大きいほど粒度分布幅が広いことを意味する。
【0050】
図3の装置を用いて燃焼ガス供給管32からLPGを、酸素供給管33から酸素を供給しつつ燃焼炎Fを発生させ、この燃焼炎F内に、酸素をキャリア・ガスとして前述の顆粒粉末を供給して熱処理を行った。なお、燃焼炎F発生のための酸素流量は10.0L/min、LPG流量は2.0L/minである。また、キャリア・ガスとしての酸素流量は300ml/minである。なお、溶融処理物が徐冷されるように、第1〜第3の加熱部25a〜25cの温度はそれぞれ1600℃、1500℃、1400℃に設定した。
熱処理後に得られた粉末の平均粒径は3.2μm、10%径が1.2μm、90%径が5.2μmであった。粉末を構成する粒子の球状度は0.97に達していた。サンプリングされた粒子のSEM(走査型電子顕微鏡)観察像を図4に示しておく。図4に示すように、サンプリングされた粒子はほぼ真球状であった。
【0051】
サンプリングされた粒子を切断し、断面をSEM(走査型電子顕微鏡)で観察した結果、図1に示したように粒子が2相に分離していることが確認された。具体的には、酸化鉄がコア体1を形成し、また酸化鉄よりも融点の高いシリカが被覆層2を形成して複合粒子10を構成していた。シリカが形成する被覆層2の膜厚は300〜700nmであった。
【0052】
(実施例2)
1.0mol/L硝酸銀溶液に対して、火炎中加水分解法により得た平均粒径30nmのシリカ(SiO2)粒子を3.5wt%混合分散し、スラリを作製した。このスラリを実施例1と同様の要領で噴霧造粒し、平均粒径3.8μmの顆粒粉末を作製した。この顆粒粉末はシリカ粒子と酸化銀が接触状態で集合した粉体であり、この顆粒粉末の球状度は0.98であった。またその粒度分布を測定したところ、10%径が1.2μm、90%径が5.3μmであった。なお、銀粒子の融点は940℃である。
【0053】
図2の装置にて燃焼炎Fを発生させ、この燃焼炎F内に、酸素をキャリア・ガスとして前述の顆粒粉末を供給した。なお、燃焼炎F発生のための酸素流量は10.0L/min、LPG流量は2.0L/minである。また、キャリア・ガスとしての酸素流量は300ml/minである。
得られた粉末の平均粒径は2.8μmであり、SEM(走査型電子顕微鏡)観察により、大半の粒子が球状であり、全体的な球状度は0.96に達した。また、粒度分布を測定したところ、10%径が1.0μm、90%径が3.9μmであった。また、サンプリングされた粒子を切断し、断面をSEM(走査型電子顕微鏡)で観察した結果、銀がコア体1を形成し、また銀よりも融点の高いシリカ粒子が被覆層2を形成して複合粒子10を構成していた。シリカ粒子が形成する被覆層2の膜厚は300〜600nmであった。
【0054】
(実施例3)
沈殿法により得た平均粒径0.5μmのPd粒子と、沈殿法により得た平均粒径0.1μmのBaTiO3粒子とを重量比100:5で混合し、固形分60wt%のスラリを作製した。なお、スラリ作製に先立ち、Pd粒子およびBaTiO3粒子の融点をそれぞれ測定したところ、Pd粒子の融点は1550℃、BaTiO3粒子の融点は1670℃であった。
このスラリを実施例1と同様の要領で噴霧造粒し、平均粒径4.6μmの顆粒粉末を作製した。この顆粒粉末の球状度は0.98であった。また、その粒度分布を測定したところ、10%径が1.1μm、90%径が6.2μmであった。
【0055】
実施例1と同様に、図3の装置にて燃焼炎Fを発生させ、この燃焼炎F内に、酸素をキャリア・ガスとして前述の顆粒粉末を供給した。なお、燃焼炎F発生のための酸素流量は10.0L/min、LPG流量は2.0L/minである。また、キャリア・ガスとしての酸素流量は2.0ml/minである。なお、溶融処理物が徐冷されるように、第1〜第3の加熱部25a〜25cの温度はそれぞれ1550℃、1500℃、1450℃に設定した。
得られた粉末の平均粒径は3.8μmであり、SEM(走査型電子顕微鏡)観察により、大半の粒子が球状であり、全体的な球状度は0.93に達した。また、粒度分布を測定したところ、10%径が0.9μm、90%径が5.8μmであった。サンプリングされた粒子を切断し、断面をSEM(走査型電子顕微鏡)で観察した結果、Pdがコア体1を形成し、また、Pdよりも融点の高いBaTiO3が被覆層2を形成して複合粒子10を構成していた。BaTiO3が形成する被覆層2の膜厚は50〜80nmであった。
【0056】
(比較例1)
ともに沈殿法により得た平均粒径0.1μmの酸化チタン(TiO2)粉末と平均粒径0.15μmの炭酸バリウム(BaCO3)粉末をモル比1.0:1.0で混合し、固形分50wt%のスラリを作成した。このスラリを噴霧造粒し、平均粒径11.5μmの顆粒粉末を作成した。この顆粒粉末は、2種類の化合物粒子が接触状態で集合した粉体である。またこの顆粒粉末の球状度は0.92、タップ密度は2.0g/cm3であった。また、その粒度分布を測定したところ、10%径が1.3μm、90%径が19.6μmであった。
【0057】
実施例1と同様に、図3の装置にて燃焼炎Fを発生させ、この燃焼炎F内に、酸素をキャリア・ガスとして前述の顆粒粉末を供給した。なお、燃焼炎F発生のための酸素流量は12.0L/min、LPG流量は2.3L/minである。また、キャリア・ガスとしての酸素流量は1.0L/minである。
得られた粉末の平均粒径は8.6μmであり、SEM(走査型電子顕微鏡)観察により、大半の粒子が平滑な表面を持ち、全体的な球状度は0.95に達した。また、粒度分布を測定したところ、10%径が1.1μm、90%径が11.3μmであり、タップ密度は2.8g/cm3であった。但し、サンプリングされた粒子を切断し、断面をSEM(走査型電子顕微鏡)で観察した結果、相は分離しておらず、複合粒子とはなっていなかった。なお、X線回折により得られた球状粉末の構成相を観察したところ、チタン酸バリウム(BaTiO3)が主相をなしていることから、BaCO3とTiO2が反応していることが確認された。
【0058】
なお、以上の実施の形態では、2相に分離された複合粒子10を得る方法について詳述したが、互いに殆ど反応または固溶せず、かつ濡れ性が悪い複数の組成物を適宜選択することで、3相以上の相構造を有する複合粒子10を得ることも可能である。
【0059】
【発明の効果】
本発明によれば、複合粒子を、コスト高を招くことなく量産することができる。また、本発明によれば、樹脂材料との複合化に適する粒径を有し、しかも樹脂材料に対する分散性、充填性に優れた球状複合粒子が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 (a)は本実施の形態に係る複合粒子の構成を模式的に示す断面図、(b)は本実施の形態に係る複合粒子断面のSEM(走査型電子顕微鏡)観察像である。
【図2】 本実施の形態に係る複合粒子の製造方法に好適な球状粉末製造装置の一例を示す断面図である。
【図3】 本実施の形態に係る複合粒子の製造方法に好適な球状粉末製造装置の他の例を示す断面図である。
【図4】 実施例1でサンプリングされた粒子のSEM(走査型電子顕微鏡)観察像である。
【符号の説明】
1…コア体、2…被覆層、10…複合粒子(球状複合粒子)、100a…顆粒粉末、100b…溶融処理物(球状体)、200,300…球状粉末製造装置
Claims (8)
- 第1の組成物からなるコア体と、前記第1の組成物とは異なる第2の組成物からなりかつ前記コア体を被覆する被覆層とを備えた複合粒子を製造する方法であって、
前記第1の組成物となる第1の原料粉体と、前記第2の組成物となる第2の原料粉体とからなる顆粒粉末を酸化性ガスまたは/および不活性ガスとともに燃焼炎内に供給する工程aと、
前記顆粒粉末を前記燃焼炎内で溶融させることにより、溶融処理物を得る工程bと、
前記溶融処理物を、前記第1の組成物からなるコア体と、前記第2の組成物からなりかつ前記コア体を被覆する被覆層とに分離させる工程cと、
を備えたことを特徴とする複合粒子の製造方法であって、
前記第1の組成物および前記第2の組成物の組合せが、以下に示す組合せ1から8のいずれかであることを特徴とする複合粒子の製造方法。
組合せ1:前記第1の組成物が酸化鉄であり、かつ前記第2の組成物がSiO 2 である。
組合せ2:前記第1の組成物がAgであり、かつ前記第2の組成物がSiO 2 である。
組合せ3:前記第1の組成物がPdであり、かつ前記第2の組成物がSiO 2 である。
組合せ4:前記第1の組成物がPdであり、かつ前記第2の組成物がBaTiO 3 である。
組合せ5:前記第1の組成物がPtであり、かつ前記第2の組成物がBaTiO 3 である。
組合せ6:前記第1の組成物がPtであり、かつ前記第2の組成物がTiO 2 である。
組合せ7:前記第1の組成物がSnO 2 であり、かつ前記第2の組成物がAl 2 O 3 である。
組合せ8:前記第1の組成物がNb 2 O 5 であり、かつ前記第2の組成物がSiO 2 である。 - 前記第1の組成物および前記第2の組成物の組合せが、前記組合せ1、7、8のいずれかであることを特徴とする請求項1に記載の複合粒子の製造方法。
- 前記第1の組成物および前記第2の組成物の組合せが、前記組合せ2から6のいずれかであることを特徴とする請求項1に記載の複合粒子の製造方法。
- 前記複合粒子は球状であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の複合粒子の製造方法。
- 第1の組成物からなるコア体と、前記第1の組成物とは異なる第2の組成物からなりかつ前記コア体を被覆する被覆層とを備えたコアシェル構造の球状複合粒子を製造する方法であって、
前記第1の組成物となる第1の原料粉体と、前記第2の組成物となる前記第1の原料粉体より融点が高い第2の原料粉体とを含む顆粒粉末を、非還元性雰囲気下で加熱することにより球状体とし、
前記球状体を冷却する過程において、前記第1の組成物を前記球状体の中心部に位置させるとともに、前記第2の組成物を前記球状体の表面に位置させてコアシェル構造の球状複合粒子を得ることを特徴とする球状複合粒子の製造方法であって、
前記第1の組成物および前記第2の組成物の組合せが、以下に示す組合せ1から8のいずれかであることを特徴とする球状複合粒子の製造方法。
組合せ1:前記第1の組成物が酸化鉄であり、かつ前記第2の組成物がSiO 2 である。
組合せ2:前記第1の組成物がAgであり、かつ前記第2の組成物がSiO 2 である。
組合せ3:前記第1の組成物がPdであり、かつ前記第2の組成物がSiO 2 である。
組合せ4:前記第1の組成物がPdであり、かつ前記第2の組成物がBaTiO 3 である。
組合せ5:前記第1の組成物がPtであり、かつ前記第2の組成物がBaTiO 3 である。
組合せ6:前記第1の組成物がPtであり、かつ前記第2の組成物がTiO 2 である。
組合せ7:前記第1の組成物がSnO 2 であり、かつ前記第2の組成物がAl 2 O 3 である。
組合せ8:前記第1の組成物がNb 2 O 5 であり、かつ前記第2の組成物がSiO 2 である。 - 加熱して得られる前記球状体は、前記第1の原料粉体が溶融して生成された第1の溶融物と、前記第2の原料粉体が溶融して生成され、かつ前記第1の溶融物と共存する第2の溶融物とからなることを特徴とする請求項5に記載の球状複合粒子の製造方法。
- 前記第2の溶融物が、前記第1の溶融物よりも先行して凝固することを特徴とする請求項6に記載の球状複合粒子の製造方法。
- 前記球状体を冷却する過程において、前記球状体は徐冷されることを特徴とする請求項5に記載の球状複合粒子の製造方法。
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